(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
− 前記作業雰囲気の露点を制御するは、無水処理するステップ(c)から第2のステップ(b)の終了まで、その露点を−10℃未満に維持することからなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層する方法。
− 前記第2のステップは、積層(3)を50℃から1200℃の間の温度で熱アニーリングするステップを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の積層する方法。
− 前記無水処理するステップ(c)と前記第2のステップ(b)との間に積層(3)を貯蔵するステップを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の積層する方法。
− 前記無水処理するステップ(c)は、密接に接触させる第1のステップ(a)に先行して行われるか、または密接に接触させる第1のステップ(a)と同時に行われことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の積層する方法。
− 前記無水処理するステップ(c)は、密接に接触させる第1のステップ(a)に続いて行われることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の積層する方法。
− 前記第1の基板または前記第2の基板(1、2)は、シリコンから作製されており、無水処理するステップ(c)の温度は、40℃から60℃の間であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の積層する方法。
【背景技術】
【0002】
分子接着により基板を積層すること(直接ウェハ接合)は、マイクロエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス、電気機械マイクロシステム、例えば、シリコンオンインシュレータ基板、多接合型光電池の製造および3D構造体の作製の分野において用途が見出されている周知の技術である。
【0003】
この技術によれば、2枚の基板をそれらの表面が互いに十分に接触するように密接に接触させることで、それらは原子および/または分子結合(ヒドロキシルまたは共有結合)をそれらの間に確立させる。積層界面における水の存在が、このような結合の生成を助ける。このように、接着剤またはポリマーの層などのいかなる中間接着層をも使用することなく、接触した2つの表面の間で接着力が生まれる。
【0004】
次いで、得られた積層を、基板の性質および想定される用途に応じて、50℃から1200℃の間で変動し得る温度で全体として熱処理に供して、接着を強化する。
【0005】
分子接着による積層は、一部の場合、結合界面に結合不良と称される不良の発生を引き起こす。それは、「気泡」型(結合空隙)の不良であり得る。結合不良は、積層された基板の表面間に気体種が捕捉および蓄積されることに起因し得る。これらの種は、積層前、基板が調製されたときにそれらの表面に吸着された種と一致し得、それらは、化学反応、特に、基板が密接に接触させられるときか、または結合強化アニーリング中に発生する水の化学反応の残渣に一致し得る。分子接着による積層中に発生した化学現象についての記述は、例えば、C. Ventosaらによる論文(非特許文献1参照)、またはV. Masteikaらによる論文(非特許文献2参照)に記載されている。
【0006】
積層界面における結合不良の存在は、作製された構造体の品質にとって非常に有害である。例えば、積層ステップの後で、層を形成するために、研磨によるか、またはSmart Cut(商標)技術に従って2枚の基板を薄化するステップが行われる場合、結合不良において2つの表面間で接着が存在しないことは、この点における層の局所的な剥離につながり得る。構成部品を3D集積する場合、結合不良によって各基板上に形成された構成部品が電気的に接触されることを妨げられ、これにより、これらの構成部品が機能不全になる。
【0007】
積層不良、特に結合不良を低減するために想定される1つの解決法が、特許文献1において提案されている。この文献は、分子接着によって積層する方法であって、基板の表面が積層される前にそれらの上に気体の流れを循環させるステップを含む方法を開示している。
