(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガラスランをウインドフレームに組み付ける際には、ガラスランの車室内側の側壁部をウインドフレームの内部に押し込むことになるが、このとき、特許文献1、2のガラスランの車室内側の側壁部には傾斜壁部があることから該傾斜壁部が押し込み力によって変形しやすく、その押し込み力が該傾斜壁部の傾斜方向、即ち、車室内外方向に逃げてしまい、その結果、組み付け作業性が悪化することが考えられる。
【0005】
また、特許文献1、2のように車室内側の側壁部の一部にのみ傾斜壁部を設けると、側壁部が途中で屈曲するように成形しなければならず、押出成形時の断面形状寸法精度を高めるのが困難になるという問題もある。
【0006】
さらに、特許文献1、2では、ガラスランの組み付け状態において、底部シールリップがウインドフレームの底壁部に当接して反発力を側壁部方向に作用させるようにしているのであるが、車室内側の側壁部に傾斜壁部があると、その底部シールリップの反発力が傾斜壁部の傾斜方向に逃げてしまい、その結果、底部シールリップの反発力が車室内側の側壁部に有効に作用しなくなる。こうなると、ガラスランの車室内側の側壁部をウインドフレームに係合させておくための力が減少し、ガラスランの一部がウインドフレームから離脱してしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラスランの押出成形時の断面形状寸法精度を高くするととともに、ウインドフレームへの組付性も良好にし、しかも、組み付け後においてはガラスランがウインドフレームから離脱しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、ガラスランの車室内側の側壁部に傾斜壁部ができないようにし、さらに、反発力を発生させるためのリップが車室内側の側壁部または底壁部の端部からガラスランの外方へ向けて突出するように形成されている構成とした。
【0009】
第1の発明は、
自動車のドアに昇降可能に設けられたウインドガラスの外周部を支持するウインドフレームに組み付けられる自動車用ガラスランにおいて、
底壁部と、車外側側壁部と、車内側側壁部とが弾性材により一体成形され、
上記底壁部は上記ウインドフレームが有するフレーム底壁部に沿うように車室内外方向に延び、上記車内側側壁部は上記底壁部の車室内側の端部から上記ウインドフレームが有するフレーム内側壁部に沿うように直線状に延び、該車内側側壁部の外面には、上記フレーム内側壁部の内面に対して上記フレーム底壁部側から係止する内側係止部が形成され、
上記底壁部の車室内側の端部または上記車内側側壁部における上記底壁部側の端部には、上記ガラスランの外方へ向けて突出し、上記ウインドフレームへの組付状態で上記フレーム底壁部に当接して反発力を発生する底部リップが形成され
、
上記ウインドフレームへの組付状態で、上記車内側側壁部における上記底壁部側の端部と上記ウインドフレームの上記フレーム底壁部との間に隙間が形成されるように、上記ガラスランの底面の車室内側に凹部を有しており、
上記隙間の車室内外方向の寸法は、上記車内側側壁部における上記底壁部側の車室内外方向の寸法よりも短く、かつ、上記ガラスランの上記ウインドフレームへの組付時に上記車内側側壁部を上記フレーム底壁部側へ変位可能に設定されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ガラスランの車内側側壁部がフレーム内側壁部に沿うように直線状に延びているので、従来例のように車室内側側壁部の一部分に傾斜壁部を形成する場合に比べてガラスランの成形精度が高まる。
【0011】
また、ガラスランをウインドフレームに組み付ける際には、ガラスランの車室内側側壁部をその先端側からガラスランに押し込んでいく。このとき、ガラスランの車室内側側壁部がフレーム内側壁部に沿うように直線状に延びているので、押し込み力が車室内外方向に逃げにくくなり、ウインドフレームへの組付性が良好になる。さらに、この組み付け時には、底部リップがガラスランの外方へ向けて突出しているので、車室内側側壁をウインドフレームに押し込む際に底部リップがウインドフレームに接触したとき、底部リップが屈曲変形し易くなり、このことによってもウインドフレームへの組付性が良好になる。尚、「ガラスランの外方へ向けて突出する」とは、車体基準ではなく、ガラスランを基準にしたときに、そのガラスランの外方向に突出するということである。
