(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643857
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
F16J15/10 A
F16J15/10 B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-200130(P2015-200130)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-80167(P2016-80167A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-211816(P2014-211816)
(32)【優先日】2014年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143307
【氏名又は名称】株式会社荒井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(74)【代理人】
【識別番号】100115314
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】前野 房枝
(72)【発明者】
【氏名】財津 勝志郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 貴司
(72)【発明者】
【氏名】住本 晋一
(72)【発明者】
【氏名】但木 郁夫
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−009395(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/007937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する2部材のうちの少なくとも一方の部材に設けられた装着溝に装着され、2部材間の隙間を密封するゴム様弾性体により形成されたガスケットであって、
前記装着溝の深さより高く、前記装着溝の溝幅よりも幅狭とされるとともに、前記装着溝の全長に亘って装着されるガスケット本体と、
前記装着溝に装着した前記ガスケット本体が前記装着溝から脱落するのを防止するために、前記ガスケット本体の幅方向両側にそれぞれ突設された脱落防止用突起部と、
前記装着溝に前記ガスケット本体を装着する装着時に、前記ガスケット本体が倒れるように形状変化するのを防止するために、前記ガスケット本体の幅方向両側にそれぞれ突設された倒れ防止用突起部と、を有しており、
前記ガスケット本体は、前記装着溝内に配置される前記装着溝の溝底と密接可能とされた第1シール面を具備する全体として断面矩形状に形成された基部と、この基部の前記装着溝の開口側に位置する上面に配置される前記2部材のうちの他方の部材に密接可能とされた第2シール面を具備する前記基部の幅よりも幅狭とされた先端部とを有しており、
前記脱落防止用突起部は、前記第1シール面の幅方向両側から前記上面までの間に前記装着溝の側壁に向かって幅が広くなるように傾斜して延びるように、前記基部の幅方向両側にそれぞれ突設されており、その先端が前記装着溝の側壁に締め代をもって当接可能に形成されているとともに、装着状態において前記先端が前記装着溝の前記側壁に当接して前記装着溝から抜ける方向に対して大きな抵抗を持つように釣り針の返しの如く弾性変形するように形成されており、
前記倒れ防止用突起部は、前記基部の上面から前記装着溝内において前記装着溝の深さ方向に沿って他方の部材側に向かって延びるように、前記先端部の幅方向両側にそれぞれ突設されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部は、前記ガスケット本体に個別またはセットで設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットは、前記脱落防止用突起部の直上に位置する先端部に前記倒れ防止用突起部を配置することにより形成されていることを特徴とする請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記脱落防止用突起部の個別のものと、前記倒れ防止用突起部の個別のものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられていることを特徴とする請求項2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記脱落防止用突起部の個別のものおよび前記倒れ防止用突起部の個別のものは、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって交互に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものが、前記装着溝の長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガスケット。
