特許第6643916号(P6643916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643916小型成形品の搬送装置および該装置に用いられる選別部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643916
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】小型成形品の搬送装置および該装置に用いられる選別部材
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20200130BHJP
   B07B 1/12 20060101ALI20200130BHJP
   B07B 1/30 20060101ALI20200130BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20200130BHJP
   B07B 13/16 20060101ALI20200130BHJP
   B07B 1/46 20060101ALI20200130BHJP
   B07B 13/04 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   A61J3/06 R
   B07B1/12 Z
   B07B1/30
   B07B9/00
   B07B13/16 Z
   B07B1/46 D
   B07B13/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-28935(P2016-28935)
(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公開番号】特開2017-144093(P2017-144093A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 隼人
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭45−013746(JP,Y1)
【文献】 特開2015−096248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B07B 1/12
B07B 1/30
B07B 1/46
B07B 9/00
B07B 13/04
B07B 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状および寸法に関して所定の条件を満たしている小型成形品と、該小型成形品より大きい拡大品とを選別し、該拡大品を搬送過程で排除する小型成形品の搬送装置であって、
前記小型成形品の所定方向における寸法より大きい幅を有して搬送方向に延在するスリットを画成している複数のガイド有する選別部材を備え、
前記ガイドは、側部ガイド部と下部ガイド部とを有し、
前記側部ガイド部の搬送方向上流側における前記小型成形品の導入端部は、前記スリットの搬送方向上流側の端部よりも上流側に延設され、搬送方向上流に向って幅及び高さが漸減する剣先形状を有し、
前記下部ガイド部は、前記側部ガイド部の底部から側方へと、一部が前記スリット内に張り出すようにして配置され、
前記側部ガイド部の剣先形状により、前記小型成形品の長手方向が搬送方向に一致するように、前記小型成形品の姿勢を転換させるとともに、前記下部ガイド部により、前記小型成形品の前記所定の方向が前記スリットの幅方向に一致するように、前記小型成形品の姿勢を転換させて、前記小型成形品が前記スリットを通して落下して搬送路に受容されるようにするとともに、前記拡大品が前記選別部材を通過して排除されるようにしたことを特徴とする小型成形品の搬送装置。
【請求項2】
前記所定の方向は前記小型成形品の厚み方向であることを特徴とする請求項1に記載の小型成形品の搬送装置。
【請求項3】
前記拡大品は、前記厚み方向に交差する方向において前記小型成形品同士が連接した連接品であり、前記ガイドは、当該連接品を、前記厚み方向が前記スリットの幅方向に一致しない姿勢に転換させ、前記ガイドは当該姿勢を維持しながら通過させることを特徴とする請求項2に記載の小型成形品の搬送装置。
【請求項4】
前記拡大品は、前記厚み方向において前記小型成形品同士が連接した連接品であり、前記ガイドは、当該連接品をその姿勢によらず通過させることを特徴とする請求項2に記載の小型成形品の搬送装置。
【請求項5】
前記小型成形品と前記所定の条件を満たしていない欠損品とを選別し、該欠損品を搬送過程で排除する欠損品排除部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の小型成形品の搬送装置。
【請求項6】
前記欠損品排除部材の上方に前記選別部材が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の小型成形品の搬送装置。
