(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1、第2の指標値間の差分が前記閾値より大きい場合に、今回演算した前記試料ガス測定後濃度を以前に演算した前記試料ガス測定後濃度に基づく別の値に置き換える、又は今回演算した前記参照ガス測定後濃度を以前に演算した前記参照ガス測定後濃度に基づく別の値に置き換える処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のオゾン測定装置。
前記第1の指標値は、直近の前記試料ガス測定後濃度の前回の前記試料ガス測定後濃度からの変化率と、前回の前記試料ガス測定後濃度の前々回の前記試料ガス測定後濃度からの変化率と、の差分を示し、
前記第2の指標値は、直近の前記参照ガス測定後濃度の前回の前記参照ガス測定後濃度からの変化率と、前回の前記参照ガス測定後濃度の前々回の前記参照ガス測定後濃度からの変化率と、の差分を示すことを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン測定装置。
前記制御部は、前記変化率を、縦軸が試料ガス中のオゾン濃度、横軸が時間である座標に前記試料ガス測定後濃度又は前記参照ガス測定後濃度をそれぞれプロットした場合における、隣接する前記試料ガス測定後濃度のプロット間を結ぶ直線が横軸方向となす角度、又は隣接する前記参照ガス測定後濃度のプロット間を結ぶ直線が横軸方向となす角度として求めることを特徴とする請求項3又は4に記載のオゾン測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るオゾン測定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0013】
[実施例1]
1.オゾン測定装置の全体構成
図1は、本実施例のオゾン測定装置100の全体構成を示すブロック図である。本実施例では、オゾン測定装置100は、大気中のオゾン濃度を測定するのに用いられるものである。
【0014】
測定装置100は、試料ガス(空気)を導入するための試料ガス導入口11と、試料ガス導入口11から導入された試料ガスが流通する導入管12と、を有する。導入管12は、後述する検出部2の測定セル21に接続されており、測定セル21に試料ガスを供給する。導入管12には、その一部をショートカットするようにバイパス管13が接続されており、このバイパス管13の途中にオゾン分解器14が接続されている。また、導入管12、バイパス管13のそれぞれの途中に、試料ガスの流通経路を切り替えるための弁15及び16が設けられている。また、試料ガス導入口11から導入管12に導入された試料ガスから粉体や粒状体の不純物を除去するための清浄フィルタ17が導入管12の途中に設けられている。本実施例では、試料ガス導入口11、導入管12、バイパス管13、オゾン分解器14、弁15及び16、清浄フィルタ17などによって、測定セル21に試料ガスと試料ガス中のオゾンが除去された参照ガスとを交互に導入するガス供給部1が構成される。
【0015】
また、測定装置100は、測定後のガスを排出するための排出管31と、排出口32と、を有する。排出管31は、測定セル21に接続されており、測定セル21を通過した後のガスが導入される。排出管31の途中に、ガスを流動させるポンプ33と、排出管31内を流通するガスの流量を検知する流量計34と、が設けられている。また、排出管31内を流通するガスの温度を検知する温度センサ35、排出管31内を流通するガスの圧力を検知する圧力センサ36が設けられている。本実施例では、排出管31、排出口32、ポンプ33、流量計34、温度センサ35、圧力センサ36などによって、測定セル21を通過したガスを排出するガス排出部3が構成される。
【0016】
