特許第6643744号(P6643744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643744はんだペースト及びはんだペースト用フラックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6643744
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】はんだペースト及びはんだペースト用フラックス
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20200130BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20200130BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20200130BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   B23K35/363 E
   B23K35/363 C
   B23K35/26 310A
   C22C13/00
   C22C13/02
【請求項の数】17
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2019-98663(P2019-98663)
(22)【出願日】2019年5月27日
【審査請求日】2019年6月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 浩由
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 正人
(72)【発明者】
【氏名】川又 勇司
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/076220(WO,A1)
【文献】 特開2013−173156(JP,A)
【文献】 特開2017−108008(JP,A)
【文献】 特開2011−136365(JP,A)
【文献】 特開2014−100737(JP,A)
【文献】 特許第6521160(JP,B1)
【文献】 特開2015−098052(JP,A)
【文献】 特開2002−224881(JP,A)
【文献】 特開2017−192987(JP,A)
【文献】 特許第6489274(JP,B1)
【文献】 特許第6390989(JP,B1)
【文献】 国際公開第2013/187363(WO,A1)
【文献】 特開2001−212692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ粉末とフラックスとからなる、はんだペーストであって、
前記はんだ粉末は、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金からなり
前記フラックスは、チキソ剤と、芳香族グアニジン化合物と、ロジンと、有機酸と、溶剤とを含み、
フラックス全体の総量に対して前記芳香族グアニジン化合物を0.5質量%以上15質量%以下含む、はんだペースト。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【請求項2】
更に、前記合金組成は、下記(1a)式を満たす、請求項1に記載のはんだペースト。
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1a)
上記(1a)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【請求項3】
更に、前記合金組成は、下記(1b)式を満たす、請求項1に記載のはんだペースト。
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1b)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【請求項4】
更に、前記合金組成は、下記(2a)式を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載のはんだペースト。
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2a)
上記(2a)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【請求項5】
更に、前記合金組成は、Ag:0〜4質量%及びCu:0〜0.9質量%の少なくとも一種を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項6】
前記芳香族グアニジン化合物は、ジフェニルグアニジン及びジトリルグアニジンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項7】
フラックス全体の総量に対して、前記有機酸と前記芳香族グアニジン化合物とを合計で3質量%以上18質量%以下含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項8】
前記チキソ剤の含有量は、フラックス全体の総量に対して0.1質量%以上15.0質量%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項9】
前記チキソ剤は、アミド化合物及びエステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項10】
前記アミド化合物は、ポリアミド、ビスアミド及びモノアミドからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項9に記載のはんだペースト。
【請求項11】
前記チキソ剤は、前記アミド化合物を少なくとも含有し、フラックス全体の総量に対して前記アミド化合物を0.1質量%以上15質量%以下含む、請求項9又は10に記載のはんだペースト。
【請求項12】
前記エステル化合物は、ヒマシ硬化油を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項13】
前記チキソ剤は、前記エステル化合物を少なくとも含有し、フラックス全体の総量に対して前記エステル化合物を0.2質量%以上10質量%以下含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項14】
フラックス全体の総量に対して前記ロジンを15質量%以上70質量%以下含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項15】
更に、前記有機酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及び水添ダイマー酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【請求項16】
フラックス全体の総量に対して前記有機酸を0.1質量%以上15質量%以下含む、請求項15に記載のはんだペースト。
【請求項17】
更に、フラックス全体の総量に対して、アミンを0質量%以上8質量%以下、有機ハロゲン化合物を0質量%以上8質量%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0質量%以上8質量%以下、及び酸化防止剤を0質量%以上8質量%以下含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだペースト及びはんだペースト用フラックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CPU(Central Processing Unit)等のはんだ継手を有する電子デバイスは、小型化、高性能化が要求されている。これに伴い、プリント基板と電子デバイスの電極の小型化が必要になる。電子デバイスは電極を介してプリント基板と接続されるため、電極の小型化に伴い、両者を接続するはんだ継手も小さくなる。
【0003】
電子デバイスとプリント基板をこのような微細な電極を介して接続するためには、一般にはんだペーストが使用されている。
はんだペーストは、プリント基板の電極上に印刷等によって供給される。はんだペーストの印刷は、開口部が設けられたメタルマスクをプリント基板上に置き、スキージをメタルマスクに押し付けながら移動させ、メタルマスクの開口部からはんだペーストをプリント基板上の電極に一括塗布することにより行われる。その後、電子部品はプリント基板に印刷されたはんだペースト上に載置され、はんだ付けが完了するまでははんだペーストによって保持される。
【0004】
そして、例えば、電子部品がプリント基板上に載置されてからリフロー炉へ導入するまでに数時間を要した場合には、はんだペーストが印刷時の形状を維持できないことがある。この場合、電子部品の傾きや接合不良の原因となり得る。また、はんだペーストを購入した場合、通常では1回の印刷で全量を使い切ることはないため、はんだペーストは、印刷性能を損なわないように製造当初の適度な粘度が維持されなければならない。
