(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)無機酸化物担体上に、活性金属成分として、モリブデン及びタングステンのうちの少なくとも一方である第1の金属成分と、コバルト及びニッケルのうちの少なくとも一方である第2の金属成分と、が担持され、
(2)第1の金属成分の含有量は、触媒100質量部に対して、酸化物換算として15〜30質量部であり、第2の金属成分の含有量は、触媒100質量部に対して、酸化物換算として3〜7質量部であり、有機酸由来の炭素は、触媒100質量部に対して、元素基準として2.0質量部以下であり、
(3)触媒の比表面積が140〜350m2/g、水銀圧入法で測定した触媒の平均細孔径が50〜130Åであり、
(4)強熱減量が5.0%以下、触媒の昇温還元法に基づいた、450℃までの範囲の脱離水のピーク温度が412.0℃以下、硫化処理した触媒の一酸化窒素の吸着量が8.0ml/g以上である、
ことを特徴とする炭化水素油の水素化処理触媒。
前記無機酸化物担体は、無機酸化物担体100質量部に対して、アルミニウムをアルミナ換算で80〜100質量部含むことを特徴とする請求項1記載の炭化水素油の水素化処理触媒。
前記活性金属成分は、モリブデンとコバルトとを含み、更にニッケル、銅、マグネシウム及び亜鉛の少なくとも1種を、触媒100質量部に対して、酸化物換算で0〜3.0質量部含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の炭化水素油の水素化処理触媒。
前記触媒は、昇温還元法に基づいた、900℃までの範囲の脱離水の最大ピーク温度が415℃以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の炭化水素油の水素化処理触媒。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[炭化水素油の水素化処理触媒について]
本発明の炭化水素油の水素化処理触媒は、例えばアルミニウムを含む無機酸化物担体と、活性金属成分とからなり、所定の性状を有している。以下に無機酸化物担体、活性金属成分及び触媒の性状について詳述する。
【0017】
<無機酸化物担体>
前記水素化処理触媒を構成する無機酸化物担体としては、公知のこの種の触媒に使用される担体であって、各種の無機物からなるものを挙げることができる。この無機物よりなる担体あるいは担体を構成する無機物成分としては、例えばアルミナ、またはアルミナとシリカ、リン、ボリア、チタニア、ジルコニア、マグネシア等から選ばれる少なくとも一種との複合酸化物からなる各種の複合酸化物を挙げることができる。言い換えれば、複合酸化物は、アルミニウムと、チタニウム、ケイ素、リン、ジルコニウム、マグネシウムおよびホウ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素と、を含む。
【0018】
複合酸化物の具体例としては、例えば、シリカアルミナ、ゼオライト、アルミナチタニア、アルミナリン、アルミナボリア、アルミナマグネシア、アルミナジルコニア、アルミナチタニアシリカ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。無機酸化物担体の性状及び形状は、担持する金属成分の種類や組成等の種々の条件及び触媒の用途に応じて、適宜選択される。
【0019】
例えば、前記活性金属成分を担体に高分散状態に有効に担持して触媒活性を十分に確保するためには、通常、多孔質の担体が使用され、細孔径500Å以下の比較的小さな細孔を有するものが好適に使用される。また、担体あるいは触媒体の機械的強度や耐熱性等の物性を制御するために、担体あるいは触媒体の形成に際して適当なバインダー成分や添加剤を含有させることもできる。
【0020】
本発明に係る炭化水素油の水素化処理触媒に使用される無機酸化物担体(以下、単に「担体」ともいう。)として、例えばアルミニウム単独酸化物、またはアルミニウムとケイ素、リンまたはチタニウムからなる複合酸化物を用いた場合におけるアルミニウム等の含有量について記載する。担体中のアルミニウムの含有量は、
アルミニウム酸化物(Al
2O
3)換算で80%以上(担体100質量部に対してアルミニウム酸化物(Al
2O
3)換算で80質量部以上)が好ましい。酸化物換算のアルミニウムの含有量が80質量%未満であると、触媒の劣化が早くなる傾向にある。
【0021】
担体中のケイ素の含有量は、ケイ素酸化物(SiO
2)換算で2.0質量%以下(担体100質量部に対してケイ素酸化物(SiO
2)換算で2.0質量部以下))が好ましく、ケイ素の含有量が過度に多いと、シリカが凝集し、担体細孔分布がブロードとなることから脱硫活性および脱窒素活性が低下する傾向にある。
【0022】
担体中のチタニウムの含有量は、チタニウム酸化物(TiO
2)換算で20.0質量%以下(担体100質量部に対してチタニウム酸化物(TiO
2)換算で20.0質量部以下)が好ましい。酸化物換算のチタニウム含有量が過度に多いと、担体細孔分布がブロードとなり脱硫活性が低下する傾向にある。
【0023】
担体中のリンの含有量は、リン酸化物(P
2O
5)換算で5.0質量%以下(担体100質量部に対してリン酸化物(P
2O
5)換算で5.0部以下)が好ましい。リン含有量が過度に多いと、担体細孔分布がブロードとなり脱硫性能が低下する傾向にある。
【0024】
<活性金属成分>
無機酸化物担体上に、活性金属成分として、第1の金属成分である例えばモリブデンと、第2の金属成分である例えばコバルトが担持される。
第1の金属成分は、モリブデンに代えてタングステンであってもよいし、モリブデン及びタングステンの両方であってもよい。第1の金属成分の含有量(担持量)は、触媒基準で酸化物換算として15〜30質量%(触媒100質量部に対して、酸化物換算として15〜30質量部)であることが必要である。
