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特許6643903医療機器の点検済表示システム及び点検済表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643903
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】医療機器の点検済表示システム及び点検済表示方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/40 20180101AFI20200130BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G16H40/40
   A61M5/145 500
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-3432(P2016-3432)
(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-126114(P2017-126114A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591156618
【氏名又は名称】株式会社テクトロン
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【弁理士】
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】太田 建三
(72)【発明者】
【氏名】原田 武浩
【審査官】 上田 威
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−200775(JP,A)
【文献】 特開2008−287627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 − 80/00
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器の点検済表示システムであって、
点検済表示を行う表示手段と、
所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報に基づいて点検済記録を生成する点検済記録生成手段と、
上記点検情報及び上記点検済記録を保持する記憶手段と、
上記点検済記録の生成後、所定の条件によって上記点検済記録を取り消す点検済記録取消手段と、
上記点検済記録に基づいて上記表示手段を作動させて点検済表示を行う表示制御手段とを備え
上記点検済記録取消手段は、上記医療機器の使用情報、又は上記点検済記録生成後の時間経過情報に基づいて、上記点検済記録を取り消す、医療機器の点検済表示システム。
【請求項2】
上記点検済記録生成手段は、点検者が手動で入力する手動入力手段から入力される点検情報によって上記点検済記録を生成する、請求項1に記載の医療機器の点検済表示システム。
【請求項3】
上記点検済記録生成手段は、医療機器の所定の点検操作を行うことにより作動させられる自動入力手段から入力される点検情報によって上記点検済記録を生成する、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の医療機器の点検済表示システム。
【請求項4】
上記点検情報は、点検者情報を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療機器の点検済表示システム。
【請求項5】
医療機器に作用する衝撃を検出する衝撃検出手段を備え、医療機器に所定の大きさ以上の衝撃が作用した場合、上記点検済記録取消手段は、上記衝撃検出手段からの衝撃情報に基づいて上記点検済記録を取り消す、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療機器の点検済表示システム。
【請求項6】
上記表示制御手段は、少なくとも医療機器の使用開始時に上記点検済表示を表示するように制御する一方、
上記点検済表示がなされない場合、上記表示手段に、所定の警告情報を表示する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医療機器の点検済表示システム。
【請求項7】
上記表示制御手段は、上記医療機器に電源が投入されたときに、上記点検済表示又は上記警告情報の表示を行うように制御する、請求項6に記載の医療機器の点検済表示システム。
