(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貯蔵兼用生成タンクから取り出した還元剤溶液を貯留する調整タンクを有する濃度調整可能な調整タンク装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃焼機関の排ガス浄化設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、尿素粉は、水に極めて溶けやすく、大気中の水蒸気を吸湿して固化、固着しやすいので、適切に管理する必要がある。また、船舶内の空気は多湿である。このため、上記特許文献1には、尿素粉貯蔵タンク(原料ホッパー)に乾燥装置を設けたものが提案されている。
【0007】
また、特許文献2および3では、飽和溶液の尿素水を貯える溶液タンクと、水と前記溶液タンクから導いた尿素水とを混合させる混合部と、前記混合部で所望濃度の尿素水が製造されるように該混合部に供給される水及び前記溶液タンクからの尿素水の量を適宜に設定する設定部を具備する尿素水溶液製造装置が開示されている。これら尿素水溶液製造装置にも、尿素粉貯蔵タンク(尿素受槽)や尿素粉を貯蔵する倉庫(空間)が別途必要で、尿素粉を十分に貯留する広いスペースを必要とする。しかも尿素粉貯蔵タンクや倉庫に、尿素粉が固着しないように適切に湿度を管理する必要がある。
【0008】
さらに、上記特許文献2および3では、尿素粉と水とを混合して尿素水にするための溶液タンク(溶解槽)および撹拌装置(撹拌機)が必要となる。上記溶液タンクは、尿素粉および水を受けるとともに、これらを十分に撹拌させるため、必然的に大容積となる。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、排ガス浄化設備の省スペース化を実現できる燃焼機関の排ガス浄化設備を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る燃焼機関の排ガス浄化設備は、燃焼機関と、前記燃焼機関の排ガスラインの排ガス中に還元剤溶液を供給する還元装置と、還元剤粉体から還元剤溶液を製造する生成装置と、を具備し、
前記生成装置は、
還元剤粉体を貯蔵するとともに、溶媒を還元剤粉体に供給して溶解させる貯蔵兼用生成タンクを有する兼用タンク装置と、
前記貯蔵兼用生成タンクから取り出した還元剤溶液を貯留する調整タンクを有する濃度調整可能な調整タンク装置と、を備
え、
兼用タンク装置は、貯蔵兼用生成タンクで生成された還元剤溶液を高濃度化する高濃度化装置を具備し、
前記高濃度化装置は、
還元剤溶液の濃度を計測する生成用濃度計と、
生成された還元剤溶液を前記貯蔵兼用生成タンクに戻し還元剤粉体を再溶解する高濃度化ラインと、を有するものである。
【0011】
上記構成によれば、貯蔵兼用生成タンクにより、還元剤粉体を貯蔵するとともに、貯蔵した還元剤粉体に溶媒を供給して溶解させ、還元剤溶液を生成することができるので、粉状還元剤の貯蔵スペースを無くして、排ガス浄化設備の省スペース化を実現できる。
また、上記構成によれば、還元剤溶液の濃度が低い時に、高濃度化装置により、貯蔵兼用生成タンクで生成された還元剤溶液を、高濃度化ラインを介して貯蔵兼用生成タンクに戻し、還元剤粉体を再溶解する。これにより、貯蔵兼用生成タンク内の還元用粉体が減少して溶媒の接触面が減少しても、高濃度な還元剤溶液を生成することができる。
【0012】
また上記構成において、
前記貯蔵兼用生成タンクから取り出した還元剤溶液を貯留する調整タンクを有する濃度調整可能な調整タンク装置を備えるものである。
【0016】
