(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643750
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】調整槽
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20200130BHJP
G01N 1/34 20060101ALI20200130BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
C02F1/00 J
G01N1/34
G01N1/10 A
C02F1/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-142463(P2015-142463)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-23904(P2017-23904A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一臣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 浩昭
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−113463(JP,U)
【文献】
特開2006−200942(JP,A)
【文献】
特開2001−141720(JP,A)
【文献】
特開昭55−58460(JP,A)
【文献】
特開2006−239658(JP,A)
【文献】
特開2000−117002(JP,A)
【文献】
実用新案登録第3184269(JP,Y2)
【文献】
特開平11−14509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
G01N 1/10
G01N 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口する有底円筒状で、導入された試料液の旋回流が形成される内槽と、
前記内槽に前記試料液を導入する導入器と、
前記導入器から前記内槽に導入された前記試料液のうち、前記開口からオーバフローした前記試料液が流入する外槽と、
を有してなる調整槽であって、
前記導入器は、前記内槽の底面に立設され、
前記内槽の底面には、前記内槽に導入された前記試料液の水質を測定する測定装置に接続される供給口が設けられる、
ことを特徴とする調整槽。
【請求項2】
前記導入器は、前記内槽の側壁に向けて前記試料液を導入する、
請求項1記載の調整槽。
【請求項3】
前記導入器は、前記内槽の底面に向けて前記試料液を導入する、
請求項1記載の調整槽。
【請求項4】
前記導入器の高さ方向の長さは、可変である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の調整槽。
【請求項5】
前記内槽の底面は、すり鉢状である、
請求項1乃至4のいずれかに記載の調整槽。
【請求項6】
前記供給口には、前記試料液に含まれる異物を捕捉するフィルタが配置される、
請求項1乃至5のいずれかに記載の調整槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質の測定などに用いられる試料液から異物を除去する調整槽に関する。
【背景技術】
【0002】
上水、下水、河川水、湖沼水、生活排水、工業排水などの試料液の水質などを測定する測定装置の前段に、調整槽が設けられることがある。すなわち、試料液は、測定装置に導入される前に調整槽に導入される。調整槽は、調整槽の側壁に設けられた導入手段から試料液を槽内に導入して試料液の旋回流を形成して、試料液に含まれるゴミや泥などの不溶固形物や気泡などの異物を除去する(例えば、特許文献1−2参照)。調整槽で異物が除去された試料液は、測定装置に導入される。
【0003】
このように、異物が除去された試料液が測定装置に導入されることで、測定装置の測定値に対する異物による影響が抑えられ、あるいは、測定装置が不溶固形物で目詰まりして故障などするのを防ぐことができる。
【0004】
一方、試料液に含まれる不溶固形物を除去する調整槽の槽内に不溶固形物が残存してしまうと、残存している不溶固形物から藻、苔、微生物などの汚れが発生し、残存している不溶固形物そのものや発生した汚れが測定装置に導入される試料液に混入してしまう。
【0005】
不溶固形物や気泡などの異物は、特許文献1,2に記載されているように、試料液の旋回流を形成させることで、槽内に残存しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4360330号明細書
【特許文献2】特許第5023485号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1,2に記載されているのは、円筒状の側壁に試料液の導入手段が設けられた構成である。円筒状の側壁は曲面であるため、円筒状の側壁に孔を形成して導入手段を挿通させて水密に固定するには加工がしにくく、調整槽の構造が複雑になる。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、簡易な構造で、異物を除去することができ、槽内に異物が残存しにくい調整槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上端が開口する有底円筒状で、導入された試料液の旋回流が形成される内槽と、内槽に試料液を導入する導入器と、導入器から内槽に導入された試料液のうち、開口からオーバフローした試料液が流入する外槽と、を有してなる調整槽であって、導入器は、内槽の底面に立設される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構造で、異物を除去することができ、槽内に異物が残存しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明にかかる調整槽の実施の形態を示す平面図である。