【請求項8】
上記記憶手段は、少なくとも所定期間内における上記点検情報、点検済記録及び点検済記録の取消情報を記憶する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医療機器の点検済表示システム。
【請求項9】
上記表示制御手段は、所定の点検情報が入力されなかったことにより上記点検済記録が生成されなかった場合、その旨の警告情報を出力して、上記表示手段に表示する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の点検済表示システム。
【請求項10】
上記医療機器が輸液ポンプである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の医
療機器の点検済表示システム。
【請求項11】
上記点検情報は、輸液ポンプの輸液圧力情報を含む、請求項10に記載の点検済表示システム。
【請求項12】
医療機器の点検済表示方法であって、
所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報を点検済記録生成手段及び記憶手段に入力する点検情報入力工程と、
上記点検情報に基づいて点検済記録を生成する点検済記録生成工程と、
上記点検済記録に基づいて表示手段を作動させて点検済表示を行う点検済表示工程と、
上記点検済記録生成工程を終えた後、所定の情報が入力されることによって上記点検済記録を取り消す点検済記録取消工程とを含み、
上記点検済記録取消工程において、点検済記録が生成された後に使用された場合、又は上記点検済記録が生成されたときから所定の時間が経過した場合に、上記点検済記録を取り消す、医療機器の点検済表示方法。
【請求項13】
上記点検済記録取消工程において、上記医療機器に所定の値以上の衝撃が作用することによって上記点検済記録を取り消す、請求項12に記載の医療機器の点検済表示方法。
【請求項14】
請求項1から請求項9に記載の点検済表示システムを備える、医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、医療機器が点検済であることを表示する点検済表示システム、点検済表示方法及び点検済表示システムを備える医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器の性能を確保するため、日常的な使用前点検のみならず、使用中点検、使用後点検を行うことも多い。大病院等においては、輸液ポンプ装置等の多数の患者に用いられる医療機器等は、中央材料室等において集中的に管理し、病棟や処置室等に貸し出すシステムが採用されている。
【0003】
病棟等において、上記医療機器の使用が終了した後、上記医療機器は、中央材料室に返却される。返却された医療機器は、消毒や種々の点検項目についての点検が行われ、次回の使用に供することができるかどうかが判断される。その後、点検済を表示するラベル等が貼着されて、次回の使用に備えて保管される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−132925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療機器を点検することによって点検済の表示を行うには、所定の点検が行われ、医療機器が正常に作動することを確認する必要がある。
【0006】
上記医療機器が点検済であるかどうかは、上記医療機器に貼着等されたラベルで識別する他ない。ところが、輸液装置等は、同じ種類の多数の医療機器が病棟に貸し出されるため、病棟に持ち込んだ後に、上記ラベルが剥がれ落ちると、使用済の医療機器と混合する恐れが生じる。
【0007】
一方、上記ラベルは使用開始時以降に剥がして廃棄する必要があるが、剥がし忘れた場合には、使用中及び使用後にもそのまま貼着された状態になる。このような場合、上記と同様に、未使用点検済の医療機器と使用済の医療機器とを混同する恐れが生じる。
【0008】
また、点検後に長期保管された場合、上記点検時の性能を確保できない恐れがある。上記ラベルに点検日時を記載して、所定期間経過後のものは、再点検するように管理することも考えられるが、多数の医療機器を管理する現場で上記管理を行うのが困難な場合もある。また、誤って、上記期間を経過したものを貸し出す恐れもある。
【0009】
また、医療機器の点検を集中的に行った場合、貸し出した後に生じた問題に対処できない場合が多い。特に、貸し出した後に、衝撃が作用したような場合、故障が生じる可能性が大きくなる。また、問題となるような衝撃が作用したかはどうかを判断するのも困難である。
