(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1光源は、白熱電球、ハロゲン電球、HID電球、及び、半導体発光素子と波長変換部材とを組み合わせて構成された光源から選択された光源である請求項1に記載の車両用灯具。
前記スーパーコンティニウム光を放出する前記第2光源は、パルスレーザー光源又はCWレーザー光源と、前記パルスレーザー光源が出力するパルスレーザー光又は前記CWレーザー光源が出力するCWレーザー光を、前記スーパーコンティニウム光に変換して出力する非線形光学媒質と、を備えた請求項1又は2に記載の車両用灯具。
前記非線形光学媒質は、前記パルスレーザー光源が出力するパルスレーザー光又は前記CWレーザー光源が出力するCWレーザー光を、前記スーパーコンティニウム光に変換して出力するように構成された変換用光ファイバである請求項3に記載の車両用灯具。
前記インコヒーレント化素子は、前記スーパーコンティニウム光のコヒーレンス性を低減する回折光学素子(DOE)、又はホログラム光学素子(HOE)の何れかを含む請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
前記インコヒーレント化素子は、前記スーパーコンティニウム光のコヒーレンス性を低減する回折光学素子(DOE)、又はホログラム光学素子(HOE)の何れかを含む請求項12に記載の車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の第1実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
図1は、第1実施形態である車両用灯具10の縦断面図である。
図2は、車両用灯具10により形成されるハイビーム用配光パターンP
Hiの例である。
【0039】
図1に示すように、車両用灯具10は、可視波長領域を含むスーパーコンティニウム光(以下、SC光と称する)を出力するスーパーコンティニウム光源12(以下、SC光源と称する)、SC光源12が出力するSC光のうち、予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光を除去(カット)する除去手段14、SC光源12が出力するSC光を制御する光学系16(例えば、ハイビーム用灯具ユニット)、SC光源12が出力するSC光をハイビーム用灯具ユニット16まで伝搬する伝送用光ファイバ18等を備えた車両用前照灯として構成されている。
【0040】
ハイビーム用灯具ユニット16は、伝送用光ファイバ18の出射端面18bを光源とする灯具ユニットで、投影レンズ22等を備えており、ハウジング40とこれに組み付けられたアウターレンズ42との間に構成された灯室44内に配置されている。なお、SC光源12も灯室44内に配置してもよい。
【0041】
伝送用光ファイバ18は、その出射端部がランプ筐体48に取り付けられたスリーブ46に形成された光ファイバ挿入穴に挿入され、かつ、その出射端面18bが投影レンズ22の後側焦点近傍に位置した状態で当該スリーブ46に保持されている。伝送用光ファイバ18の入射端部は、除去手段14に着脱自在に装着されている。
【0042】
投影レンズ22は、例えば、前方側表面が凸レンズ面、後方側表面が平面の凸レンズで、レンズホルダ50によって保持された状態で、伝送用光ファイバ18の出射端面18bの前方に配置されている。なお、符号52が示すのは光軸調整機構であり、符号54が示すのは電源・信号線であり、符号56が示すのはエクステンションであり、符号58が示すのは受光センサであり、符号60が示すのは受光センサ信号線であり、符号62が示すのは放熱板である。
【0043】
SC光源12が出力する可視波長領域を含むSC光は、除去手段14によって予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光が除去された後、集光レンズ20(
図16参照)で集光され、伝送用光ファイバ18の入射端面18aから当該伝送用光ファイバ18内部に導入されて出射端面18bまで伝搬されて当該出射端面18bから出射し、投影レンズ22を透過して前方に照射されて
図2に示すハイビーム用配光パターンP
Hiを形成する。
【0044】
スーパーコンティニウムとは、超短光パルス等、例えば、パルスレーザー光源が出力するレーザー光(パルスレーザー光)又はCW(Continuous Wave)レーザー光源が出力するレーザー光(CWレーザー光。連続光とも称される)を非線形光学材料に入射した際、自己位相変調、相互位相変調、4光波混合、ラマン散乱等の非線形光学効果により、そのスペクトルが連続的に急激に広がる現象のことである。この現象によりスペクトルが広がった光は、SC光と呼ばれる。SC光は多波長コヒーレント光であるため、スペックルノイズが非常に弱く(肉眼では感じない)、スッペックルノイズ対策を施さなくても照明用光源に用いることができる。
【0045】
SC光源12(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18b)をハイビーム用灯具ユニット16等の車両用灯具の光源として用いることの利点は、次のとおりである。
【0046】
第1に、
図3(a)、
図3(b)に示すように、青色LD素子24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24と比べ、黄色蛍光体24b(波長変換部材)が不要となる。
【0047】
これは、青色LD素子24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24においては、青色LD素子24aからの青色レーザー光を受けた黄色蛍光体24b(波長変換部材)が、これを透過する青色レーザー光と青色レーザー光による発光(黄色光)との混色による白色光(疑似白色光)を放出するのに対して、SC光源12においては、当該SC光源12が出力するSC光(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光)が既に白色光であることによるものである。
【0048】
なお、
図3(b)中、符号24cが示すのは集光レンズであり、符号24dが示すのは光ファイバであり、符号24eが示すのは黄色蛍光体24b、拡散部材24f及び光ファイバ24dの出射端部を保持するスリーブであり、符号24fが示すのは光ファイバ24dの出射端部から出射して黄色蛍光体24bに入射する青色LD素子24aからのレーザー光を拡散させる拡散部材である。
【0049】
第2に、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24と比べ、演色性が向上する。
【0050】
これは、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24においては、
図4に示すように、そのスペクトルが2つのピーク及び当該2つのピーク間に形成される深い谷間を含むのに対して、SC光源12(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18b)においては、
図6、
図8〜
図15に示すように、そのスペクトルが太陽光に近い連続性を持つことによるものである。
【0051】
第3に、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24と比べ、指向特性を狭くすることができる(その結果、より小さい投影レンズ22により多くの光を入光させることができる。つまり、投影レンズ22のさらなる小型化、ひいては車両用灯具10のさらなる小型化を実現できる)。
【0052】
これは、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24においては、
図5(a)に示すように、その指向特性がランバーシアンとなるのに対して、SC光源12(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18b)においては、
図5(b)に示すように、その指向特性を狭くすることができることによるものである。例えば、伝送用光ファイバ18としてNA=0.2の光ファイバを用いることで、θ
na=11.5°の指向特性とすることができる。NAを調整することで、指向特性をさらに狭くすることができる。
【0053】
可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12としては、例えば、Fianium社製のスーパーコンティニュアム白色光源 WhiteLaseシリーズ 型名「WhiteLase Micro」、「SC400」、「SCUV-3」、「SC450」、「SC480」等を用いることができる。
【0054】
これらは、いずれも、パルスレーザー光源(例えば、パルス幅:6ps, 繰り返し周波数:20-100MHz)及び光ファイバ等の非線形光学媒質を備えており、
図6(a)〜
図6(e)に示すように、可視波長領域を含むSC光を出力する(http://www.tokyoinst.co.jp/product_file/file/FI01_cat01_ja.pdf、http://forc-photonics.ru/data/files/sc-450-450-pp.pdf、及び、http://www.fianium.com/pdf/WhiteLase_SC480_BrightLase_v1.pdf参照)
。
図6(a)〜
図6(e)は、それぞれ、型名「WhiteLase Micro」、「SC400」、「SCUV-3」、「SC450」、「SC480」が出力するSC光のスペクトルの例である。
【0055】
一般的に、可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12は、
図7(a)、
図7(b)に示すように、パルスレーザー光源12a(又はCWレーザー光源)、パルスレーザー光源12aが出力するパルスレーザー光(又はCWレーザー光源が出力するCWレーザー光)を、SC光に変換して出力する非線形光学媒質12b等を備えている。
図7(a)はU.S. Pat. No. 6097870に記載の可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源の例、
図7(b)はU.S. Pat. No. 6611643に記載の可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源の例である。
図7(b)中の符号11が示すのは合焦光学系である。
【0056】
パルスレーザー光源12aとしては、例えば、モードロックレーザー光源(例えば、チタンサファイアレーザー光源)を用いることができる(October 1, 2000 / Vol. 25, No.19 / OPTICS LETTERS、http://www.nlo.hw.ac.uk/node/8、及び、特開2002-82286参照)。また、ファイバレーザー光源(例えば、エルビウムドープファイバを用いたリング型レーザー光源)を用いることもできる(特開2009-169041参照)。また、Qスイッチレーザー光源等を用いることもできる(US. Pub. No. 2014153888参照)。
【0057】
CWレーザー光源としては、例えば、ファイバレーザー光源(例えば、イットリウムドープファイバ)を用いることができる(http://cdn.intechopen.com/pdfs-wm/26780.pdf参照)。
【0058】
非線形光学媒質12bとしては、パルスレーザー光源12aが出力するパルスレーザー光(又はCWレーザー光源が出力するCWレーザー光)を、SC光に変換して出力するように構成された変換用光ファイバ、例えば、微細構造ファイバ(microstructured optical fibre)、テーパーファイバ(tapered fiber)等を用いることができる。微細構造ファイバ12bは、フォトニック結晶ファイバ(PCF:photonic crystal fiber)、ホーリーファイバー(holey fiber)又は空孔アシスト型光ファイバ(hole-assisted fiber)として知られている。
【0059】
例えば、微細構造ファイバ12bとしては、U.S. Pat. No. 6097870に記載のもの(例えば、コア直径 : 0.5 - 7μm)を用いることができる。この場合、
図8に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0060】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、US. Pub. No. 2014153888に記載のもの(例えば、コア直径:1 - 5μm)を用いることができる。この場合、
図9に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0061】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、23 June 2008/Vol. 16, No. 13 / OPTICS EXPRESS 9671に記載のものを用いることができる。この場合、
図10に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0062】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、http://cdn.intechopen.com/pdfs-wm/26780.pdfに記載のものを用いることができる。この場合、
図11に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0063】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、http://www.osa-opn.org/home/articles/volume_23/issue_3/features/of-the-art_photonic_crystal_fiber/#.VIbBOMkorpIに記載のものを用いることができる。この場合、
図12に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0064】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、特開2009-169041に記載のものを用いることができる。この場合、
