【実施例】
【0109】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物の製造(3,3,3−トリフルオロ乳酸エチルのNaClO・5H
2Oによる酸化)
アセトニトリル58mL(1.0mL/mmol)に、3,3,3−トリフルオロ乳酸エチル10g(58mmol、1.0eq)を加えて溶解した。さらに、NaClO・5H
2O11g(67mmol、1.2eq)を加えて20℃で30分間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であり、選択率は98%であった。反応終了液に、チオ硫酸ナトリウム五水和物0.38g(1.5mmol、0.026eq)を加えて攪拌し、残存する酸化剤をクエンチした。さらに、炭酸水素ナトリウム0.33g(3.9mmol、0.067eq)と硫酸ナトリウム10g(70mmol、1.2eq)を加えて攪拌し、固形分を濾過で取り除いた。濾液を
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物が56mmol(定量収率97%)含まれていた。濾液の単蒸留(〜48℃/0.5kPa)により、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物7.6gを得た。
19F−NMR純度は99%であり(40mmol)、トータル収率は69%であった。
3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物の
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;1.38(t、3H)、4.41(q、2H)、gem−ジオール基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;78.6(s、3F)。
本実施例では、目的物のエステル基が加水分解された副生成物は全く観測されず、トリフルオロ酢酸の副生量は1%未満であった。
【0111】
[実施例2]3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物の製造(3,3,3−トリフルオロ乳酸エチルのCa(ClO)
2・3H
2Oによる酸化)
酢酸エチル6.0mL(1.0mL/mmol)に、3,3,3−トリフルオロ乳酸エチル1.0g(5.8mmol、1.0eq)とテトラn−ブチルアンモニウム硫酸水素塩0.098g(0.29mmol、0.050eq)を加えて溶解した。さらに、Ca(ClO)
2・3H
2O1.2g(6.1mmol、1.1eq)を加えて室温で終夜攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は98%であり、選択率は93%であった。
3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物の
1H−NMRと
19F−NMRは、実施例1のものと一致した。
本実施例では、目的物のエステル基が加水分解された副生成物は全く観測されず、トリフルオロ酢酸の副生量は3%であった。
【0112】
[実施例3]3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物の製造(3,3−ジフルオロ乳酸メチルのNaClO・5H
2Oによる酸化)
酢酸エチル270mL(1.0mL/mmol)に、3,3−ジフルオロ乳酸メチル38g(270mmol、1.0eq)とテトラn−ブチルアンモニウム硫酸水素塩4.6g(14mmol、0.052eq)を加えて溶解した。さらに、NaClO・5H
2O49g(300mmol、1.1eq)を加えて15℃で3時間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であり、選択率は95%であった。反応終了液に、10%亜硫酸ナトリウム水溶液69g(55mmol、0.20eq)を加えて攪拌し、残存する酸化剤をクエンチした。回収した有機層を
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物が200mmol(定量収率74%)含まれていた。
3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物の
1H−NMRと
19F−NMRは、非特許文献3のものと一致した。
本実施例では、目的物のエステル基が加水分解された副生成物は全く観測されず、ジフルオロ酢酸の副生量は2%であった。また、α位の水素原子がクロル化された副生成物も全く観測されなかった。
【0113】
[実施例4]3,3−ジフルオロピルビン酸エチル・水和物の製造(3,3−ジフルオロ乳酸エチルのNaClO・5H
2Oによる酸化)
3,3−ジフルオロ乳酸エチル1.0g(6.5mmol、1.0eq)に、テトラn−ブチルアンモニウム硫酸水素塩0.11g(0.32mmol、0.049eq)とNaClO・5H
2O1.2g(7.3mmol、1.1eq)を加えて30℃で30分間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は96%であり、選択率は97%であった。反応終了液のクーゲルロール蒸留(〜130℃/0.8kPa)により、3,3−ジフルオロピルビン酸エチル・水和物0.93gを得た。
19F−NMR純度は94%(5.1mmol)であり、トータル収率は78%であった。
3,3−ジフルオロピルビン酸エチル・水和物の
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;1.34(t、3H)、4.18(br、2H)、4.35(q、2H)、5.88(t、1H)。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒:重クロロホルム)、δ ppm;26.5(d、2F)。
本実施例では、目的物のエステル基が加水分解された副生成物は全く観測されず、ジフルオロ酢酸の副生量は1%であった。また、α位の水素原子がクロル化された副生成物も全く観測されなかった。
【0114】
[実施例5]3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・エチルヘミケタールの製造(3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物のエタノールによるヘミケタール化)
エタノール25g(540mmol、20eq)に、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物5.0g(27mmol、1.0eq)を加えて室温で2日間攪拌した。反応終了液の単蒸留(〜44℃/1.5kPa)により、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・エチルヘミケタール3.9gを得た。