【0010】
さらに、医療機器の点検を行う者(以下点検者)は、製造業者等が指定する内容や医療機関で定めた内容に基づいて点検を行い、その内容を記録に残すことが要求されている。上記点検者情報や点検項目を上記ラベルや点検記録書類等に記載することもできるが、点検作業が非常に面倒になる。また、使用開始後に上記ラベルを廃棄した場合、だれが点検したのかが不明となり、問題が生じた場合等に対処するのが困難になる場合もある。
【0011】
本願発明は、上記従来の課題を解決し、点検済の医療機器を確実に識別できるとともに、点検作業の確実性を向上させ、さらに、点検後に生じた不都合にも対応できる医療機器の点検済表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、 医療機器の点検済表示システムであって、点検済表示を行う表示手段と、所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報に基づいて点検済記録を生成する点検済記録生成手段と、上記点検情報及び上記点検済記録を保持する記憶手段と、上記点検済記録の生成後、所定の条件によって上記点検済記録を取り消す点検済記録取消手段と、上記点検済記録に基づいて上記表示手段を作動させて点検済表示を行う表示制御手段とを備え、上記点検済記録取消手段は、上記医療機器の使用情報、又は上記点検済記録生成後の時間経過情報に基づいて、上記点検済記録を取り消すように構成される。
【0013】
上記医療機器の種類は特に限定されることはない。電力で作動するとともに、中央材料室等で集中管理し、病棟や手術室等に貸し出す医療機器等に適用することができる。たとえば、シリンジポンプ等の輸液ポンプ装置に適用することができる。また、電源の種類も特に限定されることはなく、電池駆動や商用電源駆動のものに適用できる。
【0014】
上記表示手段は、少なくとも点検済であることを使用者に識別できるように構成される。表示の手法は特に限定されることはない。色彩のみで点検済を表示するように構成できる。たとえば、青色のランプが点灯すれば、点検済であり、赤色のランプが点灯すれば、使用済とすることができる。また、液晶画面等に「点検済」の文字を表示するように構成することもできる。
【0015】
さらに、必要に応じて、各医療機器において必須の点検項目について点検がなされたことを表示できるように構成することもできる。また、医療機器の性能についての数値データ等を表示させることもできる。
【0016】
上記表示手段は、点検済表示を行うための専用表示手段を採用することもできるし、各装置の操作画面を、表示手段として利用することもできる。
【0017】
上記点検済記録生成手段は、所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報に基づいて点検済記録を生成する。上記点検作業は、主として点検者が目視及び手動による点検項目について点検を行うものである。一方、上記点検操作は、医療機器に所定の動作をさせることにより点検を行うものであり、自動的に点検工程が行われて、点検情報が自動的に生成されるように構成することもできる。
【0018】
上記点検済記録生成手段は、点検者が手動で入力する手動入力手段から入力される情報によって上記点検済記録を生成することもできるし、医療機器の所定の点検操作を行うことにより作動させられる自動入力手段から入力される情報によって上記点検済記録を生成することもできる。
【0019】
また、上記手動入力手段と上記自動入力手段の双方から入力される点検情報に基づいて上記点検済記録を生成することもできる。点検済記録は、所定の点検項目に異常がなかった場合生成される。なお、点検された各項目についての点検情報は、点検済記録とともに、記憶手段に記憶するように構成するのが望ましい。
【0020】
上記記憶手段として、電子データを記憶できる種々の装置を採用できる。たとえば、医療機器内に設けたメモリや、ハードディスク等を採用できる。上記点検済記録は、上記記憶手段内に記憶させることができる電子データであれば、形式等は特に限定されることはない。また、所定の点検項目に異常がなかった場合に点検済であることのみの情報を点検済記録とすることもできるし、点検項目等の内容を含む点検済記録を生成して記憶することもできる。また、点検日時等を含む点検済記録を生成することもできる。
【0021】
