【実施例】
【0015】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0016】
先ず、
図1に、本発明における角膜撮影装置の一実施形態としての装置光学系10を示す。装置光学系10は、被検眼Eの前眼部を観察する観察光学系12を挟んで、一方の側に撮像照明光学系14および位置検出光学系16が設けられ、他方の側に位置検出照明光学系18および撮像光学系20が設けられた構造とされている。なお、特に本実施形態においては、撮像照明光学系14および位置検出照明光学系18を含んで、照明光学系が構成されている。
【0017】
観察光学系12は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、対物レンズ24、ハーフミラー26、コールドミラー27、および光電素子としてのCCD28が光軸O1上に設けられて構成されている。また、被検眼Eの前方には、複数(本実施形態においては、2つ)の観察用光源30、30が配設されている。観察用光源30、30は、赤外光束を発する例えば赤外LEDなどが用いられる。そして、コールドミラー27は、赤外光を透過せしめる一方、可視光を反射するようにされており、観察用光源30、30から発せられて被検眼Eの前眼部で反射された反射光束が、対物レンズ24およびコールドミラー27を通して、CCD28上で結像されるようになっている。
【0018】
撮像照明光学系14は、被検眼Eに近い位置から順に投影レンズ32、コールドミラー34、スリット36、集光レンズ38、撮像用光源40が設けられて構成されている。撮像用光源40は可視光束を発する例えばLED等が用いられる。コールドミラー34は、赤外光を透過せしめる一方、可視光を反射するようにされている。そして、撮像用光源40から発せられた光束は、対物レンズ38およびスリット36と通して、角膜Cに対して斜め方向から照射されるようになっている。
【0019】
位置検出光学系16は、その光軸の一部が撮像照明光学系14の光軸と一致せしめられており、被検眼Eに近い位置から順に投影レンズ32、コールドミラー34、ラインセンサ44が設けられて構成されている。そして、後述する観察用光源54から照射されて角膜Cで反射された光束が、投影レンズ32、コールドミラー34を通して、ラインセンサ44上に結像されるようになっている。
【0020】
一方、位置検出照明光学系18は、被検眼Eに近い位置から順に対物レンズ46、コールドミラー48、集光レンズ52、および位置検出用光源としての観察用光源54が設けられて構成されている。観察用光源54は、例えば赤外LEDなどの赤外光源が好適に採用される。そして、観察用光源54から発せられた赤外光束が、角膜Cに対して斜めから照射されるようになっている。なお、観察用光源54は、例えばハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源と赤外フィルタを組み合わせることによって構成してもよい。但し、観察用光源54は、必ずしも赤外光源とされる必要は無く、ハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源を用いてもよい。可視光源を用いる場合には、その照度は撮像用光源40の照度よりも小さくされることが好ましい。これにより、アライメント等、観察用光源54による光束を照射せしめる際の被験者の負担を軽減することが出来る。
【0021】
撮像光学系20は、その光軸の一部が位置検出照明光学系18の光軸と一致せしめられており、被検眼Eに近い位置から順に対物レンズ46、コールドミラー48、スリット56、変倍レンズ58、合焦レンズ60、コールドミラー27、CCD28が設けられて構成されている。そして、撮像用光源40から照射されて角膜Cで反射された光束が、対物レンズ46を介してコールドミラー48で反射された後に、スリット56を通過し、変倍レンズ58によって平行光束とされ、合焦レンズ60を介した後に、コールドミラー27で反射されてCCD28上に結像されるようになっている。
【0022】
また、観察光学系12上に設けられるハーフミラー22は、固視標光学系64、アライメント光学系66の一部を構成している。
【0023】
固視標光学系64は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、ピンホール板72、固視標光源74が設けられて構成されている。固視標光源74は例えばLEDなどの可視光を発する光源であり、固視標光源74から発せられた光束は、ピンホール板72、ハーフミラー70を透過した後、投影レンズ68によって平行光束とされて、ハーフミラー22によって反射されて被検眼Eに照射される。