また、測定装置100は、試料ガスに含まれるオゾンを検出する検出部2を有する。検出部2は、試料ガスなどが導入される測定部としての測定セル21、紫外線光源としての水銀ランプ22、水銀ランプ22から出射され測定セル21を透過した光を受光して受光量に応じた電気信号を発生する検出器(光電変換部)23を有する。検出器23は、光電変換素子(本実施例ではフォトダイオード)、増幅器、ADコンバータなどを有して構成される。
【0017】
さらに、オゾン測定装置100は、ポンプ33、弁15及び16、検出部2などの測定装置100の動作を統括的に制御すると共に、試料ガス中のオゾン濃度を求める制御部4を有する。制御部4は、演算制御手段としてのCPU、記憶手段としての記憶部(メモリ)などを有して構成されており、記憶部に格納されたプログラムに従ってオゾン測定装置100の各部の動作の制御、測定データの処理を実行する。なお、オゾン測定装置100には更に、測定結果を表示する表示部、測定装置100と通信可能に接続された外部機器に測定結果を送信する送信部などが設けられていてよい。
【0018】
オゾン測定装置100による試料ガス中のオゾン濃度の測定は次のようにして行われる。
【0019】
(1)ポンプ33によって試料ガス導入口11から導入管12に試料ガス(空気)が一定流量で吸引され、この試料ガスが弁15及び16によってバイパス管13を通さずに測定セル21に導入される。
【0020】
(2)水銀ランプ22から紫外領域の光である特定波長(本実施例では254nm)の紫外線が測定セル21に照射される。これにより、試料ガス中のオゾン及びその他の紫外線を吸収する共存成分の濃度に応じた紫外線が、試料ガスにより吸収される。試料ガスが導入された測定セル21を透過することで減衰した紫外線が、検出器23によって受光される。そして、検出器23は、受光した紫外線の強度(紫外線透過光量)に応じた電気信号を発生し、これをAD変換した測定データ(ここでは、「試料ガス測定データ」ともいう。)を制御部4に入力する。制御部4は、入力された試料ガス測定データを記憶部に記憶する。
【0021】
(3)弁15及び16によってガスの流通経路が切り替えられて、試料ガスがバイパス管13に導入されることで、オゾン分解器14によって試料ガス中のオゾンが分解(除去)されて、オゾンを含まない参照ガスが調整される。この参照ガスは、測定セル21に導入され、上記(2)の試料ガスの場合と同様の測定が行われる。参照ガスは、試料ガス中のオゾンのみが除去されて調整されたものであるため、参照ガスの測定の場合は、試料ガス中のオゾン以外の共存成分の濃度に応じた紫外線が吸収される。参照ガスが導入された測定セル21を透過することで減衰した紫外線が検出器23によって受光される。そして、検出器23は、受光した紫外線の強度(紫外線透過光量)に応じた電気信号を発生し、これをAD変換した測定データ(ここでは、「参照ガス測定データ」ともいう。)を制御部4に入力する。制御部4は、入力された参照ガス測定データを記憶部に記憶する。
【0022】
(4)制御部4が、詳しくは後述するようにして、試料ガス測定データと参照ガス測定データとを用いて、試料ガスの紫外線透過光量と参照ガスの紫外線透過光量との比率に応じた試料ガス中のオゾン濃度を演算により求める。そして、制御部4は、試料ガス中のオゾン濃度の測定結果を記憶部に記憶する。制御部4は、更に記憶部に記憶した測定結果を表示部に表示させたり、外部機器に送信したりしてよい。
【0023】
以上の操作が繰り返されることによって、試料ガス中のオゾン濃度が間欠的に測定される。試料ガスの紫外線透過光量の測定と参照ガスの紫外線透過光量の測定とは、詳しくは後述するように、例えば数秒ごとに切り替えられるようになっており、長期スパンで見た場合は十分な測定点数で試料ガス中のオゾン濃度を連続測定できることになる。
【0024】
2.オゾン濃度の演算
次に、本実施例のオゾン測定装置100におけるオゾン濃度の演算について更に詳しく説明する。本実施例では、制御部4は、試料ガス中のオゾン濃度を、ランバートベールの法則に基づく下記式(1)により演算する。
【0026】
