特許第6643766号(P6643766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643766
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】自動車用ボンネットの構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   B62D25/10 F
   B62D25/10 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-143865(P2017-143865)
(22)【出願日】2017年7月25日
(65)【公開番号】特開2019-25942(P2019-25942A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2018年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】508209853
【氏名又は名称】アルナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097700
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 恒則
(72)【発明者】
【氏名】矢口 良一
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−099477(JP,U)
【文献】 特開2016−185771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10 − 25/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面板と裏面板とを周縁部を接合して内部に内部空間を形成し、発熱体の直上部の裏面板を上方に突出させてフランジ部を形成し、該フランジ部に前記内部空間に連通する吸気口を設け、前記フランジ部に対して左右方向に位置をずらせた表面板の位置に排気口を形成し、前記フランジ部に天井を設けるとともに該天井の中央部に前後方向に延び下方に突出する分流壁を設けたことを特徴とする自動車用ボンネットの構造。
【請求項2】
天井の少なくとも一部を表面板の裏面に接合した請求項1に記載の自動車用ボンネットの構造。
【請求項3】
排気口にルーバーを設けた請求項1又は2に記載の自動車用ボンネットの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン等の発熱体からの熱を逃がす排気口を有する自動車用ボンネットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルーム内の熱気を排出することにより乗用車のオーバーヒートを防止できるようにした乗用車のボンネット構造が知られている(特許文献1)。このものは、ボンネットにエンジンルーム内の熱気を排出する開口部を設け、開口部の上方に空間を有して覆う天井部の設けられたカバー体が形成されてなる。
しかし、このボンネット構造では、カバー体がボンネットの上部に突出して設けてあるので、走行時には空気抵抗が大きくなるものである。
【0003】
ところで、レーシングカーなどにおけるボンネットの構造は、従来、図12図14に示すようになっている。エンジン20などの発熱体からの熱を排出する排気口21がボンネット22の左右に設けられて、熱気を排出する。なお、図12図14においては排気口21にルーバー23を一体に形成したものを示してある。
雨天の際には、図13に示すように、雨水24が排気口21からエンジンルーム内に侵入し、エンジン20を濡らすなど、エンジントラブルの原因となる。
そこで、雨水が直接エンジンにかからないようにするため、図14に示すように、遮水板25を排気口21の下方に取り付ける。遮水板25を取り付けると雨水がエンジン20に直接かからなくなる。しかし、排気口21を塞ぐことになるため、エンジンルーム内に熱気を閉じ込めて排出できなくなり、オーバーヒートの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3030868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、走行時の空気抵抗が小さく、雨天時の雨水の侵入を防ぎつつ、エンジン等の発熱体からの熱気を排出できるようにした自動車用ボンネットの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る自動車用ボンネットの構造は、表面板と裏面板とを周縁部を接合して内部に内部空間を形成し、発熱体の直上部の裏面板を上方に突出させてフランジ部を形成し、該フランジ部に前記内部空間に連通する吸気口を設け、前記フランジ部に対して左右方向に位置をずらせた表面板の位置に排気口を形成し、前記フランジ部に天井を設けるとともに該天井の中央部に前後方向に延び下方に突出する分流壁を設けたこと、を特徴としている。
請求項に係る自動車用ボンネットの構造は、天井の少なくとも一部を表面板の裏面に接合したものである。
請求項に係る自動車用ボンネットの構造は、排気口にルーバーを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、表面板と裏面板とを周縁部を接合して内部に内部空間を形成し、発熱体の直上部の裏面板を上方に突出させてフランジ部を形成し、該フランジ部に前記内部空間に連通する吸気口を設け、前記フランジ部に対して左右方向に位置をずらせた表面板の位置に排気口を形成したので、排気口から内部空間に雨水が侵入しても、雨水がエンジンなどの発熱体に直接かかることがなく、雨水によるエンジントラブルが起こらない。かつ、エンジンルーム内の熱気を排出することができる。また、熱気の排出手段をボンネット内部に収めたので、走行時の空気抵抗を小さくできる。
また、フランジ部に天井を設けたので、天井から雨水が侵入することはない。また、フランジ部の強度が高まる。さらに、天井の中央部に前後方向に延び下方に突出する分流壁を設けたので、熱の流れは分流壁により左右に分かれ左右の排気口に分流され、効率よく排熱されることになる。
請求項に係る発明によれば、天井の少なくとも一部を表面板の裏面に接合したので、ボンネットの強度が高まる。
請求項に係る発明によれば、排気口にルーバーを設けたので、熱の流れがスムーズとなり、排気口から効率よく排熱されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動車の概略平面図である。
