(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643553
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】溶解フィラメント製造方式3Dプリンターの押出機
(51)【国際特許分類】
B29C 64/205 20170101AFI20200130BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20200130BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20200130BHJP
【FI】
B29C64/205
B33Y30/00
B29C64/118
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-517435(P2017-517435)
(86)(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公表番号】特表2017-530037(P2017-530037A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】IB2014062163
(87)【国際公開番号】WO2015189661
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】516371852
【氏名又は名称】ロンバス インターナショナル テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】516371829
【氏名又は名称】菱木 輝男
(72)【発明者】
【氏名】菱木 輝男
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−500194(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0003656(US,A1)
【文献】
特表2009−532244(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0228590(US,A1)
【文献】
特開平10−139279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B29C 31/08
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解フィラメント製造方式の3Dプリンター用の押出ヘッド押出機であって、
フィラメント取入口、駆動ピンチホイール、ピンチホイールとサポートローラーの間に円弧状フィラメント導管を形成するためにピンチホイールの外側に配置された複数のサポートローラーによって構成されるフィラメント送り装置を持ちピンチホイールから一定間隔に配置されたサポートローラーはフィラメントをピンチホイールとの摩擦接触によりフィラメント導管に沿って導入しガイドする。
最も外側にある2つのサポートのローラーとピンチホイールの中心点はピンチホイールとフィラメント材料間の使用可能な摩擦領域を最大限にする接触角を定義する。
【請求項2】
請求項1に記載のフィラメント送り装置であって、
フィラメント接触角は30〜180度の間である。
【請求項3】
請求項1に記載のフィラメント送り装置であって、
ナーリング加工、ホブ加工または歯付き加工をしたピンチホイールはフィラメントに最適な牽引力を提供する。
【請求項4】
請求項1に記載のフィラメント送り装置であって、サポートローラーの少なくとも1つがピンチホイールに対してスプリングで負荷をかける。
【請求項5】
請求項1に記載のフィラメント送り装置であって、少なくとも1つのサポートローラーとピンチホイール間の距離は調整可能である。
【請求項6】
請求項1に記載のフィラメント送り装置であって、
ガイドは最初にフィラメント導管を通過する正しい経路を見い出しフィラメントをガイドするための円弧状のフィラメント導管に沿って提供される。
【請求項7】
溶解フィラメント製造方式の3Dプリンター用の押出ヘッド押出機であって、
フィラメント取入口、駆動ピンチホイール、ピンチホイールとサポートの間に円弧状フィラメント導管を形成するためにピンチホイールの外側に配置されたサポートによって構成されるフィラメント送り装置を持ち
ピンチホイールから一定間隔に配置されたサポートは、フィラメントをピンチホイールとの摩擦接触によりフィラメント導管に沿って導入しガイドする。
サポートの円弧の長さはフィラメントの接触角を定義する。
【請求項8】