【0012】
そして、組み付け後においては、ガラスランの車内側側壁部の係止部がフレーム内側壁部の内面に対してフレーム底壁部側から係止する。この係止状態では、ガラスランの底部リップがフレーム底壁部に当接して反発力を発生している。この反発力はフレーム底壁部側からの反発力であるため、ガラスランの内側係止部をフレーム内側壁部の内面に係止させる方向の力となる。よって、ガラスランがウインドフレームから離脱し難くなる。
【0013】
また、ガラスランの組付時に車内側側壁部を正規の組付位置よりも隙間が存在する分だけウインドフレームに深く押し込むことが可能になる。これにより、車内側側壁部の係止部をフレーム内側壁部に係止させる際に、車内側側壁部をウインドフレームに一旦深く押し込んで、その後、底部リップの反発力によって内側係止部をフレーム内側壁部に係止させることが可能になる。よって、内側係止部を係止させる作業が容易に行えるようになる。
【0014】
第
2の発明は、第
1の発明において、
上記車内側側壁部における上記底壁部側とは反対側の端部には、上記ウインドフレームの外面を覆う内側意匠リップが形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、内側意匠リップによってウインドフレームの外面が覆われるので、安全性が確保されるとともに、外観見栄えが向上する。この場合に、ガラスランの車内側側壁部を、フレーム内側壁部に沿った方向から押し込むようにしてウインドフレームに容易に組み付けることが可能になる。
【0016】
第
3の発明は、第1
または2の発明において、
上記車外側側壁部の厚みは上記車内側側壁部の厚みよりも薄く設定されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ウインドガラスを車室外側に位置付けることが可能になるので、ウインドガラスの車室外面と、ウインドフレームの車室外面との境界部分にできる段差が低くなり、フラッシュサーフェース化が図られる。
【0018】
第
4の発明は、第1から
3のいずれか1つの発明において、
上記底壁部には、上記ウインドガラスが上昇端位置にあるときに該ウインドガラスの縁部が当接するガラス打音抑制リップが該ウインドガラスの下降方向へ向けて突出するように形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ウインドガラスを上昇させていくと、ウインドガラスの縁部がガラス打音抑制リップに当接することで、ウインドガラスが上昇端位置に達したときにガラス打音の発生が抑制される。
【0020】
第
5の発明は、第1から
3のいずれか1つの発明において、
上記車内側側壁部には、上記ウインドガラスの車室内面に当接する車室内側シールリップが形成され、
上記車内側側壁部には、上記車室内側シールリップへ向けて延びるラトル音抑制リップが形成されていることを特徴とする。
【0021】
すなわち、例えばウインドガラスを少しだけ下げた状態でドアを閉めたり、悪路を走行すると、ウインドガラスが車室内外方向に振動することがある。このウインドガラスの振動に追従するように車室内側シールリップが振動して車室内側シールリップと車内側側壁部とが離着することによって発生する音、即ちラトル音が問題となることがあるが、この発明では、車室内側シールリップと車内側側壁部との間にラトル音抑制リップが介在することになるので、ラトル音の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、ガラスランの車内側側壁部がフレーム内側壁部に沿うように直線状に延びているので、押出成形時の断面形状寸法精度を高めることができるとともに、ウインドフレームへの組付性を良好にすることができる。そして、ガラスランの底壁部の車室外側の端部または車内側側壁部における底壁部側の端部に、ガラスランの車室内外方向外側へ向けて突出する底部リップを形成し、底部リップをフレーム底壁部に当接させて反発力を発生させるようにしたので、組付性を悪化させることなく、組み付け後におけるガラスランのウインドフレームからの離脱を抑制することができる。
【0023】