【0024】
アライメント光学系66は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、絞り76、ピンホール板78、集光レンズ80、アライメント光源82が設けられて構成されている。アライメント光源82からは赤外光が発せられるようになっており、かかる赤外光は集光レンズ80により集光されてピンホール板78を通過し、絞り76に導かれる。そして、絞り76を通過した光はハーフミラー70に反射されて、投影レンズ68によって平行光束とされた後に、ハーフミラー22によって反射されて被検眼Eに照射される。
【0025】
また、観察光学系12上に設けられたハーフミラー26は、アライメント検出光学系84の一部を構成している。
【0026】
アライメント検出光学系84は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー26、位置検出可能なアライメント検出センサ88が設けられて構成されている。そして、アライメント光源82から照射されて、角膜Cで反射された光束が、ハーフミラー26で反射されて、アライメント検出センサ88に導かれるようになっている。
【0027】
このような構造とされた装置光学系10は、
図2に示す角膜撮影装置100に収容されている。角膜撮影装置100は、ベース102の上に本体部104が設けられており、かかる本体部104の上にケース106が前後左右および上下動可能に設けられて構成されている。ベース102には、電源装置が内蔵されていると共に、操作スティック108が設けられており、かかる操作スティック108を操作してケース106を駆動せしめることが出来るようにされている。また、本体部104には、後述する各制御回路などが収容されていると共に、例えば液晶モニタなどからなる表示画面110が設けられている。
【0028】
さらに、
図3に示すように、角膜撮影装置100には、ケース106を駆動せしめることによって、装置光学系10を被検眼Eに対して前後上下左右に移動せしめる駆動手段が設けられている。これらの駆動手段は例えばラック・ピニオン機構などによって構成されており、本実施形態においては、装置光学系10を
図3における上下方向のX方向に駆動せしめるX軸駆動機構112、
図3における紙面と垂直のY方向に駆動せしめるY軸駆動機構114、
図3における左右方向のZ方向に駆動せしめるZ軸駆動機構116が設けられている。
【0029】
また、角膜撮影装置100には、装置光学系10による角膜像の撮像の作動制御を行う撮像制御手段としての撮像制御回路117が設けられている。そして、X軸駆動機構112、Y軸駆動機構114、Z軸駆動機構116は、それぞれ、撮像制御回路117に接続されて、撮像制御回路117からの駆動信号に基づいて駆動せしめられるようにされている。また、アライメント検出センサ88は、XYアライメント検出回路118に接続されており、かかるXYアライメント検出回路118は、撮像制御回路117に接続されている。また、ラインセンサ44は、Zアライメント検出回路120に接続されており、かかるZアライメント検出回路120は、撮像制御回路117に接続されている。これにより、アライメント検出センサ88およびラインセンサ44の検出情報が、撮像制御回路117に入力されるようになっている。なお、図示は省略するが、撮像制御回路117は、各照明光源30、40、54、74、82にも接続されており、これらの発光を制御できるようにされている。
【0030】
さらに、角膜撮影装置100には、CCD28が受像した画像が入力されて、かかる画像を取捨選択する画像選択回路122が設けられていると共に、かかる画像選択回路122によって選択された画像を記憶する記憶手段としての記憶装置124が設けられている。
【0031】
次に、このような構造とされた角膜撮影装置100において、撮像制御回路117が実行する角膜内皮の撮像手順の概略を
図4に示し、以降、順に説明する。
【0032】
先ず、S1において、被検眼Eに対して、装置光学系10のX方向およびY方向の位置合わせ(XYアライメント)を行う。かかるXYアライメント時には、固視標光源74から照射された固視標光が被検眼Eに導かれる。そして、被検者にかかる固視標光を固視させることによって、被検眼Eの光軸方向を、観察光学系12の光軸O1の方向と一致させることが出来る。かかる状態下で、観察用光源30、30から照射されて、被検眼Eの前眼部で反射された光束がCCD28上に導かれる。これにより、
