特許第6643602号(P6643602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643602
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20200130BHJP
   A61B 3/103 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   A61B3/16 300
   A61B3/103
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-175264(P2015-175264)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-51213(P2017-51213A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】山本 重義
(72)【発明者】
【氏名】辺 光春
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−047003(JP,A)
【文献】 特開2013−230303(JP,A)
【文献】 特開2005−160548(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0293837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼圧検査を含む少なくとも2つの眼特性を検査する眼科装置であって、
前記少なくとも2つの眼特性を検査する検査光学系を備え、
前記検査光学系は、前記少なくとも2つの眼特性を検査するときに使用される見口部であって、前記検査光学系のうち、前記見口部以外の前記検査光学系に対して独立して回転可能である前記見口部を備え、
前記見口部は、前記眼圧検査をするときにのみ使用される第1光学素子、及び、前記眼圧検査とは異なる検査をするときにのみ使用される第2光学素子を備え、
前記第1光学素子、及び、前記第2光学素子は、前記見口部を通過する光の光路を変更せず、
前記見口部を回転させることで、前記少なくとも2つの眼特性の検査を切り替えることができる、眼科装置。
【請求項2】
前記見口部には、前記眼圧検査をするときに、前記見口部の外部から空気が流入する流入穴が設けられており、
前記見口部は、前記流入穴の中心軸を回転軸にして回転する、請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの眼特性を検査するための観察光学系は共通であることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの眼特性を検査するための指標光学系(固視光学系)は共通であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの眼特性を検査するためのアライメント光学系は共通であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼圧検査を含む少なくとも2つの眼特性を検査する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の複数の眼特性の検査を行う眼科装置として、眼圧を非接触にて測定する眼圧測定部と、眼屈折力を測定する眼屈折力測定部とを有し、それらを切り替えて測定を行うものが、例えば特許文献1や2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された構成は、眼圧測定部と眼屈折力測定部を上下方向に積層配置して構成している。また眼圧測定時の作動距離は、眼屈折力測定時と比較して短い。つまり、眼圧測定では測定部がより被検眼に近い状態で測定が行われる。よって上記構成の場合、測定の切替時には、眼圧測定部と眼屈折力測定部とを切り替えるための上下方向の移動に加えて、前後方向(作動距離を変更する方向)の移動が必要であり、切替時間が長くなる。
【0004】
特許文献2に開示された構成は、特許文献1に係る課題に対する解決方法を開示したものである。すなわち、異なる眼特性を検査するための第一検眼部(例えば眼圧検査)および第二検眼部(例えば眼屈折力検査)を備え、2つの検眼部で共通に使用される光学素子(実施例ではミラー)を含んだ切替部を回転させて該光学素子の向きを変更して第一検眼部または第二検眼部への光路を切替る構成が開示されている。このような構成とすることにより、検眼切替時間や検眼時間の短縮が可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−289663号公報
