【文献】
AHMED,H.A. et al.,Enhancement in solar cell efficiency by luminescent down-shifting layers,Advances in Energy Research,2013年,Vol.1, No.2,p.117-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、光硬化性樹脂の特定波長の吸光度を厳密に管理する必要がある。これは樹脂自体の設計に多大な制限が生じることを意味しており、汎用性の面で問題が残っていた。特許文献2や3では、遮光部の硬化が確認された距離は1mm程度又はそれ以下であり、光照射のみで遮光部を実用的なレベルに硬化することはこれまで困難であった。さらに、特許文献3では無機物が発光材料として使われており、樹脂の透明度に課題が残っていた。
【0007】
そこで本発明は、光照射により硬化する際に遮光部も十分に硬化することができ、かつ硬化により透明で表示体の貼り合わせに適した柔軟性を持つ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、光硬化性樹脂に配合する光開始剤の吸光度及び蛍光剤の蛍光発光強度を適切な範囲に設計することで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、以下の各項の発明に関する。
[1]光硬化性樹脂と、エタノール中10ppm溶液の光路長10mmにおける吸光度が390〜420nmの範囲で0.01以上である光開始剤と、アセトニトリル中1ppm溶液の光路長10mmにおける蛍光発光強度が390〜450nmの範囲で20以上である蛍光剤を含む、光硬化性樹脂組成物である。
[2]前記蛍光剤が、下記式(1):
【化1】
(式中、
R
1は、水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基であり、
R
2及びR
3は、各々独立して、水素、ヒドロキシ、炭素数1〜3のアルコキシ基、アミノ基、−C(=O)R基、−NH−C(=O)R基又は−R’−OC(=O)NHR基(ここで、Rは、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基又はフェノキシ基であり、R’は、直接結合又は炭素数1〜10のアルキレン基である)である)
で示される化合物;又は下記式(2):
【化2】
(式中、
R
4及びR
5は、各々独立して、炭素数1〜18のアルキル基である)
で示される化合物である、前記[1]記載の光硬化性樹脂組成物である。
[3]前記光硬化性樹脂が、(メタ)アクリル基を有する化合物及び/又はエポキシ基を有する化合物を含む、前記[1]又は[2]記載の化合物である。
[4]可塑剤を更に含む、前記[1]〜[3]のいずれか記載の硬化性樹脂組成物である。
[5]前記[1]〜[4]のいずれか記載の硬化性樹脂組成物を含む、接着剤である。
[6]液晶表示装置の基材同士を貼り合わせるための、前記[5]記載の接着剤である。
[7]前記[6]記載の接着剤で接着された、液晶表示装置である。
[8]前記[1]〜[4]のいずれか記載の硬化性樹脂組成物を含む、液晶シール剤である。
[9]前記[8]記載の液晶シール剤でシールされた、液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光照射により硬化する際に遮光部も十分に硬化することができ、かつ硬化により透明で表示体の貼り合わせに適した柔軟性を持つ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、光硬化性樹脂と、エタノール中10ppm溶液の光路長10mmにおける吸光度が390〜420nmの範囲で0.01以上である光開始剤と、アセトニトリル中1ppm溶液の光路長10mmにおける蛍光発光強度が390〜450nmの範囲で20以上である蛍光剤が含まれる。
【0013】
[光硬化性樹脂]
光硬化性樹脂としては、ラジカル反応硬化型樹脂、カチオン反応硬化型樹脂、アニオン反応硬化型樹脂、重縮合・重付加反応硬化型樹脂などが例示できる。光硬化性樹脂としては、エネルギー線による硬化の速度などの観点から、ラジカル反応硬化型樹脂が好ましい。光硬化性樹脂には、硬化の反応機構が異なる樹脂同士を含む、2種類以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0014】
ラジカル反応硬化型樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びビニルエステル樹脂が挙げられる。ここで本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリル及び/又はアクリルを意味し、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。また、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂中の全てのエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応している樹脂を意味する。部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂中の一部のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応している樹脂を意味し、すなわち、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリル基を有する。好ましいラジカル反応硬化型樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びビニルエステル樹脂であり、より好ましくは(メタ)アクリル樹脂である。ここで、(メタ)アクリル樹脂として、具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;(水添)ポリイソプレン(メタ)アクリレート、(水添)ポリブタジエン(メタ)アクリレート、UV3630ID80(日本合成化学工業(株)製)のようなポリウレタンアクリレートなどの(メタ)アクリレート変性オリゴマー又は(メタ)アクリレート変性ポリマーが挙げられる。
【0015】