【請求項7】
前記脱落防止用突起部の個別のものと、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガスケット。
【請求項8】
前記倒れ防止用突起部の個別のものと記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガスケット。
【請求項9】
前記脱落防止用突起部の個別のものと、前記倒れ防止用突起部の個別のものと、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する2部材間の隙間を密封するゴム様弾性体により形成されたガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する2部材間の隙間をゴム様弾性体により形成されたガスケットによって密封するには、ハウジングなどの一方の部材にガスケットを装着するための装着溝を形成して、この装着溝にガスケットを装着し、装着溝の溝底とカバー部材などの他方の部材の表面の間で装着溝の深さ方向に沿って押し潰して密着させることにより密封している。
【0003】
このようなガスケットを装着する装着溝は、装着溝の深さ方向に沿ったガスケットの潰しによって、ガスケットが装着溝の内部に充満しないように設計されている。そのため、ガスケットを装着溝に装着した状態では、ガスケットは装着溝内に保持されることはなく、ハウジングを傾けたり、逆さまにしたりすると、ガスケットが装着溝から脱落してしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、ガスケットの幅方向の少なくとも一端に、装着時において装着溝の側壁に当接する突起部を設けることにより装着溝からガスケットが脱落するのを防止することのできるガスケットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−329400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年においては各種装置の高性能化が求められており、各種装置の高性能化の一つとして、装着溝への装着性の向上、装着溝からの脱落防止性の向上が求められている。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、装着性および脱落防止性の向上を容易に図ることのできるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明のガスケットは、相対向する2部材のうちの少なくとも一方の部材に設けられた装着溝に装着され、2部材間の隙間を密封するゴム様弾性体により形成されたガスケットであって、前記装着溝の深さより高く、前記装着溝の溝幅よりも幅狭とされるとともに、前記装着溝の全長に亘って装着されるガスケット本体と、前記装着溝に装着した前記ガスケット本体が前記装着溝から脱落するのを防止するために、前記ガスケット本体の幅方向両側にそれぞれ突設された脱落防止用突起部と、前記装着溝に前記ガスケット本体を装着する装着時に、前記ガスケット本体が倒れるように形状変化するのを防止するために、前記ガスケット本体の幅方向両側にそれぞれ突設された倒れ防止用突起部と、
を有しており、前記ガスケット本体は、前記装着溝内に配置される前記装着溝の溝底と密接可能とされた第1シール面を具備する全体として断面矩形状に形成された基部と、この基部の前記装着溝の開口側に位置する上面に配置される前記2部材のうちの他方の部材に密接可能とされた第2シール面を具備する前記基部の幅よりも幅狭とされた先端部とを有しており、前記脱落防止用突起部は、前記第1シール面の幅方向両側から前記上面までの間に前記装着溝の側壁に向かって幅が広くなるように傾斜して延びるように、前記基部の幅方向両側にそれぞれ突設されており、その先端が前記装着溝の側壁に締め代をもって当接可能に形成されているとともに、装着状態において前記先端が前記装着溝の前記側壁に当接して前記装着溝から抜ける方向に対して大きな抵抗を持つように釣り針の返しの如く弾性変形するように形成されており、前記倒れ防止用突起部は、前記基部の上面から前記装着溝内において前記装着溝の深さ方向に沿って他方の部材側に向かって延びるように、前記先端部の幅方向両側にそれぞれ突設されていることを特徴とする。
【0009】
そして、このような構成を採用したことにより、脱落防止用突起部および倒れ防止用突起部は、ガスケットを装着溝に装着する装着時に、ガスケット本体の脱落とガスケット本体の倒れによる形状変形とをともに防止できるので、ガスケット本体を装着溝に確実に装着することができるし、ガスケット本体が装着溝から脱落するのを確実に防止することができる。これにより、装着溝への装着性の向上、装着溝からの脱落防止性の向上を確実に図ることができる。
