(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された吸収ヒートポンプは、縦長の気液分離器の気相部が主要構成最上部よりも高所になるように配置されるため、吸収ヒートポンプ全体の高さが高くなりすぎると共に、縦長の気液分離器は水平断面積が比較的小さくなるため、比較的大きく現れる液位変化に対応するべく上限液位のさらに上方に気液分離に必要な容積を確保することとなって、高さがさらに高くなってしまい、設置条件が制約されてしまうこととなる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、高さを抑制した吸収ヒートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1及び
図2に示すように、吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収した際に発生した吸収熱で伝熱管12内の液体Wqを加熱して気体と液体とが混合した混合流体Wmを生成する吸収器10と;混合流体Wmから気体Wvと液体Wqとを分離する気液分離器60とを備え;気液分離器60(
図2参照)は、水平方向に長い缶胴61であって、混合流体Wmが流入する流入口61aと、混合流体Wmから分離された気体である分離後気体Wvが流出する流出口61bとが、混合流体Wmから分離された液体である分離後液体Wqが到達し得る最高液位WLHよりも高所に形成された缶胴61と、流入口61aから缶胴61内に流入した混合流体Wmを衝突させる衝突壁63であって、分離後液体Wqが到達し得る最高液位WLHよりも高所に設けられた衝突壁63と、衝突壁63に衝突後の流体Wmが流出口61bに到達するまでの道程を大きくする迂回路を形成する迂回路形成部材65とを有し、迂回路形成部材65は、衝突壁63に衝突後の流体Wmが迂回路形成部材65の水平方向の端部65eを巻いて流れ方向を変えるように配置され、迂回路形成部材65の水平方向の端部65eにおいて、迂回路形成部材65と缶胴61との間に、衝突壁63に衝突後の流体Wmが通過する通過流路68が形成されている。
【0007】
このように構成すると、気液分離器の缶胴が水平方向に長く形成されているので、気液分離器の缶胴の高さを抑制しつつ混合流体の気液分離性能を確保することができ、高さを抑制した吸収ヒートポンプとすることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1及び
図2に示すように、上記本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプ1において、缶胴61の水平方向の長さが伝熱管12の水平方向の長さ以下に構成され;缶胴61が伝熱管12の最上部の上方に配置されている。
【0009】
このように構成すると、収まりのよい吸収ヒートポンプとなる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、衝突壁63に衝突後の流体Wmを下方に案内する案内部材66を備える。
【0011】
このように構成すると、衝突壁に衝突後の流体の流れ方向を複数回変えることができ、気液分離性能を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、流入口61a及び流出口61bが缶胴61の水平方向における中央部に形成され;通過流路68が、迂回路形成部材65の水平方向の両端部65eに形成されている。
【0013】
このように構成すると、缶胴の水平方向の長さを短くすることが可能となる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図3及び
図4に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、流入口61a、161a及び流出口61b、161bが缶胴61、161の水平方向における一端部に寄せて形成され;通過流路68、168が、迂回路形成部材65、165の水平方向の、流入口61a、161aとは反対側の端部65e、165eに形成されている。
【0015】
このように構成すると、分離空間を比較的長く取ることができ、気液分離性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、気液分離器の缶胴が水平方向に長く形成されているので、気液分離器の缶胴の高さを抑制しつつ混合流体の気液分離性能を確保することができ、高さを抑制した吸収ヒートポンプとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1を説明する。
図1は、吸収ヒートポンプ1の模式的系統図である。吸収ヒートポンプ1は、吸収液S(Sa、Sw)と冷媒V(Ve、Vg、Vf)との吸収ヒートポンプサイクルが行われる主要機器を構成する吸収器10、蒸発器20、再生器30、及び凝縮器40を備え、さらに、気液分離器60を備えている。
【0020】
本明細書においては、吸収液に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「希溶液Sw」や「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。同様に、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H