【0025】
第1の金属成分の含有量が酸化物換算として15質量%より過度に小さいと、反応に必要な脱硫活性が確保できないおそれがあり、30質量%より過度に大きいと、金属成分が凝集しやすくなり、分散性を阻害するおそれがある。
【0026】
第2の金属成分は、コバルトに代えてニッケルであってもよいし、コバルト及びニッケルの両方であってもよい。第2の金属成分の含有量(担持量)は、触媒基準で酸化物換算として3〜7質量%(触媒100質量部に対して、酸化物換算として15〜30質量部)であることが必要である。第2の金属成分は、第1の金属成分に対して助触媒として働き、含有量が酸化物換算として3質量%よりも少なくなると活性金属成分である第1の金属成分及び第2の金属成分が適切な構造を保つことが困難になり、含有量が酸化物換算として7質量%を越えると、活性金属成分の凝集が進みやすくなり、触媒性能が低下する。
【0027】
また有機酸由来の炭素の含有量は、触媒基準で元素基準として2.0質量%以下(触媒100質量部に対して、元素基準として2.0質量部以下)であることが必要である。活性金属成分を含侵法により無機酸化物担体に担持させる場合には、通常含侵液中に有機酸が含まれ、このため有機酸が無機酸化物担体に担持される炭素の供給源となる。炭素の含有量を元素基準として2.0質量%以下とすることにより、触媒再生時の活性が新規な未使用の触媒(フレッシュな触媒)の脱硫性能を100%としたときに80%以上とすることができる。炭素の含有量が多いと、触媒再生時の焼成工程によって活性金属成分が凝集することが懸念される。
【0028】
有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が用いられ、より好ましくは、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸などが挙げられる。また有機酸に加えて例えば、糖類(単糖類、二糖類、多糖類等)などの有機添加剤を用いる場合には、本明細書においては、有機酸由来の炭素の含有量とは、有機酸及び有機添加剤の両方に由来する炭素の含有量とする。
【0029】
<触媒の性状>
本発明の触媒は、BET法で測定した比表面積(SA)が、140〜350m
2/gの範囲であることが必要である。比表面積(SA)が、140m
2/gよりも小さいと、金属成分が凝集しやすくなり、脱硫性能が低下するおそれがあるため好ましくない。一方、350m
2/gより大きいと平均細孔径や細孔容積が小さくなり、脱硫活性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0030】
また平均細孔径が50〜130Åであることが必要である。平均細孔直径は、水銀圧入法(水銀の接触角:130度、表面張力:480dyn/cm)により測定した値であり、全細孔容積の50%に相当する細孔直径を表す。なお、細孔容積は細孔直径41Å以上の細孔直径を有する細孔の容積を表す。平均細孔径が50Åよりも小さいと脱硫性能が低下するおそれがあり、平均細孔径が130Åよりも大きいと、触媒強度が低下するおそれがある。
【0031】
本発明の触媒は、強熱減量(Ig Loss)が5.0%以下である。強熱減量は後述の測定法の項目に記載しているように触媒を高温で加熱することにより算出して得られる。触媒の強熱減量を5.0%以下とするためには、無機酸化物担体に対して含侵液を噴霧含侵させた後、例えば300℃以上の温度で焼成することが必要である。
触媒の強熱減量を5.0%以下とする
ことにより、触媒再生時の活性が新規な未使用の触媒(フレッシュな触媒)の脱硫性能を100%としたときに80%以上とすることができる。触媒の強熱減量が多くなると。触媒再生時の焼成工程によって活性金属成分が凝集することが懸念される。
【0032】
本発明の触媒は、触媒の昇温還元法に基づいた、450℃までの範囲の脱離水のピーク温度(水の脱離スペクトルのピークが現れる温度)が415℃以下である。昇温還元法の具体例については後述する。通常、硫化処理はモリブデンに水素気流下で硫化水素等によって行われ、反応としては、酸化モリブデンから酸素が脱離することが必要になる。水の脱離ピークは、まさにその酸化モリブデンからの酸素の水としての脱離を検出しているものであるため、硫化処理の進行とモリブデンの還元温度には相関関係があると考えられる。従って、脱離水のピーク温度を低温化することにより、モリブデンの硫化処理を十分進行させることができると考えられる。
【0033】
また還元温度が高すぎた場合、つまり脱離水のピーク温度が高すぎた場合には、水が無機酸化物担体と弱く相互作用をしているため、活性金属の凝集体が存在する可能性が高くなる。そのため、硫化工程が十分に進行しないことが推察される。従って、還元温度を低くし、水と無機酸化物担体との相互作用を小さくすることが、活性金属を高分散させるために必要である。
脱離水は、主としてモリブデンの還元工程で生成されたものであり、そのピーク温度は、担体組成、活性金属組成等に応じて変化する。本発明者の知見によれば、水の脱離ピーク温度(脱離水のピーク温度)を415℃以下にするためには無機酸化物担体上に、活性金属成分として、モリブデンおよびタングステンのうちの少なくとも一方(一種)を酸化物換算として、15〜30質量%、コバルト及びニッケルのうちの少なくとも一方(一種)を酸化物換算として3〜7質量%とすることが必要である。
【0034】
本発明の触媒は、硫化処理した触媒のNO(一酸化窒素)の吸着量が8.0ml/g以上である。前記吸着量は、より好ましくは、8.3ml/g以上であり、更に好ましくは9.0ml/g以上である。NO分子吸着量に基づき、触媒の反応活性点を計測することができる。