カチオン反応硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、ビニルエーテル樹脂、及びポリスチレン系樹脂が挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂、及びオキセタン化合物である。
【0016】
アニオン反応硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シアノアクリレート系樹脂、オキセタン化合物、ポリスチレン系樹脂、及びポリエチレン系樹脂が挙げられる。好ましくは、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シアノアクリレート系樹脂、及びポリスチレン系樹脂であり、より好ましくは、シアノアクリレート系樹脂、及びポリスチレン系樹脂である。
【0017】
重縮合・重付加反応硬化型樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びシリコーン樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びシリコーン樹脂であり、より好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びシリコーン樹脂である。
【0018】
光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が好ましく用いられる。光硬化性樹脂は、(メタ)アクリル基を有する化合物及び/又はエポキシ基を有する化合物を含むことが好ましく、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂が好ましい例として挙げられる。
【0019】
エポキシ樹脂の種類は、特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等も使用することができる。多官能エポキシ樹脂も使用することができ、例えば、三官能及び四官能エポキシ樹脂等が挙げられる。また、特開2012−077202号公報記載のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0020】
(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応により得ることができる。具体的には、エポキシ樹脂に所定の当量比の(メタ)アクリル酸と触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)と、重合禁止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)を添加して、例えば80〜110℃でエステル化反応を行うことにより、エポキシ基の全部又は一部を(メタ)アクリル化することができる。原料となるエポキシ樹脂は、特に限定されず、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等も使用することができる。多官能エポキシ樹脂も使用することができ、例えば三官能及び四官能エポキシ樹脂が挙げられる。また、特開2012−077202号公報記載のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0021】
部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、樹脂中の(メタ)アクリル基とエポキシ基との合計モル数に対して、(メタ)アクリル基の割合が10〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜60モル%である。部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、好ましくは一分子中にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを、それぞれ1個以上含有する化合物を含む。
【0022】
(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル及び/又はアクリル基を有する樹脂であれば、特に限定されず、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル樹脂として、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを使用することができ、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等)、ポリオール(メタ)アクリレート(グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等)、アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート(例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル樹脂として、脂環式(メタ)アクリレートを使用することができ、例えばシクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単環式(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等の2環式(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の3環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル樹脂として、ポリイソプレン、ポリブタジエン及びポリウレタンから選択される少なくとも1種を骨格に含む(メタ)アクリレートを使用することができる。ポリイソプレンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品として、例えば、クラレ社製の「UC−1」(重量平均分子量25000)が挙げられ、ポリブタジエンを骨格に含む(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品として、例えば、日本曹達社製の「TE2000」(重量平均分子量2000)が挙げられ、ポリウレタンを骨格に含む(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品として、例えば、ライトケミカル社製の「UA−1」が挙げられる。