さらに、脱落防止用突起部は、その先端が第1シール面の幅方向両側から前記上面までの間に装着溝の側壁に向かって幅が広くなるように傾斜して延びるように形成されているので、ガスケットを装着溝に挿入する作業を簡易にすることができるし、ガスケットを装着溝に装着した装着状態において、脱落防止用突起部の先端が装着溝の側壁に締め代をもって当接するように形成されているとともに、装着状態において前記先端が前記装着溝3の前記側壁3aに当接して前記装着溝3から抜ける方向に対して大きな抵抗を持つように釣り針の返しの如く弾性変形するように形成されているから、装着状態において先端が装着溝の側壁に当接して装着溝から抜ける方向に対して大きな抵抗を持つように弾性変形するので、釣り針の返しの如く作用して装着溝からより抜けにくくなり、一段と確実な脱落防止機能を発揮することができる。さらに、倒れ防止用突起部は、ガスケットを装着溝に装着する装着時に、装着溝の側壁に接触せず、しかも基部の装着溝の側壁と対向する側面の長さを長くして剛性を大きくするように作用するから、ガスケット本体が装着溝内で倒れるのを防止、すなわちガスケット本体の形状を確実に保持することができるので、ガスケットを装着溝に挿入する作業を簡易にすることができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部は、個別またはセットで設けられている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、脱落防止用突起部によるガスケット本体が装着溝から脱落するのを防止する脱落防止機能と、倒れ防止用突起部によるガスケット本体の倒れによる形状変形を防止する変形防止機能とを個別にまたはセットで発生させることができる。さらに、脱落防止用突起部および倒れ防止用突起部をセットで設けることにより、脱落防止用突起部および倒れ防止用突起を個別に設ける場合に比較して、ガスケットを装着溝に挿入する装着性を代えずに、脱落および形状変形の防止性能を容易に高くすることができる。
【0013】
さらにまた、本発明において、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットは、前記脱落防止用突起部の直上に位置する先端部に前記倒れ防止用突起部を配置することにより形成されている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部を容易かつ確実にセットとすることができるし、脱落防止用突起部がよりきつく装着溝に嵌まるので、よりさらに抜けにくくすることができる。
【0014】
また、本発明において、前記脱落防止用突起部の個別のものと、前記倒れ防止用突起部の個別のものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、脱落防止用突起部による弾性変形による反力を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができるとともに、倒れ防止用突起部による変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができる。したがって、装着溝への装着性の向上、装着溝からの脱落防止性の向上をより確実に図ることができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記脱落防止用突起部の個別のものおよび前記倒れ防止用突起部の個別のものは、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって交互に配置されている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、脱落防止用突起部による脱落防止機能と倒れ防止用突起部による倒れ防止機能とを装着溝の長手方向に沿ってバランスよく配置することができる。したがって、装着溝への装着性の向上、装着溝からの脱落防止性の向上をよりさらに確実に図ることができる。
【0016】
さらにまた、本発明において、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものが、前記装着溝の長手方向に沿って複数設けられている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、脱落防止用突起部による脱落防止機能と、倒れ防止用突起部による変形防止機能とを装着溝の長手方向に沿って複数箇所でセットで発生させることができるから、装着溝への装着性の向上、装着溝からの脱落防止性の向上をより確実に図ることができる。
【0017】