2O)が用いられている。また、被加熱媒体Wは、吸収器10に供給される液体の被加熱媒体Wである被加熱媒体液Wq、気体の被加熱媒体Wである被加熱媒体蒸気Wv、液体と気体とが混合した状態の被加熱媒体Wである混合被加熱媒体Wm、吸収ヒートポンプ1外から補充された被加熱媒体Wである補給液体としての補給水Wsの総称である。本実施の形態では、被加熱媒体Wとして水(H
2O)が用いられている。
【0021】
吸収器10は、被加熱媒体Wの流路を構成する伝熱管12と、濃溶液Saを散布する濃溶液散布ノズル13とを内部に有している。吸収器10は、濃溶液散布ノズル13から濃溶液Saが散布され、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが受熱して、被加熱媒体Wが加熱されるように構成されている。
【0022】
蒸発器20は、熱源流体としての熱源温水hの流路を構成する熱源管22を、蒸発器缶胴21の内部に有している。蒸発器20は、蒸発器缶胴21の内部に冷媒液Vfを散布するノズルを有していない。このため、熱源管22は、蒸発器缶胴21内に貯留された冷媒液Vfに浸かるように配設されている(満液式蒸発器)。吸収ヒートポンプでは、吸収冷凍機よりも蒸発器内の圧力が高いので、熱源管が冷媒液に浸かる構成でも所望の冷媒蒸気を得ることが可能となる。蒸発器20は、熱源管22周辺の冷媒液Vfが熱源管22内を流れる熱源温水hの熱で蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veが発生するように構成されている。蒸発器缶胴21の下部には、蒸発器缶胴21内に冷媒液Vfを供給する冷媒液管45が接続されている。
【0023】
吸収器10と蒸発器20とは、相互に連通している。吸収器10と蒸発器20とが連通することにより、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器10に供給することができるように構成されている。
【0024】
再生器30は、希溶液Swを加熱する熱源流体としての熱源温水hを内部に流す熱源管32と、希溶液Swを散布する希溶液散布ノズル33とを有している。熱源管32内を流れる熱源温水hは、本実施の形態では熱源管22内を流れる熱源温水hと同じ流体となっているが、異なる流体であってもよい。再生器30は、希溶液散布ノズル33から散布された希溶液Swが熱源温水hに加熱されることにより、希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した濃溶液Saが生成されるように構成されている。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40に移動するように構成されている。
【0025】
凝縮器40は、冷却媒体としての冷却水cが流れる冷却水管42を凝縮器缶胴41の内部に有している。凝縮器40は、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これを冷却水cで冷却して凝縮させるように構成されている。再生器30と凝縮器40とは、相互に連通するように、再生器30の缶胴と凝縮器缶胴41とが一体に形成されている。再生器30と凝縮器40とが連通することにより、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器40に供給することができるように構成されている。
【0026】
再生器30の濃溶液Saが貯留される部分と吸収器10の濃溶液散布ノズル13とは、濃溶液Saを流す濃溶液管35で接続されている。濃溶液管35には、濃溶液Saを圧送する溶液ポンプ35pが配設されている。吸収器10の希溶液Swが貯留される部分と希溶液散布ノズル33とは、希溶液Swを流す希溶液管36で接続されている。濃溶液管35及び希溶液管36には、濃溶液Saと希溶液Swとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器38が配設されている。凝縮器40の冷媒液Vfが貯留される部分と蒸発器缶胴21の下部(典型的には底部)とは、冷媒液Vfを流す冷媒液管45で接続されている。冷媒液管45には、冷媒液Vfを圧送する冷媒ポンプ46が配設されている。
【0027】
蒸発器20の熱源管22の一端には、熱源温水hを熱源管22に導入する熱源温水導入管51が接続されている。熱源管22の他端と再生器30の熱源管32の一端とは、熱源温水連絡管52で接続されている。熱源管32の他端には、熱源温水hを吸収ヒートポンプ1の外に導く熱源温水流出管53が接続されている。熱源温水流出管53には、内部を流れる熱源温水hの流量を調節可能な熱源温水切替弁53vが配設されている。熱源温水切替弁53vよりも下流側の熱源温水流出管53と熱源温水導入管51との間には、熱源温水バイパス管55が設けられている。熱源温水バイパス管55には、流路を開閉可能なバイパス弁55vが配設されている。
【0028】
気液分離器60は、吸収器10の伝熱管12を流れて加熱された混合流体としての混合被加熱媒体Wmを導入し、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとを分離する機器である。気液分離器60には、分離された被加熱媒体液Wqを気液分離器60から流出する分離液管81が下部(典型的には底部)に接続されている。分離液管81の他端には、被加熱媒体液Wqを伝熱管12に導く被加熱媒体液管82が接続されている。伝熱管12の他端と気液分離器60の気相部とは、混合被加熱媒体Wmを気液分離器60に導く加熱後被加熱媒体管84で接続されている。また、気液分離器60には、分離された被加熱媒体蒸気Wvを需要先に向けて吸収ヒートポンプ1の外に導く供給蒸気管としての被加熱媒体蒸気管89が上部(典型的には頂部)に接続されている。また、主に蒸気として吸収ヒートポンプ1の外に供給された分の被加熱媒体Wを補うための補給水Wsを吸収ヒートポンプ1の外から導入する補給水管85が設けられている。補給水管85は、本実施の形態では、分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部に接続されており、分離液管81を流れてきた被加熱媒体液Wqに補給水Wsを合流させるように構成されている。補給水管85には、吸収器10に向けて補給水Wsを圧送する補給水ポンプ86が配設されている。