【0026】
光硬化性樹脂は、単独でも、2種以上を併用してもよく、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を含むことが好ましく、例えば部分(メタ)アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0027】
光硬化性樹脂は、特に透明基板の貼り合わせ用途等の場合には、それ自体光透過性であることが好ましい。本発明においては、光硬化性樹脂組成物の内部で光開始剤や蛍光剤がより効率よく光を吸収できるよう、特に紫外線領域の光を吸収しないことが好ましい。
【0028】
[光開始剤]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、エタノール中10ppm溶液の光路長10mmにおける吸光度が390〜420nmの範囲で0.01以上である光開始剤を含む。このような光開始剤を用いることで、蛍光剤の発光を効果的に利用することができ、遮光部の硬化性がより向上する。光開始剤は、エタノール中10ppm溶液の光路長10mmにおける吸光度が390〜420nmの範囲で0.015以上であることがより好ましい。
【0029】
光開始剤の吸光度の測定方法は、以下のようにして行う。すなわち、エタノール中10ppmの光開始剤溶液を調製し、光路長10mmの2面透過石英セル(東ソー・クォーツ社製T−5−UV10)を用いて、分光光度計(日本分光社製V−570)で吸光度を測定する。得られた吸光度の値を1nm毎に読み取り、表記範囲内における平均値を取ることで、吸光度を算出する。
【0030】
光開始剤の種類は、特に限定されず、例えば、光ラジカル重合開始剤として、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、チタノセン類、オキシムエステル類、ベンゾインエーテル類、チオキサントン類、アントラキノン類が挙げられる。
【0031】
具体的には、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、エチルアントラキノン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を例示できる。EYレジンKR−2(ケイエスエム社製)等も使用することができる。
【0032】
光開始剤は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。光開始剤の添加量は、光硬化性樹脂組成物全体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましい。また、光開始剤の添加量は、光硬化性樹脂組成物全体100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが更に好ましい。光開始剤の添加量をこのような範囲とすることで、樹脂内部への光の浸透を妨げず、光学透明部材の貼り合わせに適した透明性を付与することができる。
【0033】
[蛍光剤]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、アセトニトリル中1ppm溶液の光路長10mmにおける蛍光発光強度が390〜450nmの範囲で20以上である蛍光剤を含む。このような蛍光剤を用いることで、光開始剤を効率的に反応させることができ、遮光部の硬化性を向上することができる。蛍光剤は、アセトニトリル中1ppm溶液の光路長10mmにおける蛍光発光強度が390〜450nmの範囲で40以上であることがより好ましい。
【0034】
蛍光発光強度の測定方法は、以下のようにして行う。すなわち、アセトニトリル中1ppmの蛍光剤溶液を調製し、光路長10mmの5面透過石英セル(東京硝子器械社製Fine石英セルNo.43)を用いて、蛍光測定装置(島津製作所社製RF−5300PCC、低感度モード)で蛍光発光強度を測定する。得られた蛍光発光強度の値を1nm毎に読み取り、表記範囲内における平均値を取ることで、蛍光発光強度を算出する。
【0035】
また、蛍光剤は、アセトニトリル中10ppm溶液の光路長10mmにおける吸光度が、350〜400nmの範囲で1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。蛍光剤の吸光度をこのようにすることで、光学透明部材の貼り合わせに適した透明性を保ったまま遮光部の硬化性を向上することができる。蛍光剤の吸光度は、光開始剤について行った測定方法を、アセトニトリル中10ppm溶液を用いて行うことで測定することができる。
【0036】
蛍光剤は、蛍光発光強度に関する上記要件を満たす限りその種類に特に制限はない。好ましい蛍光剤としては、下記式(1):
【化3】
(式中、
R
1は、水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基であり、
R
2及びR
3は、各々独立して、水素、ヒドロキシ、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、フェニル基、アミノ基、−C(=O)R基、−NH−C(=O)R基又は−R’−OC(=O)NHR基(ここで、Rは、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基又はフェノキシ基であり、R’は、直接結合又は炭素数1〜10のアルキレン基である)である)
で示される化合物が挙げられる。
【0037】
より好ましい態様では、蛍光剤は、上記式において、R
1が炭素数1〜10のアルキル基であり、R
2及びR
3が、各々独立して、炭素数1〜3のアルコキシ基である化合物である。
【0038】
蛍光剤として好ましい、上記式で示される化合物の例としては、BASF社製Lumogen F Violet570が挙げられる。
【0039】
また、好ましい蛍光剤の別の例としては、下記式(2):
【化4】
(式中、
R
4及びR
5は、各々独立して、炭素数1〜18のアルキル基であり、好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数6〜10のアルキル基である)
で示される化合物が挙げられる。