【0005】
しかし、近年、電極の小型化が進むにつれて、はんだペーストの印刷面積も狭小化が進んでいることから、購入したはんだペーストを使い切るまでの時間は長期化している。はんだペーストは、はんだ粉末とフラックスとを混練したものであり、保管期間が長期に渡る場合には、保管状況によってははんだペーストの粘度が上がってしまい、購入当初の印刷性能を発揮することができないことがある。
【0006】
そこで、例えば特許文献1には、はんだペーストの経時変化を抑制するため、Snと、Ag、Bi、Sb、Zn、In及びCuからなる群から選択される一種又は二種以上と、を含み、かつ、所定量のAsを含むはんだ合金が開示されている。同文献には、25℃で2週間後の粘度が作製当初の粘度と比較して140%未満である結果が示されている。
【0007】
一方、はんだ付けに用いられるフラックスは、はんだ及びはんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、はんだと接合対象物の金属表面との間に金属間化合物が形成できるようになり、強固な接合が得られる。
【0008】
このようなはんだ付け用フラックスと、はんだ粉末と、を含むはんだペーストでは、フラックスに含まれるチキソ剤によってチキソ性が付与される。チキソ剤は、フラックス中でネットワークを構築し、チキソ性を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−98052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、特許文献1に記載の発明は、Sn及びAsの他に6種類の元素を選択的に含有し得るはんだ合金である。また、同文献には、As含有量が多いと、溶融性が劣る結果が示されている。
【0011】
ここで、特許文献1で評価されている溶融性は、溶融はんだの濡れ性に相当すると考えられる。同文献で開示されている溶融性は、溶融物の外観を顕微鏡で観察し、溶融しきれないはんだ粉末の有無により評価されている。溶融はんだの濡れ性が高ければ、溶融しきれないはんだ粉末が残存し難くなるためである。
【0012】
一般に、溶融はんだの濡れ性を向上させるためには高活性のフラックスを用いる必要がある。特許文献1に記載のフラックスにおいて、Asによる濡れ性の劣化が抑制されるためには、高活性のフラックスを用いればよいと考えられる。しかし、高活性のフラックスを用いると、フラックスの粘度上昇率が上がってしまう。また、特許文献1の記載を鑑みると、粘度上昇率の上昇を抑えるためには、As含有量を増加させる必要がある。特許文献1に記載のはんだペーストが更に低い粘度上昇率と、優れた濡れ性とを示すためには、フラックスの活性力とAs含有量を増加し続ける必要があり、悪循環を招くことになる。
【0013】
最近では、はんだペーストは、使用環境や保管環境によらず長期間安定した性能を維持することが求められており、また、はんだ継手の微細化により更に高い濡れ性も要求されている。特許文献1に記載のはんだペーストを用いて最近の要求に対応しようとすると、前述のように悪循環が避けられない。
【0014】
更に、微細な電極を接合するためには、はんだ継手の機械的特性等を向上させる必要がある。元素によっては、含有量が多くなると、液相線温度が上昇して液相線温度と固相線温度が広がり、凝固時に偏析して不均一な合金組織が形成されてしまう。はんだ合金がこのような合金組織を有すると、引張強度などの機械的特性が劣り、外部からの応力により容易に破断してしまう。この問題は、近年の電極の小型化に伴い顕著になってきている。
【0015】
加えて、はんだペーストにおいては、接合対象物の金属表面に対する、はんだの濡れ速度が高く、はんだ濡れ性の良いことが要求される。
【0016】
本発明は、上述した課題を解決するためなされたものであり、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、溶融はんだの濡れ性に優れ、高い機械的特性を有し、かつ、接合対象物の金属表面に対するはんだの濡れ速度が高められたはんだペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
はんだペーストの経時変化の抑制と優れた濡れ性とが同時に改善される際、高い活性力を有するフラックスの使用、及びAs含有量の増加による悪循環を避ける必要がある。本発明者らは、はんだ粉末の合金組成に着目し、はんだペーストの経時変化の抑制と優れた濡れ性との両立を図るために鋭意検討を行った。
【0018】
まずは、本発明者らは、はんだ合金として従来から使用されているSn、SnCu、SnAgCuはんだ合金を基本組成として、これにAsを含有するはんだ粉末について検討した。そして、このはんだ粉末を用いた場合に、はんだペーストの経時変化を抑制する理由に着目し、As含有量を検討した。
【0019】
はんだペーストの粘度が経時的に上昇する理由は、はんだ粉末とフラックスとが反応するためであると考えられる。そして、特許文献1の表1実施例4及び比較例2の結果を比較すると、As含有量が100質量ppmを超えた方が、粘度上昇率が低い結果を示している。これらを鑑みると、はんだペーストの経時変化を抑制する効果(以下、適宜「増粘抑制効果」と称する。)に着目した場合、As含有量を更に増加させてもよいと考えた。As含有量を増加した場合、As含有量に伴い増粘抑制効果がわずかに増加するものの、As含有量が多すぎると、はんだ合金の濡れ性が悪化することが確認された。
【0020】
そこで、本発明者らは、Asの他に増粘抑制効果を発揮する元素を添加する必要があることに思い至り、種々の元素を検討したところ、偶然にも、Sb、Bi及びPbがAsと同様の効果を発揮する知見を得た。この理由は定かではないが、以下のように推察される。
【0021】
増粘抑制効果は、フラックスとの反応を抑制することにより発揮されることから、フラックスとの反応性が低い元素として、イオン化傾向が低い元素が挙げられる。一般に、合金のイオン化は、合金組成としてのイオン化傾向、すなわち標準電極電位で考える。例えば、Snに対して貴なAgを含むSnAg合金は、Snよりもイオン化し難い。このため、Snよりも貴な元素を含有する合金は、イオン化し難いことになり、はんだペーストの増粘抑制効果が高いと推察される。
【0022】
ここで、特許文献1では、Sn、Ag、Cuの他に、Bi、Sb、Zn及びInが等価な元素として掲げられているが、イオン化傾向としては、In及びZnはSnに対して卑な元素である。つまり、特許文献1には、Snより卑な元素を添加しても増粘抑制効果が得られることが記載されていることになる。このため、イオン化傾向に則して選定された元素を含有するはんだ合金は、特許文献1に記載のはんだ合金と比較して同等以上の増粘抑制効果が得られると考えられる。また、前述のように、As含有量が増加すると濡れ性が劣化してしまう。
【0023】
本発明者らは、増粘抑制効果として知見したBi及びPbについて詳細に検討した。Bi及びPbは、はんだ合金の液相線温度を下げるため、はんだ合金の加熱温度が一定である場合、はんだ合金の濡れ性を向上させる。しかし、その含有量によっては固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広くなりすぎると、凝固時に偏析が生じてしまい、機械的強度等の機械的特性の低下に繋がってしまう。ΔTが広がる現象は、Bi及びPbを同時に添加した場合に顕著に現われることから、厳密な管理が必要であることも知見した。
【0024】
また、本発明者らは、はんだ合金の濡れ性を向上させるため、Bi含有量及びPb含有量を再検討したが、これらの元素の含有量が増加すると、ΔTが広くなった。そこで、本発明者らは、イオン化傾向がSnに対して貴な元素であるとともに、はんだ合金の濡れ性を改善する元素としてSbを選択して、Sb含有量の許容範囲を定めた上で、Sbを含めたAs、Bi、Pb及びSbの各々の含有量に関する関係を詳細に検討した。その結果、偶然にも、これらの元素の含有量が所定の関係式を満たす場合、優れた増粘抑制効果、濡れ性、及びΔTの狭窄化の全てにおいて実用上問題ない程度である知見を得た。
【0025】
更に、本発明者らは、芳香族グアニジン化合物を含有するフラックス、を使用してはんだ付けを行うと、接合対象物の金属表面に対する、はんだの濡れ速度が高くなることを見出した。
【0026】
これらの知見により得られた本発明は次の通りである。
[1]はんだ粉末と、フラックスと、を含有する、はんだペーストであって、前記はんだ粉末は、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含み、前記フラックスは、チキソ剤と、芳香族グアニジン化合物と、ロジンと、有機酸と、溶剤とを含む、はんだペースト。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0027】