【0008】
この方法では、気体の流れの循環によって表面から脱着された水分子が、結合チャンバの外に排出される。そして、この文献によれば、この方法では、チャンバ内の雰囲気が水で飽和することを防ぐことによって、積層ごとの品質が一定に保たれる。
【0009】
しかし、この方法を適用することは難しく、例えば、積層される基板の性質に応じて、強化処理後に、基板間の接着度が不十分になるか、または残存する結合不良の存在につながり得る。粒子は結合不良を発生させる可能性があるため、気体流が、分子接着が高い感受性を示す粒子状汚染物質の有力なキャリヤーであることに特に留意すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、接合不良の数を低減する堅固な方法を提示すること、または、さらには、分子接着による2枚の基板の積層時におけるそれらの発生を完全に防止することである。本発明のもう1つの目的は、積層された基板間に十分な接着度を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明の主題は、2枚の基板を分子接着によって積層する方法であって、
第1の基板と第2の基板とを密接に接触させて、積層界面を有する積層を形成する第1のステップと、
積層の接着度を、水がもはや積層界面に沿って拡散することができなくなる閾値接着値を超えて強化する第2のステップと
を含む方法を提示する。
【0014】
本発明によれば、この方法は、
−10℃未満の露点を有する処理雰囲気中で、第1の基板および第2の基板を無水処理するステップと、
無水処理するステップから第2のステップの終了まで、第1の基板および第2の基板が曝露される作業雰囲気の露点を制御して、積層界面における結合不良の発生を制限または防止すること、
を含む。
【0015】
このように、この露点を制御することによって、積層を取り囲む雰囲気から積層界面への水の拡散が防止され、結合不良の発生が回避または制限される。
【0016】
単独または組合せによる、本発明の他の有利かつ非限定的な特徴によれば、
− 作業雰囲気の露点を制御することは、無水処理するステップ(c)から第2のステップ(b)の終了まで、10分未満の間、その露点を−10℃超に維持することからなり;
− 作業雰囲気の露点を制御することは、無水処理するステップ(c)から第2のステップ(b)の終了まで、その露点を−10℃未満に維持することからなり;
− 作業雰囲気は、方法が実施される環境の雰囲気であり;
− 無水処理するステップは、処理雰囲気を封入したチャンバ内で行われ;
− 第2のステップは、積層を50℃から1200℃の間の温度で熱アニーリングすることを含み;
− アニーリング温度は、300℃超であり;
− アニーリングは、中性のアニーリング雰囲気中で行われ;
− 処理雰囲気は、静的であり;
− 処理雰囲気は、大気圧であり;
− 密接に接触させるステップ(a)は、周囲温度で行われ;
− 方法は、第1の基板および第2の基板の親水性表面を調製する予備ステップを含み;
− 方法は、無水処理するステップと第2のステップとの間に積層を貯蔵するステップを含み;
− 無水処理するステップは、密接に接触させる第1のステップに先行して行われるか、または同時に行われ;
− 無水処理するステップは、第1の基板と第2の基板とが密接に接触させられる前に、少なくとも30秒の継続時間を有し;
− 無水処理するステップは、密接に接触させる第1のステップ(a)に続いて行われ;
− 密接に接触させる第1のステップは、−10℃超の露点を有する雰囲気中で行われ;
− 無水処理するステップは、20℃から150℃の間の温度で行われ;
− 第1の基板または第2の基板は、シリコンから作製されており、無水処理するステップの温度は、40℃から60℃の間であり;
− 無水処理するステップは、1時間から100日の間の継続時間を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、出願人により行われ以下に報告される観察結果から得られたものである。
【0019】
ブランクシリコン基板を、酸化ケイ素からなる厚さ10nmの微細層が設けられたもう1枚のシリコン基板と積層させた。基板を密接に接触させるステップを、50%の標準的な相対湿度(9℃の露点に相当)を有するクリーンルーム雰囲気中で行い、次いで、2枚の積層された基板の接着を強化するステップを、550℃において2時間アニーリングすることによって行った。
