特許第6643864号(P6643864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643864
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】多色油性固形組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20200130BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20200130BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/44
   A61Q1/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-209447(P2015-209447)
(22)【出願日】2015年10月26日
(65)【公開番号】特開2016-88932(P2016-88932A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-222626(P2014-222626)
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 知明
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏明
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−148990(JP,A)
【文献】 特開2011−032181(JP,A)
【文献】 特開2009−274975(JP,A)
【文献】 特開2009−274974(JP,A)
【文献】 特開2010−030969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一油性固形組成物中に、第一油性固形組成物より高い滴点を有する第二油性固形組成物が、認識可能に点在し、
前記第二油性固形組成物の滴点が、前記第一油性固形組成物の滴点より10℃以上高いものであり、且つ、95〜130℃である多色油性固形組成物。
【請求項2】
前記第二油性固形組成物が、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド及びジブチルラウロイルグルタミドから選ばれる一種又は二種を含有する請求項1に記載の多色油性固形組成物。
【請求項3】
前記第一油性固形組成物が、透明または半透明である請求項1または2のいずれかに記載の多色油性固形組成物。
【請求項4】
前記多色油性固形組成物が化粧料である請求項1〜のいずれかに記載の多色油性固形組成物。
【請求項5】
前記化粧料が口唇用化粧料である請求項に記載の多色油性固形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一油性固形組成物中に、第二油性固形組成物が認識可能に点在するものであって、外観の審美性に特徴を有する多色油性固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油性固形組成物は、口唇化粧料、アイカラー、香料組成物等の化粧料として広く用いられている。化粧料としては、様々な色調や質感を付与する目的で用いられ、ツヤや透明感、着色のよさ等の化粧効果、二次付着しにくい等の機能性に加え、化粧を行うことの楽しさに繋がる化粧料自体の外観の美しさも求められている。このような外観の美しさを特徴とする、化粧料の技術も多く提案されている。例えば、上面にすり鉢状の凹部を有する透明な化粧料層を形成し、その上に異なる色に着色された化粧料を積層し、グラデーション模様を有する多色化粧品が提案されており(特許文献1)、透明、半透明の液状化粧中に、予め製造された粒状化粧料を、透明液状化粧料に攪拌しながら分散させる組み合わせ化粧料が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−261949号公報
【特許文献2】特開平03−146595号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の多色化粧品は上下方向に積層されている為、異なる色の化粧料を同時に使用するためには多層形状を崩さなければならない。また、特許文献2の技術においても、粒状化粧料部分を使用するには化粧料中から取り出す必要があり、使用に困難が伴い、流動性を有する為に化粧料中の粒状化粧料の配置が崩れてしまうという課題がある。また、高温での充填が必要となる油性固形組成物では、色や質感の異なる組成物が充填時に、混じりあったり、滲んだりして美麗な外観を損ねることなく充填することは非常に困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状においてなされたものであり、第一油性固形組成物中に、第二油性固形組成物が、明瞭な輪郭を持ち、認識可能に点在している組成物であって、化粧料として用いられる場合にも容易に使用可能である、外観の審美性に特徴を有する多色油性固形組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、第一油性固形組成物中に点在する第二油性固形組成物の滴点が、第一油性固形組成物よりも高いものであると、充填時に滲みのない明瞭な輪郭を有する第二油性固形組成物が点在する多色油性固形組成物が得られることを見出した。更に、第二油性固形組成物の固形化剤として、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ジブチルラウロイルグルタミドを用いることで、本願効果が顕著に得られることを見出し、本発明を完成させるに至った
