【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療機器を点検することによって点検済の表示を行うには、所定の点検が行われ、医療機器が正常に作動することを確認する必要がある。
【0006】
上記医療機器が点検済であるかどうかは、上記医療機器に貼着等されたラベルで識別する他ない。ところが、輸液装置等は、同じ種類の多数の医療機器が病棟に貸し出されるため、病棟に持ち込んだ後に、上記ラベルが剥がれ落ちると、使用済の医療機器と混合する恐れが生じる。
【0007】
一方、上記ラベルは使用開始時以降に剥がして廃棄する必要があるが、剥がし忘れた場合には、使用中及び使用後にもそのまま貼着された状態になる。このような場合、上記と同様に、未使用点検済の医療機器と使用済の医療機器とを混同する恐れが生じる。
【0008】
また、点検後に長期保管された場合、上記点検時の性能を確保できない恐れがある。上記ラベルに点検日時を記載して、所定期間経過後のものは、再点検するように管理することも考えられるが、多数の医療機器を管理する現場で上記管理を行うのが困難な場合もある。また、誤って、上記期間を経過したものを貸し出す恐れもある。
【0009】
また、医療機器の点検を集中的に行った場合、貸し出した後に生じた問題に対処できない場合が多い。特に、貸し出した後に、衝撃が作用したような場合、故障が生じる可能性が大きくなる。また、問題となるような衝撃が作用したかはどうかを判断するのも困難である。
【0010】
さらに、医療機器の点検を行う者(以下点検者)は、製造業者等が指定する内容や医療機関で定めた内容に基づいて点検を行い、その内容を記録に残すことが要求されている。上記点検者情報や点検項目を上記ラベルや点検記録書類等に記載することもできるが、点検作業が非常に面倒になる。また、使用開始後に上記ラベルを廃棄した場合、だれが点検したのかが不明となり、問題が生じた場合等に対処するのが困難になる場合もある。
【0011】
本願発明は、上記従来の課題を解決し、点検済の医療機器を確実に識別できるとともに、点検作業の確実性を向上させ、さらに、点検後に生じた不都合にも対応できる医療機器の点検済表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、 医療機器の点検済表示システムであって、点検済表示を行う表示手段と、所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報に基づいて点検済記録を生成する点検済記録生成手段と、上記点検情報及び上記点検済記録を保持する記憶手段と、上記点検済記録の生成後、所定の条件によって上記点検済記録を取り消す点検済記録取消手段と、上記点検済記録に基づいて上記表示手段を作動させて点検済表示を行う表示制御手段とを備え
、上記点検済記録取消手段は、上記医療機器の使用情報、又は上記点検済記録生成後の時間経過情報に基づいて、上記点検済記録を取り消すように構成される。
【0013】
上記医療機器の種類は特に限定されることはない。電力で作動するとともに、中央材料室等で集中管理し、病棟や手術室等に貸し出す医療機器等に適用することができる。たとえば、シリンジポンプ等の輸液ポンプ装置に適用することができる。また、電源の種類も特に限定されることはなく、電池駆動や商用電源駆動のものに適用できる。
【0014】
上記表示手段は、少なくとも点検済であることを使用者に識別できるように構成される。表示の手法は特に限定されることはない。色彩のみで点検済を表示するように構成できる。たとえば、青色のランプが点灯すれば、点検済であり、赤色のランプが点灯すれば、使用済とすることができる。また、液晶画面等に「点検済」の文字を表示するように構成することもできる。
【0015】
さらに、必要に応じて、各医療機器において必須の点検項目について点検がなされたことを表示できるように構成することもできる。また、医療機器の性能についての数値データ等を表示させることもできる。
【0016】
上記表示手段は、点検済表示を行うための専用表示手段を採用することもできるし、各装置の操作画面を、表示手段として利用することもできる。
【0017】