【0029】
ここで
図2を参照して、気液分離器60の構造を説明する。
図2(A)は気液分離器60の正面縦断面図、
図2(B)は
図2(A)におけるIIB−IIB矢視断面図であって気液分離器60の側面縦断面図を示している。気液分離器60は、缶胴61と、缶胴61の内部に設けられた対向板63、仕切板65、区画板66とを備えている。缶胴61は、水平方向に長い円筒状に形成されている。したがって、円筒状の両端面に対応する缶胴61の鏡板61eは、円形に形成されている。水平方向に長い円筒状とは、円筒の軸線61xが水平の状態である。また、水平方向に長いとは、横長のことであり、横長とは、最大水平断面積が、水平の軸線61xに直交する断面である垂直断面における最大面積よりも大きいことを意味している。缶胴61は、本実施の形態では、水平方向の長さが、吸収器10内の伝熱管12の水平方向の長さ以下に形成されている。また、本実施の形態では、吸収器10は、伝熱管12が吸収器10の内部に水平に配置され、伝熱管12の内部を流れる被加熱媒体Wが全体として下方から上方へ流れるように構成されている。そして、気液分離器60の缶胴61は、水平の軸線61xが伝熱管12と平行になるように配置されている。
【0030】
缶胴61には、混合被加熱媒体Wmが流入する流入口61aと、分離後気体に相当する被加熱媒体蒸気Wvが流出する流出口としての蒸気流出口61bと、分離後液体に相当する被加熱媒体液Wqが流出する液出口61cとが形成されている。流入口61a、蒸気流出口61b、液出口61cは、典型的には缶胴61の水平方向に延びる面(鏡板61e以外の面)に形成されており、本実施の形態では、缶胴61の水平方向における中央部に形成されている。また、流入口61a及び蒸気流出口61bは、缶胴61内において被加熱媒体液Wqが到達し得る最高液位WLHよりも上方に形成されており、本実施の形態では、流入口61aが軸線61xの高さよりもやや高い缶胴61の側面に形成されており(流入口61aの下端が概ね軸線61xの高さ)、蒸気流出口61bが缶胴61の頂部に形成されている。液出口61cは、缶胴61の下部に貯留された被加熱媒体液Wqを円滑に流出させる観点から、最高液位WLHより下方に形成されていることが好ましく、液出口61cの最上部が最高液位WLHより下方に形成されていることがより好ましく、本実施の形態では缶胴61の底部に形成されている。流入口61aには加熱後被加熱媒体管84が水平に接続されており、蒸気流出口61bには被加熱媒体蒸気管89が鉛直に接続されており、液出口61cには分離液管81が鉛直に接続されている。
【0031】
対向板63は、流入口61aから流入した混合被加熱媒体Wmを衝突させる矩形平板状の部材であり、衝突壁に相当する。対向板63は、本実施の形態では、流入口61aに対して水平方向に離れて対向する位置に、法線が水平になるように(面が鉛直に延びるように)缶胴61の内部に配設されている。対向板63は、本実施の形態では、その上辺が、蒸気流出口61bよりも下方で缶胴61の内壁に接触しているが、内壁に接触しなくてもよい。対向板63は、最高液位WLHよりも高所に設けられている。対向板63が最高液位WLHよりも高所に設けられるとは、対向板63の最下部が最高液位WLHよりも上方になるように設けられていることを意味する。このように対向板63が設けられていることにより、対向板63の下方に流体の流路が確保されることとなる。対向板63の幅(水平方向の長さ)は、流入口61aの幅(水平方向の長さ)の概ね1.5〜3倍、典型的には2倍に形成されている。
【0032】
仕切板65は、流入口61aから流入した混合被加熱媒体Wmが直ちに蒸気流出口61bから流出しないように缶胴61内で迂回させる平板状の部材であり、迂回路形成部材に相当する。仕切板65は、缶胴61内の、流入口61aに通ずる空間と、蒸気流出口61bに通ずる空間とを仕切る位置に配設されている。仕切板65は、軸線61xに直交する断面(
図2(B)参照)においては、対向板63の上端(上辺)に一端が接続され、面が水平に延びて、他端が流入口61aの上方の缶胴61の内壁に接触している。また、仕切板65は、軸線61xに平行な縦断面(
図2(A)参照)においては、面が水平に延びて、両端が缶胴61の鏡板61eには到達しない鏡板61eの近傍に位置している。これにより、両側の仕切板末端65eと鏡板61eとの間には、流体が通過可能な通過流路68が形成されている。通過流路68の幅(隙間)は、通過する流体の流量を勘案して、抵抗が増大しすぎないように決定するとよい。
【0033】
区画板66は、流入口61aから流入して対向板63に衝突した混合被加熱媒体Wmを下方に案内する平板状の部材であり、案内部材に相当する。区画板66は、仕切板65の下方において、流入口61aに通ずる空間と、その水平方向隣の空間とを区画する位置に配設されている。区画板66は、軸線61xに平行な縦断面(