また、車内側側壁部の端部とフレーム底壁部との間に隙間を形成しているので、車内側側壁部の内側係止部をフレーム内側壁部に容易に係止させることができる。
【0024】
第
2の発明によれば、ガラスランの車内側側壁部における底壁部側とは反対側の端部に内側意匠リップを形成してウインドフレームの外面を覆うことができるので、安全性を確保できるとともに、外観見栄えを向上させることができる。そして、ガラスランの車内側側壁部を、フレーム内側壁部に沿った方向から押し込むようにしてウインドフレームに容易に組み付けることができる。
【0025】
第
3の発明によれば、車外側側壁部の厚みを車内側側壁部の厚みよりも薄くしたので、フラッシュサーフェース化を図ることができる。
【0026】
第
4の発明によれば、ガラスランの底壁部にガラス打音抑制リップを設けたので、ウインドガラスが上昇端位置に達したときにガラス打音の発生を抑制できる。
【0027】
第
5の発明によれば、車内側側壁部と車室内側シールリップとの間にラトル音抑制リップを介在させることができるので、ラトル音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
(ドアの構成)
図1は、本発明の実施形態に係る自動車100を斜め後方から見た斜視図である。自動車100の側部の前側にはフロントドア101が配設され、後側にはリヤドア102が配設されている。フロントドア101は、自動車の側部において前側に形成された開口部103を開閉する一方、リヤドア102は、後側に形成された開口部(図示せず)を開閉する。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
【0031】
図2は、車体左側に設けられるフロントドア101を車室外側から見た側面図であり、このフロントドア101は本発明に係る自動車用ガラスラン1を備えている。フロントドア101は、該フロントドア101の略下半部を構成するドア本体104と、略上半部を構成するウインドフレーム105とを有しており、このフロントドア101には、ウインドガラスGが昇降可能に設けられている。ドア本体104の前端部は、図示しないが、上下方向に延びる回動軸を有するヒンジを介して車体に取り付けられている。ドア本体104の内部には、ウインドガラスGを昇降動作させるためのウインドレギュレータ(図示せず)が収容されている。また、ウインドガラスGは、下降した状態で開状態となり、ドア本体104の内部に収容される。
【0032】
尚、本実施形態では、自動車の前側に設けられるフロントドア101に本発明を適用する場合について説明するが、リヤドア102に本発明を適用することもでき、また、図示しないスライドドアに本発明を適用することもできる。つまり、昇降動作するウインドガラスを有するドアであれば本発明を適用することができ、実施形態に記載されたものに限定されない。
【0033】
ウインドフレーム105は、ウインドガラスGの外周部を支持するサッシュとして機能する枠状のものである。この実施形態のウインドフレーム105は、
図3や
図5等に示すように鋼板等をプレス成形してなるチャンネル部材107と、第1パネル材108と、第2パネル材109とを組み合わせて構成されたものである。尚、ウインドフレーム105は、例えばロール成形法によって構成されたものであってもよい。
【0034】
図2に示すように、ウインドフレーム105は、前側サッシュ縦辺部105aと、後側サッシュ縦辺部105bと、サッシュ上辺部105cとを有している。前側サッシュ縦辺部105aは、フロントドア101の前部において上下方向に延びており、その断面は後側に開放されている。後側サッシュ縦辺部105bは、フロントドア101の後部において上下方向に延びており、その断面は前側に開放されている。前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bの下部はドア本体インドガラスGを104の内部に達しており、ウインドガラスGを下降させた際にドア本体104の内部まで案内することができるようになっている。また、サッシュ上辺部105cは、前側サッシュ縦辺部105aの上端部から後側サッシュ縦辺部105bの上端部まで延びるとともに下側に開放されており、ウインドフレーム105の形状に対応して後側へ行くほど上に位置するように傾斜している。
【0035】
