特許第6643774号(P6643774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643774
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】膜厚調整ユニット及び鋼板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   C23F 15/00 20060101AFI20200130BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20200130BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20200130BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C23F15/00
   B05D7/14 J
   B05C11/10
   B05C11/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-69987(P2015-69987)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-191077(P2016-191077A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100130074
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 繁元
(72)【発明者】
【氏名】山田 純也
(72)【発明者】
【氏名】服部 茂寿
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特公平07−062265(JP,B2)
【文献】 特開2000−334363(JP,A)
【文献】 特開昭60−106981(JP,A)
【文献】 特開2014−151226(JP,A)
【文献】 特開2013−071112(JP,A)
【文献】 特開2006−334964(JP,A)
【文献】 特開2002−186898(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0075555(US,A1)
【文献】 特表2005−504908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00−11/18
C23F 14/00−17/00
B05C 7/00−21/00
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板又は非鉄金属板に付着した油を除去する為のロール部を有するロールを備えた洗浄ユニットと、前記ロール部に吸収された油を、配管を介して吸引する真空ポンプを備えた真空吸引ユニットとの間に介在し、且つ、前記洗浄ユニットと前記真空吸引ユニットを連通するよう接続される複数の配管と、該配管を開閉する開閉手段とを備え、前記鋼板又は前記非鉄金属板に付着した油の前記ロール部への吸収量を調整することで、前記鋼板又は前記非鉄金属板の表面に所定膜厚の油膜を形成するものであって、前記複数の配管の中の一つの配管の断面積は、他の配管の断面積よりも大きいことを特徴とする膜厚調整ユニット。
【請求項2】
鋼板又は非鉄金属板に付着した油を除去する為のロール部と中空部を有する台座とを有するロールを備えた洗浄ユニットと、前記ロール部に吸収された油を、前記台座の前記中空部を通過させて配管を介して吸引する真空ポンプを備えた真空吸引ユニットとの間に介在し、且つ、前記洗浄ユニットと前記真空吸引ユニットを連通するよう接続される複数の配管と、該配管を開閉する開閉手段とを備え、前記開閉手段によって、前記複数の配管の開閉を調整して前記鋼板又は前記非鉄金属板に付着した油の前記ロール部への吸収量を調整することで、前記鋼板又は前記非鉄金属板の表面に所定膜厚の油膜を形成するものであって、前記複数の配管の中の一つの配管の断面積は、他の配管の断面積よりも大きいことを特徴とする膜厚調整ユニット。
【請求項3】
洗浄ユニットと複数の配管との間を連結する配管は、真空ポンプからの負圧を遮断するように油が溜まる油溜部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の膜厚調整ユニット。
【請求項4】
洗浄ユニットと、真空吸引ユニットと、請求項1〜のいずれか1項に記載の膜厚調整ユニットとを有することを特徴とする鋼板洗浄装置。
【請求項5】