上記表示制御手段は、上記点検済記録に基づいて、上記表示手段に点検済表示を行う。点検済記録が存在しない場合には、点検済表示は行われない。また、上記点検済記録は、上記点検済記録が生成された後であっても、所定の条件によって取り消される。
【0022】
すなわち、上記医療機器を使用した場合、及び上記点検済記録生成後の時間経過情報に基づいて、上記点検済記録が取り消されるように構成することができる。上記点検済記録の取消は、点検済記録取消手段によって行われる。点検済記録が取り消されることにより、点検済表示は行われない。これによって、使用済の医療機器と点検済で未使用の医療機器とを取り違える恐れがなくなる。また、点検された後に長期間使用されなかった医療機器についても点検済表示がなされない。このため、点検後の医療機器の性能、及び安全性を確保できる。
【0023】
上記点検済記録を取り消す手法等は特に限定されることはない。点検済記録自体を、メモリ等から消去することもできるし、点検済記録に取消情報を付加することにより取消状態とすることができる。上記表示制御手段は、上記点検済記録取消手段によって取消がなされていない点検済記録に基づいて点検済表示等を行う。
【0024】
上記使用情報として、たとえば、点検済記録生成後に電源を投入し、電源投入後所定時間経過することにより、点検済記録を取り消すように構成できる。また、時間経過情報は、本システムを構成するマイクロコンピュータ内のタイマー機能を利用して、上記点検済記録生成後の経過時間(期間)を計測し、所定の時間が経過した場合、上記点検済取消手段に点検済記録の取消指示を出力するように構成できる。また、医療機器本体の制御を行う制御装置を構成するマイクロコンピュータを利用して、上記点検済記録生成からの時間を計測するように構成することもできる。なお、上記時間経過情報は、医療機関の点検体制や、医療機器の種類、点検項目等に応じて設定できるように構成するのが望ましい。
【0025】
上記点検情報に、点検者情報を含ませるのが望ましい。これにより、点検者の注意力を高め、また、点検作業についての責任が明確化される。この結果、点検者に精度の高い点検作業を行わせることが可能となる。
【0026】
医療機器に作用する衝撃を検出する衝撃検出手段を設け、医療機器に所定の大きさ以上の衝撃が作用した場合、上記点検済記録を取り消すように構成するのが望ましい。上記衝撃検出手段として、種々の衝撃センサー(加速度センサー)等を用いることができる。
【0027】
上記衝撃検出手段を設けることにより、点検済記録が生成された後、病棟等において大きな力が作用した場合には点検済表示がなされないことになり、安全性を高めることができる。また、大きな衝撃力が作用したことを警告する警告表示を、上記表示手段に表示するように構成するのが望ましい。
【0028】
上記表示制御手段は、少なくとも医療機器の使用開始時に上記点検済表示を表示するように制御する一方、上記点検済表示がなされない場合、上記表示手段に、所定の警告情報を表示するように構成するのが望ましい。
【0029】
点検済表示を点検終了後に常時表示することもできるが、医療機器の使用開始時として、電源を投入したときに、上記点検済表示がなされるように構成するのが望ましい。これにより、電池駆動の医療機器において、上記点検済表示に電力が消費されるのを防止することができる。
【0030】
上記記憶手段に、上記点検済記録とは別途に、少なくとも所定期間内の上記点検作業又/及び上記点検操作に係る点検情報の履歴を記憶するように構成することができる。これにより、当該医療機器の点検情報を長期にわたって監視することが可能となる。また、上記点検済記録を外部のコンピュータ等に出力することができるように構成するのが望ましい。
【0031】
上記表示制御手段を、所定の点検情報が入力されなかった場合、警告情報を出力して、上記表示手段に表示するように構成するのが望ましい。上記警告情報は特に限定されることはない。たとえば、使用済の医療機器であって点検がなされていない旨の警告や、上述した衝撃が加わったことを表示する警告情報、点検済記録生成から所定の時間が経過した情報等を表示することができる。
【0032】
上記点検情報は、医療機器の種類等に応じて必要な点検項目についての情報であり、種々の情報を含ませることができる。たとえば、目視により異常を認められなかった場合は、異常の有無のみの情報となる。一方、圧力、温度、電流、電圧等の数値を含む情報については、数値自体を点検情報として入力することができる。そして、上記点検済記録生成手段において、異常がなかった場合に点検済記録が生成されるように構成することができる。たとえば、輸液ポンプの場合、点検者の目視による点検情報に加えて、輸液圧力を点検項目に含ませ、上記輸液圧力を手動あるいは自動で点検して、異常がなかった場合に点検済情報を生成するように構成することができる。また、上記輸液圧力の数値を、点検情報として、上記点検済記録生成手段に手動あるいは自動で入力し、上記点検済記録生成手段が異常の有無を判断して、上記点検済記録を生成するように構成することもできる。