また、本発明において、前記脱落防止用突起部の個別のものと、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、個別の脱落防止用突起部により、脱落防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができるとともに、セットとされた脱落防止用突起部および倒れ防止用突起部による脱落防止機能および変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所でセットで発生させることができるから、装着溝の平面形状に対応させて脱落防止機能と変形防止機能とを確実に発揮することができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記倒れ防止用突起部の個別のものと前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、個別の倒れ防止用突起部により、変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができるとともに、セットとされた脱落防止用突起部および倒れ防止用突起部による脱落防止機能および変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所でセットで発生させることができるから、装着溝の平面形状に対応させて脱落防止機能と変形防止機能とを確実に発揮することができる。
【0019】
さらにまた、本発明において、前記脱落防止用突起部の個別のものと、前記倒れ防止用突起部の個別のものと、前記脱落防止用突起部および前記倒れ防止用突起部のセットのものとが、それぞれ前記装着溝の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって複数設けられている構成とすることができる。そして、このような構成を採用したことにより、個別の脱落防止用突起部により、脱落防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができるとともに、個別の倒れ防止用突起部により、変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができ、さらにセットとされた脱落防止用突起部および倒れ防止用突起部による脱落防止機能および変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所でセットで発生させることができるから、装着溝の平面形状に対応させて脱落防止機能と変形防止機能とをより確実に発揮することができる。また、脱落の防止性および形状変形の防止性のそれぞれについて性能の異なる2種類のものを設けることができるので、装着溝の平面形状に対する適応性の向上を容易に図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガスケットによれば、装着溝への装着性の向上、装着溝からの脱落防止性の向上をより確実に図ることができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るガスケットの第1実施形態を示す模式的平面図
【
図2】
図1のガスケット本体を示すもので、(a)は
図1のA−A線に沿った模式的拡大断面図、(b)は装着溝に装着した装着状態を示す模式的拡大断面図、(c)は2部材間の隙間を密封した密封状態を示す模式的拡大断面図
【
図3】
図1の脱落防止用突起部を示すもので、(a)は
図1のB−B線に沿った模式的拡大断面図、(b)は装着溝に装着した装着状態を示す模式的拡大断面図
【
図4】
図1の倒れ防止用突起部を示すもので、(a)は
図1のC−C線に沿った模式的拡大断面図、(b)は装着溝に装着した装着状態を示す模式的拡大断面図
【
図5】本発明に係るガスケットの第2実施形態の要部を示す模式的平面図
【
図6】
図5のガスケットの要部を示すもので、(a)は
図5の脱落兼倒れ防止用突起部の模式的拡大外観斜視図、(b)は
図5の脱落兼倒れ防止用突起部の模式的拡大正面図、(c)は
図5のD−D線に沿った模式的拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0023】
図1から
図5は、本発明に係るガスケットの第1実施形態を示すものである。本実施形態のガスケット1は、相対向する2部材のうちの一方の部材としてのハウジング2に設けられた環状の装着溝3に装着され、この装着溝3と、2部材のうちの他方の部材としてのカバー部材4の表面との間を密封するものである。
【0024】
本実施形態のガスケット1は、
図1に示すように、合成ゴム、熱可塑性エラストマなどのゴム弾性を呈するゴム様弾性体により、全体として平面略矩形枠状の環状に形成されており、環状のガスケット本体10と、脱落防止用突起部20と、倒れ防止用突起部30とを有している。また、脱落防止用突起部20および倒れ防止用突起部30のそれぞれは、ガスケット本体10に対して個別に設けられている。
【0025】
前記ガスケット本体10は、2部材間の隙間を密封するためのものであり、装着溝3の全長に亘って装着されるとともに、