1H−NMRによる目的物とエタノールのモル比は10:1であり、
19F−NMR純度は98%(19mmol)であり、トータル収率は70%であった。
3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・エチルヘミケタールの
19F−NMRを以下に示す。
19F−NMR(基準物質;トリクロロフルオロメタン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;−81.9(s、3F)。
【0115】
[実施例6]3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの製造(3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物のオルトギ酸トリメチルによるヘミケタール化)
オルトギ酸トリメチル2.7g(25mmol、0.96eq)に、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物4.0g(26mmol、1.0eq)と硫酸0.25g(2.5mmol、0.096eq)を加えて室温で2時間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であった。反応終了液の単蒸留(〜59℃/2.1kPa)により、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタール2.8gを得た。
1H−NMRによる目的物とメタノールのモル比は55:8であり、
19F−NMR純度は97%(18mmol)であり、トータル収率は69%であった。
3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの
19F−NMRは、非特許文献3のものと一致した。
【0116】
[実施例7]3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの製造(長期保管した3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物のオルトギ酸トリメチルによるヘミケタール化/スキーム2を参照)
水59mmol(カールフィッシャー法で測定)を含む3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物の長期保管品(合計32mmol、1.0eq、副生成物としてジフルオロ酢酸を含む)に、オルトギ酸トリメチル9.9g(93mmol、2.9eq)と硫酸0.74g(7.5mmol、0.23eq)を加えて室温で終夜攪拌した。反応終了液を
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールとジフルオロ酢酸メチルがそれぞれ26mmol、1.1mmol(合計27mmol)含まれていた。また、反応終了液に水は0.39mmol含まれていた。反応終了液の単蒸留(〜60℃/0.6kPa)により、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールと3,3−ジフルオロピルビン酸メチルそれぞれ19mmol、4.7mmolを得た。留出液に水は0.12mmol含まれていた。また、ジフルオロ酢酸メチルは単蒸留により取り除くことができた。
3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの
19F−NMRは、実施例6のものと同等であった。また、3,3−ジフルオロピルビン酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRは、非特許文献3のものと一致した。
【化18】
【0117】
[実施例8]3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの製造(3,3−ジフルオロ乳酸メチルのNaClO・5H
2Oによる酸化→3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物のオルトギ酸トリメチルによるヘミケタール化/ワンポット反応)
アセトニトリル730mL(350mL/mol)に、3,3−ジフルオロ乳酸メチル300g(2.1mol、1.0eq)とテトラn−ブチルアンモニウム硫酸水素塩37g(0.11mol、0.052eq)を加えて溶解した。さらに、NaClO・5H
2O390g(2.4mol、1.1eq)を氷冷下で加えて室温で30分間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であり、選択率は96%であった。反応終了液の減圧濃縮により、アセトニトリルを留去した。濃縮残渣に、オルトギ酸トリメチル1600g(15mol、7.1eq)と硫酸11g(0.11mol、0.052eq)を氷冷下で加えて室温で4時間30分攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であった。反応終了液の単蒸留(〜60℃/0.6kPa)により、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールと3,3−ジフルオロピルビン酸メチルの混合物270gを得た。
1H−NMRによる目的物と脱アルコール体のモル比は86:14であり、
19F−NMR純度は98%以上(1.6molとする)であり、トータル収率は76%であった。
3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの
19F−NMRは、実施例6のものと同等であった。また、3,3−ジフルオロピルビン酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRは、実施例7のものと一致した。
【0118】
[実施例9]3−クロロ−3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物の製造(3−クロロ−3,3−ジフルオロ乳酸メチルのNaClO・5H
2Oによる酸化)
アセトニトリル4.7mL(1L/mol)に、3−クロロ−3,3−ジフルオロ乳酸メチル0.83g(4.7mmol、1.0eq)とテトラn−ブチルアンモニウム硫酸水素塩0.08g(0.24mmol、0.05eq)を加えて溶解した。さらに、NaClO・5H
2O0.94g(5.7mmol、1.2eq)を氷冷下で加えて室温で1時間間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%となった。反応終了液に、10%亜硫酸ナトリウム水溶液1.2g(0.95mmol、0.20eq)を加えて攪拌し、残存する酸化剤をクエンチした。反応液を