ウインドガラスGは、全閉状態にあるときには、該ウインドガラスGの上部がサッシュ上辺部105cに挿入されてガラスラン1を介してサッシュ上辺部105cに支持され、また、ウインドガラスGの前部及び後部がそれぞれ前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bに挿入されてガラスラン1を介して前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bに支持される。ウインドガラスGが
図2に示すように少しだけ開いている場合は、該ウインドガラスGの上部がサッシュ上辺部105cから離れる一方、ウインドガラスGの前部及び後部がそれぞれ前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bに挿入されてガラスラン1を介して前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bに支持された状態になる。
【0036】
図3に示すように、サッシュ上辺部105cのチャンネル部材107は、車室内外方向に延びるフレーム底壁部107aと、フレーム底壁部107aの車室外側から下方へ延びるフレーム外側壁部107bと、フレーム底壁部107aの車室内側から下方へ延びるフレーム内側壁部107cとを備えている。フレーム外側壁部107bの上下方向の寸法は、フレーム内側壁部107cの上下方向の寸法よりも短く設定されている。フレーム外側壁部107bの内面には、外側凸部107dがチャンネル部材107の内方(フレーム外側壁部107bを基準として車室内側)へ突出するように形成されている。外側凸部107dは、フレーム外側壁部107bの基端部(上端部)よりも下に離れて配置されている。フレーム内側壁部107cの内面には、内側凸部107eがチャンネル部材107の内方(フレーム内側壁部107cを基準として車室外側)へ突出するように形成されている。内側凸部107eは、フレーム内側壁部107cの基端部(上端部)よりも下に離れて配置されており、具体的には、外側凸部107dよりも下に位置付けられている。よって、外側凸部107dとフレーム底壁部107aとの離間寸法よりも、内側凸部107eとフレーム底壁部107aとの離間寸法の方が長くなる。
【0037】
第1パネル材108の端部は、チャンネル部材107のフレーム外側壁部107bの外面において外側凸部107dよりも下側部分に接合されている。また、第2パネル材109の端部は、チャンネル部材107のフレーム内側壁部107cの外面において内側凸部107eよりも下側部分に接合されている。第1パネル材108及び第2パネル材109の接合方法は、例えばスポット溶接等を挙げることができる。尚、ロール成形の場合は、1枚の板材でチャンネル形状を成形してもよい。
【0038】
図5に示すように、後側サッシュ縦辺部105bもサッシュ上辺部105cと同様にフレーム底壁部107aと、フレーム外側壁部107bと、フレーム内側壁部107cとを備えている。図示しないが、前側サッシュ縦辺部105aも同様な構成である。
【0039】
(ガラスランの構成)
ガラスラン1は、その大部分がチャンネル部材107の内部に収容された状態で該チャンネル部材107に組み付けられる。つまり、ガラスラン1は、チャンネル部材107を介してウインドフレーム105に組み付けられることになる。
【0040】
ガラスラン1は、全体としてウインドフレーム105の前側サッシュ縦辺部105aからサッシュ上辺部105cを経て後側サッシュ縦辺部105bに達するように、前側サッシュ縦辺部105a、サッシュ上辺部105c、後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びるように形成されている。ガラスラン1における前側サッシュ縦辺部105aに沿って延びる部分、サッシュ上辺部105cに沿って延びる部分、後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びる部分が、それぞれの境界部分を除いて、押出成形された押出成形部とされる一方、前側サッシュ縦辺部105aに沿って延びる部分とサッシュ上辺部105cに沿って延びる部分との境界部分と、サッシュ上辺部105cに沿って延びる部分と後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びる部分との境界部分とが金型で成形された型成形部とされている。ガラスラン1は、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーや、ゴム等の弾性材からなり、弾性材を一体成形することによって得られたものである。尚、ガラスラン1は、発泡材であってもよいし、非発泡のソリッド材であってもよい。