【0020】
この積層は、特に積層界面における酸化ケイ素の層が微細であることに起因して、結合不良が特に発生しやすい。
【0021】
この一連のステップの終了時に、積層界面を超音波顕微鏡法によって観察する。
図1は、この観察の結果を示す。観察面にわたって分布する黒い点は、結合不良、すなわち、接着が発生しておらず、積層界面の、気体によって充填されている可能性がある領域に対応する。2枚の基板によって形成された積層の輪郭もまたこの
図1に出現しているように見えるが、以下の
図2a、2bおよび3においても同様である。
【0022】
次いで、2種類の別の一連の実験を行った。
【0023】
第1の一連の実験では、
図1の結果をもたらしたものと同じ基板を積層することにより、2つの積層を形成した。密接に接触させるステップの終了時、2つの積層を、湿潤雰囲気(−10℃より高い露点)中でそれぞれ5日間および60日間維持した。これらの期間の終了時に、積層をそれぞれ550℃における2時間の強化アニーリングに供し、次いで、積層界面を超音波顕微鏡法によって観察した。これらの観察結果を
図2aおよび2bに示す。
【0024】
図1と比較すると、密接に接触させるステップと強化処理との間に湿潤雰囲気中で貯蔵することにより、結合不良の数およびその密度が目に見えて増加することがわかる。また、この増加が、基板の端部からその中心へと伝播することにより、貯蔵の継続時間と共に変化していることも観察される。
【0025】
第2の一連の実験では、
図1の結果をもたらしたものと同じ基板を積層することにより、積層を形成した。密接に接触させるステップの終了時に、積層を、10ppm未満の湿度レベル(−63℃未満の露点)を有する無水雰囲気中で20日間維持した。この期間の終了時に、550℃における2時間の同じアニーリングを適用した。
【0026】
図3は、このアニーリング後における積層の積層表面の、超音波顕微鏡法による観察の結果を示す。
図1と
図3とを比較すると、無水雰囲気中で貯蔵することにより、特に積層の外周端部で結合不良の数が低減することがわかる。
【0027】
したがって、確立された考え方とは異なり、基板を密接に接触させるステップの後においてであっても、水は積層界面と積層を取り囲む雰囲気との間を拡散しやすいということが、これらの実験から観察される。よって、相対的に湿潤な環境により、経時的に水が積層の外周端部から中心に向かって拡散して浸入する。逆に、相対的に乾燥した雰囲気により、水が積層の外周端部から排出される。
【0028】
補足的な実験により、この現象をより詳細に分析することが可能となった。積層界面の外への水の拡散は、相対的に乾燥した雰囲気によって促進されるが、これは積層が曝露される温度の影響も受けやすいと思われる。
【0029】
図4は、この現象のグラフによる表現である。Y軸は、これまでの実験と同様に密接に接触させてアニーリングした積層を、300時間にわたって無水貯蔵した後における、結合不良がまったくない環状の領域の寸法(ミリメートル)からなる。この寸法は、貯蔵中における積層界面での水の拡散距離と同一視することができる。この
図4におけるX軸は、貯蔵温度(セ氏温度)に対応する。
【0030】
この距離は、50℃の貯蔵温度付近に極大を有することがわかる。積層が貯蔵温度に曝露されることに起因する接着エネルギーの増加は、水の可動性を妨害し、その結果、貯蔵温度が上昇したときに拡散長さが実質的に制限される。
【0031】
当然ながら、この
図4に示された結果は、使用された特定の実験条件(特に、密接に接触させるステップに先行して行われた表面処理、基板の表面のうちの一方に形成された酸化ケイ素の厚さ等)に依存するが、しかしながら、貯蔵温度に従って積層界面で発生する拡散現象をよく表現している。特に、最大拡散長さは、この図に現れている50℃のものとは異なる可能性がある。いずれにせよ、積層の接着度の閾値が存在し、これを超えると、積層界面において水がもはや拡散しやすくなくなると考えられる。よって、基板1、2のうちの一方が少なくともシリコンから作製されている場合、アニーリング温度が300℃を超えたときにこの閾値に達すると考えられる。
【0032】