図5に示すように、表示画面110上に、被検眼Eの前眼部が表示される。
【0033】
さらに、表示画面110上には、例えばスーパーインポーズ信号などによって生成された、矩形枠形状のアライメントパターン125が、被検眼Eに重ねて表示される。それと共に、アライメント光源82から被検眼Eに向けて照射された光束が、被検眼Eの前眼部で反射されて、CCD28に導かれることによって、表示画面110に、点状のアライメント光126として表示されるようになっている。そして、操作者は操作スティック108を操作することによって、装置光学系10を駆動せしめて、アライメント光126がアライメントパターン125の枠内に入るように、装置光学系10の位置を調節する。
【0034】
また、アライメント光源82から照射されて、被検眼Eの前眼部で反射された光束の一部は、ハーフミラー26で反射されて、アライメント検出センサ88に導かれるようになっている。なお、アライメント光源82からは被検者に認識されない赤外光束が照射されることによって、被検者の負担が軽減されている。ここにおいて、アライメント検出センサ88は、アライメント光126がアライメントパターン125の枠内に入ると、アライメント光126のX方向の位置とY方向の位置を検出することが出来るようにされている。かかるX方向位置とY方向位置は、XYアライメント検出回路118に入力される。XYアライメント検出回路118は、X方向の位置情報に基づいて観察光学系10の光軸O1が被検眼Eの光軸に近づくようにX軸駆動機構112を駆動すると共に、Y方向の位置情報に基づいて観察光学系10の光軸O1が被検眼Eの光軸に近づくようにY軸駆動機構114を駆動せしめる。これにより、装置光学系10の被検眼Eに対するXY方向の位置合わせが行われる。なお、後述するように、かかるXYアライメントは、撮像中も適宜のタイミングで実施される。また、特に本実施形態においては、アライメント光源82と観察用光源30,30を短時間で交互に点滅せしめると共に、アライメント光源82の点灯タイミングに合わせてアライメント検出センサ88による検出が行われるようになっている。これにより、XYアライメントに際して観察用光源30,30の赤外光束が影響を与えることの無いようにされている。なお、アライメント光源82と観察用光源30,30の点滅はCCD28における受光信号への変換速度よりも高速に行われることから、CCD28の受光信号が出力される表示画面110には、両光源82,30が点滅して認識されることはなく、あたかも光源82,30が連続して点灯しているように認識される。
【0035】
次に、S2において、Z軸駆動機構116を駆動せしめて、装置光学系10を、被検眼Eに対して接近する方向に前進作動せしめる。このように、本実施形態においては、S2およびZ軸駆動機構116を含んで、撮像前前進制御手段が構成されている。そして、観察用光源54を発光せしめて、観察用光源54から照射された赤外光束を、被検眼Eの角膜Cに対して斜め方向から照射すると共に、角膜Cから反射された光束を、ラインセンサ44によって受光する。特に本実施形態においては、観察用光源54から照射される光束が赤外光束とされていることから、被検者の負担が軽減されている。
【0036】
そして、観察用光源54からの赤外光束は、角膜Cの上皮細胞や角膜実質、角膜内皮など、角膜Cの各層毎に異なる反射光量をもって反射せしめられる。
図6に概略的に示すように、観察用光源54からの赤外光束Lは、空気と角膜Cとの境界面となる上皮細胞eでまず反射される。また、上皮細胞eを透過した光束の一部は角膜実質sや角膜内皮enで反射される。そして、上皮細胞eで反射された反射光束e’の光量が最も多く、角膜内皮enで反射された反射光束en’の光量は相対的に小さく、角膜実質sで反射された反射光束s’の光量が最も小さくなる。また、前房aは房水で満たされていることから、前房aでは赤外光束Lは殆ど反射されることはない。
【0037】
これらの反射光束は、ラインセンサ44に検出されて、ラインセンサ44には、
図7のような光量分布が検出される。