[2]更に、前記合金組成は、下記(1a)式を満たす、上記[1]に記載のはんだペースト。
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1a)
上記(1a)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0028】
[3]更に、前記合金組成は、下記(1b)式を満たす、上記[1]に記載のはんだペースト。
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1b)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0029】
[4]更に、前記合金組成は、下記(2a)式を満たす、上記の[1]から[3]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2a)
上記(2a)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0030】
[5]更に、前記合金組成は、Ag:0〜4質量%及びCu:0〜0.9質量%の少なくとも一種を含有する、上記の[1]から[4]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0031】
[6]前記芳香族グアニジン化合物は、ジフェニルグアニジン及びジトリルグアニジンからなる群より選択される少なくとも一種である、上記の[1]から[5]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0032】
[7]前記芳香族グアニジン化合物を0.2質量%以上15質量%以下含む、上記の[1]から[6]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0033】
[8]前記有機酸と前記芳香族グアニジン化合物とを合計で3質量%以上18質量%以下含む、上記の[1]から[7]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0034】
[9]前記チキソ剤は、アミド化合物及びエステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、上記の[1]から[8]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0035】
[10]前記アミド化合物は、ポリアミド、ビスアミド及びモノアミドからなる群より選択される少なくとも一種を含む、上記[9]に記載のはんだペースト。
【0036】
[11]前記チキソ剤は、前記アミド化合物を少なくとも含有し、前記アミド化合物を0.1質量%以上15質量%以下含む、上記の[9]又は[10]に記載のはんだペースト。
【0037】
[12]前記エステル化合物は、ヒマシ硬化油を含む、上記の[9]から[11]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0038】
[13]前記チキソ剤は、前記エステル化合物を少なくとも含有し、前記エステル化合物を0.2質量%以上10質量%以下含む、上記の[9]から[12]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0039】
[14]前記ロジンを15質量%以上70質量%以下含む、上記の[1]から[13]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0040】
[15]更に、前記有機酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及び水添ダイマー酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む、上記の[1]から[14]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0041】
[16]前記有機酸を0.1質量%以上15質量%以下含む、上記の[1]から[15]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0042】
[17]更に、アミンを0質量%以上8質量%以下、有機ハロゲン化合物を0質量%以上8質量%以下、アミンハロゲン化水素酸塩を0質量%以上8質量%以下、及び酸化防止剤を0質量%以上8質量%以下含む、上記の[1]から[16]のいずれか1項に記載のはんだペースト。
【0043】
[18]はんだペーストに用いられるフラックスであって、前記フラックスは、チキソ剤と、芳香族グアニジン化合物と、ロジンと、有機酸と、溶剤とを含み、
前記はんだペーストは、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含むはんだ粉末を含有する、はんだペースト用フラックス。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、溶融はんだの濡れ性に優れ、高い機械的特性を有し、かつ、接合対象物の金属表面に対するはんだの濡れ速度が高められたはんだペーストを提供することができる。
また、本発明によれば、接合対象物の金属表面に対する、はんだの濡れ速度が高く、はんだ濡れ性の良好なはんだペースト用フラックスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明を以下により詳しく説明する。
本明細書において、はんだ合金組成に関する「ppm」は、特に指定しない限り「質量ppm」である。「%」は、特に指定しない限り「質量%」である。
【0046】
<はんだペースト>
本実施形態のはんだペーストは、特定のはんだ粉末と、特定のフラックスと、を含有する。
【0047】
≪はんだ粉末≫
本実施形態のはんだペーストに用いられるはんだ粉末は、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含む。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0048】
1.合金組成
(1)As:25〜300質量ppm
Asは、はんだペーストの粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asは、フラックスとの反応性が低く、また、Snに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが25質量ppm未満であると、増粘抑制効果を十分に発揮することができない。As含有量の下限は25質量ppm以上であり、好ましくは50質量ppm以上であり、より好ましくは100質量ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は300質量ppm以下であり、好ましくは250質量ppm以下であり、より好ましくは200質量ppm以下である。
【0049】
(2)Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種
Sbは、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。本実施形態におけるはんだ合金がSbを含有する場合、Sb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、更に好ましくは100質量ppm以上であり、特に好ましくは300質量ppm以上である。一方、Sb含有量が多すぎると、濡れ性が劣化するため、適度な含有量にする必要がある。Sb含有量の上限は3000質量ppm以下であり、好ましくは1150質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下である。
【0050】
Bi及びPbは、Sbと同様に、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、Bi及びPbは、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに、溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
【0051】
Pb、並びにSb、及びBiの少なくとも1元素が存在すれば、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる。本実施形態におけるはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、更に好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。Pb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、更に好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。
【0052】