【特許文献2】特開2013−230303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された構成では、回転する切替部に配置された共通で使用される光学素子、例えば、ミラーが切替部の回転に伴い向きが変更されて、光路が切替わり、これにより、第一検眼部である眼圧検査と第二検眼部である眼屈折力検査を切替えるとしている。すなわち、ミラーの中心を回転軸として切替部を回転させている。
【0007】
しかしながら、切替部が回転可能であるということは、切替部が光学系本体からフリーな状態であることを意味し、このような場合、切替部と光学系本体に隙間を設ける必要がある。このため、上述のように共通で使用される光学素子であるミラーの中心を回転軸として切替部を回転させる特許文献2に開示された構成は、該共通で使用されるミラーの位置ずれを発生させる危険を孕み、これにより、測定光軸がずれて目的とする眼特性検査の精度を劣化させてしまうという恐れがある。
【0008】
また、特許文献2に開示した切替部は、眼圧検査用の空気の導入部も含まれるため、眼圧検査用の空気路も移動する。眼圧検査の場合、眼圧検査時に被検眼に向けて噴出する空気量が安定している必要がある。空気路が回転により移動してしまうと噴出する空気量に影響を与え、そのため、特許文献2に開示された構成では、眼圧検査の精度が劣化してしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の眼科装置は、眼圧検査を含む少なくとも2つの眼特性を検査する眼科装置であって、眼特性を検査する検査光学系に対して独立して回転可能な見口部を備え、少なくとも2つの眼特性を検査する検査光学系の内1つを選択するための光学素子は見口部外に配置されていることを特徴とする。
【0010】
以下に詳述するように、(特許文献2に開示した切替部に相当する)本発明に係る見口部には、特許文献2に開示された切替部のように第一検眼部と第二検眼部で共用されて光路を変更する光学素子を有しない。そのため、本発明に係る見口部を回転させて眼特性の検査を切替える際に、見口部内では光路を変更しない。つまり、見口部のみ回転して検査を切替えることから、見口部の回転による光軸ずれを抑えつつ、簡易に検査を切替えることが可能である。
【0011】
上記課題を解決するために、請求項2に記載の眼科装置は、請求項1の眼科装置であって、見口部は眼圧検査のための空気の経路を回転軸として回転することを特徴とする。
【0012】
眼圧用の空気路を回転軸にして見口部を回転させることにより、見口部が回転しても眼圧用の空気路は移動しないため、眼圧検査時において、被検眼に向けて安定した空気量を噴出可能となり、精度の劣化を防止可能である。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項3に記載の眼科装置は、請求項1又は2に記載の眼科装置であって、眼圧検査を含む少なくとも2つの眼特性を検査するための観察光学系は共通であることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、請求項4に記載の眼科装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の眼科装置であって、眼圧検査を含む少なくとも2つの眼特性を検査するための指標光学系(固視光学系)は共通であることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項5に記載の眼科装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置であって、眼圧検査を含む少なくとも2つの眼特性を検査するためのアライメント光学系は共通であることを特徴とする。
【0016】
観察光学系や指標光学系、アライメント光学系は眼特性を検査する際には、必須の構成である。検査する眼特性によっては、共有して使用することも可能である。このような場合、これら光学系のいずれかを共通して使用できるように全体の光学系を構成することにより光学系全体をコンパクトにすることが可能であり、装置の小型化やコストの削減が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、眼特性の検査を切替える際に生じやすい光軸ずれや眼圧検査用の空気量の変動を抑えつつ、かつ、簡易な構成を採用することにより、眼圧検査を含む少なくとも2つの眼特性の検査の切替が迅速に実施可能になり、検査時間も短縮され、患者負担が低減できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例に係る眼科装置の光学系(眼圧検査時)の概略構成図である。