すなわち本発明は、第一油性固形組成物中もしくは上面に、第一油性固形組成物よりも高い滴点を有する一種以上の第二油性固形組成物が点在した多色油性固形組成物である。本発明は、化粧料に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油性固形組成物は、外観に特徴を有する多色油性固形組成物であり、認識可能に点在する第二油性固形組成物と、第一油性固形組成物を容易に使用することが可能であり、使用時に形状を崩す必要がない多色油性固形組成物である。尚、本発明における第二油性固形組成物としては、第一油性固形組成物より滴点が高い一種以上のものを言う。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の多色油性固形組成物は、第一油性固形組成物と、第二油性固形組成物からなるものであり、第二油性固形組成物は、第一油性固形組成物より滴点が高いものであれば、特に限定されるものではなく、一種または二種以上であってもよい。第二油性固形組成物の滴点は、第一油性固形組成物より10℃以上高いことが好ましく、25℃以上であると更に好ましい。この範囲であると、各油性固形組成物の境界が明瞭な組成物を得ることができ、化粧料として用いる場合に第一、第二いずれの組成物ともに容易に使用することができる。更に、本発明の多色油性固形組成物は、化粧料として用いる場合には、第一油性固形組成物の滴点が55〜90℃であることが好ましく、60〜85℃であると更に好ましい。第二油性固型組成物の滴点は、90〜130℃であることが好ましく、95〜115℃であると更に好ましい。この範囲であると、化粧料として用いる場合に好適に使用することができる。
【0009】
本発明の多色油性固形組成物は、第一油性固形組成物と、第二油性固形組成物を組合せて得られるものであるが、第二油性固形組成物は、例えば色の異なる複数種、香りの異なる複数種、硬さの異なる複数種を点在したものも含まれる。
また、本発明の多色油性固形組成物は、第一油性固形組成物と認識可能に点在する第二油性固形組成物から得られるものであれば特に限定されないが、特徴のある外観を得られる点において、透明又は半透明の第一油性固形組成物と、着色された不透明な第二油性固形組成物であることが好ましい。
【0010】
また、第二油性固形組成物は、長径が1〜15mmであると十分に点在を認識できるため好ましく、3〜12mmであると、化粧料としての使用性、外観の点においてさらに好ましい。本発明の多色油性固形組成物は、その大きさや形状にもよって異なるが、組成物中に第二油性固形組成物を1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上が点在することが外観の審美性の点において好適であり、第二油性固形組成物の総質量が、多色油性固形組成物中の0.05〜20質量%(以下%と略す)が好ましく、さらには0.1〜10%であると、第二油性固形組成物の点在の審美性において好ましい。
【0011】
本発明における滴点は、DP70自動滴点・軟化点測定システム(METTLER TOLEDO社製)を用い、開始温度50.0℃、待ち時間300秒、昇温速度1.0℃/minで測定したものである。
【0012】
本発明における油性固形組成物とは、連続相が油性成分であって、25℃で一昼夜静置した場合に形状が変化しないものである。連続相が油性成分であれば、水や水溶性成分を含有するものも含まれるが、その場合は安定性の観点から、5%未満、さらには1%未満であることが好ましい。
【0013】
本発明において、第一及び第二油性固形組成物は、特に限定されないが油剤を固形化剤で固めたものを用いることができる。固形化剤としては、通常用いられるものであれば特に限定なく用いることができ、第二油性固形組成物が第一油性固形組成物より滴点が高くなるように適宜調整して用いられる。具体的には、固体パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、モクロウ、ゲイロウ、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、ライスワックス、シリコーンワックス等のワックス類、蔗糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸、ビスジオクタデシルアミド(ダイマージリノール酸/エチレンジアミン)コポリマー、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ジブチルラウロイルグルタミド等が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0014】