【0040】
蛍光剤として好ましい、上記式で示される化合物の例としては、川崎化成工業社製AnthracureUVS-581等のAnthracureシリーズが挙げられる。
【0041】
蛍光剤は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。蛍光剤の添加量は、光硬化性樹脂組成物全体100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.003質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることが更に好ましい。また、蛍光剤の添加量は、光硬化性樹脂組成物全体100質量部に対して、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましい。蛍光剤の添加量をこのような範囲とすることで、光学透明部材の貼り合わせに適した透明性を保ったまま遮光部の硬化性をより向上することができる。
【0042】
[その他の成分]
光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、フィラー粒子を含んでいてもよい。フィラー粒子の配合により、粘度制御、光硬化性樹脂組成物を硬化させた後の強度向上、線膨張性の抑制を図ることができる。フィラー粒子には、無機粒子、有機樹脂粒子のいずれも使用することができる。線膨張係数が小さく、硬化収縮率を低減させる観点から、無機粒子が好ましく、硬化時の応力緩和が期待できる点から、有機樹脂粒子が好ましい。フィラー粒子は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0043】
無機粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト、活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられ、シリカ、タルクが好ましい。
【0044】
有機樹脂粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体粒子、ポリエステル粒子、ポリウレタン粒子、ゴム粒子、高いガラス転移温度を有する共重合体を含むシェルと低いガラス転移温度を有する共重合体のコアとから構成されるコアシェルタイプ粒子等が挙げられ、コアシェルタイプ粒子、ゴム粒子が好ましく、コアシェルタイプ粒子がより好ましい。コアシェルタイプ粒子としては、ガンツ化成社製ゼフィアックシリーズ(F351等)が挙げられる。
【0045】
フィラー粒子の粒子径は、特に限定されず、例えば、体積基準の平均粒子径が0.01〜8μmのものを使用することができる。液晶セルのギャップ制御の点から、0.05〜4μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。フィラー粒子は、単独でも、2種以上を併用してもよい。フィラー粒子の体積基準の平均粒子径は、レーザー回折散乱法で測定することができる。
【0046】
フィラー粒子は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対し、60質量部以下での使用が好ましい。無機粒子は、硬化性樹脂100質量部に対し、40質量部以下での使用が好ましく、より好ましくは1〜30質量部である。有機樹脂粒子は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対し、40質量部以下での使用が好ましく、より好ましくは1〜30質量部である。
【0047】
光硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤を含んでいてもよい。カップリング剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。シランカップリング剤としてはγ−アミノプロピルトリメトキシシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0048】
カップリング剤の量は、光硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0049】
光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、遮光剤(カーボンブラック等)、ラジカル重合禁止剤(BHT:ジブチルヒドロキシトルエン等)、チキソ付与剤、エラストマー、反応性希釈剤、連鎖移動剤、硬化促進剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の添加剤を含むことができる。
【0050】
光硬化性樹脂組成物に可塑剤を配合することで、光硬化性樹脂組成物の粘度や、硬化後の機械的物性を調整することができる。配合される可塑剤としては、フタル酸エステル類、非芳香族2塩基酸エステル類、シクロヘキサンジカルボン酸エステル類、脂肪族エステル類、リン酸エステル類、炭化水素系油、プロセスオイル類、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられ、公知のものを利用可能である。この他に、可塑剤の具体例としては、Hexamoll DINCH(登録商標)(BASF)として市販されているシクロヘキサンジカルボキシレートが、安全性の高いものとして知られている。
【0051】
光硬化性樹脂組成物を調製する方法は、特に限定されず、例えば各成分を混合することにより調製することができる。混合には、例えば、プラネタリーミキサー、三本ロールミル等の混合装置を用いることができる。
【0052】
光硬化性樹脂組成物を硬化する方法は、光硬化性樹脂組成物の硬化反応が進行する領域の光を照射するものであれば特に制限されず、光源の種類、照射波長、強度、光量等は配合する硬化性樹脂剤の種類等によって、適宜、公知の方法から選択することができる。例えば、メタルハライド等によって、1000〜6000mJ/cm
2の紫外線を照射することができるが、これに限定されない。