図13に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0065】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、U.S. Pat. No. 6611643に記載のものを用いることができる。この場合、可視波長領域を含むSC光(図示せず)を出力することができる。
【0066】
また例えば、テーパーファイバ(tapered fiber)としては、October 1, 2000 / Vol. 25, No. 19 / OPTICS LETTERS 1415に記載のもの(例えば、コア直径:8.2μm、ウエスト直径:1.5 - 2.0μm。
図14(a)参照)を用いることができる。この場合、
図14(b)に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0067】
また例えば、非線形光学媒質としては、http://www.nlo.hw.ac.uk/node/8に記載のものを用いることができる。この場合、
図15に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0068】
図16は、除去手段14の内部構造を説明するための断面図である。
【0069】
図16に示すように、除去手段14は、SC光のうち、予め定められた可視波長領域以外の光(例えば、
図8中の符号A1、A2が示す領域)を除去する手段である。除去手段14が除去する予め定められた可視波長領域は、分光視感効率(又はCIE標準分光視感効率)を考慮すると、450 nm - 700 nmが好ましい。もちろん、これに限らず、除去手段14が除去する予め定められた可視波長領域の上限値及び下限値は、適宜増減してもよく、例えば、460 nm - 630 nmであってもよいし、それ以外であってもよい。
【0070】
除去手段14によれば、SC光のうち紫外線及び/又は赤外線が、車両用灯具10構成部材(例えば、アウターレンズ42、投影レンズ22)及び/又はその周辺部材(例えば、ハウジング40、エクステンション56)に劣化等の影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0071】
除去手段14は、SC光源12と伝送用光ファイバ18(入射端面18a)との間に配置されている。もちろん、これに限らず、除去手段14は、伝送用光ファイバ18の途中に配置されていてもよいし、伝送用光ファイバ18の出射端面18b側に配置されていてもよい。
【0072】
除去手段14は、例えば、SC光のうち、可視波長領域の下限近傍波長(例えば、450 nm)未満の光(例えば、
図8中の領域A1参照)を除去する第1除去手段14a、SC光のうち、可視波長領域の上限近傍波長(例えば、700 nm)越えの光(例えば、
図8中の領域A2参照)を除去する第2除去手段14bを含む。
【0073】
第1除去手段14aは、例えば、SC光源12が出力するSC光の光路上に配置され、可視波長領域の下限近傍波長(例えば、450 nm)未満の光(例えば、
図8中の領域A1参照)をカットし、それ以上の光を通過させる光学フィルタである。もちろん、これに限らず、第1除去手段14aは、可視波長領域の下限近傍波長(例えば、450 nm)未満の光を側方(例えば、側方に配置された紫外光吸収材)に向けて反射し、かつ、それ未満の光を通過させるダイクロイックミラー(いずれも図示せず)であってもよい。
【0074】
第2除去手段14bは、例えば、第1除去手段14aを通過したSC光の光路上に配置され、可視波長領域の上限近傍波長(例えば、750 nm)越えの光(例えば、
図8中の領域A2参照)を側方(例えば、側方に配置された赤外光吸収材14c)に向けて反射し、かつ、それ以下の光を通過させるダイクロイックミラーである。もちろん、これに限らず、第2除去手段14bは、可視波長領域の上限近傍波長(例えば、750 nm)越えの光をカットし、それ以上の光を通過させる光学フィルタ(図示せず)であってもよい。
【0075】
図17は、伝送用光ファイバ18の例である。
【0076】
図17(a)に示すように、伝送用光ファイバ18は、入射端面18aと入射端面18aから導入されるSC光が出射する出射端面18bとを含むコア18cと、コア18cの周囲を取り囲むクラッド18dと、を含む光ファイバで、クラッド18dの周囲は、被覆18eで覆われている。なお、コア18c及びクラッド18dの材質は、石英ガラスであってもよいし、合成樹脂であってもよいし、それ以外の材質であってもよい。
【0077】
伝送用光ファイバ18は、シングルモード光ファイバであってもよいし、マルチモード光ファイバであってもよいし、ステップインデックス型光ファイバであってもよいし、グレーデッドインデックス型光ファイバであってもよい。SC光のコヒーレンスを低下させるには、伝送用光ファイバ18としてマルチモード光ファイバを用いるのが望ましい。
【0078】
伝送用光ファイバ18の断面形状は、円形(
図17(a)参照)であってもよいし、矩形(
図17(b)参照)であってもよいし、それ以外の形状であってもよい。車両用灯具の光源としては、端面出射強度がトップハット型となる断面形状が矩形の光ファイバを用いるのが特に望ましい。
【0079】
伝送用光ファイバ18として車両用灯具10に適した光ファイバ(例えば、断面形状がコア直径100μm〜800μmの円形の光ファイバ、又は、断面形状がコア100μm×100μm〜200μm×400μmの矩形の光ファイバ)を用いることができる。また、伝送用光ファイバ18はSC光源12に対して着脱自在であるため、当該伝送用光ファイバ18に不具合が発生した場合であっても、当該伝送用光ファイバ18を容易に交換することができる。
【0080】
伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、次のインコヒーレント化手段により、そのコヒーレンス性を低減できる。インコヒーレント化手段によれば、レーザー光の特性があるSC光をインコヒーレント化できるため、アイセーフを実現できる。なお、インコヒーレント化手段は省略してもよい。
【0081】
例えば、伝送用光ファイバ18としてマルチモード光ファイバを用いることで、空間的コヒーレンス性を低減できる(時間的コヒーレンス性も若干低減できる)。これは、SC光が伝搬される間に強度分布が均一化されることによるものである。また、伝送用光ファイバ18(マルチモード光ファイバ)を長くする、伝送用光ファイバ18(マルチモード光ファイバ)に対して捻り(キンク)を加える、又は、伝送用光ファイバ18(マルチモード光ファイバ)のループ数を増やすことで、空間的コヒーレンス性をさらに低減できる。特に、伝送用光ファイバ18として断面形状が矩形の光ファイバ(
図17(b)参照)を用いることで、断面形状が円形の光ファイバより効果的に空間的コヒーレンス性を低減できる。
【0082】
また、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、伝送用光ファイバ18に対して高周波振動を加えることで、そのコヒーレンス性を低減できる。
【0083】
例えば、
図18(a)に示すように、ループした伝送用光ファイバ18に対してその径方向又は円周方向に振動子26により1.2MHz程度の高周波振動を加えることで、空間的コヒーレンス性や時間的コヒーレンス性を低減できる。これは、伝送用光ファイバ18の屈折率が経時的に変動することによるものである。
【0084】
また、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、
図18(b)に示すように、伝送用光ファイバ18の途中に相互に不等長の複数の分岐光ファイバを並列に配置することで、時間的なコヒーレンス性を低下できる。この場合、伝送用光ファイバ18としてマルチモード光ファイバを用いることで、空間的コヒーレンス性を同時に低減できる。
【0085】
また、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、インコヒーレント化素子28により、そのコヒーレンス性を低減できる。
【0086】
例えば、
図19(a)に示すように、伝送用光ファイバ18の出射端面18b側にインコヒーレント化素子28を配置することで、コヒーレンス性を低減できる。
【0087】
インコヒーレント化素子28としては、例えば、散乱剤が分散した光透性部材を用いることができる。この場合、空間的コヒーレンス性を低減できる。インコヒーレント化素子として、光透性のガラスに空孔径1μm〜5μm程度の空孔を分散した回折散乱板や、光透性の低屈折ガラス(n=1.4以下)に粒径1μm〜5μm程度の光透性の高屈折材である炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミ(AlN)、酸化チタン(TiO
2)等を分散した回折散乱板を用いることで、狭い指向特性を損なわずにインコヒーレント性を低減できる。粒径が1μm〜5μmであれば、レイリー散乱のように広く拡散せず、前方散乱するため、狭い指向特性を保持できる(
図19(b)中のθ
na+α参照)。なお、
図19(b)中、θ
naは、インコヒーレント化素子28を用いない場合の指向特性を表している。
【0088】
また、インコヒーレント化素子28としては、グレーチングセルアレイ等の回折光学素子(DOE)やホログラム光学素子(HOE)を用いることもできる。
【0089】
また、インコヒーレント化素子28としては、紫外線で励起される蛍光体(青、青緑、緑、黄色、橙、赤)を光透性の樹脂、ガラス又は結晶体からなる基板躯体に分散させた蛍光散乱板を用いることもできる。蛍光体に基板躯体と異なる屈折率の散乱体を加えてもよい。この蛍光散乱板を用いる場合、第1除去手段14aを省略することができる。なお、蛍光体の量はSC光の可視光スペクトルが太陽光の可視光スペクトルに近似するように加えるのが望ましい。
【0090】
次に、車両用灯具10を制御するシステム構成例について
図20を参照しながら説明する。
【0091】
図20は、車両用灯具10を制御するシステム構成例である。
【0092】
図20に示すように、本システムは、その全体の動作を司る演算制御装置30(CPU)を備えている。演算制御装置30には、バスを介して、ヘッドランプスイッチ32、受光センサ58、SC光源12、演算制御装置30が実行する各種プログラムが格納されたプログラム格納部(図示せず)、作業領域等として用いられるRAM(図示せず)等が接続されている。受光センサ58は、SC光の出力状態モニタや出力異常の検知をするために用いられる。これにより、SC光の出力調整や出力異常時のSC光の停止ができる。また、伝送用光フィアバ18の異常検知もできる。
【0093】
次に、上記構成の車両用灯具10(ハイビーム用灯具ユニット16)の動作例について、
図21を参照しながら説明する。
【0094】
図21は、車両用灯具10(ハイビーム用灯具ユニット16)の動作例を示すフローチャートである。
【0095】
以下の処理は、演算制御装置30がプログラム格納部からRAM等に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0096】
まず、ヘッドランプスイッチ32がオンされると(ステップS10)、受光センサ58から情報の読み込み及び記録情報の判別が実行され(ステップS12)、次に、SC光源12の故障判断が実行され(ステップS14)、その結果、正常と判定された場合(ステップS14:「正常」)、SC光源12がSC光を出力するように演算制御装置30によって制御される(ステップS16)。これとともに、SC光源12が正常にSC光を出力している旨がインパネ等に設けられたHLインジケータ点灯等の形態で報知される。
【0097】
SC光源12が出力する可視波長領域を含むSC光は、除去手段14によって予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光が除去された後、集光レンズ20で集光され、伝送用光ファイバ18の入射端面18aから当該伝送用光ファイバ18内部に導入されて出射端面18bまで伝搬されて当該出射端面18bから出射し、インコヒーレント化手段によって少なくとも一部がインコヒーレント化された後、投影レンズ22を透過して前方に照射されて
図2(a)に示すハイビーム用配光パターンP
Hiを形成する。なお、SC光のインコヒーレント化は、出射端面18bから出射する前に行われてもよい。
【0098】
一方、ステップS14で故障と判定された場合(ステップS14:「故障」)、SC光源12がSC光を出力しないように演算制御装置30によって制御される(ステップS20)。これとともに、異常の記録及びSC光源12が故障した旨がインパネ等に設けられた警告灯点灯等の形態で報知される。
【0099】
以上のステップS12〜S16の処理は、ヘッドランプスイッチ32がオフ又はステップS14で故障と判定されるまで繰り返し実行される。
【0100】
本実施形態によれば、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体(波長変換部材)が省略された車両用灯具10(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)を提供することができる。
【0101】
蛍光体を省略することができるのは、SC光源12が出力するSC光が既に白色光であることによるものである。
【0102】
従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高くなるのは、SC光のスペクトルが太陽光に近い連続性を持つことによるものである。
【0103】
色分離発生を抑制することができるのは、蛍光体を用いていないため、SC光の色が角度に応じて変化しない(又はほとんど変化しない)ことによるものである。
【0105】
上記実施形態では、本発明をいわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)のハイビーム用灯具ユニットを用いた車両用前照灯に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0106】
すなわち、本発明は、ダイレクトプロジェクション型のロービーム用灯具ユニットを用いた車両用前照灯、プロジェクタ型のハイビーム用灯具ユニット(又はロービーム用灯具ユニット)を用いた車両用前照灯、リフレクタ型のハイビーム用灯具ユニット(又はロービーム用灯具ユニット)を用いた車両用前照灯、カットオフライン形成用の反射面を含むレンズ体(例えば、特開2003-317515参照)を用いた車両用前照灯、その他各種の車両用灯具(車両用前照灯等の外部照明装置、ルームランプ等の室内照明装置、クリアランスランプ等の信号−標識装置を含む)に広く適用することができる。