【0041】
ガラスラン1のサッシュ上辺部105cに沿って延びる部分と、前側サッシュ縦辺部105aに沿って延びる部分と、後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びる部分との基本的な構成は殆ど同じである。すなわち、
図3に示すように、ガラスラン1のサッシュ上辺部105cに沿って延びる部分は、底壁部2と、車外側側壁部3と、車内側側壁部4とを有している。ガラスラン1の底壁部2は、ウインドフレーム105が有するフレーム底壁部107aに沿って車室内外方向に延びている。ガラスラン1の底壁部2の車室内外方向の寸法は、フレーム底壁部107aの車室内外方向の寸法よりも短く設定されている。
【0042】
ガラスラン1の車外側側壁部3は、底壁部2の車室外側の端部からウインドフレーム105が有するフレーム外側壁部107bに沿って直線状に延びている。ガラスラン1の車内側側壁部4は底壁部2の車室内側の端部からウインドフレーム105が有するフレーム内側壁部107cに沿って直線状に延びている。これにより、ガラスラン1は、ウインドフレーム105と同方向に開放するチャンネル形状をなす。ガラスラン1の車内側側壁部4がフレーム内側壁部107cに沿って直線状に延びているので、従来例のように車室内側側壁部の一部分に傾斜壁部を形成する場合に比べて、ガラスラン1の押出成形時の断面形状寸法精度を高めることができる。同様に、ガラスラン1の車外側側壁部3がフレーム外側壁部107bに沿って直線状に延びていることによってもガラスラン1の押出成形時の断面形状寸法精度を高めることができる。
【0043】
そして、ガラスラン1の内面には、底壁部2と車外側側壁部3との境界部分に、第1溝1aが形成されている。また、ガラスラン1の内面には、底壁部2と車内側側壁部4との境界部分に、第2溝1bが形成されている。これら第1溝1a及び第2溝1bの形成により、ガラスラン1の車外側側壁部3及び車内側側壁部4を底壁部2に対して容易に傾動させることが可能になる。
【0044】
ガラスラン1の車内側側壁部4の上下方向の寸法は、車外側側壁部3の上下方向の寸法よりも長く設定されおり、これにより、車内側側壁部4の下端部が車外側側壁部3の下端部よりも下に位置することになる。ガラスラン1の車外側側壁部3の車室外面の基端部には、外側係止部31が車室外方へ突出するように形成されている。この外側係止部31は、チャンネル部材107の外側凸部107dよりも上に位置付けられ、外側凸部107dに対して上方(フレーム底壁部107a側)から係止する。また、ガラスラン1の車外側側壁部3の車室外面の上下方向中間部には、当接部32が車室外方へ突出するように形成されている。この当接部32は、チャンネル部材107の外側凸部107dよりも下に位置付けられ、チャンネル部材107のフレーム外側壁部107bの内面に当接する。
【0045】
車外側側壁部3における底壁部2側とは反対側の端部(下端部)には、ウインドフレーム105のフレーム側外壁部107bの下端部及び第1パネル材108の外面を覆う外側意匠リップ33が形成されている。外側意匠リップ33は、車外側側壁部3の下端部から上方へ延びるように形成されており、上端部は第1パネル材108の車室外側面に当接するようになっている。車外側側壁部3と外側意匠リップ33との間に、フレーム側外壁部107bと第1パネル材108の下側部分とが配置されるようになっている。
【0046】
車外側側壁部3の下端部には、ウインドガラスGの車室外面に当接する車室外側シールリップ34が形成されている。車室外側シールリップ34は、車外側側壁部3の下端部から上方へ湾曲しながら延びるように形成されている。
【0047】
ガラスラン1の車内側側壁部4の車室内面の上下方向中間部には、内側係止部41が車室内方(ガラスラン1の外方)へ突出するように形成されている。この内側係止部41は、チャンネル部材107の内側凸部107eよりも上に位置付けられ、内側凸部107eに対して上方(フレーム底壁部107a側)から係止する。