請求項7に記載のフィラメント送り装置であって、
フィラメント接触角は30〜180度の間である。
【請求項9】
請求項7に記載のフィラメント送り装置であって、
ナーリング加工、ホブ加工またはは歯付き加工をしたピンチホイールはフィラメントに最適な摩擦を提供する。
【請求項10】
請求項7に記載のフィラメント送り装置であって、
サポートがピンチホイールに対してスプリングで負荷をかける。
【請求項11】
請求項7に記載のフィラメント送り装置であって、
サポートとピンチホイール間の距離は調整可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層堆積造形方式、具体的には溶解フィラメント製造方式の押出ヘッド機構または押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解フィラメント製造法は既存の3Dプリント方法の一種である。材料を水平な造形面に一層ごと堆積積層することにより、CAD(コンピューター支援設計)モデルから直接実際の部品を製造することができる。層の厚さは使用した技術によるが通常は0.05mmから1.0mmの間であり、3D CADモデルを‘スライス‘することにより、材料を吐出するための押出ヘッドの動作に変換する。溶解フィラメント製造法において、積層堆積技術は押出機から樹脂を押し出すことであり、樹脂のフィラメントは給紙ユニットによって加熱されたノズルに供給され、垂直方向に配置されたにノズルから水平な造形面に溶解した状態で吐出される。層の厚さは印刷ノズルと造形面の間隔により決定される。 水平なX、Y方向に造形面に対して相対的に、印刷ノズルを制御された速度で造形材料を供給しながら移動することにより、造形層を形成することができ、Z軸の正方向に造形面に対して相対的に1層分移動後、以前印刷した層の上に次のX、Y層の印刷が可能になり、以下同様に繰り返される。 それぞれ新規に押し出された樹脂のビーズは、以前のX、Y、Z方向堆積積層に固化して3D CADモデルに基づいた物理的な物体を徐々に造形することが可能ある。
過去に上記のタイプの3Dプリンターのいくつかの例が存在する。特許期間が満了した米国特許US5121329 StratasysのMr.Crumpは3Dモデルの製造の基本的な形態は印刷ノズルから流動性を有する構築材料を押し出し、押し出された流動性のある材料は温度の低下とともに造形面に固化しうることを説明している。
上記特許は供給スプールに格納された柔軟なフィラメント造形材料を使用して、フィラメントが2個のローラーによってスプールから加熱されたノズルに引き出され、フィラメントは溶解し供給ローラーによって発生した圧力によりノズルから吐出される。
US5764521 Batchelder et.al.は、供給スクリューを用いて造形材料を供給する、代替方法を説明している。
US5968561 Batchelder al.は、押出ノズルと造形面の相対運動について改善方法をを開示している。
最短の時間で可能な限り精密な造形解像度を達成することは3Dプリンターの共通目標である。 溶解フィラメント製造方式の3Dプリンターの場合、造形の解像度はノズルの直径および層の厚さに比例します。 造形の速度はノズル面積と毎秒当たり吐出される溶解した材料の最大体積によって決定され、ノズルから吐出される溶解材料の速度に比例する。
実際に造形の解像度はより小さなサイズのノズルにより2倍になるが造形速度は4倍のファクターで減速される。
この解像度と造形速度のジレンマは押出の速度の改善において重要な要因になる。
溶解フィラメント製造方式の3Dプリンターにおいてサブシステムのカギは押出機である。
US5764521に説明されるスクリュータイプは押出機の一つの例であり、溶解した樹脂を高圧でノズルから吐出できる回転する供給スクリューによって、樹脂材料は加熱されたフィーダーに供給される。
この方式は一般的に高い吐出圧力を達成することができるが、重要な短所はXY平面において加速度を制限し、したがって全体的な印刷速度を制限する押出機の重量である。その他の短所は3Dプリンターに組み込むことが困難な大きなサイズのスクリュー機構である。
より一般的で好まれて使用される別方式の押出機は、フィラメント供給ユニットを有するコールドエンドと加熱されたノズルを有するホットエンドで構成される。
フィーダーはフィラメント材料を供給ロールから引き込み、本質的に加熱管で構成される加熱されたノズルに圧力によって供給する。