【0107】
また、上記実施形態では、伝送用光ファイバ18を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0108】
例えば、伝送用光ファイバ18を省略し、変換用光ファイバ12b(非線形光学媒質)の少なくとも一部(例えば、出射端部側)を伝送用光ファイバ18として用いてもよい。このようにすれば、伝送用光ファイバ18が不要となる。
【0109】
次に、第2実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0110】
図22は、本発明の第2実施形態である車両用灯具64の縦断面図である。
【0111】
以下、第1実施形態である車両用灯具10との相違点を中心に説明し、第1実施形態である車両用灯具10と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0112】
図22に示すように、車両用灯具64は、灯具ユニット66、可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12、SC光源12が出力するSC光のうち、予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光を除去(カット)する除去手段14、SC光源12が出力するSC光を灯具ユニット66まで伝搬する伝送用光ファイバ18等を備えた車両用前照灯として構成されている。
【0113】
灯具ユニット66は、
図23に示す基本配光パターンP1
Hiと付加配光パターンP2
Hiとが重畳されたハイビーム用配光パターンP
Hi(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたハイビーム用の灯具ユニットであり、ハウジング40とこれに組み付けられたアウターレンズ42との間に構成された灯室44内に配置されている。なお、SC光源12も灯室44内に配置してもよい。
【0114】
灯具ユニット66は、第1光源66a、投影レンズ66b、反射面66c等を備えたプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0115】
第1光源66aは、インコヒーレント光が主体の光を放出する光源で、例えば、発光色が青色域のLED素子(例えば、1mm角の発光面を含むLED素子)とこれを覆う黄色域の波長変換部材(例えば、YAG蛍光体)とを組み合わせた構造の白色LED光源である。第1光源66aは、波長変換部材を透過する半導体発光素子からの光(青色域の光)と半導体発光素子からの光(青色域の光)による発光(黄色域の光)との混色による白色光(疑似白色光)を放出する。なお、半導体発光素子は、1以上であればよい。
【0116】
第1光源66aは、その発光面が上方向を向いた状態で、放熱板等の保持部材68に固定されて車両前後方向に延びる基準軸AX(光軸とも称される)近傍、かつ、反射面66cの第1焦点F1
66c近傍に配置されている。
【0117】
第1光源66aは、インコヒーレント光が主体の光を放出する光源であればよく、半導体発光素子と波長変換部材とを組み合わせた構造の白色LED光源に限らず、RGB三色のLED素子を組み合わせた構造の白色LED光源であってもよいし、発光色が青色域のLD素子とこれを覆う黄色域の波長変換部材とを組み合わせた構造の白色LD光源であってもよい。また、第1光源66aは、半導体発光素子以外の、例えば、白熱電球、ハロゲン電球、及び、HID電球から選択された光源であってもよい。
【0118】
反射面66cは、第1焦点F1
66cが第1光源66a近傍に設定され、第2焦点F2
66cが投影レンズ66bの後側焦点F
66b近傍に設定された回転楕円系反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)で、当該反射面66cで反射されて投影レンズ66bを透過して前方に照射される第1光源66aからの光によって仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターンP1
Hiが形成されるように、その面形状が調整されている。
【0119】
反射面66cは、上向き(半球方向)に放出される第1光源66aからの光が入射するように、第1光源66aの側方から上方にかけての範囲(但し、反射面66cからの反射光が通過する車両前方側領域を除く)をドーム状に覆っている。反射面66cは、その周縁下端部において放熱板等の保持部材68に固定されている。
【0120】
投影レンズ66bは、例えば、前方側表面が凸レンズ面、後方側表面が平面の凸レンズで、レンズホルダ50によって保持された状態で、基準軸AX上に配置されている。
【0121】
第1光源66aが放出する光RayA(インコヒーレント光が主体の光)は、反射面66cで反射されて投影レンズ66bの後側焦点F
66b近傍に集光した後、投影レンズ66bを透過して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターンP1
Hiを形成する。なお、反射面66c及び投影レンズ66bが本発明の第1光学系に相当する。
【0122】
伝送用光ファイバ18は、その出射端部が反射面66cのうち基準軸AX寄りの領域に形成された貫通穴66c1に対向した状態でブラケット等の保持部材70に保持されている。伝送用光ファイバ18の光軸AX
18は、基準軸AXに対して前方斜め下方に向かって傾斜している(例えば、5°程度傾斜している)。
【0123】
伝送用光ファイバ18は、例えば、コア断面形状が矩形(例えば、縦横比1:2)の光ファイバで、当該伝送用光ファイバ18の出射端面18bは、第1光源66aより輝度が高く、かつ、第1光源66aより指向角が狭い(
図24参照)光であって、コヒーレント光が主体の光を放出する。以下、伝送用光ファイバ18の出射端面18bのことを第2光源18bとも称する。
【0124】
第2光源18bと貫通穴66c1との間には、集光レンズ72が配置されている(
図22参照)。
【0125】
集光レンズ72は、
図25に示すように、例えば、第2光源18b(例えば、縦横比1:2のコア断面)の拡大光源像I
18b(例えば、縦に関し5倍拡大し、かつ、横に関し15倍拡大した光源像)を、投影レンズ66bの後側焦点F
66b近傍に形成するレンズとして構成されている。
【0126】
SC光源12が出力する可視波長領域を含むSC光(コヒーレント光が主体の光)は、除去手段14によって予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光が除去された後、集光レンズ20(
図16参照)で集光され、伝送用光ファイバ18の入射端面18aから当該伝送用光ファイバ18内部に導入されて出射端面18bまで伝搬されて当該出射端面18bから出射し(
図22中符号RayBが示す点線参照)、集光レンズ72の作用により伝送用光ファイバ18の出射端面18b(例えば、縦横比1:2のコア断面)の拡大光源像I
18b(例えば、縦に関し5倍拡大し、かつ、横に関し15倍拡大した光源像)を、投影レンズ66bの後側焦点F
66b近傍に形成する。この拡大光源像I
18bが投影レンズ66bの作用により前方に投影されることで、付加配光パターンP2
Hiが形成される。この付加配光パターンP2
Hiが基本配光パターンP1
Hiに重畳されることで、合成配光パターンであるハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。なお、集光レンズ72及び投影レンズ66bが本発明の第2光学系に相当する。
【0127】
このハイビーム用配光パターンP
Hiは、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0128】
次に、この効果を確認するため、本発明者らが所定のソフトウエアプログラムを用いて行ったシミュレーション結果(実施例1、比較例1〜3)について説明する。
図26(a)は、シミュレーション結果をまとめた表である。
【0129】
<実施例>
実施例では、
図27に示す灯具ユニット66を用いてシミュレーションを行った。なお、投影レンズ66bの直径D
66bは65 mm、集光レンズ72の直径は6 mm、貫通穴66c1の直径は5 mm、伝送用光ファイバ18の光軸AX
18と基準軸AXとがなす角度θは5°、投影レンズ66bのバックフォーカスBF
66bは35 mm、集光レンズ72のバックフォーカスBF
72は9.2 mm、集光レンズ72のレンズ端と投影レンズ66bの後側焦点F
66bとの間の距離Lは45 mmである。また、第1光源66aの発光面は1.3 mm×7 mm(
図27中紙面に直交する方向が7 mm)かつ1700 lm、第2光源18bの発光面(コア断面)は0.2 mm×0.4 mm(
図27中紙面に直交する方向が0.4 mm)、伝送光ファイバ18のNAは0.2である。
【0130】
シミュレーションの結果、第2光源18bからの光、すなわち、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するコヒーレント光が主体の光(輝度:8000Mnit)の光束は400 lm、MAX光度は155,000 cdとなることが判明した。
【0131】
そして、投影レンズ66bを透過して前方に照射される第2光源18bからの光(コヒーレント光が主体の光)により、前方に存在する落下物(サイズ:20 cm×20 cm、反射率:10%)を照射した場合、当該落下物までの平均検知距離、すなわち、当該落下物を検知できる最長距離(この距離を超えると検知できなくなる距離)は、177 m(例えば、
図28(c)中の距離LL3参照)と算出された。
図28(c)は、インコヒーレント光が主体の光によって形成される基本配光パターンに対して、コヒーレント光が主体の光(例えば、SC光)によって形成される付加配光パターンを重畳した場合の路面配光イメージを表している。
【0132】
なお、落下物までの平均検知距離(Ddet)は、指向性の前照灯ビームが路上の落下物に照射され、その反射光(ランバシアン分布)によって、被験者(運転者)が落下物(規定サイズ、規定反射率)であると判断できる距離(平均距離)のことである。この平均検知距離(Ddet)と最大光度との間の関係は、多数の被験者を対象とした実験の結果、
図26(b)に示すように、次の式1(関数)で表すことができることが判明している。なお、実験は、光源として
図26(a)に記載の各々の光源(車両への取付高さ:0.75 m、幅1.2 m)を用い、落下物(サイズ:20 cm×20 cm、反射率:10%)を車両前方の路面上に設置した環境下で行った(その周囲に他の落下物等は存在しない)。
【0133】
Ddet=f(Lmax) ・・・(式1)
但し、Ddetは平均検知距離、Lmaxは最大光度(落下物方向)である。
【0134】
図26(a)中の「実施例」に対応する「落下物までの平均検知距離」欄に記載の距離「177m」は、上記式1に基づき算出されたものである。
【0135】
<比較例1>
比較例1では、実施例と同様、
図27に示す灯具ユニット66を用いてシミュレーションを行った。
【0136】
シミュレーションの結果、第1光源66aからの光、すなわち、LED素子と波長変換部材とを組み合わせた構造の白色LED光源からのインコヒーレント光が主体の光のMAX光度は、62,000 cdとなることが判明した。
【0137】
そして、投影レンズ66bを透過して前方に照射される第1光源66aからの光(インコヒーレント光が主体の光)により、前方に存在する落下物(サイズ:20 cm×20 cm、反射率:10%)を照射した場合、当該落下物までの平均検知距離、すなわち、当該落下物を検知できる最長距離(この距離を超えると検知できなくなる距離)は、132 mと算出された(例えば、
図28(a)中の距離LL1参照)。
図28(a)は、インコヒーレント光が主体の光によって形成される基本配光パターンの路面配光イメージを表している。
【0138】
図26(a)中の「比較例1」に対応する「落下物までの平均検知距離」欄に記載の距離「132 m」は、上記式1に基づき算出されたものである。
【0139】
<比較例2>
比較例2では、実施例と同様、
図27に示す灯具ユニット66を用いてシミュレーションを行った。ただし、SC光源12に代えて、発光色が青色域のLED素子とこれを覆う黄色域の波長変換部材とを組み合わせた構造の白色LED光源(輝度:100Mnit)を用いた。
【0140】
シミュレーションの結果、白色LED光源からの光、すなわち、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するインコヒーレント光が主体の光の光束は5 lm、MAX光度は63,000 cdとなることが判明した。
【0141】
そして、投影レンズ66bを透過して前方に照射される白色LED光源からの光(インコヒーレント光が主体の光)により、前方に存在する落下物(サイズ:20 cm×20 cm、反射率:10%)を照射した場合、当該落下物までの平均検知距離、すなわち、当該落下物を検知できる最長距離(この距離を超えると検知できなくなる距離)は、132 mと算出された(例えば、
図28(a)中の距離LL1参照)。
【0142】
図26(a)中の「比較例2」に対応する「落下物までの平均検知距離」欄に記載の距離「132 m」は、上記式1に基づき算出されたものである。
【0143】
<比較例3>
比較例3では、実施例と同様、
図27に示す灯具ユニット66を用いてシミュレーションを行った。ただし、SC光源12に代えて、発光色が青色域のLD素子とこれを覆う黄色域の波長変換部材とを組み合わせた構造の白色LD光源(輝度:400Mnit)を用いた。
【0144】
シミュレーションの結果、白色LD光源からの光、すなわち、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するインコヒーレント光が主体の光の光束は20 lm、MAX光度は66,000 cdとなることが判明した。
【0145】
そして、投影レンズ66bを透過して前方に照射される白色LD光源からの光(インコヒーレント光が主体の光)により、前方に存在する落下物(サイズ:20 cm×20 cm、反射率:10%)を照射した場合、当該落下物までの平均検知距離、すなわち、当該落下物を検知できる最長距離(この距離を超えると検知できなくなる距離)は、134 mと算出された(例えば、
図28(b)中の距離LL2参照)。
【0146】
図26(a)中の「比較例3」に対応する「落下物までの平均検知距離」欄に記載の距離「134 m」は、上記式1に基づき算出されたものである。
【0147】
