(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性部は、組付けられる前記操作部材からの押圧力を受ける場合に、前記変形位置に位置し、外力を受けない場合に、前記退避位置に位置することを特徴とする請求項3に記載のシートスライド装置。
前記ロック部材は、前記支持部を挟むように、前記ロック側係合部の前記一側から前記支持部に沿って延出する一対の前記延出部を有することを特徴とする請求項6に記載のシートスライド装置。
前記ロック部材は、前記アッパーレール部材に形成される複数の前記被嵌合部にそれぞれ嵌合する複数の前記嵌合部を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシートスライド装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。
図1〜
図3に示すように、シートスライド装置10は、車両用シートSを前後摺動可能に車両フロアBに固定するもので、主に、車両用シートSに固定されるアッパーレール20と、前後フット31を介して車体(車両フロアB)に固定されるロアレール30と、アッパーレール20とロアレール30とを相対移動不能に固定(ロック)可能なロック部材50と、をそれぞれ一対備えるとともに(
図1〜
図3には一方のみを記載する)、上記一対のロック部材50によるアッパーレール20とロアレール30とのロック状態とそのロック状態を解除するロック解除状態とを切り替えるために操作される操作レバー70とを備えている。以下、シートスライド装置10を構成する各要素について詳述する。
【0022】
アッパーレール(アッパーレール部材)20は、ロアレール30に対して摺動自在に設けられる。また、アッパーレール20は、
図4、
図5に示すように、アッパーレール20は車両フロアBに略水平で車両用シートSが図略のブラケット等を介して取り付けられる上壁21とこの上壁21の両端から垂設される側壁22と、各側壁22の下端からそれぞれ上方に屈曲して折れ曲がっている連結部23と、リテーナ(図示略)によって保持されるスチールボール(図示略)をロアレール30との間の空間に保持する傾斜部24を備えている。
【0023】
また、
図4、
図5に示すように、一方の側壁22と、この側壁22に連結する連結部23とには、ロック部材50の一部が入り込むことが可能な長孔状の切欠き22aが形成されている。また、側壁22側の切欠き22aの一部には、ロック部材50のロック片51(後述する)に係脱可能なロック爪22bがそれぞれ3カ所設けられている。また、アッパーレール20の一端側において、一方の側壁22と連結部23とに、後述するロック部材50の突出部52b,52cがそれぞれ嵌合する略長孔状の切欠き22c,22dが形成されている。また、切欠き22cにおける上壁21側に、上壁21側とは反対側に突出する突出片22eが形成され、切欠き22dにおける上壁21側とは反対側に、他方の側壁22側に突出する突出片22fが形成されている。
なお、ロック爪22bは、「アッパーレール側被係合部」の一例に相当し、切欠き22c,22dは、「被嵌合部」の一例に相当し得る。
【0024】
ロアレール(ロアレール部材)30は、
図3に示すように、車両フロアBに略水平でアッパーレール20の上壁21に対向し前後フット31を介して車両フロアBに固定される底壁32と、この底壁32の両端から上方に延出する第1側部33と、各第1側部33の上端から中央に向かい底壁32と略平行に設けられる鍔部34と、各鍔部34の端末から底壁32に向かい第1側部33と略平行に延出する第2側部35とを備えている。
【0025】
また、
図3に示すように、側壁22の各ロック爪22bに対応する第2側部35には、ロック爪22bと同様に形成される5カ所以上のロック爪35aが設けられている。
なお、ロック爪35aは、「ロアレール側被係合部」の一例に相当し得る。
【0026】
アッパーレール20はその上壁21がロアレール30の底壁32と対向し、ロアレール30の第1側部33と第2側部35の間の空間にアッパーレール20の傾斜部24が入り込むように配置されている。なお、図示を省略するが、例えば、ロアレール30の第1側部33から鍔部34との間のコーナー部分とアッパーレール20の傾斜部24の間と、ロアレール30の底壁32と第1側部33との間のコーナー部分とアッパーレールの連結部23の間には、リテーナ(図示略)によって保持されるスチールボール(図示略)が配置されている。このように、リテーナに保持されるスチールボールにより、アッパーレール20とロアレール30は車両前後方向に円滑に摺動できるようになる。