本発明は、特に有利である分子接着による積層法を詳述するために先に提示した実験によって明らかとなった現象を利用するが、その詳細な説明は以下の通りである。
【0033】
図5から7を参照すると、この積層法は、それ自体が周知であるように、第1の基板1と第2の基板2とを密接に接触させて、積層界面4を有する積層3を形成する第1のステップ(a)を含む。実行の簡便性の理由から、密接に接触させるステップ(a)は、周囲温度(すなわち、10℃から30℃の間)で優先的に行われる。基板1、2のうちの一方または他方は、任意の性質を有していてもよいが、本発明は、基板1、2のうちの少なくとも一方が水と化学反応する材料を形成しているか、またはそれを含む場合を、特に対象としている。先に見たように、この化学反応は、2枚の基板の積層界面において進展する結合不良を生じさせる可能性がある。
【0034】
これは、シリコン、ゲルマニウム、炭化ケイ素、InPもしくはAsGaなどの半導体材料、または銅、チタン、タングステン、アルミニウムもしくはニッケルなどの金属に特に当てはまる。
【0035】
またこれは、水と化学反応する材料が、水と反応しない(酸化ケイ素またはアモルファスアルミナなど)が、水がその中を通過することができる別の材料の下に位置しており、このとき後者が下にある材料と反応することが可能である場合に当てはまる。
【0036】
密接に接触させるステップ(a)に先立ち、2枚の基板1、2は、プラズマまたはポリッシングによる洗浄または活性化などの、親水性表面処理を施されていてもよい。基板1、2のうちの一方もしくは他方または両方は、酸化ケイ素または窒化ケイ素などの中間層を設けられていてもよい。
【0037】
本積層法はまた、積層3の接着度を、水がもはや積層界面に拡散することができなくなる閾値接着値を超えて強化する第2のステップ(b)を含む。
【0038】
第2の強化するステップ(b)は、例えば50℃から1200℃の間の温度における熱処理、特にアニーリングを含んでいても、またはこれに相当していてもよく、その継続時間は、数秒から数時間まで及んでいてもよい。アニーリングは、中性雰囲気中で行われてもよい。
【0039】
水が特に積層界面においてもはや拡散することができなくなる接着閾値の正確な値は、積層される材料の性質、またはさらには積層を取り囲む雰囲気の湿度の程度に従って、変動し得る。しかし、基板1、2のうちの一方が少なくともシリコンから作製されている場合、アニーリング温度が300℃を超えたときにこの閾値に達すると考えられる。当業者であれば、例えば、序文に開示されたものと類似の実験から、他の材料についてこの閾値を決定することが容易に可能であると思われる。
【0040】
本発明によれば、本積層法はまた、−10℃未満の露点を有する処理雰囲気中で、第1の基板1および第2の基板2を無水処理するステップ(c)を含む。このステップ(c)は、接着度を強化するステップ(b)に先行して行われる。
【0041】
露点は、気体を、飽和によって発生する液体水の形成を伴わずに供することができる、最低の温度と定義されていることを思い出されたい。それは、気体の湿度レベルの、慣例的で信頼できる測定値である。
【0042】
したがって、本発明の無水処理は、積層界面における水の量を制限または低減するために、特に乾燥した雰囲気中で行われる。よって、無水処理の露点は、−10℃未満、または−50℃未満またはさらには−85℃未満から選択されてもよい。
【0043】
十分な接着度を得ることを可能にしながら結合不良の進展を制限するために、本発明はまた、無水処理するステップ(c)から接着度を強化する第2のステップ(b)の終了まで、2枚の基板1、2が曝露される作業雰囲気の露点を制御することを可能にする。
【0044】
「制御」とは、積層界面において拡散して結合不良の発生または進展をもたらし得る、作業雰囲気に由来する水を防ぐために、無水処理するステップ(c)の終了から接着度を強化するステップ(b)の間において経過する時間の間、この露点が十分に低く維持されなければならないことを意味する。同時に、この露点は、2枚の基板1、2間に十分な接着度が発現することを可能にするだけの十分な水を積層界面が有するように、調整されてもよい。この制御の本質は、以下に詳説される本発明の実施形態の各々において、より詳細に詳説される。
【0045】
本発明の第1の実施形態を