以上の実施例及び比較例1〜3によれば、落下物までの平均検知距離、すなわち、落下物を検知できる最長距離は、インコヒーレント光が主体の光を用いる比較例1〜3と比べ、コヒーレント光が主体の光(例えば、SC光)を用いる実施例が177mと最も長く、コヒーレント光が主体の光で形成される付加配光パターンP2
Hiを、インコヒーレント光が主体の光で形成される基本配光パターンP1
Hiに重畳することで、遠方視認性に優れたハイビーム用配光パターンP
Hiを形成できることが分かる。
【0148】
ハイビーム用配光パターンP
Hiが遠方視認性に優れたものとなるのは、付加配光パターンP2
Hiが、第1光源66aより輝度が高く、かつ、第1光源66aより指向角が狭い第2光源18bからの光で形成される結果、当該付加配光パターンP2
Hiの光度が相対的に高くなることに加え、当該付加配光パターンP2
Hiが、コヒーレント光が主体の光によって形成されることによるものである。すなわち、コヒーレント光が主体の光は、インコヒーレント光が主体の光と比べ、位相が揃った光であり、発散が少なく直進性が高い光であるため、付加配光パターンP2
Hiを、コヒーレント光が主体の光によって形成することで、より遠方まで照射することができる(
図28(c)参照)ことによるものである。
【0149】
本実施形態によれば、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体(波長変換部材)が省略された車両用灯具10(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)を提供することができる。
【0150】
蛍光体を省略することができるのは、SC光源12が出力するSC光が既に白色光であることによるものである。
【0151】
従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高くなるのは、SC光のスペクトルが太陽光に近い連続性を持つことによるものである。
【0152】
色分離発生を抑制することができるのは、蛍光体を用いていないため、SC光の色が角度に応じて変化しない(又はほとんど変化しない)ことによるものである。
【0153】
また、本実施形態によれば、基本配光パターンP1
Hiがインコヒーレント光が主体の光で形成され、付加配光パターンP2
Hiがコヒーレント光が主体の光で形成され、両者が重畳される結果、遠方視認性に優れたハイビーム用配光パターンP
Hiを形成することができる。
【0154】
なお、集光レンズ72として、第2光源18bからの光を投影レンズ66bの後側焦点F
66bに集光させるレンズ(
図29(a)参照)を用いることで、付加配光パターンP2
Hiの光度をさらに高くすることができ、遠方視認性をさらに向上させることができる。
【0155】
また、集光レンズ72として、第2光源18bからの光をコリメートするレンズ(
図29(b)参照)を用いることで、
図29(a)の場合と比べ、付加配光パターンP2
Hiの縦幅及び/又は横幅を広くできるため、広範囲を明るく照射することができる。
【0156】
また、集光レンズ72として、第2光源18bからの光を拡散させるレンズ(
図29(c)参照)を用いることで、
図29(b)の場合と比べ、付加配光パターンP2
Hiの縦幅及び/又は横幅をさらに広くできるため、さらに広範囲を明るく照射することができる。
【0157】
なお、本実施形態では、基本配光パターンP1
Hi及び付加配光パターンP2
Hiを1つの灯具ユニット66で実現した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基本配光パターンP1
Hiを一の灯具ユニット(例えば、プロジェクタ型灯具ユニット、リフレクタ型灯具ユニット、ダイレクトプロジェクション型(直射型)灯具ユニット又は導光レンズ型灯具ユニット)で実現し、付加配光パターンP2
Hiを他の灯具ユニット(例えば、プロジェクタ型灯具ユニット、リフレクタ型灯具ユニット、ダイレクトプロジェクション型(直射型)灯具ユニット又は導光レンズ型灯具ユニット)で実現してもよい。
【0158】
次に、変形例である車両用灯具64A(灯具ユニット66A)について図面を参照しながら説明する。
【0159】
図30は、変形例である車両用灯具64A(灯具ユニット66A)の縦断面図である。
【0160】
図30に示すように、灯具ユニット66Aは、
図31に示す基本配光パターンP1
Loと付加配光パターンP2
Loとが重畳されたロービーム用配光パターンP
Lo(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたロービーム用の灯具ユニットであり、第2実施形態である車両用灯具64(灯具ユニット66)に対して遮光部材66dを追加したものに相当する。
【0161】
以下、第2実施形態である車両用灯具64(灯具ユニット66)との相違点を中心に説明し、第2実施形態である車両用灯具64(灯具ユニット66)と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0162】
遮光部材66dは、出射面66bの後側焦点F
66b近傍から後方に向かって略水平方向に延びた平面形状の反射面として構成されている。
【0163】
反射面66cで反射された第1光源66aからの光RayA(インコヒーレント光が主体の光)のうち遮光部材66dによって一部遮光された光及び遮光部材66dで反射された光は、出射面66bから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に遮光部材66dの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む基本配光パターンP1
Loを形成する。
【0164】
一方、第2光源18bからの光RayB(コヒーレント光が主体の光)のうち遮光部材66dによって一部遮光された光及び遮光部材66dで反射された光は、出射面66bから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に遮光部材66dの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む付加配光パターンP2
Loを形成する。この付加配光パターンP2
Loが基本配光パターンP1
Loに重畳されることで、合成配光パターンであるロービーム用配光パターンP
Loが形成される。
【0165】
このロービーム用配光パターンP
Loは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0166】
なお、本変形例では、基本配光パターンP1
Lo及び付加配光パターンP2
Loを1つの灯具ユニット66Aで実現した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基本配光パターンP1
Loを一の灯具ユニット(例えば、プロジェクタ型灯具ユニット、リフレクタ型灯具ユニット、ダイレクトプロジェクション型(直射型)灯具ユニット又は導光レンズ型灯具ユニット)で実現し、付加配光パターンP2
Loを他の灯具ユニット(例えば、プロジェクタ型灯具ユニット、リフレクタ型灯具ユニット、ダイレクトプロジェクション型(直射型)灯具ユニット又は導光レンズ型灯具ユニット)で実現してもよい。
【0167】
次に、他の変形例である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0168】
図32は、他の変形例である車両用灯具64B(灯具ユニット66B)の縦断面図である。
【0169】
図32に示すように、灯具ユニット66Bは、ハイビーム又はロービームに切り替え可能な灯具ユニットであり、第2実施形態である車両用灯具64(灯具ユニット66)に対して可動式の遮光部材66Bdを追加したものに相当する。
【0170】
以下、第2実施形態である車両用灯具64(灯具ユニット66)との相違点を中心に説明し、第2実施形態である車両用灯具64(灯具ユニット66)と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0171】
遮光部材66Bd(反射面)は、
図32中紙面に直交する方向に延びる回転軸AX
66Bdを中心に回転可能に支持されている。
【0172】
遮光部材66Bdは、ステッピングモータ等のアクチュエータによって回転制御されることで、ハイビーム点灯時には、ハイビーム位置(
図32中符号outが示す位置参照)まで回転して停止し、ロービーム点灯時には、ロービーム位置(
図32中符号inが示す位置参照)まで回転して停止する。
【0173】
ハイビーム位置は、遮光部材66Bdが反射面66cで反射された第1光源66aからの光及び第2光源18bからの光を遮光しない位置で、ロービーム位置は、遮光部材66Bdが第1光源66aからの光及び第2光源18bからの光を遮光する位置、例えば、遮光部材66Bdが出射面66bの後側焦点F
66b近傍から後方に向かって略水平方向に延びた状態となる位置である。
【0174】
遮光部材66Bdがハイビーム位置に停止している場合、反射面66cで反射された第1光源66aからの光RayA(インコヒーレント光が主体の光)は、出射面66bから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、基本配光パターンP1
Hiを形成する。
【0175】
一方、第2光源18bからの光RayB(コヒーレント光が主体の光)は、出射面66bから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、付加配光パターンP2
Hiを形成する。この付加配光パターンP2
Hiが基本配光パターンP1
Hiに重畳されることで、合成配光パターンであるハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。
【0176】
このハイビーム用配光パターンP
Hiは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0177】
一方、遮光部材66Bdがロービーム位置に停止している場合、反射面66cで反射された第1光源66aからの光RayA(インコヒーレント光が主体の光)のうち遮光部材66Bdによって一部遮光された光及び遮光部材66Bdで反射された光は、出射面66bから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に遮光部材66Bdの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む基本配光パターンP1
Loを形成する。
【0178】
一方、第2光源18bからの光RayB(コヒーレント光が主体の光)のうち遮光部材66Bdによって一部遮光された光及び遮光部材66Bdで反射された光は、出射面66bから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に遮光部材66Bdの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む付加配光パターンP2
Loを形成する。この付加配光パターンP2
Loが基本配光パターンP1
Loに重畳されることで、合成配光パターンであるロービーム用配光パターンP
Loが形成される。
【0179】
このロービーム用配光パターンP
Loは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0180】
次に、第3実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0181】
図33は、本発明の第3実施形態である車両用灯具74の縦断面図である。
【0182】
以下、第1実施形態である車両用灯具10との相違点を中心に説明し、第1実施形態である車両用灯具10と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0183】
車両用灯具74は、
図23に示す基本配光パターンP1
Hiと付加配光パターンP2
Hiとが重畳されたハイビーム用配光パターンP
Hi(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたハイビーム用の車両用灯具であり、
図33に示すように、第1光源66a、レンズ体76、可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12(
図33中省略)、SC光源12が出力するSC光のうち、予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光を除去(カット)する除去手段14(
図33中省略)、SC光源12が出力するSC光をレンズ体76まで伝搬する伝送用光ファイバ18等を備えた車両用前照灯として構成されている。
【0184】
レンズ体76は、車両前後方向に延びる第1基準軸AX1に沿って延びた形状のレンズ体である。レンズ体76の材料は、ポリカーボネイトであってもよいし、それ以外のアクリル等の透明樹脂であってもよいし、ガラスであってもよい。
【0185】
レンズ体76の後端部は、第1入射面76a、第2入射面76bを含んでいる。
【0186】
第1入射面76aは、当該第1入射面76a近傍に配置される第1光源66aからの光RayAがレンズ体76内部に入射する面(例えば、第1光源66aに向かって凸の自由曲面)で、レンズ体76内部に入射した第1光源66aからの光RayAが、少なくとも鉛直方向に関し、出射面76cの後側焦点F
76c近傍に向かって第2基準軸AX2寄りに集光するように、その面形状が構成されている。第2基準軸AX2は、第1光源66aの中心(正確には、基準点F
66a)と出射面76cの後側焦点F
76c近傍の点とを通過し、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜している。第1入射面76aは、レンズ体76の後端部のうち第1基準軸AX1から上方に離間した位置に配置されている。
【0187】
第2入射面76bは、当該第2入射面76b近傍に配置される第2光源18bからの光RayBがレンズ体76内部に入射する面(例えば、第2光源18bに向かって凸の自由曲面)で、レンズ体76内部に入射した第2光源18bからの光RayBが、少なくとも鉛直方向に関し、出射面76cの後側焦点F
76c近傍に集光するように、その面形状が構成されている。第2入射面76bは、レンズ体76の後端部のうち第1入射面76aと第1基準軸AX1との間の位置に配置されている。
【0188】
