(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、入力される空間中の位置座標が変化した場合、前記複数個の超音波トランスデューサが出力する超音波について、それら超音波が変化後の位置座標で焦点を結ぶために必要な目標の位相に対応する目標値を算出し、出力している超音波の現在の位相に対応する現在値と目標値とが異なる超音波トランスデューサについて、出力している超音波の位相を前記目標の位相まで、当該超音波トランスデューサが出力する超音波の振動の複数周期毎に1段階ずつ、複数段階で変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波集束装置。
前記制御装置は、入力される空間中の位置座標が変化した場合、前記現在値と前記目標値とが異なる超音波トランスデューサについて、出力している超音波の位相を、出力している超音波の1周期当たりの平均位相変化量をπ/4[rad]以下として、前記目標の位相まで複数段階で変化させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の超音波集束装置。
前記制御装置は、入力される空間中の位置座標が変化した場合、前記現在値と前記目標値とが異なる超音波トランスデューサについて、出力している超音波の位相を、前記目標の位相に一貫して近付くよう、前記目標の位相まで変化させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の超音波集束装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の超音波集束装置1は、指示入力装置10、制御装置20、増幅部30、トランスデューサアレイ40を有している。
【0011】
指示入力装置10は、ユーザの操作等に従って、超音波の焦点の3次元位置座標X、Y、Z、超音波の音圧P、および超音波の変調周波数fを制御装置20に入力する装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、マイクロコントローラ等で実現できる。
【0012】
この指示入力装置10は、インターフェース部11、操作部12、メモリ13、および演算部14を有している。インターフェース部11は、演算部14から制御装置20への信号の入力を媒介するインターフェース回路であり、例えば周知のUSBインターフェースで実現できる。操作部12は、ユーザの操作を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、ジョイスティック等で実現できる。メモリ13は、演算部14が実行するプログラム等が格納されている。また、演算部14が作業領域としてメモリ13を使用する。
【0013】
演算部14は、種々のプログラムを実行して後述の処理を行うことで、インターフェース部11を介して制御装置20に対して、超音波の焦点の3次元位置座標X、Y、Z、超音波の音圧P、および超音波の変調周波数fを入力する。
【0014】
制御装置20は、指示入力装置10から入力された3次元位置座標X、Y、Z、音圧P、および変調周波数fに基づいて、複数本の駆動信号および単一のEnable信号を増幅部30に入力する。この制御装置20は、
図1に示すように、データ受信部21、変調部22、時間差計算部23、および波形生成部24を有している。
【0015】
制御装置20は、データ受信部21、変調部22、時間差計算部23、波形生成部24の全機能をハードウェアとして実現する1個のFPGAボードとして実現されていてもよい。FPGAボードとしては、例えば、HuMANDATA社製のACM−202−55C8を用いてもよい。あるいは、データ受信部21、変調部22、時間差計算部23、波形生成部24は、それぞれが独立した1個のマイクロコンピュータとして実現されていてもよい。データ受信部21、変調部22、時間差計算部23、波形生成部24の機能および作動は後述する。
【0016】
増幅部30は、制御装置20から入力された複数本の駆動信号を増幅すると共に、制御装置20から入力されたEnable信号に基づいて、この増幅された当該駆動信号をAM変調する。そして増幅部30は、増幅およびAM変調の結果得られた複数本の駆動信号をトランスデューサアレイ40に入力する。増幅部30としては、例えば、STMicroelectronics社製のL293DDというドライバICを用いてもよい。
【0017】
トランスデューサアレイ40は、正方形の基板41と、基板41の一方側の面に実装された複数個の超音波トランスデューサ42を有している。超音波トランスデューサ42の個数は、増幅部30からトランスデューサアレイ40に入力される駆動信号の本数と同じである。基板41上の超音波トランスデューサ42は、本実施形態の例では、縦17個×横17個の正方形に並べられた正方格子点群から四隅の点を除いた17×17−4=285個の位置に配置されている。
【0018】
超音波トランスデューサ42としては、本実施形態の例では、日本セラミック株式会社製からパラメトリックスピーカ用に発売されているT4010B4を285個用いている。このT4010B4は、共振周波数が40kHz、基板41と平行な面内における直径が1cm、距離30cm離れた位置での音圧が117dB SPLとなっている。これら超音波トランスデューサ42に、上述の増幅部30からの駆動信号が、極性を揃えて1対1で入力される。
【0019】
これら超音波トランスデューサ42が出力する超音波振動の位相が個々に設定されることで、
図2に示すように、3次元空間中において、基板41上のすべての超音波トランスデューサ42から出力される超音波が単一の焦点Gを結ぶ。焦点Gの直径w、トランスデューサアレイ40の各辺の長さD(上記正方形の各辺の長さ)、各超音波トランスデューサ42から出力される超音波の波長λ、焦点距離Rの間には、w=2λR/Dの関係がある。すなわち、焦点距離Rは設定した位相により決まり、焦点距離Rによって焦点の直径wが決まる。例えば、本実施形態において、R=20cm、λ=8.5mm、D=17cmのとき、w=20mmになる。
【0020】
以下、上記のような構成の超音波集束装置1の作動について説明する。指示入力装置10の演算部14は、
図2に示すような3次元空間中の超音波の焦点Gの軌跡J(時刻毎の位置)を、操作部12に対するユーザの入力内容、または、メモリ13にあらかじめ記録された軌跡データに基づいて決定する。