図5に示す。この第1の実施形態では、無水処理するステップ(c)が、第1の基板と第2の基板とを密接に接触させる第1のステップ(a)に先行して行われるか、または同時に行われる。
【0046】
いくつかの手法がこれを実現することを可能にする。本発明の実施形態の各々においてさらに実行されてもよい第1の手法によれば、作業雰囲気は、本積層法が実施される環境(一般に「クリーンルーム」と称される)の雰囲気である。この雰囲気は、−10℃未満の露点に維持される。よって、本方法を構成するすべてのステップおよび加工操作、特に密接に接触させるステップ(a)は、特に乾燥した雰囲気中で実施され、基板の表面および積層界面における制御された量の水を維持する。
【0047】
マイクロエレクトロニクスおよび基板の積層の分野では、30%から50%の間(3℃から9℃の間の露点に相当)である作業環境の相対湿度を維持することが通例である。しかし、蓄電池製造の分野などの、−10℃未満の露点を有する作業雰囲気が通例である分野が存在する。本発明の無水処理を行うこの手法は、比較的複雑な施設を必要とする可能性があるが、無水処理するステップ(c)から第2のステップ(b)の終了まで、作業雰囲気の露点を制御することをも可能にするという利点を有する。
【0048】
この場合、作業雰囲気の露点を制御することは、作業室の雰囲気中の積層3を、この期間にわたって−10℃未満の露点に保つことからなる。本方法中におけるステップの順序づけに応じて、この期間は1時間から100日の間、またはそれより長くなり得る。
【0049】
図6に描写される、ステップ(c)を適用する第2の手法によれば、無水処理は、密接に接触させる第1のステップ(a)と同時に行われる。よって、ステップ(c)および(a)は、処理雰囲気を封入するためのエンクロージャ5の中で同時に行うことができる。封入エンクロージャ5は、密接に接触させるステップ(a)が中で実施される積層装置のチャンバであってもよい。
【0050】
このとき、エンクロージャ5またはチャンバは、好適な手段によって−10℃未満の露点に維持される。例えば、それは、エンクロージャまたはチャンバに入ってくる気体を浄化するためのユニット6であってもよい。処理雰囲気を構成する気体は、それがエンクロージャまたはチャンバ内に入る前に、例えば銅から作製されたモレキュラーシーブ7を介して浄化ユニット内を循環し、このモレキュラーシーブが雰囲気に由来する水で充填されて特に乾燥した気体を生成することで、その露点を制御することができる。
【0051】
第1の基板1および第2の基板2が封入エンクロージャ5または積層チャンバに導入されると、それらはいずれも、−10℃未満の露点を有する封入された雰囲気に曝露される。このとき、この曝露は本発明の無水処理するステップ(c)の構成要素となる。
【0052】
優先的には、実行の簡便性のため、封入された無水処理雰囲気は大気圧とし、封入された無水処理雰囲気は静的でもよく、すなわち、この雰囲気はチャンバ内で引き起こされた流れの形態で循環しない。この手法では、表面の積層前における粒子による表面の汚染が回避される。
【0053】
有利には、基板の表面の封入された無水処理雰囲気への曝露は、少なくとも第1および第2の基板1、2が密接に接触させられる前に、30秒の継続時間を有する。この手法では、これらの基板1、2の表面上に存在する水の量が、確実に必要とされる平衡状態になる。同じ理由で、封入された処理雰囲気を、例えば20℃から150℃の間の温度で加熱することを選択することができる。密接に接触させるステップを、同じ封入された環境中で行ってもよい。
【0054】
これらのステップの終了時に、この第1の実施形態において無水処理するステップ(c)を適用する方法がいかなるものであれ、第1の基板1と第2の基板2とを積層することによって形成され、積層界面4において制御された量の水を有する積層3が得られる。
【0055】
先に見たように、この第1のステップ(a)の後に、積層の接着度を、水がもはや拡散しやすくなくなる閾値を超えて強化する第2のステップ(b)が行われる。
【0056】
積層界面4において低減された水の量を、結合不良の発生または進展を制限するレベルに保つために、積層3が曝露される作業雰囲気の露点は、これら2つのステップの間、制御される。
【0057】
先に見たように、この制御は、本方法が実施されるルームの全体の雰囲気が、例えば−10℃未満の露点で維持される場合に達成される。