本発明に係る燃焼機関の排ガス浄化設備は、燃焼機関と、前記燃焼機関の排ガスラインの排ガス中に還元剤溶液を供給する還元装置と、還元剤粉体から還元剤溶液を製造する生成装置と、を具備し、
前記生成装置は、
還元剤粉体を貯蔵するとともに、溶媒を還元剤粉体に供給して溶解させる貯蔵兼用生成タンクを有する兼用タンク装置と、
前記貯蔵兼用生成タンクから取り出した還元剤溶液を貯留する調整タンクを有する濃度調整可能な調整タンク装置と、を備え、
調整タンク装置は、還元剤溶液の濃度を適正範囲に調整する濃度調整装置を具備し、
前記濃度調整装置は、
調整タンクの還元剤溶液の濃度を計測する調整用濃度計と、
前記調整タンクの還元剤溶液を貯蔵兼用生成タンクに戻して還元剤粉体を再溶解させる還流ラインと、
溶媒を前記調整タンクに補給する希釈ラインと、を有するものである。
【0017】
上記構成によれば、調整タンク装置により、調整用濃度計の検出値に基づいて調整タンク内の還元剤溶液の濃度が適正範囲より低く検出された時に、調整タンクの還元剤溶液を貯蔵兼用生成タンクに戻して還元用粉体を再溶融させ、還元剤溶液の濃度を上げる。また調整タンク内の還元剤溶液の濃度が適正範囲より高く検出された時に、希釈ラインから調整タンクに溶媒を補給することで、調整タンクの還元剤溶液を貯蔵兼用生成タンクに戻して還元用粉体を再溶融させ、還元剤溶液の濃度を下げる。これにより、調整タンクにおける還元剤溶液の濃度を、適正範囲に調整することができる。
【0018】
本発明に係る燃焼機関の排ガス浄化設備は、燃焼機関と、前記燃焼機関の排ガスラインの排ガス中に還元剤溶液を供給する還元装置と、還元剤粉体から還元剤溶液を製造する生成装置と、を具備し、
前記生成装置は、
還元剤粉体を貯蔵するとともに、溶媒を還元剤粉体に供給して溶解させる貯蔵兼用生成タンクを有する兼用タンク装置と、
前記貯蔵兼用生成タンクから取り出した還元剤溶液を貯留する調整タンクを有する濃度調整可能な調整タンク装置と、を備え、
調整タンク装置は、還元剤溶液を撹拌する溶液撹拌装置を具備し、
前記溶液撹拌装置は、
調整タンクの還元剤溶液を取り出して再度当該調整タンクに戻し、還元剤溶液を循環させて前記調整タンク内の還元剤水液を撹拌する撹拌ラインと、を有するものである。
【0019】
上記構成によれば、還流用ポンプにより、循環ラインを介して還元剤溶液を循環させて、調整タンク内の還元剤溶液を撹拌する。これにより還元剤溶液の濃度むらをなくして均一となすることができる。また撹拌翼を回転させるような機械式撹拌装置に比べて、振動に強くかつ故障も少なく、メンテナンス性を改善することができる。
【0020】
本発明に係る燃焼機関の排ガス浄化設備は、燃焼機関と、前記燃焼機関の排ガスラインの排ガス中に還元剤溶液を供給する還元装置と、還元剤粉体から還元剤溶液を製造する生成装置と、を具備し、
前記生成装置は、
還元剤粉体を貯蔵するとともに、溶媒を還元剤粉体に供給して溶解させる貯蔵兼用生成タンクを有する兼用タンク装置と、
前記貯蔵兼用生成タンクから取り出した還元剤溶液を貯留する調整タンクを有する濃度調整可能な調整タンク装置と、を備え、
燃焼機関が船舶燃焼機関であり、
海水を真水化することで溶媒を製造する溶媒製造機と、
前記溶媒を貯蔵兼用生成タンクに供給する溶媒供給ラインと、を具備し、
前記溶媒供給ラインに、溶媒を適正温度に加熱する加熱装置を有するものである。
【0021】
上記構成によれば、船舶の燃焼機関に適用することで、限られた船体内空間を有効利用することができる。また加熱装置により溶媒を適正な温度範囲にすることで、還元剤粉体の溶解状態が低下することがなく、効率よく還元剤溶液を生成することができる。
【0022】