図2】本発明の一実施例に係る眼科装置の光学系(眼屈折力検査時)の概略構成図である。
図3】本発明の一実施例に係る見口部の詳細を説明する図である。
図4】本発明の一実施例に係る眼科装置の制御系のブロック図である。
図5】本発明の一実施例に係る眼科装置の操作フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
以下、本発明の一実施例に係る眼科装置について図面を参照して説明する。
[一実施形態]
図1、2には本発明に係る眼科装置1の光学系の詳細を説明した図である。図1は眼圧検査時における光学系を示す図であり、図2は眼屈折力検査時における光学系を示す図である。そして、図3は本発明のポイントである見口部の詳細を説明する図であり、図4は制御系を含めた本発明の一実施例に係る眼科装置の全体構成を説明するブロック図である。これら図1から4を用いて本発明の一実施例に係る眼科装置について以下に説明する。
【0020】
眼科装置1は図4に示すように、被検眼を検査するための光学系が配置されたヘッド部とヘッド部の中の光学系などを制御し、撮影された前眼部の画像や検査結果を表示するモニタなどを備えた本体部で構成される。検査時はヘッド部を本体部に対してXYZ(左右、上下、前後)方向に移動して被検眼の検査を実施する。
【0021】
(眼圧検査光学系)図1には被検眼の眼圧検査時における全体光学系(眼圧検査光学系)を示す。眼圧検査光学系は、光源101からプロファイルセンサ107、108で構成されるアライメント光学系100、光源301、302から2次元撮像素子(CCD)306で構成される観察光学系300、光源401からミラー404で構成される固視光学系400及び光源201からノズル205、平面ガラス206で構成される被検眼の角膜の変形度合いを検出する変位変形検出受光光学系200から構成される。図1に示すように眼圧検査光学系を構成する各光学系はその一部が共有される構成になっている。そして、見口部は回転されて、眼圧検査のためのノズル205が配置される。
【0022】
(アライメント光学系100)アライメント光学系100は、光源101からの光がホットミラー102で反射され、対物レンズ103を通り、ホットミラー104で反射された後、平面ガラス206及びノズル205の開口部を通り被検眼Eの角膜に照射する。本実施例では、光源101は赤外光を出力するLEDが採用されている。
【0023】
角膜で反射された光は主光軸O1に対して対称的に配置された第1の検出部であるレンズ105及びプロファイルセンサ107、第2の検出部であるレンズ106及びプロファイルセンサ108で受光される。プロファイルセンサ107及びプロファイルセンサ108で得られた信号は本体部の制御装置600で処理され、XYZ駆動制御630によりヘッド部を被検眼に対してXYZアライメント(微調整)を実施する。後述するが、被検眼に対するヘッド部のアライメントは、モニタ650に表示された前眼部画像のアライメント光による輝点を検者が見て本体部に備えたジョイスティック640を操作して粗アライメントし、輝点が所定の範囲に入るとXYZ駆動制御630によりXYZのオートアライメントを実施するように制御される。
【0024】
(観察光学系300)
観察光学系300は、ヘッド部の被検眼側に配置された光源301及び光源302により被検眼の角膜部を含む前眼部領域を照射し、対物レンズ303、結像レンズ305及び2次元撮像素子(CCD)306により、被検眼の前眼部画像を取得して、取得した被検眼の前眼部画像をモニタ650に表示する。光源301及び光源302は赤外光を出力するLEDが採用されるが、アライメント用の光源101より短波長の光を採用する。そのため、ホットミラー104は観察用の光(観察光)は透過し、アライメント用の光(アライメント光、光源101からの光)は反射する。また、ダイクロイックミラー304は、観察光は透過するように反射/透過の波長領域が設定されている。これにより、アライメント光と観察光は適切に分割され、各々の測定を可能にしている。
【0025】
(固視光学系400)
固視光学系400は、光源401からの光(固視光)をホットミラー402で反射し、リレーレンズ403を通り、反射ミラー404で反射した後、ホットミラー506を透過し、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通り、対物レンズ303、ホットミラー104を通って、被検眼の網膜上で結像する。そのため、光源401と被検眼の網膜位置は略共役であることが望ましい。被検眼は固視光に基づいて固視され、眼圧検査などの眼特性の検査が可能になる。光源401は被検者が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0026】