【0021】
超音波の焦点Gは、トランスデューサアレイ40のすべての超音波トランスデューサ42から出力される超音波が集束する位置である。軌跡Jの位置を表す3次元位置座標X、Y、Zは、トランスデューサアレイ40に固定された座標系におけるトランスデューサアレイ40を基準とする相対的な位置座標である。
【0022】
また演算部14は、各超音波トランスデューサ42が出力する超音波の音圧Pおよび超音波をAM変調するための変調周波数fを、操作部12に対するユーザの入力内容、または、メモリ13にあらかじめ記録されたデータに基づいて決定する。音圧Pおよび変調周波数fは、時間によらず一定でもよいし、時間と共に変動してもよい。
【0023】
そして演算部14は、決定した軌跡J、音圧P、変調周波数fに基づいて、定期的に1フレーム(本実施形態の例ではプログラムにより1ms単位で1msから100msまで指定可能)毎に、その時点における軌跡J上の焦点Gの3次元位置座標X、Y、Z、音圧P、変調周波数fを制御装置20に入力する。これらのデータの制御装置20への入力は、インターフェース部11を介して行う。
【0024】
制御装置20では、データ受信部21が、指示入力装置10のインターフェース部11から制御装置20に入力される3次元位置座標X、Y、Z、音圧P、および変調周波数fを、1フレーム毎に受け取る。またデータ受信部21は、入力された変調周波数fを1フレーム毎に変調部22に入力し、入力された3次元位置座標X、Y、Zを1フレーム毎に時間差計算部23に入力し、入力された音圧Pを1フレーム毎に波形生成部24に入力する。なお、データ受信部21は、3次元位置座標X、Y、Zの各々を超音波の波長の約1/32に相当する0.25mmを最小単位とするデジタル値で表す。したがって、制御装置20の内部では、3次元位置座標X、Y、Zの値は0.25mm刻みの値となる。
【0025】
変調部22は、データ受信部21から入力された変調周波数fに応じて、この変調周波数fで超音波をAM変調するためのEnable信号を増幅部30に入力する。本実施形態の例では、このEnable信号として、周波数が上記変調周波数fでデューティ比が50%でオン、オフが切り替わる矩形波を用いる。また、変調部22に入力される変調周波数fは、0Hz以上1023Hz以下の範囲内で1Hz刻みで設定可能である。1Hz以上1023Hz以下という帯域は、人間の触知覚を有効に刺激できる範囲をカバーする範囲である。
【0026】
時間差計算部23は、データ受信部21から1フレーム毎に入力された3次元位置座標X、Y、Zに基づいて、その3次元位置座標X、Y、Zの表す位置で超音波が単一の焦点を結ぶよう、285個の超音波トランスデューサ42間の振動の時間差Tを算出する。例えば、あらかじめ1個選ばれている基準となる超音波トランスデューサ42(例えば、中央に配置されている超音波トランスデューサ42)が出力する超音波に対する、各超音波トランスデューサ42が出力する超音波の進み時間を、時間差Tとして算出する。この時間差Tは、基準となる超音波トランスデューサ42の超音波振動に対する各超音波トランスデューサ42の超音波振動の位相の進み量に比例する。そして時間差計算部23は、算出した時間差Tを、1フレーム毎に波形生成部24に入力する。
【0027】
ここで、時間差Tの算出方法について、
図3、
図4を参照して説明する。
図3に示すように、超音波トランスデューサ42から焦点Gまでの直線距離は、基準となる超音波トランスデューサ42_0と他の超音波トランスデューサ42_1、42_2、…42_iとでは異なる。例えば、基準となる超音波トランスデューサ42_0から焦点Gまでの直線距離に対し、超音波トランスデューサ42_iから焦点Gまでの直線距離はΔkiだけ長い。
【0028】
このような場合、基準となる超音波トランスデューサ42_0と超音波トランスデューサ42_iの時間差Δtiは、Δti=Δki/c0という式で得られる。ここでc0は、空気中での音速である。この式は、
図4に示すように、焦点Gまでの直線距離が長い超音波トランスデューサ42ほど早く鳴らす(時間をより進ませる)ことを意味している。
【0029】
本実施形態では、時間差計算部23は、この原理を利用して、各超音波トランスデューサ42から焦点Gまでの直線距離を算出する。そして、基準となる超音波トランスデューサ42_0から焦点Gまでの直線距離に対する各超音波トランスデューサ42から焦点Gまでの直線距離の増分Δkiを算出する(ただし、i=0、1、2、…、284)。そして、算出した各増分Δkiを上述のΔti=Δki/c0という式に適用し、その結果の各値Δtiを、各々の超音波トランスデューサ42の時間差Tとする。なお、空気中での音速c0の値は、あらかじめ定められた固定値としてもよいし、温度や湿度を計測した結果から適宜定めてもよい。
【0030】
波形生成部24は、データ受信部21から1フレーム毎に入力される音圧Pおよび時間差計算部23から1フレーム毎に入力される各超音波トランスデューサ42の時間差Tに基づいて、超音波トランスデューサ42毎に駆動信号を生成する。
【0031】
各駆動信号は、基本的には周波数が40kHzの矩形波であるが、データ受信部21から入力される音圧Pが実現するようPWM(パルス幅変調)がかけられることで、デューティ比が調整される。また、各駆動信号は、時間差計算部23から入力される時間差Tの変化に応じて位相が変化する。
【0032】
図5に、波形生成部24が実行する波形生成処理のフローチャートを示す。波形生成部24は、波形生成処理を、超音波トランスデューサ42毎に1つ実行するので、合計285個の波形生成処理を同時並行的に実行する。
【0033】
ここで、
図5に表されている変数についてまず説明する。変数iは、40kHzに対応した周期(25μs)毎に変動する整数である。変数Tnewは整数であり、時間差計算部23から入力される時間差Tの最新値である。変数Ttmpは初期値がゼロの整数であり、実際に生成する駆動信号で実現する時間差(基準となる超音波トランスデューサに対する進み時間)である。本実施形態の例では、時間差Tnewおよび時間差Ttmpは、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を16分割した時間である25/16μsを1単位とする量であり、既に説明した通り、位相の進み量に比例する。したがって、Ttmp、Tnewの値は、0から15までの整数値を取る。ただし、時間差Ttmp、Tnewは、位相差に比例する量であり、1周期分の位相差はゼロの位相差と同じなので、Ttmp、Tnewの取り得る値の最大値と最小値との時間差は、実質的には1単位分であるとも言える。閾値REPは整数であり、何周期に1回Ttmpを更新するかを表す位相変化間隔である。例えば、閾値REPが2の場合は2周期に1回Ttmpが更新される。