本発明に係る燃焼機関の排ガス浄化設備は、燃焼機関と、前記燃焼機関の排ガスラインの排ガス中に還元剤溶液を供給する還元装置と、還元剤粉体から還元剤溶液を製造する生成装置と、を具備し、
前記生成装置は、
還元剤粉体を貯蔵するとともに、溶媒を還元剤粉体に供給して溶解させる貯蔵兼用生成タンクを有する兼用タンク装置と、
前記貯蔵兼用生成タンクから取り出した還元剤溶液を貯留する調整タンクを有する濃度調整可能な調整タンク装置と、を備え、
兼用タンク装置は、
固液分離部材により還元剤粉体から分離された還元剤溶液を貯留する溶液貯留部と、
貯蔵兼用生成タンク内で還元剤溶液の液相面を検出する溶媒検出器と、を備えるものである。
【0023】
上記構成によれば、溶媒レベル計の検出値に基づいて、溶媒を還元剤粉末に十分に浸漬させ、高濃度の還元剤溶液を、溶液分離部材を介して溶液貯留部からスムーズに取り出すことができる。
また、上記構成において、調整タンク装置は、還元剤溶液を調整する希釈装置を具備し、
前記希釈装置は、溶媒を調整タンクに補給する溶媒補給ラインを有するものである。
上記構成によれば、調整タンク装置により、生成用濃度計の検出値に基づいて、調整タンクに溶媒を補給することにより、高濃度な還元剤溶液を希釈して排ガス還元に適した濃度範囲にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、還元剤粉体の貯蔵空間を省スペース化でき、貯蔵タンクから生成タンクへの還元剤粉体の供給装置を無くして低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施例1]
(設備概要)
図1は本発明の関連技術に係る舶用燃焼機関の排ガス浄化設備の実施例1を示す概略構成を示す図である。この舶用機関の排ガス浄化設備は、溶媒である水を精製するための造水機(溶媒製造機)11と、大型ディーゼル機関からなる舶用燃焼機関16と、を備えた船舶10において、上記舶用燃焼機関16から排出される排ガスを還元装置12により浄化するものである。この還元装置12は、排ガスライン16Lに配置された還元用触媒13と、サービスタンク14内の尿素水(還元剤溶液)を還元装置用ポンプP3(
図3)により導入して排ガス中に噴射するノズル式の還元剤吹込み装置15と、を具備している。そして、還元剤吹込み装置15により尿素水が吹き込まれた排ガスを還元用触媒13に導入して、窒素酸化物(NOx)などを含む大気汚染物質を除去し排ガスを浄化する。
【0027】
この排ガス浄化設備は、還元剤粉体である尿素粉末Uから尿素水を生成する生成装置20を具備している。この生成装置20は、貯蔵兼用生成タンク(以下、兼用タンクという)31を有する兼用タンク装置30と、兼用タンク31で生成された尿素水を濃度調整可能に貯留する調整タンク41を有する調整タンク装置40と、を具備する。兼用タンク31は、少なくとも1回の航海に必要な全ての尿素粉末Uを貯蔵する貯蔵機能と、尿素粉末Uに溶媒である水を供給して尿素水を生成する生成機能とを有している。そして、調整タンク41の尿素水が、還元装置12のサービスタンク14に供給される。調整タンク装置40は、調整タンク41と希釈装置42と撹拌装置43とを具備している。
【0028】
また、この排ガス浄化設備は、造水機11から兼用タンク31に水を供給する溶媒供給ラインL0と、兼用タンク31から調整タンク41に尿素水を供給する生成ラインL1と、調整タンク41からサービスタンク14に尿素水を供給する溶液供給ラインL2と、を具備している。
【0029】