(変位変形検出受光光学系200)
変位変形検出受光光学系200は、光源201からの光(変形検出光)の一部がハーフミラー202を透過後、ホットミラー102、対物レンズ103を透過し、ホットミラー104で反射して主光軸O1を通り、平面ガラス206、ノズル205の開口部を通って、被検眼の角膜に照射する。角膜に照射した光は角膜で反射し、逆の経路で、ノズル205の開口部、平面ガラス206を通過し、ホットミラー104で反射して対物レンズ103、ホットミラー102を通り、その一部がハーフミラー202で反射され、集光レンズ203により、受光素子25で受光される。後述するが、眼圧検査時は、ノズル205から圧縮された空気が被検眼の角膜に向けて噴射される。空気が噴射されると角膜は変位変形するため受光素子25で受光する光量が変化する。この光量の変化の度合いから被検眼の眼圧値を算出するのである。光源201も赤外光を出力するLEDが採用されるが、観察光より長波長で、かつ、アライメント光より短波長を光が選択され、採用される。このように、アライメント光、観察光、固視光、変形検出光(光源201からの光)の波長が設定され、ホットミラー102、104、506、402及びダイクロイックミラー304の反射/透過特性を適宜設定することにより、これら4つの光が適切な光路に沿って進むように構成されているのである。
【0027】
(眼屈折力検査光学系)
図2には被検眼の眼屈折力検査時における全体光学系(眼屈折力検査光学系)を示す。眼屈折力検査光学系は、光源101からプロファイルセンサ107、108で構成されるアライメント光学系100、光源301、302から2次元撮像素子(CCD)306で構成される観察光学系300、固視標512から光源514及びリレーレンズ403、ミラー404で構成される固視光学系400及び光源501から平面ガラス511で構成される被検眼の眼屈折力を検出する眼屈折力光学系500から構成される。図2に示すように眼屈折力検査光学系を構成する各光学系はその一部が共有される構成になっている。そして、見口部は回転されて、眼屈折力検査のための平面ガラス510及び511が配置される。
【0028】
アライメント光学系100と観察光学系300は上述の眼圧検査時と同じであるので、ここでは、説明を省略する。固視光学系400は、眼圧検査時とは一部異なるため、以下に説明する。
【0029】
(固視光学系400:眼屈折力検査)
眼屈折力を検査する場合は、眼圧検査時に用いた光源401を消灯して、別の光源である光源514を点灯する。光源514からの光はコリメータレンズ513で平行光とし、固視標512に照射する。そして、固視標からの光はホットミラー402、リレーレンズ403を透過した後、ミラー404で反射し、ホットミラー506を透過して、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通り、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511、510を透過して、被検眼の網膜上で結像する。そのため、固視標512と被検眼の網膜位置は略共役であることが望ましい。被検眼は固視標512に基づいて固視される。眼屈折力を検査する際は、一度、固視標と被検眼の網膜位置が略共役になるように固視標部(固視標512、コリメータレンズ513及び光源514)を移動制御して被検眼を固視させ、その後、所定距離移動して雲霧状態にしてから、眼屈折力を検査する。そのため、制御装置600からの信号により固視標部は光軸に沿って前後に移動可能となっている。光源514は光源401より短波長である被検者が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0030】
(眼屈折力光学系500)
