(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リングマッシュ(登録商標)の接合方法は、圧入タイプの接合工法であり、例えばリングプロジェクション接合と比較すると軸方向に深い接合が可能で同軸精度が得やすいという特徴がある。しかしながら、圧入深さが大きくなると、
図5(B)に示すように、軸方向の両端において、バリBの生じなかった対向部材との間に、接合した部材として好ましくない未接合部Gが生じるおそれがある。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、未接合部の発生を防ぐことができる嵌合部材及び環状部材並びにこれらを接合した接合済部材及びこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る嵌合部材は、例えば
図1(A)に示すように、金属材料で所定の厚さ20tを有する環状に形成された環状部材20の環状の内部の空間20hに嵌められる、金属材料で形成された嵌合部材10であって;空間20hに嵌められる際に環状部材20の厚さ20tの方向である厚さ方向Vに延びる嵌合部材10の外側面10sの厚さ方向Vに直交する方向である直交方向Hの断面の輪郭10Dが、嵌合部材10が嵌められる部分の空間20hの直交方向Hにおける断面の輪郭20hDよりも一回り大きく形成され;外側面10sから外側に突き出た嵌合突起10pであって、嵌合突起10pが無いと仮定した場合に嵌合部材10が空間20hに嵌められることによって環状部材20の嵌合部材10が入れられた側の表面20r近傍に形成される嵌合部材10と環状部材20との間の隙間である表面未接合部Gt(例えば
図5(B)参照)に対して、嵌合部材10が空間20hに予定された深さで嵌められたときに表面未接合部Gtに充填される嵌合突起10pが、外側面10sに設けられて構成されている。
【0007】
このように構成すると、嵌合部材が環状部材に嵌められたときに嵌合突起によって未接合部の発生を防ぐことができる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第2の態様に係る環状部材は、例えば
図1(A)に示すように、金属材料で所定の厚さ20tを有する環状に形成された環状部材20であって;環状の内部に、金属材料で形成された嵌合部材10が嵌められる空間20hが形成され;厚さ20tの方向である厚さ方向Vに直交する方向である直交方向Hの断面における、嵌合部材10が嵌められる部分の空間20hの輪郭20hDが、空間20hに嵌められる際に厚さ方向Vに延びる嵌合部材10の外側面10sの直交方向Hの断面における輪郭10Dよりも一回り小さく形成され;環状部材20の空間20hとの境界である内面20fから空間20hの側に突き出た環状突起20pであって、環状突起20pが無いと仮定した場合に嵌合部材10が空間20hに嵌められることによって、嵌合部材10の外側面10sの空間20h内に存在する端部10eの近傍に形成される嵌合部材10と環状部材20との間の隙間である端部未接合部Gs(例えば
図5(B)参照)に対して、嵌合部材10が空間20hに予定された深さで嵌められたときに端部未接合部Gsに充填される環状突起20pが、内面20fに設けられて構成されている。
【0009】
このように構成すると、環状部材に嵌合部材が嵌められたときに環状突起によって未接合部の発生を防ぐことができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る環状部材は、例えば
図4(A)に示すように、上記本発明の第2の態様に係る環状部材20Aにおいて、環状部材20Aは、嵌合部材10が空間20hに予定された深さで嵌められたときに端部10eを受ける端部受け20sを有し;端部受け20sは、嵌合部材10が空間20hに予定された深さで嵌められたときに、端部10eとの間にポケット20vが形成されるように構成されている。
【0011】
このように構成すると、嵌合部材と環状部材との接合によって生じるバリをポケットに納めることができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る接合済部材は、例えば