造水機11から兼用タンク31に水を供給する溶媒供給装置21は、溶媒供給ラインL0の上流側に溶媒供給用ポンプP0が設置されている。また溶媒供給ラインL0の兼用タンク31への入口近傍に、舶用燃焼機関16などから取り出した熱水や蒸気、或いは発電電力により、水を加熱する加熱装置22が設置されている。この加熱装置22は、兼用タンク31において、水で尿素粉末Uを溶解する時に吸熱反応が生じ、この吸熱反応により水の温度が低下して、溶解が阻害されるのを防止するためである。溶媒である水の適正温度はたとえば40℃〜50℃である。これは適正温度が40℃未満では、尿素粉末Uが水に溶ける溶解量が低下して高濃度の尿素水が得られないためであり、50℃を超えると、毒性のあるアンモニアガスが発生して周辺雰囲気を悪化させ、作業員に悪影響を与えるためである。
【0030】
(兼用タンク装置・兼用タンク)
図2は、兼用タンク装置を示す縦断面図である。
図2に示すように、兼用タンク31は、溶媒供給ラインL0から供給された水を複数の散水ノズル23a〜23dを介して上方から均等に散布し、これにより尿素粉末Uを溶解させて尿素水を生成する。この兼用タンク31は、たとえば角筒状(または円筒状)の側壁31aと、底壁31bと、天壁31eとを具備している。底壁31bは、下方に向かって所定の勾配で傾斜する傾斜壁部31cと、傾斜壁部31cの下端部に形成された開口部31dとを有する。また天壁31eは、開閉蓋を有する薬剤投入口31fが形成されている。さらに開口部31dに、尿素粉末Uと尿素水の混合物から尿素水を分離して通過を許す固液分離部材であるフィルタ32が設けられおり、このフィルタ32の下部に、尿素水を溜める溶液貯留部33が、兼用タンク31と一体に形成されている。尿素粉末は水に非常に溶解しやすいので、フィルタ32を通過した溶液貯留部32の尿素水は、尿素が完全に溶解した飽和状態に近いものとなる。なお、兼用タンク31と溶液貯留部32の間にフィルタ32を設置したが、このフィルタ32に替えて、尿素粉末Uと水の混合物から尿素水を分離する公知の分離構造体であればよい。
【0031】
図1に示すように、生成ラインL1には、上流側から順に、尿素水の濃度を検出する生成用濃度計CE1と、高濃度化用ポンプ兼用の生成用ポンプP1と、高濃度化ラインL3の分岐部と、生成用バルブV1と、調整タンク41に送り出される尿素水供給量を検出する生成用流量計F1とを具備している。なお、この生成用濃度計CE1は生成ラインL1に設けられているが、溶液貯留部32の尿素水濃度を検出することができればよく、任意に設置場所を選択することができる。
【0032】
兼用タンク装置30に、兼用タンク31で生成された尿素水を高濃度化するために生成用高濃度化装置(高濃度化装置)35が設けられている。生成用高濃度化装置35は、生成ラインL1の生成用濃度計CE1、生成用ポンプP1および生成用バルブV1と、高濃度化ラインL3と、高濃度化ラインL3に介在された高濃度化用バルブV2と、を具備している。もちろん、生成ラインL1と高濃度化ラインL3の分岐部に、生成用バルブV1と高濃度化用バルブV2を兼用する三方弁を設けてもよい。
【0033】
(生成用高濃度化装置の作用)
上記構成において、生成用ポンプP1を作動し、生成用バルブV1を開、高濃度化バルブV2を閉として、溶液貯留部32の尿素水を生成ラインL1から調整タンク41に送る。この時、生成濃度計CE1により尿素水の濃度が検出される。この尿素水の濃度が適正範囲より低い場合、
図3に示す生成制御装置(還元剤生成制御装置)45により(または表示装置46を見た作業員による手動操作により、)生成用高濃度化装置35が作動される。すなわち、生成用バルブV1を閉、高濃度化用バルブV2を開として、生成用ポンプP1により尿素水を高濃度化ラインL3、溶媒供給ラインL0、加熱装置22を介して散水ノズル23a〜23dに送ることにより、尿素粉体Uを再溶解させて尿素水の濃度を高めることができる。