【0058】
代替方法では、特に、無水処理するステップ(c)が封入エンクロージャの内部で行われる場合、本積層法は、積層3が−10℃超の露点を有する雰囲気に10分超曝露されないように実施される。言い換えると、作業雰囲気の露点を制御することは、この場合、無水処理するステップ(c)から第2のステップ(b)の終了まで、露点を−10℃超の温度に10分未満維持することからなる。
【0059】
このように、10分というこの最長時間の間、−10℃超の露点への曝露を制限することにより、積層界面における水の拡散を制限すること、および特に結合不良に関してこの結合の質を維持することが可能になったことが、経験から示されている。
【0060】
これは、封入エンクロージャから積層3を取り出した後、10分未満で第2のステップ(b)が開始されるように本方法を順序づけることによって実行することができる。
【0061】
好ましい実施形態によれば、ステップ(b)はアニーリングに相当し、アニーリング雰囲気を形成する気体は、−10℃未満の露点を有する。これにより、この強化アニーリングの最初のしばらくの間、接着度がいまだに閾値に達していないと同時に、アニーリング気体中に存在する水は積層界面において拡散しないことが確実となる。
【0062】
アニーリング炉の中を循環する気体が乾燥していない(すなわち、−10℃超の露点を有する)場合、無水処理するステップ(c)の終了から第2のステップの開始の間における曝露の継続時間が、閾値接着値に到達するために必要なアニーリング時間と合わせて実際に確実に10分未満となるようにする。
【0063】
無水処理するステップ(c)と第2のステップ(b)とを10分未満で一貫して連結することが不可能である場合、本発明は、−10℃未満の露点を有する雰囲気を有するストーブなどの区域中で、積層3を貯蔵するステップを設ける。この貯蔵は、水が積層界面において過剰に導入されることによって結合の質に影響を与えることのない、任意の継続時間を有していてもよく、例えば、1時間から100日以上までであってもよい。
【0064】
この貯蔵はまた、−30℃または−80℃などの、−10℃を大きく下回る露点を有し、場合により、例えば20℃から150℃までの温度である雰囲気中で行われてもよい。これらの設定により、結合の質をさらに改善することが可能になる。
【0065】
図7に描写される本発明の第2の実施形態では、無水処理するステップ(c)は、2枚の基板1、2を密接に接触させる第1のステップ(a)に続いて行われる。したがって、本発明は、水が積層3の積層界面4からその外部環境へ拡散しやすいことによって、この界面における水の量を制御することができるという観察結果をうまく利用する。
【0066】
よってこの場合、密接に接触させる第1のステップ(a)を、−10℃超の露点を有する雰囲気中で行うことができる。そのため、ステップ(a)をチャンバなどの封入された環境中で実施すること、および/または積層装置に浄化ユニットを設けることは必要でない。したがって、これは特に有利である。
【0067】
さらに、無水処理するステップ(c)が第2のステップ(b)の前に設けられており、かつ、無水処理するステップ(c)から第2のステップ(b)の終了までの間、作業雰囲気が制御されるならば、本積層法の大部分を任意の雰囲気中で実施することができる。
【0068】
よって、密接に接触させる第1のステップ(a)と無水処理するステップ(c)との間において、積層3を任意の雰囲気中で任意の期間の間貯蔵するステップを設けることが可能である。
【0069】
この第2の実施形態では、第1の基板1と第2の基板2とを積層することによって形成された、第1のステップ(a)の終了時に得られる積層3は、その積層界面4において制御されていない量の水を有する。
【0070】
特に結合不良に関して積層の質を改善するために、積層は、ステップ(c)中で−10℃未満、例えば−30℃または−80℃の露点を有する無水処理を受ける。
【0071】
この処理は、特に積層界面4からその外部環境への水の拡散を後押しするように、積層3を20℃から150℃の間で加熱するためのストーブ中で優先的に行われる。
【0072】
先の実施形態と同様に、−10℃未満の露点となるように、ストーブを、その雰囲気を浄化するためのユニットであって、そのエンクロージャ内に−10℃未満の露点を有する乾燥気体を循環させることを可能にするユニットと連動させてもよい。