図7において、光量の最も多い第一ピーク部128は、角膜上皮からの反射光を示す。次に光量の多い第二ピーク部130は、角膜内皮からの反射光を示す。そして、撮像制御回路117は、Z軸駆動機構116を駆動せしめて、ラインセンサ44によって検出された角膜上皮の位置から人眼の生理学的な角膜厚みのばらつきを考慮した所定距離:D1だけ、装置光学系10を角膜Cに接近する方向に前進駆動せしめる。なお、角膜上皮からの移動距離は、例えば1000〜1500μmの範囲内で適宜に設定される。これにより、装置光学系10における撮像光学系20の合焦位置は、角膜Cにおける内皮細胞よりも後方に位置せしめられる。そして、かかる角膜上皮から所定距離:D1だけ後方の位置が、装置光学系10の反転位置とされる。
【0038】
次に、装置光学系10が反転位置に位置せしめられると、S3において、Z軸駆動機構116が反対方向に駆動せしめられて、装置光学系10はZ軸上で被検眼Eから離隔する方向に後退作動せしめられる。このように、本実施形態においては、S3およびZ軸駆動機構116を含んで、反転作動制御手段および撮像時後退制御手段が構成されている。ここにおいて、装置光学系10は、反転位置から後退作動が開始されて、撮像が終了するまでの間に、後退速度が変化せしめられるようになっている。
図8に、装置光学系10の後退作動における移動速度の変化を示す。
【0039】
先ず、前述のように、装置光学系10は、反転位置(
図8中、P1)から、後退作動が開始される。かかる後退作動は、例えば、500μm〜3000μm/sec,より好適には2000μm/sec前後の比較的早い速度で行われる。そして、S4において、角膜内皮細胞位置から所定距離:D
2(
図7参照)だけ後方の位置(
図8中、P2)に到達した時点から、観察用光源30,30を消灯せしめると共に、撮像用光源40の発光を開始する。なお、本実施形態においては、角膜内皮細胞からの所定距離:D
2は、予め定められた、ラインセンサ44によって検出される光量分布が第二ピーク部130よりもやや小さい所定の閾値となる位置からの離隔距離とされている。また、所定距離:D
2の具体値としては、ラインセンサ44の検出精度や被検眼Eの位置ずれ等を考慮して確実に角膜内皮細胞を捉えられるように、或る程度余裕のある値が好ましいが、所定距離:D
2が大きくなると撮像用光源40の発光時間が長くなって、被検者の負担を増加せしめることから、所定距離:D
2は、200〜500μmの範囲内の値が好適に採用される。また、撮像用光源40は、所定の短い間隔で点滅発光せしめられており、かかる撮像用光源40が消灯せしめられたタイミングで、前記S1におけるXYアライメントが同時に行われるようになっている。
【0040】
そして、装置光学系10を比較的速い速度で後退作動せしめつつ、S5において、CCD28によって角膜Cの内皮細胞からの反射光が検出された時点(
図8中、P3)から、装置光学系10の減速が開始される。S5における内皮細胞からの反射光の検出は、例えば、
図9に示すように、CCD28によって撮像された画像132における1本以上(本実施形態においては、5本)の適当な水平線:l
1〜l
5上の画素の輝度値から、所定値以上の輝度値を有する画素の数に基づいて、角膜内皮細胞からの反射光を検出したと判定する。本実施形態においては、画像132における各画素の輝度値を輝度値1〜輝度値255の255階調(輝度値1が最も暗く、輝度値255が最も明るい)で検出し、内皮反射光のムラを考慮して、画像132上の5本の水平線:l
1〜l
5上の各画素の輝度値を検出する。そして、水平線:l
1〜l
5上の各画素において輝度値が25〜255になる画素数をカウントする。なお、輝度値25〜255は、目視で明らかな反射光を認識できる程度の光量である。そして、水平線:l
1〜l
5においてカウントされた画素数の平均値、或いは、水平線:l
1〜l
5においてカウントされた画素数のうちの最大値が、角膜内皮上での距離に換算して略30μmにおける反射光量と対応する位置が減速開始点(
図8中、P3)とされる。
【0041】
そして、S5における減速作動が開始されると共に、S6において、CCD28によって検出される角膜内皮像の連続的撮像が開始される。かかる連続的撮像は、所定の時間間隔(例えば、1/30秒)ごとにCCD28によって受像された撮影像(画像)を画像選択回路122に入力することによって行われる。これにより、時間と位置が異ならされた複数の角膜像が画像選択回路122に入力される。そして、かかる連続的撮像と共に、画像選択回路122によって、入力された画像の取捨選択および記憶装置124への記憶が行われるようになっている。このように、本実施形態においては、S6および画像選択回路122を含んで連続的撮像手段および画像選択手段が構成されている。
【0042】
図9および