【0034】
ここで、還元装置12に使用する尿素水の最適な濃度範囲は、ISOのAUS40に記載されるように、39重量%以上で、41%重量以下である。尿素水の濃度が39%未満の場合に、生成用高濃度化装置35が作動される。
【0035】
また兼用タンク31は、尿素粉末Uに浸漬した溶媒(尿素水)の液相面を検出する溶媒検出器である溶媒レベル計36が設けられている。この溶媒レベル計36は、たとえば溶液貯留部32から兼用タンク31の尿素粉末Uの上方空間にわたって接続されたリードパイプ36aと、リードパイプ36aの上端部から液相面までの距離から液相面の位置を検出する非接触式の距離センサ36bとを備えている。この溶媒レベル計36には、磁気フロート式や超音波式、静電容量式などの溶媒レベル計を用いてもよい。また、仮想線で示すように、液相面の上限位置と下限位置で尿素水の有無を検出する接触式の液面スイッチ36c,36dを設けてもよい。
【0036】
この溶媒レベル計36の検出値が、
図3に示す生成制御装置45に入力されて兼用タンク31の液相面が監視されており、フィルタ32より上方の水(尿素水)の液相面が、少なくともフィルタ32からの所定高さ:d以上になるように水の供給量が制御される。これにより、水(尿素水)の液相面の下方部分が、たとえばd=10cm以上が尿素粉末Uに浸漬されることで、飽和状態に近い高濃度な尿素水を得ることができる。
【0037】
また溶媒レベル計36により検出高さ位置近傍で、尿素粉末Uの有無を検出する還元粉体レベル計37が設けられている。生成用高濃度化装置35による尿素水の循環が頻繁に起こっている場合に、超音波式や画像検出式の還元粉体レベル計37により尿素粉末Uの残量を確認することができ、十分な濃度で溶解可能な位置に対応して、尿素粉末Uの有無を検知することができる。
【0038】
なお、実施例1では、溶液貯留部33を兼用タンク31に一体に形成したが、
図4に示すように、兼用タンク31とは別体の溶液貯留タンク(溶液貯留部)53としてもよい。すなわち、兼用タンク31で底壁近傍の側壁31aに開口部51が形成され、開口部51に配管52を介して溶液貯留タンク53が接続されている。なお、開口部51には、尿素水のみの通過を許す公知の固液分離部材(またはフィルタ)54が取り付けられていてもよいが、兼用タンク31内から尿素粉末Uが流れ出ないように、十分に小さい内径の配管52を使用したり、配管52を交互に組み合わせたラビリンス構造として、配管52内で尿素粉末Uをほとんど完全に溶解する構造であれば、フィルタを取り付けなくてもよい。また溶媒レベル計36は、溶液貯留タンク53の液面を計測するレーザや超音波式、フロート式などの検出器により構成される。
【0039】
この兼用タンク31は、散水ノズル23a〜23dに替えて、溶媒供給ラインL0に接続された複数の浸透管55を均等な間隔で垂下して尿素粉末Uの上方から内部に貫入したものが用いられる。これら浸透管55は、埋没される下方部分に多数の孔部が形成され、水を尿素粉末Uの内部に供給することで、さらに、尿素粉末Uを均等に溶解させることができる。
【0040】
(調整タンクと調整タンク装置)
調整タンク装置40は、調整タンク41に供給された尿素水の濃度が適正範囲を超えた時に、調整タンク41に水を補給して尿素水を希釈し、適正範囲の濃度とする希釈装置42が設けられている。さらに、調整タンク装置40には、希釈装置42により水が補給されて希釈された時に、尿素水を撹拌して均一化な濃度とする撹拌装置43が設けられている。
【0041】
