(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643818
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】両耳用補聴システムにおける無指向性感知
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20200130BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
H04R25/00 Z
H04R25/00 D
H04R3/00 320
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-112418(P2015-112418)
(22)【出願日】2015年6月2日
(65)【公開番号】特開2016-15722(P2016-15722A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年7月18日
【審判番号】不服2018-15797(P2018-15797/J1)
【審判請求日】2018年11月28日
(31)【優先権主張番号】14/312,463
(32)【優先日】2014年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PA201470407
(32)【優先日】2014年7月1日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】14175195.8
(32)【優先日】2014年7月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディットバーナー アンドリュー バーク
【合議体】
【審判長】
清水 正一
【審判官】
千葉 輝久
【審判官】
菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−139462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R3/00-3/14
H04R25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の補聴器と、第2の補聴器と、を備える補聴システムであって、
前記第1の補聴器は、
第1の電気入力信号を生成するための第1のセットのマイクロフォンと、
第1の音声信号を生成するために前記第1のセットのマイクロフォンに接続された第1のビームフォーマと、
第1の出力信号を生成するための第1の処理モジュールと、
第1の音声出力を生成するための第1のレシーバと、を備え、
前記第2の補聴器は、
第2の電気入力信号を生成するための第2のセットのマイクロフォンと、
第2の音声信号を生成するために前記第2のセットのマイクロフォンに接続された第2のビームフォーマと、
第2の出力信号を生成するための第2の処理モジュールと、
第2の音声出力を生成するための第2のレシーバと、を備え、
前記補聴システムの第1の動作モードにおける前記第1のビームフォーマは、第1の一次空間特性に従って前記第1の音声信号を生成するように構成され、
前記補聴システムの前記第1の動作モードにおける前記第2のビームフォーマは、第2の一次空間特性に従って前記第2の音声信号を生成するように構成され、
前記第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、
前記第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、
前記第2の方向は、前記第1の方向とは異なる、指向性空間特性を利用して改善された無指向性感知を提供する、補聴システム。
【請求項2】
前記第1のビームフォーマを制御するために前記第1のビームフォーマに接続された第1のモード制御装置をさらに備える、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項3】
前記第1のモード制御装置が、前記第2のビームフォーマを制御するために前記第2のビームフォーマに接続される、請求項2に記載の補聴システム。
【請求項4】
前記第2のビームフォーマを制御するために前記第2のビームフォーマに接続された第2のモード制御装置をさらに備える、請求項2に記載の補聴システム。
【請求項5】
前記第1の方向における前記第1の一次空間特性の利得と前記第1の方向における前記第2の一次空間特性の利得との差が、3dBよりも大きい、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項6】
前記第2の方向における前記第2の一次空間特性の利得と前記第2の方向における前記第1の一次空間特性の利得との差が、3dBよりも大きい、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項7】
前記第1のビームフォーマは、前記第2の電気入力信号に基づいて前記第1の音声信号を生成するために前記第2のセットのマイクロフォンの中のマイクロフォンに接続される、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項8】