眼屈折力光学系500は光源501からの光(レフ光)が集光レンズ502で集光し、ミラー503で反射して穴あきミラー504の中心にある穴を通り、光軸O2に対して斜めに配置し、図示しない駆動部により光軸O2を中心に回転する平行平面ガラス505を透過した後、ホットミラー506及びダイクロイックミラー304で反射して光軸O1を通り、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511及び平面ガラス510を透過して被検眼Eの網膜に照射する。そして、被検眼Eの網膜からの反射光は、照射時とは逆の経路で、平面ガラス510、平面ガラス511、ホットミラー104及びホットミラー506を透過し、ダイクロイックミラー304及びホットミラー506で反射して光軸O2を通り、平行平面ガラス505を透過した後、穴あきミラー504で反射し、レンズ507を透過後リングレンズ508により、2次元撮像素子(CCD)509でリング状に結像(リング像)する。光源501は、アライメント光(光源101)や観察光(光源301及び302)より長波長の赤外光が採用されている。本実施例では、波長870nmのSLD(スーパールミネッセントダイオード)を採用しているが、これに限定するものではなく、光源101などに採用したLEDやレーザーダイオード(LD)を採用してもよい。
【0031】
ここで、平行平面ガラス505は被検眼Eの瞳孔に共役となる位置に配置されている。レフ光(光源501からの光)は、光軸O2に対して斜めに配置した平行平面ガラス505に入射すると屈折して光軸O2に対して所定距離(例えばΔH)ずれる。上述のように、平行平面ガラス505は光軸O2を中心に回転するため、平行平面ガラス505を透過したレフ光は平行平面ガラス505の位置で、半径ΔHで回転する。平行平面ガラス505は被検眼Eの瞳孔位置と共役な位置に配置されているため、被検眼Eの瞳孔位置で所定(一定)の半径(例えばΔh)で回転しながら被検眼の網膜上に照射する。このため、レフ光は被検眼Eの網膜上で被検眼Eの眼屈折力に応じた大きさや形状を持つ円状に結像される。CCD509は被検眼Eの網膜と共役の位置に配置されているため、CCD509で取得したリング像を解析することにより、被検眼の眼屈折力を求めることができるのである。
【0032】
(見口部)ここで、本発明の特徴である見口部について図3を参照して説明する。図3は本実施例の見口部の詳細を説明する図である。(a)と(c)は眼圧検査時、(b)と(d)は眼屈折力検査時の見口部を、横から見た断面図((a)及び(b))と被検眼Eから見た図((c)及び(d))である。見口部は眼圧検査時に配置されるノズル205及び平面ガラス206と眼屈折力検査時に配置される平面ガラス510及び511で構成され、図3に示すように、眼圧検査時にノズル205から噴出する空気を送る空気路を中心軸にして、見口部の左右に配置された回転機構部により空気路に対して垂直方向に回転するように構成されている。そして、図3(c)のように、見口部の空気路は配管を介してシリンダーに接続される。眼圧検査時は、ソレノイドなどを用いてシリンダー内のピストンを駆動制御することにより、ノズル205に圧縮した空気が流入され、被検眼Eの角膜に向けて空気を噴出するようになっている。
【0033】
図3に示すように、眼圧検査時((a)及び(c))はノズル205及び平面ガラス206が配置され、眼屈折力検査時((b)及び(d))は平面ガラス510及び511が配置されるため、見口部においていずれの光学素子も各検査で共有しない。さらに、検査の変更のための見口部の回転により光路の変更もない。そのため、見口部の回転により見口部内の光学素子に位置ずれが生じた場合であっても、その位置ずれの影響が抑制できるのである。
【0034】
(操作フロー)
図5は本実施例に係る眼科装置の操作フローを説明する図である。尚、本実施例では、第1検査を眼屈折力検査、第2検査を眼圧検査として検査が実施される。
【0035】
S10では、第1検査である眼屈折検査を実施するため、見口部を回転して、図2図3((b)及び(d))に示すように、平面ガラス510及び511を配置する。既に、見口部が眼屈折検査時の状態になっている場合は、S10は省略される。
【0036】
S12で、第1検査である眼屈折検査を開始する。操作フローに記載はないが、この時、観察用の光源301、302、アライメント用の光源101、固視標用の光源514及び眼屈折力検査用の光源501が点灯する。
【0037】
S14で、ジョイスティック640を用いて、患者の右眼がモニタ650に表示されるようにヘッド部を移動する。そして、アライメント光による角膜上の輝点が所定の領域に入るようにヘッド部をXYZ方向に租アライメントする。
【0038】
S16で、固視標512により固視させる。眼屈折検査の場合、この時も眼屈折力を測定しており、得られた眼屈折力の値に基づいて固視標512が被検眼Eの網膜と共役の位置になるように固視標部(512〜514)を移動させる。これにより、被検眼Eは固視される。
【0039】
S18では、プロファイルセンサ107及びプロファイルセンサ108で得られた信号からアライメント状態を検出し、その検出結果から本体内部のXYZ駆動制御630によりヘッド部のXYZアライメントを実施する。
【0040】
