特許第6643694号(P6643694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643694
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】乗物用シートユニット
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20200130BHJP
   B60N 2/888 20180101ALI20200130BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20200130BHJP
【FI】
   B60N2/427
   B60N2/888
   B60N2/90
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-96624(P2015-96624)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-210318(P2016-210318A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】新妻 健一
(72)【発明者】
【氏名】田村 直紀
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−261697(JP,A)
【文献】 特開2009−190430(JP,A)
【文献】 特開2010−179884(JP,A)
【文献】 特開2014−104865(JP,A)
【文献】 特開2010−173613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の乗員が着座し、該乗員を後方から支持する支持部を備えた乗物用シートと、
前記支持部のうち、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に前記乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分の状態を調整するために設けられた状態調整機構と、
前記乗員の身体及び性別のうちの少なくとも一つに関する乗員情報を取得する取得部と、
該取得部が取得した前記乗員情報の内容に応じて前記状態調整機構を制御することで、前記状態調整機構により調整された後の前記部分の状態を前記内容に応じて変える制御装置と、を有し、
前記部分として、前記乗員の背を支えるシートバックに設けられ、前記乗物に対して荷重が入力された際に変形することで衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部を有し
前記衝撃エネルギー吸収部は、前記シートバックが内部に有するシートバックフレーム中に形成された脆弱部であり、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に変形して前記シートバックフレームの屈曲起点となり、
前記状態調整機構は、前記脆弱部の前記状態として前記脆弱部が変形した際の限界変形量を調整するために設けられ、
前記制御装置は、前記状態調整機構により調整された後の前記限界変形量を前記内容に応じて変えることを特徴とする乗物用シートユニット。
【請求項2】
前記衝撃エネルギー吸収部とは別に、前記部分として前記乗員の背によって押されることで前記乗員の背と共に後方に移動する後方移動部を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シートユニット。
【請求項3】
前記取得部は、前記乗員が前記乗物用シートに着座した際に前記乗物用シートに掛かる圧力を検知する圧力センサを備え、該圧力センサが検知した前記圧力に基づいて前記乗員の体圧に関する情報を前記乗員情報として取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シートユニット。
【請求項4】
前記取得部は、前記乗員が前記乗物用シートに着座した際に前記乗員を撮像するカメラを備え、該カメラが撮像した前記乗員の映像に基づいて前記乗員の性別又は体格に関する情報を前記乗員情報として取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シートユニット。
【請求項5】
前記取得部は、前記乗員が前記乗物用シートに着座した際に前記乗員の骨格形状を検知する近接センサを備え、該近接センサが検知した前記骨格形状に基づいて前記乗員の身体中の所定部位の形状に関する情報を前記乗員情報として取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乗物用シートユニット。
【請求項6】
前記取得部は、前記乗員が前記乗員情報を入力する際に行う操作を受け付けることで前記乗員情報を取得することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乗物用シートユニット。
【請求項7】
前記取得部は、前記乗物内に設けられた前記乗員情報の入力用ボタンを前記乗員が押して行う前記操作を受け付けることで前記乗員情報を取得することを特徴とする請求項6に記載の乗物用シートユニット。
【請求項8】
前記後方移動部は、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に前記乗員の背によって押されて前記乗員の背と共に後方に移動する可動部材からなることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シートユニット。
【請求項9】
前記可動部材は、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に前記乗員の背によって押されて撓むことで前記乗員の背と共に後方に移動し
記制御装置は、前記可動部材の状態として、単位荷重に対する前記可動部材の撓み量を調整するために設けられる第二の状態調整機構により調整された後の前記撓み量を前記内容に応じて変えることを特徴とする請求項8に記載の乗物用シートユニット。
【請求項10】
前記乗員の臀部を支えるシートクッションと、
前記乗員の頭部を支えるヘッドレストと、を備え、