図2に示すように、断面形状が装着溝3の深さより高く、装着溝3の溝幅よりも幅狭に形成されている。さらに、ガスケット本体10は、全体として断面矩形状に形成された環状の基部11と、この基部11のカバー部材4側に位置する上面に配置され、基部11の幅寸法に比べて小さい幅寸法とされた断面山形に形成された環状の先端部12とを有している。この先端部12の頂部は、断面が上方に凸の円弧状に形成されている。なお、ガスケット本体10の平面形状としては、装着溝3の平面形状に応じて設定されるものであり、環状とせずに、直線状、円弧状などの単に領域を区切る形状とすることもできる。
【0026】
前記基部11は、
図2(b)に示すガスケット1を装着溝3に装着した装着状態において装着溝3内に配置されるものであり、
図2の左右方向に示す幅寸法は、装着溝3の幅寸法に比べて若干小さい幅寸法とされており、装着状態において、基部11の
図2の左右に示す両側面(内周面および外周面)のそれぞれと、これらが対向する装着溝3の側壁3aとの間にクリアランスを形成できるようになっている。また、基部11の
図2の上下方向に示す高さ寸法は、装着溝3の深さ寸法に比較して短い高さ寸法とされており、装着状態において、基部11の
図2の下方に示す底面が装着溝3の溝底3bに当接され、基部11の上面は、装着溝3の深さ方向の略中間位置に配置されるようになっている。そして、基部11の底面は、
図2(c)に示す2部材間の隙間を密封した密封状態において、装着溝3の溝底3bに弾接して密接する第1シール面11aとされている。なお、第1シール面11aとしては、下方に凸の円弧状にしてもよい。
【0027】
前記先端部12の根元部の幅寸法は、基部11の幅寸法に比べて小さい幅寸法とされており、先端部12の幅方向中間位置は、基部11の幅方向中間位置の上方に配置されている。また、先端部12の
図2の上方に示す上端は、装着状態において装着溝3の開口端より上方に突出されており、密封状態においてカバー部材4の表面に沿って弾性変形してカバー部材4の表面に弾接して密接する第2シール面12aとされている。なお、第2シール面12aとしては、平面状にしてもよい。また、先端部12の断面形状としては、頂部が上方に凸の円弧状とされた矩形としたり、上方に凸の三角形としたり、頂部が平坦面とされた山形としたりすることができる。
【0028】
前記脱落防止用突起部20は、装着溝3に装着したガスケット本体10が装着溝3から脱落するのを防止するためのものであり、
図3に示すように、第1シール面11aの幅方向両側から装着溝3の側壁3aに向かって幅が広くなるように傾斜して延びるように、基部11の幅方向両側に突設されている。この脱落防止用突起部20は、
図3(b)に示す装着状態において、先端が装着溝3の側壁3aに予め設定された締め代をもって当接するように形成されている。また、脱落防止用突起部20は、装着状態において、脱落防止用突起部20の先端部分が幅方向内側に弾性変形して、装着溝3の側壁3aに弾接して装着溝3内に収容されるようになっている。
【0029】
さらに、脱落防止用突起部20の上面外周は、平面円弧状に形成されており、上面は、基部11の上面と同一高さ位置に配置されている。さらにまた、脱落防止用突起部20は、
図1に示すように、基部11の幅方向の両側において、ガスケット本体10の周方向、すなわち装着溝3の長手方向に沿って予め設定された間隔をおいて複数、本実施形態においては9つ設けられている。この脱落防止用突起部20の間隔としては、安定した脱落防止効果を容易に得ることができるという意味で、等間隔とすることが好ましい。なお、脱落防止用突起部20は、ガスケット1の周長にもよるが、基部11の外周面にのみ設けてもよいし、基部11の内周面にのみ設けてもよいし、外周面および内周面のそれぞれに交互に設けてもよい。
【0030】
前記倒れ防止用突起部30は、装着溝3にガスケット本体10を装着する装着時に、ガスケット本体10が倒れるように形状変化するのを防止するためのものであり、
図4に示すように、基部11の上面から装着溝3内において装着溝3の深さ方向に沿ってカバー部材4側に向かって延びるように、先端部12の幅方向両側に突設されている。また、倒れ防止用突起部30は、
図4(b)に示す装着状態において、対向する装着溝3の側壁3aとの間にクリアランスを形成できるようになっている。さらに、倒れ防止用突起部30は、基部11の上面から上方に向かって高さ方向、すなわち装着溝3の深さ方向に沿って延出形成されている。
【0031】
また、倒れ防止用突起部30の上面外周は、平面円弧状に形成されており、上端位置は、装着溝3の開口端より下方に配置されて先端部12の側面に幅方向外側に向かって突設されている。さらに、倒れ防止用突起部30は、
図1に示すように、ガスケット本体10の幅方向の両側において、ガスケット本体10の周方向、すなわち装着溝3の長手方向に沿って予め設定された間隔をおいて複数、本実施形態においては9つ設けられている。この倒れ防止用突起部30の間隔としては、安定した倒れ防止効果を容易に得ることができるという意味で、等間隔とすることが好ましい。なお、倒れ防止用突起部30は、ガスケット1の周長にもよるが、先端部12の外周面にのみ設けてもよいし、先端部12の内周面にのみ設けてもよいし、外周面および内周面のそれぞれに交互に設けてもよい。