【0034】
なお、変数i、時間差Tnew、時間差Ttmpは、1つの波形生成処理内のローカル変数であり、他の波形生成処理内の変数i、時間差Tnew、時間差Ttmpとは互いに無関係である。また、閾値REPは、すべての波形生成処理で共通に参照されるグローバル変数である。つまり、すべての波形生成処理で閾値REPの値は同じである。
【0035】
また、時間差Tnewおよび時間差Ttmpは、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を32分割した時間である25/32μsを1単位とする量としてもよい。
【0036】
波形生成部24は、各超音波トランスデューサ42のための波形生成処理において、まずステップ110で、変数iに1を代入する。続いてステップ115で、対象とする超音波トランスデューサ42について時間差計算部23から入力された時間差Tの最新値Tnewを取得する。なお、時間差Tnewは上述の通り1フレーム(1ms以上)毎に更新され、1周期は25μsなので、最小でも40周期毎に時間差Tnewが更新される。従って、Tnewの値は短くても40周期連続で同じ値になる。
【0037】
続いてステップ120では変数iが閾値REPより小さいか否か判定し、変数iが閾値REPより小さい場合はステップ125に進み、変数iが閾値REPに等しい場合はステップ135に進む。このステップ120の判定処理は、現在の周期がTtmpを変更してはいけない周期であるか、してもよい周期であるかを、判定する処理である。
【0038】
ステップ125では、変数iの値を1だけ増加させる。続いてステップ130では、現在の時間差Ttmpを持つ駆動信号を1周期(25μs)分生成して増幅部30に入力する。時間差Ttmpを持つ駆動信号は、より具体的には、各超音波トランスデューサ42で一定となっている基準タイミングよりも時間差Ttmpだけ進んだ駆動信号である。
【0039】
なおこの際、生成する駆動信号のデューティ比は、入力された最新の音圧Pに対応するものとする。駆動信号のデューティ比が50%に近づくほど、対象とする超音波トランスデューサ42が出力する音圧が高くなる。ここで音圧Pは整数である。本実施形態の例では、音圧Pは、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を1248分割した時間である25/1248μsを1単位とする量であり、デューティ比に比例する。このとき音圧Pの値623がデューティ比50%に相当する。ステップ130の後は、ステップ115に戻る。
【0040】
ステップ135では、現在の時間差Ttmpと時間差Tnewとを比較する。そして、Ttmp<Tnewならばステップ140に進んでTtmpの値を1だけ増加させ、Ttmp=Tnewならばステップ145に進んでTtmpの現在値を維持し、Ttmp>Tnewならばステップ150に進んでTtmpの値を1だけ減少させる。
【0041】
つまり、ステップ140およびステップ150では、現在の時間差Ttmpを時間差Tnewに近づけるように1段階分(25/16μs)変化させ、ステップ145では、時間差Ttmpが時間差Tnewに等しいので、Ttmpを現状のままに維持する。
【0042】
ステップ140、145、150の後は、ステップ155に進み、ステップ130と同じ方法で、現在の時間差Ttmpを持つ駆動信号を1周期(25μs)分生成して増幅部30に入力する。なおこの際、駆動信号のデューティ比は、入力された最新の音圧Pに対応するものとする。ステップ155の後は、ステップ110に戻って変数iを1に戻す。
【0043】
このような処理で波形生成部24が超音波トランスデューサ42毎かつ1周期毎に生成した駆動信号は、増幅部30に入力される。増幅部30では、波形生成部24から入力された駆動信号のそれぞれを増幅し、更に、変調部22から入力されたEnable信号を増幅された各駆動信号に乗算することで、各駆動信号をAM変調する。そして増幅部30は、増幅およびAM変調の結果得られた各駆動信号をトランスデューサアレイ40の各超音波トランスデューサ42に入力する。
【0044】
このように、波形生成部24から増幅部30に入力された各駆動信号がEnable信号によってAM変調されて各超音波トランスデューサ42に入力されることで、トランスデューサアレイ40から出力される超音波振動が人の触知覚を刺激できるようになる。
【0045】
また、各超音波トランスデューサ42が、当該超音波トランスデューサ42についての時間差Tnewに応じた分だけ位相が進んだ超音波を出力することで、トランスデューサアレイ40から出力される超音波が集束して焦点Gを結ぶ。更に、1フレーム毎にその焦点Gの位置が軌跡Jに沿って変化する。これにより、人の手に対して軌跡Jに沿った触覚刺激を与えることができる。
【0046】
このような、軌跡J上を移動する焦点Gにおいて人の触覚刺激を与える応用は、音響放射圧として知られる現象を利用した技術である。このような応用以外にも、パラメトリックスピーカの基礎原理である自己復調の現象を利用して、音源を軌跡Jに沿って移動させる応用も可能である。また、波長よりも小さな物体が空中に保持される音響浮遊の現象を利用して、粒子、水滴、虫等を軌跡Jに沿って浮遊移動させる応用も可能である。また、これ以外にも、超音波の焦点Gにおいて発生する強力な超音波、非接触の力、気流などを利用した様々な応用が考えられる。
【0047】
ここで、波形生成部24から出力される各駆動信号と各超音波トランスデューサ42から出力される超音波の関係について説明する。
【0048】
波形生成部24が実行する全数の波形生成処理においてTtmp=Tnewとなっている期間は、指示入力装置10から入力された最新の位置座標X、Y、Zにおいて、各超音波トランスデューサ42から出力される超音波振動が集束して焦点Gを結ぶ。
【0049】
