(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の方法の一実施形態において、例示的な樹脂成形体を備えた樹脂製ボードとその製造方法について説明する。
【0016】
(1)第1の実施形態
(1−1)樹脂製ボード1の構成
本実施形態の樹脂製ボード1の構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態の樹脂製ボード1の斜視図である。
図1では、樹脂製ボード1の内部がわかるように、一部を破断させた状態で示している。
図2は、本実施形態の樹脂成形体2にストラップ3を取り付けるためのリベット4の近傍を拡大して示す斜視図であり、(a)はおもて側から見た図、(b)は裏側から見た図である。
なお、
図1に示す樹脂製ボード1の外観形状は、本発明に係る方法を説明するための例示的なものに過ぎない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の樹脂製ボード1は、樹脂成形体2と、樹脂成形体2にリベット4によって締結された(取り付けられた)ストラップ3と、を備える。ストラップ3は、被取付部材の一例である。
樹脂成形体2は、おもて側外壁21、裏側外壁22、および、側壁23を有し、全体として概ね直方体の形状をなしている。
図1に示すように、樹脂成形体2の内部は中空部Hとなっている。
樹脂成形体2の側壁23には、樹脂成形体2を成形したときのパーティングラインPLが形成されている。後述するが、樹脂成形体2は、パーティングラインPLを挟んでおもて側の樹脂シート(おもて側外壁21と側壁23のパーティングラインPLよりおもて側の部分)と裏側の樹脂シート(裏側外壁22と側壁23のパーティングラインPLより裏側の部分)とが周縁において溶着されて形成されている。すなわち、樹脂成形体2は、樹脂シートからなる外壁によって中空部Hが形成されている。
【0018】
樹脂成形体2は熱可塑性樹脂から形成されている。当該熱可塑性樹脂は、発泡樹脂でもよいし、非発泡樹脂でもよいが、樹脂製ボード1の剛性を確保するために非発泡樹脂から形成されることが好ましい。成形時のドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。樹脂成形体2の樹脂材料の例として、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のアクリル誘導体のいずれか、又は2種類以上の混合物が挙げられる。
【0019】
樹脂成形体2は、剛性及び強度を増加させる目的で、ガラスフィラーを混入した樹脂材料を用いて成形するようにしてもよい。
ガラスフィラーとしては、ガラス繊維、ガラスクロスやガラス不織布などのガラス繊維布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラスなどが挙げられる。ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、クオーツ、低誘電率ガラス、高誘電率ガラスなどが挙げられる。
なお、ガラスフィラーに限らず、剛性を上げるためのタルク、炭酸カルシウム、珪灰石(Wollastonite)、マグネシウム系材料等の無機フィラー、カーボンファイバー等を混入させてもよい。
【0020】
樹脂成形体2のおもて側外壁21には、ストラップ3がリベット4(締結部材の一例)によって取り付けられている。ストラップ3は樹脂製ボード1を把持するために設けられる機能部材であり、その材料は限定するものではないが、例えばナイロンや織布等である。ストラップ3には、リベット4を貫通させるための開口が設けられている。
【0021】
リベット4の種類は特に限定するものではないが、以下で説明する例では、ピールタイプ(スリーブが花弁状に開くようにして締結するタイプ)のブラインドリベットである。
リベット4がピールタイプのブラインドリベットである場合、
図2(a)に示すように、リベット4が樹脂製ボード1のおもて側外壁21に取り付けられた状態では、樹脂製ボード1のおもて側から見てリベット4のフランジ部41aと樹脂成形体2のおもて側外壁21のおもて面との間でストラップ3が固定された状態となる。また、
図2(b)に示すように、リベット4によるストラップ3の締結によって、リベット4のマンドレル42(後述する)の頭部42bを中心に配置された4片の湾曲したスリーブ片411が、樹脂成形体2のおもて側外壁21の裏面に係合している。すなわち、フランジ部41aと、マンドレル42の頭部42b、およびスリーブ片411とによって、ストラップ3およびおもて側外壁21が締結され、ストラップ3が樹脂成形体2に取り付けられる。