一方、これらの元素の含有量が多すぎると、固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広すぎると、溶融はんだの凝固過程において、BiやPbの含有量が少ない高融点の結晶相が析出するために液相のBiやPbが濃縮される。その後、更に溶融はんだの温度が低下すると、BiやPbの濃度が高い低融点の結晶相が偏析してしまう。このため、はんだ合金の機械的強度等が劣化し、信頼性が劣ることになる。特に、Bi濃度が高い結晶相は硬くて脆いため、はんだ合金中で偏析すると信頼性が著しく低下する。
【0053】
このような観点から、本実施形態におけるはんだ合金がBiを含有する場合、Bi含有量の上限は10000質量ppm以下であり、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは600質量ppm以下であり、更に好ましくは500質量ppm以下である。Pb含有量の上限は5100質量ppm以下であり、好ましくは5000質量ppm以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下であり、更に好ましくは850質量ppm以下であり、特に好ましくは500質量ppm以下である。
【0054】
(3) (1)式
本実施形態におけるはんだ合金は、下記(1)式を満たす必要がある。
【0055】
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
上記(1)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0056】
As、Sb、Bi及びPbは、いずれも増粘抑制効果を示す元素であり、これらの合計が275質量ppm以上である必要がある。(1)式中、As含有量を2倍にしたのは、AsがSbやBiやPbと比較して増粘抑制効果が高いためである。
【0057】
(1)式が275未満であると、増粘抑制効果が十分に発揮されない。(1)式の下限は275以上であり、好ましくは350以上であり、より好ましくは1200以上である。一方、(1)式の上限は、増粘抑制効果の観点では特に限定されることはないが、ΔTを適した範囲にする観点から、好ましくは25200以下であり、より好ましくは10200以下であり、更に好ましくは5300以下であり、特に好ましくは3800以下である。
【0058】
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(1a)式及び(1b)式である。
【0059】
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1a)
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1b)
上記(1a)及び(1b)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0060】
(4) (2)式
本実施形態におけるはんだ合金は、下記(2)式を満たす必要がある。
【0061】
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0062】
As及びSbは含有量が多いと、はんだ合金の濡れ性が劣化する。一方、Bi及びPbは、Asを含有することによる濡れ性の劣化を抑制するが、含有量が多すぎるとΔTが上昇してしまうため、厳密な管理が必要である。特に、Bi及びPbを同時に含有する合金組成では、ΔTが上昇しやすい。これらを鑑みると、Bi及びPbの含有量を増加させて過度に濡れ性を向上させようとすると、ΔTが広がってしまう。一方、AsやSbの含有量を増加させて増粘抑制効果を向上させようとすると濡れ性が劣化してしまう。そこで、本実施形態では、As及びSbのグループ、Bi及びPbのグループに分け、両グループの合計量が適正な所定の範囲内である場合に、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び濡れ性のすべてが同時に満たされるのである。
【0063】
(2)式が0.01未満であると、Bi及びPbの含有量の合計がAs及びPbの含有量の合計と比較して相対的に多くなるため、ΔTが広がってしまう。(2)式の下限は0.01以上であり、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.41以上であり、更に好ましくは0.90以上であり、特に好ましくは1.00以上であり、最も好ましくは1.40以上である。一方、(2)式が10.00を超えると、As及びSbの含有量の合計が、Bi及びPbの含有量の合計より相対的に多くなるため、濡れ性が劣化してしまう。(2)式の上限は10.00以下であり、好ましくは5.33以下であり、より好ましくは4.50以下であり、更に好ましくは2.67以下であり、更により好ましくは2.50以下であり、特に好ましくは2.30以下である。
【0064】
なお、(2)式の分母は「Bi+Pb」であり、これらを含有しないと(2)式が成立しない。すなわち、本実施形態におけるはんだ合金は、Bi及びPbの少なくとも一種を必ず含有することになる。Bi及びPbを含有しない合金組成は、前述のように、濡れ性が劣る。
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(2a)式である。
【0065】
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2a)
上記(2a)式中、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0066】
(5) Ag:0〜4質量%及びCu:0〜0.9質量%の少なくとも一種
Agは、結晶界面にAgSnを形成してはんだ合金の信頼性を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb及びBiと共存することにより、これらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量は、好ましくは0〜4質量%であり、より好ましくは0.5〜3.5質量%であり、更に好ましくは1.0〜3.0質量%である。
【0067】
Cuは、はんだ継手の接合強度を向上させることができる任意元素である。また、Cuはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb及びBiと共存することにより、これらの増粘抑制効果を助長する。Cu含有量は、好ましくは0〜0.9質量%であり、より好ましくは0.1〜0.8質量%であり、更に好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0068】
(6)残部:Sn
本実施形態におけるはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本発明では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても、前述の効果に影響することはない。Inは、含有量が多すぎるとΔTが広がるため、1000質量ppm以下であれば前述の効果に影響することはない。
【0069】
2.はんだ粉末
本実施形態におけるはんだ粉末は、JIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号1〜8を満たすサイズ(粒度分布)を満たしていることが好ましい。より好ましくは記号4〜8を満たすサイズ(粒度分布)であり、更に好ましくは記号5〜8を満たすサイズ(粒度分布)である。粒径がこの条件を満たすと、粉末の表面積が大きすぎず粘度の上昇が抑制され、また、微細粉末の凝集が抑制されて粘度の上昇が抑えられることがある。このため、より微細な部品へのはんだ付けが可能となる。
【0070】
≪フラックス≫
本実施形態のはんだペーストに用いられるフラックスは、チキソ剤と、芳香族グアニジン化合物と、ロジンと、有機酸と、溶剤とを含む。
【0071】
本実施の形態で用いられるチキソ剤としては、例えば、アミド化合物、エステル化合物、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。
【0072】
チキソ剤であるアミド化合物としては、モノアミド、ビスアミド、ポリアミドが挙げられる。
例えば、かかるアミド化合物は、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、p−トルアミド、p−トルエンメタンアミド、芳香族アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、置換アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールアミド、脂肪酸エステルアミド等のモノアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシ脂肪酸(脂肪酸の炭素数C6〜24)アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、メチレンビスオレイン酸アミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、芳香族ビスアミド等のビスアミド;飽和脂肪酸ポリアミド、不飽和脂肪酸ポリアミド、芳香族ポリアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、環状アミドオリゴマー、非環状アミドオリゴマー等のポリアミドが挙げられる。