調整タンク41の底部から尿素水をサービスタンク14に送る溶液供給ラインL2には、上流側から、調整用濃度計CE2と、撹拌用ポンプ[および還流用ポンプ(実施例2)]兼用の溶液供給用ポンプP2と、溶液供給ラインL2から調整タンク41に接続された撹拌ラインL5の分岐部と、溶液供給用バルブV4と、が順次設けられている。なお、この調整用濃度計CE2は溶液供給ラインL2に設けられているが、調整タンク41の尿素水濃度を検出することができればよく、任意に設置場所を選択することができる。
【0042】
希釈装置42は、溶媒供給ラインL0から調整タンク41に接続された希釈ライン兼用の溶媒補給ラインL4と、この溶媒補給ラインL4に設けられた溶媒補給用流量計F2および溶媒補給用バルブV3とを具備している。溶媒補給ラインL4は、溶媒供給用ポンプP0と加熱装置22の間の溶媒供給ラインL0から分岐されている。
【0043】
前記撹拌装置43は、撹拌ラインL5と、撹拌ラインL5に介在された撹拌用バルブV5、撹拌ラインL5と、撹拌ラインL5の下流端(出口端)が接続されて調整タンク41に設置されたノズル(図示せず)と、を具備している。図示しない前記ノズルは、たとえば調整タンク41内の尿素水に渦流を形成する接線方向に設置され、これにより、循環される尿素水を利用して効果的に撹拌し尿素水の濃度の均一化を図ることができる。
【0044】
ここで、希釈装置42による濃度調整動作を説明する。
まず、生成用ポンプP1が作動されて、生成用濃度計CE1により生成ラインL0から調整タンク41に送られる尿素水の濃度が検出される。尿素水濃度が適正範囲より高い場合、生成制御装置45により、希釈装置42と撹拌装置43が作動される。希釈装置42では、生成制御装置45により、生成用流量計F1により検出された尿素水の供給量と、生成用濃度計CE1により検出された尿素水濃度に基づいて水の補給量が演算され、溶媒補給用バルブV3の開度および開放時間が制御される。この水の補給量は、溶媒補給用流量計F2により検出されて生成制御装置45にフィードバックされる。さらに、撹拌装置43では、溶液供給バルブV4を閉、撹拌用バルブV5を開とし、溶液供給用ポンプP2が作動されて、調整タンク41の底部の尿素水を、溶液供給ラインL0および撹拌ラインL5を介して調整タンク41に戻し、循環される尿素水を利用して尿素水を撹拌し濃度の均一化を図ることができる。
【0045】
ここで、尿素水濃度が39重量%未満と、39重量%以上で41重量%以下(適正範囲)と、41重量%を越える場合の、各バルブV1〜V3の開閉動作を表1に示す。
【0047】
(ガス浄化設備の動作)
上記排ガス浄化設備の運転方法を、
図3を参照して説明する。生成制御装置45には、手動操作およびデータ入力可能な操作盤44と、生成制御装置45に入力される各濃度計CE1,CE2や各液面センサ14R,41R、各レベル計36,37の検出値、各ポンプP0〜P3、各バルブV1〜V4の操作状態がそれぞれ表示される表示装置46が設けられている。そして、
図3に示すように、舶用燃焼機関16を制御する舶用機関制御装置の信号が還元剤吹込み装置15に入力されており、この還元剤吹込み装置15からの信号が生成制御装置45に入力されている。
【0048】
舶用燃焼機関16が駆動されて排ガスライン16Lから排ガスが排出されると、サービスタンク14の尿素水が還元剤吹込み装置15を介して排ガス中に吹き込まれる。サービスタンク14の尿素水の減少が、サービスタンク液面センサ14R(
図3)に検出されると、溶液供給用ポンプP2が作動されて調整タンク41の尿素水がサービスタンク14に供給される。
【0049】
さらに調整タンク41の尿素水が減少して調整タンク液面センサ41Rに検出されると、生成用ポンプP1を作動して溶液貯留部33の尿素水を調整タンク41に供給する。さらに兼用タンク31の尿素水の減少が、溶媒レベル計36(