前記シートバックフレームは、幅方向に備えられた一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの上端部同士を連結するアッパフレームと、前記一対のサイドフレームの下端部同士を連結するロアメンバフレームと、前記一対のサイドフレームの間に配置された受圧プレートとを備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乗物用シートユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートユニットに係り、シート中、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分の状態を調整することが可能な乗物用シートユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物に搭載された座席シート(以下、乗物用シート)は、既に知られており、その中には、シートの所定部分の状態を変えることが可能なものも存在する。一例を挙げて説明すると、特許文献1に記載の乗物用シートは、車両用シートとして利用されるものであり、当該シート中、ランバーサポートの位置を乗員の生体情報(例えば疲労度)に応じて変化させることが可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−139069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートに乗員が着座している状態において乗物に荷重(例えば後方荷重)が入力された場合、乗員の頸部にシートからの反力(負担)が掛かるようになる。かかる負担を軽減するための方策としては、上記特許文献1の如くシートの所定部分の状態を変えることが考えられ、特に、上記負担に影響を及ぼす部分の状態を変えるのが有効であると考えられる。
【0005】
一方で、シートの所定部分の状態を変えることによる負担軽減の効果は、乗員の体格や性別等によって異なる。このため、負担軽減目的でシートの所定部分の状態を変える場合には、乗員の体格や性別等を考慮した上で適した状態へと変える必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗員の体格や性別等に考慮して、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を適切に軽減することが可能な乗物用シートユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗物用シートユニットによれば、乗物の乗員が着座し、該乗員を後方から支持する支持部を備えた乗物用シートと、前記支持部のうち、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に前記乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分の状態を調整するために設けられた状態調整機構と、前記乗員の身体及び性別のうちの少なくとも一つに関する乗員情報を取得する取得部と、該取得部が取得した前記乗員情報の内容に応じて前記状態調整機構を制御することで、前記状態調整機構により調整された後の前記部分の状態を前記内容に応じて変える制御装置と、を有し、前記部分として、前記乗員の背を支えるシートバックに設けられ、前記乗物に対して荷重が入力された際に変形することで衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部を有し、前記衝撃エネルギー吸収部は、前記シートバックが内部に有するシートバックフレーム中に形成された脆弱部であり、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に変形して前記シートバックフレームの屈曲起点となり、前記状態調整機構は、前記脆弱部の前記状態として前記脆弱部が変形した際の限界変形量を調整するために設けられ、前記制御装置は、前記状態調整機構により調整された後の前記限界変形量を前記内容に応じて変えることにより解決される。
【0008】
以上のように構成された本発明の乗物用シートユニットでは、乗物用シート中、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分の状態が、状態調整機構によって調整される。この際、乗員の身体及び性別のうちの少なくとも一つに関する情報(乗員情報)に応じて上記の状態が調整される。このように乗員の体格や性別等に考慮してシート中の所定部位の状態を調整することで、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を適切に軽減することが可能となる。
また、上記の構成では、乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分として、衝撃エネルギー吸収部の状態を乗員の体格や性別等に考慮して適切に調整することが可能となる。
また、上記の構成では、乗物に対して後方荷重が入力された際にシートバックフレームに形成された脆弱部が変形してシートバックフレームが後方へ屈曲する。その一方で、脆弱部の変形量については、乗員の体格や性別等に応じて変更される。これにより、乗員の頸部に掛かる負担が乗員の体格や性別等に応じて適切に軽減されるように変形後の脆弱部の状態を適切に設定することが可能となる。
上記の構成では、脆弱部が変形した際の限界変形量を乗員の体格や性別等に応じて変更する。これにより、乗物に後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を、脆弱部の変形によって軽減する際に、乗員の体格や性別等に応じて適切に軽減することが可能となる。
【0010】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記衝撃エネルギー吸収部とは別に、前記部分として前記乗員の背によって押されることで前記乗員の背と共に後方に移動する後方移動部を有するとよい。
上記の構成では、乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分として、後方移動部の状態を乗員の体格や性別等に考慮して適切に調整することが可能となる。
【0013】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記取得部は、前記乗員が前記乗物用シートに着座した際に前記乗物用シートに掛かる圧力を検知する圧力センサを備え、該圧力センサが検知した前記圧力に基づいて前記乗員の体圧に関する情報を前記乗員情報として取得するとよい。
上記の構成では、圧力センサが検知した圧力に基づいて乗員情報(具体的には乗員の体圧)を適切に取得することが可能となる。
【0014】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記取得部は、前記乗員が前記乗物用シートに着座した際に前記乗員を撮像するカメラを備え、該カメラが撮像した前記乗員の映像に基づいて前記乗員の性別又は体格に関する情報を前記乗員情報として取得するとよい。
上記の構成では、カメラの撮像映像に基づいて乗員情報(具体的には乗員の性別又は体格)を適切に取得することが可能となる。
【0015】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記取得部は、前記乗員が前記乗物用シートに着座した際に前記乗員の骨格形状を検知する近接センサを備え、該近接センサが検知した前記骨格形状に基づいて前記乗員の身体中の所定部位の形状に関する情報(厳密には、所定部位の骨格形状に関する情報等)を前記乗員情報として取得するとよい。
上記の構成では、近接センサが検知した骨格形状に基づいて乗員情報(具体的には乗員の身体中の所定部位の形状に関する情報)を適切に取得することが可能となる。
【0016】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記取得部は、前記乗員が前記乗員情報を入力する際に行う操作を受け付けることで前記乗員情報を取得するとよい。