【0027】
次に、ロック部材50について詳しく説明する。
図6および
図7に示すように、ロック部材50は、略長手板状に形成され、アッパーレール20とロアレール30のロック状態を形成するロック片51と、アッパーレール20に嵌合してロック片51を間接的に支持する一対の支持部52,52と、ロック片51と支持部52とを連結する連結部53と、を備えている。また、ロック部材50は、ロック片51と一体的に形成されて操作レバー70からの押圧力を受ける一対の延出部54,54と、一対の支持部52,52の間に形成されて支持部52の変形を規制する規制部55と、を備えている。また、ロック部材50は、全体が板状部材によって一体形成されてなる構成である。以下、ロック部材50を構成する各要素について詳述する。
【0028】
図6および
図7に示すように、ロック片51は、ロック部材50の一端側において、角が丸みを帯びた略矩形板状に形成されている。また、ロック片51の板面上における四隅の近傍において、板厚方向に略正方形形状で貫通する4つのロック穴51aが形成されている。また、ロック片51の板面上における中心部分において、板厚方向に略矩形形状で貫通する貫通孔51bが形成されている。また、ロック片51には、貫通孔51bを構成する壁部から板厚方向に立ち上がる突出片51cが形成されている。
なお、ロック片51は、「ロック側係合部」の一例に相当し得る。
【0029】
図6および
図7に示すように、一対の支持部52,52は、それぞれ長手板状に形成され、一端が連結部53と接続されている。また、支持部52の他端側には、アッパーレール20に固定される固定部52aが形成されている。固定部52aは、支持部52の長手方向に対して僅かに傾斜する略矩形板状に形成され、アッパーレール20の切欠き22c,22dにそれぞれ入り込む突出部52b,52cを備えている。突出部52bは、ロック部材50の一端に位置し、支持部52の長手方向に直交する方向において、他方の固定部52aとは反対側に突出するように略矩形板状に形成されている。また、突出部52cは、突出部52bと離間した支持部52側の位置に、支持部52の長手方向に直交する方向において、他方の固定部52aとは反対側に突出するように略台形板状に形成されている。また、
図7(A)に示すように、突出部52bにおける突出部52cと対向する側部52dは、固定部52aの長手方向と直交する方向に対してθ1(例えば7°)の角度で傾斜するようにテーパ状になっている。また、突出部52cにおける突出部52bと対向する側部52eは、固定部52aの長手方向と直交する方向に対してθ2(例えば7°)の角度で傾斜するようにテーパ状になっている。これにより、突出部52b,52cは、外側に向かうにつれて幅が狭くなる形状となっている。
なお、突出部52b,52cは、「嵌合部」の一例に相当し得る。
【0030】
図6および
図7に示すように、連結部53は、長手板状に形成され、ロック片51の一側の中心部分と一対の支持部52,52とに接続されている。また、一対の延出部54,54は、ロック片51の一側における連結部53の接続位置に隣接する位置から連結部53に沿って延出するように形成され、それぞれ連結部53を挟むように連結部53と平行になっている。
【0031】
図6および
図7に示すように、一対の延出部54,54は、ロック片51における連結部53の接続部分を挟む隣接位置から延出するように形成されている。また、延出部54は、連結部53と同様の厚さの長手板状に形成され、延出長さが連結部53の長さの半分より僅かに長くなっている。また、延出部54は、連結部53の長手方向に沿って延出する構成であり、一対の延出部54,54と連結部53とは所定間隔(連結部53の短手方向の幅の半分程度の間隔)をおいて並列するようになっている。
【0032】
図6および
図7に示すように、規制部55は、連結部53の一端に対して一対の支持部52,52と共に接続され、長手板状に形成されている。すなわち、規制部55、連結部53、及び一対の支持部52,52によって構成される部分がフォーク形状となっている。また、規制部55は、連結部53の一端に接続されて一対の支持部52,52に平行に延出する平板部55aと、平板部55aと連なる屈曲板部55bと、を備えている。平板部55aは、一対の支持部52,52の長手方向に対して傾くように形成され、連結部53から離れるにつれて一対の支持部52,52の間から離れるようになっている。屈曲板部55bは、