図3)に検出されると、溶媒供給ポンプP0が作動されて溶媒供給ラインL0から水が兼用タンク31に供給される。
【0050】
(実施例1の効果)
上記実施例1によれば、
(1)尿素粉末Uを貯蔵するとともに、貯蔵した尿素粉末Uに、溶媒である水を供給して溶解させ尿素水を生成する兼用タンク31を設け、この兼用タンク31に少なくとも1回の航海に必要な尿素粉末Uを貯蔵したので、従来では必要な尿素粉末Uの貯蔵スペースや、尿素粉末Uを貯蔵タンクから生成用タンクに供給する搬送装置を無くして、排ガス浄化設備を省スペース化することができる。また、尿素粉末Uや尿素水を積載する構造にするのに比較して、積載容量の低減を図ることができる。
【0051】
(2)兼用タンク装置30に、兼用タンク31で生成された尿素水を高濃度化する生成用高濃度化装置35を設けたので、尿素粉末Uの減少や溶媒である水の吸熱作用による低温化などに起因して、兼用タンク31で生成された尿素水が低濃度の場合でも、生成された尿素水を、高濃度化ラインL3を介して兼用タンク31に戻し、尿素粉末Uを再溶解させることにより、高濃度な尿素水を生成することができる。
【0052】
(3)調整タンク装置40では、調整タンク41に送られた尿素水が、適正範囲より高濃度であった場合、希釈装置42により溶媒補給ラインL4を介して調整タンク41に溶媒である水を補給する。これにより、排ガスの還元に適した適正範囲の濃度の尿素水を、還元装置12に供給することができる。
【0053】
(4)従来の尿素水タンクに設けられる機械式撹拌装置は、プロペラおよびその駆動機構などを有する複雑な構成となる。特に船舶に機械式撹拌装置を搭載した場合、波浪による船体揺動に起因して、撹拌軸への粉衝撃などによりトラブルが発生するおそれがあった。実施例1では、調整タンク装置40の撹拌装置43により、調整タンク41内の尿素水を、溶液供給ラインL2および撹拌ラインL5を介して循環させる。このように循環水流により、調整タンク41の尿素水を撹拌するので、濃度の均一化を効率よくおこなうことができ、故障も少なく、メンテナンスも少なくて済み、コストを削減することができる。
【0054】
(5)溶媒供給ラインL0に加熱装置22を設けたので、尿素粉末Uを溶解するのに適した温度にすることができ、尿素粉末Uの溶解による吸熱作用に起因して、溶解速度や溶解濃度が低下することがなく、また有害なアンモニアガスが発生することもない。
【0055】
(6)兼用タンク31では、溶媒レベル計36の検出値に基づいて、溶媒を還元剤粉末Uに十分に浸漬させるので、高濃度の尿素水を得ることができる。
【0056】
[実施例2]
図5は、本発明の関連技術に係る船舶機関の排ガス浄化設備の実施例2の概略構成を示す図である。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
実施例1では、兼用タンク装置30に生成用高濃度化装置35を設け、調整タンク装置40に希釈装置42を設けたが、実施例2では、調整タンク装置60に、希釈装置42と、調整用高濃度化装置(高濃度化装置)62とを具備した濃度調整装置61が設けられている。
【0057】