【0053】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、液晶表示装置の基材同士を接着するための接着剤とすることができる。基材としては特に、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、光学式等の各種タッチパネル及びその部品となる透明電極を形成した透明基板や透明板、アイコンシート等の表示体、タッチパネルの視認側に配されるガラス又はアクリル製の前面板、タッチパネル上に配される化粧板等を選択することができ、本発明の光硬化性樹脂組成物はこれら基材同士の接着に用いる接着剤の成分とすることができる。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物を含む接着剤は、液晶表示装置を液晶滴下工法で作製する場合のシール剤としても用いることができる。液晶滴下工法では、一方の基板上にシール剤の枠を形成し、その中に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることによって液晶が封止される。この際の基板同士の貼り合わせに、本発明の光硬化性樹脂組成物を含む接着剤をシール剤として用いることができる。本発明の光硬化性樹脂組成物を含む接着剤又はシール剤成分は、光により遮光部を含む深部まで硬化し、また硬化後も透明かつ柔軟である。このため、本発明の光硬化性樹脂組成物は液晶表示装置等の接着又はシーリングに好ましく用いることができる。本発明の光硬化性樹脂組成物で基材同士を接着した、又は本発明の光硬化性樹脂組成物をシール剤とした液晶表示装置もまた、本発明の一態様である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表示は、特に断りがない限り、質量部、質量%である。
【0055】
以下の実施例及び比較例で表記する材料には、次に示す材料を用いた。
UV3630ID80(日本合成化学工業(株)製;紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、イソデシルアクリレート20%希釈品)
4−HBA(大阪有機化学工業(株)製)
LA(共栄社化学社製;ライトアクリレート)
DINCH(BASF社製;可塑剤Hexamoll DINCH)
I−189(BASF社製;エネルギー開裂型開始剤)
UVS−581(川崎化成工業株式会社製;蛍光剤AnthracureUVS-581)
LumogenF Violet570(BASF社製;蛍光剤)
ビフェニル(東京化成工業株式会社製)
エチル−p−ジメチルアミノベンゾアート(東京化成工業株式会社製)
1,4−ビス(4−アミノベンゾアート)ブタン(東京化成工業株式会社製)
【0056】
[実施例1]
UV3630ID80を50質量部、4−HBAを5質量部、LAを10質量部、DINCHを35質量部、光開始剤としてI−819を0.5質量部、及び蛍光剤としてUVS−581を0.05質量部、混合して光硬化性樹脂組成物を得た。なお、光開始剤I−819の390〜420nmでの吸光度の平均値は0.017である。また、UVS−581の350〜400nmでの吸光度の平均値は0.10であり、390〜450nmでの蛍光発光強度の平均値は42である。
【0057】
[実施例2]
蛍光剤として、UVS−581に代えてLumogenF Violet570を用いた以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。LumogenF Violet570の350〜400nmでの吸光度の平均値は0.29であり、390〜450nmでの蛍光発光強度の平均値は165である。
【0058】
[比較例1]
蛍光剤を配合しなかった点以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0059】
[比較例2]
蛍光剤として、UVS−581に代えてビフェニルを用いた以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。ビフェニルの350〜400nmでの吸光度の平均値は8.0×10
−5であり、390〜450nmでの蛍光発光強度の平均値は0.3である。
【0060】
[比較例3]
蛍光剤として、UVS−581に代えてエチル−p−ジメチルアミノベンゾアートを用いた以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。エチル−p−ジメチルアミノベンゾアートの350〜400nmでの吸光度の平均値は3.0×10
−3であり、390〜450nmでの蛍光発光強度の平均値は1.8である。
【0061】
[比較例4]
蛍光剤として、UVS−581に代えて1,4−ビス(4−アミノベンゾアート)ブタンを用いた以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。1,4−ビス(4−アミノベンゾアート)ブタンの350〜400nmでの吸光度の平均値は2.0×10
−3であり、390〜450nmでの蛍光発光強度の平均値は0.2である。
【0062】
[硬化性の評価]
片面に遮光印刷処理がされた、厚さ0.7mm、大きさ50mm四方のガラス基板上に、厚さ150μmのスペーサーを配置し、光硬化性樹脂組成物を印刷処理がされた側に塗布した。その後、遮光印刷付きアクリル板(携帯電話用アクリル板、市販)を遮光印刷面が光硬化性樹脂組成物側になるように貼り合わせて、遮光印刷付きのアクリル板の上から紫外線照射機(アイグラフィック社製紫外線照射機、200mW/cm
2、350nm)を用いて、6000mJ/cm
2の紫外線を照射した。
紫外線の照射後にガラス基板を剥がし、剥離面を有機溶剤で洗浄することで、未硬化樹脂を洗い流した。その後、遮光印刷付きアクリル板の透明部と遮光部の境界から遮光部に向かって光硬化性樹脂組成物が硬化している距離(mm)を、マイクロスコープ(KEYENCE社製、UHX−500)を用いて測定し、硬化性(mm)とした。試験及び評価方法の概略図を
図1に示す。
図1におけるdが、光硬化性組成物が硬化している距離となる。各々の光硬化性樹脂組成物の組成と、硬化性の測定結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から、実施例1及び2で用いた蛍光剤を有する光硬化性樹脂組成物は、光が直接照射されていない部位まで光による硬化反応が十分に進行していることが示された。一方、比較例2〜4で用いた蛍光剤を有する光硬化性樹脂組成物の場合は、蛍光剤が含まれない場合(比較例1)と同程度の硬化性しか示さなかった。