図7(B)に示すように、略逆U字状に折り曲がった形状であり、一対の支持部52,52の間から離れて位置するようになっている。
なお、規制部55は、「弾性部」の一例に相当し得る。
【0033】
操作レバー(操作部材)70は、
図8および
図9に示すように、アッパーレール20の外方に配置される把持部71と、この把持部71の両端から互いに平行に略直線状にそれぞれ延出する連結部72と、両連結部72にそれぞれ連結されてアッパーレール20とロック部材50との間に配置される操作部73とを備えている。また、操作部73は、略長板状に形成され、この操作部73の先端部分には、板面の一方側に突出する凸部73a,73aが操作部73の延出方向に沿って長手状となるように形成されている。また、操作部73における一対の凸部73a,73aとそれぞれ連なるように板面の一方側に突出する一対の凸部73b,73bが、操作部73の延出方向に沿って長手状となるように形成されている。また、操作部73における一対の凸部73b,73bの連結部72側のそれぞれの端部付近には、板厚方向に貫通するように切り欠かれた切欠き73cが形成されている。また、操作部73における凸部73a等が形成される側とは反対側において、操作部73の板厚方向に突出する凸部73d,73eが形成されている。
【0034】
次に、ロック部材50のアッパーレール20への組み付けについて説明する。
図10(A)、
図11(A)、
図12(A)、
図13(A)、
図14(A)は、ロック部材50をアッパーレール20に組み付ける前の状態を示している。ロック部材50の支持部52には外力が加わっておらず、
図10(A)、
図11(A)に示すように、自然状態で一対の支持部52,52が離間している。また、離間した状態にある一対の固定部52a,52aは、それぞれの突出部52b,52bの先端間の距離が一対の切欠き22c,22cの間の距離よりも大きくなっている。同様に、一対の固定部52a,52aのそれぞれの突出部52c,52cの先端間の距離が、一対の切欠き22d,22dの間の距離よりも大きくなっている。これにより、ロック部材50の支持部52に外力が及ぼされることなく自然状態のまま一対の支持部52が離間している場合には、
図12(A)、
図14(A)に示すように、突出部52b,52cがそれぞれ切欠き22c,22dに嵌り込むことはない。また、
図10(A)、
図13(A)に示すように、規制部55は、一対の支持部52,52の間から退避している状態となっている。
【0035】
図10(B)、
図11(B)、
図12(B)、
図13(B)、
図14(B)は、ロック部材50をアッパーレール20に挟み入れる状態を示している。規制部55が一対の支持部52,52の間から退避している状態にあるため、例えば、ロック部材50の一対の支持部52を外側から挟み押圧することで、一対の支持部52がそれぞれ他方の支持部52側に弾性変形することになる。そして、
図12(B)、
図14(B)に示すように、一対の固定部52a,52aが接触する程度まで一対の支持部52を弾性変形することにより、それぞれの突出部52b,52bが一対の切欠き22c,22cの間に収まるように配置することができる。同様に、
図12(B)、
図14(B)に示すように、それぞれの突出部52c,52cが一対の切欠き22d,22dの間に収まるように配置することができる。そして、
図10(B)、
図13(B)、
図14(B)に示すように、アッパーレール20の短手方向において、一対の突出部52b,52bが一対の切欠き22c,22cのそれぞれに対向し、一対の突出部52c,52cが一対の切欠き22d,22dのそれぞれに対向するように、ロック部材50をアッパーレール20に近づける。また、
図10(B)、
図13(B)に示すように、アッパーレール20に形成された一対の切欠き22a,22aにロック片51の側壁部分を入り込ませ、各ロック爪22bをロック片51の各ロック穴51aに係合させる。
【0036】
図10(C)、
図11(C)、
図12(C)、
図13(C)、
図14(C)は、ロック部材50をアッパーレール20に組み付けた状態を示している。例えば、ロック部材50の一対の支持部52,52を外側から挟み押圧して