【0048】
車内側側壁部4における底壁部2側とは反対側の端部(下端部)には、ウインドフレーム105のフレーム側内壁部107cの下端部及び第2パネル材109の外面を覆う内側意匠リップ42が形成されている。内側意匠リップ42は、車内側側壁部4の下端部から上方へ延びるように形成されており、上端部は第2パネル材109の車室外側面に当接するようになっている。車内側側壁部4と内側意匠リップ42との間に、フレーム側内壁部107cと第2パネル材109の下側部分とが配置されるようになっている。
【0049】
車内側側壁部4の下端部には、ウインドガラスGの車室内面に当接する車室内側シールリップ43が形成されている。車室内側シールリップ43は、車内側側壁部4の下端部から上方へ湾曲しながら延びるように形成されている。車室内側シールリップ43は、車室外側シールリップ34よりも大きい形状となっている。
図3に示すように、ウインドガラスGが車室内側シールリップ43よりも下に位置している状態で、車室内側シールリップ43の先端部が、ウインドフレーム105のチャンネル部材107の車幅方向の中心部Aよりも車室外側に位置している。また、ウインドガラスGが車室内側シールリップ43よりも下に位置している状態では、車室外側シールリップ34と車室内側シールリップ43とが接触している。
【0050】
ガラスラン1の車内側側壁部4における底壁部2側の端部(上端部)には、ガラスラン1の車室内外方向外側へ向けて突出し、ウインドフレーム105への組付状態でフレーム底壁部107aに当接して反発力を発生する底部リップ44が形成されている。底部リップ44の厚みは、底壁部2や車内側側壁部4の厚みよりも薄く設定されている。尚、この実施形態では、底部リップ44が車内側側壁部4の上端部に形成されている場合について説明するが、これに限らず、例えば、底部リップ44が底壁部2の車室外側の端部(外端部)に形成されていてもよい。
【0051】
外力が作用しない底部リップ44の形状を
図6に示している。この状態では、底部リップ44が車内側側壁部4よりも車室内側(ガラスラン1の外方)へ向けて突出しており、この実施形態では、車内側側壁部4を下端部4aから見たときに、底部リップ44が車内側側壁部4に重ならないように配置されている。また、この状態では、底部リップ44が斜め上方に突出する形状となっている。
【0052】
図3に示すように、ガラスラン1をウインドフレーム105へ組み付けた状態では、車内側側壁部4における底壁部2側の端部4aとウインドフレーム105のフレーム底壁部107aとの間に隙間Sが形成されるようになっている。後述するが、隙間Sが形成されていることにより、車内側側壁部4を上方へ押した際に、隙間Sの分だけ上方へ変位させることが可能になる。隙間Sの上下方向の寸法は、例えば1mm以上2mm以下の範囲で設定することができる。隙間Sの上下方向の寸法が1mmよりも小さいと、後述するガラスラン1の組付性が悪化する場合がある一方、隙間Sの上下方向の寸法が2mmよりも大きいと、組付状態にあるガラスラン1にガタつき等が発生し易くなることが考えられる。
【0053】
また、隙間Sの車内外方向の寸法は、車内側側壁部4の厚みに対して、約四分の三から約四分の五の寸法の間で設定することができる。隙間Sの車内外方向の寸法が車内側側壁部4の厚みに対して約四分の三より小さいと、後述するガラスラン1の組付性が悪化する場合がある一方、隙間Sの車内外方向の寸法が車内側側壁部4の厚みに対して約四分の五よりも大きいと、組付状態にあるガラスラン1にガタつき等が発生し易くなることが考えられる。隙間Sの形成により、ガラスラン1の底面は車室内側に凹部を有する形状となる。
【0054】
また、ガラスラン1の車外側側壁部3の厚みは車内側側壁部4の厚みよりも薄く設定されている。これにより、
図4に示すように、ウインドガラスGは、車幅方向に加振力が作用しない静止位置にあるとき、その厚み方向中心部Bがチャンネル部材107の車幅方向の中心部Aよりも車室外側に位置するようになっている。これは、ウインドガラスGの車室外面と、ウインドフレーム105の車室外面との境界部分にできる段差を低くしてフラッシュサーフェース化を図るためである。また、このウインドガラスGの偏位に対応するように、車室外側シールリップ34及び車室内側シールリップ43を形成しているので、ウインドガラスGとの間のシール性は十分に確保される。