【請求項7】
前記選別部材が着脱可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の小型成形品の搬送装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の小型成形品の搬送装置に配設され、前記複数のガイド有してなる選別部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型成形品の搬送装置および該装置に用いる選別部材に関する。より詳しくは、本発明は、形状・寸法など外観に関して所定の条件を満たしている小型成形品と、そうでない小型成形品、特に所定の条件を満たしている小型成形品よりも拡大された形状・寸法を有している小型成形品とを、効率的に選別して搬送路から排除するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造された錠剤などの小型成形品は、後工程の処理装置、例えば外観検査装置において最終的に良否を検査することができる。その検査などの処理を高速且つ精密に行うためには、処理装置に小型成形品が供給される前の搬送過程で、所定の条件を満たしていない小型成形品を予め排除しておくことが好ましい。割れや欠けが生じた小型成形品やその欠片、またはその他の異物(以下、欠損品と称する)に関しては、本出願人の出願に係る特許文献1など、欠損品を効率的に選別し、搬送路から排除する構成が種々提案されている。
【0003】
しかしながら、小型成形品には、欠損品だけでなく、何らかの要因で企図しているものよりも拡大した形状・寸法を有しているもの(以下、拡大品と称する)が存在する場合がある。例えば、錠剤にはフィルムコーティングや糖衣コーティングが施されたものがあるが、錠剤表面に塗布されたコーティング剤が乾燥前に粘着し、小型成形品同士が容易に切り離せない状態で連接してしまうことがある(以下、このように連接した状態の小型成形品を連接品と称する)。特許文献1等に開示される技術は、欠損品の排除を主目的としたもので、連接品の排除については特に考慮されていない。従って、連接品はそのまま搬送方向下流側の外観検査装置の直近まで導かれることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−96248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
錠剤の搬送経路上には、一般に、錠剤の幅および高さを最終的に規制し、目標姿勢となって整列した小型成形品のみ外観検査装置へと通過させる規制部が外観検査装置の直近に設けられる。従って、その規制部を適用することで連接品ないしは拡大品を排除することは可能である。しかし連接品ないしは拡大品が存在すること自体、後段の処理工程における処理効率の低下につながり、また搬送異常が生じる原因ともなり得る。さらに、規制部によって搬送経路から排除された小型成形品を上流側に戻すためのリターン部を設けている搬送装置においては、リターン部を含む搬送経路において連接品ないしは拡大品の含有率すなわち密度が次第に高くなって行き、処理効率が一層低下したり、搬送異常発生の恐れが益々増大したりすることになる。
【0006】
よって本発明は、連接品などの拡大品を予め効果的に排除し、以て後段の処理工程における処理効率の向上に資することができるとともに、詰まりなどの搬送異常発生の恐れを低減することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明は、形状および寸法に関して所定の条件を満たしている小型成形品と、該小型成形品より大きい拡大品とを選別し、該拡大品を搬送過程で排除する小型成形品の搬送装置であって、前記小型成形品の所定方向における寸法より大きい幅を有して搬送方向に延在するスリットを画成している複数のガイドと、該ガイドに設けられ、前記所定の方向が前記スリットの幅方向に一致するように、前記小型成形品の姿勢を転換させて前記スリット内に誘導する姿勢転換部と、
を有する選別部材を備え、前記小型成形品が前記スリットを通して落下して搬送路に受容されるようにするとともに、前記拡大品が前記選別部材を通過して排除されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記装置に配設され、上記複数のガイドおよび姿勢転換部を有してなる選別部材に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連接品などの拡大品を搬送過程で予め排除することで、後段の処理工程における処理効率の向上に資することができるとともに、詰まりなどの搬送異常発生の恐れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明小型成形品の搬送装置の一実施形態を示す模式的側面図である。