図10(B)に示す状態となっている場合に、支持部52の押圧状態を解除することで、その弾性変形の状態が解除される。そして、一対の突出部52b,52bがそれぞれ一対の切欠き22c,22cに向けて付勢されるように当該切欠き22c,22cに圧入されて嵌合する。同様に、一対の突出部52c,52cがそれぞれ一対の切欠き22d,22dに向けて付勢されるように当該切欠き22d,22dに圧入されて嵌合する。具体的には、
図13(B)に示すように、突出部52bは、切欠き22cから側壁22と連結部23との間に入り込んで、突出片22eと連結部23とに挟まれる状態となる。また、
図13(B)に示すように、突出部52cは、切欠き22dから側壁22と連結部23との間に入り込んで、突出片22fの側面に当接する状態となる。このとき、
図13(C)、
図14(D)に示すように、規制部55は、一対の支持部52,52の間から退避している状態となっている。
【0037】
また、ロック部材50の突出部52b,52cは、外側に向かうにつれて幅が狭くなる形状となっているため(突出部52b,52cの付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなっているため)、
図12(C)に示すように、それぞれ切欠き22c,22dに入り込むことになる。そして、突出部52bの側部52d(θ1で傾斜する部分)が切欠き22cの側縁22hに当接し、突出部52bの側部52fが切欠き22cの側縁22gに当接する。また、突出部52cの側部52e(θ2で傾斜する部分)が切欠き22dの側縁22iに当接する。このように、ロック部材50の突出部52b,52cがアッパーレール20の切欠き22c,22dに確実に接触することになり、突出部52b,52cと切欠き22c,22dとの間で摩擦が生じて、ロック部材50やアッパーレール20に外力が加わるような場合であっても、このような突出部52b,52cと切欠き22c,22dとの間にクリアランスが生じ難くなる。したがって、ロック部材50とアッパーレール20との間にガタが生じ難くなり、ロック部材によるロック状態を安定的に維持することができる。
【0038】
次に、アッパーレール20及びロック部材50への操作レバー70の組み付けについて説明する。
図10(C)に示すようなロック部材50をアッパーレール20に組み付けた状態において、操作レバー70の操作部73をアッパーレール20とロック部材50との間に差し込むようにして、操作レバー70を組み付ける。このとき、操作部73のほぼ全体がアッパーレール20とロック部材50との間に入り込むことになる。また、
図16、
図17(A)に示すように、操作部73の先端がロック部材50の突出片51cの近傍に位置し、凸部73bにおける凸部73a側の端部付近が延出部54と対向するように位置する状態となる。
【0039】
また、
図17(A)に示すように、ロック部材50の規制部55が操作レバー70の切欠き73cに入り込む状態となる。このとき、規制部55が切欠き73cの開口部73fに当接することで押圧力を受けてロアレール30側に弾性変形する。このようにして、規制部55は、一対の固定部52aの間及び一対の支持部52,52の間から退避した退避位置から、
図17(A)(C)に示すような一対の支持部52,52の間に弾性変形して入り込む変形位置と、の間で変位することになる。すなわち、規制部55は、組付けられる操作レバー70からの押圧力を受ける場合に、変形位置に位置し、外力を受けない場合に、退避位置に位置するようになっている。
【0040】
このように、ロック部材50の組付け時には、支障なく突出部52b,52cを切欠き22c,22dに嵌合させることができ、ロック部材50の組付け後には、ロック部材50に負荷が加わった場合などに、意図せずにロック部材50とアッパーレール20の嵌合状態が解除されることがなくなる。そして、ロック部材50の組付け後には、ロック片51の係合状態を安定して維持することで、ロアレール30に対してアッパーレール20が意図せずに摺動することを抑制し、シーSトの使用上の安全性を確保することができる。
【0041】
また、
図17(A)に示すように、操作レバー70の凸部73d,73eが、アッパーレール20の上壁21に形成された突起部21a,21bにそれぞれ当接している。
【0042】
次に、シートスライド装置10における操作レバー70によるロック状態及びロック解除状態との切り替え操作について説明する。
操作レバー70が操作されない場合には、