図1(B)に示すように、上記本発明の第1の態様に係る嵌合部材10と;上記本発明の第2の態様又は第3の態様に係る環状部材20とを備え;嵌合部材10が空間20h(例えば
図1(A)参照)に予定された深さで嵌められて嵌合部材10と環状部材20との接触部分が固相接合されて構成されている。
【0013】
このように構成すると、未接合部の発生を防止した接合済部材とすることができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る接合済部材の製造方法は、例えば
図1(A)及び
図3を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る嵌合部材10を提供する工程(S2)と;上記本発明の第2の態様又は第3の態様に係る環状部材20を提供する工程(S1)と;嵌合部材10が空間20h内に予定された深さで嵌まるまで嵌合部材10及び環状部材20を加圧する加圧工程(S3〜S6)と;加圧工程(S3〜S6)の最中に、嵌合部材10と環状部材20との接触部に電流を流す通電工程(S4)とを備え;加圧工程(S3〜S6)及び通電工程(S4)によって嵌合部材10と環状部材20との接触部分が固相接合されることで嵌合部材10と環状部材20とが接合した接合済部材30(例えば
図1(B)及び
図1(C)参照)が製造されるように構成されている。
【0015】
このように構成すると、未接合部の発生を防いだ接合済部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、嵌合部材と環状部材とが接合されたときに未接合部の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る、嵌合部材10、環状部材20、接合済部材30を説明する。
図1(A)は嵌合部材10及び環状部材20が嵌合する前の状態の断面図、
図1(B)は嵌合部材10が環状部材20に嵌められて形成された接合済部材30の断面図、
図1(C)は接合済部材30の平面図である。
図1(A)及び
図1(B)において現れる断面は、
図1(C)におけるI−I断面のものである。嵌合部材10は、例えば自動車のクラッチ部品のシャフトとして用いることができる。環状部材20は、例えば自動車のクラッチ部品のドラムとして用いることができる。以下の説明において、環状部材20の厚さ20t(以下「環状厚さ20t」という。)の方向を厚さ方向Vといい、厚さ方向Vに直交する方向を直交方向Hということとする。この厚さ方向V及び直交方向Hは、嵌合部材10を環状部材20に対して嵌め込む方向に置いたときの嵌合部材10に対しても用いることとする。
【0020】
嵌合部材10は、金属材料が加工されて形成された部材であり、典型的には炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等が用いられるが、これら以外の金属であってもよく、用途に応じて好適な材料を用いればよい。嵌合部材10は、本実施の形態では基本形状が中実丸棒状に形成されており、中実丸棒を円柱と見たときの、側面に相当する部分を外側面10sといい、両端の一方の面を端面10e、他方の面を天面10rということとする。ここで、基本形状というのは、厳密には異なる部分が生じ得るものの概ね当該形状ということができることを意味している。また、基本形状の外側面10sの外径を嵌合径10Dということとする。本実施の形態では、嵌合部材10が環状部材20に嵌め込まれるとき、端面10eの側から嵌められることとする。嵌合部材10は、外側面10sと端面10eとの境界に、全周にわたって面取りされた嵌合C面10cが形成されている。嵌合C面10cは、例えば0.3〜0.6程度とすることができ、0.5としてもよい。嵌合部材10は、天面10r側の外側面10sに、嵌合突起10pが設けられている。嵌合突起10pは、外側面10sの全周にわたって設けられている。嵌合突起10pは、端面10eの側から天面10rに向けて進むにつれて直交方向Hの断面における直径が大きくなるように、外側面10sに対して傾斜している。
【0021】