【0073】
前記環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー等が挙げられる。
【0074】
また、前記非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸とモノアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合等が挙げられる。モノカルボン酸又はモノアミンを含むアミドオリゴマーであると、モノカルボン酸、モノアミンがターミナル分子(terminal molecules)として機能し、分子量を小さくした非環状アミドオリゴマーとなる。また、非環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸と、ジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミド化合物である場合、非環状高分子系アミドポリマーとなる。更に、非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とモノアミンとが非環状に縮合したアミドオリゴマーも含まれる。
【0075】
チキソ剤であるエステル化合物としては、例えば、ヒマシ硬化油等が挙げられる。
【0076】
ソルビトール系チキソ剤としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、(D−)ソルビトール、モノベンジリデン(−D−)ソルビトール、モノ(4−メチルベンジリデン)−(D−)ソルビトール等が挙げられる。
【0077】
チキソ剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
前記チキソ剤は、アミド化合物及びエステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
かかるチキソ剤の含有量は、フラックス全体の総量に対して、0.1〜15.0質量%が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0078】
前記アミド化合物には、ポリアミド、ビスアミド及びモノアミドからなる群より選択される少なくとも一種を含むものを用いることが好ましい。本実施の形態のフラックスは、前記アミド化合物を、フラックス全体の総量に対して、0.1質量%以上15質量%以下含むことが好ましく、0.2質量%以上10質量%以下含むことがより好ましい。
【0079】
前記エステル化合物には、ヒマシ硬化油を含むものを用いることが好ましい。本実施の形態のフラックスは、前記エステル化合物を、フラックス全体の総量に対して、0.2質量%以上10質量%以下含むことが好ましく、0.5質量%以上6質量%以下含むことがより好ましい。
【0080】
本実施の形態で用いられる芳香族グアニジン化合物としては、例えば、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等が挙げられる。
芳香族グアニジン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記芳香族グアニジン化合物は、ジフェニルグアニジン及びジトリルグアニジンからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、ジフェニルグアニジンを含むものがより好ましい。
本実施の形態のフラックスは、芳香族グアニジン化合物を0.2質量%以上15質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは、芳香族グアニジン化合物を0.5質量%以上7.0質量%以下含む。
【0081】
本実施の形態で用いられるロジンとしては、例えば、天然ロジン、該天然ロジンから得られる誘導体等が挙げられる。天然ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、変性ロジン等が挙げられる。変性ロジンとしては、水添ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、アクリル酸変性水添ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0082】
本実施の形態のフラックスは、ロジンを15質量%以上70質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは、ロジンを35質量%以上60質量%以下含む。
【0083】
本実施の形態で用いられる有機酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0084】
また、有機酸としては、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸が挙げられる。
例えば、オレイン酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とメタクリル酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸の反応物であるトリマー酸、リノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノレン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、アクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とオレイン酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノール酸の反応物であるトリマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、メタクリル酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、オレイン酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるダイマー酸、リノール酸とリノレン酸の反応物であるトリマー酸、上述した各ダイマー酸の水添物である水添ダイマー酸、上述した各トリマー酸の水添物である水添トリマー酸等が挙げられる。
【0085】
有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及び水添ダイマー酸からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
本実施の形態のフラックスは、有機酸をフラックス全体の総量に対して、0.1質量%以上15質量%以下含むことが好ましく、0.2質量%以上10質量%以下含むことがより好ましい。
【0086】
本実施の形態のフラックスは、有機酸と、芳香族グアニジン化合物とを、合計で2質量%以上18質量%以下含むことが好ましく、合計で3質量%以上18質量%以下含むことがより好ましい。
【0087】
本実施の形態で用いられる溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。
アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、ジメチルトリグリコール、ジブチルジグリコール、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の脂肪族グリコールエーテル系溶剤;フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル等の芳香族グリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
溶剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0088】
本実施形態のフラックスは、チキソ剤、芳香族グアニジン化合物、ロジン、有機酸及び溶剤以外の成分を含有してもよく、例えば、アミン、ハロゲン系活性剤、酸化防止剤、ロジン以外の樹脂成分などが挙げられる。
【0089】
アミンとしては、モノエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、エチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6’−tert−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール、トリアゾール等が挙げられる。