図2】本発明の実施例によるボンネット部の平面図である。
図3】第1実施例による図2のA−A断面図である。
図4】第1実施例によるボンネット部の断面線を示す平面図である。
図5】第1実施例による図4のB1−B1断面図及びB2−B2断面図である。
図6】第1実施例によるボンネット部の断面斜視図である。
図7】ルーバーの一例を示す断面斜視図及び断面図である。
図8】ルーバーの他の例を示す断面斜視図及び断面図である。
図9】ルーバーを取付けた状態を示す図4のB2−B2相当の拡大断面図である。
図10】第2実施例〜第5実施例による図3相当の断面図である。
図11】第3実施例によるボンネット部の断面斜視図である。
図12】従来例によるボンネットの平面図である。
図13図12のB−B断面図である。
図14】遮水板を取付けた状態の図13相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。本発明による自動車用ボンネット1の構造は、表面板2と裏面板3とを周縁部4を接合して内部(表面板2と裏面板3との間)に内部空間5を形成し、エンジンなどの発熱体6の直上部の裏面板3を上方に突出させてフランジ部7を形成し、該フランジ部7に内部空間5に連通する吸気口8を設けてある。そして、フランジ部7に対して左右方向に位置をずらせた表面板2の位置に排気口9を形成してある。
なお、表面板2、裏面板3の材質としては、繊維強化プラスチック(FRP)が、金属製に比べ軽量なため好ましい。
【0010】
フランジ部7の構造は種々の形態がありうる。第1実施例は、フランジ部7に天井10を設けたもので、該天井10の全体を表面板2に接合してある。フランジ部7の側面(側壁)に吸気口8を設けてエンジンルームと内部空間5とを連通させる。この第1実施例では、天井10の全体を表面板2に接合してあるので、ボンネット1の強度が高い。
【0011】
第2実施例は、天井の中央部に前後方向に延び下方に突出する分流壁11を設けたもの
で、天井の頂部10aを表面板2に接合してある(図10(a))。この第2実施例では、分流壁11により熱流が左右に分流されるため、効率よく排熱することができる。また、天井の頂部10aを表面板2に接合してあるので、第1実施例と同様、ボンネット1の強度が高い。
【0012】
第3実施例は、フランジ部7に天井を設けず、フランジ部7の上端周縁部の全体を内部空間5に連通する吸気口8としたものである(図10(b))。この第3実施例では、吸気口8が広く、内部空間5に熱が容易に流れる。
【0013】
第4実施例は、第1実施例と同様、フランジ部7に天井10を設けたものであるが、天井10の上面を表面板2の裏面に接合せず、天井10の上面と表面板2の裏面との間に隙間12をもたせたものである(図10(c))。
【0014】
第5実施例は、第2実施例と同様、天井10の中央部に前後方向に延び下方に突出する分流壁11を設けたものであるが、天井の頂部10aを表面板2に接合せず、天井10の上面と表面板2の裏面との間に隙間12をもたせたものである(図10(d))。この第5実施例では、分流壁11により熱流が左右に分流されるため、第2実施例と同様、効率よく排熱することができる。
【0015】
排気口9は、上記したフランジ部7に対して左右方向にまた後方に位置をずらせた表面板2の位置に設けてある。
排気口9は、表面板2に単に孔を設けただけでもよいが、該排気口9にルーバー13を取り付けるようにするとよい。
ルーバー13は、傾斜した複数枚の薄い案内板14を隙間15をもたせて平行に組み付けたもので、図7に示すように、平板状の案内板14aを内側に設けてもよく、図8に示すように、断面円弧状の案内板14bを外側に設けてもよい。走行時の空気抵抗を小さくするには案内板14を内側に設けたルーバー13a(図7)が突起物がなく好ましい。
図9においては、ルーバー13(13a,13b)を別体として排気口9に設置したものを示したが、排気口9にルーバー13を一体的に形成するようにしてもよい。自動車の走行により、ルーバー13の案内板の隙間15に負圧が発生し、該隙間15から外方に向けて効率よく排気され、排熱されることになる。
【0016】
排気口9は、フランジ部7に対して左右方向にまた後方に位置をずらせて設けてあり、排気口9から雨水が侵入しても雨水が直接フランジ部7(吸気口8)にかかることがない。このため、雨水が直接エンジンなどの発熱体6に触れることはなく、雨水によりエンジントラブルが発生するおそれはない。
排気口9から侵入した雨水は、裏面板3の内部を流下し、前部に設けた排水孔16から排水されることになる。このとき、裏面板3の発熱体直上部は上方に突出したフランジ部7となっているので、該フランジ部7が防波堤となって、雨水が発熱体6に直接流下することはない。なお、排水孔16は、裏面板の前部に限らず必要に応じて適宜箇所に設けることができる。
【0017】
発熱体6からの熱流は、フランジ部7の吸気口8から内部空間5に流入し、排気口9から外部に排出されることになる。より詳しくは、エンジンなどの発熱体6からの熱流は、発熱体直上のフランジ部7に流入し、該フランジ部7に形成した吸気口8から内部空間5に流入する。内部空間5に流入した熱流は、フランジ部7から左右方向にまた後方にずれた位置に設けた排気口9に向けて流れ、該排気口9から外部に排出されることになる。
このとき、排気口9にルーバー13(13a,13b)を取付けておけば、さらに効率よく排気口9から熱が外部に排出されることになる。案内板14aを内側に設けたルーバー13aとすれば、外方への突出部がないので、走行時の空気抵抗を小さく抑えることができる。
なお、別体のルーバー13(13a,13b)を排気口9に取り付けるには、ビス止め、接着剤による接着など適宜の取付け手段によればよい。また、取付けは着脱可能に取り付けても、着脱不能に取り付けてもよく、任意である。
【0018】
本発明のボンネット1の構造によれば、熱気の排出手段をボンネット1の内部に収容し、ボンネット1の外側の突出を最小限に抑えたので、走行時の空気抵抗を極力抑えることができる。また、ボンネット1の材質をFRP製とするなど軽量化も可能である。このため、レーシングカー用のボンネットの構造として好適である。
【符号の説明】
【0019】
1 ボンネット
2 表面板
3 裏面板
4 周縁部
5 内部空間
6 発熱体
7 フランジ部
8 吸気口
9 排気口
10 天井
10a 天井の頂部
11 分流壁
12 隙間
13,13a,13b ルーバー
14,14a,14b 案内板
15 隙間
16 排水孔


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14