上記式(1)において、Isは試料ガスの紫外線透過光量に対応する試料ガス測定データ、Izは参照ガスの紫外線透過光量に対応する参照ガス測定データ、Kgはオゾンガスの吸光係数、Lは測定セル21の光路長(セル長)、TMsは補正用試料ガス温度、Psは補正用試料ガスの圧力である。
【0027】
このオゾン濃度の演算は、試料ガスと参照ガスとを交互に切り替えて測定セル21に導入しながら、試料ガスの紫外線透過光量の測定後、参照ガスの紫外線透過光量の測定後に行われる。測定セル21に導入されるガスが試料ガスから参照ガスへ、又は参照ガスから試料ガスへと切り替えられると、3秒間のパージ期間(測定セル21内のガスを置き換えるための期間)の後、3秒間の測定期間の間に制御部4が所定の時間間隔(例えば150ms毎)でサンプリングした測定データの平均値を取得する。したがって、オゾン濃度は6秒ごとに更新される。
図2に示すように、参照ガスの測定終了後には、今回取得された参照ガス測定データと、直近の(すなわち、1回前(6秒前)に取得された)試料ガス測定データと、を用いて、上記式(1)によりオゾン濃度が演算される(ここでは、このタイミングで演算されるオゾン濃度を「参照ガス測定後濃度」ともいう。)。また、試料ガスの測定終了後には、今回取得された試料ガス測定データと、直近の(すなわち、1回前(6秒前)に取得された)参照ガス測定データと、を用いて、上記式(1)によりオゾン濃度が演算される(ここでは、このタイミングで演算されるオゾン濃度を「試料ガス測定後濃度」ともいう。)。
【0028】
3.指示飛び
水銀ランプ22の光量が安定していれば、例えば測定セル21に一定のオゾン濃度の試料ガス(例えばオゾンを含まない空気(ゼロガス))を導入した場合、今回の試料ガス測定後濃度と1回前の参照ガス測定後濃度、あるいは今回の参照ガス測定後濃度と1回前の試料ガス測定後濃度は、ほとんど変わらないはずである。
【0029】
しかし、水銀ランプ22は、点灯中に突然光量の状態が急変することがある。
図3(a)は、測定セル21にゼロガスを導入した場合の測定データ、すなわち、水銀ランプ22の光量の変化を測定した結果を示す。同図において縦軸は測定データ(検出器23の出力のADカウント値)、横軸は時間である。
図3(a)中矢印で示すように、水銀ランプ22の光量の状態は急変することがあり、このように水銀ランプ22の光量が急変した際の紫外線透過光量の変化を濃度変換してしまうと、試料ガス中のオゾン濃度の指示値が現実的でない値となる。
図3(b)は、後述する本実施例の指示飛び補正処理を行わない場合のゼロガスのオゾン濃度の測定結果(試料ガス測定後濃度と参照ガス測定後濃度とを交互にプロットしていったオゾン濃度)を示す。同図において縦軸は時間、横軸はオゾン濃度である。
図3(b)に示すように、この場合ほぼ一定値を示すはずのオゾン濃度の指示値に、突然大きくなったり小さくなったりする指示飛びが見られる。
【0030】
図4は、指示飛びのいくつかの典型例を示すグラフである。同図において、縦軸はオゾン濃度、横軸は時間である。また、同図中の「◆」は試料ガス測定後濃度のプロット、「■」は参照ガス測定後濃度のプロットである。
【0031】
図4中の(1)は、参照ガスの測定期間に水銀ランプ22の光量がプラス側に変化した場合の指示飛びの例を示している。この場合、直後に演算される参照ガス測定後濃度は高くなる方向に指示飛びする(1回前の試料ガスの紫外線吸光度と今回の参照ガスの紫外線吸光度との差分が疑似的に大きくなったことに相当する。)。また、この場合、次の試料ガスの測定期間は、水銀ランプ22が安定状態に戻るまでの過渡期となるため、次回に演算される試料ガス測定後濃度は逆に低くなる方向に指示飛びする。
【0032】
図4中の(2)は、試料ガスのパージ期間に水銀ランプ22の光量がマイナス側に変化した場合の指示飛びの例を示している。この場合、直後の試料ガスの測定期間は、水銀ランプ22が安定状態に戻るまでの過渡期となるため、その直後に演算される試料ガス測定後濃度は高くなる方向に指示飛びする(今回の試料ガスの紫外線吸光度と1回前の参照ガスの紫外線吸光度との差分が疑似的に大きくなったことに相当する。)。