【0022】
後述するが、本実施形態では、樹脂成形体2のおもて側外壁21にリベット4を貫通させるための孔を切削により開孔するときに、当該孔に対応するおもて側外壁21の被切削片2aがおもて側外壁21から離脱せずに残留している。このとき、
図2(a)に示すように、ストラップ3がリベット4によって取り付けられるときには、おもて側外壁21の裏面において、被切削片2aの少なくとも一部(つまり、外壁の一部)が、リベット4のスリーブ片411と、おもて側外壁21の裏面との間で挟持され、被切削片2aの少なくとも一部がおもて側外壁21の裏面に押圧されるようにすることが好ましい。それによって、ストラップ3が取り付けられた後に被切削片2aが樹脂成形体2の中空部Hに落下する可能性が低くなる。
【0023】
(1−2)樹脂製ボード1の製造方法
次に、本実施形態の樹脂製ボード1の製造方法について説明する。
【0024】
(1−2−1)樹脂成形体2の成形方法
先ず、本実施形態の樹脂製ボード1の樹脂成形体2の成形方法について、
図3〜7を参照して説明する。
図3に示すように、樹脂成形体2を成形するための成形装置110は、押出装置120と、押出装置120の下方に配置された型締装置140とを有する。
押出装置120は、ホッパ16A,16Bが付設されたシリンダ18A,18Bと、シリンダ18A,18Bに連結された油圧モータ20A,20Bと、シリンダ18A,18Bと内部が連通したアキュムレータ24A,24Bと、プランジャ26A,26Bと、Tダイ28A,28Bとを備える。
すなわち、押出装置120は、溶融樹脂シートPを押し出すための2系統の押出機構が備えている。
【0025】
押出装置120では、ホッパ16A,16Bから投入された熱可塑性樹脂が、シリンダ18A,18B内で油圧モータ20A,20Bによるスクリューの回転により溶融、混練される。溶融状態の熱可塑性樹脂(以下、「溶融樹脂」ともいう。)は、アキュムレータ24A,24Bに移送されて一定量貯留される。アキュムレータ24A,24Bに貯留された溶融樹脂は、プランジャ26A,26Bの駆動によりTダイ28A,28Bに供給される。すなわち、プランジャ26A,26Bを駆動してアキュムレータ24A,24Bの内容積を小さくして、アキュムレータ24A,24Bの内部に貯留された溶融樹脂を加圧してTダイ28A,28Bに送り込むことで、溶融樹脂への押出圧力を発生させるようにしている。
【0026】
Tダイ28A,28Bは、それぞれ、供給された溶融樹脂を押出スリットから連続的なシート状の溶融樹脂シートP,Pとして下方に押し出す。Tダイ28Aから押し出された溶融樹脂シートPは、間隔を隔てて配置された一対のローラ30AA,30ABによって挟圧されながら下方に向かって送り出される。Tダイ28Bから押し出された溶融樹脂シートPは、間隔を隔てて配置された一対のローラ30BA,30BBによって挟圧されながら下方に向かって送り出される。一対の溶融樹脂シートP,Pは、金型32A,32Bの間に垂下される。
【0027】
型締装置140は、金型32A,32Bを有する。金型32A,32Bには、それぞれ摺動部33A,33Bが設けられている。摺動部33A,33Bは互いに対向している。摺動部33Aは溶融樹脂シートPに対して直交する方向に摺動可能であり、それによって金型32Aの形成面116A(
図4参照)に対して相対移動可能に構成されている。同様に、摺動部33Bは溶融樹脂シートPに対して直交する方向に摺動可能であり、それによって金型32Bの形成面116B(
図4参照)に対して相対移動可能に構成されている。
また、金型32A,32Bの外周には、後述する型締めのためのピンチオフ部118が設けられている。
【0028】
溶融樹脂シートP,Pを金型32A,32Bの間に垂下させた後、
図4に示すように、摺動部33A,33Bを互いに近接する方向に移動(スライド)させることで、摺動部33A,33Bの先端を溶融樹脂シートPに接触させる。それによって、金型32Aの形成面116Aと溶融樹脂シートPの間に密閉空間SP1が形成され、金型32Bの形成面116Bと溶融樹脂シートPの間に密閉空間SP2が形成される。
図示しないが、金型32A,32Bにはそれぞれ真空チャンバが内蔵され、当該真空チャンバと形成面116A,116Bの間には真空吸引のための連通路が設けられている。そして、真空チャンバによって連通路から密閉空間SP1,SP2内の空気を吸引する。この吸引により、
図5に示すように、一対の溶融樹脂シートP,Pがそれぞれ形成面116A,116Bに押圧させられ、形成面116A,116Bに沿った形状に成形(賦形)される。
【0029】
次に、