図18(A)に示すように、操作レバー70及びロック部材が一定の姿勢を保持している。具体的には、操作レバー70の凸部73d,73eがアッパーレール20の突起部21a,21bにそれぞれ当接し、切欠き73cの開口部73fがロック部材50の規制部55に当接し、操作レバー70及びロック部材が静止している。また、操作レバー70はロック部材50の延出部54を押圧することなく、支持部52などが弾性変形せず、ロック片51は変位することがない。そして、
図19(A)に示すように、ロック片51は、アッパーレール20のロック爪22bと、ロアレール30のロック爪35aと、に係合したままの状態となっている。すなわち、ロック部材50のロック穴51aに、ロック爪22b及びロック爪35aが嵌まり込んでいる。これにより、アッパーレール20とロアレール30とが相対移動不能にロックされる。
【0043】
このようなロック部材50によるロック状態において、操作レバー70の把持部71が上方向に移動するように操作されると、
図18(B)に示すように、操作レバー70の操作部73は、先端側が下方に向かうように傾動する。具体的には、操作レバー70の凸部73eがアッパーレール20の突起部21bに支持され、切欠き73cの開口部73fがロック部材50の規制部55に支持された状態で操作部73が下方に傾動することになる。そして、このように傾動する操作部73の凸部73b(具体的には凸部73bの凸部73a側の端部)がロック部材50の延出部54を下方に押圧することにより、支持部52は、ロック片51を介してロック片51側が下方に向かうように弾性変形することになる。また、このように支持部52が弾性変形することによって、
図19(B)に示すように、ロック片51が下方に移動することになり、ロック片51と、アッパーレール20のロック爪22b、及びロアレール30のロック爪35aとの係合が解除されて、アッパーレール20とロアレール30とが相対移動可能なロック解除状態になる。
【0044】
このとき、延出部54が操作レバー70に押圧されることによって、ロック片51及び延出部54が一体的に支持部52に対して傾く構成となっている。すなわち、ロック片51には、支持部52との接続部分を支点として支持部52の傾く方向とは反対方向に傾くように(ロック片51に支持部52との接続部分を軸として上向きのモーメントが生じるように)外力が加わる。そして、ロック片51は、その板面がアッパーレール20の上壁21と平行となる状態を保ちつつ下方に移動することになる。そのため、ロック片51が支持部52に対して傾かない構成に比べて、ロック片51の一側(支持部52側)とは反対の端部の移動量が小さくなり、ロアレール30とアッパーレール20との間に形成される空間において変位するロック部材50に対して、ロック解除操作における操作レバー70の操作ストロークを大きくすることができる。
【0045】
このようなロック状態において、さらに操作レバー70の把持部71が上方向に移動するように操作されると、
図18(C)に示すように、操作レバー70の操作部73は、先端側がさらに下方に向かうように傾動する。そして、ロック部材50の延出部54が操作部73の凸部73b(具体的には凸部73bの凸部73a側の端部)によってさらに押圧されることにより、支持部52がより大きく弾性変形することになる。また、延出部54が操作レバー70に押圧されることによって、ロック片51及び延出部54が一体的に支持部52に対して傾く構成となっているため、ロック片51は、その板面がアッパーレール20の上壁21と平行となる状態を保ちつつ下方に移動することになる。そして、操作レバー70の連結部72の一部とアッパーレール20の上壁21に形成された突起部21cに当接することによって、操作レバー70のそれ以上の操作が規制され、ロック部材50の傾動が停止する。
【0046】
そして、アッパーレール20とロアレール30との相対位置を調整した後に操作レバー70の把持部71を解放すると、支持部52の弾性変形が元に戻り、ロック片51が上方に移動することになる。そして、ロック片51と、アッパーレール20のロック爪22b、及びロアレール30のロック爪35aとが係合されて、アッパーレール20とロアレール30とが再び相対移動不能なロック状態になる(
図18(A)、
図19(A)参照)。
【0047】