【0033】
図4中の(3)は、試料ガスの測定期間に水銀ランプ22の光量がプラス側に変化した場合の指示飛びの例を示している。この場合、直後に演算される試料ガス測定後濃度は低くなる方向に指示飛びする(今回の試料ガスの紫外線吸光度と1回前の参照ガスの紫外線吸光度との差分が疑似的に小さくなったことに相当する。)。また、この場合、次の参照ガスの測定期間は、水銀ランプ22が安定状態に戻るまでの過渡期となるため、次回に演算される参照ガス測定後濃度は逆に高くなる方向に指示飛びする。
【0034】
また、
図4中の(4)は、参照ガスのパージ期間に水銀ランプ22の光量がマイナス側に変化した場合の指示飛びの例を示している。この場合、直後の参照ガスの測定期間は、水銀ランプ22が安定状態に戻るまでの過渡期となるため、その直後に演算される参照ガス測定後濃度は低くなる方向に指示飛びする(1回前の試料ガスの紫外線吸光度と今回の参照ガスの紫外線吸光度との差分が疑似的に小さくなったことに相当する。)。
【0035】
このように、水銀ランプ22の光量の状態が急変するタイミング、光量変化がプラス方向かマイナス方向かに応じて、試料ガス測定後濃度、参照ガス測定後濃度に異なる態様の指示飛びが発生する。したがって、参照ガスの紫外線透過光量を測定している時の水銀ランプ22の光量変化のみに注目し、その変化の大きさから指示飛びを判別する特許文献1の方法では、指示飛びを十分に低減できないことがある。
【0036】
4.指示飛び補正処理
本実施例では、制御部4は、概略、次のような指示飛び補正処理を実行する。つまり、上記式(1)によれば、オゾン濃度は試料ガスの紫外線透過光量と参照ガスの紫外線透過光量との比率から求められるため、水銀ランプ22の光量が安定していれば、直近の試料ガス測定後濃度の前回の試料ガス測定後濃度からの変化率と、直近の参照ガス測定後濃度の前回の参照ガス測定後濃度からの変化率と、はほぼ同じである。より詳細に言えば、測定対象(大気中のオゾン濃度であるか、オゾン発生器の発生するオゾン濃度であるかなど)に応じて、上記両者の変化率は所定の範囲内になると推定できる。しかし、水銀ランプ22の光量が大きく変化した場合には、上記両者の変化率が大きく異なることになる。したがって、本実施例では、上記両者の変化率の差を所定の閾値と比較して、その差が所定の閾値を超えた場合に指示飛びが発生したと判断する。そして、指示飛びのため正確な値として扱えない試料ガス測定後濃度あるいは参照ガス測定後濃度を、より実際のオゾン濃度に近くなるように代替値に置き換える。
【0037】
図5を参照して具体的に説明する。同図において、縦軸はオゾン濃度、横軸は時間である。また、同図中の「◆」は試料ガス測定後濃度のプロット、「■」は参照ガス測定後濃度のプロットである。また、同図において、Csは試料ガス測定後濃度、Czは参照ガス測定後濃度、θsは後述する試料ガス測定後濃度の変化率を示す角度(ここでは「試料ガス測定後角度」ともいう。)、θzは後述する参照ガス測定後濃度の変化率を示す角度(ここでは、「参照ガス測定後角度」ともいう。)である。また、Cs、Cz、θs、θzの添え字「n」などは、何回目の濃度演算タイミングかを示すものである。そして、ここでは、
図5中の濃度演算タイミング(1)〜(7)に注目し、タイミング(4)の試料ガス測定後濃度及びタイミング(5)の参照ガス測定後濃度に指示飛びが発生しているものとする。
【0038】
タイミング(1)では、参照ガス測定後濃度Cz
n−2が演算される。次に、タイミング(2)では、試料ガス測定後濃度Cs
n−1が演算される。次に、タイミング(3)では、参照ガス測定後濃度Cz
n−1が演算されると共に、今回の参照ガス測定後濃度Cz
n−1の前回の参照ガス測定後濃度Cz
n−2からの変化率を示す参照ガス測定後角度θz