上記の構成では、乗員が行う操作を受け付けることで乗員情報を適切に取得することが可能となる。
【0017】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記取得部は、前記乗物内に設けられた前記乗員情報の入力用ボタンを前記乗員が押して行う前記操作を受け付けることで前記乗員情報を取得すると更によい。
上記の構成では、入力用ボタンによるボタン操作を受け付けることで乗員情報を適切に取得することが可能となる。
【0021】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記後方移動部は、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に前記乗員の背によって押されて前記乗員の背と共に後方に移動する可動部材からなるとよい。
上記の構成では、乗物に対して後方荷重が入力された際に可動部材が乗員の背によって押されて乗員の背と共に後方に移動する。その一方で、移動後の可動部材の位置については、乗員の体格や性別等に応じて変更される。これにより、乗員の頸部に掛かる負担が乗員の体格や性別等に応じて適切に軽減されるように移動後の可動部材の位置を適切に設定することが可能となる。
【0023】
また、上記の乗物用シートユニットにおいて、前記可動部材は、前記乗物に対して後方荷重が入力された際に前記乗員の背によって押されて撓むことで前記乗員の背と共に後方に移動し、前記制御装置は、前記可動部材の状態として、単位荷重に対する前記可動部材の撓み量を調整するために設けられる第二の状態調整機構により調整された後の前記撓み量を前記内容に応じて変えるとよい。
上記の構成では、単位荷重に対する可動部材の撓み量を乗員の体格や性別等に応じて変更する。これにより、乗物に後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を、可動部材の撓み(後方移動)によって軽減する際に、乗員の体格や性別等に応じて適切に軽減することが可能となる。
【0024】
また、上記の乗物シートユニットにおいて、前記乗員の臀部を支えるシートクッションと、前記乗員の頭部を支えるヘッドレストと、を備え、前記シートバックフレームは、幅方向に備えられた一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの上端部同士を連結するアッパフレームと、前記一対のサイドフレームの下端部同士を連結するロアメンバフレームと、前記一対のサイドフレームの間に配置された受圧プレートとを備えるとよい
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、乗員の体格や性別等に考慮して、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を適切に軽減することが可能となる。
また、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分として、ヘッドレストの状態を乗員の体格や性別等に考慮して適切に調整することが可能となる。
また、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分として、後方移動部の状態を乗員の体格や性別等に考慮して適切に調整することが可能となる。
また、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分として、衝撃エネルギー吸収部の状態を乗員の体格や性別等に考慮して適切に調整することが可能となる。
また、本発明によれば、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を軽減する際に調整される調整対象について、調整後の当該調整対象が乗員の体格や性別等に応じて適切に設定されることになる。
また、本発明によれば、圧力センサが検知した圧力に基づいて乗員情報(具体的には乗員の体圧)を適切に取得することが可能となる。
また、本発明によれば、カメラの撮像映像に基づいて乗員情報(具体的には乗員の性別又は体格)を適切に取得することが可能となる。
また、本発明によれば、近接センサが検知した骨格形状に基づいて乗員情報(具体的には乗員の身体中の所定部位の形状に関する情報)を適切に取得することが可能となる。
また、本発明によれば、乗員が行う操作を受け付けることで乗員情報を適切に取得することが可能となる。
さらに、本発明によれば、入力用ボタンによるボタン操作を受け付けることで乗員情報を適切に取得することが可能となる。
また、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担が乗員の体格や性別等に応じて適切に軽減されるように移動後のヘッドレストの位置が適切に設定されるようになる。
さらに、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担をヘッドレストの前方移動によって軽減する効果が、乗員の体格や性別等に応じて適切に発揮されるようになる。
さらにまた、本発明によれば、ヘッドレストが前方移動した際の到達位置が、乗員の体格や性別等に応じて適切に設定されるようになる。
また、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担が乗員の体格や性別等に応じて適切に軽減されるように移動後の可動部材の位置が適切に設定されるようになる。
さらに、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担を可動部材の後方移動によって軽減する効果が、乗員の体格や性別等に応じて適切に発揮されるようになる。
あるいは、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担を可動部材の撓みによって軽減する効果が、乗員の体格や性別等に応じて適切に発揮されるようになる。
また、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担が乗員の体格や性別等に応じて適切に軽減されるように変形後の脆弱部の状態が適切に設定されるようになる。
さらに、本発明によれば、乗員の頸部に掛かる負担を脆弱部の変形によって軽減する効果が、乗員の体格や性別等に応じて適切に発揮されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る乗物用シートユニットの構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るシートフレームの斜視図である。
図3】後方移動部が後方移動する前のシートバックフレームの側方断面図である。
図4】後方移動部が後方移動した後のシートバックフレームの側方断面図である。
図5】シートバックフレーム中、可動ピンの周辺を拡大して示した模式断面図である。
図6】ヘッドレストを前後方向に移動させる機構の説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係るシートバックフレームの背面図である。
図8】脆弱部が変形した様子を示す図である。