前記第2のビームフォーマは、前記1つまたは複数の第1の電気入力信号に基づいて前記第2の音声信号を生成するために前記第1のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォンに接続される、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項9】
前記第1の方向と前記第2の方向との間の角度が、160度〜200度の間のいずれかである、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項10】
前記第1の方向が、0方向の±20度の範囲内である、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項11】
前記第2の方向が、180方向の±60度の範囲内である、請求項1に記載の補聴システム。
【請求項12】
第1の補聴器および第2の補聴器を備える補聴システムで音声出力を生成するための方法であって、
前記補聴システムの第1の動作モードで第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するステップと、
前記補聴システムの前記第1の動作モードで第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するステップと、
前記第1の音声信号に基づいて第1の出力信号を生成するステップと、
前記第2の音声信号に基づいて第2の出力信号を生成するステップと、
前記第1の出力信号に基づいて第1の音声出力を生成するステップと、
前記第2の出力信号に基づいて第2の音声出力を生成するステップと
を含み、
前記第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、
前記第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、
前記第2の方向は、前記第1の方向とは異なる、指向性空間特性を利用して改善された無指向性感知を提供する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補聴器でビーム形成を行うための、および特に両耳用補聴システムでビーム形成を行うための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の補聴器の最も重要な課題の1つは、ノイズの存在下で音声了解度を改善することである。そのために、ビーム形成、特に適応ビーム形成が、干渉ノイズを抑制するために広く利用されている。従来、補聴器のユーザは、補聴器の指向性モードと無指向性モードとの間で切替えを行うことが可能である(例えばユーザは、特定の環境で直面する聴取条件に応じてデバイスを好ましいモードに設定するために、単純に補聴器上のトグルスイッチを切り替えるかまたはボタンを押すことによって処理モードを変更する)。最近では、指向性モードと無指向性モードとの間で自動的に切替えを行う手段までもが、補聴器で採用されている。
【0003】
補聴器では、比較的静かな聴取状況の場合には、ユーザの無指向性感知が指向性モードよりもむしろ好まれる場合がある。なぜならば、存在するバックグラウンドノイズの振幅がかなり低い状況では、無指向性モードは、周囲環境内の全範囲の音に対してより多くアクセスできるようにするはずであり、環境とのより高い「つながり」感、すなわち外界とつながっているという感覚をもたらそうとするものであるからである。信号源が聴者の側方または背後に位置する場合には、無指向性処理が一般的に好まれることが予想され得る。さらに、無指向性感知は、現時点で聴者が直面していない音源に、より多くアクセスできるようにすることにより、これらの位置から到来する音声信号の認識を改善することができる(例えばレストランで給仕人が聴者の背後または側方から話しかける場合など)。聴者の前方以外の位置から到来する目標信号に対する無指向性感知のこの利点は、静かな聴取状況にも騒々しい聴取状況にもあることになる。
【0004】
バイノーラルビーム形成が当該技術分野で知られている。現在では、殆どのビームフォーマは、可能な限り最良の信号対雑音比を実現するために、2つの補聴器からの多数の信号を処理するように設計される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補聴器のユーザのために無指向性感知を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の補聴器および第2の補聴器を備える補聴システムが開示される。第1の補聴器は、1つまたは複数の第1の電気入力信号を生成するための第1のセットのマイクロフォンと、第1の音声信号を生成するために第1のセットのマイクロフォンに接続された第1のビームフォーマと、第1の出力信号を生成するための第1の処理モジュールと、第1の音声出力を生成するための第1のレシーバとを備える。第2の補聴器は、1つまたは複数の第2の電気入力信号を生成するための第2のセットのマイクロフォンと、第2の音声信号を生成するために第2のセットのマイクロフォンに接続された第2のビームフォーマと、第2の出力信号を生成するための第2の処理モジュールと、第2の音声出力を生成するための第2のレシーバとを備える。第1のビームフォーマは、補聴システムの第1の動作モードで第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するように構成され、第2のビームフォーマは、補聴システムの第1の動作モードで第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するように構成され、第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有する。第2の方向は、第1の方向とは異なり得る。