図2図1における搬送路台の構成例を示す斜視図であり、(a)および(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る選別部材を装着しない状態および装着した状態を示している。
図3】(a)〜(e)は小型成形品の例としての錠剤の5形態を示す図であり、各図の上側部分および下側部分がそれぞれ錠剤の平面および側面を示している。
図4】(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係る選別部材に対し、図3(d)に示した錠剤が供給された状態を示す斜視図および平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る選別部材が良品および連接品を選別する態様を説明するための模式的正面図である。
図6】(a)および(b)は、本発明の他の実施形態に係る選別部材に対し、図3(e)に示した錠剤が供給された状態を示す斜視図および平面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る選別部材が良品および連接品を選別する態様を説明するための模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0012】
(定義)
以下では小型成形品として錠剤を搬送する搬送装置を例示し、その搬送装置は、次工程の処理を行う処理装置としての錠剤の外観検査装置に組み合わされるものとして説明される。また、「搬送方向」とは、着目している搬送装置上の部位における錠剤の進行方向を意味するものとする。さらに、「スリットの幅方向(または幅)」とは、錠剤の搬送面に平行で且つ搬送方向に直交する方向(または当該方向における寸法)を言う。さらに、「良品である」とは形状・寸法に関して所定の条件を充足していることを言うが、単に錠剤が欠損品または拡大品でないことを意味し、外観検査装置によっても最終的に欠陥がないものと判別される錠剤を称するものではない。一方、「不良品」とは、欠損品および拡大品を総称するものとする。
【0013】
(搬送装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤の搬送装置を示す模式的側面図である。図1に示すように、設置面であるベース1上には、ゴム等からなる緩衝部材2aおよび設置台2を介して振動発生装置である振動フィーダ3が設けられ、さらにその上面には搬送路台8が固定されている。搬送路台8は、ホッパ4から落下して供給される錠剤を受け取る搬送路入口部5と、その下流側に位置する良品/不良品の選別部6と、さらにその下流側に位置する搬送路出口部10と、を有する。選別部6は、図2について後述するように、不良品を搬送路から排除する。選別部6の下方には、排除された不良品を受容するための受け部9が配設されている。
【0014】
ホッパ4は、図示の搬送装置から外観検査装置に向けて搬送すべき錠剤を貯留し、適宜の量の錠剤を下方の搬送路入口部5に供給する。振動フィーダ3の振動は搬送路台8に伝達され、これに伴って搬送路入口部5に供給された錠剤は選別部6に移送されて行く。そして、良品のみが選別部6を通過し、不良品は選別部6から排除されて受け部9に受容・回収される。一方、選別部6を通過した良品は、搬送路出口部10を介して、外観検査装置に至る搬送ベルトなどを含む第2の搬送装置(不図示)に供給される。
【0015】
図2(a)および(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る選別部材を装着しない状態および装着した状態の搬送路台8を示している。搬送路台8は、基本的には図2(a)に示す構成となっている。すなわち、搬送路台8は、搬送路入口部5および搬送路出口部10を一体化したフレーム81を有し、搬送路入口部5と搬送路出口部10との間に選別部6が配設されている。選別部6は、基本構成として、搬送路入口部5から搬送路出口部10まで錠剤が円滑に滑落しつつ搬送されるように適切に下方に傾斜してフレーム81に保持されたパンチング板61を有する。パンチング板61には、搬送対象となる錠剤の形状・寸法・表面状態に応じて決定された口径、すなわち良品が落下しないような口径を有する複数の円形開口63が2次元状に配設されている選別部材である。従って、欠損品は滑落の過程で円形開口63を介して落下することで排除され、受け部9に受容される。なお、パンチング板61はフレーム81に対して一体化されて保持されたものであってもよいが、想定される欠損品に応じて、形状・寸法の異なる開口を有するパンチング板を使用することが望ましいのであれば、着脱可能に保持されるものとするのがよい。
【0016】
