(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643700
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】イオン導入美容器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/30 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
A61N1/30
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-203323(P2015-203323)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-74212(P2017-74212A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】301005898
【氏名又は名称】株式会社アイリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】清水 良和
【審査官】
石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−202022(JP,A)
【文献】
特開2014−054512(JP,A)
【文献】
米国特許第05135478(US,A)
【文献】
特開2005−334408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、肌内部へのイオン導入を行うための電極部と、
断続直流電流を供給した後に交流電流を供給する電流供給を一周期の時間を8秒として前記電極部に周期的に供給する電気回路部と、
を備え、
前記断続直流電流は、第1の期間直流電流が流れるオン期間T1と、第2の期間直流電流が流れないオフ期間T2と、第3の期間直流電流が流れるオン期間T3で構成されており、
前記交流電流は、正側の電流パターンと負側の電流パターンとを交互に繰り返す期間T4で構成されており、
T1=3秒、T2=1秒、T3=3秒、及びT4=1秒に設定されていることを特徴とするイオン導入美容器。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン導入美容器において、
前記断続直流電流は、正側の電流パターンと負側の電流パターンの双方を含むことを特徴とするイオン導入美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン導入美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イオン導入を用いて美容液を肌内部に浸透させる美容器が開発されている。肌に接触する電極に負の電圧を加えて微弱直流電流を流し、美容液中のマイナス電位を帯びたイオンとの電気的反発力を用いて、美容液を肌内部に浸透させるイオン導入方法が用いられている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、複数の異なる種類の美容機能を手軽に交換して使用することが可能であって、同時に低コスト化、優れた環境性を実現する美容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−166304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、肌に接触する電極に直流電流を加えることで美容液を肌内部に浸透させることができる。しかしながら、一定時間以上直流電流を流し続けると、美容液のイオンが滞留してしまい、美容液のさらなる浸透が停止してしまう。
【0006】
本発明の目的は、より効率よく美容液を肌内部に浸透させることを可能とするイオン導入美容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るイオン導入美容器は、ケーシングと、前記ケーシングに設けられ、肌内部へのイオン導入を行うための電極部と、断続直流電流を供給した後に交流電流を供給する電流供給を一周期
の時間を8秒として前記電極部に周期的に供給する電気回路部と、を備え、前記断続直流電流は、第1の期間直流電流が流れるオン期間T
1と、第2の期間直流電流が流れないオフ期間T
2と、第3の期間直流電流が流れるオン期間T
3で構成されており、前記交流電流は、正側の電流パターンと負側の電流パターンとを交互に繰り返す期間T
4で構成されており、T
1=
3秒、T
2=
1秒、T
3=
3秒、及びT
4=
1秒に設定されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るイオン導入美容器において、前記断続直流電流は、正側の電流パターンと負側の電流パターンの双方を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、断続直流電流の後で交流電流が供給されるため、イオンの滞留を解消することができる。これにより、再び肌内部に浸透させることができる。したがって、より効率よく美容液を肌内部に浸透させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態において、イオン導入美容器を示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態において、負側パターンの電流波形を示す図である。
【
図3】本発明に係る実施形態において、正側パターンの電流波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、イオン導入美容器10の構成図である。イオン導入美容器10は、充電器12と、台座14と、ケーシング16と、本体電池18と、電気回路部20と、入力側電極部22と、出力側電極部24とを備える。
【0014】
充電器12は、商用交流電源、例えば、家庭用交流コンセントに接続されて電圧変換を行い、本体電池18に対して電力を供給する機能を有する。充電器12は、一方側が家庭用電流コンセントに接続され、他方側が台座14に接続される。
【0015】
台座14は、ケーシング16を立設させるための構造を有し、上部にはケーシング16を嵌合させるための凹部形状を有している。台座14は、ケーシング16が立設された際に充電器12とケーシング16の接続部16aとを電気的に接続するための接続部が取り付けられている。
【0016】
ケーシング16は、その内部に本体電池18と、電気回路部20とを含み、上部には出力側電極部24が設置され、側面部には入力側電極部22が設置されている筐体である。
【0017】
本体電池18は、充電器12によって充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池を用いて構成することができる。本体電池18は、一方側が充電器12と電気的に接続するための接続部16aと接続され、他方側が電気回路部20と接続されている。
【0018】