【0035】
触媒を硫化処理した後のNO吸着量は、脱離水のピーク温度と同様に、担体組成、活性金属組成等に応じて変化する。そしてNO吸着を行うためには、硫化処理が必要となることから、活性金属の還元温度をある一定温度以下に下げることが必要となる。本発明者の知見によれば、NOの吸着量を8.0ml/g以上とするためには、無機酸化物担体上に活性金属成分として、モリブデン及びタングステンのうちのを少なくとも一方を酸化物換算として15〜30質量%、コバルト及びニッケルのうちの少なくとも一方を酸化物換算として3〜7質量%とし、水の脱離ピーク温度を415℃以下にすることが重要である。
【0036】
[炭化水素油の水素化処理方法について]
本発明の水素化処理触媒により脱硫化を図る対象となる炭化水素油は、例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油または直留軽油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧軽油または減圧重質軽油、脱硫重油を接触分解して得られる接触分解灯油または接触分解軽油、減圧重質軽油あるいは脱硫重油を水素化分解して得られる水素化分解灯油または水素化分解軽油、コーカー等の熱分解装置から得られる熱分解灯油または熱分解軽油等が挙げられ、沸点が180〜390℃の留分を80容量%以上含んだ留分である。該触媒を使用した水素化処理は、固定床反応装置に触媒を充填して水素雰囲気下、高温高圧条件で行なわれる。
【0037】
[炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法]
次に、本発明の炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法について説明する。
【0038】
本発明に係る炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法は、
アルミニウムを含む無機酸化物担体を準備する第1工程と、
モリブデン及びタングステンのうちの少なくとも一方である第1の金属成分と、コバルト及びニッケルの少なくとも一方である第2の金属成分と、有機酸と、を含む含浸液を調製し、前記第1の金属成分及び第2の金属成分を前記無機酸化物担体に担持する第2工程と、
第2工程により得られた、前記第1の金属成分及び第2の金属成分が担持された無機酸化物担体を100〜600℃の温度で加熱処理して水素化処理触媒を得る工程と、を有する。
以下、各工程について説明する。
【0039】
<第1工程>
先ず塩基性アルミニウム塩水溶液と酸性アルミニウム塩の水溶液を、pHが6.5〜9.5、好ましくは6.5〜8.5、より好ましくは6.8〜8.0になるように混合して無機酸化物の水和物を得る。そして無機酸化物の水和物のスラリーを所望の手法により熟成した後、洗浄して副生成塩を除き、アルミナを含む、あるいはアルミナやアルミナ以外のケイ素などの他の元素を含む水和物のスラリーを得る。この水和物のスラリーを例えば更に加熱熟成した後、慣用の手段により例えば加熱捏和して成型可能な捏和物とした後、押し出し成型などにより所望の形状に成型し、次いで例えば70〜150℃、好ましくは90〜130℃で加熱乾燥し、好ましくは更に例えば400〜800℃、好ましくは450〜600℃で、例えば0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間焼成して無機酸化物担体を得る。
【0040】
アルミニウム以外の元素を含む無機複合酸化物の水和物を得る場合は、用いる金属塩のpHにより、酸性水溶液または塩基性水溶液のアルミニウム塩の水溶液に予め混合した後、前記pHの範囲になるように混合して、無機複合酸化物の水和物を得る。
【0041】
また、塩基性アルミニウム塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが好適に使用される。また、酸性アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどが好適に使用され、チタン鉱酸塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタンなどが例示され、特に硫酸チタン、硫酸チタニルは安価であるので好適に使用される。また、リン酸塩源としては、亜リン酸イオンをも包含し、リン酸アンモニア、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸、亜リン酸などの水中でリン酸イオンを生じるリン酸化合物が使用可能である。
【0042】
前記2種のアルミニウム塩水溶液を混合する際、通常40〜90℃、好ましくは50〜70℃に加温して保持し、この溶液の温度の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃に加温した混合水溶液を、pHが6.5〜9.5、好ましくは6.5〜8.5、より好ましくは6.5〜8.0になるように、通常5〜20分、好ましくは7〜15分の間に連続添加し沈殿を生成させ、水和物のスラリーを得る。
【0043】
ここで、塩基性アルミニウム塩水溶液への混合水溶液の添加に要する時間は、長くなると擬ベーマイトの他にバイヤライトやギブサイト等の好ましくない結晶物が生成することがあるので、15分以下が望ましく、13分以下が更に望ましい。バイヤライトやギブサイトは、加熱処理した時に比表面積が低下するので、好ましくない。
【0044】
<第2工程>
無機酸化物担体に、既述の第1の金属成分と第2の金属成分と炭素成分とを含む含浸液を接触させる。
