【実施例1】
【0020】
図5〜8において、符号10は本発明の漏出防止弁と組み合わせて用いるマイクロダイヤフラムポンプの一例である。このマイクロポンプ10のポンプケース12には、ポンプ流体の吸入路14と吐出路16とが水平に形成され、吸入路14は一側(左側)に、吐出路16が他側(右側)に開口している。ポンプケース12の上面には、上方に向かって開口するダイヤフラム収容部18が形成され、ここにダイヤフラム20が上から装填され、その下方にポンプ室22を画成したものである。そしてこのポンプ室22には前記ポンプ側吸入路14と吐出路16とがそれぞれ逆止弁24、26を介して接続されている。
【0021】
ダイヤフラム20は、例えば厚さ0.05mmのステンレス薄板である。このダイヤフラム20の上面にはシート状の駆動素子28、例えば圧電素子であるPZTが接着シートによって貼着される。この駆動素子28には図示しない駆動回路によってパルス状の駆動電流が供給され、ダイヤフラム20を
図6、7に示すように、鼓状(ドラム状)に振動させる。
【0022】
このマイクロポンプ10の使用時(作動時)には、吸入路14には図示しない流体供給装置から所定圧(ポンプ吸入圧P1)で流体が供給される。そしてダイヤフラム20が
図7に示すように上方に湾曲すると、ポンプ室22の容積が増大し減圧される。このため流体は吸入路14から逆止弁24を通ってこのポンプ室22に流入する。またダイヤフラム20が
図6に示すように下方に湾曲すると、反対にこのポンプ室22の内圧が上昇し流体は逆止弁26を通って吐出路16に流出する。このようにダイヤフラム20の上下動により流体は吸入路14から吐出路16に脈動を伴って吐出される。
【0023】
これらの
図5〜8では、このマイクロポンプ10の吸入路14は、ポンプケース12内で吐出路16の下方を通ってポンプケース12の右側に導かれているが、これは後記する漏出防止弁40にポンプ流入圧P1を導くためであり、これらの
図5〜8では、便宜上これらの吸入路14と吐出路16とを上下に並べて示したものである。実際には
図1に示す弁ケース42の図から解るように、これらの通路14、16はポンプケース12に水平方向に平行に形成され、下弁ケース42Aの一側面(
図1の左側)に形成された流体吸入口14A、流体吐出口16Aにそれぞれ着脱可能に接続されている。
【0024】
次に本発明の実施例である漏出防止弁40を説明する。この漏出防止弁40は、
図5〜8に示すように、マイクロポンプ10に接続して用いるものであり、
図1に示すように弁ケース42を構成する下弁ケース42Aと上弁ケース42Bとを上下に重ね、これらの割り面(合わせ面)44の間に弁体となる伸縮性のゴム膜46を挟持したものである。ここにゴム膜46は
図2に示すように、薄い円形の膜面(ダイヤフラム部)46Bの周縁を肉厚部46Aとしたものであり、この肉厚部46Aは公知のOリング状である。この肉厚部すなわちOリング状部46Bは、前記下弁ケース42Aと上弁ケース42Bとの割り面44間に挟持される。
【0025】
下弁ケース42Aには、前記マイクロポンプ10側のポンプ流入圧P1が供給されるポンプ流入圧室48が略碗状に形成されている。すなわちこのポンプ流入圧室48の底は、前記ポンプ10側の流体吸入口14Aに連通し、上面は前記割り面44に開口している。この開口を囲む環状溝50に前記ゴム膜46のOリング状部46Aを装填して上弁ケース42Bを被せて固定するものである。ここに環状溝50は、
図3、5〜8などに示すように、外周側に位置するOリング状部46Aの収納部50Aと、この内周側に連続して収納部50Aより深い凹部50Bとを持つ。
【0026】