その後、演算部14がそれまでの位置座標(X、Y、Z)=(X0、Y0、Z0)とは値が異なる新たな位置座標(X、Y、Z)=(X1、Y1、Z1)をインターフェース部11を介して制御装置20に入力したとする。するとデータ受信部21は、この位置座標X1、Y1、Z1を時間差計算部23に入力し、時間差計算部23は、この位置座標X1、Y1、Z1で超音波が集束して焦点Gを結ぶよう各超音波トランスデューサ42の時間差T=Tnewを算出して波形生成部24に入力する。
【0050】
ここで、変数REPは1に設定されているとする。その場合、波形生成部24は、各波形生成処理において、ステップ120の判定が常にNOになる。したがって、波形生成部24は、TtmpがTnewと違っている間は、毎周期、ステップ140またはステップ150で、TtmpがTnewに近づくようにTtmpを1単位(1周期の1/16)分変化させる。そして波形生成部24は、その変化したTtmpに応じた駆動信号をステップ155で1周期分だけ生成して増幅部30に入力する。つまり、波形生成部24は、超音波トランスデューサ42が出力する振動の位相(時間差Ttmpに対応した位相)を目標の位相(時間差Tnewに対応した位相)に向けて、一気に1段階ではなく小刻みに複数段階で切り替える。
【0051】
具体的には、
図6の時点t1で上述のように新たな位置座標X1、Y1、Z1が時間差計算部23に入力されたとする。そして、時間差計算部23が当該位置座標X1、Y1、Z1に基づいて、ある特定の超音波トランスデューサ42について、現在の時間差Ttmpよりも7段階分(すなわち、25/16×7μs)進んだ新たな時間差Tnewを波形生成部24に入力したとする。この場合、時点t1における目標の時間差Tnewと現在の時間差Ttmpの関係は、
Tnew=Ttmp+25/16×7[μs]
となる。
【0052】
この場合、波形生成部24は、上記特定の超音波トランスデューサ42に対して行う波形生成処理において、
図6の時点t1では、ステップ135でTtmp<Tnewであると判定してステップ140に進み、Ttmpの値を1単位だけ増加させる。これにより、Tnew=Ttmp+25/16×6[μs]となり、目標の時間差Tnewと現在の時間差Ttmpの差が少なくなる。そしてステップ155で、増加後のTtmpに応じた1周期分の駆動信号51を生成して増幅部30に入力する。この駆動信号51は時点t1から時点t2までの1周期の間出力され、時点t1以前の駆動信号50に比べ、1段階(すなわち、25/16μs)分だけ位相が進んでいる。
【0053】
波形生成部24は、その後の時点t2でも、ステップ135からステップ140に進んでTtmpの値を1単位だけ増加させる。これにより、Tnew=Ttmp+25/16×5[μs]となり、目標の時間差Tnewと現在の時間差Ttmpの差が更に少なくなる。そして波形生成部24はステップ155で、増加後のTtmpに応じて駆動信号51に比べて1段階分だけ位相が進んだ駆動信号52を時点t2から時点t3までの1周期分、増幅部30に入力する。
【0054】
波形生成部24は時点t2以後も、1周期間隔で訪れる時点t3、t4、t5、t6、t7の各々において、ステップ135からステップ140に進んでTtmpの値を1単位だけ増加させる。そしてステップ155で、増加後のTtmpに応じて直前の駆動信号に比べて1段階分だけ位相が進んだ駆動信号53、54、55、56、57を1周期分、増幅部30に入力する。
【0055】
なお、時点t7においては、ステップ140でTtmpが増加した結果、Tnew=Ttmpとなる。したがって、時点t7から1周期が経過した後の時点t8では、波形生成部24は、ステップ135でTtmp=Tnewであると判定してステップ145に進み、現在の時間差Ttmpの値を維持する。そして波形生成部24はステップ255で、時点t8以前と同じ位相の駆動信号58を1周期分、増幅部30に入力する。それ以降は、指示入力装置10から入力される3次元位置座標X、Y、Zが変化して当該特定の超音波トランスデューサ42についての時間Tnewが変化しない限り、当該特定の超音波トランスデューサ42についてのTtmpは変化しない。
【0056】
このように、本事例では、Tnewが変化してからTtmpがTnewに追い付くまで、時点t1から時点t7までの6×25=150μsがかかる。また超音波トランスデューサ42毎に目標の位相Tnewに到達するまでの時間が異なる。しかし、目標の時間差Tnewが変化してから現在の時間差Ttmpが目標の時間差Tnewに追い付くまでの時間の遅れ、および当該遅れの超音波トランスデューサ42毎のばらつきは、実用上問題とならない。なぜなら、現在の時間差Ttmpと目標の時間差Tnewのずれ量の絶対値は最大でも15段階分であり、40段階までの変化なら1フレーム(最小で1ms)以内で終了し、各超音波トランスデューサ42の立ち上がり時間も1msだからである。
【0057】
なお、指示入力装置10から制御装置20に入力される位置座標X、Y、Zが変化した後は、すべての超音波トランスデューサ42についてTtmpがTnewに等しくなる前は、各超音波トランスデューサ42から出力される超音波が焦点を結ばない場合も結ぶ場合もある。しかし、すべての超音波トランスデューサ42についてTtmpがTnewに等しくなってから、指示入力装置10から制御装置20に入力される位置座標X、Y、Zが更に変化するまでの期間は、各超音波トランスデューサ42から出力される超音波が集束して焦点Gを結ぶ。
【0058】
以上説明した通り、時間差計算部23は、入力される3次元空間中の位置座標X、Y、Zが変化した場合、複数個の超音波トランスデューサ42が出力する超音波について、それら超音波が変化後の位置座標X1、Y1、Z1で焦点Gを結ぶために必要な目標の位相に対応する時間差Tnew(目標値の一例に相当する)を算出する。そして波形生成部24は、複数の超音波トランスデューサ42のうち、出力している超音波の現在の位相に対応する時間差Ttmp(現在値の一例に相当する)と目標の時間差Tnewとが異なる特定の超音波トランスデューサ42について、出力している超音波の位相を目標の位相まで複数段階で変化させる(ステップ140、150)。
【0059】
ここで、このように、超音波トランスデューサ42が出力する振動の位相Ttmpを目標の位相Tnewに向けて1段階ではなく小刻みに複数段階で切り替えることの意義について説明する。
【0060】
超音波の焦点Gが変化して超音波トランスデューサ42への駆動信号の位相が変化すると、超音波トランスデューサ42が出力する超音波の位相も変化する。超音波自体は耳に聞こえないが、位相切り替えによって超音波トランスデューサから破裂音、すなわち騒音が発生する。この騒音は、超音波集束装置の使用環境によっては問題となる可能性がある。例えば人が傍にいるような使用方法では、この騒音を抑えることが望ましい。