n−2が求められる。次に、タイミング(4)では、試料ガス測定後濃度Cs
nが演算されると共に、今回の試料ガス測定後濃度Cs
nの前回の試料ガス測定後濃度Cs
n−1からの変化率を示す試料ガス測定後角度θs
n−1が求められる。
【0039】
以後同様に、順次、オゾン濃度が演算されると共に、今回のオゾン濃度の前回のオゾン濃度からの変化率を示す角度θが求められる。つまり、タイミング(5)では、参照ガス測定後濃度Cz
nが演算されると共に、参照ガス測定後角度θz
n−1が求められる。タイミング(6)では、試料ガス測定後濃度Cs
n+1が演算されると共に、試料ガス測定後角度θs
nが求められる。タイミング(7)では、参照ガス測定後濃度Cz
n+1が演算されると共に、参照ガス測定後角度θz
nが求められる。
【0040】
ここで、本実施例では、角度θ(θs、θz)は、
図5のように縦軸をオゾン濃度、横軸を時間としてatan(アークタンジェント)で求められる。より詳細には、本実施例では、角度θは、横軸の時間は一定周期(6秒)となるため単位時間「1」と換算し、下記式(2)で求められる。
θ=|atan(今回の濃度−前回の濃度)| ・・・(2)
【0041】
そして、本実施例では、毎回の濃度演算タイミングにおいて、オゾン濃度及び角度θを求めた後に、直近の試料ガス測定後角度θsと参照ガス測定後角度θzとが比較される。特に、本実施例では、直近の試料ガス測定後角度θsと参照ガス測定後角度θzとの差分(絶対値)(ここでは、単に「角度差」ともいう。)が、所定の閾値θerrより大きいか否かが判断される。つまり、下記式(3)を満たすか否かが判断される。
θerr<|θz−θs| ・・・(3)
【0042】
角度差が閾値θerr以下の場合は、今回の濃度演算タイミングで演算されたオゾン濃度には指示飛びは発生しないと判断される。そして、今回演算されたオゾン濃度はそのまま試料ガス中のオゾン濃度の測定結果(表示、記録などされるもの)に反映される。一方、角度差が閾値θerrより大きい場合は、今回の濃度演算タイミングで演算されたオゾン濃度に指示飛びが発生していると判断される。そして、今回演算されたオゾン濃度は、前回の濃度演算タイミングで演算されたオゾン濃度に基づいて置き換えられて(補間処理)、試料ガス中のオゾン濃度の測定結果に反映される。特に、本実施例では、上記補間処理では、今回演算されたオゾン濃度は、前回演算されたオゾン濃度で置き換えられる。
【0043】
図5の例では、タイミング(4)において、今回求められた試料ガス測定後角度θs
n−1と、1回前に求められた参照ガス測定後角度θz
n−2とが比較され、
θerr<|θz
n−2−θs
n−1|
を満たす、すなわち、角度差が閾値θerrより大きいと判断される。そして、今回演算された試料ガス測定後濃度Cs
nは、前回演算された試料ガス測定後濃度Cs
n−1で置き換えられて、試料ガス中のオゾン濃度の測定結果に反映される。なお、前回のオゾン濃度が既にそれより前のオゾン濃度で置き換えられている場合は、その既に置き換えられた後のオゾン濃度で今回演算されたオゾン濃度を置き換えればよい。
【0044】
同様に、
図5の例では、タイミング(5)において、今回求められた参照ガス測定後角度θz
n−1と、1回前に求められた試料ガス測定後角度θs
n−1とが比較され、
θerr<|θz
n−1−θs
n−1|
を満たす、すなわち、角度差が閾値θerrより大きいと判断される。そして、今回演算された試料ガス測定後濃度Cz
nは、前回演算された試料ガス測定後濃度Cz
n−1で置き換えられて、試料ガス中のオゾン濃度の測定結果に反映される。
【0045】
一方、タイミング(1)、(2)、(3)、(6)及び(7)では、角度差は閾値θerr以下であると判断され、これら各タイミングで演算された試料ガス測定後濃度Cs、参照ガス測定後濃度Czは、そのまま試料ガス中のオゾン濃度の測定結果に反映される。
【0046】