XYZアライメントが完了したら、S20で測定を開始する。眼屈折力検査の場合、被検眼を開放状態にするため、固視標部(512〜514)を所定の距離光軸に沿って移動させ、雲霧状態にしてから、眼屈折力の測定を実施する。
【0041】
S22で、測定値をメモリ670に保存する。
【0042】
S24では、左右眼とも測定したかどうかを判断する。右眼のみの場合は、S28で、ヘッド部を左眼側に動かして、右眼と同様S18からS22で左眼の眼屈折力を測定して測定値をメモリ670に保存する。
【0043】
左右眼とも測定を終えたら、S26で、第2検査である眼圧検査が終了したかを判断する。
【0044】
第2検査の眼圧検査が終了していない場合は、S30で、見口部を回転して図1図3((a)及び(c))に示すようにノズル205及び平面ガラス206が配置されるようにする。そして、S32で第2検査である眼圧検査を開始する。ここで、操作フローに記載はないが、眼屈折力検査用の固視光源514は消灯し、代わりに固視光源401が点灯する。
【0045】
S14では、眼屈折力検査と同様、ジョイスティック640を用いて、患者の右眼がモニタ650に表示されるようにヘッド部を移動する。そして、アライメント光による角膜上の輝点が所定の領域に入るようにヘッド部をXYZ方向に租アライメントする。
【0046】
S16で、光源401からの固視光により被検眼Eを固視させる。
【0047】
S18で、眼屈折力検査と同様、プロファイルセンサ107及びプロファイルセンサ108で得られた信号からアライメント状態を検出し、その検出結果から本体内部のXYZ駆動制御630によりヘッド部のXYZアライメントを実施する。
【0048】
XYZアライメントが完了したら、S20で測定を開始する。上述したように、光源201からの光を被検眼Eの角膜に照射し、その反射光を受光素子204で受光する。そして、図3(c)に示すシリンダー内のピストンが駆動して、シリンダー内で圧縮された空気が配管を介して見口部の空気路に流入し、ノズル205から被検眼Eの角膜に向けて噴出させる。噴出した空気により角膜は変位変形するため、受光素子204で受光する光量が変化(空気の噴出により角膜は平らになるため、受光素子204で受光する光量が増加)する。受光素子204で得られた受光信号が所定の値になるまでの時間を測定し、S22で、その測定値をメモリ670に保存する。眼圧値は、空気を噴出してから受光信号が所定の値になるまでの時間と相関があるため、保存された測定値(時間)から被検眼Eの眼圧値が算出できるのである。
【0049】
そして、S24で眼屈折力検査と同様、左右眼とも測定したかどうかを判断する。右眼のみの場合は、S28で、ヘッド部を左眼側に動かして、右眼と同様S18からS22で左眼の眼圧検査を実施してその結果をメモリ670に保存する。
【0050】
左右眼とも測定を終えたら、S26で、第2検査である眼圧検査が終了したかを判断する。第2検査である眼圧検査が終了したら測定は終了する。
【0051】
尚、上記実施例では、第1検査を眼屈折力検査、第2検査を眼圧検査としたが、これに限定するものでななく、逆であってもいい。また、第1検査と第2検査は必ずしも両方実施する必要はなく、一方の検査のみ実施してもよい。必要とする検査を適宜設定し、検査を実施すればよいのである。さらに、本実施例では、右眼から検査を実施しているが、これも、左眼から実施してもよいし、一方の眼のみ検査してもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0053】
上記実施例では第1検査に眼屈折力検査を実施する構成を開示したが、第1検査はこれに限定されるものではない。例えば、見口部の被検眼E側に複数の光源を所定の半径を持つ円周上に配置して、被検眼Eの角膜上に複数の光を円周状に照射し、観察光学系の2次元撮像素子(CCD)306により、角膜に照射された複数の輝点から角膜の曲率半径を測定するケラト光学系を配置してもよい。さらに、眼屈折力光学系にケラト光学系を追加して、第1検査時に、眼屈折力検査とケラト検査を実施可能に構成してもよい。また、ケラト光学系の代わりに角膜形状を検査するトポコーンを配置することにより、ケラト値の代わりに角膜形状マップ(トポマック)を生成して、モニタ650に表示させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
100・・アライメント光学系200・・変位変形検出受光光学系300・・観察光学系400・・固視光学系500・・眼屈折力光学系600・・制御装置630・・XYZ駆動制御650・・モニタ
図1
図2
図3
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図5