【0007】
また、第1の補聴器および第2の補聴器を備える補聴システムで音声
出力を生成するための方法が開示される。この方法は、補聴システムの第1の動作モードで第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するステップと、補聴システムの第1の動作モードで第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するステップと、第1の音声信号に基づいて第1の出力信号を生成するステップと、第2の音声信号に基づいて第2の出力信号を生成するステップと、第1の出力信号に基づいて第1の音声出力を生成するステップと、第2の出力信号に基づいて第2の音声出力を生成するステップとを含む。第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、第2の方向は、第1の方向とは異なり得る。
【0008】
本明細書で開示される1つまたは複数の実施形態の利点は、改善された無指向性感知が提供される点である。本開示は、ユーザの聴覚システムに依存する。
【0009】
さらに、本明細書で説明される1つまたは複数の実施形態は、指向性空間特性を利用して改善された無指向性感知を提供することにより、補聴システムの無指向性動作モードでの処理を単純化する。
【0010】
補聴システムが、1つまたは複数の第1の電気入力信号を生成するための第1のセットのマイクロフォン、第1の音声信号を生成するために第1のセットのマイクロフォンに接続された第1のビームフォーマ、第1の出力信号を生成するための第1の処理モジュール、および第1の音声出力を生成するための第1のレシーバを備える第1の補聴器と、1つまたは複数の第2の電気入力信号を生成するための第2のセットのマイクロフォン、第2の音声信号を生成するために第2のセットのマイクロフォンに接続された第2のビームフォーマ、第2の出力信号を生成するための第2の処理モジュール、および第2の音声出力を生成するための第2のレシーバを備える第2の補聴器とを備え、補聴システムの第1の動作モードにおける第1のビームフォーマは、第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するように構成され、補聴システムの第1の動作モードにおける第2のビームフォーマは、第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するように構成され、第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、第2の方向は、第1の方向とは異なる。
【0011】
任意選択で、補聴システムは、第1のビームフォーマを制御するために第1のビームフォーマに接続された第1のモード制御装置をさらに備える。
【0012】
任意選択で、第1のモード制御装置は、第2のビームフォーマを制御するために第2のビームフォーマに接続される。
【0013】
任意選択で、補聴システムは、第2のビームフォーマを制御するために第2のビームフォーマに接続された第2のモード制御装置をさらに備える。
【0014】
任意選択で、第1の方向における第1の一次空間特性の利得と第1の方向における第2の一次空間特性の利得との差が、3dBよりも大きい。
【0015】
任意選択で、第2の方向における第2の一次空間特性の利得と第2の方向における第1の一次空間特性の利得との差が、3dBよりも大きい。
【0016】
任意選択で、第1のビームフォーマは、1つまたは複数の第2の電気入力信号に基づいて第1の音声信号を生成するために第2のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォンに接続される。
【0017】
任意選択で、第2のビームフォーマは、1つまたは複数の第1の電気入力信号に基づいて第2の音声信号を生成するために第1のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォンに接続される。
【0018】
任意選択で、第1の方向と第2の方向との間の角度が、160度〜200度の間のいずれかである。
【0019】
任意選択で、第1の方向は、0方向の±20度の範囲内である。
【0020】
任意選択で、第2の方向は、180方向の±60度の範囲内である。
【0021】