環状部材20は、金属材料が加工されて形成された部材であり、嵌合部材10と同種の材料から形成されていてもよく、嵌合部材10とは異種の金属材料から形成されていてもよく、用途に応じて好適な材料を用いればよい。環状部材20は、本実施の形態では、環状厚さ20tが所定の厚さに形成された円形厚板の中央に、基本形状が円柱状の孔があいた、ドーナツ状に形成されている。環状厚さ20tについての所定の厚さは、製品である接合済部材30として求められる厚さである。基本形状が円柱状の孔は、嵌合部材10が嵌められる内部空間20hであり、環状部材20の内部空間20hとの境界に形成される面を内面20fということとする。また、環状部材20の、嵌合部材10が入ってくる方の円形厚板の面を上面20rといい、上面20rの反対側の面を下面20eということとする。上面20rは、嵌合部材10が入れられる側の環状部材20の表面に相当する。また、基本形状が円柱状の内部空間20hの径を空間径20hDということとする。環状部材20は、上面20rと内面20fとの境界に、全周にわたって面取りされた環状C面20cが形成されている。環状C面20cは、例えば0.3〜0.6程度とすることができ、0.5としてもよい。環状部材20は、下面20e側の内面20fに、環状突起20pが設けられている。環状突起20pは、内面20fの全周にわたって設けられている。環状突起20pは、上面20rの側から下面20eに向けて進むにつれて直交方向Hの断面における直径が大きくなるように、内面20fに対して傾斜している。
【0022】
接合済部材30は、前述のように、嵌合部材10が環状部材20に嵌め込まれ接合されて形成された部材であり、本実施の形態では全体として円形厚板状に形成されている。接合済部材30は、嵌合部材10と環状部材20とがリングマッシュ(登録商標)の接合方法(以下、単に「リングマッシュ接合」という。)によって接合された部材である。リングマッシュ接合は、環状部材20の内部空間20hに、空間径20hDよりも一回り大きい嵌合径10Dを有する嵌合部材10を、加圧しながらパルス状溶接電流を流して嵌め込んで、嵌合部材10の外側面10sが環状部材20の内面20fに全周にわたって完全に又は概ね均一に固相接合される方法である。この固相接合は、接合する部材同士を密着させ、融点未満の温度に加熱することで、部材を溶融させずに接合を行うものである。嵌合部材10の嵌合径10Dが環状部材20の内部空間20hの空間径20hDよりも一回り大きい(逆から見れば、空間径20hDは嵌合径10Dよりも一回り小さい)とした一回りとは、リングマッシュ接合に適した大きさであり、例えば0.2mm〜1.4mmとするとよく(1.0mmであってもよい)、あるいは空間径20hDの1/500〜1/50としてもよい。
【0023】
図2は、嵌合部材10を環状部材20に嵌め込む際の嵌合部材10と環状部材20との接触部まわりの拡大部分断面図である。上述のように嵌合径10Dが空間径20hDよりも一回り大きく形成されていることで、嵌合部材10を環状部材20に嵌め込む際に、嵌合部材10及び環状部材20のそれぞれが部分的に重なり合い、オーバーラップ代Lが生じることとなる。嵌合径10Dが空間径20hDに対して、0.2mm〜1.4mm大きいときのオーバーラップ代Lは0.1mm〜0.7mmとなり、1.0mm大きいときのオーバーラップ代Lは0.5mmとなる。そのまま
図2を参照して、嵌合部材10の嵌合突起10pまわり及び環状部材20の環状突起20pまわりの構成の説明を補足する。嵌合突起10pは、
図2に示す拡大部分断面図において、嵌合突起10pが無いと仮定した場合の外側面10sと、嵌合突起10pの外面とのなす角αは、14°〜20°とするとよい。ここでは、説明の便宜上、外側面10sと嵌合突起10pとを分けて考えたが、典型的には嵌合突起10pは外側面10sと一体に形成されている。嵌合C面10cと嵌合突起10pとの間の厚さ方向Vに延びる外側面10sの部分(以下「嵌合ストレート部」ということもある。)の長さは、環状厚さ20tの1/3程度とすることができる。環状突起20pは、
図2に示す拡大部分断面図において、環状突起20pが無いと仮定した場合の内面20fと、環状突起20pの外面とのなす角βは、14°〜20°とするとよい。ここでは、説明の便宜上、内面20fと環状突起20pとを分けて考えたが、典型的には環状突起20pは内面20fと一体に形成されている。環状C面20cと環状突起20pとの間の厚さ方向Vに延びる内面20fの部分(以下「環状ストレート部」ということもある。)の長さは、環状厚さ20tの1/3程度とすることができる。