以上説明したように、本第1実施形態に係るシートスライド装置10では、ロック部材50は、アッパーレール20に形成される切欠き22c,22dにそれぞれ嵌合する突出部52b,52cを有する構成である。また、突出部52b,52cは、切欠き22c,22dに向けて付勢されるように切欠き22c,22dに圧入され、突出部52b,52cは、付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなっている。
【0048】
このように、突出部52b,52cが、付勢方向に向かうにつれて上記付勢方向と直交する方向の幅が狭くなっているため、突出部52b,52cが切欠き22c,22dに入り込み易くなる。その上で、突出部52b,52cが切欠き22c,22dに向けて付勢されるように切欠き22c,22dに圧入されるため、突出部52b,52cの少なくとも一部が切欠き22c,22dに確実に接触することになり、突出部52b,52cと切欠き22c,22dとの間で摩擦が生じて、ロック部材50やアッパーレール20に外力が加わるような場合であっても、このような突出部52b,52cと切欠き22c,22dとの間にクリアランスが生じ難くなる。したがって、ロック部材50とアッパーレール20との間にガタが生じ難くなり、ロック片51のアッパーレール20のロック爪22及び、ロアレール30のロック爪35aへの係合状態を安定して維持することができる。これにより、ロアレール30とアッパーレール20との間で摺動方向にガタが発生することを抑制することができる。
【0049】
また、ロック部材50は、ロック片51から離れた位置に、アッパーレール20の切欠き22c,22dにそれぞれ嵌合する突出部52b,52cを有する構成である。そのため、ロック部材50をかしめ加工やねじ止めなどによってアッパーレール20に固定する構成と比べて、部品点数を低減することができ、低コスト化を実現することができる。
【0050】
また、ロック部材50は、ロック片51と突出部52b,52cの間に介在するように設けられてロック片51をアッパーレール20に対して支持する支持部52を有している。そして、突出部52b,52cは、支持部52が弾性変形することで切欠き22c,22dに向けて付勢される。これにより、嵌合部を切欠き22c,22dに向けて付勢するために、ロック部材50に弾性部材などを別途設ける必要がなく、部品点数を低減することができ、低コスト化を実現することができる。さらに、一対の支持部52,52のそれぞれを近づけるように当該一対の支持部52,52を押圧することで、突出部52b,52cに付勢力を生じさせつつ一対の側壁22,22の間に入り込ませる状態に容易に変化させることができる。
【0051】
さらに、ロック部材50は、アッパーレール20の側壁22に形成される切欠き22c,22dに嵌合する突出部52b,52cを有する。これにより、アッパーレール20の側壁22に対して嵌合する突出部が複数設けられることで、ロック部材50をアッパーレール20に強固に固定することができ、アッパーレール20に対するロック部材50とガタつきをより一層抑制することができる。
【0052】
さらに、ロック部材50は、固定部52a(すなわち突出部52b,52c)を支点としてロック状態とロック解除状態とに切り替わるように弾性変形可能に構成されている。これにより、ロック部材50をロック状態とロック解除状態とに切り替える構成を実現するために、当該ロック部材50を付勢する弾性部材などを設ける必要がなく、部品点数を低減することができ、低コスト化を実現することができる。
【0053】
さらに、ロック部材50は、全体が板状部材によって一体形成されてなる。これにより、ロック部材50を簡易な加工で形成することができ、低コスト化を実現することができる。
【0054】
さらに、ロック部材50は、アッパーレール20に形成される切欠き22c,22dにそれぞれ嵌合する突出部52b,52cと、ロック片51と切欠き22c,22dのそれぞれの間に介在するように設けられてロック片51をアッパーレール20に対して支持する一対の支持部52,52と、を有している。また、ロック部材50は、一対の支持部52,52の間に弾性変形して入り込む変形位置と、一対の支持部52,52の間から退避した退避位置と、の間で変位する規制部55を有する。
【0055】