第一油性固形組成物に用いられる固形化剤としては、融点の低いワックスか、蔗糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等の油性ゲル化剤が好ましく、中でもパルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステルが好適に用いられる。市販品としてはレオパールKL2、TL2、TT2(千葉製粉社製)が挙げられる。ワックスの場合は、融点が80℃以下、更には70℃以下であると好適である。第一油性固形組成物に用いられる固形化剤としては、3〜15%が好ましく、5〜10%が更に好ましい。この範囲であると、油性化粧料としての使用性が良い。
【0015】
第二油性固形組成物に用いられる固形化剤としては、融点が95℃以上が好ましく、更に好ましくは融点が140℃以上のもの、具体的には、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ジブチルラウロイルグルタミドから選ばれる一種または二種が好適に用いられる。市販品としては、アミノ酸系油ゲル化剤EB−1(味の素社製、融点183〜196℃)、アミノ酸系油ゲル化剤GP−1(味の素社製、融点150〜161℃)等が挙げられる。第二油性固形組成物に用いられる固形化剤は、3〜15%が好ましく、更には3〜10%が好ましい。この範囲であると、油性化粧料としての使用性が良い。
【0016】
本発明の多色油性固形組成物は、上記固形化剤の他に油性成分、粉体、界面活性剤、水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、色素、香料等の通常公知の成分を含有することができる。
油性成分としては動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、乳酸イソステアリル、乳酸オクチルドデシル、乳酸オレイル、乳酸ステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシ変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0017】
粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等の合成樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、等が挙げられ、これら粉体はその一種又は二種以上を用いることができ、必要に応じて、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等を用いて、公知の方法により表面処理を施したり、更に複合化したものを用いても良い。
【0018】
界面活性剤としては、特に限定されず非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0019】
水性成分としては、水の他に、例えば、エチルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1、2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられ、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられ、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が挙げられ、防腐剤としてはパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2ペンタジオール等が挙げられる。
【0020】
本発明の多色油性固形組成物としては、特に限定されないが、その外観の特徴や、使用性のよさから化粧料に好適に用いられ、特に口紅、リップグロス、リップトリートメント、リップクリーム、下地用のリップベース、口紅オーバーコートなどが挙げられる。
【0021】
本発明の多色油性固形組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えばつぎのようにして得ることができる。
油剤、固形化剤、及び必要に応じて有機色素や顔料、パール光沢剤、防腐剤、紫外線吸収剤、香料を過熱、混練した第一油性固形組成物、第二油性固形組成物を準備する。
(1)第一油性固形組成物を、滴点を超える温度で加熱溶解し容器に充填、第二油性固形組成物の滴点より低くなるまで空冷する。その後、空冷した第一油性固形組成物の上方より、加熱溶解した第二油性固形組成物を所定の位置にノズルにて滴下し、空冷する。第二油性固形組成物の固化後、更に第一油性固形組成物を容器に充填し、第二油性固形組成物が第一油性固形組成物中に点在する多色油性固形組成物を得る。
(2)第一油性固形組成物を、滴点を超える温度で加熱溶解し容器に充填し、充填ノズルを容器上部から第一油性固形組成物の所定形状に従い任意の深さまでさし入れ、加熱溶解した第二油性固形組成物を所定量吐出させて、第二油性固形組成物が第一油性固形組成物中に点在する多色油性固形組成物を得る。