図9】シートバックフレーム中、脆弱部及びその周辺を拡大して示した模式図である。
図10】制御装置による制御処理の流れを示した図である。
図11】変形例に係るシートフレームの斜視図である。
図12】変形例に係る可動部材の幅方向端部及びその周辺を拡大した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について具体的に説明する。なお、以下では、乗物用シートユニットとして、車両(自動車)に搭載される車両用シートユニットを例に挙げて説明することとする。ただし、本発明の乗物用シートユニットは、車両以外の乗物、例えば航空機や船舶に搭載することも可能である。
【0029】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向を意味し、具体的には車両の走行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートの幅方向(左右方向)を意味し、車両用シートが有するシートバックの幅方向と一致する方向である。
【0030】
先ず、本実施形態に係る車両用シートユニット(以下、本シートユニット1)の概略構成について図1を参照しながら説明する。本シートユニット1は、同図に示すように、乗物用シートとしての車両用シートS及びその周辺機器によって構成されている。周辺機器の中には、車両に搭載されたECU(Electric Control Unit)100が含まれている。このECU100は、車両用シートSに着座した乗員に関する情報、すなわち、乗員情報を取得すると共に、当該乗員情報に基づいて車両用シートSの所定部分の状態を調整する。具体的に説明すると、車両用シートSには、所定部分を駆動する機構が内蔵されている。そして、ECU100は、乗員情報の内容に応じて当該駆動機構を制御することで、車両用シートS中の所定部分の状態を調整する。
【0031】
車両用シートSは、車両の乗員が着座するシートであり、一般的な車両用シートと同様、乗員の臀部を支えるシートクッションS1、乗員の背を支えるシートバックS2、及び乗員の頭部を支えるヘッドレストS3を備える。ここで、シートバックS2及びヘッドレストS3は、乗員を後方から支持する支持部に相当する。シートバックS2は、図2に図示したシートバックフレームFを内部に備えている。このシートバックフレームFは、シートバックS2の骨格をなし、幅方向に一対備えられたサイドフレーム11と、サイドフレーム11の上端部同士を連結したアッパフレーム12と、サイドフレーム11の下端部同士を連結したロアメンバフレーム13と、を有する。
【0032】
また、本実施形態に係る車両用シートSは、車両の後突時等、車両に後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を軽減させるための措置(以下、頸部負担軽減措置)を複数採用している。以下、本実施形態に係る車両用シートSが採用している各頸部負担軽減措置について説明する。
【0033】
(第一の頸部負担軽減措置について)
第一の頸部負担軽減措置は、シートバックフレームFに設けられた受圧プレート14である。この受圧プレート14は、幅方向においてサイドフレーム11の間に配置された可動部材、より具体的には樹脂製のプレート体からなる。そして、受圧プレート14は、車両に対して後方荷重が入力された際に乗員の背によって押されて乗員の背と共に後方に移動する後方移動部に相当する。
【0034】
受圧プレート14及びその周辺の構造について詳しく説明する。受圧プレート14は、正面視で略矩形状に成形されており、その前面には不図示のクッションパッドが配置されている。そして、受圧プレート14は、上記のクッションパッドを介して乗員の背を後方から支持する一方で、乗員の背から押圧力を受けている。また、受圧プレート14は、図2に示すように、その裏面にて2本のワイヤ15と係合している。2本のワイヤ15は、一対のサイドフレーム11の間に架設されている。そして、受圧プレート14は、その裏面に設けられた不図示の掛止部が各ワイヤ15に掛け止められることで、2本のワイヤ15によって支持されるようになる。
【0035】
上記2本のワイヤ15のうち、下方に位置するワイヤ15は、サイドフレーム11に装着された回動部材20に掛け止めされている。この回動部材20は、各サイドフレーム11の内側面に回動自在な状態で取り付けられている。そして、車両に対して後方荷重が入力されることで受圧プレート14が乗員の背によって後方へ押された際の押圧力が所定値以上となると、回動部材20は、ワイヤ15を介して伝わる上記の押圧力により後方に回動する。
【0036】
より具体的に説明すると、回動部材20にはトーションばね25の一端部が掛け止めされている。このトーションばね25は、所定位置に回動部材20を留めておく目的で用いられた部材である。すなわち、通常時、回動部材20は、トーションばね25からの付勢力を付与されることで所定位置に留まっている。これにより、回動部材20に係止されているワイヤ15、及び、当該ワイヤ15に保持された受圧プレート14は、通常時、図3に図示の位置(以下、通常位置)に位置し続けることになる。
【0037】
一方で、受圧プレート14が乗員の背によって後方へ押された際の押圧力が所定値以上となると、回動部材20がトーションばね25の付勢力に抗して後方へ回動する。これに伴って、回動部材20に係止されているワイヤ15、及び、当該ワイヤ15に保持された受圧プレート14が後方へ移動するようになる。つまり、受圧プレート14は、図4に示すように通常位置よりも後方位置に向けて移動する。
【0038】
以上のような受圧プレート14の後方移動により、乗員の背が受圧プレート14と共に後方へ移動する。つまり、乗員の背は、受圧プレート14の後方移動に伴ってシートバックS2内に沈み込むようになり、この結果、乗員の頸部に掛かる負担が軽減されるようになる。かかる意味で、受圧プレート14は、シートバックS2中、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分であると言える。
【0039】
なお、回動部材20は、後方へ回動したときに最終的に回動阻止部と当接する。これにより、回動部材20の更なる後方回動が規制されるようになり、受圧プレート14は、回動部材20が回動阻止部と当接したときの位置で停止する。すなわち、回動部材20が回動阻止部と当接した時点での受圧プレート14の位置は、受圧プレート14が後方移動したときの到達位置に相当する。
【0040】
また、本実施形態では、上記の回動阻止部が前後方向において互いに異なる位置に複数箇所(具体的には2箇所)存在している。具体的に説明すると、一つの回動阻止部は、サイドフレーム11の後壁に形成されており、厳密には当該後壁のうち、図4に示すように回動部材20の後端舌状部21が当接する部分によって構成されている。
【0041】
もう一つの回動阻止部は、サイドフレーム11の後壁よりも前方に位置し、幅方向に進退自在な可動ピン22によって構成されている。この可動ピン22は、図5に図示の駆動モータMによって駆動され、サイドフレーム11の側壁に設けられた貫通孔11aに沿って幅方向に進退する。具体的に説明すると、可動ピン22は、その先端部が当該貫通孔11aの開口から幅方向内側に突き出た位置(以下、突出位置)と、当該先端部が上記貫通孔11aの開口よりも幅方向外側に位置する(以下、待機位置)との間を移動する。