フィーダーユニット設計は重要であり、いくつかの異形が知られている:駆動ピンチホイールとバネ与圧プレートまたはアイドラーホイールの間にフィラメントを直線的に供給する方法が最も一般的に使用されている。 ナーリング加工、歯付き加工、ホブ加工またはそれ以外の加工をしたピンチホイールはフィラメントに対する摩擦を高め結果的に駆動力を向上する為に施される。例えば凹面の歯形の歯付きのピンチホイールはフィラメントに対して点接触ではなく、好ましい線接触を提供する。高解像度でより高速な造形速度は、薄い溶解材料をより高速な供給速度での押出が求められる。
解像度の増加と押出速度の増加は共にフィラメントの保持表面積、結果的にフィラメントと供給機構の摩擦に相対的なノズル圧力を高める結果となる。
供給機構の滑りにより理論と実際の押出速度の間の差は増加する。現在の3Dプリンターの技術はABS樹脂を使用した場合0.4mm径ノズルで80mm/秒押出速度に相当する約10mm
3/sの押出速度が限度である。
この制限を超えた場合、滑りは無視できなくなり、品質の低下や造形の中断を引き起こす。
供給機構において滑りがなくフィラメント材料の高い供給レートによって、小さなノズル径と高い押出速度を許容できる技術は有益である。 早い加速度、結果的に高い印刷速度を可能にするコンパクトで軽量な構造も有益である。
【発明の概要】
【0003】
軽量な構造を持ち薄い押出材料を高い押出速度でフィラメント供給機構において全く滑りのない押出を可能にし、結果的に3Dプリンターの高速な造形速度を可能にする、溶解フィラメント製造方式3Dプリンターの改良された押出ヘッドを開示する。
フィラメント材料の高い供給レートは、ピンチホイールとフィラメントの有効摩擦をフィラメントの保持面積を増加することにより達成される。
これは出口角度と角度差のある供給機構に、フィラメントがピンチホイールの円周の多くの部分に摩擦接触するように、複数の支持ローラーによって背後から支持され、ピンチホイールの周りに誘導され、結果的にピンチホイールとフィラメント表面接触面積を増加するようにフィラメントを供給することによりなされる。
滑りのないフィラメント供給装置により押出された材料の公称体積は期待した体積と正確に一致する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】3Dプリンターの押出機とその他の主要部品を示す正面斜視図である。
【
図4】押出機コールドエンド部の分解正面斜視図である。
【
図7】フィラメントの接触角度180度の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1は好ましい実施形態による3Dプリンター27は造形面リニアガイド35によって水平なY方向に移動できるようにガイドされている水平な造形面29と水平なX方向と垂直なZ方向に移動可能な水平梁構造32に配置された押出機本体構造3とフィラメントロール支持梁構造34の上に配置されたフィラメントロール28は押出機本体構造3の最大動作範囲より上に位置し、自由にフィラメント23を供給するため回転軸の上にあり、フィラメント取入口14から押出機本体構造3に需要に応じ供給する。
【0006】
図2と
図3に示されるように、押出機は一般的にコールドエンド25およびホットエンド26から成り立つ。コールドエンド25はフィラメント23をフィラメントロール28から引き込むフィラメント供給機構を収納する押出機本体構造3から成り立ち、ヒーター21の発熱によりフィラメントを液化するヒーターブロック19のホットエンドパイプ16を介してホットエンド26に押し込む。温度は温度センサー20によって監視され、明示されていないコンピューター制御装置にフィードバックされる。
ステッピングモーター1はモーター取り付け構造2に搭載され押出機本体構造3に接続されている。コールドエンド放熱板7と冷却ファン6はモーターマウント2に接続されている。
【0007】
今、押出機本体構造3とフィーダー ユニットの詳細の為に
図4と
図5を参照する。押出機本体構造3の内部にステッピング モーター1で駆動されるウォームギア4が配置されている。 ウォームギヤ4はピンチホイールシャフト11を介してピンチホイール10に接続されているウォーム ホイール12を駆動する。ピンチ ホイール10はフィラメント23を押し引きする力を最大限にするグリップ、好ましくは歯、を備えている。ピンチホイール10の外側の加工シャフト上には9で示される3個の支持ローラーが配置されている。支持ローラー9a、9b、9cの好ましい実施形態は好ましくは同じサイズのボールベアリングで、好ましくはピンチホイール10から支持ローラー中心距離d31に等しい円弧に沿って均等に分布し、それらの間のギャップがピンチホイール10がフィラメント23に対して適切な駆動摩擦を与えるために十分きつくフィラメント23を受けてガイドするのに適した導管を形成する。そこにはフィラメント23がフィラメント導管を通る道を見出すことを補助する為にフィラメントガイド溝39を追加してもよい。