図10に、画像選択回路122における画像の取捨選択方法を例示する。先ず、前述のS5における角膜内皮細胞の検出と同様にして、
図9に示すように、CCD28によって取得された画像132における1本以上(本実施形態においては、5本)の水平線:l
1〜l
5上の各画素の輝度値を取得する。
【0043】
【数1】
【0044】
そして、
図10および(式1)に示すように、取得された水平線:l
1〜l
5の各ラインの画素(X
1 〜X
n )に対して、水平線:l
1〜l
5毎にそれぞれ、(式1)に基づいて、(i)隣り合う画素の輝度値差の絶対値を求めて、(ii)当該輝度値差の総和を求める。
【0045】
そして、(式1)に基づいて各水平線:l
1〜l
5ごとに求めた輝度値差の総和の平均値を求める。この値が大きいほど、角膜内皮細胞像がより広い範囲で撮像された画像であると認識される。即ち、
図11および前述の
図6に概略的に示すように、例えば前房aの撮影画像は、房水で照射光束が透過せしめられて、反射光束が殆ど得られないことから、全体的に暗い画像となる。また、角膜実質sの撮影画像は、角膜実質sが透明とされていることから、前房aと同様に照射光束が透過せしめられて、全体的に暗い画像となる。更に、角膜上皮eでは反射光量が多いことから、全体的に一様な明るい画像となる。従って、これらの部位の画像は、隣接する画素の輝度値の差が小さくなる。これに対して、角膜内皮enでは、内皮細胞の中央部分と細胞壁によるコントラストが明確に現れて、隣接する画素の輝度値の差が大きくなることから、角膜内皮細胞enが広範囲に亘って撮像された画像では、輝度値差の総和が大きくなるのである。そこで、かかる水平線:l
1〜l
5ごとに求めた輝度値差の総和の平均値が所定値以上となった画像のみを記憶装置124に記憶せしめることによって、角膜内皮細胞像が有効に得られた画像のみを取捨選択することが出来る。
【0046】
なお、特に本実施形態においては、上記判定を行う前に、所定の水平線(例えば、前記水平線:l
1〜l
5)上において、輝度値が240以上の画素が連続して50μm〜100μm程度の範囲に亘って存在する場合には、かかる画像を排除するようにされている。即ち、画像に角膜上皮の一部が写っている場合、角膜上皮と角膜実質との境界線上で大きな輝度値差が生じる。それ故、角膜内皮細胞との合焦位置が正しく得られない(ピンぼけ)などして、角膜内皮における輝度値差の総和が小さくなった場合に、角膜実質との境界線の影響で輝度値差が大きくなって、角膜上皮が撮像された画像が選択されるおそれがある。従って、上記判断基準を用いることによって、角膜上皮の一部が写った画像を排除出来るようにされている。
【0047】
次に、S5において減速作動が開始されて、後述する比較的遅い速度に達した時点(
図8中、P4)から、装置光学系10はかかる一定の比較的遅い速度で後退作動せしめられる。そして、減速が完了した時点から、更に所定範囲(
図8中、P4〜P6)に亘って、S6における連続的撮像および画像の取捨選択が行われる。なお、かかるP4〜P6の範囲内に、角膜内皮細胞との合焦位置(
図8中、P5)も含まれることとなる。
【0048】
ここにおいて、S5における減速が完了する比較的遅い移動速度は、低速で移動しつつ連続的撮像を行う範囲(
図8中、P4〜P6)とCCD28による画像の取り込み時間や撮像枚数等を考慮して適宜に決定される。例えば、低速で移動して連続的撮像を行う範囲としては、被検眼Eの微動などを考慮して、200μm以上の範囲が好適に採用され得る。そして、CCD28の画像取り込み時間が1枚あたり1/30秒で、連続的撮像の範囲が200μmとすると、10枚撮像する場合には600μm/sec、20枚撮像する場合には300μm/sec、30枚撮像する場合には200μm/sec、40枚撮像する場合には150μm/sec、50枚撮像する場合には100μm/secに設定される。従って、連続的撮像によって確実に角膜内皮撮影像を取得するためには、100〜300μm/secの速度が好適に採用される。このように、本実施形態においては、CCD28による画像取り込み時間が略一定とされて、装置光学系10の移動速度が変化せしめられることによって、連続的撮像による撮像枚数が調節されているが、例えば、装置光学
系10の移動速度を一定にして、S5における角膜内皮からの反射光の検出に基づいて、CCD28による画像取り込み時間の間隔を異ならせることによって、撮像枚数を調節することなどしてもよいし、それら移動速度や取り込み時間の両方を制御する等してもよい。
【0049】