第1の補聴器および第2の補聴器を備える補聴システムで音声信号を生成するための方法が、補聴システムの第1の動作モードで第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するステップと、補聴システムの第1の動作モードで第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するステップと、第1の音声信号に基づいて第1の出力信号を生成するステップと、第2の音声信号に基づいて第2の出力信号を生成するステップと、第1の出力信号に基づいて第1の音声出力を生成するステップと、第2の出力信号に基づいて第2の音声出力を生成するステップと、を含み、第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、第2の方向は、第1の方向とは異なる。
【0022】
他の、およびさらなる態様および特徴が、以下の詳細な説明を読めば明らかになろう。
【0023】
添付の図面を参照して、本発明の例示の実施形態の以下の詳細な説明により、本発明の上記のおよび他の特徴および利点が当業者には容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、例示の補聴システムの概略図である。
【
図2】
図2は、例示の補聴システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して様々な実施形態を説明する。同様の符号は、全体にわたって同様の要素を指す。したがって、同様の要素は、各図の説明に関連して詳細には説明しない。また、これらの図面は実施形態の説明を容易にするためのものにすぎないことに留意されたい。図面は、特許請求の範囲に記載された発明の包括的な説明として、または特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではない。さらに、例示する実施形態は、図示する全ての特徴または利点を有する必要はない。特定の実施形態との組合せで説明される特徴または利点は、その実施形態に必ずしも限定されるわけではなく、例示されない場合でも明示されない場合でも任意の他の実施形態において実施可能である。
【0026】
全体を通じて、同一の符号は、同一または対応する部分に対して使用される。
【0027】
本明細書では、第1の補聴器および第2の補聴器を備える補聴システムを開示する。
【0028】
第1の補聴器は、1つまたは複数の第1の電気入力信号を生成するための第1のセットのマイクロフォンを備える。第1のセットのマイクロフォンは、第1の一次マイクロフォン、任意選択で第1の二次マイクロフォン、および任意選択で第1の三次マイクロフォンなど、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の第1のマイクロフォンを備えてもよい。第1の補聴器は、例えば第1のセットのマイクロフォンからの1つまたは複数の第1の電気入力信号に基づいて第1の音声信号を生成するために、このセットの第1のマイクロフォンまたは少なくともそのサブセットに接続された第1のビームフォーマを備える。第1の音声信号は、第1の一次マイクロフォンからの第1の一次入力信号および/または第1の二次マイクロフォンからの第1の二次入力信号に基づくものであってもよい。
【0029】
第1の補聴器は、例えば第1のビームフォーマからの第1の音声信号に基づいて第1の出力信号を生成するための第1の処理モジュールを備える。第1の補聴器は、例えば第1の出力信号を第1の音声出力に変換することによって第1の音声出力を生成するための第1のレシーバまたは第1のレシーバモジュールを備える。
【0030】
第2の補聴器は、1つまたは複数の第2の電気入力信号を生成するための第2のセットのマイクロフォンを備える。第2のセットのマイクロフォンは、第2の一次マイクロフォン、任意選択で第2の二次マイクロフォン、および任意選択で第2の三次マイクロフォンなど、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の第2のマイクロフォンを備えてもよい。第2の補聴器は、例えば第2のセットのマイクロフォンからの1つまたは複数の第2の電気入力信号に基づいて第2の音声信号を生成するために、第2のセットのマイクロフォンまたは少なくともそのサブセットに接続された第2のビームフォーマを備える。第2の音声信号は、第2の一次マイクロフォンからの第2の一次入力信号および/または第2の二次マイクロフォンからの第2の二次入力信号に基づくものであってもよい。
【0031】
第2の補聴器は、例えば第2のビームフォーマからの第2の音声信号に基づいて第2の出力信号を生成するための第2の処理モジュールを備える。第2の補聴器は、例えば第2の出力信号を第2の音声出力に変換することによって第2の音声出力を生成するための第2のレシーバまたは第2のレシーバモジュールを備える。
【0032】
この補聴システムは、例えば第1の動作モードを含む1つまたは複数の動作モードで動作するように構成されてもよい。動作モードは、補聴システムの種々の要素または部分の動作パラメータまたは制御パラメータを設定または規定する。補聴システムは、補聴システムの要素または部分に対する動作パラメータまたは制御パラメータを制御および/または決定するための1つまたは複数のモード制御装置を備えてもよい。
【0033】
空間特性は、信号の方向、および任意選択で周波数に基づいて信号に適用される利得および/または位相を規定する。0方向の空間特性は、本文脈では補聴システムのユーザの視方向または前方向として定義される。空間特性のメインローブは、最大利得方向の周囲の領域となる。また、最大利得方向は、メインローブ方向とも呼ばれる。