第1光源66aより指向角が狭い第2光源18bからの光に応じて、第2入射面76bは、第1入射面76aより小サイズとされている。
【0189】
第1光源66aは、その発光面が第1入射面76aに対向した状態で放熱板等の保持部材68に固定されて当該第1入射面76a近傍(基準点F
76a近傍)に配置されている。第1光源66aの光軸AX
66aは、第2基準軸AX2に一致(又は略一致)している。
【0190】
第1光源66aから出射する光RayA(インコヒーレント光が主体の光)は、第1入射面76aからレンズ体76内部に入射し、第2基準軸AX2寄りに集光(例えば、出射面76cの後側焦点F
76c近傍に集光)した後、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターンP1
Hiを形成する。なお、第1入射面76a及び出射面76cが本発明の第1光学系に相当する。
【0191】
伝送用光ファイバ18は、その出射端面18b(第2光源18b)が第2入射面76bに対向した状態でスリーブ等の保持部材に固定されて当該第2入射面76b近傍(基準点F
76b近傍)に配置されている。伝送用光ファイバ18の光軸AX
18は、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜している(例えば、5°程度傾斜している)。
【0192】
レンズ体76の前端部は、出射面76cを含んでいる。出射面76cは、前方に向かって凸のレンズ面で、当該出射面76cの後側焦点F
76c近傍に形成される光度分布(光源像)を反転投影することで、付加配光パターンP2
Hiを形成する。
【0193】
SC光源12が出力する可視波長領域を含むSC光(コヒーレント光が主体の光)は、除去手段14によって予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光が除去された後、集光レンズ20(
図16参照)で集光され、伝送用光ファイバ18の入射端面18aから当該伝送用光ファイバ18内部に導入されて出射端面18bまで伝搬されて当該出射端面18bから出射し(
図33中符号RayBが示す点線参照)、第2入射面76bからレンズ体76内部に入射し、出射面76cの後側焦点F
76c近傍に集光した後、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に付加配光パターンP2
Hiを形成する。この付加配光パターンP2
Hiが基本配光パターンP1
Hiに重畳されることで、合成配光パターンであるハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。なお、第2入射面76b及び出射面76cが本発明の第2光学系に相当する。
【0194】
このハイビーム用配光パターンP
Hiは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0195】
本実施形態によれば、基本配光パターンP1
Hiがインコヒーレント光が主体の光で形成され、付加配光パターンP2
Hiがコヒーレント光が主体の光で形成され、両者が重畳される結果、遠方視認性に優れたハイビーム用配光パターンP
Hiを形成することができる。
【0196】
次に、変形例である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0197】
図34は、変形例である車両用灯具74Aの縦断面図である。
【0198】
図34に示すように、車両用灯具74Aは、
図31に示す基本配光パターンP1
Loと付加配光パターンP2
Loとが重畳されたロービーム用配光パターンP
Lo(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたロービーム用の車両用灯具(灯具ユニット)であり、第3実施形態である車両用灯具74に対して反射面76dを追加したものに相当する。
【0199】
以下、第3実施形態である車両用灯具74との相違点を中心に説明し、第3実施形態である車両用灯具74と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0200】
レンズ体76Aは、当該レンズ体76Aの前端部と後端部との間に配置された反射面76dを含むレンズ体として構成されている。
【0201】
反射面76dは、出射面76cの後側焦点F
76c近傍から後方に向かって略水平方向に延びた平面形状の反射面として構成されている。
【0202】
第1入射面76aからレンズ体76A内部に入射した第1光源66aからの光RayA(インコヒーレント光が主体の光)のうち反射面76dによって一部遮光された光及び反射面76dで反射された光は、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に反射面76dの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む基本配光パターンP1
Loを形成する。
【0203】
一方、第2入射面76bからレンズ体76A内部に入射した第2光源18bからの光RayB(コヒーレント光が主体の光)のうち反射面76dによって一部遮光された光及び反射面76dで反射された光は、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に反射面76dの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む付加配光パターンP2
Loを形成する。この付加配光パターンP2
Loが基本配光パターンP1
Loに重畳されることで、合成配光パターンであるロービーム用配光パターンP
Loが形成される。
【0204】
このロービーム用配光パターンP
Loは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0205】
次に、他の変形例である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0206】
図35は、他の変形例である車両用灯具74Bの縦断面図である。
【0207】
図35に示すように、車両用灯具74Bは、ハイビーム又はロービームに切り替え可能な車両用灯具(灯具ユニット)であり、第3実施形態である車両用灯具74に対して回転レンズ部76eを追加したものに相当する。
【0208】
以下、第3実施形態である車両用灯具74との相違点を中心に説明し、第3実施形態である車両用灯具74と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0209】
レンズ体76Bは、当該レンズ体76Bの前端部と後端部との間に配置された回転レンズ部76eを含むレンズ体として構成されている。
【0210】
回転レンズ部76eは、反射面76dを含むレンズ部で、レンズ体76Bに対して、
図35中紙面に直交する方向に延びる回転軸AX
76eを中心に回転可能に支持されている。
【0211】
回転レンズ部76e(反射面76d)は、ステッピングモータ等のアクチュエータによって回転制御されることで、ハイビーム点灯時には、ハイビーム位置(
図35中符号outが示す位置参照)まで回転して停止し、ロービーム点灯時には、ロービーム位置(
図35中符号inが示す位置参照)まで回転して停止する。
【0212】
ハイビーム位置は、反射面76dがレンズ体76B内部に入射した第1光源66aからの光及び第2光源18bからの光を遮光しない位置で、ロービーム位置は、反射面76dがレンズ体76B内部に入射した第1光源66aからの光及び第2光源18bからの光を遮光する位置、例えば、反射面76dが出射面76cの後側焦点F
76c近傍から後方に向かって略水平方向に延びた状態となる位置である。
【0213】
回転レンズ部76eがハイビーム位置に停止している場合、第1入射面76aからレンズ体76B内部に入射した第1光源66aからの光RayA(インコヒーレント光が主体の光)は、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、基本配光パターンP1
Hiを形成する。
【0214】
一方、第2入射面76bからレンズ体76B内部に入射した第2光源18bからの光RayB(コヒーレント光が主体の光)は、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、付加配光パターンP2
Hiを形成する。この付加配光パターンP2
Hiが基本配光パターンP1
Hiに重畳されることで、合成配光パターンであるハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。
【0215】
このハイビーム用配光パターンP
Hiは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0216】
一方、回転レンズ部76eがロービーム位置に停止している場合、第1入射面76aからレンズ体76B内部に入射した第1光源66aからの光RayA(インコヒーレント光が主体の光)のうち反射面76dによって一部遮光された光及び反射面76dで内面反射(全反射)された光は、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に反射面76dの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む基本配光パターンP1
Loを形成する。
【0217】
一方、第2入射面76bからレンズ体76B内部に入射した第2光源18bからの光RayB(コヒーレント光が主体の光)のうち反射面76dによって一部遮光された光及び反射面76dで内面反射(全反射)された光は、出射面76cから出射して前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に、上端縁に反射面76dの前端縁によって規定されるカットオフラインを含む付加配光パターンP2
Loを形成する。この付加配光パターンP2
Loが基本配光パターンP1
Loに重畳されることで、合成配光パターンであるロービーム用配光パターンP
Loが形成される。
【0218】
このロービーム用配光パターンP
Loは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0219】
次に、第4実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0220】
図36は、本発明の第4実施形態である車両用灯具78の縦断面図である。
【0221】
以下、第1実施形態である車両用灯具10との相違点を中心に説明し、第1実施形態である車両用灯具10と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0222】
車両用灯具78は、
図23に示す基本配光パターンP1
Hiと付加配光パターンP2
Hiとが重畳されたハイビーム用配光パターンP
Hi(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたハイビーム用の車両用灯具であり、
図36に示すように、第1光源66a、第1反射面80a、第2反射面80b、可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12(
図36中省略)、SC光源12が出力するSC光のうち、予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光を除去(カット)する除去手段14(
図36中省略)、SC光源12が出力するSC光を第2反射面80bまで伝搬する伝送用光ファイバ18等を備えた車両用前照灯として構成されている。なお、第1反射面80a、第2反射面80bの面形状を調整することで、
図31に示す基本配光パターンP1
Loと付加配光パターンP2
Loとが重畳されたロービーム用配光パターンP
Lo(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたロービーム用の車両用灯具を構成することもできる。
【0223】
第1光源66aは、その発光面が上方向を向いた状態で、放熱板等の保持部材68に固定されて車両前後方向に延びる基準軸AX(光軸とも称される)近傍、かつ、第1反射面80aの焦点F
80a近傍に配置されている。
【0224】
第1反射面80aは、焦点F
80aが第1光源66a近傍に設定された回転放物面系反射面(回転放物面又はこれに類する自由曲面等)で、当該第1反射面80aで反射されて前方に照射される第1光源66aからの光によって仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターンP1
Hiが形成されるように、その面形状が調整されている。
【0225】
第1反射面80aは、上向き(半球方向)に放出される第1光源66aからの光が入射するように、第1光源66aの側方から上方にかけての範囲(但し、第1反射面80aからの反射光が通過する車両前方側領域を除く)をドーム状に覆っている。第1反射面80aは、その周縁下端部において放熱板等の保持部材68に固定されている。
【0226】
第1光源66aが放出する光RayA(インコヒーレント光が主体の光)は、第1反射面80aで反射され、前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターンP1
Hiを形成する。なお、第1反射面80aが本発明の第1光学系に相当する。
【0227】
伝送用光ファイバ18は、その出射端面18b(第2光源18b)が上方向を向いた状態でスリーブ等の保持部材に固定されて第1反射面80aの前端縁より前方、かつ、基準軸AXより下方に配置されている。
【0228】
第2反射面80bは、焦点F
80bが第2光源18b近傍に設定された回転放物面系反射面(回転放物面又はこれに類する自由曲面等)で、当該第2反射面80bで反射されて前方に照射される第2光源18bからの光によって仮想鉛直スクリーン上に付加配光パターンP2
Hiが形成されるように、その面形状が調整されている。
【0229】
第2反射面80bは、上向き(半球方向)に放出される第2光源18bからの光が入射するように、第1反射面80aの前端縁より前方、かつ、第1反射面80aからの反射光を遮らない位置に配置されている。
【0230】
第1反射面80a及び第2反射面80bは、物理的に一体化された反射部材として構成してもよいし、物理的に分離した個々の反射部材として構成し、これらを組み合わせて構成してもよい。第1反射面80a及び第2反射面80bを物理的に一体化された反射部材として構成する場合、第1反射面80a及び第2反射面80bを各々の反射部材として構成する場合と比べ、部品点数の削減、組み付け工程の簡略化、組み付け誤差の低減等が可能となる。