なお、閾値θerrは、測定対象(大気中のオゾン濃度であるか、オゾン発生器の発生するオゾン濃度であるかなど)、測定データの取得間隔などに応じて、指示飛びを十分に低減できるように任意に決定することができる。一例として、本実施例では、θerrは3.5度である。
【0047】
このように、本実施例では、制御部4は、試料ガス測定後濃度又は参照ガス測定後濃度をそれぞれ演算する毎に、直近の試料ガス測定後濃度のそれ以前の試料ガス測定後濃度からの変化の程度を示す第1の指標値と、直近の参照ガス測定後濃度のそれ以前の参照ガス測定後濃度からの変化の程度を示す第2の指標値と、を求める。そして、制御部4は、第1、第2の指標値間の差分が所定の閾値より大きい場合に、今回演算した試料ガス測定後濃度又は参照ガス測定後濃度をそれぞれ、以前に演算した試料ガス測定後濃度又は参照ガス測定後濃度の少なくとも一方に基づく別の値に置き換える補間処理を行う。特に、本実施例では、補間処理では、今回演算した試料ガス測定後濃度は以前に演算した試料ガス測定後濃度に基づく別の値に置き換えられ、今回演算した参照ガス測定後濃度は以前に演算した参照ガス測定後濃度に基づく別の値に置き換えられる。また、本実施例では、上記第1の指標値は、直近の試料ガス測定後濃度の前回の試料ガス測定後濃度からの変化率を示すものであり、上記第2の指標値は、直近の参照ガス測定後濃度の前回の参照ガス測定後濃度からの変化率を示すものである。より詳細には、本実施例では、この変化率は、縦軸が試料ガス中のオゾン濃度、横軸が時間である座標に試料ガス測定後濃度又は参照ガス測定後濃度をそれぞれプロットした場合における、隣接する試料ガス測定後濃度のプロット間を結ぶ直線が横軸方向となす角度、又は隣接する参照ガス測定後濃度のプロット間を結ぶ直線が横軸方向となす角度として求められる。
【0048】
図6は、本実施例における制御部4における測定データの処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
制御部4は、検出器23から入力される測定データを所定の時間間隔(例えば150ms毎)でサンプリングする(S1)。また、制御部4は、6秒毎に到来する試料ガスの紫外線透過光量又は参照ガスの紫外線透過光量の測定期間の開始タイミングを監視し(S2)、試料ガスの紫外線透過光量又は参照ガスの紫外線透過光量の測定期間の開始タイミングが到来した場合には、それぞれ3秒間にわたりサンプリングした測定データの平均値を求め、試料ガス測定後濃度又は参照ガス測定後濃度を演算する(S3、S4)。また、制御部4は、
図5を参照して説明したように、濃度演算タイミング毎に今回演算したオゾン濃度に指示飛びが発生しているか否かを判別する(S5)。
【0050】
そして、制御部4は、S5において指示飛びが発生していると判断した場合は、今回演算したオゾン濃度を、2回前に演算したオゾン濃度(すなわち、今回演算したオゾン濃度が試料ガス測定後濃度の場合は前回の試料ガス測定後濃度、今回演算したオゾン濃度が参照ガス測定後濃度の場合は前回の参照ガス測定後濃度)に置き換えてその後の処理に供する(S6)。一方、制御部4は、S5において指示飛びが発生していないと判断した場合は、今回演算したオゾン濃度をその後の処理に供する。
【0051】
その後、制御部4は、上述のようにして求められたオゾン濃度(置き換えられたものを含む。)、及び上記同様にしてそれまでに求められて制御部4の記憶部に記憶されているオゾン濃度を用いてスムージング処理を行う(S7)。そして、制御部4は、スムージング処理によって得られたオゾン濃度を最終的な試料ガス中のオゾン濃度の測定結果として記憶部に記憶する。制御部4は、更に記憶部に記憶した測定結果を表示部に表示させたり、外部機器に送信したりしてよい。
【0052】