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、3−クロロ−3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物が4.5mmol(定量収率95%)含まれていた。
3−クロロ−3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物の
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;3.96(s、3H)、gem−ジオール基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;93.8(s、3F)。
【0119】
[実施例10]3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2,2−ジヒドロキシブタン酸メチルの製造(3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシブタン酸メチルのNaClO・5H
2Oによる酸化)
アセトニトリル1.9mL(1L/mol)に、3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシブタン酸メチル0.39g(1.9mmol、1.0eq)とテトラn−ブチルアンモニウム硫酸水素塩0.032g(0.091mmol、0.05eq)を加えて溶解した。さらに、NaClO・5H
2O0.68g(4.2mmol、2.2eq)を氷冷下で加えて室温で30分間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%となった。反応終了液に、10%亜硫酸ナトリウム水溶液0.48g(0.38mmol、0.20eq)を加えて攪拌し、残存する酸化剤をクエンチした。反応液を
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2,2−ジヒドロキシブタン酸メチルが1.3mmol(定量収率71%)含まれていた。
3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2,2−ジヒドロキシブタン酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;3.87(s、3H)、gem−ジオール基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;36.8(s、2F)、82.6(s、3F)。
【0120】
[実施例11]3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチルの製造(3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物の濃硫酸による脱水)
濃硫酸5.2g(53mmol、2.0eq)を97℃に加熱した。減圧(13.5〜3.3kPa)下に3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・水和物5.0g(27mmol、1.0eq)を滴下しながら留出物を抜き出すことにより、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル1.7gを得た。
19F−NMR純度は100%(10mmol)であり、収率は37%であった。
3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチルの
1H−NMRと
19F−NMRは、特開昭63−035538号公報のものと一致した。
【0121】
[実施例12]3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチルの製造(3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・エチルヘミケタールの濃硫酸による脱エタノール)
濃硫酸5.7g(58mmol、4.1eq)を97℃に加熱した。減圧(6.6〜2.2kPa)下に3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・エチルヘミケタール3.1g(14mmol、1.0eq)を滴下しながら留出物を抜き出すことにより、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル1.6gを得た。
19F−NMR純度は100%(9.4mmol)であり、収率は67%であった。
3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチルの
1H−NMRと
19F−NMRは、実施例11のものと一致した。
【0122】
[実施例13]3,3−ジフルオロピルビン酸メチルの製造(3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物のトリフルオロ酢酸無水物による脱水)
シクロペンチルメチルエーテル2.0mL(0.31mL/mmol)に、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物1.0g(6.4mmol、1.0eq)を加えて溶解した。さらに、ピリジン1.1g(14mmol、2.2eq)とトリフルオロ酢酸無水物1.5g(7.1mmol、1.1eq)を加えて10℃で1時間攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であり、選択率は76%であった。
3,3−ジフルオロピルビン酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRは、実施例7のものと一致した。
【0123】
[実施例14]3,3−ジフルオロピルビン酸メチルの製造(3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物と3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタール混合物の五酸化二リンによる脱水)
3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物0.5g(3.3mmol)と3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタール74.5g(438mmol)の混合物に対して、五酸化二リン31.3g(221mmol、0.5eq)を室温でゆっくりと添加した。添加時の発熱により内温は43℃まで上昇した。その後、さらに80℃で6時間撹拌し、その後単蒸留(81℃/10kPa)を行うことにより、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル54.7gを得た。