【0231】
SC光源12が出力する可視波長領域を含むSC光(コヒーレント光が主体の光)は、除去手段14によって予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光が除去された後、集光レンズ20(
図16参照)で集光され、伝送用光ファイバ18の入射端面18aから当該伝送用光ファイバ18内部に導入されて出射端面18bまで伝搬されて当該出射端面18bから出射し(
図36中符号RayBが示す点線参照)、第2反射面80bで反射され、前方に照射されて仮想鉛直スクリーン上に付加配光パターンP2
Hiを形成する。この付加配光パターンP2
Hiが基本配光パターンP1
Hiに重畳されることで、合成配光パターンであるハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。なお、第2入射面80bが本発明の第2光学系に相当する。
【0232】
このハイビーム用配光パターンP
Hiは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0233】
本実施形態によれば、基本配光パターンP1
Hiがインコヒーレント光が主体の光で形成され、付加配光パターンP2
Hiがコヒーレント光が主体の光で形成され、両者が重畳される結果、遠方視認性に優れたハイビーム用配光パターンP
Hiを形成することができる。
【0234】
次に、変形例である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0235】
図37は、変形例である車両用灯具78Aの縦断面図である。
【0236】
図37に示すように、車両用灯具78Aは、
図23に示す基本配光パターンP1
Hiと付加配光パターンP2
Hiとが重畳されたハイビーム用配光パターンP
Hi(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたハイビーム用の車両用灯具であり、第4実施形態である車両用灯具78(灯具ユニット)中の第1反射面80aの一部を第2反射面80bとし、かつ、伝送用光ファイバ18の光軸AX
18を基準軸AXに対して後方斜め上方に向かって傾斜させたものに相当する。
【0237】
本変形例によれば、第4実施形態と同様、第1反射面80aで反射された第1光源66aからの光(インコヒーレント光が主体の光)によって仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターンP1
Hiが形成され、かつ、第2反射面80bで反射された第2光源18bからの光(コヒーレント光が主体の光)によって付加配光パターンP2
Hiが形成され、この付加配光パターンP2
Hiが基本配光パターンP1
Hiに重畳されることで、合成配光パターンであるハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。
【0238】
このハイビーム用配光パターンP
Hiは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0239】
次に、他の変形例である車両用灯具78Bについて図面を参照しながら説明する。
【0240】
図38は、他の変形例である車両用灯具78Bの縦断面図である。
【0241】
図38に示すように、車両用灯具86は、
図23に示す基本配光パターンP1
Hiと付加配光パターンP2
Hiとが重畳されたハイビーム用配光パターンP
Hi(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたハイビーム用の車両用灯具であり、第4実施形態である車両用灯具78(灯具ユニット)中の第2反射面80bを省略し、伝送用光ファイバ18の出射端部を第1反射面80aのうち基準軸AX寄りの領域に形成された貫通穴80a1に対向した状態で配置し、かつ、第2光源18bと貫通穴80a1との間に、第2光源18bからの光を集光する集光レンズ88を配置したものに相当する。
【0242】
本変形例によれば、第4実施形態と同様、第1反射面80aで反射された第1光源66aからの光(インコヒーレント光が主体の光)によって仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターンP1
Hiが形成され、かつ、第2光源18bからの光(コヒーレント光が主体の光)によって付加配光パターンP2
Hiが形成され、この付加配光パターンP2
Hiが基本配光パターンP1
Hiに重畳されることで、合成配光パターンであるハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。
【0243】
このハイビーム用配光パターンP
Hiは、第2実施形態と同様の理由で、その一部、例えば、中心光度(H線とV線との交点近傍)が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0244】
次に、第5実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
【0245】
図39は本発明の第5実施形態である車両用灯具10Aの斜視図、
図40は縦断面図、
図41は車両用灯具10Aにより車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるすれ違いビーム用配光パターンP
Loの例である。
【0246】
以下、第1実施形態である車両用灯具10との相違点を中心に説明し、第1実施形態である車両用灯具10と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0247】
図39、
図40に示すように、車両用灯具10Aは、車両前後方向に延びる基準軸AX(光軸とも称される)上に発光面12Aaが前方を向いた状態で配置された光源12Aと、光源12A(発光面12Aa)の前方に配置されたレンズ体14Aとを備え、レンズ体14Aを透過して前方に照射される光源12A(発光面12Aa)からの光により、
図41に示すように、その上端縁に、左水平カットオフラインCL1、右水平カットオフラインCL2及び左水平カットオフラインCL1と右水平カットオフラインCL2との間の斜めカットオフラインCL3を含むすれ違いビーム用配光パターンP
Loを形成する車両用前照灯として構成されている。もちろん、これに限らず、走行ビーム用配光パターンP
Hiを形成する車両用前照灯や車両用前照灯以外の車両用灯具(例えば、フォグランプ)として構成することもできる。
【0248】
光源12Aは、レーザー光源16A、集光レンズ18A、波長変換部材20A、これらを保持するホルダ22A等を備えている。ホルダ22Aは、集光レンズ18Aを保持するレンズホルダ22Aa、レンズホルダ22Aaに固定されたリング22Ab、リング22Abに固定された接続フランジ22Acを組み合わせて構成されている。
【0249】
レーザー光源16Aは、青色域(例えば、発光波長が450nm)のレーザー光を放出するレーザー光源で、具体的には、レーザーダイオード(LD素子)を含んでパッケージ化されたキャン型の半導体レーザー光源として構成されている。なお、レーザー光源16Aは、近紫外域(例えば、発光波長が405nm)又はそれ以外のレーザー光を放出するレーザー光源であってもよい。レーザー光源16Aで発生する熱は、これが固定されたヒートシンク24Aで放熱されて冷却される。
【0250】
波長変換部材20Aは、集光レンズ18Aで集光されるレーザー光源16Aからのレーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部をレーザー光と異なる波長の光に変換する波長変換部材で、具体的には、青色域(例えば、発光波長が450nm)のレーザー光によって励起されて黄色光を発光する板状又は層状の蛍光体として構成されている。
【0251】
波長変換部材20Aは、矩形の発光面12Aa(例えば、縦0.4×横0.8mmのアスペクト比1:2)を構成している。
【0252】
なお、波長変換部材20Aは、近紫外域(例えば、発光波長が405nm)のレーザー光によって励起されて赤、緑、青の3色の光を発光する板状又は層状の蛍光体として構成されていてもよい。
【0253】
青色域のレーザー光が照射された場合、波長変換部材20Aは、これを透過する青色域のレーザー光と青色域のレーザー光による発光(黄色光)との混色による白色光(疑似白色光)を放出する。一方、近紫外域のレーザー光が照射された場合、波長変換部材20Aは、近紫外域のレーザー光による発光(赤、緑、青の3色の光)の混色による白色光(疑似白色光)を放出する。
【0254】
なお、光源12Aは、矩形の発光面を含む光源であればよく、白色LED光源等の半導体発光素子であってもよいし、それ以外の光源であってもよい。
【0255】
光源12A(発光面12Aa)から放出される光の指向特性はランバーシアンで、I(θ)=I
0×cosθで表すことができる。これは、光源12A(発光面12Aa)が放出する光の広がりを表している。但し、I(θ)は光源12A(発光面12Aa)の光軸AX
12から角度θ傾いた方向の光度を表し、I
0は光軸AX
12上の光度を表している。光源12A(発光面12Aa)では、光軸AX
12上(θ=0)の光度が最大となる。なお、光源12A(発光面12Aa)の光軸AX
12は、発光面12Aaの中心を通り、かつ、発光面12Aaに対して垂直の方向に延びている。
【0256】
光源12Aは、発光面12Aaが前方を向き、発光面12Aaの下端縁(長辺)が基準軸AXに直交する水平線に一致し、かつ、発光面12Aaの下端縁(長辺)がレンズ体14Aの光学設計上の基準点F近傍に位置した状態でレンズホルダ34Aに固定されている。
【0257】
レンズ体14Aは、基準軸AX上に配置された中央レンズ部26Aと、中央レンズ部26Aを取り囲むように配置された中間レンズ部28A(本発明の周囲レンズ部に相当)と、中間レンズ部28Aを取り囲むように配置された外周レンズ部30A(本発明の周囲レンズ部に相当)と、フランジ部32Aと、光学設計上の基準点Fと、を含んでいる。レンズ体14Aは、フランジ部32Aがレンズホルダ34Aに固定されて、光源12A(発光面12Aa)の前方に配置されている。レンズ体14Aの材料は、ポリカーボネイトであってもよいし、それ以外のアクリル等の透明樹脂であってもよいし、ガラスであってもよい。
【0258】
図42は、レンズ体14Aの光取り込み角θ
1〜θ
3等を説明するための図である。
【0259】
図42に示すように、レンズ体14Aの直径Dは例えば32mm、中央レンズ部26A(中央入射面26Aaの頂点)と光源12A(発光面12Aa)との間の距離LLは例えば2.5mmである。レンズ体14Aの直径Dと、中央レンズ部26A(中央入射面26Aaの頂点)と光源12A(発光面12Aa)との間の距離LLとの比は例えば12:1である。中央レンズ部26Aの直径LWと、中央レンズ部26A(中央入射面26Aaの頂点)と光源12A(発光面12Aa)との間の距離LLとの比は例えば3.4:1である。中央レンズ部26Aの光取り込み角θ
1は例えば0〜38度、中間レンズ部28Aの光取り込み角θ
2は例えば38〜57度(45度のバックフォーカス3.3(LL比))、外周レンズ部30Aの光取り込み角θ
3は例えば57〜85度(71度のバックフォーカス4.5(LL比))である。
【0260】
まず、中央レンズ部26Aの構成について説明する。
【0261】
中央レンズ部26Aは、光源12A(発光面12Aa)が対向する中央レンズ部26Aの後端部に形成された中央入射面26Aaと、中央レンズ部26Aの前端部に形成された中央出射面26Abと、を含むレンズ部である。
【0262】
中央レンズ部26Aは、中央入射面26Aaから中央レンズ部26A内部に入射し、中央出射面26Abから出射する光源12Aからの光RayAにより、拡散パターンS−WW(
図44参照。本発明の第1配光パターンに相当)を形成するレンズ部として構成されている。具体的には、次のように構成されている。
【0263】
中央入射面26Aaは、
図42に示すように、光源12Aの光軸AX
12に対して狭角方向(例えば、光取り込み角θ
1:0〜38度の範囲)に放出される相対強度が強い光RayAが中央レンズ部26A内部に入射する面で、光源12Aが対向する中央レンズ部26Aの後端部の基準軸AXを中心とする円形領域に、光源12Aに向かって凸の面として形成されている。
【0264】
中央入射面26Aaは、当該中央入射面26Aaから中央レンズ部26A内部に入射する光源12Aからの光RayAを基準軸AXに対して平行な光に変換するように、その面形状が構成されている。
【0265】
中央入射面26Aaのうち波長変換部材20Aがホルダ22Aから脱落した場合に集光レンズ18Aで集光されたレーザー光源16Aからのレーザー光が照射される領域には、遮光膜又は反射膜を施しておくのが望ましい。これにより、波長変換部材20A脱落時のフェールセーフを実現することができる。中央レンズ部26Aと光源12A(発光面12Aa)との間の距離LLが短いため、遮光膜又は反射膜を最小限のサイズに抑えることができる。
【0266】
中央出射面26Abは、中央入射面26Aaから中央レンズ部26A内部に入射する光源12Aからの光RayAが出射する面で、中央レンズ部26Aの前端部の基準軸AXを中心とする円形領域に形成されている。
【0267】
次に、中央出射面26Abと光源像との関係について説明する。
【0268】
図43は、車両用灯具10の正面図(レンズ体14Aからの出射光により、仮想鉛直スクリーン上に配置される光源像を含む)である。
図44は、レンズ体14Aからの出射光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される各配光パターンの例である。
【0269】
仮に、中央出射面26Abが基準軸AXに直交する平面である場合、当該中央出射面26Abからの出射光RayAによる光源像L−WWは、
図43に示すとおりのものとなる。
【0270】
実際には、中央出射面26Abは平面ではなく当該中央出射面26Abからの出射光RayAが水平方向に均等に拡散して、拡散パターンS−WW(
図44参照。本発明の第1配光パターンに相当)を形成するように、その面形状が構成されている。
【0271】
図44中、拡散パターンS−WWは、その左右両端がL40度、R40度近傍まで延びている。これは、拡散パターンS−WWの左右両端がL40度、R40度近傍まで延びるように、中央出射面26Abの面形状が調整されていることによるものである。このように、中央出射面26Abの面形状を調整することで、拡散パターンS−WWの水平方向の拡散の程度を、所望のものとすることができる。