【0024】
次に
図3を参照して、接合済部材30の製造方法を説明する。
図3は、接合済部材30の製造の手順を示すフローチャートである。以下の接合済部材30の製法の説明において、嵌合部材10、環状部材20、接合済部材30の構成に言及しているときは、適宜
図1及び
図2を参照することとする。また、本実施の形態では、接合済部材30の製造に際し、従来用いられていた上電極Et(
図5(A)参照)及び下電極Es(
図5(A)参照)を用いることとし、これらに言及しているときは適宜
図5(A)を参照することとする。なお、上電極Et及び下電極Esは、図示は省略するが、電気回路に配置されており、この電気回路には必要に応じて交流電源、整流回路、直流電源回路、コンデンサ、インバータ回路、トランス等も配置されている。
【0025】
接合済部材30の製造を開始したら、まず、環状部材20を、下電極Esにセットする(S1)。このとき、環状部材20の下面20eが下電極Esに接するようにする。次に、嵌合部材10を、端面10eを環状部材20の側に向けて、環状部材20の内部空間20hの上方にセットする(S2)。このとき、嵌合部材10の嵌合径10Dが空間径20hDよりも一回り大きいので、嵌合部材10は内部空間20hの中に入り込まず、典型的には環状部材20の環状C面20cと嵌合部材10の嵌合C面10cとが接触した状態で環状部材20の上に嵌合部材10が載置された状態となる。
【0026】
環状部材20及び嵌合部材10をセットしたら、上電極Etを嵌合部材10の天面10rに載せ、上電極Et及び下電極Esを両者が接近するように相対的に動かして、環状部材20に対する嵌合部材10の加圧を開始する(S3)。このような加圧をしながら、上電極Et及び下電極Esが接続された電気回路の交流電源(不図示)のスイッチを適宜入れて、上電極Etと下電極Esとの間に嵌合部材10及び環状部材20を介して電流を流す(通電工程:S4)。嵌合部材10と環状部材20とをわずかにオーバーラップさせた状態で加圧しながらこれらに電流を流すことにより、両者の接触面(嵌合C面10c及び環状C面20c)に加圧力と電流とが集中し、ジュール熱によって両者の接触部付近が溶融はしないが軟化して、接合面に原子の拡散が生じて接合が達成される。このように、本実施の形態では、嵌合部材10と環状部材20との接触部分は、固相接合が行われる。なお、通電は、典型的には1又は複数のパルス状の電流を状況に応じて連続して又は間欠的に流すことで行われる。
【0027】
嵌合部材10及び環状部材20を加圧しながら適宜通電しているとき、嵌合部材10が環状部材20の内部空間20hに予定された深さまで嵌められたか否かを判断する(S5)。この判断は、機械(センサや制御装置等)が行ってもよく、作業員が行ってもよい。予定された深さは、製品である接合済部材30となったときに求められる深さである。本実施の形態のようなリングマッシュ接合によると、例えばリングプロジェクション接合と比べて、軸方向(厚さ方向V)に深い接合が可能で、同軸精度を得やすくなる利点がある。嵌合部材10が内部空間20hに予定された深さまで嵌められていない場合は、通電工程(S4)に戻る。なお、
図3では通電工程(S4)に戻ることとしているが、通電が不要な場合は再び嵌合部材10が内部空間20hに予定された深さまで嵌められたか否かを判断する工程(S5)に戻る(
図3中に破線で表示)こととしてもよい。
【0028】
嵌合部材10が環状部材20の内部空間20hに予定された深さで嵌まる過程において、嵌まる深さが深くなるにつれて、従来であれば、環状部材20の上面20rと嵌合部材10とが近接する付近に表面未接合部Gt(
図5(B)参照)が生じるおそれがあり、嵌合部材10の端面10eと環状部材20とが近接する付近に端部未接合部Gs(
図5(B)参照)が生じるおそれがあったが、本実施の形態では、嵌合部材10に嵌合突起10pが、環状部材20に環状突起20pが、それぞれ設けられているので、嵌合部材10が内部空間20hに予定された深さまで嵌まったときに、表面未接合部Gt(