電気回路部20は、本体電池18から供給された電力で作動し、出力側電極部24及び入力側電極部22に対して予め定められたパターンに基づいた電流を供給する機能を有する。電気回路部20が供給する電流のパターンとしては、
図2に示される負側パターンと、
図3に示される正側パターンを備えている。正側パターンは、出力側電極部24から肌を介して入力側電極部22に電流が流れる。負側パターンは、入力側電極部22から肌を介して出力側電極部24に電流が流れる。なお、電気回路部20において、負側パターンの電流と正側パターンの電流の双方を供給するものとして説明するが、図示しない操作ボタンを設置して、いずれか一方のパターンの電流のみを供給するものとしてもよい。
【0019】
出力側電極部24は、ケーシング16の上部に突出して形成されており、肌にあてた際に所定の面積が接触するような平面を有している。入力側電極部22は、ケーシング16の両側面部に長手方向に沿って配置されており、出力側電極部24を肌にあてるために手でケーシング16を握った際に手と接触するように配置されている。これにより、人体を介して入力側電極部22と出力側電極部24とが導通状態となる。
【0020】
ケーシング16には、電源ボタン26、Highボタン28、Lowボタン30が設けられている。電源ボタン26は、本体電池18と電気回路部20との電流経路を接続または遮断する機能を有している。Highボタン28は、負側パターン及び正側パターンの電流を供給するための電圧値を高電圧(45V)に設定する機能を有する。Lowボタン30は、負側パターン及び正側パターンの電流を供給するための電圧値を低電圧(25V)に設定する機能を有する。
【0021】
図2は、負側パターンの電流波形を示す図である。
図2は、横軸を時間(t)にし、縦軸を電流値(I)としている。負側パターンは、第1段階として断続直流電流が流れ、第2段階として交流電流が流れ、この第1段階と第2段階が繰り返される。ここで、断続直流電流とは、一定時間直流電流が流れる場合において、途中に電流が流れない休止期間を有する電流パターンを意味する。この例では、断続直流電流として、最初に3秒間直流電流が流れ、その後、1秒間電流が流れない休止期間を経て、再び3秒間直流電流が流れる。
【0022】
断続直流電流の直後に交流電流に切り替えられ、所定の期間内において正側と負側とを行き来するパルス交流電流が流れる。この例では、1秒間の交流電流期間が設定されている。交流電流の周波数としては、例えば、11Hzで設定することが好ましい。
【0023】
図3は、正側パターンの電流波形を示す図である。
図3は、横軸を時間(t)にし、縦軸を電流値(I)としている。正側パターンは、横軸を介して負側パターンと対称となるように設定されている。
【0024】
続いて、上記構成のイオン導入美容器10の作用について説明する。イオン導入美容器10のケーシング16の入力側電極部22に手が触れるように持ちつつ、出力側電極部24の平面を美容液がもたらされた肌に接触させる。
【0025】
この際、電源ボタン26を操作して電気回路部20を作動させるとともに、Highボタン28、Lowボタン30を用いて電圧レベルを選択する。最初に
図2に示される負側パターンによってイオン導入が行われる場合について説明する。
【0026】
美容液のマイナス電位を帯びたイオンは、出力側電極部24のマイナス電位に電気的に反発して肌内部の深層部へと浸透する。これに加えて、プラス電位を帯びた肌の汚れは、出力側電極部24のマイナス電位によって電気的に吸引されて除去される。これにより、美容液が肌の奥まで浸透するとともに、肌の汚れを適切に除去することができる利点がある。
【0027】
この負側パターンでは、負の電流を与えて、美容液のマイナス電位を帯びたイオンを浸透させつつ直流電流の途中で小休止期間を設けて再び直流電流を与えている。一般的に、直流電流を供給する場合、印加された直後の電気的反発力が一番強く次第にその力が弱まっていく。この電流パターンでは、小休止期間を設けて立ち上がり電流を再び設けているため、一定の直流電流を与え続ける場合に比べてイオンの導入をより促進することができる。
【0028】
ここで、負の直流電流が与えられる状態では、上記のように美容液のマイナスの電位を帯びたイオンが電気的反発力によって肌内部に浸透するとともに、肌内部のプラスの電位を帯びたイオンが結合し、美容液のマイナスの電位を帯びたイオンの数と、肌内部のプラスの電位を帯びたイオンの数がバランスのとれた状態となる。すなわち、美容液のマイナスの電位を帯びたイオンが浸透しなくなる。しかしながら、この負側パターンでは、断続直流電流の後に交流電流を与えられる。この交流電流は、出力側電極部24をマイナスとプラスとの間で切り替えを行っているため、上述したバランスを再び崩し、その後の断続直流電流によって再びイオンを浸透させることが出来る。
【0029】
次に、
図3に示される正側パターンによってイオン導入が行われる場合について説明する。美容液のプラス電位を帯びたイオンは、出力側電極部24のプラス電位に電気的に反発して肌内部の深層部へと浸透する。これにより、美容液が肌の奥まで浸透する効果がある。
【0030】
この正側パターンでは、正の電流を与えて、美容液のプラス電位を帯びたイオンを浸透させつつ直流電流の途中で小休止期間を設けて再び直流電流を与えている。上記負側パターンと同様に、小休止期間を設けて立ち上がり電流を再び設けているため、一定の直流電流を与え続ける場合に比べてイオンの導入をより促進することができる。
【0031】
ここで、正の直流電流が与えられる状態では、上記のように美容液のプラスの電位を帯びたイオンが電気的反発力によって肌内部に浸透するとともに、肌内部のマイナスの電位を帯びたイオンが結合し、美容液のプラスの電位を帯びたイオンの数と、肌内部のマイナスの電位を帯びたイオンの数がバランスのとれた状態となる。すなわち、美容液のプラスの電位を帯びたイオンが浸透しなくなる。しかしながら、この正側パターンでは、上記負側パターンと同様に、断続直流電流の後に交流電流を与えられる。この交流電流によって上述したバランスを再び崩し、その後の断続直流電流によって再びイオンを浸透させることが出来る。
【0032】
以上のように、イオン導入美容器10では、断続直流電流を用いることでイオン導入をより促進するとともに、その後の交流電流を用いることでイオンの滞留を抑制することができる。これにより、より効率よく美容液を肌内部に浸透させることができる。
【0033】
さらに、イオン導入美容器10では、負側パターンと正側パターンの双方を用いることで、美容液のうちプラス電位を帯びたイオン及びマイナス電位を帯びたイオンの双方ともに肌の奥まで浸透させることができる。したがって、片側のパターンだけを用いてイオン導入をする場合に比べて、より効果的に美容液を肌内部に浸透させることができる利点がある。
【符号の説明】
【0034】
10 イオン導入美容器、12 充電器、14 台座、16 ケーシング、16a 接続部、18 本体電池、20 電気回路、22 入力側電極部、24 出力側電極部、26 電源ボタン、28 Highボタン、30 Lowボタン。