調整タンク41からサービスタンク14に接続された溶液供給ラインL2に、上流側から順に、調整用濃度計CE2、撹拌および還流兼用の溶液供給用ポンプP2、上流部が部分的に撹拌ラインL5と兼用の還流ライン(上流側は)L6の接続部、および溶液供給用バルブV4が設けられている。調整用濃度計CE2は、溶液供給ラインL2を流れる尿素水の濃度を計測する。還流ラインL6は、上流側から順に、撹拌ラインL5の分岐部と、還流用バルブV6とが設けられ、下流端が溶液供給ラインL2に接続されている。したがって、調整用高濃度化装置63では、調整用濃度計CE2により溶液供給ラインL2の尿素水が適正範囲より低濃度であることが検出されると、溶液供給用バルブV2を閉、還流用バルブV6を開、(撹拌用バルブV5が閉)として、溶液供給ラインL2の尿素水を還流ラインL6および溶媒供給ラインL0を介して兼用タンク31に戻し、散水ノズル23a〜23dから再散布して尿素粉末Uを再溶解し、溶液貯留部33から調整タンク41に送り、尿素水を高濃度化する。もちろん、還流ラインL6で撹拌ラインL5との分岐部に、還流用バルブV6と撹拌用バルブV5とを兼用する三方弁を設けてもよい。
【0058】
ここで、濃度調整装置61による濃度調整動作を説明する。
上記濃度調整装置61において、溶液供給用ポンプP2が作動されて、調整用濃度計CE2により溶液供給ラインL2からサービスタンク14に送られる尿素水の濃度が検出される。尿素水濃度が適正範囲より高い場合、生成制御装置45により希釈装置42と撹拌装置43が作動される。まず、撹拌装置43では、溶液供給用バルブV4と還流用バルブV6がそれぞれ閉、撹拌用バルブV5を開として、溶液供給ラインL2の尿素水を、還流ラインL6、撹拌ラインL5を介して調整タンク41に戻す。そして、希釈装置42では、調整用濃度計CE2による尿素水の濃度と、調整タンク41の尿素水量に基づいて、生成制御装置45により溶媒補給用バルブV3の開度が制御され、溶媒補給ラインL4から調整タンク41に所定量の水が補給され、尿素水が適正範囲の濃度に希釈される。また、撹拌装置43の動作で調整タンク41における尿素水の濃度の均一化が図られ、調整用濃度計CE2により尿素水の正確な濃度が検出される。
【0059】
また反対に、調整用濃度計CE2により検出された尿素水濃度が適正範囲より低い場合、先に述べたように、調整用高濃度化装置62により尿素水の濃度が高められる。
【0060】
尿素水濃度が39重量%未満と、39重量%以上で41重量%以下(適正範囲)と、41重量%を越える場合の、バルブV1とV3〜V6の開閉動作を表2に示す。
【0062】
上記実施例2によれば、実施例1の効果の(1)、(3)、(5)、(6)と同様の効果を奏する。さらに、調整タンク41に希釈装置42と調整用高濃度化装置62とを具備した濃度調整装置61を設けたので、調整用濃度計CE2の検出値に基づいて、希釈装置42で尿素水の濃度を低下させ、調整用高濃度化装置62で尿素水の高濃度を促進させ、還元に適正な範囲の濃度の尿素水を得ることができる。
【0063】
[実施例3]
図6は、本発明の関連技術に係る船舶機関の排ガス浄化設備の実施例3の概略構成を示す図である。実施例3は、実施例1で説明した兼用タンク装置30の生成用高濃度化装置35と、実施例2で説明した調整タンク装置61の調整用高濃度化装置62と、実施例1および2に共通の希釈装置42、撹拌装置43をそれぞれ設けた排ガス浄化設備である。
【0064】
実施例3において、2つの高濃度化装置35,62を選択的に使用して、尿素水の高濃度化を図り、希釈装置42、撹拌装置43により尿素水濃度の低下を図ることができる。そして、トラブルにより高濃度化装置35,62の一方が使用不能となっても、他方で高濃度化を図ることができる。
実施例3によれば、実施例1および2と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
上記実施例1〜3では、触媒を用いる選択的触媒還元方式(SCR)としたが、本発明は、触媒を用いない無触媒脱硝方式(SNCR)に用いてもよい。
【0066】
上記実施例1〜3における構成部材は、相互に干渉したり、矛盾が起きない範囲で、適宜組み合わせて使用することができる。