欠損品を排除する基本構成に対し、さらに連接品を排除する目的で、選別部6は図2(b)に示すような構成を採ることができる。すなわち、フレーム81には、パンチング板61の上方にあって、搬送路入口部5から適切に下方に傾斜した状態で位置するよう、選別部材70を配置することができる。選別部材70は、フレーム81に一体化することも可能であるが、本実施形態では選別部材70をユニットとし、例えばねじ83等を用いてフレーム81に着脱できるようにしている。錠剤の製造工程において連接品が実質的に発生しないために不要である場合の取り外しや、異なる形状および寸法の錠剤ないしは連接品に対応した他の形態(例えば図6および図7について後述するような形態)の選別部材への交換を考慮すれば、このように選別部材70を着脱可能なユニットとすることは有利である。なお、選別部材70をフレーム81に着脱可能に保持するための締結構造としては、ねじに限らず適宜のものを採用できる。例えば、スナップ嵌合構造が採用されてもよいし、磁力による吸着構造が採用されてもよい(なお、そのような嵌合構造はパンチング板61を着脱可能に構成する場合についても適用できる)。
【0017】
選別部材70は、錠剤の搬送方向Fに平行な方向に延在する複数のガイド71を有し、隣接するガイド間にスリット75が画成される簀子状の構造を有している。ガイド71の形状およびスリット75の間隔は、良品および欠損品の落下が生じる一方、連接品はそのまま滑落して通過するように定められている。選別部材70の搬送方向終端側には導出路77が設けられ、選別部材70を滑落してきた連接品は導出路77によって搬送路から排除される。導出路77の出口を受け部9の直上に位置することで、排除された連接品が受け部9に落下する。一方、良品および欠損品はスリット75を介してパンチング板61上に落下し、その上を滑落する。従って、その滑落の過程で欠損品が円形開口63を介して受け部9に落下することで排除されるとともに、良品は搬送路出口部10に導かれ、さらに外観検査装置に至る第2の搬送装置に提供されることになる。つまり、本実施形態によれば、欠損品のみならず、連接品も予め搬送経路から排除されるので、後段の外観検査装置の処理効率の向上に資するとともに、搬送異常発生の恐れも少ないものとなる。
【0018】
さて、小型成形品である錠剤には、例えば図3(a)〜図3(e)に示すように、様々な形状、寸法および表面状態のものがある(これらの各図の上側部分および下側部分は、それぞれ、錠剤を平面および側面を示している)。図3(a)〜(c)に示すものはいずれも平面形状が円形であるが、同図(a)に示すものは平錠と称され、扁平な略円柱形状を有し、対向する一対の端面の各々は平坦である。同図(b)に示すものはR付き錠と称され、対向する一対の端面の各々は外方に膨出する曲面をなす膨出部を有している。同図(c)に示すものは糖衣錠であり、糖のコーティングが施されているため外表面の状態は滑らかである。一方、同図(d)および(e)に示すものは異形錠と称され、いずれも略楕円の平面形状をなすとともに膨出する一対の端面を有しているが、同図(d)の異形錠は対向する一対の平坦な側面を有している。
【0019】
本発明に適用される選別部材は、基本的には、図3(a)〜(e)の各下側部分における縦方向、すなわち錠剤の最小寸法が現れる厚み方向である所定方向に関して所定の寸法を有した良品である錠剤と、良品より大きい拡大品である連接品とを選別する。そのために、選別部材は、錠剤の厚みより大きい幅を有して搬送方向に延在するスリットを画成する複数のガイドと、ガイドに設けられ、厚み方向がスリットの幅方向に一致するように良品である錠剤の姿勢を転換させてスリット内に誘導する姿勢転換部を有する。
【0020】
しかし、錠剤同士の連接の態様は一つではなく、厚み方向に連接する場合もあれば、厚み方向に交差する方向(側方)に連接する場合もある。前者は図3(c)に示したような糖衣錠において生じやすく、後者は図3(d)に示した異形錠において生じやすい。従って、良品がスリットを介して落下して搬送路(本実施形態ではパンチング板61)に受容されるようにするとともに、連接品が選別部材を通過して排除されるようにする選別部材は、図3(a)〜図3(e)に示したような錠剤の本来の形状および連接品の形状に応じて構成されることが強く望ましい。
【0021】
(選別部材の構成例)
以下では、図3(d)に示した異形錠および図3(c)に示した糖衣錠のそれぞれに適合した選別部材の構成例を説明する。なお、欠損品は良品と同様に処理されるので、以下では選別部材上での良品と連接品との挙動について説明する。
【0022】
図2(b)、図4(a)および(b)は、図3(d)に示した異形錠およびその連接品に適した選別部材70の構成例を示す。また、図5はその動作の説明図である。選別部材70は、スリット75を画成するガイド71を有し、ガイド71は、側部ガイド部72と下部ガイド部73とを有する。側部ガイド部72は、1つの頂点を上に向けた五角形状の断面部分を有し、その頂点に対応した稜線につながる傾斜面72aと、その傾斜面72aに連続し、搬送面に対して垂直な側面72bと、が設けられている。側部ガイド部72は、スリット75の搬送方向上流側の端部よりもさらに上流側に向かって延設されており、その端部は、搬送方向上流に向って幅および高さが漸減する剣先形状を有する錠剤の導入端部72cとなっている。この導入端部72cの剣先形状によって、良品である錠剤T1および連接品T2は、長手方向が搬送方向に一致するように側部ガイド部72間の間隙に進入する。