図5(B)参照)となり得る部分は嵌合突起10pにより充填され、端部未接合部Gs(
図5(B)参照)となり得る部分は環状突起20pにより充填されることとなる。したがって、本実施の形態に係る製法で製造される接合済部材30は、未接合部G(
図5(B)参照)が生じないものとなる。このような技術的意義に鑑みて、嵌合突起10pは、従来(嵌合突起10pが無い場合に)生じ得る表面未接合部Gt(
図5(B)参照)を充填する大きさ及び形状に形成され、環状突起20pは、従来生じ得る端部未接合部Gs(
図5(B)参照)を充填する大きさ及び形状に形成される。
【0029】
従来の棒状部材110(
図5(A)参照)を環状部材120(
図5(A)参照)に嵌め込んだものでは、嵌め込む深さが深くなると、未接合部G(
図5(B)参照)が生じてしまうため、未接合部G(
図5(B)参照)を無くすために、環状部材120(
図5(A)参照)の厚さを必要厚さよりも厚くして接合をし、後の工程で未接合部G(
図5(B)参照)の深さの分だけ切削して厚さを調節していた。この点、本実施の形態では、嵌合部材10を環状部材20の内部空間20hに予定された深さで嵌めたときに未接合部G(
図5(B)参照)が生じないため、接合前の環状部材20の環状厚さ20tを製品としての接合済部材30の厚さとすることができ、バリBを除去するだけで済んで従来のような後の切削工程を不要にできるのみならず、切削分を上積みした過剰な材料を用いなくて済む。
【0030】
嵌合部材10が内部空間20hに予定された深さまで嵌められたか否かを判断する工程(S5)において、予定された深さまで嵌められた場合は、上電極Et及び下電極Esを両者が接近するように相対的に動かすことを止めて、環状部材20に対する嵌合部材10の加圧を終了する(S6)。なお、環状部材20に対する嵌合部材10の加圧を開始する工程(S3)から、環状部材20に対する嵌合部材10の加圧を終了する工程(S6)までが、加圧工程に相当する。嵌合部材10が内部空間20hに予定された深さまで嵌められたことにより、接合済部材30が生成される。嵌合部材10が環状部材20に嵌められる前は、嵌合部材10の側面は嵌合C面10c、嵌合ストレート部、嵌合突起10pと連なる折れ線状の輪郭を有し、環状部材20の内部空間20hとの境界の内面は環状C面20c、環状ストレート部、環状突起20pと連なる折れ線状の輪郭を有していたが、接合済部材30になると、固相接合によって折れ線状だった輪郭が概ね直線状になる。環状部材20に対する嵌合部材10の加圧を終了したら(S6)、上電極Etを退避させて接合済部材30を取り出すのであるが、オーバーラップ代Lの分の余剰の材料が接合済部材30の両表面にバリBとして現れるので、このバリBを除去する(S7)。バリBを除去すると(S7)、接合済部材30が完成する。
【0031】
以上で説明したように、本実施の形態によれば、嵌合突起10pが設けられた嵌合部材10を、環状突起20pが設けられた環状部材20に嵌め込んで接合済部材30が製造されるので、未接合部G(
図5(B)参照)が生じない接合済部材30を得ることができる。また、接合済部材30を得る過程において従来のような切削工程を必要としないので、従来よりも製造効率を向上させることができる。
【0032】
次に
図4を参照して、本発明の実施の形態の変形例に係る環状部材20Aを説明する。
図4は、全体として環状部材20Aまわりの拡大部分断面を示しており、
図4(A)は嵌合部材10及び環状部材20Aが嵌合する前の状態の拡大部分断面図、
図4(B)は嵌合部材10が環状部材20Aに嵌められた状態の拡大部分断面図である。環状部材20Aは、環状部材20(
図1及び
図2参照)と比較して、内面20fの下面20eに近い部分に、内部空間20hの内側に向けて張り出した端部受け20sが形成されている。したがって、環状部材20Aは、環状部材20(