上弁ケース42Bには、下弁ケース42A側の環状溝50の凹部50Bに上から係入する環状凸部52が形成されている。この環状凸部52の外周面52Aは割り面44に対してほぼ垂直であり、ここに前記Oリング状部46Aが係止可能である。このため、ゴム膜46はこのOリング状部46Aをこの外周面52Aに掛けて上弁ケース42Bの割り面44に保持し、この状態で上弁ケース42Bを下弁ケース42Aに重ねて固定し、
図4の状態にすることができる。また環状凸部52は、膜面46Bを伸ばすことになり、膜面46Bに適切な張りテンションを付与することができる。
【0027】
この上弁ケース42Bには、ゴム膜46(すなわち膜面46B)の中央付近に向かって突出する弁座54が突設されている。この弁座54はゴム膜46と共に開閉弁を形成する。ここにこの弁座54がゴム膜46に接触する弁座面は、割り面44に保持した状態のゴム膜46よりも僅かにポンプ吸入圧室48側に進入している。この進入量により弁座54とゴム膜46との接触圧が変化するから、漏出防止弁40の許容漏出量を少なくするためには、ゴム膜46の張りテンションとこの進入量とを増やすようにして適切に設定することにより可能である。
【0028】
上弁ケース42Bにはまた、ポンプ側吐出路16と弁座54とを連通する弁側流入路56と、この弁座54の外周側からゴム膜46に向かって開口する弁側流出路58とが形成されている。マイクロポンプ10側から入った流体は、弁側流入路56からこの弁座54を通って弁側流出路58を通り、外に吐出される。
【0029】
次にこの実施例の動作を説明する。マイクロポンプ10の不作動時には、
図5に示すように、ポンプ側吸入路14には外部から流入圧P1が加わっていないので、ダイヤフラム20は静止し、従って逆止弁24、26は閉じている。一方漏出防止弁40のゴム膜46は、ゴム膜46と弁座54との接触圧によりしっかりと閉じている。すなわちこの接触圧は、ゴム膜46に付与した張力(プリテンション、ゴム膜46自身に予め付与された張力)と弁座54の突出量とにより決まるため、この接触圧を適切に設定することにより弁座54をしっかりと閉じることができ、流体は弁側流出路58に漏出することは無い。
【0030】
マイクロポンプ10の作動時には、ポンプ側吸入路14には流入圧P1に加圧された流体が供給されている。この時にダイヤフラム20が駆動素子28により
図7に示すように上に変位されればポンプ室22が負圧になり、逆止弁24が開いて流体はポンプ側の吸入路14からポンプ室22に流入する(吸入工程)。この状態では流体は漏出防止弁40側に流れないので、漏出防止弁40のゴム膜46の下面に加わる流入圧P1によって、弁40は閉じたままである。
【0031】
ダイヤフラム20が
図6に示すように下に変位すれば、ポンプ室22が正圧になり、逆止弁24が閉じ、逆止弁26が開いて流体はポンプ側吐出路16に流出し、さらに弁40の弁側流入路56に流入する(吐出工程)。この吐出圧がゴム膜46の下面に加わる流入圧P1により閉じられたゴム膜46を押し開くと、弁40が開き、流体は弁側流出路58に流出する。以上の動作を繰り返すことにより流体は弁側流出路58に流出する。
【0032】
またマイクロポンプ10のダイヤフラム20が駆動されずに所定の流入圧P1の流体圧が吸入路14に加わっているときには、
図8に示すように、この流入圧P1によってポンプ10の逆止弁24、26が共に押し開かれ、ポンプ側吐出路16を通って弁40側に流れる。この時ゴム膜46の下面には流入圧P1が加わり上面には弁側流出路58の圧力P2
(
図8)が加わるから、両者が(P1>P2)の時にはこの差圧により弁40は開かない。しかしゴム膜46と弁座54の接触圧が大きければ、圧力P1とP2が同じ(P1=P2)であっても弁40は確実に閉状態を維持することができる。このため流体の漏洩が確実に防止される。なおこの時の接触圧は、
図6、7に示した通常の動作時に障害とならない程度に適切に設定しておくのは勿論である。