【0272】
拡散パターンS−WWは、その水平線Hに沿った領域がそれ以下の領域と比べて明るいものとなる。これは、光源12A(発光面12Aa)の下端縁(長辺)がレンズ体14Aの光学設計上の基準点F近傍に位置しており、光源12A(発光面12Aa)全体が基準点Fより上に配置されていることによるものである。
【0273】
拡散パターンS−WWは、光軸AX
12方向へ向かう青色寄りの光で形成されるため、周辺視による視認性が向上する。拡散パターンS−WWが光軸AX
12(基準軸AX)方向へ向かう青色寄りの光で形成されるのは、光源12Aとして発光色が青系のレーザー光源16Aと発光色が黄系の波長変換部材20Aとを組み合わせた光源を用いた場合、波長変換部材20A内を通過するレーザー光の距離差に起因して、光軸AX
12(基準軸AX)方向へ向かう光が青色寄りの光となり、光軸AX
12(基準軸AX)に対する角度がより大きい方向へ向かう光が黄色寄りの光となることによるものである。
【0274】
次に、中間レンズ部28Aの構成について説明する。
【0275】
中間レンズ部28Aは、
図42に示すように、中間レンズ部28Aの後端部に中央レンズ部26Aを取り囲むように形成された中間入射面28Aaと、中間レンズ部28Aの後端部に中間入射面28Aaを取り囲むように形成された中間反射面28Abと、中間レンズ部28Aの前端部に中央出射面26Abを取り囲むように形成された中間出射面28Acと、を含むレンズ部である。
【0276】
中間レンズ部28Aは、中間入射面28Aaから中間レンズ部28A内部に入射し、中間反射面28Abで内面反射(全反射)された後、中間出射面28Acから出射する光源12Aからの光RayBにより、拡散パターンS−WWより狭いパターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M3a、S−M3b、S−M4、S−S1、S−S2、S−S3、S−S4(
図44参照。本発明の第2配光パターンに相当)を形成するレンズ部として構成されている。具体的には、次のように構成されている。
【0277】
中間入射面28Aaは、光源12Aの光軸AX
12に対して中角方向(例えば、光取り込み角θ
2:38〜57度の範囲)に放出される相対強度が弱い光RayBが中間レンズ部28A内部に入射する面で、中間レンズ部28Aの後端部に、中央レンズ部26Aを取り囲むように形成されている。
【0278】
中間反射面28Abは、中間入射面28Aaから中間レンズ部28A内部に入射する光源12Aからの光RayBを中間出射面28Acに向けて内面反射(全反射)する面で、中間レンズ部28Aの後端部に、中間入射面28Aaを取り囲むように形成されている。
【0279】
中間反射面28Abは、中間入射面28Aaから中間レンズ部28A内部に入射する光源12Aからの光RayBを基準軸AXに対して平行な光に変換するように、その面形状が構成されている。
【0280】
中間出射面28Acは、中間反射面28Abからの反射光RayBが出射する面で、中間レンズ部28Aの前端部に、中央出射面26Abを取り囲むように形成されている。
【0281】
図43に示すように、中間出射面28Acは、中央レンズ部26A(中央出射面26Ab)から放射状に延びる複数の境界線により複数の扇形の出射領域M1a、M1b、M2、M3a、M3b、M4、S1、S2、S3、S4に区画されている。
【0282】
複数の扇形の出射領域M1a、M1b、M2、M3a、M3b、M4、S1、S2、S3、S4のうち出射光RayBによる光源像の一辺が斜めカットオフラインCL3の角度(又はそれ以下の角度)となる出射領域S1、S2、S3、S4は、水平線H及び鉛直線V近傍に配置されている。例えば、出射領域S1は正面視で鉛直線Vに対して右、かつ、水平線Hに対して上7.5°〜22.5°の扇形領域に配置され、出射領域S3は正面視で鉛直線Vに対して左、かつ、水平線Hに対して下7.5°〜22.5°の扇形領域に配置されている。出射領域S2は正面視で水平線Hに対して下、かつ、鉛直線Vに対して右10〜30°の扇形領域に配置され、出射領域S4は正面視で水平線Hに対して上、かつ、鉛直線Vに対して左10〜30°の扇形領域に配置されている。
【0283】
次に、出射領域S1、S2、S3、S4と光源像との関係について説明する。
【0284】
仮に、出射領域S1、S2、S3、S4が基準軸AXに直交する平面である場合、当該出射領域S1、S2、S3、S4からの出射光RayBによる光源像L−S1、L−S2、L−S3、L−S4は、
図43に示すとおりのものとなる。
【0285】
実際には、出射領域S1、S2、S3、S4は平面ではなく当該出射領域S1、S2、S3、S4からの出射光RayBによる光源像L−S1、L−S2、L−S3、L−S4(集光パターンS−S1、S−S2、S−S3、S−S4。
図44参照)が、各々の一辺が斜めカットオフラインCL3に沿った状態でかつ光源像L−S1、L−S2、L−S3、L−S4の全体が斜めカットオフラインCL3以下に配置されるように、その面形状が構成されている。
【0286】
このように、一辺が斜めカットオフラインCL3に沿った状態でかつ光源像L−S1、L−S2、L−S3、L−S4(集光パターンS−S1、S−S2、S−S3、S−S4)の全体が斜めカットオフラインCL3以下に配置されることで、斜めカットオフラインCL3を形成することができる。
【0287】
次に、出射領域M1a、M1b、M2、M4と光源像との関係について説明する。
【0288】
仮に、出射領域M1a、M1b、M2、M4が基準軸AXに直交する平面である場合、当該出射領域M1a、M1b、M2、M4からの出射光RayBによる光源像L−M1a、L−M1b、L−M2、L−M4は、
図43に示すとおりのものとなる。
【0289】
実際には、出射領域M1a、M1b、M2、M4は平面ではなく当該出射領域M1a、M1b、M2、M4からの出射光RayBが水平方向に拡散して、上端縁が左水平カットオフラインCL1に沿った状態でかつ拡散パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M4(
図44参照。本発明の第2配光パターンに相当)の全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されるように、その面形状が構成されている(例えば、出射領域M1a、M1b、M2、M4に、当該出射領域M1a、M1b、M2、M4からの出射光RayBを水平方向に拡散させるように構成されたプリズム又はレンズカット等の光学素子が形成されている)。
【0290】
このように、上端縁が左水平カットオフラインCL1に沿った状態でかつ拡散パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M4の全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されることで、左水平カットオフラインCL1を形成することができる。
【0291】
図44中、拡散パターンS−M1aは、その水平方向寸法が約30度となっている。これは、拡散パターンS−M1aの水平方向寸法が約30度となるように、出射領域M1aの面形状が調整されていることによるものである。このように、出射領域M1aの面形状を調整することで、拡散パターンS−M1aの水平方向寸法を、所望のものとすることができる。拡散パターンS−M1b、S−M2、S−M4についても同様である。
【0292】
図44中、拡散パターンS−M1aは、その全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されている。これは、拡散パターンS−M1aの全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されるように、出射領域M1aの傾きが調整されていることによるものである。このように、出射領域M1aの傾きを調整することで、拡散パターンS−M1aを仮想鉛直スクリーン上の所望の箇所に配置することができる。拡散パターンS−M1b、S−M2、S−M4についても同様である。
【0293】
次に、出射領域M3a、M3bと光源像との関係について説明する。
【0294】
仮に、出射領域M3a、M3bが基準軸AXに直交する平面である場合、当該出射領域M3a、M3bからの出射光RayBによる光源像L−M3a、L−M3bは、
図43に示すとおりのものとなる。
【0295】
実際には、出射領域M3a、M3bは平面ではなく当該出射領域M3a、M3bからの出射光RayBが水平方向に拡散して、上端縁が右水平カットオフラインCL2に沿った状態でかつ拡散パターンS−M3a、S−M3b(
図44参照。本発明の第2配光パターンに相当)の全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されるように、その面形状が構成されている(例えば、出射領域M3a、M3bに、当該出射領域M3a、M3bからの出射光RayBを水平方向に拡散させるように構成されたプリズム又はレンズカット等の光学素子が形成されている)。
【0296】
このように、上端縁が右水平カットオフラインCL2に沿った状態でかつ拡散パターンS−M3a、S−M3bの全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されることで、右水平カットオフラインCL2を形成することができる。
【0297】
図44中、拡散パターンS−M3aは、その水平方向寸法が約50度となっている。これは、拡散パターンS−M3aの水平方向寸法が約50度となるように、出射領域M3aの面形状が調整されていることによるものである。このように、出射領域M3aの面形状を調整することで、拡散パターンS−M3aの水平方向寸法を、所望のものとすることができる。拡散パターンS−M3bについても同様である。
【0298】
図44中、拡散パターンS−M3aは、その全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されている。これは、拡散パターンS−M3aの全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されるように、出射領域M3aの傾きが調整されていることによるものである。このように、出射領域M3aの傾きを調整することで、拡散パターンS−M3aを仮想鉛直スクリーン上の所望の箇所に配置することができる。拡散パターンS−M3bについても同様である。
【0299】
図44中、拡散パターンS−M3a、S−M3bは、その左端部が自車線側にまで延びている。これにより、路面正面方向の光度を補い、配光の均一性を確保することができる。
【0300】
次に、外周レンズ部30Aの構成について説明する。
【0301】
外周レンズ部30Aは、
図42に示すように、外周レンズ部30Aの後端部に中間レンズ部28Aを取り囲むように形成された外周入射面30Aaと、外周レンズ部30Aの後端部に外周入射面30Aaを取り囲むように形成された外周反射面30Abと、外周レンズ部30Aの前端部に中間出射面28Acを取り囲むように形成された外周出射面30Acと、を含むレンズ部である。
【0302】
外周レンズ部30Aは、外周入射面30Aaから外周レンズ部30A内部に入射し、外周反射面30Abで内面反射(全反射)された後、外周出射面30Acから出射する光源12Aからの光RayCにより、拡散パターンS−WWより狭いパターンS−E1、S−E2、S−E3、S−E4、S−S1、S−S2、S−S3、S−S4(
図44参照。本発明の第2配光パターンに相当)を形成するレンズ部として構成されている。具体的には、次のように構成されている。
【0303】
外周入射面30Aaは、光源12Aの光軸AX
12に対して中角方向(例えば、光取り込み角θ
3:57〜85度の範囲)に放出される相対強度が弱い光RayCが外周レンズ部30A内部に入射する面で、外周レンズ部30Aの後端部に、中間レンズ部28Aを取り囲むように形成されている。
【0304】
外周反射面30Abは、外周入射面30Aaから外周レンズ部30A内部に入射する光源12Aからの光RayCを外周出射面30Acに向けて内面反射(全反射)する面で、外周レンズ部30Aの後端部に、外周入射面30Aaを取り囲むように形成されている。
【0305】
外周反射面30Abは、外周入射面30Aaから外周レンズ部30A内部に入射する光源12Aからの光RayCを基準軸AXに対して平行な光に変換するように、その面形状が構成されている。
【0306】
外周出射面30Acは、外周反射面30Abからの反射光RayCが出射する面で、外周レンズ部30Aの前端部に、中間出射面28Acを取り囲むように形成されている。
【0307】
図43に示すように、外周出射面30Acは、中央レンズ部26A(中央出射面26Ab)から放射状に延びる複数の境界線により複数の扇形の出射領域E1、E2、E3、E4、S1、S2、S3、S4に区画されている。
【0308】
複数の扇形の出射領域E1、E2、E3、E4、S1、S2、S3、S4のうち出射光RayCによる光源像の一辺が斜めカットオフラインCL3の角度(又はそれ以下の角度)となる出射領域S1、S2、S3、S4は、水平線H及び鉛直線V近傍に配置されている。出射領域S1、S2、S3、S4については既に説明したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0309】
次に、出射領域E1、E2と光源像との関係について説明する。
【0310】
仮に、出射領域E1、E2が基準軸AXに直交する平面である場合、当該出射領域E1、E2からの出射光RayCによる光源像L−E1、L−E2は、
図43に示すとおりのものとなる。
【0311】
実際には、出射領域E1、E2は平面ではなく当該出射領域E1、E2からの出射光RayCが水平方向に拡散して、上端縁が左水平カットオフラインCL1に沿った状態でかつ拡散パターンS−E1、S−E2(
図44参照。本発明の第2配光パターンに相当)の全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されるように、その面形状が構成されている(例えば、出射領域E1、E2に、当該出射領域E1、E2からの出射光RayCを水平方向に拡散させるように構成されたプリズム又はレンズカット等の光学素子が形成されている)。
【0312】
このように、上端縁が左水平カットオフラインCL1に沿った状態でかつ拡散パターンS−E1、S−E2の全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されることで、左水平カットオフラインCL1を形成することができる。