上記点検済記録生成手段は、所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報に基づいて点検済記録を生成する。上記点検作業は、主として点検者が目視及び手動による点検項目について点検を行うものである。一方、上記点検操作は、医療機器に所定の動作をさせることにより点検を行うものであり、自動的に点検工程が行われて、点検情報が自動的に生成されるように構成することもできる。
【0018】
上記点検済記録生成手段は、点検者が手動で入力する手動入力手段から入力される情報によって上記点検済記録を生成することもできるし、医療機器の所定の点検操作を行うことにより作動させられる自動入力手段から入力される情報によって上記点検済記録を生成することもできる。
【0019】
また、上記手動入力手段と上記自動入力手段の双方から入力される点検情報に基づいて上記点検済記録を生成することもできる。点検済記録は、所定の点検項目に異常がなかった場合生成される。なお、点検された各項目についての点検情報は、点検済記録とともに、記憶手段に記憶するように構成するのが望ましい。
【0020】
上記記憶手段として、電子データを記憶できる種々の装置を採用できる。たとえば、医療機器内に設けたメモリや、ハードディスク等を採用できる。上記点検済記録は、上記記憶手段内に記憶させることができる電子データであれば、形式等は特に限定されることはない。また、所定の点検項目に異常がなかった場合に点検済であることのみの情報を点検済記録とすることもできるし、点検項目等の内容を含む点検済記録を生成して記憶することもできる。また、点検日時等を含む点検済記録を生成することもできる。
【0021】
上記表示制御手段は、上記点検済記録に基づいて、上記表示手段に点検済表示を行う。点検済記録が存在しない場合には、点検済表示は行われない。また、上記点検済記録は、上記点検済記録が生成された後であっても、所定の条件によって取り消される。
【0022】
すなわち、上記医療機器を使用した場合、及び上記点検済記録生成後の時間経過情報に基づいて、上記点検済記録が取り消されるように構成することができる。上記
点検済記録の取消は、点検済記録取消手段によって行われる。点検済記録が取り消されることにより、点検済表示は行われない。これによって、使用済の医療機器と点検済で未使用の医療機器とを取り違える恐れがなくなる。また、点検された後に長期間使用されなかった医療機器についても点検済表示がなされない。このため、点検後の医療機器の性能、及び安全性を確保できる。
【0023】
上記点検済記録を取り消す手法等は特に限定されることはない。点検済記録自体を、メモリ等から消去することもできるし、点検済記録に取消情報を付加することにより取消状態とすることができる。上記表示制御手段は、上記点検済記録取消手段によって取消がなされていない点検済記録に基づいて点検済表示等を行う。
【0024】
上記使用情報として、たとえば、点検済記録生成後に電源を投入し、電源投入後所定時間経過することにより、点検済記録を取り消すように構成できる。また、時間経過情報は、本システムを構成するマイクロコンピュータ内のタイマー機能を利用して、上記点検済記録生成後の経過時間(期間)を計測し、所定の時間が経過した場合、上記点検済取消手段に点検済記録の取消指示を出力するように構成できる。また、医療機器本体の制御を行う制御装置を構成するマイクロコンピュータを利用して、上記点検済記録生成からの時間を計測するように構成することもできる。なお、上記時間経過情報は、医療機関の点検体制や、医療機器の種類、点検項目等に応じて設定できるように構成するのが望ましい。
【0025】
上記点検情報に、点検者情報を含ませるのが望ましい。これにより、点検者の注意力を高め、また、点検作業についての責任が明確化される。この結果、点検者に精度の高い点検作業を行わせることが可能となる。
【0026】
医療機器に作用する衝撃を検出する衝撃検出手段を設け、医療機器に所定の大きさ以上の衝撃が作用した場合、上記点検済記録を取り消すように構成するのが望ましい。上記衝撃検出手段として、種々の衝撃センサー(加速度センサー)等を用いることができる。
【0027】