【0061】
この騒音を低減する方法としては、二通りの方法が考えられる。1つ目は、指示入力装置10から制御装置20に出力される超音波の焦点Gの位置X、Y、Zの移動距離を小さくすることである。
【0062】
この方法では、焦点Gの1フレーム(超音波トランスデューサの立ち上がり時間1ms以上)当たりの移動距離を小さくすることになる。本実施形態では、時間差計算部23、波形生成部24で位相(T、Tnew、Ttmp)を離散的に扱っており、移動距離が小さいとき位相が変化する超音波トランスデューサの個数が少なくなる。したがって、同時に破裂音を出す超音波トランスデューサを少なくすることで騒音を抑えることができる。ただしこの方法は、焦点Gを素早く動かしたい場合、すなわち、焦点Gの1フレーム当たりの移動距離を長くした場合に、適切でない。
【0063】
そこで、本実施形態では、2番目の方法を用いる。すなわち、超音波トランスデューサ42が出力する超音波振動の位相を目標の位相に向けて1段階ではなく小刻みに複数段階で切り替える。
【0064】
上述の破裂音は、位相が急激に(すなわち不連続に)変化することにより、例えば上に移動しようとしている超音波トランスデューサ42中の振動板に対して下に移動させる信号が入力されたときに生じる。
【0065】
例えば、
図6の上段に示すように、従来通りに、時点t1において指示入力装置10から入力される位置座標X、Y、ZがX0、Y0、Z0からX1、Y1、Z1に変化した場合に、駆動信号60の位相もそれに一致して急激に7段階分まとめて変化すると、駆動信号の立ち上がりと立ち下がりとの時間間隔Aが短すぎてしまう。そしてその結果、破裂音が生じる。
【0066】
これに対し、本実施形態における
図6の下段の駆動信号50〜58は、既に説明した通り、1段階ずつ複数段階で少しずつ位相を変化させている。したがって、駆動信号の立ち上がりと立ち下がりの間の時間間隔が短すぎてしまう可能性が低くなる。
【0067】
このように、本実施形態では、指示入力装置10から制御装置20に入力される位置座標X、Y、Zの変化量が大きい場合でも、超音波トランスデューサ42に入力される駆動信号の位相の変化を最小限に抑えることで、騒音を抑えることができる。また、このようにすることで、超音波集束装置1を音響浮遊に利用する場合は、衝撃波が抑えられ物体が落ちにくくなる。
【0068】
なお、
図6の事例では、変数REPが1に設定されているが、変数REPが2以上に設定されている場合は、波形生成部24は、TtmpがTnewと異なっている場合でも、変数REPよりも1だけ少ない回数分、ステップ125および130を実行する。
【0069】
これにより、例えば
図6の事例を変数REPが3となるように変更した場合は、TtmpがTnewと異なっている場合でも、波形生成部24は、2周期連続して同じ位相Ttmpの駆動信号をステップ130で出力する。その後波形生成部24は、ステップ120でi=REPと判定されてステップ135に進み、ステップ140または150でTtmpを変化させる。つまり、
図6の事例を変数REPがN(Nは2以上)となるように変更した場合は、波形生成部24は、時点t1以降、N周期毎にtmpを1段階変化させる。
【0070】
このように、指示入力装置10から制御装置20に入力される位置座標X、Y、Zが変化してTnewが変化した場合、駆動信号の位相を変化させる方法としては、少なくとも以下の(a)、(b)、(c)、(d)があり得る。
(a)従来のように1段階で一気に変化させる方法(本実施形態の静音化法を適用しない方法)
(b)複数段階で1周期毎に変化させる方法(本実施形態でREP=1とする方法)
(c)複数段階で2周期毎に変化させる方法(本実施形態でREP=2とする方法)
(d)複数段階で3周期毎に変化させる方法(本実施形態でREP=3とする方法)
これらの方法のうち、発明者の実体験によれば、(c)の方法で最も静音化が達成される。(b)の方法より(c)の方法の方が静かなのは、駆動信号がより連続に近いためであると考えられる。(d)の方法が(c)の方法よりも騒音が大きいのは、3周期(75マイクロ秒)ごとに生じる位相切り替えが13キロヘルツという人の可聴域の音を発生するためと考えられる。
【0071】
したがって、複数周期毎に変化させるといっても、その周期が人の可聴域(20Hz〜20kHz、周期で言えば50ms〜50μs)の音の周期に入らないようにすることが望ましい。したがって、複数周期といっても、その複数周期の長さが50μs以下であることが望ましい。なお、本実施形態において、REPの値を4以上にしてもよい。
【0072】
ここで、フレームの時間長(フレームレートの逆数)と位相変化間隔REPの種々の組について行った騒音計測実験の結果について説明する。この実験では、
図7に示すように、トランスデューサアレイ40の基板41が水平に配置される。そして、指示入力装置10の演算部14は、トランスデューサアレイ40から上方15cmの位置において、直径15cmの円形の軌跡Kを焦点Gが1秒間に2回転の等速度で移動し続けるよう、超音波の焦点の3次元位置座標X、Y、Zを順次出力し続ける。
【0073】
また、この実験では、時間差Tnewおよび時間差Ttmpとしては、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を32分割した時間である25/32μsを1単位とする量としている。したがって、Tnew、Ttmpの1段階の変化は、25/32μs分の変化となる。また、Ttmp、Tnewの値は、0から31までの整数値を取る。
【0074】
実験で用いたフレームの時間長は、1ms、1.5ms、3ms、10ms、15ms、30ms、100msの7通りであり、位相変化間隔REPの値は、0、1、2、…7、8の9通りを採用した。
【0075】
なお、位相変化間隔REPの値が0とされている実験は、実際にREPの値を0にして
図8の処理を実行したわけではない。位相変化間隔REPの値が0とされている実験は、本実施形態に対する従来例の実験であって、TtmpとTnewが異なるすべてのトランスデューサ42について、新たなTnewを取得してすぐに、Tnewを1段階で一斉にTnewに変化させる実験である。
【0076】