なお、本実施例では、補間処理として、今回の試料ガス測定後濃度を前回の試料ガス測定後濃度で置き換える、又は今回の参照ガス測定後濃度を前回の参照ガス測定後濃度で置き換える処理を行うが、補間処理自体はこれに限定されるものではなく、利用可能な任意の補間方法を採用することができる。例えば、前回と今回の試料ガス測定後濃度同士又は参照ガス測定後濃度同士の中間の値で置き換えたり、前回とそれ以前(例えば前々回)の試料ガス測定後濃度同士又は参照ガス測定後濃度同士を用いて外挿することで得られた値に置き換えたりすることができる。また、補間処理で今回演算されたオゾン濃度を置き換えるオゾン濃度は、それ以前に演算されたオゾン濃度に基づく、より実際のオゾン濃度に近くなる値であればよい。そのため、今回演算された試料ガス測定後濃度を以前に演算された参照ガス測定後濃度(あるいは試料ガス測定後濃度及び参照ガス測定後濃度の両方)に基づく別の値に置き換えたり、今回演算された参照ガス測定後濃度を以前に演算された試料ガス測定後濃度(あるいは試料ガス測定後濃度及び参照ガス測定後濃度の両方)に基づく別の値に置き換えたりすることも企図し得る。ただし、本発明者らの検討によれば、より実際のオゾン濃度に近い測定結果を得るためには、本実施例のように試料ガス測定後濃度同士又は参照ガス測定後濃度同士で補間処理を行うことが好ましい。
【0053】
また、本実施例では、測定結果を平滑化するスムージング処理を行うが、これを行わずに各濃度演算タイミングで演算されたオゾン濃度(置き換えられたものを含む。)をそのまま最終的な試料ガス中のオゾン濃度の測定結果としてもよい。
【0054】
5.効果確認
次に、本実施例の指示飛び補正処理の効果を調べた結果について説明する。
【0055】
図7(a)の左図は本実施例の指示飛び補正処理を行わない場合(
図3(b)と同様)、右図は本実施例の指示飛び補正処理を行った場合の、ゼロガスのオゾン濃度の測定結果を示す。同図において縦軸は時間、横軸はオゾン濃度である。
図7(a)の右図に示すように、本実施例の指示飛び補正処理を行った場合、
図7(a)の左図でみられる指示飛びが低減されることが分かる。
【0056】
図7(b)は、水銀ランプ22が比較的安定しており本実施例の指示飛び補正処理を行わない基準器と、任意の水銀ランプ22を用い本実施例の指示飛び補正処理を行った検証器とで、大気中のオゾン濃度を長期にわたり測定した結果を比較したものである。同図において、縦軸はオゾン濃度、横軸は時間であり、オゾン濃度は1時間平均値をプロットしている。
図7(b)に示すように、基準器と検証器とで実質的に同じオゾン濃度の測定結果が得られており、実際の大気中のオゾン濃度の長期にわたる測定において正確な測定が行えることがわかる。
【0057】
以上のように、本実施例によれば、参照ガスの紫外線透過光量を測定している時だけでなく試料ガスの紫外線透過光量を測定している時に水銀ランプ22の光量が急変した場合でも、指示飛びを判別することができる。したがって、本実施例によれば、試料ガス中のオゾン濃度の測定結果に生じる指示飛びを低減して、より正確な測定結果を得ることができる。
【0058】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例のオゾン測定装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。したがって、本実施例のオゾン測定装置において実施例1のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0059】
実施例1では、指示飛びの判別のために、毎回の濃度演算タイミングにおいて、直近の試料ガス測定後角度θsと参照ガス測定後角度θzとを比較した。多くの場合、指示飛びを発生させるような水銀ランプ22の光量の変化が発生した後、10秒以内で水銀ランプ22は安定状態に戻る。このような多くの場合に、実施例1の方法によって指示飛びを十分に低減することができる。
【0060】