図2(A)参照)において、対向板63の左右の辺(鉛直に延びる辺)にそれぞれ1つずつ、合計2つが、法線が軸線61xと平行になるように設けられている。各区画板66は、軸線61xに直交する断面(
図2(B)参照)においては、直線状の上辺が仕切板65に接触しており、下辺は最高液位WLHよりも上方で直線状に延びており、対向板63に接する辺とは反対側の辺は流入口61aの隣で缶胴61の内壁に接している。各区画板66は、本実施の形態では、その下辺が、対向板63の下辺と同じ高さとなっているが、対向板63の下辺と異なる高さであってもよい。
【0034】
図1に示すように、上述のように構成された気液分離器60は、缶胴61が、伝熱管12の最上部の上方であり、濃溶液散布ノズル13の上方に配置されている。気液分離器60の缶胴61は、水平方向の長さが、吸収器10内の伝熱管12の水平方向の長さ以下に形成されているので、吸収器10の缶胴の幅に収まることとなる。
【0035】
引き続き
図1を参照して、吸収ヒートポンプ1の作用を説明する。吸収ヒートポンプ1の定常運転時は、熱源温水切替弁53vが開、バイパス弁55vが閉となっている。まず、冷媒側のサイクルを説明する。凝縮器40では、再生器30で蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを受け入れて、冷却水管42を流れる冷却水cで冷却して凝縮し、冷媒液Vfとする。凝縮した冷媒液Vfは、冷媒ポンプ46で蒸発器缶胴21に送られる。蒸発器缶胴21に送られた冷媒液Vfは、熱源管22内を流れる熱源温水hによって加熱され、蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなる。蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veは、蒸発器20と連通する吸収器10へと移動する。
【0036】
次に溶液側のサイクルを説明する。吸収器10では、濃溶液Saが濃溶液散布ノズル13から散布され、この散布された濃溶液Saが蒸発器20から移動してきた蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器10では、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが加熱される。吸収器10で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなり、吸収器10の下部に貯留される。貯留された希溶液Swは、吸収器10と再生器30との内圧の差により再生器30に向かって希溶液管36を流れ、溶液熱交換器38で濃溶液Saと熱交換して温度が低下して、再生器30に至る。
【0037】
再生器30に送られた希溶液Swは、希溶液散布ノズル33から散布され、熱源管32を流れる熱源温水h(本実施の形態では約80℃前後)によって加熱され、散布された希溶液Sw中の冷媒が蒸発して濃溶液Saとなり、再生器30の下部に貯留される。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40へと移動する。再生器30の下部に貯留された濃溶液Saは、溶液ポンプ35pにより、濃溶液管35を介して吸収器10の濃溶液散布ノズル13に圧送される。濃溶液管35を流れる濃溶液Saは、溶液熱交換器38で希溶液Swと熱交換して温度が上昇してから吸収器10に流入し、濃溶液散布ノズル13から散布される。濃溶液Saは、溶液ポンプ35pで昇圧されて吸収器10に入り、吸収器10内で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収することに伴い温度が上昇する。吸収器10に戻った濃溶液Saは蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し、以降、同様のサイクルを繰り返す。
【0038】
吸収液S及び冷媒Vが上記のような吸収ヒートポンプサイクルを行う過程で、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱で被加熱媒体液Wqが加熱されて湿り蒸気(混合被加熱媒体Wm)となり、加熱後被加熱媒体管84を介して気液分離器60に導かれる。気液分離器60に流入した混合被加熱媒体Wmは、以下の要領で被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとに分離される。
【0039】
ここで
図2を参照して、気液分離器60内の作用を説明する。加熱後被加熱媒体管84を流れてきて流入口61aから缶胴61内に水平に流入した混合被加熱媒体Wmは、対向板63に衝突する。対向板63に衝突した混合被加熱媒体Wmは、上方には仕切板65が存在し、両側には区画板66が存在するため、下方向に流れの向きを変える。このとき、混合被加熱媒体Wmは、対向板63への衝突と、衝突前後に流れ方向を水平方向から下方向へと変えたこととにより、第1段階の気体(被加熱媒体蒸気Wv)と液体(被加熱媒体液Wq)との分離が行われる。典型的には、混合被加熱媒体Wm中に含まれていた一部の被加熱媒体液Wqが分離されて滴下し、缶胴61の下部に溜まる。
【0040】