【0023】
本実施形態では、下部ガイド部73は側部ガイド部72の底部から側方へと、一部がスリット75内に張り出すようにして配置された円柱形状を有する。従って下部ガイド部73は凸状の湾曲面73aを有し、隣接する下部ガイド部73の凸状の湾曲面73aとともに下方に向かって窄まってゆく空間を形成する。従って、その空間の幅が最小となる部分によって、良品である錠剤T1の落下を許容するスリット幅が規定される。
【0024】
ここで、図5に示すように、スリット幅をS1、隣り合う側部ガイド部72の側面72b間の間隙の寸法をS2、良品である錠剤T1の厚みをt、錠剤T1の長手方向に直交する方向の幅をW1とすると、これらは、
t<S1 および 2×W1<S2
の関係を充足するように規定される。つまり、スリット幅S1は、錠剤T1の厚み方向がスリット75の幅方向に一致している姿勢となっているときにのみスリット75を介した落下が生じるように設定される。また、隣り合う側部ガイド部72の側面72b間の間隙の寸法S2は、連接品T2の幅(2×W1)よりも僅かに大きく設定されることで、連接品T2が当該間隙内での搬送面内の回動が規制されるようにしている。
【0025】
以上の構成において、良品である錠剤T1は、側部ガイド部72の導入端部72cの剣先形状によって、長手方向が搬送方向に一致するように向きが整えられて側部ガイド部72間の間隙に進入する。この際、錠剤T1に加わる負荷は、振動フィーダ3から伝達される振動による推進作用で側部ガイド部72の導入端部72cへ接触し、側部ガイド部72間の間隙に振り分ける際に生じる程度のものである。側部ガイド部72間の間隙に進入した良品である錠剤T1が、既に厚み方向がスリット75の幅方向に一致している姿勢となっているときにはそのまま、またほぼ一致した姿勢となっているときには湾曲面73a上を滑って、良品である錠剤T1はスリット75を介して落下する。一方、錠剤の幅方向がスリット75の幅方向に一致した姿勢となっていない場合には、その錠剤は直ちには落下しない。しかしその錠剤T1が対向する湾曲面73aの一方に片寄って進入すると、その湾曲面73a上に残留することはできず、図5の左側部分に示すように傾きが生じ、スリット75を介した落下が生じる姿勢に転換されることになる。すなわち、下部ガイド部73は姿勢転換部としても機能する。また、錠剤T1が対向する湾曲面73aの双方で平衡に支持されるような姿勢で進入しても、振動フィーダ3から伝達される振動によって一方の湾曲面73aに片寄るような動きが生じ、同様に落下が生じる姿勢に転換される。
【0026】
連接品T2についても、側部ガイド部72の導入端部72cの剣先形状によって、長手方向が搬送方向に一致するように向きが整えられて側部ガイド部72間の間隙に進入し、その間隙の寸法S2によってその姿勢が維持される。その連接品T2に対し、スリット75は中央下部に位置しており、図5の右側部分に示すように、対向する下部ガイド部73の2点で支えられる。従って、連接品T2は、一方の膨出部側を下に向けた安定した姿勢を維持したまま、スリット75から落下することなく選別部材70を通過し、導出路77によって搬送路から排除される。なお、振動フィーダ3から伝達される振動によって、側部ガイド部72間の間隙に進入する前に、連接品T2は膨出部を下に向けた安定姿勢となっている場合が殆どである。しかし仮に、他の錠剤と連接していない側の平坦な側面を下に向けた姿勢となっていても、剣先形状の導入端部72cに突き当たることで倒れが生じ、安定姿勢へと転換されるので、実質的にすべての連接品T2が選別部材70を通過する。
【0027】
なお、連接品T2を通過させる機能および錠剤T1の姿勢転換機能を効果的に果たし得るのであれば、側部ガイド部72および下部ガイド部73は図に例示した形状に限られないことは勿論である。
【0028】
次に、図6(a)および(b)は、図3(c)に示した糖衣錠およびその連接品に適した選別部材170の構成例を、また図7はその動作を示している。この構成例に係る選別部材170は、スリット175を画成するガイド171を有し、ガイド171は円柱形状を有する。すなわち、ガイド171は隣接するガイド171とともに下方に向かって窄まってゆく空間を形成しており、その空間の幅が最小となる部分によって、良品である錠剤T1’の落下を許容するスリット幅が規定される。
【0029】