【0090】
アミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施の形態のフラックスは、アミンを0質量%以上8質量%以下含むことが好ましく、1質量%以上6質量%以下含むことがより好ましい。
【0091】
本実施の形態のフラックスは、ハロゲン系活性剤を含有してもよい。
ハロゲン系活性剤としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0092】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素を反応させた化合物である。
アミンハロゲン化水素酸塩のアミンとしては、上述したアミンを用いることができ、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の水素化物(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素)が挙げられる。また、アミンハロゲン化水素酸塩に代えて、あるいはアミンハロゲン化水素酸塩と合わせてホウフッ化物を含んでもよく、ホウフッ化物としてホウフッ化水素酸等が挙げられる。
アミンハロゲン化水素酸塩としては、アニリン塩化水素、シクロヘキシルアミン塩化水素、アニリン臭化水素、ジフェニルグアニジン臭化水素、ジトリルグアニジン臭化水素、エチルアミン臭化水素等が挙げられる。
【0093】
有機ハロゲン化合物としては、trans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、イソシアヌル酸トリス(2,3−ジブロモプロピル)、無水クロレンド酸等が挙げられる。
【0094】
本実施の形態のフラックスは、有機ハロゲン化合物を0質量%以上8質量%以下含むことが好ましく、1質量%以上6質量%以下含むことがより好ましく;アミンハロゲン化水素酸塩を0質量%以上8質量%以下含むことが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下含むことがより好ましい。
【0095】
酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
本実施の形態のフラックスは、酸化防止剤を0質量%以上8質量%以下含むことが好ましく、1質量%以上6質量%以下含むことがより好ましい。
【0096】
本実施の形態のフラックスは、ロジン以外の樹脂成分を含有してもよい。
ロジン以外の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂等が挙げられる。
変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
【0097】
本実施形態のフラックスは、更に、界面活性剤を含有してもよい。
ここでの界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール類、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド等が挙げられる。
【0098】
フラックスの含有量:
フラックスの含有量は、はんだペーストの全質量に対して5〜95質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
はんだペースト中のフラックスの含有量がこの範囲であると、はんだ粉末に起因する増粘抑制効果が十分に発揮される。加えて、接合対象物の金属表面に対する、はんだの濡れ速度をより高められやすくなる。
【0099】
本実施形態のはんだペーストは、更に、酸化ジルコニウム粉末を含有することが好ましい。酸化ジルコニウムを含有することにより、経時変化に伴うペーストの粘度上昇を抑制することができる。これは、酸化ジルコニウムを含有することにより、はんだ粉末表面の酸化膜厚がフラックス中に投入する前の状態を維持するためと推測される。詳細は不明であるが、以下のように推察される。通常、フラックスの活性成分は常温でもわずかに活性を持っているため、はんだ粉末の表面酸化膜が還元により薄くなり、粉末同士が凝集する原因になっている。そこで、はんだペーストに酸化ジルコニウム粉末を添加することで、フラックスの活性成分が酸化ジルコニウム粉末と優先的に反応し、はんだ粉末表面の酸化膜が凝集しない程度に維持されると推察される。
【0100】
このような作用効果を十分に発揮するために、はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の含有量は、はんだペーストの全質量に対して0.05〜20.0質量%であることが好ましい。0.05質量%以上であると、上記作用効果を発揮することができ、20.0質量%以下であると、金属粉末の含有量を確保することができ、増粘防止効果を発揮することができる。酸化ジルコニウム粉末の含有量は、より好ましくは0.05〜10.0質量%であり、更に好ましい含有量は0.1〜3質量%である。
【0101】
はんだペースト中の酸化ジルコニウム粉末の粒径は、5μm以下であることが好ましい。粒径が5μm以下であると、ペーストの印刷性を維持することができる。粒径の下限は特に限定されることはないが、0.5μm以上であればよい。
上記酸化ジルコニウム粉末の粒径は、酸化ジルコニウム粉末のSEM写真を撮影し、0.1μm以上の各粉末について画像解析により投影円相当径を求め、その平均値とする。
【0102】
酸化ジルコニウムの形状は、特に限定されないが、異形状であればフラックスとの接触面積が大きく増粘抑制効果がある。球形であると、良好な流動性が得られるためにペーストとしての優れた印刷性が得られる。所望の特性に応じて適宜形状を選択すればよい。
【0103】
はんだペーストの製造方法:
本実施形態のはんだペーストは、当業界で一般的な方法により製造される。
まず、はんだ粉末の製造は、溶融させたはんだ材料を滴下して粒子を得る滴下法や遠心噴霧する噴霧法、バルクのはんだ材料を粉砕する方法等、公知の方法を採用することができる。滴下法や噴霧法において、滴下や噴霧は、粒子状とするために不活性雰囲気や溶媒中で行うことが好ましい。そして、上記各成分を加熱混合してフラックスを調製し、フラックス中に上記はんだ粉末を導入し、撹拌、混合して製造することができる。
【0104】
<はんだペースト用フラックス>
本実施の形態のはんだペースト用フラックスは、はんだペーストに用いられる。
かかるフラックスは、チキソ剤と、芳香族グアニジン化合物と、ロジンと、有機酸と、溶剤とを含有する。
かかるフラックスが用いられるはんだペーストは、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部がSnからなる合金組成を有し、下記(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含むはんだ粉末を含有する。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
上記(1)式及び(2)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0105】
<本実施の形態のフラックス及びはんだペーストの作用効果例>
本実施の形態においては、チキソ剤、ロジン、有機酸及び溶剤とともに、芳香族グアニジン化合物を併有するフラックスを採用する。加えて、Snとともに特定の元素(As、Pb並びにSb及びBiの少なくとも一種)を特定の割合で併用した合金組成を有するはんだ合金、を含むはんだ粉末を採用する。かかるフラックスとはんだ粉末とを組み合わせたはんだペーストでは、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、溶融はんだの濡れ性に優れ、高い機械的特性を示す。更には、このはんだペーストによれば、接合対象物の金属表面に対する、はんだの濡れ速度を高めることができる。
【0106】
本発明に係るはんだペーストを用いた接合方法は、例えばリフロー法を用いて常法に従って行えばよい。フローソルダリングを行う場合のはんだ合金の溶融温度は概ね液相線温度から20℃程度高い温度でよい。また、本実施の形態におけるはんだ合金を用いて接合する場合には、凝固時の冷却速度を考慮した方が組織の微細化の観点から好ましい。例えば2〜3℃/s以上の冷却速度ではんだ継手を冷却する。この他の接合条件は、はんだ合金の合金組成に応じて適宜調整することができる。
【0107】
本実施の形態におけるはんだ合金は、その原材料として低α線量材を使用することにより低α線量合金を製造することができる。このような低α線量合金は、メモリ周辺のはんだバンプの形成に用いられるとソフトエラーを抑制することが可能となる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0109】