洗浄ユニットは、ロール部に対して油を供給する油供給装置を有することを特徴とする請求項に記載の鋼板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板等に付着した油の所定量を除去して、鋼板等を洗浄する為の膜厚調整ユニット及び鋼板洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼帯に防錆油を供給した後、油吸引ロールにより、鋼帯に付着している防錆油を絞ると共に、油膜厚を調整する鋼帯の防錆油塗布量の調整方法が知られている(特許文献1)。この特許文献1に記載されている油膜厚を調整する機構は、孔明き中空鉄芯に不織布シートを積層または巻き付けた構造のロールが吸引管に連結され、この吸引管は油分回収器に連結している。さらに、油分回収器が圧力調整弁を介して真空ポンプに連結される構造となっている。そして、ロールの下流側に設置された油膜厚計からの検出信号を圧力調整弁に送り、吸引圧力をコントロールして油膜厚を調整している。
【0003】
また、ロールの不織布積層体の表面を、湿潤状態又は乾燥状態とすることで、乾燥度を調整し、鋼板に付着している残油量の調整を行う膜厚調整ロールが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−62265号公報
【特許文献2】特開2014−23998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された油膜厚を調整する機構は、均一な厚みに加工され、連続的に排出される鋼帯に関するものであることから、油膜厚計を基準位置に設置することは比較的容易であると考えられる。しかしながら、所定長で切断された鋼板の膜厚を計測する油膜厚計を基準位置に設置することは困難であることから、特許文献1に記載された油膜厚を調整する機構を鋼板に適用することは困難であった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された膜厚調整ロールでは、ロールの不織布積層体の表面を湿潤状態とする為には、不織布積層体の内部を油により飽和状態とする必要があることから、使用する油の量が多く、長時間を必要とし、鋼板の生産性の向上を図ることはできなかった。
【0007】
ところで、鋼板上の膜厚を調整する理由は、鋼板洗浄工程後のプレス工程の際に、プレス時の凹凸が小さい浅絞りでは膜厚は薄く、凹凸が大きい深絞りでは膜厚は厚くする必要がある為で、浅絞りのプレス時に膜厚が厚すぎると油痕(プレス時に油の痕が付着する現象)が発生しやすく、深絞りのプレス時に膜厚が薄すぎると鋼板に割れが発生する。
【0008】
膜厚を薄くするには、吸引ロールと連通する真空ポンプの負圧を強くかければ、ロールの表面が乾燥状態となり、極めて容易に鋼板の膜厚を薄くすることができる。一方、膜厚を厚くするには負圧を弱めてロールの表面を湿潤状態とし、鋼板上の油をロール表面で吸収しすぎないようにする必要がある。さらに、通板した鋼板ごとにムラが無く、安定して膜厚を厚くするには、ロール表面の湿潤状態を一定に保つ必要がある。
【0009】
また、鋼板洗浄工程では、油が付着した鋼板が断続的にロール間を通板するため、鋼板に付着した油がロール部に吸収されていく。すると、ロールの表面は次第に湿潤な状態となり、通板後の鋼板の膜厚も次第に厚くなっていく。そのため、安定して鋼板の膜厚が厚い状態を保つには、鋼板から吸収した油をロール表面から除去しつつも、ロール部表面を適度な湿潤状態に維持しなければならない。しかし、ロール部表面の湿潤状態を一定に保つには、状況に応じた負圧の細かな調整が必要であり、厚い膜厚を一定に保つのは困難であった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ロールの表面の湿潤状態の調整が容易であり、鋼板等に対する油の残油量を調整して最適な膜厚を確保すると共に、生産性の向上を図ることができる膜厚調整ユニット及び鋼板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の発明は、鋼板又は非鉄金属板に付着した油を除去する為のロール部を有するロールを備えた洗浄ユニットと、前記ロール部に吸収された油を、配管を介して吸引する真空ポンプを備えた真空吸引ユニットとの間に介在し、且つ、前記洗浄ユニットと前記真空吸引ユニットを連通するよう接続される複数の配管と、該配管を開閉する開閉手段とを備え、前記鋼板又は前記非鉄金属板に付着した油の前記ロール部への吸収量を調整することで、前記鋼板又は前記非鉄金属板の表面に所定膜厚の油膜を形成するものであって、前記複数の配管の中の一つの配管の断面積は、他の配管の断面積よりも大きいことを特徴としている。したがって、複数の配管の開閉手段の開閉を調節することによって、真空吸引ユニットが吸引する吸込空気量及びロール部から排出する油の量を調節できることから、鋼板又は非鉄金属板から吸収される油の吸収量を調節することができ、鋼板等の表面に最適な厚みの油膜を形成すると共に、生産性の向上を図ることができる膜厚調整ユニットを提供することができる。また、既存の鋼板洗浄装置の配管の一部を切断して本発明に係る膜厚調整ユニットを組み込むことで、本発明の効果を奏することが可能であり、既存の設備を有効活用して、コストの低減を図ることができる。