そして、低速移動および連続的撮像の開始位置(
図8中、P4)から、所定距離(例えば、本実施形態においては200μm)だけ後退移動した時点(
図8中、P6)で、S7において、加速が開始されて、装置光学系10は、減速が開始される前の速度にまで加速せしめられる。なお、かかる加速開始位置の決定基準としては、移動距離のみならず、例えば、前述のS5における角膜内皮反射光の検出手順と同様の方法に従って、角膜内皮反射光が検出されなくなった段階で加速を開始したり、撮像開始から所定時間が経過した段階で加速を開始したりしてもよいし、それらを適宜に組み合わせて用いるなどしてもよい。
【0050】
そして、装置光学系10が加速せしめられて、減速が開始される前の比較的速い速度に達すると(
図8中、P7)、S8において、被検眼Eの微動などを考慮して、例えば100μm程度後退せしめられた後に、後退作動を停止すると共に、撮像用光源40を消灯して、撮像を終了する(
図8中、P8)。
【0051】
次に、このような撮影手順によって撮像された角膜内皮細胞画像について、同じ被検者の異なる時間に取得した2つの角膜内皮細胞画像間の位置関係を把握する方法について説明する。
【0052】
過去に角膜内皮細胞画像撮影が行われ、角膜内皮細胞画像及び被験者情報が共に保存された被験者に対して、再度撮影を行う場合を想定する。
【0053】
まず、角膜内皮観察中において、過去に撮影された角膜内皮細胞と同じ部位を特定する。その方法として、角膜内皮が映っているM×Nピクセルの任意の領域を設定しマッチング点を見つける方法がある。また、任意の領域ではなく、過去の撮影において特徴領域をマーカとして設定することにより、マーカを含む領域においてマッチング点を見つけてもよい。特徴領域としては、例えば、細胞の大きさ、形、あるいは細胞群内に点在するグッタータなど、明らかに周囲とは異なる形状、輝度分布を持つものが用いられる。
【0054】
そして、一致部位の特定結果に基づいて、過去において観察され解析された結果の内容を観察画像上にリアルタイムで表示する。
【0055】
具体的には、
図12(a)に示すように、観察画面200上に、特定された領域を枠201で表すことにより、過去に撮影した領域が現在の画面上において認識されていることを表示できる。また、任意の領域を用いずに特徴領域を用いて一致部位を特定した場合は、
図12(b)に示すように、その特定部位の細胞輪郭202のみを強調表示してもよいし、その細胞を彩色表示してもよい。
【0056】
また、特定された注視領域から過去の撮影された領域枠全体を、現在表示されている観察画面上に枠203をもって表示させてもよい。
【0057】
さらに、特定した重畳部位に対して、過去に撮影され解析された角膜内皮細胞輪郭を用いて過去に撮影された画像と観察中の画像との比較を行い、角膜内皮細胞輪郭の変化の度合いを判定する。そして、変化度合いの判定結果を用いて、過去に撮影し解析された情報を観察画像上に表示することもできる。
【0058】
例えば、過去に撮影した画像と観察中画像において、細胞輪郭領域のマッチングが高い場合、すなわち変化度合いが小さい場合、観察画像上に
図12(d)に示すように参考細胞輪郭線204を表示させてもよい。前回の撮影から数年しか経過していない場合には、角膜内皮細胞に大きな変化がないことが一般的であるため、この表示方法が有効となる。
【0059】
またこのとき、過去に撮影した画像の細胞輪郭を用いて表示画面上の過去の撮影領域と一致する重畳領域枠と合わせてその枠内の細胞密度を計算することにより、
図12(e)のように観察画面上に細胞密度205を表示させてもよい。これにより、おおよその細胞密度を観察画面上でリアルタイムに確認することができる。
【0060】
また、
図12(f)に示すように、角膜内皮細胞輪郭を抽出する解析方法ではなく、細胞の内部を1個ずつ指定する解析方法においては、所定の重畳領域において、細胞画像のグレイレベルの相関度合いに応じて、過去に撮影され解析された細胞内点データを異なる色分けで表示させてもよい。
図12(f)の例では、2色で色分けされている。
【0061】
以上に説明したとおり、本実施によれば、過去に角膜内皮画像を撮影済みの被験者に対して、再度角膜内皮画像を撮影する場合において、過去に撮影された画像を用いて、過去の画像取得位置と同一の位置の画像を取得することができるようになるため、経時変化を追尾することが可能となる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。