また、ガイド171は、搬送方向Fの下流側に向うに従ってガイド171の表面からの高さが漸増する斜面を形成する姿勢転換部173を有し、且つ、隣接するガイド171同士の関係では、その姿勢転換部173の位置を搬送方向に異ならせている。つまり、図6(a)および(b)に示すように、あるガイド171が搬送方向Fの上流側に偏倚した位置に姿勢転換部173を有したものである場合、それに隣接するガイド171は搬送方向Fの下流側に偏倚した位置に姿勢転換部173を有したものとする。また、本実施形態の姿勢転換部173は、円滑な姿勢転換が行われるようにするために、搬送方向下流に向うに従って幅が広くなる形状とされている。
【0030】
ここで、図7に示すように、スリット幅をS、錠剤T1’の厚みをt’、錠剤T1’の直径をDとすると、これらは、
t’<S<D および S<2×t’
の関係を充足するように規定される。つまり、スリット幅Sは、錠剤T1’の厚み方向がスリット175の幅方向に一致している姿勢となっているときにのみスリット175を介した落下が生じるように設定される。
【0031】
以上の構成において、隣接するガイド171間の間隙に進入する錠剤T1’が転動している場合など、既に厚み方向がスリット175の幅方向に一致している姿勢となっているときには、そのままスリット175を介して落下する。一方、錠剤T1’が、その径方向がスリット175の幅方向に一致した姿勢となっている場合には、直ちに落下することなくガイド171間の間隙を進行して行く。しかし、やがて姿勢転換部173に突き当たり、さらに端部が姿勢転換部173に乗り上げて行くことで、厚み方向がスリット175の幅方向に一致している姿勢に転換されて行き、図7の左側部分に示すように、ついにはスリット175を介して落下する。一方、連接品T2’については、これがどのような姿勢で進入しても、また姿勢転換部173に突き当って姿勢転換されても、スリット175から落下することなく選別部材170を通過する。
【0032】
なお、連接品T2’を通過させる機能および錠剤T1’の姿勢転換機能を効果的に果たし得るのであれば、ガイド171は図に例示した形状に限られないことは勿論である。また、上流側に偏倚した姿勢転換部173と下流側に偏倚した姿勢転換部173とが搬送方向に直交する方向において交互に現れるようにガイド171が配列された選別部材170を用いたが、姿勢転換部173の配列態様は適宜定め得るものである。例えば、上流側に偏倚したものと、下流側に偏倚したものと、それらの中間に位置するものと、が順次搬送方向に直交する方向に現れるように姿勢転換部173が配列されるものでもよい。
【0033】
(実施形態の効果)
搬送装置は、振動フィーダを含む搬送機構の途中に選別部材70または170を組み込んだ構成を有することにより、良品と連接品と別経路に振り分け、予め連接品を搬送経路から排除することができる。また、連接品を排除する選別部材70または170を、良品を搬送する搬送経路をなすとともに欠損品を排除するパンチング板61の上方に配置した2段構成としたことにより、搬送装置の設置面積の増大を抑制することができる。さらに、選別部材をユニットとして着脱可能としたことにより、錠剤の製造工程において連接品が実質的に発生しないために不要である場合の取り外しや、異なる形状および寸法の錠剤ないしは連接品に応じた他の形態の選別部材への交換に対応可能となる。
【0034】
(その他)
なお、錠剤の形状は図3(a)〜(e)に例示したものに限られず、所謂カプレット錠であってもよい。また錠剤に限らず、カプセル剤であってもよい。さらに本発明は、それらの製剤のみならず、粒状の菓子その他の小型成形品の搬送装置にも適用できることは勿論である。
【0035】
また、連接品は図に例示されたものに限られない。連接品は、例えば、異形錠同士が長手軸方向にずれて連接しているものでもあり得るし、良品に欠損品が連接しているものでもあり得る。それらのような形態の連接品であれば、上述した選別部材によって排除可能であるが、本発明の要旨は、予測される連接品の形態に応じてガイドおよび姿勢転換部の形状および寸法を適切に定めた選別部材を構成することに存するのである。また、本発明搬送装置または選別部材の排除対象は、連接品に限らず、例えば潰れなどにより、所定方向において良品の所定の寸法より大きい寸法を有している拡大品であってもよい。
【0036】
さらに、本発明選別部材は、欠損品排除部材と組み合わされることで、後段の処理工程における処理効率の一層の向上に資することができる。その組み合わせの対象となる欠損品排除部材としては、上述したようなパンチング板だけでなく、特許文献1に開示された構成であってもよい。また、組み合わせの態様は、上述のように欠損品排除部材の上に配置されるものに限られず、搬送方向に沿って直列に配置されるものでもよい。
【符号の説明】
【0037】
3 振動フィーダ
5 搬送路入口部
6 選別部
9 受け部
10 搬送路出口部
61 パンチング板
70、170 選別部材
71、171 ガイド
72 側部ガイド部
73 下部ガイド部
75、175 スリット
173 姿勢転換部
T1、T1’ 錠剤(良品)
T2、T2’ 連接品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7