第1の金属成分の原料としては、例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステンなどが好適に使用される。また第2金属成分の原料としては、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸コバルト等が好適に使用される。
更に銅、マグネシウムあるいは亜鉛を無機酸化物担体に担持させる場合には、例えば炭酸銅、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などが用いられる。
またリンを無機酸化物担体に担持させる場合には、オルトリン酸(以下、単に「リン酸」ともいう)、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などが用いられる。
【0045】
含浸液は、有機酸を用いてpHを4以下にして、金属成分を溶解させることが好ましい。pHが4を超えると溶解している金属成分の安定性が低下して析出する傾向にある。有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が使用でき、特に、クエン酸、リンゴ酸が好適に用いられる。有機添加剤としては、糖類(単糖類、二糖類、多糖類等)が用いられる。なお有機酸に有機添加剤、例えば、ブドウ糖(グルコース;C
6H
12O
6)、果糖(フルクトース;C
6H
12O
6)、麦芽糖(マルトース;C
12H
22O
11)、乳糖(ラクトース;C
12H
22O
11)、ショ糖(スクロース;C
12H
22O
11)等を加えてもよい。
【0046】
<第3工程>
第2工程で含浸液と接触させて得られる金属成分を担持した担体を、100〜600℃、好ましくは105〜550℃、さらに好ましくは110〜500℃で、0.5〜10時間、好ましくは1〜8時間で加熱処理した後、本発明の水素化処理触媒を製造する。ここで焼成温度が100℃より過度に低いと、残存水分による操作性が悪くなり、また金属担持状態が均一になりにくいおそれがあり、600℃を過度に超えると、金属が凝集を起こし、分散維持効果が期待できなくなるおそれがあるので好ましくない。
【0047】
[測定方法について]
後述のように、本発明の実施例及び比較例の各々における水素化処理触媒について、成分の含有量、比表面積及び性状に関する数値を測定しているが、これらの測定を行う方法について記載しておく。
<担体成分(アルミナ、シリカ、酸化リン、チタニア)および金属成分(モリブデン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、リン)の含有量の測定方法>
測定試料3gを容量30mlの蓋付きジルコニアボールに採取し、加熱処理(200℃、20分)させ、焼成(700℃、5分)した後、Na
2O
2 2gおよびNaOH 1gを加えて15分間溶融した。さらに、H
2SO
4 25mlと水200mlを加えて溶解したのち、純水で500mlになるよう希釈して試料とした。得られた試料について、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)を用いて、各成分の含有量を酸化物換算基準(Al
2O
3、SiO
2、P
2O
5、TiO
2、MoO
3、NiO、CoO、MgO、CuO)で測定した。
【0048】
<比表面積の測定方法>
測定試料を磁製ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、300℃の温度で2時間加熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却し、測定用サンプルを得た。次に、このサンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、試料の比表面積(m
2/g)をBET法にて測定した。
【0049】
<強熱減量の測定方法>
測定試料である触媒を570℃で2時間焼成し、焼成による質量減少量から算出している。
【0050】
<昇温還元法による脱離水のピーク温度の測定方法>
昇温還元法においては、日本ベル製触媒分析装置(BEL CAT−A)を用いて、250〜710μmに整粒した触媒0.05gを120℃で1時間、ヘリウムガスの流通下で前処理を施した後、水素ガス(99.99%)に切り換え、50℃から900℃まで10℃/分で昇温した。昇温時の水の脱離スペクトルをファイファーバキューム社製四重極質量分析装置(m/z:18.34)にて測定し、得られた、脱離スペクトルから水の脱離ピーク温度を読み取った。
【0051】
図1に、昇温還元法による脱離水のピーク温度の分析結果の一例であるグラフを示しておく。
図1の横軸は温度、縦軸は四重極質量分析装置の検出電流である。
図1(a)における実線(1)及び鎖線(2)は夫々後述の実施例6及び8に対応し、
図1(b)における実線(3)及び鎖線(4)は夫々後述の比較例1及び5に相当する。
【0052】
<NO吸着量の測定方法>
NO吸着量の測定は、全自動触媒ガス吸着量測定装置(大倉理研製)を用い、硫化処理した水素化処理触媒に、ヘリウムガスとNOガスの混合ガス(NO濃度10容量%)をパルスで導入し、水素化処理触媒1gあたりのNO分子吸着量を測定した。具体的には、60メッシュ以下に粉砕した触媒を約0.02g秤取り、これを石英製のセルに充填し、当該触媒を360℃に加熱して、硫化水素5容量%/水素95容量%のガスを0.2リットル/分の流量で通流させて1時間硫化処理を行い、その後340℃で1時間保持し、物理吸着している硫化水素を系外に排出した。その後にヘリウムガスとNOガスの混合ガスにてNO分子を50℃にて吸着させ、NO分子吸着量を測定した。
【0053】
[実施例]
無機酸化物担体の調製例と、含浸液の調製例と、各無機酸化物担体及び含浸液を用いた本発明の実施例である水素化処理触媒の調製例と、各無機酸化物担体及び含浸液を用いた比較例である水素化処理触媒の調製例について以下に記載する。