対向板63及び区画板66に囲まれた空間内を下向きに流れる混合被加熱媒体Wmは、区画板66の下端を反転して、流れの向きを下方向から水平方向に変える。この、下方向から水平方向に流れの向きを変えたことにより、第2段階の気体と液体との分離(混合被加熱媒体Wm中に含まれていた一部の被加熱媒体液Wqの分離滴下)が行われる。本実施の形態では、流入口61aが缶胴61の水平方向における中央部に形成されているので、区画板66の下端を反転して下方向から水平方向に向きを変える流れは、左右2つの流れに分かれる。左右2つに分かれた混合被加熱媒体Wmは、それぞれ、缶胴61の両端の鏡板61eに向けて概ね水平に流れる。仕切板65の下方を概ね水平に流れる混合被加熱媒体Wmの流路は、缶胴61の軸線61xに直交な断面に近い断面積を持つこととなる。そして、対向板63の位置から両側に形成された2つの水平の流路のうちの一方の流路を流れる混合被加熱媒体Wmの流量は、流入口61aから流入した混合被加熱媒体Wmの流量の約半分となるので、この流路を流れる流体の流速は低くなり、気液分離の効果を高めることができる。この、混合被加熱媒体Wmが仕切板65の下方を概ね水平に流れることにより、第3段階の気体と液体との分離(混合被加熱媒体Wm中に含まれていた一部の被加熱媒体液Wqの分離滴下)が行われる。
【0041】
缶胴61の鏡板61eに向けて仕切板65の下方を概ね水平に流れる混合被加熱媒体Wmは、鏡板61eの近傍に到達すると鏡板61eの面に沿って上方に向かうように流れの向きを変える。この、概ね水平方向から上方向に流れの向きを変えたことにより、第4段階の気体(被加熱媒体蒸気Wv)と液体(被加熱媒体液Wq)との分離が行われる。鏡板61eの面に沿って上方向に流れる分離された被加熱媒体蒸気Wvは、通過流路68を通過し、仕切板65の上方に形成された缶胴61の上壁と仕切板65との間の流路を流れ、蒸気流出口61bを介して缶胴61の外に流出する。このように、流入口61aから流入した流体は、蒸気流出口61bから流出するまでに仕切板65を巻くように流れることとなり、仕切板65の周囲に形成される流路が迂回路に相当する。他方、分離された被加熱媒体液Wqは、落下して缶胴61の下部に溜まる。流入口61aから流入した混合被加熱媒体Wmから、蒸気流出口61bから流出する被加熱媒体蒸気Wvが生成される過程で分離されて、缶胴61の下部に溜まっている被加熱媒体液Wqは、液出口61cを介して缶胴61の外に流出する。
【0042】
上述のように、本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1が備える気液分離器60では、少なくとも4段階の気液分離機構を有しているので、混合被加熱媒体Wmから分離されて蒸気流出口61bから流出する被加熱媒体蒸気Wvに液滴が随伴することを抑制することができ、良質な蒸気を供給することができる。特に、混合被加熱媒体Wmが仕切板65の下方を概ね水平に流れる第3段階の気液分離では、缶胴61の水平方向に延びる軸線61x方向の長さの全長を利用しているので、缶胴61の全長を延ばすことにより、缶胴61の高さを抑制しつつ(高くすることなく)気液分離効果を高めることができる。
【0043】
また、外部から吸収ヒートポンプ1に供給される熱源量の変化等により、気液分離器60に対して流入する混合被加熱媒体Wmの流量と流出する被加熱媒体液Wqの流量とに不均衡があると、気液分離器60内に貯留されている被加熱媒体液Wqの量が変化することに伴って被加熱媒体液Wqの液位が変化する。水平方向に長い本実施の形態における気液分離器60の水平断面積は、従来の縦型の気液分離器の水平断面積より数倍大きい。すると、気液分離器60内に貯留されている被加熱媒体液Wqの量の変化に対する液位の変化については、水平方向に長い本実施の形態における気液分離器60は、従来の縦型の気液分離器よりも、水平断面積の比の逆数である数分の一以下と小さくなる。液位の変化が小さい本実施の形態の気液分離器60は、液位が安定するので、良好な気液分離を行うことができる。
【0044】
再び
図1に戻って、吸収ヒートポンプ1の作用の説明を続ける。気液分離器60で分離された被加熱媒体蒸気Wvは、被加熱媒体蒸気管89に流出し、吸収ヒートポンプ1の外部の蒸気利用場所(需要先)に供給される。つまり、吸収ヒートポンプから被加熱媒体蒸気Wvが取り出される。このように、吸収ヒートポンプ1は、駆動熱源の温度以上の被加熱媒体Wを取り出すことができる第2種の吸収ヒートポンプとして構成されている。外部に供給された分の被加熱媒体Wは、補給水Wsとして吸収ヒートポンプ1の外部から供給される。他方、気液分離器60で分離された被加熱媒体液Wqは、分離液管81に流出し、補給水管85を流れてきた補給水Wsと合流して、被加熱媒体液Wqとして被加熱媒体液管82を流れ、伝熱管12内に供給される。なお、上述した吸収ヒートポンプ1を構成する各機器は、制御装置(不図示)で制御される。
【0045】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1によれば、気液分離器60の缶胴61の高さを抑制しつつ、気液分離器60における混合被加熱媒体Wmの気液分離性能を確保することができ、吸収ヒートポンプ1の高さを抑制することができる。また、気液分離器60の缶胴61の水平方向の長さが伝熱管12の水平方向の長さ以下に構成され、缶胴61が伝熱管12の最上部の上方に配置されているので、収まりのよい吸収ヒートポンプ1とすることができる。また、気液分離器60の缶胴61を吸収器10の伝熱管12の最上部の上方に配置することで、気液分離器60と吸収器10の伝熱管12との間で被加熱媒体Wを循環させるためのポンプを設けなくても気泡ポンプ効果により被加熱媒体Wを循環させることができる。
【0046】