19F−NMR純度は100%(396mmol)であり、収率は90%であった。
3,3−ジフルオロピルビン酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRは、実施例7のものと一致した。
【0124】
[比較例1]3,3−ジフルオロ乳酸メチルの酸化(特許文献1の例6の反応条件を採用)
塩化メチレン18mL(2.5mL/mmol)に、3,3−ジフルオロ乳酸メチル1.0g(7.1mmol、1.0eq)とテトラn−ブチルアンモニウムブロミド0.11g(0.34mmol、0.048eq)を加えて溶解した。さらに、12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液8.8g(14mmol、2.0eq)を加えて28℃で4時間激しく攪拌した(反応は2相系)。反応終了液を分液し、水層を塩化メチレンで抽出して分液した有機層と合わせた。回収した有機層を
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物が1.1mmol含まれていた。定量収率は15%であった。因みに、回収した水層を
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;トリフルオロメタンスルホン酸カリウム)で定量したところ、3,3−ジフルオロピルビン酸・水和物とジフルオロ酢酸がそれぞれ1.6mmol、0.6mmol含まれていた。
3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・水和物の
1H−NMRと
19F−NMRは、実施例3のものと一致した。また、3,3−ジフルオロピルビン酸・水和物の
19F−NMRを以下に示す。
19F−NMR(基準物質;トリクロロフルオロメタン、溶媒:重水)、δ ppm;−134.9(d、2F)。
【0125】
[比較例2]1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノールの酸化(本発明の好適な反応条件を採用)
アセトニトリル4.4mL(1.0mL/mmol)に、1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノール0.50g(4.4mmol、1.0eq)とテトラn−ブチルアンモニウム硫酸水素塩0.074g(0.22mmol、0.050eq)を加えて溶解した。さらに、NaClO・5H
2O0.86g(5.2mmol、1.2eq)を加えて室温で終夜攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、1,1,1−トリフルオロアセトンまたは該水和物は全く観測されなかった。
【0126】
[比較例3]1,1−ジフルオロ−2−プロパノールの酸化(本発明の好適な反応条件を採用)
アセトニトリル5.2mL(1.0mL/mmol)に、1,1−ジフルオロ−2−プロパノール0.50g(5.2mmol、1.0eq)を加えて溶解した。さらに、NaClO・5H
2O1.0g(6.1mmol、1.2eq)を加えて室温で終夜攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、1,1−ジフルオロアセトンまたは該水和物は全く観測されなかった。
【0127】
[比較例4]3,3,3−トリフルオロ乳酸の酸化(減炭によるトリフルオロ酢酸の副生)
3,3,3−トリフルオロ乳酸0.85g(5.9mmol、1.0eq)に、12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液5.9g(9.5mmol、1.6eq)を加えて室温で2時間激しく攪拌した。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は45%であり、トリフルオロ酢酸が27%副生していた。本来の酸化生成物と考えられる3,3,3−トリフルオロピルビン酸・水和物は全く観測されなかった。
【0128】
[参考例1]3,3−ジフルオロ乳酸メチルと3,3−ジフルオロ乳酸エチルの調製(特許文献2を参考にして3,3−ジフルオロ乳酸アミドを調製)
水190mL(1.2mL/mmol)に、3,3−ジフルオロ乳酸アミド20g(160mmol、1.0eq)と硫酸78g(800mmol、5.0eq)を加えて100℃で20時間攪拌した。反応終了液を2−メチルテトラヒドロフランで抽出し、回収した有機層を減圧濃縮することにより、3,3−ジフルオロ乳酸16g(130mmol)を得た。収率は81%であった。
メタノール3.8g(120mmol、1.5eq)に、3,3−ジフルオロ乳酸10g(79mmol、1.0eq)、オルトギ酸トリメチル13g(120mmol、1.5eq)と硫酸1.2g(12mmol、0.15eq)を加えて室温で終夜攪拌した。反応終了液の単蒸留(〜44℃/0.6kPa)により、3,3−ジフルオロ乳酸メチル9.7g(69mmol)を得た。収率は87%であった。
3,3−ジフルオロ乳酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;3.87(s、3H)、4.40(ddd、1H)、5.96(dt、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;31.3(ddd、1F)、32.7(ddd、1F)。
同様にエチルエステル化することにより、3,3−ジフルオロ乳酸エチルを調製することができた。
3,3−ジフルオロ乳酸エチルの
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;1.28(t、3H)、4.28(dq、2H)、4.35(ddd、1H)、5.92(dt、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;31.3(ddd、1F)、32.8(ddd、1F)。
【0129】
[参考例2]3−クロロ−3,3−ジフルオロ乳酸メチルの調製
特許文献2を参考にして参考例1と同様の手法で2−クロロ−2,2−ジフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール4.5g(28mmol)から3−クロロ−3,3−ジフルオロ乳酸アミドを調製した。これに水32mL(1.1mL/mmol)と、硫酸13.6g(135mmol、4.8eq)を加えて還流下、80時間攪拌した。反応終了液を2−メチルテトラヒドロフランで抽出し、回収した有機層を硫酸ナトリウムで脱水、濾過後、濾液を減圧濃縮した。得られた濃縮残渣にメタノール10.3g(321mmol)と、オルトギ酸トリメチル4.9g(46.1mmol)と硫酸0.2g(2mmol)を加えて室温で22時間攪拌した。反応終了液の単蒸留(〜48℃/2.8kPa)により、3−クロロ−3,3−ジフルオロ乳酸メチル1.7g(9.7mmol)を得た。収率は35%であった。