【0055】
図5に示すように、ガラスラン1における後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びる部分の基本構造及び断面形状は、ガラスラン1におけるサッシュ上辺部105cに沿って延びる部分と略同じであるが、車内側側壁部4には、車室内側シールリップ43へ向けて延びるラトル音抑制リップ46が形成されている点で異なっている。ラトル音抑制リップ46は、車室内側シールリップ43と車内側側壁部4との間に介在している。すなわち、例えばウインドガラスGを少しだけ下げた状態でフロントドア101を閉めたり、自動車1が悪路を走行すると、ウインドガラスGに加振力が作用してウインドガラスGが車室内外方向に振動することがある。このウインドガラスGの振動に追従するように車室内側シールリップ43が振動する。仮にラトル音抑制リップ46が無ければ、車室内側シールリップ43と車内側側壁部4とが離着することによって発生する音、即ちラトル音が問題となることがある。この実施形態では、車室内側シールリップ43と車内側側壁部4との間にラトル音抑制リップ46が介在することになるので、車室内側シールリップ43と車内側側壁部4との離着音、つまり、ラトル音の発生が抑制される。尚、ラトル音抑制リップ46の形状は任意に設定することができ、この実施形態では、後側へ向けて延びる形状であるが、これに限らず、例えば前側へ向けて延びる形状であってもよい。また、ラトル音抑制リップ46は必須なものではなく、省略してもよい。
【0056】
(ガラスランの組付要領)
次に、ガラスラン1をウインドフレーム105に組み付ける要領について説明する。まず、
図6に示すように、チャンネル部材107の開放側にガラスラン1の底壁部2側を配置してガラスラン1を同図に白抜き矢印で示す方向に移動させていく。この実施形態では、チャンネル部材107の開放側を便宜上、紙面上側に向けた状態にしてガラスラン1を組み付ける場合について説明するので、
図6〜
図11では各図の上がチャンネル部材107の下(ガラスラン1の下)になり、各図の下がチャンネル部材107の上(ガラスラン1の上)になる。尚、組付時におけるチャンネル部材107の姿勢はどのような姿勢であってもよく、チャンネル部材107の開放側が下に向く姿勢や、チャンネル部材107の開放側が横に向く姿勢であってもよい。
【0057】
そして、
図7に示すようにチャンネル部材107の開放側にガラスラン1の底壁部2側を押し込む。このとき、ガラスラン1の車外側側壁部3を車内側側壁部4よりも深く押し込むようにする。これにより、底壁部2がチャンネル部材107のフレーム底壁部107aに対して傾斜した姿勢になる。また、チャンネル部材107のフレーム外側壁部107b及び第1パネル材108を、車外側側壁部3と外側意匠リップ33との間に挿入し、また、チャンネル部材107のフレーム内側壁部107c及び第2パネル材109を、車内側側壁部4と内側意匠リップ42との間に挿入する。
【0058】
その後、
図8に示すように、ガラスラン1の車外側側壁部3をチャンネル部材107にさらに押し込む。このことで、底壁部2のフレーム底壁部107aに対する傾斜角度が更に大きくなる。底壁部2の傾斜角度が大きくなるということは、底壁部2と車外側側壁部3とのなす角度、及び底壁部2と車内側側壁部4とのなす角度が変化しているということであるが、この実施形態では、ガラスラン1の内面に第1溝1a及び第2溝1bを形成しているので、上記各角度を容易に変化させることができ、組付時の作業性が良好になる。
【0059】
このとき、底部リップ44がチャンネル部材107の内側凸部107eに対して図の上方から接触することになるが、底部リップ44は車内側側壁部4よりも車室内側へ向けて突出しているので、図の上方へ向けて容易に屈曲変形可能である。このため、内側凸部107eに接触した底部リップ44は図の上方へ向けて屈曲することで内側凸部107eを逃げるように変形し、車内側側壁部4の押し込み力が小さくて済む。次いで、
図9に示すように、ガラスラン1の車内側側壁部4をチャンネル部材107にさらに押し込む。このとき、底部リップ44が内側凸部107eを乗り越え、底部リップ44の形状は復元する。
【0060】