【0042】
そして、可動ピン22が待機位置に在る場合、回動部材20は、サイドフレーム11の後壁に形成された回動阻止部に当接することになる。かかる場合には、受圧プレート14が後方移動したときの到達位置がより後方位置となる。一方で、可動ピン22が突出位置に在る場合、回動部材20は、サイドフレーム11の後壁より手前で可動ピン22と当接することになる。かかる場合には、受圧プレート14が後方移動したときの到達位置がより前方位置となる。
【0043】
以上のように本実施形態では、受圧プレート14が後方移動したときの到達位置が、前後方向において互いに異なる位置に複数箇所(具体的には2箇所)設定されており、可動ピン22の進退動作によって切り替え自在となっている。かかる意味で、可動ピン22及びこれを駆動する駆動モータMは、車両後突時の受圧プレート14の状態を調整するために設けられた状態調整機構に相当すると言える。厳密に説明すると、可動ピン22及び駆動モータMは、受圧プレート14の状態として、受圧プレート14が後方移動したときの到達位置を調整する。つまり、車両後突時には、受圧プレート14が後方移動したときの到達位置が調整対象として調整されることになる。ここで、受圧プレート14が後方移動したときの到達位置は、シートバックS2クが乗員の背によって後方へ押された際の変形量(換言すると、乗員の背がシートバックS2に入り込む際の入り込み量)と同義である。
【0044】
(第二の頸部負担軽減措置について)
第二の頸部負担軽減措置は、前述のヘッドレストS3である。より具体的に説明すると、本実施形態に係るヘッドレストS3は、車両に対して荷重が入力された際に前後方向に沿って移動することが可能である。特に、乗物に対して後方荷重が入力された際には、ヘッドレストS3は通常位置から前方に向けて移動する。
【0045】
以下、本実施形態に係るヘッドレストS3及びその周辺の構成について説明する。ヘッドレストS3は、その下方から延出するヘッドレストピラーHPがシートバックフレームFの上方部に設けられたピラーガイド31に挿通されることによってシートバックフレームFに保持されている。
【0046】
一方で、ピラーガイド31は、アッパフレーム12近傍に配設されたピラーガイド取り付けフレーム30に取り付けられている。このピラーガイド取り付けフレーム30は、上下方向においてアッパフレーム12と並ぶ位置に配置されており、また、幅方向に沿って延出している。
【0047】
さらに、ピラーガイド取り付けフレーム30の両端には、断面略L字状のリンクブラケット36が溶接等により固定されている。各リンクブラケット36は、アッパフレーム12(厳密にはサイドフレーム11との連結部分近傍)に溶接された回転支持部材38に軸37を介して連結されている。つまり、ピラーガイド取り付けフレーム30は、軸37を中心にして回動可能な状態でシートバックフレームFに取り付けられている。これにより、ヘッドレストピラーHPを介してピラーガイド取り付けフレーム30に保持されたヘッドレストS3は、軸37を中心として回動して前後方向に移動することとなる。
【0048】
なお、ピラーガイド取り付けフレーム30には、コイルばね32の一端部が掛け止めされている。このコイルばね32は、所定位置にピラーガイド取り付けフレーム30を留めておく目的で用いられた部材である。すなわち、通常時、ピラーガイド取り付けフレーム30は、コイルばね32からの付勢力を付与されることで所定位置に留まっている。これにより、ピラーガイド取り付けフレーム30に保持されたヘッドレストS3は、通常時、図6において実線にて示した位置(以下、通常位置)に位置し続けることになる。
【0049】
また、幅方向一端側(図2では左側)に配設されているリンクブラケット36については、その下端(ピラーガイド取り付けフレーム30と接続されている端部とは反対側の端)が自由端となっている。一方、幅方向他端側(図2では右側)に配設されているリンクブラケット36については、その下端部が連結リンク40と軸39を介して接続されている。この連結リンク40は、幅方向他端側のリンクブラケット36の下端部と、上述した回動部材20の所定部位と、の間に介在している。
【0050】
以上のように連結リンク40が幅方向他端側のリンクブラケット36と回動部材20とを連結していることで、回動部材20の回動動作がリンクブラケット36を介してピラーガイド取り付けフレーム30まで伝達される。この結果、ピラーガイド取り付けフレーム30に保持されたヘッドレストS3が前後移動することになる。特に、車両に対して後方荷重が入力されて回動部材20が後方回動した場合、ピラーガイド取り付けフレーム30は、これに連動する形で前方へ回動する。そして、ピラーガイド取り付けフレーム30の前方回動により、ヘッドレストS3は、通常位置よりも前方位置(図6において一点鎖線にて示した位置)に向けて移動する。
【0051】
以上の構成により、車両後突時にはヘッドレストS3が前方に移動して乗員の頭部を支持するようになる。この結果、乗員の頸部に掛かる負担が軽減されるようになる。かかる意味で、ヘッドレストS3は、車両用シートSにおいて乗員の背を支持する支持部中、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分であると言える。
【0052】
なお、前述したように、回動部材20は、後方へ回動したときに最終的に回動阻止部と当接し、かかる時点で回動部材20の更なる後方回動が規制される。一方、回動部材20の後方回動が規制されると、ヘッドレストS3の前方移動が停止するようになる。すなわち、回動部材20が回動阻止部と当接した時点でのヘッドレストS3の位置は、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置に相当する。
【0053】
また、前述したように、回動部材20と回動阻止部との当接位置については、前後方向において互いに異なる位置に複数箇所(具体的には2箇所)存在し、具体的に説明すると、回動部材20が可動ピン22と当接する位置と、回動部材20がサイドフレーム11の後壁と当接する位置と、が存在する。そして、回動部材20がサイドフレーム11の後壁に当接する場合には、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置は、より前方位置となる。一方で、回動部材20がサイドフレーム11の後壁よりも手前で可動ピン22と当接する場合には、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置は、より後方位置となる。
【0054】
以上のように本実施形態では、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置が、前後方向において互いに異なる位置に複数箇所(具体的には2箇所)設定されている。そして、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置は、回動部材20と回動阻止部との当接位置の変化、具体的には可動ピン22の進退動作によって切り替え自在となっている。かかる意味で、可動ピン22及びこれを駆動する駆動モータMは、車両後突時のヘッドレストS3の状態を調整するために設けられた状態調整機構に相当すると言える。厳密に説明すると、可動ピン22及び駆動モータMは、ヘッドレストS3の状態として、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置を調整する。つまり、車両後突時には、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置が調整対象として調整されることになる。