【0033】
本願システムはに係る上記点検済記録生成手段、上記記憶手段、上記点検済記録取消手段及び表示制御手段は、マイクロコンピュータの機能を利用して構成することができる。上記マイクロコンピュータは、本願システム専用のものとして設けることもできるし、各医療機器の制御を行うマイクロコンピュータの機能を利用して、本願発明のシステムを構成できる。また、上記表示手段は、本願システム専用の表示装置として設けることもできるし、各医療機器の表示装置を利用して構成することができる。
【0034】
本願発明に係る医療機器では、所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報を点検済記録生成手段及び記憶手段に入力する点検情報入力工程と、上記点検情報に基づいて点検済記録を生成する点検済記録生成工程と、上記点検済記録に基づいて上記表示手段を作動させて点検済表示を行う点検済表示工程と、上記点検済記録生成工程を終えた後、所定の情報が入力されることによって上記点検済記録を取り消す点検済記録取消工程とを含む各工程が行われる。上記各工程は、手動で点検済情報を入力する工程を除き、装置内に設けたマイクロコンピュータのプログラムによって実行される。上記マイクロコンピュータは、上記各医療機器において、他の制御を行うものと兼用することもできるし、点検操作専用のものを採用することもできる。
【0035】
上記点検済記録取消工程において、点検済記録が生成された後に使用された場合、又は上記点検済記録が生成されたときから所定の時間が経過した場合に、上記点検済記録を取り消すことができる。また、上記医療機器に所定の値以上の衝撃が作用することによって上記点検済記録を取り消すように構成することができる。
【発明の効果】
【0036】
点検済の医療機器を確実に識別できるとともに、点検作業の確実性を向上させ、さらに、点検後に生じた不都合にも対応できる医療機器の点検済表示システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本願発明に係る点検済表示システムを設けたシリンジポンプの正面図である。
図2図1に示すシリンジポンプの平面図である。
図3図2に示すシリンジポンプのシステム構成の概略を示す図である。
図4図3に示す輸液装置に適用された点検済表示システムの概略ブロック図である。
図5図4に示すシステムで行われる工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本願発明に係る実施形態を図に基づいて具体的に説明する。本実施形態は、本願発明に係る点検済表示システムを、シリンジポンプ(輸液装置)に適用したものである。
【0039】
図1及び図2に示すように、シリンジポンプ1は、シリンジ2を着脱可能に保持できるように構成されている。上記シリンジ2は、薬液を収容する外筒3と、上記外筒3の基端部において半径方向外方へ延出形成された小判状のフランジ部5と、上記基端部から上記外筒内部へ挿入された押し子4とを備えて構成されている。上記シリンジ2は、全体が樹脂成形によって形成されている。上記外筒3の先端には、輸液チューブ40が接続される吐出口3aが形成されている。
【0040】
上記シリンジポンプ1は、シリンジ2の外筒3を保持するシリンジ外筒保持手段6,9,12と、上記押し子4の基端部に設けられたフランジ部13を保持するとともに押動させて、外筒3内の薬液を吐出させる押動手段10とを備えて構成されている。
【0041】
図3に示すように、上記押動手段10は、駆動ネジ14を、減速ギヤ17を介してモータ15によって回転させることにより、軸方向に移動できるように構成されたスライダ16を備えて構成されている。上記スライダ16は、押し子4のフランジ部13を保持するとともに軸方向に押動させて、シリンジ外筒3内に収容された薬液を吐出口3aから吐出させる。上記モータ15は、電源21からの電力によって駆動される。
【0042】