まず、表1〜6に示す合金組成からなり、JIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号4を満たすサイズ(粒度分布)のはんだ粉末(試験例1〜108、試験例201〜278)を作製した。
但し、試験例1、5〜11、13〜15、18、19、23〜29、31〜33、36、37、41〜47、49〜51、54、55、59〜65、67〜69、72、73、77〜83、85〜87、90、91、95〜101、103〜105、108のはんだ粉末が、本発明で規定するはんだ粉末に該当するものである。
【0110】
チキソ剤としてポリアミド6質量部と、芳香族グアニジン化合物としてジフェニルグアニジン3質量部と、ロジンとして重合ロジン50質量部と、有機酸としてアジピン酸0.5質量部と、溶剤としてテトラエチレングリコールモノメチルエーテル40.5質量部とを混合して、フラックス(実施例1に示す組成からなるフラックス)を調製した。
【0111】
前記のポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドを用いた。
【0112】
前記の、実施例1に示す組成からなるフラックスと、表1から表6に示す各例の合金組成からなるはんだ粉末と、を混合して、はんだペーストを作製した。フラックスとはんだ粉末との質量比は、フラックス:はんだ粉末=11:89とした。
【0113】
各例のはんだ粉末を用いた場合について、はんだペーストにおける粘度の経時変化を測定した。また、はんだ粉末の液相線温度及び固相線温度を測定した。更に、作製直後のはんだペーストを用いて濡れ性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0114】
<はんだペーストにおける粘度の経時変化の評価>
(1)検証方法
作製直後の各はんだペーストについて、株式会社マルコム社製:PCU−205を用い、回転数:10rpm、25℃、大気中で12時間粘度を測定した。
【0115】
(2)判定基準
〇:12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍以下である。
×:12時間後の粘度がはんだペーストを作製後30分経過した時の粘度と比較して1.2倍を超える。
【0116】
<ΔTの評価>
(1)検証方法
フラックスと混合する前のはんだ粉末について、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:EXSTAR DSC7020を用い、サンプル量:約30mg、昇温速度:15℃/minにてDSC測定を行い、固相線温度及び液相線温度を得た。得られた液相線温度から固相線温度を引いてΔTを求めた。
【0117】
(2)判定基準
〇:ΔTが10℃以下である。
×:ΔTが10℃を超える。
【0118】
<濡れ性の評価>
作製直後の各はんだペーストをCu板上に印刷し、リフロー炉でN雰囲気中、1℃/sの昇温速度で25℃から260℃まで加熱した後、室温まで冷却した。冷却後のはんだバンプの外観を光学顕微鏡で観察することで濡れ性を評価した。
【0119】
〇:溶融しきれていないはんだ粉末が観察されない場合。
×:溶融しきれていないはんだ粉末が観察された場合。
【0120】
<総合評価>
〇:表1〜6において、経時変化、ΔT、濡れ性の各評価が、いずれも〇である。
×:表1〜6において、経時変化、ΔT、濡れ性の各評価のうち、少なくとも1つが×である。
【0121】
評価した結果を表1〜6に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
表1〜6に示すように、試験例1〜108のはんだ粉末を用いた場合、いずれの合金組成においても、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことが確認された。
【0129】
これに対して、試験例201、214、227、240、253及び266のはんだ粉末を用いた場合、Asを含有しないため、増粘抑制効果が発揮されない結果を示した。
【0130】
試験例202、215、228、241、254及び267のはんだ粉末を用いた場合、(1)式が下限未満であるため、増粘抑制効果が発揮されない結果を示した。
【0131】
試験例203、216、229、242、255及び268のはんだ粉末を用いた場合、(2)式が上限を超えるため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0132】
試験例204、205、217、218、230、231、243、244、256、257、269及び270のはんだ粉末を用いた場合、As含有量および(2)式が上限を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0133】
試験例206〜208、219〜221、232〜234、245〜247、258〜260及び271〜273のはんだ粉末を用いた場合、Sb含有量が上限を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0134】
試験例209、210、222、223、235、236、248、249、261、262、274及び275のはんだ粉末を用いた場合、Bi含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0135】
試験例211、213、224、226、237、239、250、252、263、265、276及び278のはんだ粉末を用いた場合、Pb含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0136】
試験例212、225、238、251、264及び277のはんだ粉末を用いた場合、Bi及びPbを含有せず(2)式が成立しなかったため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0137】
次に、試験例77に示す合金組成からなるはんだ粉末に対し、表7〜15に示す各例のフラックスを用いた場合について、はんだの濡れ速度(はんだ濡れ性)の評価を行った。この結果を表7〜15に示した。
【0138】
<はんだの濡れ速度(はんだ濡れ性)の評価>
(1)検証方法
はんだの濡れ速度(はんだ濡れ性)の評価試験を以下のようにして行った。
メニスコグラフ試験の方法に準拠し、幅5mm×長さ25mm×厚さ0.5mmの銅板を150℃で1時間酸化処理し、試験板である酸化銅板を得て、試験装置としてSolder Checker SAT−5200(RHESCA社製)を用い、はんだとして試験例77に示す合金組成からなるはんだ粉末を用いて、次のように評価した。
まず、ビーカーに測り取った、各例のフラックスに対して、試験板を5mm浸漬させ、試験板にフラックスを塗布した。続いて、フラックスを塗布後、速やかにフラックスが塗布された試験板を、試験例77に示す合金組成のはんだ槽に浸漬させ、ゼロクロスタイム(sec)を得た。
続いて、各例のフラックスにつき5回の測定を行い、得られた5個のゼロクロスタイム(sec)の平均値を算出した。試験条件を以下のように設定した。
はんだ槽への浸漬速度:5mm/sec(JIS Z 3198−4:2014)
はんだ槽への浸漬深さ:2mm(JIS Z 3198−4:2014)
はんだ槽への浸漬時間:10sec(JIS Z 3198−4:2014)
はんだ槽温度:245℃(JIS C 60068−2−69:2019 附属書B)
ゼロクロスタイム(sec)の平均値が短いほど、濡れ速度は高くなり、はんだ濡れ性が良いことを意味する。
【0139】
(2)判定基準
〇:ゼロクロスタイム(sec)の平均値が6秒以下である。
×:ゼロクロスタイム(sec)の平均値が6秒を超える。
【0140】
評価した結果を表7〜15に示す。
【0141】
表中、ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドを用いた。ビスアミドとして、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドを用いた。モノアミドとして、p−トルアミドを用いた。
【0142】
【表7】
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
【表10】
【0146】
【表11】
【0147】
【表12】
【0148】
【表13】
【0149】
【表14】
【0150】
【表15】
【0151】
実施例1に示すように、試験例77に示す合金組成からなるはんだ粉末に対し、実施例1に示す組成からなるフラックスを用いた場合、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた(表7参照)。
【0152】
実施例1〜2に示すように、溶剤の種類を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0153】