フレームの時間長が15msの場合、すなわち、フレームレートが66.66…Hzの場合、焦点は軌跡K上に等間隔で配置された33個の点をフレーム毎にとびとびに移動する。
【0077】
また、トランスデューサアレイ40と同じ高さの位置で、かつ、トランスデューサアレイ40から20cm離れた位置に、リオン株式会社製のNL−52という騒音計70を配置し、この騒音計70により、騒音計測が行われた。
【0078】
図8に、実験結果を示す。この図中、横軸がフレームレートに相当し、縦軸が騒音計70で計測したノイズレベルに相当する。線80〜88の各々は、同じ位相変化間隔REPを用いた実験結果を繋ぐ線であり、線89は、超音波集束装置1を作動させない場合において騒音計70で計測したノイズレベルを示している。
【0079】
この図に示すように、殆どすべてのフレームレート、位相変化間隔REPの組み合わせにおいて、従来例80に比べて本実施形態の騒音低減が実現された。また、騒音の低減効果は、フレームレートが333Hz未満(フレーム長が3msより大きい)の場合の方が、それよりも高いフレームレートの場合に比べて、より顕著である。また、騒音の低減効果は、フレームレートが100Hz以下(フレーム長が10ms以上)の場合の方が、それよりも高いフレームレートの場合に比べて、更に顕著である。
【0080】
また、
図8の結果では、全体的に見れば、位相変化間隔REPが大きくなるほどノイズ低減効果が高くなる傾向にある。
【0081】
ただし、実験を行った発明者の聴感では、位相変化間隔REPが5以上の場合は、位相変化間隔REPの値が大きくなるほど高温の不快ノイズが増すように感じられた。このようになるのは、上述の通り、位相切り替えが人の可聴域の音を発生した結果である可能性がある。
【0082】
以上の通りなので、位相変化間隔REPは、1以上であればノイズ低減効果が達成される。Tnewの値が変化してからTtmpの値がTnewと同じになるまでの変化期間における、超音波振動の1周期当たりの平均位相変化量は2π/REP×1/32[rad]となっているので、このことは、超音波振動の1周期当たりの平均位相変化量がπ/16[rad]以下であれば、ノイズ低減効果が達成されることになる。更に、REPが4以下であれば、すなわち、超音波振動の1周期当たりの平均位相変化量がπ/64[rad]以下であれば、位相切り替えが人の可聴域の音を発生する可能性が大きく低減されるので、更に騒音低下の効果が顕著である。
【0083】
また、REPに設定してよい値にはフレームレートによる制約がある。REPを大きな数に設定すると超音波の1周期当たりの平均位相変化量が小さくなる。1フレーム長内で焦点の移動を必ず完了させるためには、1フレームの長さをTfとし、超音波の一周期の時間をTsとすると、超音波の1周期当たりの平均位相変化量は、2π×Ts/Tf[rad]以上とすることが望ましい。例えば、Tf=1msで、Ts=25μsの場合、超音波の1周期当たりの平均位相変化量は、π/20[rad]以上であることが望ましい。
【0084】
ここで、本実施形態における焦点の移動形態のシミュレーション結果について説明する。この実験では、時間差Tnewおよび時間差Ttmpとしては、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を32分割した時間である25/32μsを1単位とする量としている。したがって、Tnew、Ttmpの1段階の変化は、25/32μs分の変化となる。また、Ttmp、Tnewの値は、0から31までの整数値を取る。
【0085】
このシミュレーションでは、
図9A〜
図9Eに示すように、トランスデューサアレイ40の基板41に平行かつ基板41から所定距離離れた平面(Z=150mm)上で、焦点Gを初期位置(X,Y,Z)=(−7mm,0mm、150mm)から目的位置(X,Y,Z)=(7mm,0mm、150mm)まで移動させている。
【0086】
より具体的には、指示入力装置10の演算部14は、超音波の焦点の3次元位置座標として、上記初期位置を出力し、それに基づいて制御装置20が複数段階で位相を変化させて上記初期位置へ焦点を移した後、更に演算部14は上記目的位置を出力する。
【0087】
この結果、
図9A〜
図9Eの順に、上記平面(Z=150mm)上の音圧が、経時変化した。各図のTの値は、初期位置で焦点が結ばれている状態からの経過時刻を示し、単位は超音波の1周期である。また、
図9A〜
図9E中では、音圧を白点の密度で表している。これらの図に示すように、焦点から初期位置から目的位置まで小刻みに徐々に移動するのではなく、初期位置において焦点が固定されながらも当該初期位置における焦点の音圧が徐々に弱くなっていき、それと共に、目的位置において新たな焦点が固定されながら当該目的位置における焦点の音圧が徐々に強くなっていく。つまり、初期位置から目的位置まで焦点が跳躍する。
【0088】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。本実施形態の超音波集束装置1は、第1実施形態の超音波集束装置1に対して、波形生成部24が実行する波形生成処理の内容が変更されたものである。
【0089】
図10に、本実施形態における波形生成処理のフローチャートを示す。
図10の波形生成処理は、
図5の波形生成処理に対して、ステップ135の判定内容を変更し、更に、ステップ140と155の間にステップ141、142を追加し、更に、ステップ150と155の間にステップ151、152を追加したものである。ステップ110、115、120、125、130、140、145、150、155の処理内容は、
図5の波形生成処理と
図10の波形生成処理で同じになっている。
【0090】
波形生成部24は、
図10の波形生成処理において、ステップ135では、現在の時間差Ttmpの値が条件Aおよび条件Bのうちいずれか1つを満たしていればステップ140に進み、Ttmp=Tnewならばステップ145に進み、それ以外の場合はステップ150に進む。
【0091】
ここで、上記条件A、Bの詳細、および、このステップ135の判定の意義について、
図11を用いて説明する。本実施形態では、Ttmpの1単位分ずつ多段階でトランスデューサの位相をずらしていく場合、位相を進める変化態様と、位相を遅らせる変化態様のうち、より短い段階数でTnewに対応した位相差を実現する変化態様で位相を変化させる。