【0313】
図44中、拡散パターンS−E1は、その水平方向寸法が約25度となっている。これは、拡散パターンS−E1の水平方向寸法が約25度となるように、出射領域E1の面形状が調整されていることによるものである。このように、出射領域E1の面形状を調整することで、拡散パターンS−E1の水平方向寸法を、所望のものとすることができる。拡散パターンS−2についても同様である。
【0314】
図44中、拡散パターンS−E1は、その全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されている。これは、拡散パターンS−E1の全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されるように、出射領域E1の傾きが調整されていることによるものである。このように、出射領域E1の傾きを調整することで、拡散パターンS−E1を仮想鉛直スクリーン上の所望の箇所に配置することができる。拡散パターンS−E2についても同様である。
【0315】
次に、出射領域E3、E4と光源像との関係について説明する。
【0316】
仮に、出射領域E3、E4が基準軸AXに直交する平面である場合、当該出射領域E3、E4からの出射光RayCによる光源像L−E3、L−E4は、
図43に示すとおりのものとなる。
【0317】
実際には、出射領域E3、E4は平面ではなく当該出射領域E3、E4からの出射光RayCが水平方向に拡散して、上端縁が右水平カットオフラインCL2に沿った状態でかつ拡散パターンS−E3、S−E4(
図44参照。本発明の第2配光パターンに相当)の全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されるように、その面形状が構成されている(例えば、出射領域E3、E4に、当該出射領域E3、E4からの出射光RayCを水平方向に拡散させるように構成されたプリズム又はレンズカット等の光学素子が形成されている)。
【0318】
このように、上端縁が右水平カットオフラインCL2に沿った状態でかつ拡散パターンS−E3、S−E4の全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されることで、右水平カットオフラインCL2を形成することができる。
【0319】
図44中、拡散パターンS−E3は、その水平方向寸法が約35度となっている。これは、拡散パターンS−E3の水平方向寸法が約35度となるように、出射領域E3の面形状が調整されていることによるものである。このように、出射領域E3の面形状を調整することで、拡散パターンS−E3の水平方向寸法を、所望のものとすることができる。拡散パターンS−E4についても同様である。
【0320】
図44中、拡散パターンS−E3は、その全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されている。これは、拡散パターンS−E3の全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されるように、出射領域E3の傾きが調整されていることによるものである。このように、出射領域E3の傾きを調整することで、拡散パターンS−E3を仮想鉛直スクリーン上の所望の箇所に配置することができる。拡散パターンS−E4についても同様である。
【0321】
図44中、拡散パターンS−E3、S−E4は、その左端部が自車線側にまで延びている。これにより、路面正面方向の光度を補い、配光の均一性を確保することができる。
【0322】
すれ違いビーム用配光パターンP
Lo(
図41参照)は、
図44に示す集光パターンS−S1、S−S2、S−S3、S−S4、拡散パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M3a、S−M3b、S−M4、S−E1、S−E2、S−E3、S−E4、S−WWが重畳された合成配光パターンとして形成される。
【0323】
すれ違いビーム用配光パターンP
Loは、その上端縁に、左水平カットオフラインCL1、右水平カットオフラインCL2、斜めカットオフラインCL3を含むものとなる。
【0324】
左水平カットオフラインCL1は、上端縁が左水平カットオフラインCL1に沿った状態でかつ拡散パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M4、S−E1、S−E2の全体が左水平カットオフラインCL1以下に配置されることで形成される。
【0325】
右水平カットオフラインCL2は、上端縁が右水平カットオフラインCL2に沿った状態でかつ拡散パターンS−M3a、S−M3b、S−E3、S−E4の全体が右水平カットオフラインCL2以下に配置されることで形成される。
【0326】
斜めカットオフラインCL3は、一辺が斜めカットオフラインCL3に沿った状態でかつ光源像L−S1、L−S2、L−S3、L−S4(集光パターンS−S1、S−S2、S−S3、S−S4)の全体が斜めカットオフラインCL3以下に配置されることで形成される。
【0327】
図43に示すように、中央レンズ部26(中央出射面26Ab)からの出射光RayAによる光源像(L−WW)、中間レンズ部28A(中間出射面28Ac)からの出射光RayBによる光源像(L−M1a、L−M1b、L−M2、M3a、M3b、L−M4)、外周レンズ部30A(外周出射面30Ac)からの出射光RayCによる光源像(L−E1、L−E2、L−E3、L−E4)は、この順に、小さく明るい光源像となる。これは、光源12A(発光面12Aa)と中央レンズ部26A(偏向部)との間の距離L1(光路長。
図40参照)、光源12A(発光面12Aa)と中間レンズ部28A(偏向部)との間の距離L2(光路長。
図40参照)、光源12A(発光面12Aa)と外周レンズ部30A(偏向部)との間の距離L3(光路長。
図40参照)が、この順に長くなることによるものである。距離L1、L2、L3を例示すると、L1は2.5mm(基準軸AXに対して0度方向)、L2は8.25mm(基準軸AXに対して45度方向)、L3は11.25mm(基準軸AXに対して71度方向)である。
【0328】
この小さく明るい光源像に基づく、集光パターンS−S1、S−S2、S−S3、S−S4、及び、拡散パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M3a、S−M3b、S−M4、S−E1、S−E2、S−E3、S−E4が、カットオフラインCL1、CL2、CL2に沿って配置されることに加えて、拡散パターンS−WWの水平線Hに沿った領域がそれ以下の領域と比べて明るいものとなる結果、カットオフラインCL1、CL2、CL2付近が相対的に明るい遠方視認性に優れたすれ違いビーム用配光パターンP
Loを形成することができる。
【0329】
また、カットオフラインCL1、CL2、CL2近傍から下方に向かうに従ってグラデーション状に暗くなる配光フィーリングに優れたすれ違いビーム用配光パターンP
Loを形成することができる。
【0330】
以上説明したように、本実施形態によれば、光源12Aと光源12Aの前方に配置されたレンズ体14Aとを備えた車両用灯具10Aにおいて、従来の車両用灯具(例えば、特開2009−283299号公報参照)と比べ、さらなる小型化(特に、基準軸AX方向のさらなる薄型化)を実現することができる。
【0331】
これは、中央レンズ部26Aが、当該中央レンズ部26A(中央出射面26Ab)からの出射光RayAにより、第2配光パターン(各パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M3a、S−M3b、S−M4、S−S1、S−S2、S−S3、S−S4(
図44参照))より広い第1配光パターン(拡散パターンS−WW)を形成するレンズ部として構成されているため、光源12A(発光面12Aa)と中央レンズ部26Aとの間の距離を従来の車両用灯具(例えば、特開2009−283299号公報参照)と比べ、短くすることができることによるものである。なお、光源12A(発光面12Aa)と中央レンズ部26Aとの間の距離を従来の車両用灯具(例えば、特開2009−283299号公報参照)と比べ、短くすると、中央レンズ部26Aからの出射光RayAによる光源像が大きくなるが、この光源像は第2配光パターン(各パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M3a、S−M3b、S−M4、S−S1、S−S2、S−S3、S−S4(
図44参照))より広い(拡散された)第1配光パターン(拡散パターンS−WW)を形成するのに適したものとなるため、不都合は生じない。
【0332】
また、本実施形態によれば、ホットゾーン(水平線Hと鉛直線Vとの交点近傍の領域)及びカットオフラインCL1、CL2、CL3を、全反射を用いた光学系(例えば、中間反射面28Ab、外周反射面30Ab)で形成する構成であるため、色収差に起因してカットオフラインCL1、CL2、CL3付近に色むらが形成されるのを抑制することができる。すなわち、各入射面28Aa、30Aa、各出射面28Ac、30Acで屈折はされるが、両面とも平坦な面のため色分離が少ない。
【0334】
上記実施形態では、各レンズ部26A、28A、30Aが正面視で円形に形成されている(
図43参照)例について説明したが、これに限られない。例えば、各レンズ部26A、28A、30Aは正面視で楕円形又はそれ以外の形状に形成されていてもよい。
【0335】
また、上記実施形態では、本発明の周囲レンズ部として中間レンズ部28A及び外周レンズ部30Aの二つのレンズ部を用いた例について説明したが、これに限られない。すなわち、本発明の周囲レンズ部として一つのレンズ部(例えば、中間レンズ部28Aのみ)を用いてもよいし、三つ以上のレンズ部を用いてもよい。
【0337】
図45は、他の変形例である車両用灯具10Bの概略断面図である。
【0338】
図45に示すように、車両用灯具10Bは、基本配光パターン(例えば、
図44に示す集光パターンS−S1、S−S2、S−S3、S−S4、拡散パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M3a、S−M3b、S−M4、S−E2、S−E3、S−E4、S−WWが重畳された合成配光パターン)と付加配光パターン(例えば、
図44に示す拡散パターンS−E1)とが重畳されたロービーム用配光パターンP
Lo(
図41参照。本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成されたロービーム用の車両用灯具(灯具ユニット)であり、第5実施形態である車両用灯具10Aに対して、可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12(
図45中省略)、SC光源12が出力するSC光のうち、予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光を除去(カット)する除去手段14(
図45中省略)、SC光源12が出力するSC光をレンズ体14Bまで伝搬する伝送用光ファイバ18等を追加したものに相当する。
【0339】
以下、第5実施形態である車両用灯具10Aとの相違点を中心に説明し、第5実施形態である車両用灯具10Aと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0340】
レンズ体14Bは、第5実施形態のレンズ体14Aに対して入射面90を追加したものに相当する。
【0341】
入射面90は、第2光源18bからの光がレンズ体14内部に入射する面で、レンズ体10の背面のうち特定の出射領域に対応する領域(例えば、出射領域E1に対応する領域)に形成されている。
【0342】
伝送用光ファイバ18の出射端部は、入射面90に対向した状態で配置されている。
【0343】
第2光源18bと入射面90との間には、第2光源18bからの光を集光する集光レンズ92が配置されている。
【0344】
入射面90及び集光レンズ92の少なくとも一方は、入射面90からレンズ体14B内部に入射した第2光源18bからの光が基準軸AXに対して平行な光となるように、その面形状が構成されている。
【0345】
なお、
図45中、第1光源66aを用いているが、これに代えて光源12Aを用いてもよい。
【0346】
本変形例によれば、第1光源66aからの光(インコヒーレント光が主体の光)によって仮想鉛直スクリーン上に基本配光パターン(例えば、
図44に示す集光パターンS−S1、S−S2、S−S3、S−S4、拡散パターンS−M1a、S−M1b、S−M2、S−M3a、S−M3b、S−M4、S−E2、S−E3、S−E4、S−WWが重畳された合成配光パターン)が形成され、かつ、第2光源18bからの光(コヒーレント光が主体の光)によって付加配光パターン(例えば、
図44に示す拡散パターンS−E1)が形成され、この付加配光パターンが基本配光パターンに重畳されることで、合成配光パターンであるすれ違いビーム用配光パターンP
Lo(
図41参照)が形成される。なお、中央レンズ部26A、中間レンズ部28A及び外周レンズ部30Aが本発明の第1光学系に相当し、集光レンズ92、入射面90及び出射領域E1が本発明の第2光学系に相当する。
【0347】
このすれ違いビーム用配光パターンP
Loは、第2実施形態と同様の理由で、自車線側のカットオフライン近傍の光度が相対的に高い遠方視認性に優れたものとなる。
【0348】
本変形例によれば、基本配光パターンがインコヒーレント光が主体の光で形成され、付加配光パターンがコヒーレント光が主体の光で形成され、両者が重畳される結果、遠方視認性に優れたロービーム用配光パターンP
Loを形成することができる。
【0349】
なお、入射面90をレンズ体14Bの背面のうち出射領域E1以外の出射領域に対応する領域に形成することで、すれ違いビーム用配光パターンP
Lo中の自車線側のカットオフライン近傍以外の部分の光度を相対的に高くすることができる。
【0350】
また、入射面90は、1つに限らず複数形成してもよい。
【0351】
例えば、入射面90をレンズ体14Bの背面のうち出射領域S1、S2、S3、S4に対応する領域に形成することで、すれ違いビーム用配光パターンP
Lo中の中心光度を相対的に高くすることができる。
【0352】
上記実施形態及び各変形例で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができる。
【0353】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。