まず無機酸化物担体の調製例について記載する。
<無機酸化物担体Aの調製>
容量が100L(リットル)のスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液8.95kgを入れ、イオン交換水33kgで希釈後、P
2O
5濃度換算で2.5質量%のリン酸ナトリウム溶液5.40kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液12.79kgを23kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液を60℃に加温した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて酸性アルミニウム塩水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、リン及びアルミナを含有する水和物スラリーAを調製した。
得られた水和物スラリーAを撹拌しながら60℃で1時間熟成した後、平板フィルターを用いて脱水し、更に、0.3質量%アンモニア水溶液150Lで洗浄した。洗浄後のケーキ状のスラリーをAl
2O
3濃度換算で10質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、15質量%アンモニア水でpHを10.5に調整した。これを還流機付熟成タンクに移し、撹拌しながら95℃で10時間熟成した。熟成終了後のスラリーを脱水し、スチームジャケットを備えた双腕式ニーダーにて練りながら所定の水分量まで濃縮捏和した。得られた捏和物を押し出し成型機にて直径が1.6mmの円柱形状に成型し、110℃で乾燥した。乾燥した成型品は電気炉で500℃の温度で3時間焼成し、担体Aを得た。
【0054】
<無機酸化物担体Bの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9.23kgを入れ、イオン交換水35kgで希釈後、P
2O
5濃度換算で2.5質量%のリン酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液13.19kgを24kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液を60℃に加温した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて酸性アルミニウム塩水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、リン及びアルミナを含有する水和物スラリーBを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Bを得た。
【0055】
<無機酸化物担体Cの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9.38kgを入れ、イオン交換水36kgで希釈後、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液13.39kgを24kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液を60℃に加温した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて酸性アルミニウム塩水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)
し、アルミナを含有する水和物スラリーCを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Cを得た。
【0056】
<無機酸化物担体Dの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9.23kgを入れ、イオン交換水36kgで希釈後、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液13.19kgを24kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液と、TiO
2濃度換算で33質量%の硫酸チタン0.14kgを1kgのイオン交換水に溶解した硫酸チタン水溶液とを混合し60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、チタニア及びアルミナを含有する水和物スラリーDを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Dを得た。
【0057】
<無機酸化物担体Eの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液8.44kgを入れ、イオン交換水35kgで希釈後、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液12.05kgを22kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液と、TiO
2濃度換算で33質量%の硫酸チタン0.91kgを6kgのイオン交換水に溶解した硫酸チタン水溶液とを混合し60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、チタニア及びアルミナを含有する水和物スラリーEを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Eを得た。
【0058】