しかし、水銀ランプ22の光量変化が比較的大きく、指示飛びの変化が比較的大きい場合、水銀ランプ22が安定状態に戻るまでに数十秒かかる場合がある。このような場合、直近の試料ガス測定後角度θsと参照ガス測定後角度θzとを比較する実施例1の方法では、指示飛びが生じた際に水銀ランプ22の光量が安定するまでの間のオゾン濃度の変化を抑えきれなくなる場合がある。
【0061】
図8は、指示飛びの他の典型例を説明するためのグラフである。同図において、縦軸はオゾン濃度、横軸は時間である。また、同図中の「◆」は試料ガス測定後濃度のプロット、「■」は参照ガス測定後濃度のプロットである。
図8に示す例では、
図4や
図5に示す例よりも指示飛びが発生した際にオゾン濃度の演算値が安定するまでに比較的長時間を要していることがわかる。
【0062】
図8の例では、濃度演算タイミング(3)〜(8)で演算されたオゾン濃度に指示飛びが発生している。ここで、タイミング(3)の試料ガス測定後濃度については、直近の角度θs
n−1とθz
n−1との差分が大きくなっているので、実施例1の方法によっても指示飛びが発生していると判断することができる。同様に、タイミング(4)の試料ガス測定後濃度については、直近の角度θz
nとθs
n−1との差分が大きくなっているので、実施例1の方法によっても指示飛びが発生していると判断することができる。
【0063】
しかし、例えばタイミング(5)の試料ガス測定後濃度については、直近の角度θs
nとθz
nとの差分が小さくなっているので、実施例1の方法では指示飛びが発生していると判断することは難しい。同様に、例えばタイミング(6)の参照ガス測定後濃度については、直近の角度θz
n+1とθs
nとの差分が小さくなっているので、実施例1の方法では指示飛びが発生していると判断することは難しい。
【0064】
そこで、本実施例では、直近と前回の角度θs間の差分(絶対値)と、直近と前回の角度θz間の差分(絶対値)とが比較される。特に、本実施例では、上記角度θs間の差分と上記角度θz間の差分との差分(絶対値)が、所定の閾値θerrより大きいか否かが判断される。そして、閾値θerrより大きい場合は、今回演算したオゾン濃度に指示飛びが発生していると判断され、閾値θerr以下の場合は今回演算したオゾン濃度には指示飛びは発生していないと判断される。
【0065】
このように、本実施例では、直近の試料ガス測定後濃度の以前の試料ガス測定後濃度からの変化の程度を示す第1の指標値は、直近の試料ガス測定後濃度の前回の試料ガス測定後濃度からの変化率と、前回の試料ガス測定後濃度の前々回の試料ガス測定後濃度からの変化率と、の差分を示すものである。また、本実施例では、直近の参照ガス測定後濃度の以前の参照ガス測定後濃度からの変化の程度を示す第2の指標値は、直近の参照ガス測定後濃度の前回の参照ガス測定後濃度からの変化率と、前回の参照ガス測定後濃度の前々回の参照ガス測定後濃度からの変化率と、の差分を示すものである。本実施例でも、この変化率は実施例1と同様に角度θとして求められる。
【0066】
図8の例では、例えばタイミング(5)において、下記式、
θerr<||θz
n−θz
n−1|−|θs
n−θs
n−1||
を満たすか否かが判断され、満たしているのでタイミング(5)の試料ガス測定後濃度に指示飛びが発生していると判断さる。タイミング(3)、(4)、(6)、(7)、(8)の指示飛びについても、上記同様にして判別することができる。
【0067】
なお、本実施例における閾値θerrも、実施例1の場合と同様に、測定対象(大気中のオゾン濃度であるか、オゾン発生器の発生するオゾン濃度であるかなど)、測定データの取得間隔などに応じて、指示飛びを十分に低減できるように任意に決定することができる。
【0068】
また、指示飛びが発生していると判断した場合の補間処理は、実施例1と同様にして行うことができる。
【0069】
このように、本実施例では、水銀ランプ22の光量変化が比較的大きく、指示飛びの変化が比較的大きい場合でも、指示飛びが発生した際に安定するまでのオゾン濃度の演算値を排除して、より正確な測定結果を得ることができる。