3,3−ジフルオロ乳酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;3.93(s、3H)、4.56(dd、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;99.5(dd、1F)、101.(dd、1F)。
【0130】
[参考例3]3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシブタン酸メチルの調製
参考例2と同様の手法により2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−メトキシ−1−プロパノール9.0g(49.8mmol)から3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシブタン酸を合成した。これにメタノール23.8g(741mmol)と、オルトギ酸トリメチル10.6g(99.6mmol)と硫酸0.5g(5.1mmol)を加えて室温で終夜攪拌した。その後、オルトギ酸トリメチル5.0g(47.1mmol)を追加してオイルバスで50℃に加熱して2.5時間攪拌した。反応終了液を単蒸留(〜43℃/4.0kPa)により3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシブタン酸メチル5.8g(目的物含量22.0mmol)を得た。収率44%であった。
3,3、4,4,4−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシブタン酸メチルの
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(基準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;3.93(s、3H)、4.56(dd、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;80.1(s、3F)、41.2(ddd、1F)、34.5(ddd、1F)。
【0131】
[参考例4]3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・メチルヘミケタールの反応性を調査
トルエン83mL(1.4mL/mmol)に、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチル・メチルヘミケタール12g(59mmol、1.0eq)とエチレンジアミン3.5g(58mmol、0.98eq)を氷冷下で加えて室温で15時間攪拌した(結晶析出)。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であった。反応終了液の減圧濃縮により、トルエンの一部を留去した。析出した結晶を濾過し、トルエンで洗浄して乾燥することにより、下記式で示されるトリフルオロヘミアミナールアミド閉環体11g(60mmol)を得た。収率は定量的であった。
【化19】
トリフルオロヘミアミナールアミド閉環体の
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(標準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重ジメチルスルホキシド)、δ ppm;2.81(m、1H)、3.04(m、2H)、3.19(m、1H)、3.36(br、1H)、7.00(br、1H)、8.12(s、1H)。
19F−NMR(標準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重ジメチルスルホキシド)、δ ppm;82.8(s、3F)。
【0132】
[参考例5]3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの反応性を調査
トルエン83mL(1.4mL/mmol)に、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタール10g(59mmol、1.0eq)とエチレンジアミン3.5g(58mmol、0.98eq)を氷冷下で加えて室温で15時間攪拌した(結晶析出)。反応終了液を
19F−NMRで分析したところ、変換率は100%であった。反応終了液の減圧濃縮により、トルエンの一部を留去した。析出した結晶を濾過し、トルエンで洗浄して乾燥することにより、下記式で示されるジフルオロヘミアミナールアミド閉環体9.8g(59mmol)を得た。収率は定量的であった。
【化20】
ジフルオロヘミアミナールアミド閉環体の
1H−NMRと
19F−NMRを以下に示す。
1H−NMR(標準物質;テトラメチルシラン、溶媒;重ジメチルスルホキシド)、δ ppm;2.81(m、1H)、3.11(m、4H)、5.94(t、1H)、6.50(s、1H)、7.96(s、1H)。
19F−NMR(標準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重ジメチルスルホキシド)、δ ppm;17.7(dd、1F)、36.1(dd、1F)。
【0133】
[参考例6]3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタールの反応性を調査
トルエン14mL(1.5mL/mmol)に、3,3−ジフルオロピルビン酸メチル・メチルヘミケタール1.6g(9.4mmol、1.0eq)とエチレンジアミン0.58g(9.7mmol、1.0eq)を氷冷下で加えて室温で15時間攪拌した(結晶析出)。さらに、パラトルエンスルホン酸一水和物0.17g(0.89mmol、0.095eq)を加えてディーン・スタークを用いて130℃で3時間共沸脱水した。反応終了液をアセトニトリルで均一溶解して
19F−NMRによる内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、下記式で示されるジフルオロイミノアミド閉環体が0.99g(6.7mmol)含まれていた。定量収率は71%であった。
【化21】
ジフルオロイミノアミド閉環体の
19F−NMRを以下に示す。
19F−NMR(標準物質;ヘキサフルオロベンゼン、溶媒;重クロロホルム)、δ ppm;38.0(d、2F)。