【0034】
ビームフォーマは、例えばマイクロフォンからの電気入力信号に基づいて空間特性に従って電気音声信号を生成するように構成される。換言すれば、ビームフォーマは、空間特性に従って第1の音声信号を生成するために電気入力信号を組み合わせるように構成される。
【0035】
第1のビームフォーマは、補聴システムの第1の動作モードにおいて、第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するように構成されてもよい。第2のビームフォーマは、補聴システムの第1の動作モードにおいて、第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するように構成されてもよい。
【0036】
したがって、第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有する。
【0037】
第2の方向は、第1の方向とは異なる。第1の方向と第2の方向との間の角度は、60度超であってもよい。第1の方向と第2の方向との間の角度は、例えば実質的に逆となる第1の一次空間特性および第2の一次空間特性を提供するために、160度〜200度の範囲内であってもよい。
【0038】
第1の方向は、前方向であってもよく、例えば0方向の±45度の範囲内であってもよい。例示の補聴システムでは、第1の方向は、0方向の±20度の範囲内である。
【0039】
第2の方向は、後方向であってもよく、例えば180方向の±60度の範囲内、180方向の±45度の範囲内であってもよい。例示の補聴システムでは、第2の方向は、180方向の±20度の範囲内である。
【0040】
この補聴システム、例えば第1の補聴器は、第1のビームフォーマの動作モードを制御するために第1のビームフォーマに接続された第1のモード制御装置を備えてもよい。第1のモード制御装置は、第2のビームフォーマの動作モードを制御するために第2のビームフォーマに接続され得る。第1のモード制御装置と第2のモード制御装置との接続は、無線または有線であってもよい。
【0041】
補聴システムは、第2のビームフォーマの動作モードを制御するために第2のビームフォーマに接続された第2のモード制御装置を備えてもよい。第1のモード制御装置は、第2のモード制御装置に接続され得る。
【0042】
補聴システムのある動作モードで第1のビームフォーマにより適用される第1の空間特性は、その動作モードでの第2の空間特性の第2の方向において、第2の方向における第2の一次空間特性の利得よりも低い利得を有することができる。
【0043】
補聴システムのある動作モードで第2のビームフォーマにより適用される第2の空間特性は、その動作モードでの第1の空間特性の第1の方向において、第1の方向における第1の一次空間特性の利得よりも低い利得を有することができる。
【0044】
例えば、第1の方向における第1の一次空間特性の利得と第1の方向における第2の一次空間特性の利得との間の差は、3dB超など、第1のしきい値よりも大きいものとなり得る。
【0045】
第2の方向における第2の一次空間特性の利得と第2の方向における第1の一次空間特性の利得との間の差は、3dB超など、第2のしきい値よりも大きいものとなり得る。
【0046】
第1のビームフォーマは、1つまたは複数の第2の電気入力信号に基づいて第1の音声信号を生成するために、第2のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォンに接続され得る。この接続は、無線接続であってもよい。
【0047】
第2のビームフォーマは、1つまたは複数の第1の電気入力信号に基づいて第2の音声信号を生成するために、第1のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォンに接続され得る。この接続は、無線接続であってもよい。
【0048】
図1は、例示の補聴システムを概略的に示す。この補聴システム2は、第1の補聴器4および第2の補聴器6を備える。第1の補聴器4は、1つまたは複数の第1の電気入力信号12、14を生成するための第1のセットのマイクロフォン8、10と、第1の音声信号18を生成するために第1のセットのマイクロフォン8、10に接続された第1のビームフォーマ16と、第1の出力信号22を生成するための第1の処理モジュール20と、第1の音声出力26を生成するための第1のレシーバ24とを備える。第2の補聴器6は、1つまたは複数の第2の電気入力信号44、46を生成するための第2のセットのマイクロフォン40、42と、第2の音声信号50を生成するために第2のセットのマイクロフォン40、42に接続された第2のビームフォーマ48と、第2の出力信号54を生成するための第2の処理モジュール52と、第2の音声出力58を生成するための第2のレシーバ56とを備える。
【0049】
補聴システムの第1の動作モードでは、第1のビームフォーマ16は、第1の一次空間特性に従って第1の音声信号18を生成するように構成され、第2のビームフォーマ48は、第2の一次空間特性に従って第2の音声信号50を生成するように構成される。第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、第2の方向は、第1の方向とは異なる。