図3及び図4に示すように、シリンジポンプ1の点検済表示システム50は、点検済表示を行う表示手段25と、上記表示手段25を制御して点検済表示や警告を表示させる点検制御手段22と、上記点検制御手段22に、点検情報を入力する手動入力手段24と、上記シリンジポンプに所定の操作を行うことにより点検情報を入力する自動入力手段23とを備えて構成される。上記各手段は、上記モータ15と同様に、上記電源21からの電力によって駆動される。
【0043】
図4に示すように、上記点検制御手段22は、上記表示手段25を駆動する表示制御手段43と、上記手動入力手段24及び上記自動入力手段23から入力された点検情報に基づいて点検済記録を生成する点検済記録生成手段41と、上記点検済記録を記憶する記憶手段42とを備えて構成される。
【0044】
図2図4に示すように、本実施形態では、上記表示手段25として、表示ランプ31と液晶表示画面32とを採用している。上記表示ランプ31は、点検済表示として青色に発光する一方、点検済表示されない場合、赤色に発光するように設定されている。
【0045】
また、本実施形態では、シリンジポンプ1に所定の値以上の衝撃力が加わった場合に、衝撃情報を生成して、点検済記録取消手段44に出力する衝撃センサー26が設けられている。
【0046】
点検をする者は、目視で所定項目に係る点検を行い異常がない場合に手動入力手段24から、上記点検済記録生成手段41に点検情報を入力する。上記手動入力手段24は特に限定されることはない。たとえば、上記液晶画面等に表示される所定の点検項目に対して、チェック信号を入力するボタンスイッチ等を採用できる。また、上記輸液装置の設定を行うためのフィルムスイッチ等を上記手動入力手段として兼用し、点検モードに設定することにより、点検情報を手動で入力するように構成することができる。また、点検情報として数値を入力するように構成することもできる。
【0047】
さらに、図3に示すように、上記シリンジポンプ1は、上記シリンジ2に所定の吐出圧力を確保できるかどうかを点検する吐出圧力検出手段27を備えて構成される。シリンジポンプ1における吐出圧力は、シリンジポンプとしての性能を確保するのに必須の性能である。上記吐出圧力を検出する手段は特に限定されることはない。たとえば、手動で吐出圧力を計測する場合、図3に示す吐出圧計測装置27aにシリンジ2の吐出口3aに接続したチューブ40を接続してシリンジポンプ1を作動させ、上記吐出圧計測装置27aの計測値に異常がなければ、上記手動入力手段24に吐出圧力に異常がない旨の点検情報を入力することができる。あるいは、スライダ16が上記シリンジ2の押し子4を押圧する際に生じる歪をスライダ16に設けた歪計で計測し、間接的に吐出圧力を計測する吐出圧計測装置27bを設けることもできる。上記吐出圧計測装置27bによって出力される電圧等の出力を上記自動入力手段23に入力し、上記出力電圧が所定の範囲内にある場合、点検済記録を自動的に生成するように構成することもできる。なお、図3には、2種類の吐出圧計測装置27a,27bを設けたが、実際は一方のみの吐出圧計測装置を設ければ足りる。また、上述した各点検情報は、上記点検済記録が生成されない場合にも、上記記憶手段42に記憶させるように構成されるとともに、他のコンピュータに出力して、シリンジポンプの点検履歴を記録できるように構成されている。
【0048】
上記点検済記録が生成されると、点検済状態にあるとして点検済記録が上記記憶手段42に保持されるとともに、後述するように、点検済記録が生成された後、所定の条件によって上記点検済記録が取り消される。上記点検済記録を取り消す手法は特に限定されないが、上記記憶手段42のメモリから消去したり、取消記録を付加することにより取り消すことができる。なお、上記取消記録は、上記点検済記録とともに上記記憶手段に履歴として記憶する一方、点検済表示は、上記取消記録がない場合に行われるように構成される。
【0049】
上記構成の点検済表示システム50における工程を、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
上記手動入力手段24及び/又は上記自動入力手段23に、点検者からの手動による入力、あるいはシリンジポンプ1の所定の操作を行うことにより自動出力される点検情報が入力される(S101)。上記手動入力手段24及び上記自動入力手段23は、上記点済情報が適正かどうか判断し(S102)、適性である場合、点検済記録生成手段41によって点検済記録が生成される(S104)。なお、上記点検済記録生成手段41は、所定の項目すべての点検情報が入力されたかどうかも判断して、上記点検済記録を生成する。生成された点線済記録は、記憶手段42に記憶される(S105)。一方、適正でない点検情報、たとえば、異常な動作情報等が入力された場合や、すべての点検項目に関する点検情報が入力されなかった場合(S102でNO)、上記表示制御手段43から警告出力がなされて、表示手段25に警告表示が表示される(S103)。これによって、点検者は、再度点検情報を入力するか、シリンジポンプ1に異常があったとして修理を依頼することになる。