【0055】
なお、本実施形態では、受圧プレート14の状態を調整する機構と、ヘッドレストS3の状態を調整する機構とが、共通の機構であり、具体的には可動ピン22及び駆動モータMによって構成されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、受圧プレート14の状態を調整する機構と、ヘッドレストS3の状態を調整する機構と、がそれぞれ個別に用意されてもよい。すなわち、ヘッドレストS3が前方移動したときの到達位置を調整する機構は、受圧プレート14の状態を調整する機構とは異なるものであり、それ専用の機構が設けられていてもよい。
【0056】
(第三の頸部負担軽減措置について)
第三の頸部負担軽減措置は、シートバックフレームFに設けられた脆弱部50である。この脆弱部50は、図7に示すように、サイドフレーム11の後壁下端部に形成された凹部(窪み)からなる。なお、脆弱部50は、所定以上の大きさの荷重が加わった際に選択的に変形する脆弱性を備える部分であればよく、凹部以外に穴部であってもよい。そして、脆弱部50は、車両に対して後方荷重が入力された際に選択的に変形して(具体的には押し潰れて)衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部に相当する。
【0057】
より詳しく説明すると、車両に後方荷重が入力されると、乗員が急速に後方へ移動する。この際、図8に示すように、脆弱部50が上下方向に押し潰れ、更に脆弱部50を起点にしてサイドフレーム11が後方に屈曲する。このように脆弱部50が変形し、これを屈曲起点としてシートバックフレームF中のサイドフレーム11が折れ曲がり変形することにより、車両後突時の衝撃エネルギーが吸収されるようになる。かかる意味で、脆弱部50は、シートバックS2中、乗物に対して後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分であると言える。
【0058】
なお、サイドフレーム11の屈曲角度が所定の角度に到達した際、サイドフレーム11の後壁のうち、脆弱部50の上方位置に在る部分が倒れ阻止部と当接する。これにより、脆弱部50の更なる変形、換言するとサイドフレーム11の更なる屈曲が規制されるようになる。すなわち、サイドフレーム11が倒れ阻止部と当接した時点での脆弱部50の変形量が、当該脆弱部50の限界変形量に相当する。
【0059】
また、本実施形態において上記の倒れ阻止部は、図9に図示した可動ピン51によって構成されている。この可動ピン51は、同図に図示のピン駆動装置Pによって駆動され、前後方向及び上下方向に移動可能である。具体的に説明すると、可動ピン51は、ピン駆動装置Pの機能により、図9において破線にて示す初期位置と、図9において実線にて示す変更位置と、の間を移動する。なお、変更位置は、初期位置よりも後方且つ上方に位置する。
【0060】
そして、可動ピン51が初期位置に在る場合、脆弱部50の限界変形量は、当該初期位置に対応した大きさとなり、サイドフレーム11は、所定の屈曲角度まで屈曲する。一方で、可動ピン51が変更位置に在る場合、脆弱部50の限界変形量は、可動ピン51が初期位置に在るときよりも小さくなり、サイドフレーム11が屈曲する際の屈曲角度がより小さく制限されるようになる。
【0061】
以上のように本実施形態では、脆弱部50が変形したときの限界変形量が複数種類(具体的には2種類)設定されており、可動ピン51の移動動作によって切り替え自在となっている。かかる意味で、可動ピン51及びこれを駆動するピン駆動装置Pは、車両後突時の脆弱部50の状態を調整するために設けられた状態調整機構に相当すると言える。厳密に説明すると、可動ピン51及びピン駆動装置Pは、脆弱部50の状態として、脆弱部50が変形したときの限界変形量を調整する。つまり、車両後突時には、脆弱部50が変形した際の限界変形量が調整対象として調整されることになる。
【0062】
ところで、上述した頸部負担軽減措置(具体的には、ヘッドレストS3、受圧プレート14及び脆弱部50)については、車両後突時の状態がECU100の制御を通じて変更可能となっている。より詳しく説明すると、ECU100は、各頸部負担軽減措置の状態を調整するための駆動機構(具体的には、駆動モータM及びピン駆動装置P)を制御する。すなわち、本実施形態において、ECU100は、制御装置として機能する。そして、ECU100が駆動機構を制御することで、当該駆動機構によって調整された後の頸部負担軽減措置の状態が変化することになる。
【0063】
また、本実施形態において、ECU100は、上記の駆動機構を制御するにあたり、車両用シートSに設置された各種センサの信号、及び、車両用シートSの前方に設置されたカメラ102の映像信号を受信する。そして、ECU100は、これらの信号を分析して、乗員の身体に関する乗員情報、及び、乗員の性別に関する乗員情報を取得する。すなわち、ECU100は、各種センサやカメラ102と共に取得部をなし、これらと協働して乗員情報を取得する。以下、乗員情報の取得手順について説明する。
【0064】
本実施形態において、車両用シートSのシートクッションS1の着座面には、図1に図示の圧力センサ101が備えられている。この圧力センサ101は、公知の圧力センサによって構成されており、乗員が車両用シートSに着座した際に車両用シートS(厳密には着座面)に掛かる圧力を検知し、その検知結果を示す信号を出力する。ECU100は、圧力センサ101からの出力信号を受信すると、当該圧力センサ101が検知した圧力を特定し、その特定結果に基づいて乗員の体圧(着座圧)に関する情報を乗員情報として取得する。
【0065】
また、本実施形態において、車両用シートSの前方には、図1に図示のカメラ102が設置されている。このカメラ102は、公知のビデオカメラによって構成されており、乗員が車両用シートSに着座した際に乗員の顔を撮像し、その撮像映像を示す信号を出力する。ECU100は、カメラ102から映像信号を受信すると、当該映像信号に対して所定の映像処理を施す。この映像処理は、カメラ102が撮像した乗員の顔の映像に基づいて乗員の性別又は体格を判定する処理である。そして、ECU100は、当該映像処理の実行により、乗員の性別又は体格に関する情報を乗員情報として取得する。
【0066】
なお、本実施形態では、カメラ102の撮像映像から乗員の性別を割り出すこととするが、カメラ102の撮像映像から乗員の体格を割り出すこととしてもよい。
【0067】