【0032】
本実施形態のガスケット1は、
図1に示すように、ガスケット本体10の幅方向両側に、それぞれ9つの脱落防止用突起部20と9つの倒れ防止用突起部30とが交互に等間隔に配置されている。
【0033】
本実施形態のガスケット1は、周知のように、装着溝3の深さより高く、装着溝3の溝幅よりも幅狭に形成されているとともに、密封状態において、装着溝3の内部に充満しないように形成されている。
【0034】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0035】
本実施形態のガスケット1によれば、ガスケット本体10が装着溝3の深さより高く、装着溝3の溝幅よりも幅狭とされているので、装着時にガスケット本体10の幅方向側面が装着溝3の側壁3aに接触しないので円滑な装着を行うことができるし、密封状態において2部材間にガスケット1を挟持させることができるので、良好な密封状態を得ることができる。
【0036】
また、本実施形態のガスケット1によれば、脱落防止用突起部20および倒れ防止用突起部30は、ガスケット1を装着溝3に装着する装着時に、ガスケット本体10の脱落とガスケット本体10の倒れによる形状変形とをともに防止できるので、ガスケット本体10を装着溝3に確実に装着することができるし、ガスケット本体10が装着溝3から脱落するのを確実に防止することができる。これにより、装着溝3への装着性の向上、装着溝3からの脱落防止性の向上を確実に図ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態のガスケット1によれば、脱落防止用突起部20は、その先端が第1シール面11aの幅方向両側から装着溝3の側壁3aに向かって幅が広くなるように傾斜して延びるように形成されているので、装着時の抵抗が小さく、ガスケット1を装着溝3に挿入する作業を簡易にすることができるし、ガスケット1を装着溝3に装着した装着状態において、脱落防止用突起部20の先端が装着溝3の側壁3aに締め代をもって当接するように形成されているから、装着状態において先端が装着溝3の側壁3aに当接して装着溝3から抜ける方向に対して大きな抵抗を持つように弾性変形するので、釣り針の返しの如く作用して装着溝3からより抜けにくくなり、一段と確実な脱落防止機能を発揮することができる。
【0038】
さらに、本実施形態のガスケット1によれば、倒れ防止用突起部30は、ガスケット1を装着溝3に装着する装着時に、装着溝3の側壁3aに接触せず、しかも基部11の装着溝3の側壁3aと対向する側面の長さを長くして剛性を大きくするように作用するから、ガスケット本体10が装着溝3内で倒れるのを防止、すなわちガスケット本体10の形状を確実に保持することができるので、ガスケット1を装着溝3に挿入する作業を簡易にすることができる。なお、本実施形態の倒れ防止用突起部30は、装着時に、ガスケット本体10が装着溝3内で捩れるのを防止する機能も発揮することができる。
【0039】
さらにまた、本実施形態のガスケット1によれば、脱落防止用突起部20および倒れ防止用突起部30が、それぞれガスケット本体10の周方向、すなわち装着溝3の長手方向に沿って予め設定された間隔をもってそれぞれ9つ設けられているから、装着状態における脱落防止用突起部20の先端部の弾性変形による反力を装着溝3の長手方向に沿って9箇所で発生させることができるとともに、装着時における倒れ防止用突起部30によるガスケット本体10の変形防止機能を装着溝3の長手方向に沿って9箇所で発生させることができる。したがって、装着溝3への装着性の向上、装着溝3からの脱落防止性の向上をより確実に図ることができる。
【0040】
また、本実施形態のガスケット1によれば、脱落防止用突起部20および倒れ防止用突起部30は、ガスケット本体10の周方向、すなわち装着溝3の長手方向に沿って予め設定された間隔をもって交互に配置されているから、脱落防止用突起部20による脱落防止機能と倒れ防止用突起部30による倒れ防止機能とを装着溝3の長手方向に沿ってバランスよく配置することができる。したがって、装着溝3への装着性の向上、装着溝3からの脱落防止性の向上をよりさらに確実に図ることができる。
【0041】
図5および
図6は、本発明に係るガスケットの第2実施形態を示すものである。本実施形態のガスケット1Aは、前述した第1実施形態のガスケット1におけるガスケット本体10に、前述した第1実施形態のガスケット1における脱落防止用突起部20と同様の脱落防止用突起部20Aおよび前述した第1実施形態のガスケット1における倒れ防止用突起部30と同様の倒れ防止用突起部30Aをセットとして設けたものである。このセットとされた脱落防止用突起部20Aおよび倒れ防止用突起部30A(以下、説明の便宜上、脱落防止用突起部20Aおよび倒れ防止用突起部30Aを総称して「脱落兼倒れ防止用突起部40」と記す。)は、脱落防止用突起部20Aの直上に位置する先端部12に倒れ防止用突起部30Aを配置して構成されている。