これにより、ロック部材50をアッパーレール20に組み付ける際に、規制部55が外力を受けず退避位置に位置することで、突出部52b,52cが規制部55に動きを規制されることなく一対の側壁22の間に入り込むように変位することが可能となる。一方で、ロック部材50をアッパーレール20に組み付けた後、規制部55に外力を及ぼすことで、突出部52b,52cが規制部55に動きを規制されて側壁22から離れるように切欠き22c,22dとの嵌合状態が解除されることがなくなる。このように、ロック部材50の組付け時には、支障なく突出部52b,52cを切欠き22c,22dに嵌合させることができ、ロック部材50の組付け後には、ロック部材50に負荷が加わった場合などに、意図せずにロック部材50とアッパーレール20の嵌合状態が解除されることがなくなる。そして、ロック部材50の組付け後には、ロック片51の係合状態を安定して維持することで、ロアレール30に対してアッパーレール20が意図せずに摺動することを抑制し、シートSの使用上の安全性を確保することができる。
【0056】
また、ロック部材50に形成された規制部55を用いて突出部52b,52cの動きを規制する構成であるため、突出部52b,52cの動きを規制するような規制部材を別途設ける必要がなく、ロック部材50の組み付けが工程が簡略化され、部品点数を低減することができ、低コスト化を実現することができる。
【0057】
さらに、規制部55は、組付けられる操作レバー70からの押圧力を受ける場合に、変形位置に位置し、外力を受けない場合に、退避位置に位置する。これにより、シートスライド装置10の構成要素である操作レバー70によって規制部55の変位を規制することで、規制部55に外力を及ぼす部材を別途設けることなく、突出部52b,52cと切欠き22c,22dの嵌合状態を安定して維持する構成を実現することができる。
【0058】
さらに、支持部52は、ロック片51から延出するように形成されている。そして、規制部55は、一対の支持部52,52の間において、ロック片51から延出し、突出部52b,52cに向かうにつれて一対の支持部52,52の間から退避するように形成されている。これにより、ロック部材50に操作レバー70を並設させることで、規制部55における一対の支持部52,52の間から退避する部分を押圧することができ、簡易な構成で規制部55による突出部52b,52cの規制状態を実現することができる。
【0059】
さらに、ロック部材50は、支持部52が弾性変形することでロック片51がロアレール30とアッパーレール20との間において変位する。また、ロック部材50は、さらにロック片51の一側から支持部52に沿って延出する延出部54を有し、延出部54が操作レバー70に押圧されることによって、ロック片51及び延出部54が一体的に支持部52に対して傾くように支持部52が弾性変形する。
【0060】
これにより、操作レバー70によるロック部材50の押圧によって、ロック部材50をロック状態とロック解除状態との間で切り替える際に、ロック片51は、支持部52との接続部分を支点として支持部52の傾く方向とは反対方向に傾くように外力が加わることになる。そのため、ロック片51が支持部52に対して傾かない構成に比べて、ロック片51の一側とは反対の端部の移動量が小さくなり、ロアレール30とアッパーレール20との間に形成される空間において変位するロック部材50に対して、ロック解除操作における操作レバー70の操作ストロークを大きくすることができる。したがって、操作レバー70の誤操作に基づく意図しないロック解除を防止することができ、ロアレール30に対してアッパーレール20が意図せずに摺動することを抑制し、シートSの使用上の安全性を確保することができる。
【0061】
さらに、ロック部材50は、支持部52を挟むように、ロック片51の一側から支持部52に沿って延出する一対の延出部54を有する。これにより、操作レバー70によって延出部54を押圧してロック部材50をロック状態とロック解除状態との間で切り替える際に、支持部52及びロック片51にバランス良く外力を及ぼすことができ、ロック部材50の動作が円滑に行われることになる。
【0062】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)ロック部材50の突出部52bが付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成に限らず、
図20(A)に示すように、アッパーレール20の切欠き22cが突出部52bの付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成であってもよい。具体的には、切欠き22cの側縁が、一対の側壁22,22の対向する方向に対して、それぞれθ3,θ4の角度(例えば7°)で傾くように形成されていてもよい。また、