以上の説明では、流入口61a及び蒸気流出口61bが缶胴61の水平方向における中央部に形成されているとしたが、中央部は、厳密に中央でなくてよく、典型的には対向板63に衝突後の流体の流速が仕切板65の両端である仕切板末端65eにおいて許容範囲内で等しくなる程度の範囲で中央に形成されていればよい。あるいは、流入口61aの水平方向における位置を、缶胴61の中央部よりも一方の鏡板61eの側(典型的には中央部と鏡板61eとの概ね中間)に移動させて形成することとしてもよい。この場合、区画板66の下端を反転して2つに流れが分かれた流体の各流量が均一とはならないが、区画板66から通過流路68までの流路が長い方の側に形成された通過流路68の幅を他方の通過流路68の幅よりも広くすると、区画板66から通過流路68までの流路が長い方に多くの流量が流れ、長い流路で十分に気液分離することができる。他方、短い流路に流れる流量は少なくなるので、流路が短くても十分な気液分離を行うことができる。また、蒸気流出口61bの水平方向における位置は、缶胴61の中央部でなくてもよく、仕切板65が配置されている範囲内のいずれの位置に形成されていてもよい。しかしながら、蒸気流出口61bは、両側の通過流路68から等距離に形成することが好ましい。
【0047】
また、
図3に示すように、流入口61a及び蒸気流出口61bを一方の鏡板61enの近傍に寄せて配置してもよい。
図3は、第1の変形例に係る気液分離器60Aの正面縦断面図である。気液分離器60Aの、気液分離器60(
図2参照)と異なる点は、上述の流入口61a及び蒸気流出口61bの水平方向における位置のほか、以下の事項が挙げられる。気液分離器60Aは、仕切板65が、流入口61a及び蒸気流出口61bを寄せた側の鏡板61enに接触するまで延長されている。この構成により、仕切板65が接触した側の鏡板61enの隣には通過流路68が形成されず、反対側の鏡板61efと仕切板末端65eとの間に通過流路68が形成されている。この場合、気液分離器60(
図2参照)では2つ設けられていた区画板66のうち、鏡板61en側には区画板66を設けずに、鏡板61enから遠い側の区画板66と鏡板61enと対向板63(
図2(B)参照)とに囲まれた空間が形成されることとしてもよい。このように構成された気液分離器60Aでは、流入口61aから缶胴61内に水平に流入した混合被加熱媒体Wmは、対向板63に衝突した後、区画板66及び鏡板61enに囲まれた空間内で下向きに流れの向きを変える。区画板66の下端を反転して下方向から水平方向に向きを変えた流れは、缶胴61の長手方向の長さと概ね同等の比較的長い水平流路に入る。この水平流路を全量の被加熱媒体Wが一方向に流れるので、その際の流速は気液分離器60(
図2(A)参照)の場合の略2倍になるが、流路長が気液分離器60の略2倍に形成されているので、気液分離の効果を高めることができる。
【0048】
以上の説明では、液出口61cが缶胴61の水平方向における中央部に形成されているとしたが、液出口61cは中央部にこだわらず、軸線61xが延びる方向のいずれに形成されていてもよい。液出口61cは、水平方向のいずれの位置に形成されていても、高さ方向の位置は缶胴61の底部に形成されていることが好ましい。
【0049】
以上の説明では、衝突壁として対向板63を設けることとしたが、対向板63を設けずに、流入口61aから流入した混合被加熱媒体Wmを缶胴61の内壁に衝突させることとしてもよい。この場合、流入口61aから流入した混合被加熱媒体Wmが衝突する缶胴61の内壁の部分が衝突壁に相当する。しかしながら、混合被加熱媒体Wmが衝突する缶胴61の内壁の部分が湾曲していると混合被加熱媒体Wmが衝突する際のエネルギーが緩和されるため、混合被加熱媒体Wmが衝突壁に衝突する際のエネルギーを大きくしてより多く気液分離させる観点から、対向板63を設けることが好ましい。
【0050】
次に
図4を参照して、第2の変形例に係る吸収ヒートポンプが備える気液分離器60Bを説明する。
図4(A)は気液分離器60Bの正面縦断面図、
図4(B)は
図4(A)におけるIVB−IVB矢視断面図であって気液分離器60Bの側面縦断面図を示している。気液分離器60Bを備える吸収ヒートポンプの、気液分離器60B以外の主要構成機器等の構成は、吸収ヒートポンプ1(
図1参照)と同様である。換言すれば、気液分離器60Bを備える吸収ヒートポンプは、吸収ヒートポンプ1(
図1参照)と比較して、気液分離器60(
図1参照)を気液分離器60Bに置換したものである。
【0051】
気液分離器60Bは、缶胴161と、缶胴161の内部に設けられた仕切板165とを備えている。缶胴161の形状及び大きさは、缶胴61(
図2参照)と同様である。したがって、本変形例における缶胴161の鏡板161eは円形に形成されている。また、缶胴161は、水平方向に長く配設されている点も、缶胴61(
図2参照)と同様である。缶胴161には、流入口161aと、蒸気流出口161bと、液出口161cとが形成されている。流入口161a、蒸気流出口161b、液出口161cは、それぞれ、缶胴61(
図2参照)に形成された流入口61a、蒸気流出口61b、液出口61cに対応する。缶胴161に対して流入口161a、蒸気流出口161b、液出口161cが形成される位置は、本変形例では、缶胴61(
図2参照)に形成された流入口61a、蒸気流出口61b、液出口61cと比較して、高さ方向に関しては同様であるが、水平方向に関しては以下のように異なっている。流入口161a、蒸気流出口161b、液出口161cは、本変形例では、缶胴161の水平方向における一端部に寄せて形成されている。
【0052】