図6に示すように、金型32A,32Bの型締めを行って、溶融樹脂シートP,Pを挟み込む。型締めによって、金型32A,32Bの外周に設けられたピンチオフ部118において一対の溶融樹脂シートP,Pの周縁が溶着させられ、パーティングラインPLが形成される。
次に、
図7に示すように、金型32A,32Bを開型して中空部を有する樹脂成形品を取り出す。樹脂成形品のパーティングラインPLに沿って形成されたバリBをカッターで除去し、樹脂成形体2を得る。
【0030】
(1−2−2)ストラップ3を樹脂成形体2に取り付ける方法
次に、成形された樹脂成形体2に対してストラップ3を取り付ける方法について、
図8および
図9を参照して説明する。
図8は、本実施形態の樹脂製ボード1の開孔のために使用する刃10の形状を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のX−Xの断面図である。
図9Aおよび
図9Bは、それぞれ、本実施形態の樹脂製ボード1においてストラップ3の取り付け方法を示す図である。
【0031】
図8に示すように、刃10は全体としてシャフト形状をなしており、その先端には、樹脂製ボード1の開孔のための刃先101が形成されている。刃先101は、樹脂成形体2のおもて側外壁21のおもて面(以下、適宜「切削面」という。)に接触して切削加工を行う部位である。
【0032】
刃10の刃先101には、切欠き102が設けられている。切欠き102において刃先101から離間した端である切欠端102aは、切削面に接触した場合でも切削面を切削することがないように、刃先101とは異なり先鋭形状とはなっていないことが好ましい。
図8(c)に示すように、刃10の先端部の断面は概ね円形形状であるが、切欠き102が設けられているため、円の一部が欠けたC字状となっている。
【0033】
次に、樹脂成形体2に対してストラップ3を取り付ける方法の各段階について順に説明する。なお、刃10を切削面に対して相対的に移動させる処理は、刃10が取り付けられた切削工具を用いて行ってもよい。
図9Aの段階S1では、樹脂成形体2を、おもて側外壁21のおもて面が水平となるように作業台に配置し、おもて側外壁21のおもて面上のストラップ3の取り付け位置に向けて、上から刃10を降下させる。
【0034】
図9Aの段階S2では、刃10の刃先101を樹脂成形体2の切削面に押圧させ(つまり、作用させ)、おもて側外壁21を貫通させる(つまり、刃先101を樹脂成形体2の中空部Hまで到達させる)。このとき、図に示すように、切欠き102の切欠端102aが切削面に達しないようにすることが好ましいが、切欠端102aが先鋭形状となっていない場合には、切欠端102aが切削面にも接触してもよい。
図9Aの段階S3では、刃10を引き上げ、樹脂成形体2の切削面から離脱させる。その結果、切削面には孔2Hが形成されるが、刃10の切欠き102に相当する、おもて側外壁21の一部では切削が行われない。そのため、孔2Hに相当する被切削片2aがおもて側外壁21の裏側に残留し、樹脂成形体2の中空部H内に落下(離脱)しない。
【0035】
次に
図9Bの段階S4では、リベット4によってストラップ3および樹脂成形体2のおもて側外壁21が締結される。なお、リベット4の締結作業は、図示しないリベット締結工具を用いて以下のようにして行われる。
先ず、段階S3において設けられた孔2Hに、被取付部材であるストラップ3の開口3aを位置決めする。そして、段階S5では、孔2Hおよびストラップ3の開口3aに対して、リベット4を、マンドレル42の頭部42bからリベット本体41のフランジ部41aがストラップ3に接触するまで挿入する。
【0036】
最後に、リベット本体41から突出しているマンドレル42の軸部42aをリベット締結工具に保持させ、当該リベット締結工具を動作させることで、マンドレル42を、その頭部42bからリベット本体41のフランジ部41aの方向に向けて引き抜く。その結果、マンドレル42の頭部42bの引き抜き荷重によってスリーブ41bが破断し、それによってスリーブ41bが4つに分断してめくり返ることで、スリーブ41bのスリーブ片411の先端が樹脂成形体2のおもて側外壁21の裏面に接触し、係合する(
図2(b)参照)。前述したように、ストラップ3を取り付けた後に被切削片2aが中空部Hに落下する可能性を低減するために、スリーブ片411によって被切削片2aの少なくとも一部をおもて側外壁21の裏面に押圧することが好ましい。
【0037】
上述したように、本実施形態に係る方法によれば、樹脂成形体2の開孔によって形成される被切削片2aが樹脂成形体2の中空部H内に落下しないため、被切削片2aを中空部Hから除去するための追加の工数を必要としない。