【0073】
この無水処理の継続時間は、状況に合わせて適合させてもよい。例えば、積層界面4における(接触している表面の全範囲にわたる)すべての過剰な水が拡散することを望む場合、この期間は、基板1、2の大きさに合わせて調整される。
【0074】
よって、円形シリコン基板1、2の場合、この無水処理の継続時間は、積層3が50℃に加熱され、この処理の間−50℃の露点に供される場合、以下の表によって与えられる。
【0076】
上記で提示されている実験値は平均値に相当し、特に無水処理前の積層界面に存在する水の量に応じて調整できることに留意すべきである。
【0077】
他の状況では、積層界面4の全範囲の水を拡散させることを追求することが必要でない可能性があり、狭い外周区間上での拡散で十分である可能性がある。この場合、上記の表で与えられた無水処理の継続時間を短縮することが可能であり得る。
【0078】
本積層法の、接着度を強化する第2のステップ(b)は、無水処理するステップ(c)の後で実施される。好ましい実施形態によれば、アニーリング雰囲気を形成する気体は、−10℃未満の露点を有する。これにより、この強化アニーリングの最初のしばらくの間、接着エネルギーがいまだに閾値に達していないと同時に、アニーリング気体中に存在する水は積層界面において過剰に拡散しないことが確実となる。
【0079】
第1の実施形態と同様に、積層4が無水処理するステップ(c)から第2のステップ(b)の間で曝露される作業雰囲気は、制御される。第1の実施形態との関連で記載されたのと同じ手段が第2の実施形態にも当てはまるため、よって繰り返さない。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
200mmの直径および1から50ohms/cmの間である抵抗率pを有するシリコン<001>から作製された2枚の基板を、40mg/lのオゾンを有するオゾン処理水の溶液、ならびにアンモニア、過酸化水素および脱イオン水の濃度がそれぞれ0.25/1/5であるAPM(過酸化アンモニウム混合物)溶液で洗浄する。次に、2枚のウェハを乾燥させ、全体が周囲温度であり窒素雰囲気が−85℃未満の露点を有する積層チャンバに入れる。1分間待った後、2枚の基板を積層し、積層をチャンバから出す。10分未満経過した後、積層を、100ppb未満の水(−90℃の露点)を有する窒素下で管状炉に入れる。その後のアニーリング温度が50℃から1200℃の間のいずれであっても、結合にはいずれの結合不良も発生しない。さらに、2枚の基板間の接着度は、それらのうちの一方に対して機械的薄化を続行するのに十分である。
【0081】
(実施例2)
実施例1のものと同一の2枚の基板を、この実施例と同一の仕方でさらに調製する。乾燥後、周囲温度において2枚の基板を一時的に積層する。次に、これら2枚の積層された基板からなる積層を、−40℃未満の露点を有する空気を含むクリーンルームまたは−85℃未満の露点を有する窒素雰囲気を有するエンクロージャに入れる。次いで、2枚の基板を引き剥がし、それらの表面をこの無水雰囲気に曝露する。1分間待った後、周囲温度において2枚の基板を積層し、クリーンルームまたはエンクロージャから取り出す。10分未満経過した後、積層を、100ppb未満の水(−90℃の露点)を有する窒素下で管状炉に入れる。この雰囲気を10分間保持した後、温度を上昇させる。その後のアニーリング温度が50℃から1200℃の間のいずれであっても、結合にはいずれの結合不良も発生しない。さらに、2枚の基板間の接着度は、それらのうちの一方に対して機械的薄化を続行するのに十分である。
【0082】
(実施例3)
−40℃未満の露点を有する空気を含むクリーンルーム中で、200mmの直径および1から50ohms/cmの間である抵抗率を有するシリコン<001>から作製された2枚の基板を、実施例1と同一の仕方で洗浄する。乾燥後、周囲温度において2枚の基板を積層する。積層を、この乾燥したクリーンルームから出さずに、100ppb未満の水(−90℃の露点)を有する窒素下で管状炉に入れる。この雰囲気を10分間保持した後、温度を上昇させる。その後のアニーリング温度が20℃から1200℃の間のいずれであっても、結合にはいずれの結合不良も発生しない。さらに、2枚の基板間の接着度は、それらのうちの一方に対して機械的薄化を続行するのに十分である。