仕切板165は、流入口161aから流入した混合被加熱媒体Wmが直ちに蒸気流出口161bから流出しないように缶胴161内で迂回させる部材であり、迂回路形成部材に相当する。仕切板165は、缶胴161内の、流入口161aに通ずる空間と、蒸気流出口161bに通ずる空間とを仕切る位置に配設されている。仕切板165は、平板状の部材が直角に折り曲げられて、軸線161xに直交する断面(
図4(B)参照)で見てL字状の外観を呈している。仕切板165に関し、説明の便宜上、軸線161xに直交する断面(
図4(B)参照)において、鉛直に延びる部分を縦仕切板165aといい、水平に延びる部分を横仕切板165bということとする。縦仕切板165aは、その上端が、流入口161aと蒸気流出口161bとの間の蒸気流出口161bの近傍の缶胴161の内壁に接触している。縦仕切板165aの下端は横仕切板165bの一端に接続されている。
【0053】
縦仕切板165aは、軸線161xに平行な縦断面(
図4(A)参照)に示すように、流入口161aが形成されている側の鏡板161eに一方の側辺が接触し、他方の側辺165eは反対側の鏡板161eに向かって延びているが当該鏡板161eには接触していない。これにより、流入口161aが形成されている側とは反対側の鏡板161eと他方の側辺165eとの間に、流体が通過可能な通過流路168が形成されている。通過流路168の幅(隙間)は、通過する流体の流量を勘案して、抵抗が増大しすぎないように決定するとよい。縦仕切板165aは、軸線161xに平行な縦断面(
図4(A)参照)において、流入口161aを覆う大きさに形成されており、本変形例では、軸線161x方向の長さが、缶胴161の長さの概ね0.6〜0.8倍に形成されている。横仕切板165bは、軸線161x方向の長さが縦仕切板165aの長さと同じに形成されている。横仕切板165bは、軸線161xに直交する断面(
図4(B)参照)において、一端が縦仕切板165aの下端に接続されており、他端は流入口161aよりも下方で缶胴161の内壁に接触している。縦仕切板165a及び横仕切板165bからなる仕切板165は、最高液位WLHよりも高所に設けられている。このような構成により、缶胴161内の下部に貯留された被加熱媒体液Wqに仕切板165が浸ることを回避することができ、仕切板165への腐食の発生を抑制することができる。
【0054】
上述のように構成された気液分離器60Bでは、加熱後被加熱媒体管84を流れてきて流入口161aから缶胴161内に水平に流入した混合被加熱媒体Wmは、仕切板165の縦仕切板165aに衝突する。このように、縦仕切板165aは、衝突壁に相当する。縦仕切板165aを含む仕切板165は、本変形例では、衝突壁と迂回路形成部材とを兼ねることとなる。縦仕切板165aに衝突した混合被加熱媒体Wmは、下方には横仕切板165bが存在し、片側には鏡板161eが存在するため、遠い方の鏡板161eに向かう水平方向に流れの向きを略直角に変える。このとき、混合被加熱媒体Wmは、縦仕切板165aへの衝突と、衝突前後に流れ方向を略直角に変えたこととにより、第1段階の気体(被加熱媒体蒸気Wv)と液体(被加熱媒体液Wq)との分離が行われる。
【0055】
縦仕切板165aに衝突した後に水平方向に(軸線161xが延びる方向に)流れる混合被加熱媒体Wmは、流入口161aから遠い側の鏡板161eに衝突する。鏡板161eに衝突した混合被加熱媒体Wmは、当該鏡板161eと、縦仕切板165aの側辺165eとの間の通過流路168を経由して、蒸気流出口161b側の鏡板161eの方向に流れの向きを変える。この、混合被加熱媒体Wmの、縦仕切板165aの側辺165eを巻く流れの反転作用により、第2段階の気体と液体との分離(混合被加熱媒体Wm中に含まれていた一部の被加熱媒体液Wqの分離滴下)が行われる。通過流路168を経由して反転した混合被加熱媒体Wmは、缶胴161の長手方向に、蒸気流出口161bが形成されている側に向けて、概ね水平に流れる。蒸気流出口161bの側に向けて概ね水平に流れる混合被加熱媒体Wmの流路は、缶胴161の軸線161xに直交な断面積の半分以上の断面積を持つこととなるので(
図4(B)参照)、この流路を流れる流体の流速は低くなり、かつ、この流路の長さは缶胴161の長手方向の長さと略同等で比較的長いことから、気液分離の効果を高めることができる。この、混合被加熱媒体Wmが蒸気流出口161bに向けて概ね水平に流れることにより、第3段階の気体と液体との分離(混合被加熱媒体Wm中に含まれていた一部の被加熱媒体液Wqの分離滴下)が行われる。
【0056】
そして、混合被加熱媒体Wmは、蒸気流出口161bの近傍の鏡板161eの付近まで来ると、略水平方向から上方に向かうように流れの向きを変える。この、概ね水平方向から上方向に流れの向きを変えたことにより、第4段階の気体(被加熱媒体蒸気Wv)と液体(被加熱媒体液Wq)との分離が行われる。上方向に流れる分離された被加熱媒体蒸気Wvは、蒸気流出口161bを介して缶胴161の外に流出する。このように、流入口161aから流入した流体は、蒸気流出口161bから流出するまでに仕切板165を巻くように流れることとなり、仕切板165の周囲に形成される流路が迂回路に相当する。他方、分離された被加熱媒体液Wqは、落下して缶胴161の下部に溜まる。流入口161aから流入した混合被加熱媒体Wmから、蒸気流出口161bから流出する被加熱媒体蒸気Wvが生成される過程で分離されて、缶胴161の下部に溜まっている被加熱媒体液Wqは、液出口161cを介して缶胴161の外に流出する。
【0057】