<無機酸化物担体Fの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液7.50kgを入れ、イオン交換水34kgで希釈後、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液10.71kgを19kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液と、TiO
2濃度換算で33質量%の硫酸チタン1.82kgを12kgのイオン交換水に溶解した硫酸チタン水溶液とを混合し60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、チタニア及びアルミナを含有する水和物スラリーFを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Fを得た。
【0059】
<無機酸化物担体Gの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9.09kgを入れ、イオン交換水35kgで希釈後、P
2O
5濃度換算で2.5質量%のリン酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液12.99kgを23kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液と、TiO
2濃度換算で33質量%の硫酸チタン0.14kgを0.9kgのイオン交換水に溶解した硫酸チタン水溶液とを混合し60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、リンとチタニア及びアルミナを含有する水和物スラリーGを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Gを得た。
【0060】
<無機酸化物担体Hの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9.09kgを入れ、イオン交換水35kgで希釈後、SiO
2濃度換算で5質量%の珪酸ナトリウム溶液0.90kgとP
2O
5濃度換算で2.5質量%のリン酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液12.99kgを23kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液を60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、リンとシリカ及びアルミナを含有する水和物スラリーHを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Hを得た。
【0061】
<無機酸化物担体Iの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9.05kgを入れ、イオン交換水35kgで希釈後、SiO
2濃度換算で5質量%の珪酸ナトリウム溶液0.90kgとP
2O
5濃度換算で2.5質量%のリン酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液12.92kgを23kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液と、TiO
2濃度換算で33質量%の硫酸チタン0.14kgを0.9kgのイオン交換水に溶解した硫酸チタン水溶液とを混合し60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、シリカとリンとチタニア及びアルミナを含有する水和物スラリーIを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Iを得た。
【0062】
<無機酸化物担体Jの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液7.50kgを入れ、イオン交換水34kgで希釈後、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液10.71kgを19kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液と、TiO
2濃度換算で33質量%の硫酸チタン1.80kgを12kgのイオン交換水に溶解した硫酸チタン水溶液とを混合し60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、チタニア及びアルミナを含有する水和物スラリーJを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Jを得た。
【0063】
<無機酸化物担体Kの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液4.09kgを入れ、イオン交換水25kgで希釈後、SiO
2濃度換算で5質量%の珪酸ナトリウム溶液30.00kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液8.57kgを15kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液を60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、シリカ及びアルミナを含有する水和物スラリーKを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Kを得た。
【0064】
<無機酸化物担体Lの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付のタンクに、Al