なお、本実施形態に係る方法は、上述したように一対の溶融樹脂シートを垂下させて樹脂成形体2を成形する場合に特に好ましい方法である。これは以下の理由による。すなわち、樹脂成形体2は、一対の溶融樹脂シートを垂下させるのではなく、それに代えて円筒状のパリソンを押し出してブロー成形を行うことによって形成することもできるが、その場合には、製造条件から比較的厚みを確保して押し出す場合が多い。そのため、上述した刃による開孔処理を行わずにタッピングねじによって成形後の樹脂成形体2にストラップ3を取り付けることができる。しかし一対の溶融樹脂シートを垂下させる場合には、比較的薄肉で押し出すことができるため、成形後にタッピングねじによってストラップ3を締結するのに十分な板厚を有していない場合がある。従って、一対の溶融樹脂シートで成形された樹脂成形体2にストラップ3を取り付けるためには、本実施形態の方法のようにリベット4を用いてストラップ3を取り付けることが好ましい。
【0038】
(1−3)変形例
上述した実施形態に係る方法の変形例について説明する。
上述した実施形態では、刃先101に切欠き102が設けられている刃10を用いて樹脂成形体2に孔2Hを形成する場合について説明したが、この場合に限られない。刃には切欠きを設けなくてもよい。
以下、本変形例に係るストラップ3の取り付け方法について
図10を参照して説明する。
図10は、上述した実施形態に関連して参照した
図9Aに対応する図である。
図10に示すように、本変形例の方法では、切欠きが設けられていない刃10Aを使用する。刃10Aの刃先101Aは、シャフト状の刃10Aをその軸に対して斜めに切断した形状となっている。
図10の段階S11では、樹脂成形体2を、おもて側外壁21のおもて面が水平となるように作業台に配置し、おもて側外壁21のおもて面上のストラップ3の取り付け位置に向けて、上から刃10Aを降下させる。
【0039】
図10の段階S12では、刃10Aの刃先101Aを樹脂成形体2の切削面に押圧させ(つまり、作用させ)、おもて側外壁21を貫通させる(つまり、刃先101Aを樹脂成形体2の中空部Hまで到達させる)。このとき、図に示すように、刃先101Aの一部が切削面に接触しないように、刃10Aの降下量が制御される。
図10の段階S13では、刃10Aを引き上げ、樹脂成形体2の切削面から離脱させる。その結果、切削面には孔2Hが形成されるが、刃10Aの刃先101Aのうち切削面に接触しない刃先部分に相当するおもて側外壁21の一部では切削が行われない。そのため、孔2Hに相当する被切削片2aがおもて側外壁21の裏側に残留し、樹脂成形体2の中空部H内に落下(離脱)しない。
【0040】
(2)第2の実施形態
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、被取付部材を、締結部材を介さずに直接樹脂成形体に取り付ける方法について、
図11を参照して説明する。
図11において、(a)は本実施形態の被取付部材としての樹脂クリップ8の正面図であり、(b)は樹脂クリップ8を
図1の樹脂成形体2に取り付ける方法を示す図である。
図11(b)は、樹脂クリップ8を樹脂成形体2のおもて側外壁21に取り付ける例示的な方法を示している。
【0041】
図11(a)に示すように、樹脂クリップ8は、一対の脚部81と載置部82を含む。一対の脚部81は、樹脂クリップ8を取り付ける取付面(つまり、樹脂成形体2のおもて側外壁21のおもて面)に形成された孔に挿入して樹脂クリップ8を固定するために設けられている。載置部82は、樹脂クリップ8を取付面に載置するために設けられている。一対の脚部81と載置部82の間には、溝g81が形成されている。
【0042】
図11(b)に示すように、本実施形態に例示する方法では、第1の実施形態とは異なり、刃先が矩形あるいは正方形をなす刃10Bを使用して樹脂成形体2のおもて側外壁21に矩形あるいは正方形の孔2HBを開ける。刃10Bの刃先101Bには切欠き102Bが設けられている。
図11(b)の段階S21は、
図9Aの段階S3に相当する。
【0043】
図示しないが、本実施形態の方法では先ず、樹脂成形体2を、おもて側外壁21のおもて面が水平となるように作業台に配置し、おもて側外壁21のおもて面上の孔2HBの予定位置に向けて、上から刃10Bを降下させる。そして、刃10Bの刃先101Bを樹脂成形体2の切削面に押圧させ(つまり、作用させ)、おもて側外壁21を貫通させる(つまり、刃先101Bを樹脂成形体2の中空部Hまで到達させる)。このとき、図に示すように、切欠き102Bの切欠端が切削面に達しないようにする。
次いで、