また、本実施形態において、車両用シートS中、ヘッドレストピラーHPの後方に位置する部分には、図1に図示の近接センサ103が備えられている。この近接センサ103は、人間の骨格形状を計測することが可能な公知の近接センサからなり、本実施形態では、乗員の頸部の骨格形状を検知し、その検知結果を示す信号を出力する。ECU100は、近接センサ103からの出力信号を受信すると、当該近接センサ103が検知した骨格形状を特定し、その特定結果に基づいて乗員の身体中の所定部位の形状に関する情報、厳密には頸部の骨格形状に関する情報を乗員情報として取得する。
【0068】
なお、本実施形態では、乗員の頸部の形状に関する情報を、近接センサ103の検知結果(すなわち、頸部の骨格形状)に基づいて取得することとしたが、これに限定されるものではない。頸部の形状を適切に取得する限り、近接センサ103以外の機器の計測/検知結果を用いてもよく、例えば、乗員の頸部の周長を測定する測定器の測定結果を用いてもよい。
【0069】
さらにまた、本実施形態では、車両内において車両用シートSの隣に位置するスペース(例えば、ドアパネル)に乗員情報の入力用ボタン104が備えられている。この入力用ボタン104は、乗員が自分の性別を指定するために乗員によって押されることになっており、本実施形態では男女別に1個ずつ設けられている。そして、乗員が2個の入力用ボタン104のうち、自分の性別と対応したボタンを押す操作を行う。このように各入力用ボタン104は、乗員のボタン操作を受け付け、当該操作の内容を示す信号を出力する。ECU100は、入力用ボタン104からの出力信号を受信すると、どの入力用ボタン104が押されたのかを特定し、その特定結果に基づいて乗員の性別に関する情報を乗員情報として取得する。
【0070】
なお、本実施形態では、性別の入力用ボタン104のみが備えられていることとしたが、乗員に関する他の情報(例えば、年齢、身長、体重等)を入力するためのボタンが更に備えられていてもよい。また、本実施形態では、乗員情報を入力する際の操作が入力用ボタン104のボタン操作であることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、乗員情報入力用のレバーが設けられている場合には当該レバーを動かす操作であってもよい。また、乗員情報入力用のコードやストラップが設けられている場合には当該コードやストラップを牽引する操作であってもよい。また、乗員入力用のタッチパネルが設けられている場合には当該タッチパネルによるタッチ入力操作であってもよい。
【0071】
次に、ECU100による制御について説明する。ECU100は、以上までに説明してきた乗員情報の内容に応じて駆動モータMやピン駆動装置Pを制御する。これにより、駆動モータMやピン駆動装置Pによって調整された後の頸部負荷軽減措置の状態が乗員情報の内容に応じて変えられることとなる。具体的に説明すると、車両後突時にヘッドレストS3が前方移動した際の到達位置、車両後突時に受圧プレート14が後方移動した際の到達位置、及び、車両後突時に脆弱部50が変形した際の限界変形量が駆動モータMやピン駆動装置Pによって調整される。
【0072】
一方、ECU100は、取得した乗員情報の内容に応じて駆動モータMやピン駆動装置Pを制御する。これにより、調整後の上記設定値(ヘッドレストS3の到達位置、受圧プレート14の到達位置及び脆弱部50の限界変形量)が、それぞれ、乗員情報の内容に応じた値に設定されることになる。
【0073】
以下、ECU100が実行する制御処理の流れについて図10を参照しながら説明する。制御処理は、乗員が車両用シートSに着座すると、これをトリガーとして開始される。制御処理が開始されると、ECU100は、先ず、上述した手順により乗員情報を取得し始める(S001)。具体的に説明すると、入力用ボタン104のボタン操作が有った場合(S002でYes)、ECU100は、どのボタンが押されたのかを特定した上で乗員の性別を判定する。一方、上記のボタン操作が無かった場合(S002でNo)、ECU100は、カメラ102の撮像映像から乗員の性別を割り出す(S003)。
【0074】
そして、乗員の性別が女性であった場合(S004でYes)、ECU100は、駆動モータM及びピン駆動装置Pをそれぞれ制御して可動ピン22及び可動ピン51を動かす。これにより、可動ピン22が突出位置にセットされ、可動ピン51が変更位置にセットされる(S007)。この場合、車両後突時のヘッドレストS3の到達位置は、より後方位置となり、受圧プレート14の到達位置は、より前方位置となる。また、車両後突時の脆弱部50の限界変形量(換言すると、サイドフレーム11の屈曲角度)は、より小さくなる。
【0075】
以上のように本実施形態では乗員が女性であったときには、車両後突時における各頸部負荷軽減措置の動作量を通常の動作量よりも小さくすることとしている。これは、女性の頸部は、一般的に低強度であるのに対し、車両後突時に通常の動作量にて各頸部負荷軽減措置を駆動すると、頸部を過度に押してしまう虞があるためである。
【0076】
一方、乗員の性別が男性であった場合(S004でNo)、ECU100は、圧力センサ101の検知結果から特定した乗員の体圧が所定値以上であるかどうかを判定する(S005)。ここで、所定値とは、予め決められた閾値であり、具体的には乗員が大柄/小柄であるかを判定するために設定された値である。なお、上記の閾値については、任意の値に設定することが可能である。
【0077】
そして、体圧が所定値未満であるとき(S005でNo)、ECU100は、駆動モータM及びピン駆動装置Pをそれぞれ制御して可動ピン22及び可動ピン51を動かす。これにより、可動ピン22が突出位置にセットされ、可動ピン51が変更位置にセットされる(S007)。この場合、車両後突時のヘッドレストS3の到達位置は、より後方位置となり、受圧プレート14の到達位置は、より前方位置となる。また、車両後突時の脆弱部50の限界変形量(換言すると、サイドフレーム11の屈曲角度)は、より小さくなる。
【0078】
以上のように本実施形態では乗員の体圧が小さいとき、すなわち乗員が小柄であったときには、車両後突時における各頸部負荷軽減措置の動作量を通常の動作量よりも小さくすることとしている。これは、小柄な人間の頸部は、一般的に低強度であるのに対し、車両後突時に通常の動作量にて各頸部負荷軽減措置を駆動すると、頸部を過度に押してしまう虞があるためである。
【0079】
一方、体圧が所定値以上であるとき(S005でYes)、ECU100は、近接センサ103の検知結果から特定した乗員の頸部の形状が所定の条件を満たすかどうかを判定する(S006)。ここで、所定の条件とは、頸部の形状に関して予め決められた条件であり、具体的には頸部の形状が所定の強度を下回る形状であるかどうかを判定するために設定された条件である。なお、上記の条件については、任意の内容に設定することが可能である。
【0080】
そして、頸部の形状が所定の条件を満たすとき、すなわち、頸部が低強度な形状となっているとき(S006でYes)、ECU100は、駆動モータM及びピン駆動装置Pをそれぞれ制御して可動ピン22及び可動ピン51を動かす。これにより、可動ピン22が突出位置にセットされ、可動ピン51が変更位置にセットされる(S007)。この場合、車両後突時のヘッドレストS3の到達位置は、より後方位置となり、受圧プレート14の到達位置は、より前方位置となる。また、車両後突時の脆弱部50の限界変形量(換言すると、サイドフレーム11の屈曲角度)は、より小さくなる。