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2.15kgを入れ、イオン交換水25kgで希釈後、SiO
2濃度換算で5質量%の珪酸ナトリウム溶液30.0kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩水溶液を作成した。また、Al
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液3.97kgを7kgのイオン交換水で希釈した酸性アルミニウム塩水溶液と、TiO
2濃度換算で33質量%の硫酸チタン2.27kgを7.1kgのイオン交換水に溶解した硫酸チタン水溶液とを混合し60℃に加温して、混合水溶液を作成した。塩基性アルミニウム塩水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて混合水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で添加(添加時間:10分)し、シリカとチタニア及びアルミナを含有する水和物スラリーLを調製した。その後の工程は実施例1の担体Aと同様にして、担体Lを得た。
【0065】
<無機酸化物担体Mの調製>
実施例1と同様にして得られた担体Aにおいて、110℃で乾燥後電気炉での焼成温度を800℃とし、3時間焼成することにより担体Mを得た。
【0066】
次に含浸液の調整例について記載する。
<含浸液aの調製>
三酸化モリブデン282gと炭酸コバルト56gと炭酸ニッケル54gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、クエン酸84gを加えて溶解させ、含浸液aを作製した。
【0067】
<含浸液bの調製>
三酸化モリブデン333gと炭酸コバルト56gと炭酸ニッケル43gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸23gとクエン酸120gを加えて溶解させ、含浸液bを作製した。
【0068】
<含浸液cの調製>
三酸化モリブデン329gと炭酸コバルト131gと炭酸銅13gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸23gとクエン酸118gを加えて溶解させ、含浸液cを作製した。
【0069】
<含浸液dの調製>
三酸化モリブデン331gと炭酸コバルト132gと炭酸ニッケル14gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸35gとクエン酸119gを加えて溶解させ、含浸液dを作製した。
【0070】
<含浸液eの調製>
三酸化モリブデン331gと炭酸コバルト132gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸46gとクエン酸119gを加えて溶解させ、含浸液eを作製した。
【0071】
<含浸液fの調製>
三酸化モリブデン294gと炭酸コバルト105gと炭酸銅25gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸45gとクエン酸94gを加えて溶解させ、含浸液fを作製した。
【0072】
<含浸液gの調製>
三酸化モリブデン294gと炭酸コバルト105gと炭酸マグネシウム33gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸45gとクエン酸94gを加えて溶解させ、含浸液gを作製した。
【0073】
<含浸液hの調製>
三酸化モリブデン454gと炭酸コバルト170gと炭酸ニッケル49gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸65gとクエン酸153gを加えて溶解させ、含浸液hを作製した。
【0074】
<含浸液iの調製>
三酸化モリブデン186gと炭酸コバルト70gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸20gとクエン酸63gを加えて溶解させ、含浸液iを作製した。
【0075】
<含浸液jの調製>
三酸化モリブデン282gと炭酸コバルト101gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、クエン酸151gを加えて溶解させ、含浸液jを作製した。
【0076】
<含浸液kの調製>
三酸化モリブデン324gと炭酸コバルト141gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、クエン酸211gを加えて溶解させ、含浸液kを作製した。
【0077】
<含浸液lの調製>
三酸化モリブデン231gと炭酸コバルト85gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、クエン酸128gを加えて溶解させ、含浸液lを作製した。
【0078】
<含浸液mの調製>
三酸化モリブデン287gと炭酸コバルト66gを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸64gとクエン酸59gを加えて溶解させ、含浸液mを作製した。
【0079】
<含浸液nの調製>
三酸化モリブデン238gと炭酸コバルト66gと炭酸ニッケル40gとを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸43gとクエン酸60gを加えて溶解させ、含浸液nを作製した。
【0080】
<含浸液oの調製>