【
図3】
図1の調整槽から導入器が取り外された状態の調整槽の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる調整槽の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明にかかる調整槽の実施の形態を示す平面図である。
図2は、
図1の調整槽の側面図である。
調整槽1は、内槽10と、外槽20と、導入器30とを有してなる。
【0014】
内槽10は、試料液の旋回流が形成される槽である。試料液は、例えば、上水、下水、河川水、湖沼水、生活排水、工業排水などである。
【0015】
外槽20は、内槽10に導入された試料液のうち、内槽10からオーバフローした試料液が流入する槽である。外槽20は、内槽10を収容している。すなわち、内槽10は、外槽20の内部に配置されている。
【0016】
導入器30は、内槽10に試料液を導入する部材である。
【0017】
調整槽1は、導入器30から内槽10に導入された試料液の一部を、異物と共に外槽20にオーバフローさせると共に、内槽10内の試料液を、試料液の水質などを測定する測定装置に供給する。試料液に含まれる異物は、例えば、ゴミや泥などの不溶固形物や気泡などである。測定装置による測定の対象は、例えば、試料液中の各種イオンや試料液の濁度、色度、化学的酸素要求量(COD:Chemical Oxygen Demand)、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)、全りん、全窒素などである。
【0018】
内槽10は、内槽壁11と、内槽底12とを有してなる有底円筒状である。内槽壁11は、内槽10の側壁であり、円筒状である。内槽底12は、内槽10の底面であり、平面視円形のすり鉢状である。内槽壁11の上端は開口している。
【0019】
内槽底12の平面視中央には、固定部材14と固定部材15(
図5参照)との間に挟持されてネジSで固定されたフィルタ13が設けられている。フィルタ13の目の粗さは、例えば、試料液に含まれる異物の大きさや、調整槽1の後段の測定装置による測定に影響を及ぼす異物の大きさなどに応じて決定される。
【0020】
外槽20は、外槽壁21と、外槽底40とを有してなる。外槽壁21は、平面視矩形の筒状である。外槽壁21の上端は開口している。外槽壁21の上端の開口の高さ位置は、内槽壁11の上端の開口の高さ位置よりも高い。外槽底40は、外槽20の底面であり、平板状である。外槽底40には、高さ方向に貫通された排出口40hが形成されている。排出口40hは、内槽10から外槽20にオーバフローした試料液を調整槽1の外部に排出させる孔である。
【0021】
内槽壁11と、内槽底12と、外槽壁21と、外槽底40の材質は、試料液に対する耐食性や耐久性などに基づいて選択されたものであって、例えば、合成樹脂などである。
【0022】
図3は、導入器30が取り外された状態の調整槽1の平面図である。
内槽底12には、導入口30hが形成されている。導入口30hは、試料液の供給経路に連通する孔である。すなわち、調整槽1は、導入口30hと連通する供給経路を介して試料液の供給装置と接続している。
【0023】
図4は、
図3のA−A断面図である。
外槽底40の平面視中央には、円形の孔が形成されている。この孔には、内槽壁11の下端側の部分が挿入されている。外槽底40に形成された孔に挿入された内槽壁11の下端側の部分の内側には、支持台50が配置されている。内槽壁11の下端側の部分は、外槽底40と支持台50とに挟持されて固定されている。
【0024】
支持台50の上面(紙面上側の面)は、内槽底12と同様のすり鉢状に形成されていて、この支持台50のすり鉢状に形成された面の表面に内槽底12が配置されている。導入口30hは、支持台50の高さ方向(紙面上下方向)に貫通して形成されている。導入口30hの上端側は、内槽底12を貫通している。導入口30hの上端の高さ位置は、外槽底40の上面の高さ位置と略一致している。
【0025】
支持台50の平面視中央には、高さ方向に貫通された供給口10hが形成されている。供給口10hは、調整槽1から測定装置に供給される試料液の供給経路と連通する孔である。すなわち、調整槽1は、供給口10hと連通する供給経路を介して試料液の測定装置と接続している。
【0026】
図5は、
図4中の符号Xで示した部分の拡大図である。
供給口10hの上端は、フィルタ13で覆われている。フィルタ13は、供給口10hに連通する孔であって、内槽底12の平面視中央に形成された円形の孔に配置されたドーナツ状の2枚の固定部材14,15の間に挟持されている。フィルタ13を挟持する固定部材14,15は、固定部材14の上面側から固定部材15を貫通して支持台50に螺合されたネジSにより、支持台50に固定されている。
【0027】
図6は、導入器30の側面図である。
導入器30は、パイプ31と、ネジ部32と、ストッパ33と、パイプ受部34と、L字部35と、吐出部36とを有してなる。導入器30を構成する各部材の材質は、試料液に対する耐食性や耐久性などに基づいて選択されたものであって、例えば、合成樹脂などである。
【0028】