【0050】
任意選択で、補聴システム2は、第1のビームフォーマ16および/または第2のビームフォーマ48に接続された第1のモード制御装置60を備える。第1のモード制御装置60は、第1の補聴器4内に配置され、第1のビームフォーマ16および/または第2のビームフォーマ48の動作モードを制御する。ビームフォーマの動作モードは、そのビームフォーマにより適用されることになる空間特性を規定する。
【0051】
図2は、例示の補聴システムを概略的に示す。任意選択で、この補聴システム2’は、第2のビームフォーマ48の動作モードを制御するために第2のビームフォーマ48に接続された第2のモード制御装置62を備える。第2のモード制御装置62は、第2の補聴器6内に配置され、第1のモード制御装置60と例えば無線で通信するように構成される。さらに、第1のビームフォーマ16は、第2の電気入力信号44、46またはその代わりとなるものの中の1つまたは複数に基づいて第1の音声信号を生成するために、第2のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォン40、42に無線で接続される。任意選択で、第2のビームフォーマ48は、第1の電気入力信号12、14またはその代わりとなるものの中の1つまたは複数に基づいて第2の音声信号を生成するために、第1のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォン8、10に有線または無線で接続される。様々な補聴器のマイクロフォンに接続されたビームフォーマは、そのビームフォーマに適用される空間特性のより高い設計自由度を可能にし得る。
【0052】
図3および
図4は、補聴システムの第1の動作モードにおいて第1のビームフォーマおよび第2のビームフォーマのそれぞれにより適用される例示の空間特性を示す。
図3は、第1のビームフォーマにより適用される例示の第1の一次空間特性28を示し、第1の一次空間特性28は、0方向において第1の方向(点線矢印)32を有する第1のメインローブ30を有する。
図4は、第2のビームフォーマにより適用される例示の第2の一次空間特性34を示し、第2の一次空間特性34は、180方向において第2の方向(点線矢印)38を有する第2のメインローブ36を有する。第1の方向32および第2の方向38は、逆であり、すなわち180度の角度を有する。
【0053】
第1の方向における第1の一次空間特性28の利得G
1,0と第1の方向における第2の一次空間特性の利得G
2,0との差は、第1のしきい値である3dBよりも大きい。
【0054】
第2の方向における第2の一次空間特性の利得G
2,180と第2の方向(ここでは180方向に対応する)における第1の一次空間特性の利得G
1,180との差は、第2のしきい値である3dBよりも大きい。
【0055】
図5は、第1の補聴器および第2の補聴器を備える補聴システムで音声
出力を生成するための例示の方法のフロー図である。方法100は、補聴システムの第1の動作モードで第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を例えば第1のビームフォーマ16で生成するステップ(102)と、補聴システムの第1の動作モードで第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を例えば第2のビームフォーマ48で生成するステップ(104)とを含む。さらに、この方法は、第1の音声信号に基づいて第1の出力信号を生成するステップ(106)を含む。第1の出力信号を生成するステップは、ユーザの聴力損失を補償するステップを含み得る。この方法は、第2の音声信号に基づいて第2の出力信号を生成するステップ(108)を含む。第2の出力信号を生成するステップは、ユーザの聴力損失を補償するステップを含み得る。この方法は、第1の出力信号に基づいて第1の音声出力を生成するステップ(110)と、第2の出力信号に基づいて第2の音声出力を生成するステップ(112)とを含む。第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、第2の方向は、第1の方向とは異なる。
【0056】
以下の項目は、本明細書で説明される1つまたは複数の実施形態によるものである。
【0057】
項目1.(1)1つまたは複数の第1の電気入力信号を生成するための第1のセットのマイクロフォンと、第1の音声信号を生成するために第1のセットのマイクロフォンに接続された第1のビームフォーマと、第1の出力信号を生成するための第1の処理モジュールと、第1の音声出力を生成するための第1のレシーバと、を備える第1の補聴器と、(2)1つまたは複数の第2の電気入力信号を生成するための第2のセットのマイクロフォンと、第2の音声信号を生成するために第2のセットのマイクロフォンに接続された第2のビームフォーマと、第2の出力信号を生成するための第2の処理モジュールと、第2の音声出力を生成するための第2のレシーバと、を備える第2の補聴器と、を備え、補聴システムの第1の動作モードにおける第1のビームフォーマは、第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するように構成され、補聴システムの第1の動作モードにおける第2のビームフォーマは、第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するように構成され、第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、第2の方向は、第1の方向とは異なる、補聴システム。