実施例1、3〜5、7に示すように、芳香族グアニジン化合物の種類を変える、複数種類の芳香族グアニジン化合物を組み合わせる、芳香族グアニジン化合物の量を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0154】
実施例6、8に示すように、複数種類の有機酸を組み合わせる、有機酸の量を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0155】
実施例9〜12に示すように、チキソ剤であるアミド化合物の種類を変える、複数種類のアミド化合物を組み合わせることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0156】
実施例13に示すように、チキソ剤として、アミド化合物に加えて更にエステル化合物を併用することでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0157】
実施例14〜18に示すように、有機酸の種類を変える、複数種類の有機酸を組み合わせる、有機酸の量を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0158】
実施例19〜22に示すように、ロジンの種類を変える、複数種類のロジンを組み合わせることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0159】
実施例23〜24に示すように、アミンの種類を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
実施例25〜27に示すように、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物又は酸化防止剤を含むことでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
実施例28に示すように、有機酸の量を少なくしても、アミン、ハロゲン系活性剤及び酸化防止剤を含むことで、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0160】
実施例29〜30に示すように、ロジンの量を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0161】
実施例31〜35に示すように、チキソ剤としてアミド化合物とエステル化合物とを併用している場合、有機酸の種類を変える、複数種類の有機酸を組み合わせる、有機酸の量を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0162】
実施例36〜37に示すように、チキソ剤としてアミド化合物とエステル化合物とを併用している場合、ロジンの量を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0163】
実施例38〜41に示すように、チキソ剤としてアミド化合物とエステル化合物とを併用している場合、ロジンの種類を変える、複数種類のロジンを組み合わせることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0164】
実施例42〜43に示すように、チキソ剤としてアミド化合物とエステル化合物とを併用している場合、アミンの種類を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
実施例44〜46に示すように、チキソ剤としてアミド化合物とエステル化合物とを併用している場合、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物又は酸化防止剤を含むことでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
実施例47に示すように、チキソ剤としてアミド化合物とエステル化合物とを併用している場合、有機酸の量を少なくしても、アミン、ハロゲン系活性剤及び酸化防止剤を含むことで、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0165】
実施例48〜52に示すように、チキソ剤としてアミド化合物とエステル化合物とを併用している場合、アミド化合物とエステル化合物との質量比を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0166】
実施例53〜55に示すように、チキソ剤であるアミド化合物の量を少なくしても、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
実施例56に示すように、チキソ剤としてエステル化合物を単独で用いる場合でも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0167】
実施例57、58に示すように、芳香族グアニジン化合物の量を減らしても、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0168】
実施例59に示すように、有機酸の種類を変える、複数種類の有機酸を組み合わせる、有機酸の量を変える、芳香族グアニジン化合物の種類を変える、アミド化合物の種類を変える、アミド化合物の量を変える、エステル化合物の量を変える、溶剤の種類を変えることでも、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られた。
【0169】
これに対し、比較例1に示すように、芳香族グアニジン化合物を含まないと、芳香族グアニジン化合物を含む場合に比べてはんだの濡れ速度が遅くなり、はんだ濡れ性に対して充分な効果が得られなかった。
【0170】
次に、試験例77に示す合金組成からなるはんだ粉末を、試験例1〜76、試験例78〜108に示す各合金組成からなるはんだ粉末にそれぞれ変更した場合について、前記<はんだの濡れ速度(はんだ濡れ性)の評価>を行った。
その結果、かかる試験例1〜76、試験例78〜108のはんだ粉末の各々に対し、実施例1に示す組成からなるフラックスを用いた場合、いずれも、試験例1のはんだ粉末を用いた場合と同様、はんだの濡れ速度が高くなり、はんだ濡れ性に対して十分な効果が得られた。
また、試験例1〜76、試験例78〜108のはんだ粉末の各々に対し、実施例1に示す組成からなるフラックスを用いた場合のゼロクロスタイムは、いずれも、試験例201〜278のはんだ粉末の各々に対し、実施例1に示す組成からなるフラックスを用いた場合のゼロクロスタイムと比較して、有意に短かった。
【0171】
次に、試験例1〜76、試験例78〜108及び試験例201〜278に示す各合金組成からなるはんだ粉末の各々と、実施例2〜58及び比較例1に示す各組成からなるフラックスの各々と、を混合(はんだ粉末:フラックス=89:11(質量比))してはんだペーストを作製した。
その結果、かかる試験例1〜76、試験例78〜108のはんだ粉末と実施例2〜58のフラックスとを組み合わせたはんだペーストの場合、実施例1に示す組成からなるフラックスを用いたはんだペーストの場合と同様、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことが確認された。
【0172】
また、かかる試験例1〜76、試験例78〜108のはんだ粉末の各々と、実施例2〜58に示す組成からなる各フラックスの各々と、を混合した場合のゼロクロスタイムは、いずれも、比較例1のフラックスを用いた場合のゼロクロスタイムと比較して、有意に短かった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明によれば、粘度上昇等の経時変化が起きにくく、かつ、接合対象物の金属表面に対するはんだの濡れ速度が高められたはんだペーストを提供することができる。
また、本発明によれば、接合対象物の金属表面に対する、はんだの濡れ速度が高く、はんだ濡れ性の良好なはんだペースト用フラックスを提供することができる。
【要約】
【課題】経時変化が起きにくく、溶融はんだの濡れ性に優れ、高い機械的特性を有し、かつ、はんだの濡れ速度が高められたはんだペーストを提供する。
【解決手段】特定のはんだ粉末とフラックスとを含有する、はんだペーストを採用する。はんだ粉末は、As:25〜300質量ppm、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、並びにSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下、及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも一種、並びに残部Snからなる合金組成を有し、(1)式及び(2)式を満たすはんだ合金を含む。フラックスは、チキソ剤と、芳香族グアニジン化合物と、ロジンと、有機酸と、溶剤とを含む。
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (2)
【選択図】なし