【0012】
請求項2の発明は、鋼板又は非鉄金属板に付着した油を除去する為のロール部と中空部を有する台座とを有するロールを備えた洗浄ユニットと、前記ロール部に吸収された油を、前記台座の前記中空部を通過させて配管を介して吸引する真空ポンプを備えた真空吸引ユニットとの間に介在し、且つ、前記洗浄ユニットと前記真空吸引ユニットを連通するよう接続される複数の配管と、該配管を開閉する開閉手段とを備え、前記開閉手段によって、前記複数の配管の開閉を調整して前記鋼板又は前記非鉄金属板に付着した油の前記ロール部への吸収量を調整することで、前記鋼板又は前記非鉄金属板の表面に所定膜厚の油膜を形成するものであって、前記複数の配管の中の一つの配管の断面積は、他の配管の断面積よりも大きいことを特徴としている。したがって、断面積が異なる複数の配管を設置することによって、容易に真空吸引ユニットが吸引する吸込空気量及びロール部から排出する油の量を調節することができる。
【0013】
請求項の発明は、請求項1又は2の発明において、洗浄ユニットと複数の配管との間を連結する配管は、真空ポンプからの負圧を遮断するように油が溜まる油溜部を有することを特徴としている。したがって、油溜部に油が一時的に溜まっている間は、真空ユニット側は負圧が高まり、洗浄ユニット側は大気圧に戻る。そのため、真空ユニット側と洗浄ユニット側の間に圧力差が生じることとなる。これにより、断続的にロール部を吸引することでロールの湿潤状態を一定に保つことができる。
【0015】
請求項の発明は、鋼板洗浄装置の発明であって、洗浄ユニットと、真空吸引ユニットと、請求項1〜のいずれか1項に記載の膜厚調整ユニットとを有することを特徴としている。したがって、鋼板又は非鉄金属板から吸収される油の吸収量を調節することができ、鋼板等の表面に最適な厚みの油膜を形成すると共に、生産性の向上を図ることができる鋼板洗浄装置を提供することができる。
【0016】
請求項の発明は、請求項の発明において、洗浄ユニットは、ロール部に対して油を供給する油供給装置を有することを特徴としている。したがって、油供給装置によってロール部に油を直接供給することができるので、従来のように、ロール部が湿潤状態となるまでに通板した数十枚の鋼板を膜厚不良として廃棄することが無くなり、製造コストを低減させることができる。また、少量の油でロール部表面を短時間で湿潤状態にできるため、鋼板の生産性の向上を図ることができる。ここで、通板速度は通常、100m〜150m/min程度であって、1分間に通板させる鋼板の枚数は、おおよそ8枚〜20枚を想定している。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び2の発明は、鋼板等の表面に最適な厚みの油膜を形成すると共に、生産性の向上を図ることができる膜厚調整ユニットを提供することができる。また、請求項1及びの発明は、断面積が異なる複数の配管を設置することによって、容易に真空吸引ユニットが吸引する吸込空気量及びロール部から排出する油の量を調節することができる。また、請求項の発明は、断続的にロール部を吸引することでロール部の湿潤状態を一定に保つことができる。また、請求項の発明は、鋼板等の表面に最適な厚みの油膜を形成すると共に、生産性の向上を図ることができる鋼板洗浄装置を提供することができる。さらに、請求項の発明は、油供給装置によってロール部に油を直接供給することができ、製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る鋼板洗浄装置を構成する洗浄ユニットのロールを示す断面図。
図2】本発明に係る鋼板洗浄装置の構成を示す概念図。