【0051】
上記点検情報が適性である場合、上記工程によって点検作業が終了する。
【0052】
病棟等に上記シリンジポンプを貸し出し、電源が投入された後(S106)、以下に説明する工程が行われる。
【0053】
電源が投入された場合、上記記憶手段42及びタイマー46から上記点検済表示が生成された日時からの経過時間が読み出され(S107)、所定の期間が経過していた場合(S107でYES)、上記表示手段25に、点検が行われた後に相当の期間が経過した旨の警告出力が表示される(S108)。また、上記相当の期間が経過した場合、上記記憶手段に記憶した点検済記録が消去される(S113)。すなわち、点検済表示が行われない。
【0054】
所定の期間が経過していない場合(S107でNO)、次に、点検済記録が生成された後に衝撃力が作用したかどうかが判断される(S109)。所定の値以上の衝撃力が作用している場合(S109でYES)、上記表示手段25に、その旨の警告表示がなされて(S110)、再度の点検が要請される。上記所定の以上の衝撃力が加わった場合においても、所定期間が経過した場合と同様に、上記記憶手段42に記憶した点検済記録が消去される(S113)。すなわち、点検済表示が行われない。
【0055】
衝撃力が加わっていない場合(S109でNO)、上記表示手段25に点検済表示が行われる(S111)。これにより、当該シリンジポンプの点検が適性に行われ、また、衝撃による故障等の可能性が低いと判断され、当該シリンジポンプ1が使用に供される(S112)。
【0056】
上記電源が投入されて使用が開始されて所定時間が経過した後、上記点検済記録が消去される(S113)。これにより、再度点検済記録が生成されるまで、使用済の機器であることを容易に識別することができる。そして、使用終了後に管理部門に返却される。その後、再度の点検作業が行われて、次回の使用に備えて点検済情報が入力され、点検済表示が行われる状態で所定場所に保管される。
【0057】
上記警告表示S103,S108,S110は、上記ランプ31を赤色に点灯させるとともに、液晶表示画面32に、警告の原因を表示できるように制御している。なお、上記警告表示は、上記実施形態に限定されることはなく、種々の態様の表示形態を採用できる。また、ランプ31のみに表示させることもできるし、液晶表示のみに表示させることもできる。
【0058】
上記点検済表示S111も、上記警告表示と同様に、ランプ31を青色に点灯させるとともに、液晶画面に点検済である表示を行うように設定している。上記点検済表示も、ランプ31のみに表示させることもできるし、液晶表示のみに表示させることもできる。
【0059】
上記点検済表示システム50を採用することにより、点検が行われたシリンジポンプと、点検が行われていないシリンジポンプとを混同する恐れがなくなる。
【0060】
しかも、点検において異常が検出されたシリンジポンプには、点検済表示は行われず、警告が表示される。このため、使用に供する前に交換等することが可能となり、医療機器の安全性が格段に高まる。
【0061】
さらに、保管中あるいは使用中に加わった衝撃等を検出して警告表示を行うことができるため、医療機器を集中管理して各部署に貸し出した場合における安全性も確保できる。
【0062】
さらに、点検者情報を保持するため、点検作業の精度を高めることができるのみならず、点検作業の責任を明確化することもできる。
【0063】
本願発明の範囲は、上記実施形態及び実施例に限定されることはない。実施形態で記載したシリンジポンプ以外の種々の医療機器に、本願発明を適用できる。また、実施形態で記載した、点検項目も限定されることはなく、医療機器の種類に応じて種々の点検項目を設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
点検済の医療機器を確実に識別できるとともに、点検作業の確実性を向上させ、さらに、点検後に生じた不都合にも対応できる医療機器の点検済表示システムを提供できる。
【符号の説明】
【0065】
25 表示手段
31 表示手段(点灯ランプ)
32 表示手段(液晶表示装置)
41 点検済記録生成手段
42 記憶手段
43 表示制御手段
50 点検済表示システム

図1
図2
図3
図4
図5