【0042】
前記脱落兼倒れ防止用突起部40は、ガスケット本体10の周方向、すなわち装着溝3の長手方向に沿って予め設定された間隔をおいて複数、本実施形態においては9つ設けられている。この脱落兼倒れ防止用突起部40の間隔としては、装着溝3の平面形状にもよるが、安定した脱落防止効果を容易に得ることができるという意味で、等間隔とすることが好ましい。なお、脱落兼倒れ防止用突起部40としては、基部11の外周面にのみ設けてもよいし、基部11の内周面にのみ設けてもよいし、外周面および内周面のそれぞれに交互に設けてもよい。その他の構成は、前述した第1実施形態のガスケット1と同様とされており、その詳しい説明については省略する。
【0043】
このような構成の本実施形態のガスケット1Aによれば、前述した第1実施形態のガスケット1と同様の効果を奏するとともに、脱落兼倒れ防止用突起部40の一部を構成する脱落防止用突起部20Aがよりきつく装着溝3に嵌まるので、よりさらに抜けにくくなる。したがって、ガスケット1Aの装着溝3からの脱落防止性のさらなる向上を確実に図ることができる。
【0044】
なお、脱落兼倒れ防止用突起部40は、前述した第1実施形態のガスケット1における個別に設けられた脱落防止用突起部20と組み合わせて配置してもよいし、前述した第1実施形態のガスケット1における個別に設けられた倒れ防止用突起部30と組み合わせて配置してもよいし、前述した第1実施形態のガスケット1における個別に設けられた脱落防止用突起部20および個別に設けられた倒れ防止用突起部30と組み合わせて配置してもよい。なお、組合せの構成は、設計コンセプトなどの必要に応じて変更することができる。また、組合せたときの配置としては、例えば、脱落兼倒れ防止用突起部40と脱落防止用突起部20とを交互に配置したり、脱落兼倒れ防止用突起部40と倒れ防止用突起部30とを交互に配置したり、脱落兼倒れ防止用突起部40と脱落防止用突起部20と倒れ防止用突起部30Aとをこの順に繰り返し配置してもよい。
【0045】
そして、脱落兼倒れ防止用突起部40と脱落防止用突起部20とを組み合わせて配置した場合には、個別の脱落防止用突起部20による脱落防止機能を装着溝3の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができるとともに、脱落防止用突起部20の配置されていない位置で脱落兼倒れ防止用突起部40による脱落防止機能および変形防止機能を装着溝3の長手方向に沿って複数箇所でセットで発生させることができるから、装着溝3の平面形状に対応させて脱落防止機能と変形防止機能とを確実に発揮することができる。
【0046】
また、脱落兼倒れ防止用突起部40と倒れ防止用突起部30とを組み合わせて配置した場合には、個別の倒れ防止用突起部30による変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができるとともに、倒れ防止用突起部30の配置されていない位置で脱落兼倒れ防止用突起部40による脱落防止機能および変形防止機能を装着溝3の長手方向に沿って複数箇所でセットで発生させることができるから、装着溝3の平面形状に対応させて脱落防止機能と変形防止機能とを確実に発揮することができる。
【0047】
さらに、脱落兼倒れ防止用突起部40と脱落防止用突起部20と倒れ防止用突起部30とを組み合わせて配置した場合には、個別の脱落防止用突起部20により、脱落防止機能を装着溝3の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができるとともに、個別の倒れ防止用突起部30により、変形防止機能を装着溝の長手方向に沿って複数箇所で個別に発生させることができ、さらに、脱落兼倒れ防止用突起部40による脱落防止機能および変形防止機能を脱落防止用突起部20および倒れ防止用突起部30の配置されていない位置で装着溝3の長手方向に沿って複数箇所でセットで発生させることができるから、装着溝3の平面形状に対応させて脱落防止機能と変形防止機能とをより確実に発揮することができる。また、脱落の防止性および形状変形の防止性のそれぞれについて性能の異なる2種類のものを設けることができるので、装着溝3の平面形状に対する適応性の向上を容易に図ることができる。
【0048】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1、1A ガスケット
2 ハウジング
3 装着溝
3a 側壁
3b 溝底
4 カバー部材
10 ガスケット本体
11 基部
11a 第1シール面
12 先端部
12a 第2シール面
20、20A 脱落防止用突起部
30、30A 倒れ防止用突起部
40 脱落兼倒れ防止用突起部