図3】油溜部近傍を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明に係る鋼板洗浄装置を構成する洗浄ユニットのロールを示す断面図である。図1に示すように、ロール21aは、台座23、止め金具25、プレート26、及び不織布からなる複数のロール片24a、24bを積層して形成したロール部22aより構成されている。台座23は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなり、外周にロール部22aが形成されていると共に、開口部30を有する本体部27、及び本体部27の一方の端部に連接され中空部31を有する回転支持部28、及び本体部27の他方の端部に連接される中実状の回転支持部28から形成されている。ロール部22aは、複数のロール片24a、24bが台座23を構成する本体部27の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されており、両側から止め金具25、及びプレート26にて挟み付けられて形成されている。止め金具25は、ネジ止めのロックナットが使用されている。なお、本実施例では、一方の回転支持部28が中空状、他方の回転支持部28が中実状としたが、両方の回転支持部28が共に中空状であっても構わない。尚、符号24d又は24cは、ロール片24a、24aの間、又はロール片24b、24bの間に設置されている不織布からなる補強板である。
【0021】
台座23を構成する本体部27の外周には、複数の円形の孔部33が千鳥状に開設されている。孔部33は、本体部27の有する開口部30に連通している。また、一方の回転支持部28は、中空部31が設けられていると共に、一端には、ロータリージョイント(図示せず)が接続される接続部32が形成されている。接続部32には、ネジ部36が設けられている。回転支持部28の他端は本体部27の端部に、溶接による接合部35を介して連接されている。他方の回転支持部28は中実状で、一端が本体部27の端部に、溶接による接合部35を介して連接されている。尚、本実施例では一方の回転支持部28の接続部でロータリージョイントを接続する構成としたが、両方の回転支持部28を共に中空状とし、両方の回転支持部28にロータリージョイント(図示せず)を接続しても構わない。
【0022】
また、本体部27と、一方の回転支持部28の接合部35の近傍には、傾斜面を有して徐変部29が形成されている。従って、本体部27と一方の回転支持部28の近傍は、開口部30の開口面積が、本体部27の略中央部の開口面積より小さくなる徐変部29が形成されていることから、ロール21aを後述する膜厚調整ユニット及び真空ポンプユニットと接続すると、ロール部22aに吸収された油は、吸引力により、流体導入溝部34及び孔部33を介して開口部30に流れ込み、接合部35の近傍で滞留することなく中空部31を通過してロール21aの外部に排出される。
【0023】
ロール部22aの両端部に固定されるプレート26、及び止め金具25は鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなると共に、概円環状に形成されており、止め金具25の内周に形成されたネジ切り部B38は、回転支持部28の外周に形成されたネジ切り部A37に嵌合され、固定される。
【0024】
尚、上記実施形態においては、ロール片24bと補強板24cの内周に切欠きを設けて流体導入溝部34を形成しているが、切欠きを設けていないロール片24aと補強板24dのみを使用して流体導入溝部34を設けない構成とすることもでき、この形態も本発明に含まれる。また、ロール部22aを積層して形成する際に、補強板24c、24dを使用せず、ロール片24a、24bのみで形成することもでき、この形態も本発明に含まれる。
【0025】
図2は、本発明に係る鋼板洗浄装置の構成を示す概念図であり、図3は、油溜部近傍を拡大した断面図である。図2及び図3に基づいて、本発明に係る鋼板洗浄装置の構成の概要を説明する。本発明に係る鋼板洗浄装置10は、鋼板又は非鉄金属板に付着した油を除去する為のロール部22aを有する上ロール21aと、ロール部22bを有する下ロール21bを備えた洗浄ユニット1と、ロール部22a、22bに吸収された油を、配管を介して吸引する真空ポンプ17を備えた真空吸引ユニット3と、洗浄ユニット1と真空吸引ユニット3との間に介在し、且つ、洗浄ユニットと真空吸引ユニットを連通するよう接続される複数の配管4、5a、5b、5cと、配管4を開閉する開閉バルブ6とを備え、鋼板又は非鉄金属板に付着した油の吸収量を調整する膜厚調整ユニット2とを有している。
【0026】
本願発明に係る鋼板洗浄装置10は、上述の概要で構成されており、まず、洗浄ユニット1について詳述する。洗浄ユニット1は、ロール部22aを有する上ロール21aと、ロール部22bを有する下ロール21bとを備えている。また、上ロール21aと下ロール21bの通板上流にはブラシロール(図示せず)を備えている。また、上ロール21aの上方には、上ロール21aに対して油を供給する油供給装置9を有している。油供給装置9は、通板した鋼板の膜厚を厚くしたい時、即ちロール部22a、22bの表面を湿潤状態にしたい時に使用する。例えば、鋼板洗浄工程で浅絞りの鋼板から深絞りの鋼板に切り替える際に使用し、上ロール21aと下ロール21bを回転させながら油をロール部22aにスプレーして表面を湿潤状態にする。そして、十分にロール部22a、22bの表面が湿潤状態になったら油供給装置を止め、鋼板の通板を開始する。このようにすることで、通板1枚目から最適な膜厚とすることができ、従来のように通板開始直後の鋼板を膜厚不良として廃棄することなく、ロール部を湿潤状態にすることができる。