支持ローラー9a,9b,9cの中心点とピンチホイール10の中心点はフィラメント接触角v30を定義する。フィラメント接触角v30はフィラメント23上のピンチホイール10による全把握可能領域を定義する。ピンチホイール10とフィラメント23間の力は支持ローラー9a,9b,9cとピンチホイール10のギャップによって定義される。ギャップはピンチホイール10が支持ローラー9a−9cのサポート力に対してフィラメントに食い込むようにフィラメント23のサイズより小さい。したがってフィラメント23におけるピンチホイール10の全利用可能な押し引き力を定義するものはフィラメント接触角v30とピンチホイール10と支持ローラー9a,9b,9c間のギャップによって定義される。
【0008】
ホットエンドの詳細について
図5を参照する。フィラメント23は24に示されるフィラメント出口の方向に沿って供給ユニットからホットエンド パイプ16の中に押し出される。ホットエンドパイプ16はフィラメントをそれが固体状態であるコールドエンド25からヒーターブロック19の中のヒーター21による発熱によって液化されるホットエンド26に導かれる。コールドエンド25をホットエンド26の高温から分離するために、ホットエンド パイプ16から熱を取り除くためのホットエンド ヒートシンク18と押し出機本体構造3をホットエンドパイプ16とホットエンド ヒートシンク18の残りの熱から絶縁する断熱材17がある。
【0009】
押出機本体構造3の別の形態において、当業者であれば一般的に9に示される支持ローラーの数はそのサイズまたは望みのフィラメント接触角v3によって変化することは明白なはずである。したがって支持ローラー9間の距離は必要に応じて短い場合や長い場合がある。例えば3個の支持ローラー9a,9b,9cの代わりに4個または5個の支持ローラーを希望するフィラメント接触角v30を埋めるために使用できることが想像できる。
同様にフィラメント接触v30がもし1個だけの支持ローラーを使用したよりも長ければ2個だけの支持ローラーを使用することも想像できる。もし180度のように大きなフィラメント接触角v30が必要な場合は
図7に示されるように6個の多くの支持ローラー9が必要かもしれない。この場合6個の支持ローラー9で180度のフィラメント接触角v30を与える為に、支持ローラー9eはフィラメント23の十分大きな曲げ半径を許容する為により大きくなければならない。
【0010】
押出機本体構造3のさらなる一つの代替実施形態においては、低摩擦の一般的なサポート手段によって一般に示されている支持ローラー9を代替えすることができるであろう。たとえば、円弧状のガイドによりフィラメント接触角v30上でピンチホイール10に対してまだ十分な圧力を提供しながらフィラメント23に対して低摩擦でフィラメント23をサポートするように設計される。例えば低摩擦のPTFEコーティングまたは表面がよく磨かれた鋼製のガイドによって達成できる。
【0011】
また別の押出機本体構造の実施形態において、ピンチホイール10とフィラメント23間の摩擦はいくつかの方法、例えばピンチホイール10の表面をナール加工、歯付き加工、ホブ加工、又は摩擦力を高めるための表面処理、によって最大化できることは当業者によく知られている。
【0012】
押出機本体構造3の最後の実施形態は、支持ローラ9またはサポートで例えばスプリング加圧によってピンチホイール10に対して制御された圧力を供給する。
【符号の説明】
1.ステッピングモーター 21.ヒーター
2.モーター取付構造 22.ノズル
3.押出機本体構造 23.フィラメント
4.ウォーム ギヤ 24.フィラメント出口の方向
5.押出機取付構造 25.コールドエンド
6.冷却ファン 26.ホットエンド
7.コールドエンド放熱板 27.3Dプリンター
8.8a カバーA、8b カバーB 28.フィラメント ロール
9.9a−9f支持ローラ 29.造形面
10. ピンチ ホイール 30.フィラメント接触角v
11.ピンチ ホイール シャフト 31.支持ローラー中心距離d
12.ウォーム ホイール 32.水平梁構造
13.ウォーム ホイール ベアリング 33.垂直梁構造
14.フィラメント取入口 34.フィラメント ロール支持梁構造
15.ピンチ ホイール ベアリング 35.造形面 リニアガイド
16.ホットエンド パイプ 36.部分的に溶融した樹脂
17.断熱材 37.溶融した樹脂
18.ホットエンド ヒートシンク 38.押し出された溶融樹脂
19.ヒーター ブロック 39.フィラメント ガイド溝
20.温度センサー 40.フィラメント ガイド チューブ
41.フィラメント 入口の方向