パイプ31は、略直管状である。ネジ部32と、ストッパ33とには、パイプ31が挿通される孔が形成されている。パイプ31は、ネジ部32とストッパ33とに挿通されて、パイプ31の上端がパイプ受部34に取り付けられている。ストッパ33は、パイプ31にネジ部32を固定する。パイプ受部34には、L字状のL字部35が取り付けられている。L字部35の両端のうちパイプ受部34が取り付けられていない側の先端は、吐出部36である。パイプ31の下端側から導入された試料液は、パイプ受部34とL字部35とを介して吐出部36から吐出される。
【0029】
なお、L字部35や吐出部36の構成において、吐出部36から吐出される試料液の吐出方向が可変するようにしてもよい。
【0030】
ネジ部32の下端側には、内槽底12に形成された導入口30hの上端側の内周面に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている。すなわち、ネジ部32の下端を内槽底12の導入口30hの上端に挿入して螺合することで、導入器30は内槽底12に立設される。
【0031】
ネジ部32とストッパ33とは、パイプ31の長さ方向に沿って移動可能である。すなわち、ストッパ33とパイプ受部34との間の長さは、可変である。つまり、ストッパ33とパイプ受部34との間の長さが長いとき、内槽底12から吐出部36までの長さは長い。一方、ストッパ33とパイプ受部34との間の長さが短いとき、内槽底12から吐出部36までの長さは短い。このように、ストッパ33とパイプ受部34との間の長さを調整することで、導入器30の高さ方向の長さは可変である。
【0032】
調整槽1は、試料液の供給装置から供給される試料液を、導入器30を介して内槽10に導入する。導入器30は、吐出部36から吐出される試料液が内槽壁11、つまり、内槽10の側壁に直接当たるように、吐出部36の向きが設定されている。
【0033】
試料液は、内槽壁11に当たって、内槽壁11に沿いながら内槽10に導入される。そのため、内槽10内で試料液の旋回流(渦)が形成される。旋回流が形成される内槽10内の試料液の高さ方向の位置は、旋回による遠心力で、内槽10の中央部分が低く、内槽壁11に向けて高くなる。
【0034】
試料液に含まれる異物は、試料液の旋回流の外側に移動して、内槽壁11の上端側の開口からオーバフローする試料液と共に外槽20に移動する。外槽20に流入した異物は、外槽20に流入した試料液と共に排出口40hを通過して、調整槽1の外部に排出される。
【0035】
内槽10内の試料液は、フィルタ13を介して供給口10hから測定装置に供給される。このとき、内槽10内の平面視中央部分、つまり、試料液の旋回流の中心部分には、旋回流の外側(内槽壁11に近い側)の部分に比べて異物は少ないものの、完全に異物が存在しないとも限らない。しかし、たとえ、試料液の旋回流の中心部分に異物が残存していたとしても、フィルタ13により捕捉されるため、フィルタ13で覆われた供給口10hから測定装置に供給される試料液に異物が混入することはない。
【0036】
なお、フィルタ13を上水などにより逆洗する、つまり、供給口10hから水道水などを内槽10内に導入するようにしてもよい。この逆洗により、フィルタ13またはその近傍に堆積した異物を内槽10の上方に移動させて、外槽20にオーバフローする試料液と共に、外槽20に移動させることができる。
【0037】
以上説明した実施の形態によれば、調整槽1は、内槽底12に立設された導入器30から吐出される試料液を内槽壁11に当てながら内槽10に導入する簡易な構成により、内槽10内で試料液の旋回流を形成させて、試料液に含まれる異物を除去することができ、内槽壁11の内周面に異物を残存しにくくすることができる。
【0038】
特に、内槽10内に存在する突起物は、内槽底12に設けられた導入器30のみである。換言すれば、内槽壁11には、突起物は設けられていない。すなわち、内槽壁11には、内槽10内で旋回する試料液の旋回を制限するものが存在しない。そのため、内槽10内での試料液の旋回流は形成されやすい。また、導入器30は内槽底12に設けられるため、円筒状の側壁に導入手段を設ける従来の調整槽に比べて、調整槽1の加工はし易い。
【0039】
また、内槽10に導入される試料液は、内槽底12側から導入されるため、内槽10内での試料液の旋回流の流速を高めることができ、内槽壁11の内周面に異物が残存しにくい効果を高めることができる。
【0040】
さらに、内槽10の底面である内槽底12はすり鉢状であるため、内槽10内での試料液の旋回流の流速をさらに高めることができ、内槽壁11の内周面に異物が残存しにくい効果をさらに高めることができる。
【0041】
さらにまた、導入器30の高さ方向の長さは可変であるため、内槽10内での試料液の旋回流が形成されやすいように、例えば、試料液の種類や内槽底12の形状などに応じて導入器30の高さ方向の長さを容易に調整することができる。
【0042】
なお、以上説明した実施の形態は、導入器30から吐出される試料液を内槽壁11に当てながら内槽10に導入する構成であった。これに代えて、内槽底12から吐出部36までの高さ方向の長さや、吐出部36の吐出方向を設定することで、導入器30から吐出される試料液を内槽底12に当てながら導入する構成としてもよい。この構成によれば、内槽底12がすり鉢状であることから、内槽底12に当たった試料液は内槽10内で旋回流を形成する。その結果、内槽壁11の内周面に異物を残存しにくくすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 調整槽
10 内槽
10h 供給口
11 内槽壁
12 内槽底
20 外槽
21 外槽壁
30 導入器
30h 導入口
40 外槽底
40h 排出口
50 支持台