(3)第二油性固形組成物を滴点を超える温度で加熱溶融し、当該溶融物の滴点よりも低い温度の水性溶媒中に滴下することによって粒状物を製造する。粒状物とした第二油性固形組成物を、第二油性固形組成物よりも低い温度で溶融させた第一油性固形組成物と混合し、分散させた後に、容器に充填し、第二油性固形組成物が第一油性固形組成物中に点在する多色油性固形組成物を得る。
【実施例】
【0022】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0023】
実施例13、比較例1〜6、参考例2:多色油性固形口唇化粧料
下記表1に示す組成物1〜6を、下記製造方法にて調製した。
【0024】
【表1】
※1:アミノ酸系油ゲル化剤GP−1(味の素社製)
※2:精製キャンデリラワックスMD−21(横関油脂工業社製)
※3:レオパールKL2(千葉製粉社製)
※4:コスモール43V(日清オイリオ社製)
※5:パールリーム24(日油社製)
【0025】
(製造方法)
A.成分(1)〜(7)を、所定の溶解温度にて均一溶解する。
B.Aに(10)〜(10)を加え、均一に混合した。
溶解温度:組成物1、4 150℃
組成物2、3、5、6 80℃
【0026】
次いで、上記組成物1〜6を下記表2に示す組合せにて、それぞれ第一油性固形組成物、第二油性固形組成物として、下記製造方法にて多色油性固形組成物を作成し、(イ)使用性、(ロ)外観の美しさを下記評価方法により評価した。
【0027】
【表2】
【0028】
(製造方法)
実施例13、比較例1〜6、参考例2について、直径2.5cm×高さ1.5cmの透明容器に、第一油性固形組成物を滴点以上の温度で溶解して0.5cm充填する。その後、固化した第一油性固形組成物の所定位置の上方4cmの高さから、滴点以上の温度で溶解した第二油性固形組成物を吐出ノズルから0.05gを6箇所に滴下し、第二油性固形組成物を固化する。更に、第一油性固形組成物を加熱溶解し、容器に1cmになるまで充填し、冷却する。実施例、比較例、参考例は、透明な油性固形口唇化粧料中に、オレンジ色の扁平状の粒が点在したものであった。
【0029】
(評価方法)
下記評価項目について専門パネル10名による使用テストを行った。パネル各人が下記絶対評価基準にて7段階に評価し評点をつけ、各試料についてパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記階判定基準により判定し、その結果を表2に示した。
【0030】
(評価項目)
イ.使用性
油性固形口唇化粧料として、使いたい部分の使い勝手に問題があるかどうか、
ロ.充填成型後の見栄えのよさ
外観の見栄えについて、第二油性固形化粧料が明瞭な境界のものであり、好ましいと感じるかどうかを評価した。
【0031】
絶対評価基準
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超え5点以下 :良好
△ :1点を超え3.5点以下 :やや不良
× :1点以下 :不良
【0032】
表2の結果より明かなように、油性固形口唇化粧料としての使用性については実施例、比較例において差が出るものではなかった。しかし、化粧料の外観の見栄えについては実施例13は明瞭な境界の扁平状の粒が点在する、視覚的に美しいものが得られた。
【0033】
参考例4:リップグロス
第一油性固形組成物(滴点60℃)
成 分 (%)
(1)キャンデリラロウ※2 15
(2)リンゴ酸ジイソステアリル 50
(3)トリイソステアリン酸ジグリセリル※4 残量
(4)水添ポリイソブテン※5 20
(5)フェノキシエタノール 0.2
第二油性固形組成物(赤色、滴点84℃)

成 分 (%)
(1)ポリエチレン ※6 10
(2)リンゴ酸ジイソステアリル 50
(3)トリイソステアリン酸ジグリセリル※4 残量
(4)水添ポリイソブテン※5 20
(5)フェノキシエタノール 0.1
(6)赤色201 0.1
(7)酸化チタン 0.1
(8)ラズベリーエキス 0.1
(9)香料 0.2

第二油性固形組成物(白色、滴点84℃)
成 分 (%)
(1)ポリエチレン ※6 10
(2)リンゴ酸ジイソステアリル 50
(3)トリイソステアリン酸ジグリセリル※4 残量
(4)水添ポリイソブテン※5 20
(5)フェノキシエタノール 0.1
(6)酸化チタン 0.2
※6:PERFORMALENE 655(ニューフェーズテクノロジー社製)
(製造方法)
第一油性固形組成物
A.成分(1)〜(5)を、所定の溶解温度にて均一溶解する。
第二油性固形組成物(赤)
A.成分(1)〜(5)を、所定の溶解温度にて均一溶解する。
B.Aに(6)〜(9)を加え、均一に混合した。
第二油性固形組成物(白)
A.成分(1)〜(5)を、所定の溶解温度にて均一溶解する。
B.Aに(6)を加え、均一に混合した。
リップグロス
加熱溶解した第一油性固形組成物を透明ジャー容器の1/3の高さに充填する。その後、固化した第一油性固形組成物の所定位置の上方から、第二油性固形組成物(白)を吐出ノズルから0.08gを3箇所に滴下し、固化する。更に、加熱溶解した第一油性固形組成物を容器の2/3の高さまで充填、固化した後、第二油性固形組成物(白)を吐出ノズルから0.08g3箇所に滴下し固化する。その後加熱溶解した第一油性固形組成物を充填し、冷却する。得られたリップグロスは、透明リップグロス中に白色の粒と赤色の粒が異なる高さに、明瞭な境界を有して点在する美麗なものであった。