三酸化モリブデン234gと炭酸コバルト65gと炭酸ニッケル26gとを、イオン交換水800mlに懸濁させ、この懸濁液を95℃で5時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸21gとクエン酸58gを加えて溶解させ、含浸液oを作製した。
【0081】
以下に実施例を示し具体的に本発明を説明するが、これらのものに本発明が限定されるものではない。
<実施例1:水素化脱硫触媒の調製>
担体A1000gに含浸液aを噴霧含浸させた後、200℃で乾燥し、更に電気炉にて450℃で1時間焼成して水素化処理触媒(以下、単に「触媒」ともいう。以下の実施例についても同様である。)を得た。
<実施例2〜実施例17:水素化脱硫触媒の調製>
既述のようにした調整した担体の種類(調製例)と含浸液の種類(調製例)とを後述の表1のように組み合わせ、その他は実施例1と同様にして、実施例2〜実施例17の触媒を調製した。
【0082】
次に比較例について説明する。
<比較例1:水素化脱硫触媒の調製>
含浸液として実施例6の含浸液eを用い、実施例5で調製した担体C1000gに噴霧含浸させた後、120℃で乾燥しその後に焼成せずに水素化処理触媒を得た。
<比較例2:水素化脱硫触媒の調製>
含浸液として実施例6の含浸液eを用い、実施例3で調製した担体B1000gに噴霧含浸させた後、120℃で乾燥しその後に焼成せずに水素化処理触媒を得た
<比較例3〜比較例10:水素化脱硫触媒の調製>
既述のようにした調整した担体の種類(調製例)と含浸液の種類(調製例)とを後述の表1のように組み合わせ、その他は実施例1と同様にして、比較例3〜比較例10の触媒を調製した。
【0083】
以上のよう調製して得られた実施例1〜実施例17及び比較例1〜10における各担体の性状を表1に示し、各触媒の性状を表2に示す。表1において、比表面積は、触媒の比表面積を表している。また表2において、各元素の担持量(質量%)は既に述べたように触媒基準の値である。表2におけるNi、Cu、Mgの酸化物の担持量は、酸化物を表示している列の右隣りの列に示している。また炭素量についても触媒基準の値である。
【0085】
【表2】
<触媒の評価>
(評価のための確認試験)
実施例1〜17及び比較例1〜10の各触媒について、触媒性能と触媒再生性能とについて評価した。
(1)触媒性能の評価のための確認試験
各触媒を固定床反応装置に充填し、触媒に含まれている酸素原子を脱離させて活性化するために、予備硫化処理した。この処理は、硫黄化合物を含む液体または気体を200℃〜400℃の温度、常圧〜100MPaの水素圧雰囲気下の管理された反応容器中で流通させることによって行われる。
【0086】
次いで、固定床流通式反応装置内に、直留軽油(15℃における密度0.8468g/cm
3、硫黄分1.13質量%、窒素分0.083質量%)を150ml/時間の速度で供給して水素化脱硫処理を行い、水素化精製を行なった。その際の反応条件は、水素分圧が4.5MPa、液空間速度が1.0h
−1、水素油比が250Nm
3/klである。そして反応温度を300〜385℃の範囲で変化させ、各温度における精製油中の硫黄分析を行い、精製油中の硫黄分が8ppmになる温度をそれぞれ求めた。
【0087】
(2)触媒再生性能の評価のための確認試験
触媒の再生は以下の手法を用いて実施した。反応後に抜き出した使用済み触媒100gを、200℃に保持された窒素雰囲気中に配置し、表面に付着した油分を除去した。しかる後、触媒の温度を400〜450℃に制御しながら、炭素量が1重量%以下になるまで空気雰囲気中で焼成を行った。焼成後の触媒は冷却し、再度活性試験に使用した。
【0088】
再生後の性能算出法は次のとおりである。活性試験における試験結果は、アレニウスプロットより反応速度定数を求め、フレッシュ触媒(未使用触媒)からの再生率を算出した。具体的には、硫化水素を通流させて硫化処理を行った後、上記の(1)にて記載した条件にて水素化脱硫処理を行った。反応器を通過する前後での炭化水素油中の硫黄濃度の変化から、下記の式1に基づいて反応速度定数を求めた。そして、未使用触媒の反応速度定数(K
n0)に対する、再生触媒の反応速度定数(Kn)の比をパーセント表示で表した値((K
n/K
n0)×100[%])を相対活性とした。
K
n=LHSV×1/(n−1)×(1/S
n−1−1/S
0n−1) …式1
ここで、
K
n:反応速度定数
n:脱硫反応速度が原料油の硫黄濃度の何乗に比例するか(LGOでは1.5)
S:処理油中の硫黄濃度(%)
S
0:原料油中の硫黄濃度(%)
LHSV:液空間速度(hr
−1)
以上の確認試験の結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
(触媒の性状及び確認試験の評価結果)
実施例1〜17は、触媒の性状に関してすべて適切な値になっている。これに対して、比較例1及び2は、脱離水のピーク温度が適切値の上限である415℃を越えており、強熱減量が適切値の上限である5重量%を大幅に大きく越えており、含有している炭素量も適切値の上限である2重量%を越えている。比較例3及び7は、450℃以下及び900℃以下の各々における脱離水のピーク温度が415℃を越えており、比較例5は、900℃以下における脱離水のピーク温度が415℃を越えている。また比較例4及び7は、NO吸着量が適切値の下限である8.0ml/gを下回っており、比較例8及び9は、450℃以下及び900℃以下の各々における脱離水のピーク温度が415℃を越えており、更にNO吸着量が8.0ml/gを下回っている。
【0090】
また実施例1〜17は、触媒性能の指標である、精製油中の硫黄分が8ppmになる温度が360℃以下であり、触媒再生性能の指標である上記の相対活性が80%以上である。これに対して比較例1、2では、触媒再生性能が劣っており、比較例4〜10は触媒性能が劣っており、比較例3は、触媒性能、触媒再生性能のいずれも劣っている。