【0027】
上ロール21a及び下ロール21bの一方の端部は、ロータリージョイント11a、11bに接続されており、このロータリージョイント11a、11bは、フレキシブルホース12a、12bを介してヘッダー13に連結されている。
【0028】
次に、膜厚調整ユニット2について詳述する。膜厚調整ユニット2は、油溜部14と、主管4と、細管5a、5b、5cと、開閉バルブ6と、真空破壊弁15とを有している。ここで、主管4の断面積は、細管5a、5b、5cの断面積よりも大きくなるように形成されている。尚、細管5cには、開閉バルブ18aが設置されており、細管5bには、開閉バルブ18bが設置されている。
【0029】
そして、油溜部14は、洗浄ユニット1のヘッダー13と連結されている。また、細管5a、5b、5cの一方の端部は油溜部14と接続され、主管4の一方の端部は油溜部14上部の配管と接続されており、主管4及び細管5a、5b、5cの他方の端部は、配管に接続されている。また、主管4には、主管4の開閉を行う開閉バルブ6が設置されている。油溜部14は、ロール部22a、22bから排出された油が溜まった際に、後述する真空ポンプ17からの吸引を一時的に遮断することができる。また、主管4及び細管5a、5b、5cの他方の端部と真空吸引ユニット3のセパレータ16との間の配管に真空破壊弁15を設置している。ここで、真空破壊弁15は、真空ポンプ17からの負圧を減少させる外気導入手段として機能する装置である。
【0030】
開閉バルブ6によって主管4が開状態となっている場合には、主に主管4で油を吸引することとなり、膜厚は薄くなる。一方、開閉バルブ6によって主管4が閉状態となっている場合には、3本の細管5a、5b、5cのみで油を吸引することとなり、膜厚は厚くなる。したがって、主管4と、3本の細管5a、5b、5cとを開閉バルブ6で切り替えることによって、真空ポンプ17からの負圧及び吸引空気量が弱まり、ロール部22a、22bからの油の吸引量を減少させることができるので、鋼板等の表面に最適な厚みの油膜を形成することができる。また、細管5cに設置されている開閉バルブ18aと、細管5bに設置されている開閉バルブ18bとを操作することによって、負圧及び吸引空気量を調整し、ロール部22a、22bからの油の吸引量を3段階で調整することができる。尚、上記実施形態においては、膜厚調整ユニット2における配管を、主管4と細管5a、5b、5cとにより構成しているが、主管4を設けずに、多数の細管を設けた細管のみの構成とすることもでき、この形態も本発明に含まれるものである。また、上記実施形態においては、開閉バルブ18a、18bを、細管5cと細管5bとに設置する構成としているが、細管5aにも開閉バルブを設置する構成、即ち、全ての細管に開閉バルブを設置する構成とすることもでき、この形態も本発明に含まれるものである。また、上記実施形態においては、開閉手段としてバルブを用いているが、配管を開閉できるものであるならバルブ以外の手段でも本発明に含まれる。
【0031】
また、設置する細管5a、5b、5cの本数と長さの両方又は一方を調節することによって、負圧及び吸引空気量を調整し、単位時間当たりの油の吸引量の設定を行うことができ、鋼板等の表面に最適な厚みの油膜を形成することができる。
【0032】
ここで、細管5a、5b、5cのみを使用する場合の油溜部14の機能について説明する。細管5a、5b、5cの断面積は、主管4の断面積と比較して小さいことから、主管4の開閉バルブ6を閉状態とした場合に、ロール部から短時間に多量の油が排出されると、油溜部14に一時的に油19が溜まることとなる。この状態では、細管5a、5b、5cの油溜部に接続された側の端部が油19によって蓋をされた状態となる。即ち、真空ポンプ17からの負圧を遮断するように油19が溜まるので、溜まった油19を境にして真空吸引ユニット3側の負圧が高まり、洗浄ユニット1側は大気圧に戻って行く。そして、油溜部14の油19が細管5a、5b、5cを通って真空吸引ユニット3側に排出されると、真空ポンプ17の吸引力がロール部22a、22bまで及ぶこととなり、ロール部22a、22bから油の排出が再開されることとなる。このように、ロール部22a、22bからの油の排出と、油溜部14による負圧の遮断とを繰り返すことで、断続的にロール部22a、22bから油が排出される。
【0033】