図11中の+、−記号は、Ttmpを増加させる(すなわち、位相を進める)か減少させる(すなわち、位相を遅らせる)かを示している。
【0092】
条件Aは、Tnew−Tmid<Ttmp<Tnewという条件である。また、条件Bは、Tnew+Tmid<Ttmpという条件である。ここで、Tmidは、Ttmp、Tnewの取り得る値の最大値であるTmaxの半分の値である。
【0093】
図11の上段に示すように、Tnew<Tmidの場合、TtmpがTnewよりも小さい値である範囲A1では、Ttmpを増加させる方向に進める。これは、範囲A1では、Ttmpの値を1ずつ増加させていく方が、Ttmpの値を1ずつ減少させて0にし、その次の段階でTmaxにし、その後更にTtmpの値を1ずつ減少させていくよりも、より少ない段階数でTnewに到達するからである。Tnew<Tmidの場合Tnew−Tmidが負値なので、範囲A1は条件Aを満たす範囲である。
【0094】
また、
図11の上段に示すように、Tnew<Tmidの場合、TtmpがTmid+Tnewよりも大きい範囲B1では、Ttmpを増加させる方向に進める。これは、範囲A2では、Ttmpの値を1ずつ増加させてTmaxにし、その次の段階で0にし、その後更にTtmpの値を1ずつ増加させていく方が、Ttmpの値を1ずつ減少させていくよりも、より少ない段階数でTnewに到達するからである。範囲B1は、TtmpがTmid+Tnewよりも大きい範囲なので、条件Bを満たす範囲である。
【0095】
また、
図11の上段に示すように、Tnew<Tmidの場合、TtmpがTnewよりも大きくTnew+Tmid以下の範囲X1では、Ttmpを減少させる方向に進める。これは、範囲X1では、Ttmpの値を1ずつ減少させていく方と、Ttmpの値を1ずつ増加させてTmaxにし、その次の段階で0にし、その後更にTtmpの値を1ずつ増加させていく方とを比べると、前者の方がより少ない段階数で、または両者同じ段階数で、Tnewに到達するからである。範囲X1は、条件AもBも満たさないし、Ttmp=Tnewでもない。
【0096】
また、
図11の下段に示すように、Tnew>Tmidの場合、TtmpがTnew−Tmidよりも大きい値である範囲A2では、Ttmpを増加させる方向に進める。これは、範囲A2では、Ttmpの値を1ずつ増加させていく方が、Ttmpの値を1ずつ減少させて0にし、その次の段階でTmaxにし、その後更にTtmpの値を1ずつ減少させていくよりも、より少ない段階数でTnewに到達するからである。範囲A2は条件Aを満たす範囲である。
【0097】
また、
図11の下段に示すように、Tnew>Tmidの場合、TtmpがTnew−Tmid以下の範囲X2では、Ttmpを減少させる方向に進める。これは、範囲X2では、Ttmpの値を1ずつ減少させて0にし、その次の段階でTmaxにし、その後更にTtmpの値を1ずつ減少させていく方と、Ttmpの値を1ずつ増加させていく方とを比べると、前者の方がより少ない段階数で、または両者同じ段階数で、Tnewに到達するからである。範囲X2は、TtmpがTmid−Tnew以下の範囲なので、条件AもBも満たさないし、Ttmp=Tnewでもない。
【0098】
また、
図11の下段に示すように、Tnew<Tmidの場合、TtmpがTnewよりも大きい範囲X3では、Ttmpを減少させる方向に進める。これは、範囲X3では、Ttmpの値を1ずつ減少させていく方が、Ttmpの値を1ずつ増加させてTmaxにし、その次の段階で0にし、その後更にTtmpの値を1ずつ増加させていくよりも、より少ない段階数で、Tnewに到達するからである。範囲X3は、条件AもBも満たさないし、Ttmp=Tnewでもない。
【0099】
図10の処理の説明に戻る。ステップ140でTtmpを1だけ増加させた後は、ステップ141に進み、TtmpがTmaxより大きいか否かを判定する。TtmpがTmaxより大きいと判定した場合、ステップ142に進み、Ttmpの値を0に設定し、その後ステップ155に進む。このようにすることで、TtmpをTmaxから増加させた場合、ステップ142によりTtmpを0にする。既に説明した通り、TtmpをTmaxから0に変化させることは、トランスデューサの位相を1段階ずらすのと同じことである。ステップ141でTtmpがTmaxより大きくないと判定した場合、ステップ142をバイパスし、その後ステップ155に進む。
【0100】
また、ステップ150でTtmpを1だけ減少させた後は、ステップ151に進み、Ttmpが0より小さいか否かを判定する。Ttmpが0より小さいと判定した場合、ステップ152に進み、Ttmpの値をTmaxに設定し、その後ステップ155に進む。このようにすることで、Ttmpを0から減少させた場合、ステップ152によりTtmpをTmaxにする。既に説明した通り、Ttmpを0からTmaxに変化させることは、トランスデューサの位相を1段階ずらすのと同じことである。ステップ151でTtmpが0より小さくないと判定した場合、ステップ142をバイパスし、その後ステップ155に進む。
【0101】
なお、本実施形態では、時間差Tnewおよび時間差Ttmpとしては、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を32分割した時間である25/32μsを1単位とする量としている。したがって、Tnew、Ttmpの1段階の変化は、25/32μs分の変化となる。また、Ttmp、Tnewの値は、0から31までの整数値を取る。
【0102】
本実施形態の方法でも、第1実施形態と同様に騒音低下が実現可能である。また、本実施形態の制御装置20は、入力される空間中の位置座標が変化した場合、出力している超音波の現在の位相に対応する現在値Ttmpと目標値Tnewとが異なる超音波トランスデューサ42について、出力している超音波の位相を、位相を進める変化態様と、位相を遅らせる変化態様のうち、より短い段階数で目標の位相を実現する変化態様で、目標の位相まで複数段階で、変化させる。
【0103】
このようになっていることで、すべてのトランスデューサ42で位相の変化が終了するまでの期間を低減することができる。また、このようにすれば、制御装置20は、ある一部のトランスデューサ42では位相を進ませ、それと同時に他の一部のトランスデューサ42で位相を遅らせる場合もある。
【0104】
ここで、本実施形態における焦点の移動形態のシミュレーション結果について説明する。このシミュレーションでは、
図12A〜