【0058】
項目2.第1のビームフォーマを制御するために第1のビームフォーマに接続された第1のモード制御装置を備える、項目1に記載の補聴システム。
【0059】
項目3.第1のモード制御装置が、第2のビームフォーマを制御するために第2のビームフォーマに接続される、項目2に記載の補聴システム。
【0060】
項目4.第2のビームフォーマを制御するために第2のビームフォーマに接続された第2のモード制御装置を備える、項目1または2に記載の補聴システム。
【0061】
項目5.第1の方向における第1の一次空間特性の利得と第1の方向における第2の一次空間特性の利得との差が、3dB超など、第1のしきい値よりも大きい、項目1から項目4のいずれか一項に記載の補聴システム。
【0062】
項目6.第2の方向における第2の一次空間特性の利得と第2の方向における第1の一次空間特性の利得との差が、3dB超など、第2のしきい値よりも大きい、項目1から項目5のいずれか一項に記載の補聴システム。
【0063】
項目7.第1のビームフォーマは、1つまたは複数の第2の電気入力信号に基づいて第1の音声信号を生成するために第2のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォンに接続される、項目1から項目6のいずれか一項に記載の補聴システム。
【0064】
項目8.第2のビームフォーマは、1つまたは複数の第1の電気入力信号に基づいて第2の音声信号を生成するために第1のセットのマイクロフォンの中の1つまたは複数のマイクロフォンに接続される、項目1から項目7のいずれか一項に記載の補聴システム。
【0065】
項目9.第1の方向と第2の方向との間の角度が160度〜200度の範囲内である、項目1から項目8のいずれか一項に記載の補聴システム。
【0066】
項目10.第1の方向が0方向の±20度の範囲内である、項目1から項目9のいずれか一項に記載の補聴システム。
【0067】
項目11.第2の方向が180方向の±60度の範囲内である、項目1から項目10のいずれか一項に記載の補聴システム。
【0068】
項目12.第1の補聴器および第2の補聴器を備える補聴システムで音声
出力を生成するための方法であって、補聴システムの第1の動作モードで第1の一次空間特性に従って第1の音声信号を生成するステップと、補聴システムの第1の動作モードで第2の一次空間特性に従って第2の音声信号を生成するステップと、第1の音声信号に基づいて第1の出力信号を生成するステップと、第2の音声信号に基づいて第2の出力信号を生成するステップと、第1の出力信号に基づいて第1の音声出力を生成するステップと、第2の出力信号に基づいて第2の音声出力を生成するステップとを含み、第1の一次空間特性は、第1の方向を有する第1のメインローブを有し、第2の一次空間特性は、第2の方向を有する第2のメインローブを有し、第2の方向は、第1の方向とは異なる、方法。
【0069】
特定の特徴を示し説明したが、それらは特許請求の範囲に記載された発明を限定するためのものではないことが理解されよう。また、特許請求の範囲に記載された発明の主旨および範囲から逸脱することなく様々な変更および修正がなされ得ることが、当業者に自明となろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示として見なされるべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、あらゆる代替形態、修正形態、および均等形態を範囲に含むように意図される。
【符号の説明】
【0070】
2: 補聴システム
4: 第1の補聴器
6: 第2の補聴器
8: 第1の一次マイクロフォン
10: 第1の二次マイクロフォン
12: 第1の一次入力信号
14: 第1の二次入力信号
16: 第1のビームフォーマ
18: 第1の音声信号
20: 第1の処理モジュール
22: 第1の出力信号
24: 第1のレシーバ
26: 第1の音声出力
28: 第1の一次空間特性
30: 第1のメインローブ
32: 第1の方向
34: 第2の一次空間特性
36: 第2のメインローブ
38: 第2の方向
40: 第2の一次マイクロフォン
42: 第2の二次マイクロフォン
44: 第2の一次入力信号
46: 第2の二次入力信号
48: 第2のビームフォーマ
50: 第2の音声信号
52: 第2の処理モジュール
54: 第2の出力信号
56: 第2のレシーバ
58: 第2の音声出力
60: 第1のモード制御装置
62: 第2のモード制御装置
100: 補聴システムで音声信号を生成する方法
102: 第1の音声信号を生成するステップ
104: 第2の音声信号を生成するステップ
106: 第1の出力信号を生成するステップ
108: 第2の出力信号を生成するステップ
110: 第1の音声出力を生成するステップ
112: 第2の音声出力を生成するステップ