図20(B)に示すように、突出部52b及び切欠き22cが、突出部52bの付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成であってもよい。具体的には、ロック部材50の突出部52bの側壁においても、一対の側壁22,22の対向する方向に対して、それぞれθ5の角度(例えば7°)で傾くように形成されていてもよい。同様に、突出部52cや切欠き22dが、
図20(A)(B)に示す突出部52bや切欠き22cように、突出部52cの付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成であってもよい。
【0063】
(2)ロック部材50における一対の突出部52b,52bのそれぞれが、付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成に限らず、一対の突出部52b,52bの一方が、付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成であってもよい。同様に、一対の突出部52c,52cの一方が、付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成であってもよい。また、同様に、アッパーレール20における一対の切欠き22c,22cの一方が、突出部52bの付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成であってもよい。同様に、一対の切欠き22d,22dの一方が、突出部52cの付勢方向に向かうにつれて付勢方向と直交する方向の幅が狭くなる構成であってもよい。
【0064】
(3)ロック部材は、板状部材によって構成される例に限らず、
図21、
図22に示すように、弾性変形可能な棒状部材によって構成されてもよい。
図21、
図22に示すロック部材250は、一続きの棒状の弾性部材を折り曲げることによって、ロック片251、支持部252、突出部252b,252c、規制部255等が形作られる。そして、ロック片251、支持部252、突出部252b,252c、規制部255は、上記第1実施形態のロック片51、支持部52、突出部52b,52c、規制部55と同様に機能する。また、略コ字状に形成されるロック係合部251aは、ロック穴51aと同様に機能する。また、突出部252b,252cのそれぞれの側部252d,252eは、
図22(A)に示すように、突出部252b,252cが付勢される方向(切欠き22c,22dに向かう方向)に対してθ11,θ12の角度(例えば7°)で傾いている。そして、側部252d,252eは、側部52d,52eと同様に機能することになる。
【0065】
(4)ロック部材50の突出部52b,52cのそれぞれの側部52d,52eは、固定部52aの長手方向と直交する方向に対して7°以外の角度で傾斜するようにテーパ状に形成されてもよい。
【0066】
(5)ロック部材50の規制部55は、一対の支持部52,52の間に弾性変形して入り込み突出部52b,52cの動きを規制する構成に限らず、規制部55が一対の固定部52a,52aの間(一対の突出部52b,52b及び一対の突出部52c,52c)の間にも弾性変形して入り込み突出部52b,52cの動きを規制する構成であってもよい。また、規制部55が、一対の支持部52,52の間と共に、一対の固定部52a,52aの間(一対の突出部52b,52b及び一対の突出部52c,52c)の間に弾性変形して入り込み突出部52b,52cの動きを規制する構成であってもよい。
【0067】
(6)アッパーレール20の切欠き22c,22dは、側壁22と連結部23とに形成される構成に限らず、上壁21に形成される構成や、上壁21と側壁22とに形成される構成であってもよい。例えば、アッパーレール20は、上記上壁21の代わりに、外側に突出する半円筒形状に形成される上壁を有し、当該上壁に切欠き22c,22dが形成される構成であってもよい。
【0068】
(7)ロック部材50のロック穴51a、及びアッパーレール20のロック爪22bは、2個が対になって設けられることに限らず、1個や4個以上が対になって設けられてもよい。
【0069】
(8)ロック部材50のロック片51は、アッパーレール20のロック爪22b、及びロアレール30のロック爪35aに係合する構成であれば、ロック穴51a以外に爪状の部分を有するような構成であってもよい。