しかる後、
図10に示すようにガラスラン1の車内側側壁部4をチャンネル部材107にさらに深く押し込む。この状態では、車内側側壁部4における底壁部2側の端部4aとウインドフレーム105のフレーム底壁部107aとの間に隙間Sが形成される。車内側側壁部4を押し込む際、該車内側側壁部4がフレーム内側壁部107cに沿って直線状に延びているので、押し込み力が車室内外方向に逃げにくくなり、ガラスラン1の組付性が良好になる。この状態では、ガラスラン1の車内側側壁部4の内側係止部41が、チャンネル部材107の内側凸部107eに完全に係止していない。一方、ガラスラン1の車外側側壁部3をチャンネル部材107に先に押し込んでいるので、外側係止部31が外側凸部107dよりも下側に位置している。
【0061】
そして、
図11に示すように、内側係止部41を内側凸部107eに完全に係止させるべく、ガラスラン1の車内側側壁部4を白抜き矢印で示すように図の上方から下方へ向けてさらに押し込むように力を加える。すると、ガラスラン1の車室内側側壁部4がフレーム内側壁部107cに沿って直線状に延びていて押し込み力が車室内外方向に逃げにくくなっていることと、隙間S(
図10に示す)が形成されていることとにより、車室内側側壁部4が図の下方向へ移動していく。これに伴って底部リップ44が変形する。そして、内側係止部41が内側凸部107eを乗り越えたタイミングで上記押し込み力を除くと、底部リップ44が反発力を発揮してガラスラン1が
図3に示す状態になり、内側係止部41が内側凸部107eに完全に係止するとともに、外側係止部31が外側凸部107dに係止する。この底部リップ44の反発力はフレーム底壁部107a側からの反発力であるため、ガラスラン1の内側係止部41をフレーム内側壁部107cの内側凸部107eに係止させる方向の力となる。よって、ガラスラン1がウインドフレーム105から離脱し難くなる。
【0062】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、ガラスラン1の車内側側壁部4がフレーム内側壁部107cに沿って直線状に延びているので、ガラスラン1の押出成形時の断面形状寸法精度を高めることができるとともに、ウインドフレーム105への組付性を良好にすることができる。そして、ガラスラン1の底壁部2の車室外側の端部または車内側側壁部4における底壁部2側の端部に、ガラスラン1の車室内外方向外側へ向けて突出する底部リップ44を形成し、底部リップ44をフレーム底壁部107aに当接させて反発力を発生させるようにしたので、組付性を悪化させることなく、組み付け後におけるガラスラン1のウインドフレーム105からの離脱を抑制することができる。
【0063】
また、ガラスラン1の車内側側壁部4における底壁部2側とは反対側の端部に内側意匠リップ42を形成したので、安全性を確保できるとともに、外観見栄えを向上させることができる。同様に、ガラスラン1に外側意匠リップ33を設けたことによっても安全性を確保できるとともに、外観見栄えを向上させることができる。
【0064】
また、ガラスラン1の車内側側壁部4と車室内側シールリップ43との間にラトル音抑制リップ46を介在させることができるので、ラトル音の発生を抑制することができる。
【0065】
また、ガラスラン1の車外側側壁部3の厚みを車内側側壁部4の厚みよりも薄くしたので、フラッシュサーフェース化を図ることができる。
【0066】
また、
図12に示す実施形態の変形例のように、ガラスラン1の底壁部2には、ウインドガラスGが上昇端位置にあるときに該ウインドガラスGの縁部が当接するガラス打音抑制リップ26が該ウインドガラスGの下降方向へ向けて突出するように形成されていてもよい。このガラス打音抑制リップ26を底壁部2に形成することで、ウインドガラスGが上昇端位置に達したときに該ウインドガラスGの縁部がガラス打音抑制リップ26に当接することになるので、ガラス打音の発生が抑制される。ガラス打音抑制リップ26は、底壁部2の車室内側から車室外側へ向けて下降傾斜しながら突出する形状であってもよいし、反対に、底壁部2の車室外側から車室内側へ向けて下降傾斜しながら突出する形状であってもよく、形状は特に限定されない。
【0067】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。