【0081】
これに対し、頸部の形状が所定の条件を満たしていないとき、すなわち、頸部が高強度な形状となっているとき(S006でNo)、ECU100は、駆動モータM及びピン駆動装置Pを元の位置(通常時の位置)に保持させる。これにより、可動ピン22は、待機位置に留まり、可動ピン51は、初期位置に留まるようになる(S008)。この結果、各頸部負担軽減措置は、車両後突時に通常の動作量にて動作するようになる。具体的に説明すると、車両後突時にヘッドレストS3が前方移動する際の到達位置は、より前方位置となり、受圧プレート14が後方移動する際の到達位置は、より後方位置となる。また、車両後突時の脆弱部50の限界変形量(換言すると、サイドフレーム11の屈曲角度)は、より大きくなる。
【0082】
以上のように本実施形態では乗員が大柄な男性であり、且つ頸部の形状が所定の条件を満たすとき、車両後突時に各頸部負荷軽減措置を通常の動作量にて動作することになる。つまり、頸部の強度が十分に確保されているとき、頸部負荷軽減措置であるヘッドレストS3、受圧プレート14及び脆弱部50は、本来の動作量にて動作することになっている。
【0083】
以上までに説明してきたように、本シートユニット1によれば、乗員の身体及び性別に関する乗員情報に応じて各頸部負担軽減措置の状態が調整される。このように乗員の性別や体格等を反映して各頸部負荷軽減措置の状態を調整することで、車両後突時に乗員の頸部に掛かる負担がその者の性別や体格等に応じて適切に軽減されるようになる。
【0084】
<<その他の実施形態>>
以上までに説明してきた実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0085】
また、上記の実施形態では、乗員の身体に関する情報、及び、乗員の性別に関する情報の双方を乗員情報として取得することとした。ただし、これに限定されるものではなく、上記2つの情報のうち、少なくとも一方を取得すればよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、車両用シートSに設けられたヘッドレストS3、受圧プレート14及び脆弱部50が頸部負荷軽減措置として機能することとした。ただし、頸部負荷軽減措置については上記3つに限定されるものではなく、これら以外の部位が頸部負荷軽減措置として機能してもよい。当該部位については、車両後突時の状態が乗員情報の内容に応じて適宜調整されることになる。
【0087】
また、上記の実施形態では、車両後突時に乗員の背によって押されて乗員の背と共に後方へ移動する可動部材の一例として、受圧プレート14を備えるケースについて説明した。ただし、可動部材は、受圧プレート14に限定されるものではない。例えば、他の可動部材としてSばね60を備えるケースも考えられる。以下、可動部材としてSばね60を備えた乗物用シートユニット(以下、変形例に係るシートユニット)について図11及び12を参照しながら説明する。なお、図11及び12中、変形例に係るシートユニット中、既に説明した乗物用シートユニット(すなわち、本シートユニット1)と共通する機器や部品については同じ符号を付すこととし、また、構成等に関する説明を省略することとする。
【0088】
変形例に係るシートユニットが有する車両用シートShは、図11に示すように、受圧プレート14を備えていない代わりに、幅方向に延出したSばね60をシートバックS2内に備えている。このSばね60は、サイドフレーム11の間に張架されており、図11に図示の構成では上下に2本配置されている。各Sばね60は、通常時には不図示のクッションパッドを介して乗員の背を支えている。また、車両後突等により車両に対して後方荷重が入力された際、各Sばね60は、乗員の背によって押されることで後方へ弓形に撓み、乗員の背と共に後方に移動する。つまり、変形例において、Sばね60は、後方移動部に相当し、シートバックS2中、車両後突時に乗員の頸部に掛かる負担に影響を及ぼす部分に相当する。
【0089】
また、各Sばね60の幅方向両端部は、サイドフレーム11に掛着されている。厳密に説明すると、各Sばね60の幅方向両端部のうち、一方の端部は、サイドフレーム11の側壁に掛着されている。もう一方の端部は、図12に示すように、サイドフレーム11に組み付けられた張り調整装置Qに掛け止めされている。この張り調整装置Qは、Sばね60の幅方向端部が掛け止めされた部分(以下、掛け止め部Qx)を幅方向に沿って移動させる機能を有し、かかる機能によってSばね60の張り度合いを調整するものである。ここで、張り度合いとは、単位荷重に対するSばね60の撓み量、分かり易くはSばね60の変形し易さを示す概念である。つまり、張り調整装置Qは、Sばね60の状態として張り度合いを調整する状態調整機構に相当すると言える。
【0090】
そして、変形例では、ECU100が張り調整装置Qを制御することにより、調整後のSばね60の張り度合いが変わることになっている。より詳しく説明すると、ECU100は、乗員の身体や性別に関する乗員情報を取得し、例えば乗員が比較的大柄な男性であるとき、掛け止め部Qxが通常位置に留まるように張り調整装置Qを制御する。かかる場合、Sばね60の張り度合いが通常の張り度合いに設定される。このため、車両後突時にSばね60が撓んで後方移動する際、その撓み量は、通常の撓み量となり、Sばね60は、所定位置まで後方移動することになる。
【0091】
一方、乗員が女性や小柄な男性である場合、ECU100は、掛け止め部Qxが幅方向外側に移動するように張り調整装置Qを制御する。かかる場合、Sばね60の張り度合いが通常の張り度合いよりも高く設定される。このため、車両後突時にSばね60が撓んで行動移動する際には、その撓み量が通常よりも小さくなり、また、Sばね60の到達位置は、通常の到達位置よりも前方に位置するようになる。以上のように可動部材としてSばね60を用いたケースであっても、Sばね60の張り度合いを乗員の性別や体型等に応じて適宜変更することで、車両後突時に乗員の頸部に掛かる負担を適切に軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
1 本シートユニット(乗物用シートユニット)
11 サイドフレーム
11a 貫通孔
12 アッパフレーム
13 ロアメンバフレーム
14 受圧プレート(後方移動部、可動部材)
15 ワイヤ
20 回動部材
21 後端舌状部
22 可動ピン
25 トーションばね
30 ピラーガイド取り付けフレーム
31 ピラーガイド
32 コイルばね
36 リンクブラケット
37 軸
38 回転支持部材
39 軸
40 連結リンク
50 脆弱部(衝撃エネルギー吸収部)
51 可動ピン
60 Sばね(後方移動部、可動部材)
100 ECU
101 圧力センサ
102 カメラ
103 近接センサ
104 入力用ボタン
F シートバックフレーム
HP ヘッドレストピラー
M 駆動モータ(状態調整機構)
P ピン駆動装置(状態調整機構)
Q 張り調整装置(状態調整機構)
Qx 掛け止め部
S、Sh 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション、S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12