もし、真空ポンプ17の負圧を遮断しない構造、即ち負圧がロール21a、21bに常にかかる構成とした場合、断続的に鋼板が通板しているにも関わらず、通板しはじめはロール部22a、22bからの油の排出量が多く、時間が経つにつれロール部22a、22bからの油の排出量は次第に減少していく。つまり、鋼板の通板による油の供給量と、吸引による油の排出量が一致していないため、ロール部22a、22bの表面の湿潤状態が一定に維持できない。そのため、油溜部14によって真空ポンプ17の負圧を断続的に遮断することで、通板を続けるうちに鋼板の膜厚が次第に厚くなることを防ぐことができる。
【0034】
次に、真空吸引ユニット3について詳述する。真空吸引ユニット3は、セパレータ16と、真空ポンプ17とを有しており、セパレータ16は、配管を介して膜厚調整ユニット2の主管4及び細管5a、5b、5cと連結している。そして、セパレータによって、油と気体とに分離されて外部に排出される構造となっている。
【0035】
以上述べてきたとおり、本発明に係る鋼板洗浄装置10は、膜厚調整ユニット2の主管4の断面積を細管5a、5b、5cの断面積よりも大きくすると共に、主管4の開閉を行う開閉バルブ6を主管4に設置したことによって、容易に真空吸引ユニット3が吸引する吸込空気量及びロール部から排出する油の量の調節を行うことができるようにしている。
【0036】
また、主管4及び細管5a、5b、5c他方の端部とセパレータ16との間の配管に真空破壊弁15を設置することによって、細管5a、5b、5cの使用時に、配管の高真空状態を抑制し、真空ポンプ17の負荷の低減を図ることができる。また、真空破壊弁15は、予め設定した所定の負圧に達すると外気が導入される構造となっているが、この所定の負圧の設定値を変更することによって、油溜部14に溜まった油を排出する時間を調節することが可能となる。つまり、真空破壊弁15によって、細管5a、5b、5cに作用するロール側とポンプ側の圧力差の上限が一定となることで、細管5a、5b、5c内の流速を一定にすることができるので、油溜部14に溜まった油19の排出に要する時間を真空破壊弁15の設定値で長くしたり、短くしたりできる。
【0037】
具体的には、真空破壊弁15の初期設定値が−60kPaであった場合、設定値を−40kPaに変更すると油溜部14からの油の排出に要する時間が、設定値−60kPaの時よりも長く掛かるため、真空ポンプ17の負圧が遮断されている時間が長くなり、ロール部22a、22bの湿潤状態が高まって膜厚が厚くなる。逆に設定値を−60kPaから−80kPaに変更すると、油溜部14からの油の排出に要する時間が、設定値−60kPaの時よりも短くなるため、真空ポンプ17の負圧が遮断されている時間が短くなり、ロール部22a、22bの湿潤状態が低くなって膜厚が薄くなる。
【0038】
したがって、前述した細管5a、5b、5cの開閉による調整と組み合わせることによって、さらに細分化した微調整を行うことができる。主管4や細管5a、5b、5cの開閉での調整だけでは、どの配管を開けるかという段階的な膜厚調整しかできないが、真空破壊弁15の設定値による微調整を組み合わせることで、例えば、細管1本を開けた時の膜厚と、細管2本を開けた時の膜厚の中間の厚みの膜厚を設定する等の細かな調整が可能となる。そのため、鋼板又は非鉄金属板に所望の膜厚の油膜を形成させることが可能となる。
【0039】
尚、上記実施形態においては、真空破壊弁15を配管に1つ設け、その設定値を変更しているが、真空破壊弁15を配管に複数設け、異なる設定値にして電動バルブでどの真空破壊弁15を開閉するか管理することもでき、この形態も本発明に含まれる。具体的には、真空破壊弁15を配管に3つ設け、各設定値を−40kPa、−60kPa、−80kPaとする。そして、各真空破壊弁に接続された電動バルブのうち、どの電動バルブを開閉するかをスイッチによって管理することもできる。こうすることで、使用者は真空破壊弁15の設定値の変更作業をすることなく、スイッチで簡単に設定値を切り替えて膜厚を調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る膜厚調整ユニット及び鋼板洗浄装置は、鋼板等に付着した油の所定量を除去して、鋼板等を洗浄する為に利用される。
【符号の説明】
【0041】
1 洗浄ユニット
2 膜厚調整ユニット
3 真空吸引ユニット
4 主管(配管)
5a、5b、5c 細管(配管)
6 開閉バルブ
9 油供給装置
10 鋼板洗浄装置
11a、11b ロータリージョイント
12a、12b フレキシブルホース
13 ヘッダー
14 油溜部
15 真空破壊弁
16 セパレータ
17 真空ポンプ
18a、18b 開閉バルブ
21a 上ロール
21b 下ロール
22a、22b ロール部
図1
図2
図3