図11(b)に示す段階S21では、刃10Bを引き上げ、樹脂成形体2の切削面から離脱させる。その結果、切削面には矩形あるいは正方形の孔2HBが形成されるが、刃10Bの切欠き102Bに相当する、おもて側外壁21の一部では切削が行われない。そのため、孔2HBに相当する被切削片2aBがおもて側外壁21の裏側に残留し、樹脂成形体2の中空部H内に落下(離脱)しない。
【0044】
次に
図11(b)の段階S22では、孔2HBに対して樹脂クリップ8の一対の脚部81を挿入し、おもて側外壁21の裏面において樹脂クリップ8の脚部81をおもて側外壁21と係合させ、それによって樹脂クリップ8を樹脂成形体2に固定する。脚部81の挿入時には一対の脚部81が互いに近接するように変形し、載置部82がおもて側外壁21のおもて面に当接した状態では、一対の脚部81が復元力によって元の形状に戻る。
樹脂クリップ8が樹脂成形体2に固定された時点では、樹脂クリップ8の溝g81におもて側外壁21が挟まれた状態となる。好ましくは、樹脂クリップ8の溝g81には、おもて側外壁21とともに被切削片2aBが挟まれるように、刃10Bをおもて側外壁21に作用させる向き、および/または、樹脂クリップ8の脚部81の挿入向きを調整することが好ましい。それによって被切削片2aBが樹脂クリップ8によって固定されるため、その後に被切削片2aBが樹脂成形体2の中空部Hに落下する可能性が低くなる。
【0045】
本実施形態においても第1の実施形態と同様に、樹脂成形体2の開孔によって形成される被切削片2aBが樹脂成形体2の中空部H内に落下しないため、被切削片2aBを中空部Hから除去するための追加の工数を必要としない。
【0046】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
例えば、第1の実施形態では刃によって形成される孔が円形である場合について説明し、第2の実施形態では刃によって形成される孔が矩形または正方形である場合について説明したが、孔の形状は限定されない。つまり、孔の形状は、その使用方法に応じた任意の形状を採りうる。
【0047】
上述した第1の実施形態のように、比較的薄肉の外壁によって中空部Hが形成された樹脂成形体2に対してリベットを取り付ける場合には、中空部H内で作業を行うことが困難であるため、ブラインドリベットを採用することが好ましい。ブラインドリベットを採用することで樹脂成形体2の外部からの締結作業によってストラップ3を樹脂成形体2の外壁に取り付けることができる。
上述した第1の実施形態では、締結部材の一例としてピールタイプのブラインドリベットを採り上げたが、本発明に係る方法は特定の種類のブラインドリベットに限定されない。ブラインドリベットのマンドレル頭部の座屈態様に応じて、ピールタイプ以外の様々なタイプのブラインドリベットが知られている。種類を問わずブラインドリベットであれば、中空部内でのかしめ作業ができない樹脂成形体に対して簡便に被取付部材を取り付けることができる。
【0048】
上述した第1の実施形態において例示したように、複数のスリーブ片に分断される(つまり、複数の片を形成する)ブラインドリベットを締結部材として使用する場合には、以下の利点がある。つまり、樹脂成形体2のおもて側外壁21の裏側において、ブラインドリベットの複数のスリーブ片411のうち1個のスリーブ片が被切削片2aをおもて側外壁21の裏面に押圧することになった場合、その1個のスリーブ片411のみがおもて側外壁21の裏面から離間することになる。その場合でも、残りのスリーブ片411がおもて側外壁21の裏面に係合しているため、おもて側から見てリベット4による締結による外観上の違和感(例えば、フランジ部41aの浮き、傾斜等)が生じ難いという効果を発揮することができるためである。
分断されるスリーブ片の数は限定されず、例えば2〜4個の中から採用してよいが、上述した第1の実施形態において例示したように4個である場合が好ましい。この場合、おもて側外壁21の裏面において、4片のスリーブ片411のうち例えば1個または2個のスリーブ片411がおもて側外壁21の裏面から離間することになったとしても、残りの2個または3個のスリーブ片411がおもて側外壁21の裏面に直接係合しているため、上記効果を発揮しやすくなる。また、スリーブ片411が4個である場合、隣接するスリーブ片411の間隔が狭くなるため、リベット4を締結したときにスリーブ片411によって被切削片2aを押圧する可能性を高くすることができる。すなわち、スリーブ片411によって被切削片2aが押圧されないという状況を回避することができる。
【0049】
上述した実施形態では、締結部材の一例としてリベットを採り上げたが、締結部材のリベットに限られない。上述したように、樹脂成形体2を構成する樹脂シートに比較的厚みがある場合には、締結部材としてタッピングねじを採用してもよい。