上述のように、気液分離器60Bでは、少なくとも4段階の気液分離機構を有しているので、混合被加熱媒体Wmから分離されて蒸気流出口161bから流出する被加熱媒体蒸気Wvに液滴が随伴することを抑制することができ、良質な蒸気を供給することができる。特に、混合被加熱媒体Wmが蒸気流出口161bの側に向けて概ね水平に流れる第3段階の気液分離では、水平方向に長い缶胴161の軸線161x方向の長さの全長を利用しているので、缶胴161の全長を延ばすことにより、缶胴161の高さを抑制しつつ(高くすることなく)気液分離効果を高めることができる。また、本変形例における気液分離器60Bは、液位の変化が小さく液位が安定するので良好な気液分離を行うことができる点は、気液分離器60(
図2参照)と同様である。また、気液分離器60Bの缶胴161を、気液分離器60(
図2参照)と同様に、吸収器10(
図1参照)の伝熱管12の最上部の上方に配置することで、気液分離器60Bと吸収器10の伝熱管12との間で被加熱媒体Wを循環させるためのポンプを設けなくても気泡ポンプ効果により被加熱媒体Wを循環させることができる。
【0058】
以上の変形例に係る気液分離器60Bの説明では、流入口161a及び蒸気流出口161bの水平方向における位置が、缶胴161の水平方向における一端部に寄せて形成されていることとしたが、
図2(A)に示す気液分離器60に倣って缶胴161の中央部に形成すると共に、仕切板165と鏡板161eとの間の通過流路168が水平方向両側に形成されることとしてもよい。この場合、流入口161aから缶胴161内に水平に流入した混合被加熱媒体Wmは、縦仕切板165aに衝突後、左右2つに分かれて水平に流れ、両側の通過流路168をそれぞれ反転した後、缶胴161の長手方向に沿って、蒸気流出口161bが形成されている中央部に向けて概ね水平方向に流れて蒸気流出口161bに向かい、気液分離を行うことができる。
【0059】
以上の変形例に係る気液分離器60Bの説明では、液出口161cの水平方向における位置が、流入口161a及び蒸気流出口161bと共に缶胴161の水平方向における一端部に寄せて形成されていることとしたが、この位置に限らず、軸線161xが延びる方向のいずれに形成されていてもよい。液出口161cは、水平方向のいずれの位置に形成されていても、高さ方向の位置は缶胴161の底部に形成されていることが好ましい。
【0060】
以上の説明では、缶胴61、161が水平方向に長い円筒状に形成されているとしたが、軸線61x、161xに直交する断面の形状(鏡板61e、161eの形状)が、楕円型、面取りされた多角形(四角形含む)等、円形以外の形状であってもよい。
【0061】
以上の説明では、蒸気流出口61b、161bが缶胴61、161の頂部に形成されているとしたが、最高液位WLHよりも上方であれば頂部以外に形成されていてもよい。しかしながら、被加熱媒体蒸気Wvを缶胴61、161から液滴を含めずに円滑に流出する観点から、蒸気流出口61b、161bは、缶胴61、161の上部に形成されていることが好ましく、頂部に形成されていることがより好ましい。また、
図2(B)及び
図4(B)において、加熱後被加熱媒体管84を、水平ではなく、缶胴61、161の斜め上方から缶胴61、161に向けて斜めに下るように配置して、混合被加熱媒体Wmが缶胴61、161の斜め上方から缶胴61、161内に斜めに流入するように構成されていてもよい。この構成に伴い、対向板63及び/又は縦仕切板165aを、この斜めの流れに対して直角になるように傾けて配置してもよく、鉛直のままとしてもよい。
【0062】
以上の説明では、蒸発器20が満液式であるとしたが、散布式であってもよい。蒸発器を散布式とする場合は、蒸発器缶胴の上部に冷媒液Vfを散布する冷媒液散布ノズルを設け、満液式の場合に蒸発器缶胴21の下部に接続することとしていた冷媒液管45の端部を、冷媒液散布ノズルに接続すればよい。また、蒸発器缶胴の下部の冷媒液Vfを冷媒液散布ノズルに供給する配管及びポンプを設けてもよい。
【0063】
以上の説明では、吸収ヒートポンプ1が単段であるとして説明したが、多段でもよい。
図5に、二段昇温型の吸収ヒートポンプ1Aの構成を例示する。吸収ヒートポンプ1Aは、
図1に示されている吸収ヒートポンプ1における吸収器10及び蒸発器20が、高温側の高温吸収器10H及び高温蒸発器20Hと、低温側の低温吸収器10L及び低温蒸発器20Lとに分かれている。高温吸収器10Hは低温吸収器10Lよりも内圧が高く、高温蒸発器20Hは低温蒸発器20Lよりも内圧が高い。高温吸収器10Hと高温蒸発器20Hとは、高温蒸発器20Hの冷媒Vの蒸気を高温吸収器10Hに移動させることができるように上部で連通している。低温吸収器10Lと低温蒸発器20Lとは、低温蒸発器20Lの冷媒Vの蒸気を低温吸収器10Lに移動させることができるように上部で連通している。被加熱媒体液Wqは、高温吸収器10Hで加熱される。熱源温水hは、低温蒸発器20Lに導入される。低温吸収器10Lは低温蒸発器20Lから移動してきた冷媒Vの蒸気を吸収液Sが吸収する際の吸収熱で高温蒸発器20H内の冷媒液Vfを加熱して高温蒸発器20H内に冷媒Vの蒸気を発生させ、発生した高温蒸発器20H内の冷媒Vの蒸気は高温吸収器10Hに移動して高温吸収器10H内の吸収液Sに吸収される際の吸収熱で被加熱媒体液Wqを加熱するように構成されている。吸収ヒートポンプ1Aでは、図示は省略するが、低温吸収器10L内の伝熱管を流れて加熱された冷媒Vを気体(冷媒蒸気)と液体(冷媒液)とに分離する気液分離器を設けることができ、その気液分離器として上述の気液分離器60又は気液分離器60Aあるいは気液分離器60Bを適用することができる。