図1等参照)に比べて、下面20eが内部空間20hの内側に延長している。端部受け20sは、厚さ方向Vに移動して内部空間20hに入ってきた嵌合部材10を、その端面10eが環状部材20Aの下面20eと同一面まで到達させずに、上面20r側の内部空間20h内に留めるように作用する。端部受け20sは、上面20rの側に、嵌合部材10の端面10eが接触する端部受け面20sfが形成されている。環状部材20Aでは、環状突起20pが、下面20eからではなく、端部受け面20sfと同一面上に広がる仮想受け面20vfから上面20rに向けて幅を狭めながら延びるように形成されている。また、環状部材20Aは、環状突起20pと端部受け面20sfとの間の端部受け20sに、下面20e方向に窪んだポケット20vが形成されている。ポケット20vは、仮想受け面20vfから下面20eの側に凹んだ袋状の小空間である。ポケット20vは、本実施の形態では、
図4(B)に示すように、嵌合部材10の端面10eが環状部材20Aの端部受け面20sfに突き当たると、嵌合部材10の端面10eと端部受け20sとに囲まれた閉鎖空間となるように形成されている。環状部材20Aの上記以外の構成は、環状部材20(
図1等参照)と同様である。
【0033】
上述のように構成された環状部材20Aは、接合済部材30(
図1参照)を製造するときと同様に、嵌合部材10と環状部材20Aとを上電極Et及び下電極Esで挟み込んで加圧しながら適宜通電して、内部空間20hに嵌合部材10が嵌め込まれていくと、両者の接触部分が軟化しながら嵌合部材10の端面10eが環状部材20Aの端部受け20sに近づいていく。そして、端面10eが端部受け面20sfに到達すると、嵌合部材10が下面20eの側にそれ以上移動できなくなるため、厚さ方向Vにおける端面10eの位置が端部受け面20sfの位置に決まる。このように、環状部材20Aを用いた場合は、端部受け面20sfがストッパーの役割を果たし、内部空間20hへの嵌合部材10の圧入深さの精度を出すことができる。さらに、端部受け面20sfがあることで、嵌合部材10が環状部材20Aに嵌め込まれて構成された接合済部材30Aとなってから、嵌合部材10に厚さ方向Vの力が加わったときに、外側面10sと内面20fとの接合部分に掛かる負荷が軽減される利点がある。また、環状部材20Aを用いて接合済部材30Aを製造すると、リングマッシュ接合によって端面10eの側に生じるバリBがポケット20vに収容されることとなり、このバリBを除去する手間を省くことができる。
【0034】
以上の説明では、嵌合部材10の基本形状が中実丸棒状に形成されているとしたが、中空であってもよく、直交方向Hの断面における形状が円形以外の例えば四角形や五角形や六角形等の多角形あるいは楕円形等であってもよい。
【0035】
以上の説明では、環状部材20が、円形厚板の中央に基本形状が円柱状の孔(内部空間20h)があいたドーナツ状に形成されているとしたが、直交方向Hの断面における外縁の輪郭形状が円形以外の例えば四角形や五角形や六角形等の多角形あるいは楕円形等であってもよく、及び/又は、直交方向Hの断面における内部空間20hの輪郭の基本形状が円形以外の例えば四角形や五角形や六角形等の多角形あるいは楕円形等であってもよい。つまり、環状部材20は、環状(リング状)に形成されていれば、外縁の輪郭及び/又は内部空間20hの輪郭は円形以外の形状であってもよい。
【0036】
以上の説明では、接合済部材30を製造する際に、下電極Esの上に環状部材20をセットし、その上に嵌合部材10をセットして、嵌合部材10の上に上電極Etを載置することとしたが、環状部材20と嵌合部材10とを入れ替えて、下電極Esの上に嵌合部材10をセットし、その上に環状部材20をセットして、嵌合部材10の上に上電極Etを載置することとしてもよい。嵌合部材10を下電極Esの上にセットする場合、
図3のフローにおける、嵌合部材10をセットする工程(S2)を、環状部材20をセットする工程(S1)の前に行うこととなる。つまり、
図3のフローにおける嵌合部材10をセットする工程(S2)と環状部材20をセットする工程(S1)との順序は、適宜入れ替えることができる。あるいは、環状部材20の上に嵌合部材10を載置した状態又はこの上下を逆に配置した状態で、環状部材20と嵌合部材10とを同時に下電極Esにセットすることとしてもよい。
【0037】
以上の説明では、本発明の実施の形態に係る、嵌合部材、環状部材、接合済部材、及び接合済部材の製造方法を、一例として各図を用いて説明したが、各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。