図12Cに示すように、トランスデューサアレイ40の基板41に平行かつ基板41から所定距離離れた平面(Z=150mm)上で、焦点Gを初期位置(X,Y,Z)=(−7mm,0mm、150mm)から目的位置(X,Y,Z)=(7mm,0mm、150mm)まで移動させている。
【0105】
より具体的には、指示入力装置10の演算部14は、超音波の焦点の3次元位置座標として、上記初期位置を出力し、それに基づいて制御装置20が複数段階で位相を変化させて上記初期位置へ焦点を移した後、更に演算部14は上記目的位置を出力する。
【0106】
この結果、
図12A〜
図12Cの順に、上記平面(Z=150mm)上の音圧が、経時変化した。各図のTの値は、初期位置で焦点が結ばれている状態からの経過時刻を示し、単位は超音波の1周期である。
図12A〜
図12C中では、音圧を白点の密度で表している。これらの図に示すように、焦点から初期位置から目的位置まで小刻みに徐々に移動するのではなく、初期位置において焦点が固定されながらも当該初期位置の焦点の音圧が徐々に弱くなっていき、それと共に、目的位置において新たな焦点が固定されながら当該目的位置の焦点の音圧が徐々に強くなっていく。つまり、初期位置から目的位置まで焦点が跳躍する。
【0107】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記実施形態に対する以下のような変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0108】
(変形例1)
上記実施形態では、波形生成部24は、超音波トランスデューサ42が出力する振動の位相Ttmpを目標の位相Tnewに向けて1段階ではなく小刻みに複数段階で変化させるようになっている。しかし、本発明の目的を達成するためには、複数段階で変化させる方法以外にも、連続的に変化させる方法を採用してもよい。
【0109】
(変形例2)
上記実施形態では、波形生成部24から増幅部30に入力された各駆動信号がEnable信号によってAM変調されて各超音波トランスデューサ42に入力されることで、トランスデューサアレイ40から出力される超音波振動が人の触知覚を刺激できる。しかし、超音波集束装置1を人の知覚を刺激する必要がない応用に用いる場合は、変調部22は必須の構成ではない。
【0110】
また、変調部22を排除した場合でも、音圧Pをなだらかに(例えば、1〜1023Hz程度の周波数で)変化させれば、トランスデューサアレイ40から出力される超音波振動が人の触知覚を刺激できる。
【0111】
(変形例3)
上記実施形態では、閾値REPがすべての波形生成処理で同じ値となっているので、すべての超音波トランスデューサ42について同じ周期数に1回だけ時間差Ttmpを変化させることが可能となっている。しかし、時間差Ttmpの変化タイミングとしては、上記のようなもの以外を採用してもよい。
【0112】
例えば、あるトランスデューサ42については1周期ごとに1段階で計8段階、別のトランスデューサ42については2周期に1段階で計4段階、時間差Ttmpを変化させるようにしてもよい。つまり、閾値REPを、超音波トランスデューサ42毎に異なるように設定してもよい。その場合、3次元位置座標X、Y、Zが変化した結果、現在の時間差Ttmpと目標の時間差Tnewが異なるようになった複数個の超音波トランスデューサ42について、同じタイミングで現在の時間差Ttmpが目標の時間差Tnewに到達するように各閾値REPが設定されるようになっていてもよい。
【0113】
(変形例4)
上記実施形態では、制御装置20は、超音波振動の1周期である25μsの整数倍の周期毎に現在の時間差Ttmpを変化させるようになっている。しかし、このような方法以外の方法を採用してもよい。例えば、「1周期の整数倍以外の周期(25μsの0.5倍の12.5μsなど)」毎に時間差Ttmpが変化するようにしてもよい。あるいは、「不定期に変化する時間間隔(1周期と2周期の混在、または整数倍以外も含めたランダムなど)」毎に時間差Ttmpが変化するようにしてもよい。
【0114】
このように、1周期の0.5倍の時間間隔毎に時間差Ttmpが1段階変化する場合は、超音波の1周期当たりの平均位相変化量がπ/4[rad]となる。したがって、上記実施形態では、超音波の1周期当たりの平均位相変化量としてπ/32[rad]以上かつπ/8[rad]としていたが、π/32[rad]以上かつπ/4[rad]以下としてもよい。
【0115】
(変形例5)
上記実施形態では、時間差Ttmp、Tnewは、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を16分割した時間である25/16μsを1単位とする量、または、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を32分割した時間である25/32μsを1単位とする量であった。
【0116】
しかし、時間差Ttmp、Tnewは、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を48分割した時間である25/48μsを1単位とする量であってもよい。つまり、位相の1単位は、超音波トランスデューサ42の超音波振動の周期を2以上の整数で分割した量であればよい。
【0117】
(変形例6)
上記実施形態では、増幅部30は、変調部22から入力された矩形波のEnable信号を各駆動信号に乗算することで、各駆動信号を変調している。しかし、増幅部30に代えて、外部から滑らかに(あるいは2ビット以上の多段階で)変化するオーディオ信号が入力され、そのオーディオ信号を各駆動信号に乗算することで、各駆動信号の波形を滑らかに(あるいは2ビット以上の多段階で)変更する機能を有する増幅装置を採用してもよい。
【0118】
(変形例7)
上記実施形態では、駆動信号の変調方式とおしてAM変調を採用しているが、AM変調に代えて、FM変調等の他の変調方式を用いてもよい。
【0119】
(変形例8)
上記実施形態では、トランスデューサアレイ40によって超音波が結ぶ焦点は、1個のみであった。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、トランスデューサアレイ40によって超音波が結ぶ焦点は、複数個の離散的な点であってもよいし、超音波の干渉によって形成される広がりおよび形状を持った領域であってもよい。