上記衝撃検出手段を設けることにより、点検済記録が生成された後、病棟等において大きな力が作用した場合には点検済表示がなされないことになり、安全性を高めることができる。また、大きな衝撃力が作用したことを警告する警告表示を、上記表示手段に表示するように構成するのが望ましい。
【0028】
上記表示制御手段は、少なくとも医療機器の使用開始時に上記点検済表示を表示するように制御する一方、上記点検済表示がなされない場合、上記表示手段に、所定の警告情報を表示するように構成するのが望ましい。
【0029】
点検済表示を点検終了後に常時表示することもできるが、医療機器の使用開始時として、電源を投入したときに、上記点検済表示がなされるように構成するのが望ましい。これにより、電池駆動の医療機器において、上記点検済表示に電力が消費されるのを防止することができる。
【0030】
上記記憶手段に、上記点検済記録とは別途に、少なくとも所定期間内の上記点検作業又/及び上記点検操作に係る点検情報の履歴を記憶するように構成することができる。これにより、当該医療機器の点検情報を長期にわたって監視することが可能となる。また、上記
点検済記録を外部のコンピュータ等に出力することができるように構成するのが望ましい。
【0031】
上記表示制御手段を、所定の点検情報が入力されなかった場合、警告情報を出力して、上記表示手段に表示するように構成するのが望ましい。上記警告情報は特に限定されることはない。たとえば、使用済の医療機器であって点検がなされていない旨の警告や、上述した衝撃が加わったことを表示する警告情報、点検済記録生成から所定の時間が経過した情報等を表示することができる。
【0032】
上記点検情報は、医療機器の種類等に応じて必要な点検項目についての情報であり、種々の情報を含ませることができる。たとえば、目視により異常を認められなかった場合は、異常の有無のみの情報となる。一方、圧力、温度、電流、電圧等の数値を含む情報については、数値自体を点検情報として入力することができる。そして、上記点検済記録生成手段において、異常がなかった場合に点検済記録が生成されるように構成することができる。たとえば、輸液ポンプの場合、点検者の目視による点検情報に加えて、輸液圧力を点検項目に含ませ、上記輸液圧力を手動あるいは自動で点検して、異常がなかった場合に点検済情報を生成するように構成することができる。また、上記輸液圧力の数値を、点検情報として、上記点検済記録生成手段に手動あるいは自動で入力し、上記点検済記録生成手段が異常の有無を判断して、上記点検済記録を生成するように構成することもできる。
【0033】
本願システムはに係る上記点検済記録生成手段、上記記憶手段、上記点検済記録取消手段及び表示制御手段は、マイクロコンピュータの機能を利用して構成することができる。上記マイクロコンピュータは、本願システム専用のものとして設けることもできるし、各医療機器の制御を行うマイクロコンピュータの機能を利用して、本願発明のシステムを構成できる。また、上記表示手段は、本願システム専用の表示装置として設けることもできるし、各医療機器の表示装置を利用して構成することができる。
【0034】
本願発明に係る医療機器では、所定の点検作業に基づく点検情報及び/又は所定の点検操作に基づく点検情報を点検済記録生成手段及び記憶手段に入力する点検情報入力工程と、上記点検情報に基づいて点検済記録を生成する点検済記録生成工程と、上記点検済記録に基づいて上記表示手段を作動させて点検済表示を行う点検済表示工程と、上記点検済記録生成工程を終えた後、所定の情報が
入力されることによって上記点検済記録を取り消す点検済記録取消工程とを含む各工程が行われる。上記各工程は、手動で点検済情報を入力する工程を除き、装置内に設けたマイクロコンピュータのプログラムによって実行される。上記マイクロコンピュータは、上記各医療機器において、他の制御を行うものと兼用することもできるし、点検操作専用のものを採用することもできる。
【0035】
上記点検済記録取消工程において、点検済記録が生成された後に使用された場合、又は上記点検済記録が生成されたときから所定の時間が経過した場合に、上記点検済記録を取り消すことができる。また、上記医療機器に所定の値以上の衝撃が作用することによって上記点検済記録を取り消すように構成することができる。