【0083】
(実施例4)
実施例1のものと同一の2枚の基板を、この実施例と同一の仕方でさらに調製する。乾燥後、2枚の基板を積層する。次に、−40℃未満の露点を有する空気を含むクリーンルーム中で基板を引き剥がし、このクリーンルームの空気に1分間曝露する。次いで、周囲温度においてそれらを再結合させる。2枚の積層された基板により形成された積層を、この乾燥したクリーンルームから出さずに、100ppb未満の水(−90℃の露点)を有する窒素下で管状炉に入れる。この雰囲気を10分間保持した後、温度を上昇させる。その後のアニーリング温度が20℃から1200℃の間のいずれであっても、結合にはいずれの結合不良も発生しない。さらに、2枚の基板間の接着度は、それらのうちの一方に対して機械的薄化を続行するのに十分である。
【0084】
(実施例5)
同様に200mmの直径を有するシリコン<001>から作製され、これまでの実施例と同一の仕方で調製された2枚の基板を、密閉されたチャンバを有さない結合装置中で積層する。それらを、周囲温度において、9℃の標準的な露点(すなわち、50%の相対湿度)を有する雰囲気中で積層する。次いで、積層された基板を、−80℃の露点を有する中性窒素ガスが50℃の温度で循環するストーブ中に、43日間置く。次いで、結合したものを100ppb未満の水(−90℃の露点)を有する窒素下で管状炉にそのまま入れる。その後のアニーリング温度が300℃から1200℃の間のいずれであっても、この熱処理後に観察される結合にはいずれの結合不良も発生しない。さらに、2枚の基板間の接着度は、それらのうちの一方に対して機械的薄化を続行するのに十分である。
【0085】
(実施例6)
200mmの直径を有するシリコン<001>から作製された基板を、先の実施例と同一の仕方で調製する。次に、積層された基板を、−80℃の露点を有する中性窒素ガスが50℃の温度で循環するストーブ中に、43日間置く。この期間の終了時に、300℃でのアニーリングをそのまま貯蔵ストーブ中で行い、したがって、ウェハを管状炉中に移さない。これまでの実施例と同様に、このアニーリングの終了時において、結合はいずれの結合不良も示さない。さらに、2枚の基板間の接着度は、それらのうちの一方に対して機械的薄化を続行するのに十分である。
【0086】
当然ながら、本発明は上記で記載された実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、それらに変形を施すことができる。
【0087】
本発明は、絶縁体の非常に微細な中間層(50nm未満)を有する基板の積層、接合部(光電池の接合部など)の形成を目的とした不均一III−V材料の直接結合、または強力な表面活性化ステップ(プラズマ活性化または機械的化学ポリッシングによる活性化など)を受けた基板の結合など、顕著な結合不良性につながる基板の積層のすべてに特別な利点を有する。
【0088】
本発明はまた、ウェハの端部に位置する一帯以外では通常は結合不良の発生につながることのない基板の積層において、利点を有する。この形態は、例えば特許文献2で記載されているように、結合波の伝搬によるこの点における水の蓄積と関連している可能性がある。本発明、特に無水環境中での貯蔵は、この場合、この水の蓄積をなくすること、およびそれによってそこに形成され得る不良の形成を防止することを可能にする。
【0089】
入手および実験の容易さの理由により、シリコンウェハを使用する例を本発明の記述において用いてきたが、本発明は、この材料に決して限定されない。さらに、基板のうちの一方または他方は、絶縁体として表面層を有していてもよい。基板のうちの一方または他方は、マイクロエレクトロニクス構成部品または単純な金属接続パッドを備えていてもよい。また、接着度を強化するステップ(b)は、本出願において明記されたように、アニーリングによって容易に実行されるが、他の処理(特に熱による)もこのような強化のために使用されてもよい。例えば、マイクロ波処理またはレーザ処理であってもよい。
【0090】
本発明の積層法の後に、摩擦、研磨および/または化学エッチングによって基板1、2の一方または両方を薄化するステップが行われてもよい。例えばSmart Cut(商標)技術に従って、2枚の基板1、2の一方の一部を、積層前に形成された脆弱面に沿って引き剥がすステップであってもよい。