(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記充電率差解消工程では、前記条件切替処理を実施するための判定条件として、更に、前記非交換電池ストリングに流れる電流と、前記交換対象電池ストリングに流れる電流と、の差が予め設定された許容電流差以下となっているか否かを判断する請求項1に記載の電池システムの電池パック交換方法。
前記完了判定工程では、前記交換対象電池ストリングが利用可能となったと判定するための条件として、更に、前記非交換電池ストリングの電圧と、前記交換対象電池ストリングの電圧と、の差が予め決定された完了判定電圧差以下となったことを判断する請求項1又は2に記載の電池システムの電池パック交換方法。
少なくとも1つの電池パックが直列に接続される電池ストリングが、複数個並列に接続された状態で負荷に接続された電池システムにおいて用いられる電池パックであって、
前記負荷に対して電源を与える電池と、
前記電池と前記負荷との間の接続状態又は遮断状態を切り替えるサブリレーと、
前記サブリレーと直列に接続される抵抗と、
前記電池と前記負荷との間の接続状態と遮断状態とを切り替え、かつ、前記サブリレー及び抵抗と並列に接続されるメインリレーと、
前記電池の電圧の測定と、前記電池に流れる電流の測定と、前記メインリレー及び前記サブリレーの開閉状態の制御と、を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記電池パックすべてにおいて前記メインリレーと前記サブリレーとを遮断状態とした上で、交換対象の電池パックが属する前記電池ストリングが新規電池パックで構成される交換対象電池ストリングと交換された後に前記電池パックの全ての前記メインリレーを遮断状態とし、前記電池パックの全ての前記サブリレーを接続状態とし、
前記新規電池パックを含まない非交換電池ストリングの電圧と、前記交換対象電池ストリングの電圧と、の差が予め設定した許容電圧差以下となる毎に条件切替処理を行う充電率差解消工程であって、当該条件切替処理は、接続状態となっている前記サブリレーを減少させると共に、当該条件切替処理で接続状態から遮断状態に切り替えた前記サブリレーと並列に接続された前記メインリレーを遮断状態から接続状態に切り替え、かつ、前記許容電圧差を小さい値に更新し、
全ての前記メインリレーを接続状態とした後に、前記非交換電池ストリングに流れる電流と、前記交換対象電池ストリングに流れる電流と、の差が予め決定された完了判定電流閾値以下となったことに応じて前記交換対象電池ストリングが利用可能となったことを判定する電池パック。
前記制御部は、複数の前記電池パックの前記メインリレーと前記サブリレーとを遮断状態とする指示が複数の前記電池パックに対して充放電を行う充放電装置から与えられ、当該指示に基づき前記メインリレー及び前記サブリレーを制御する請求項4に記載の電池パック。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0015】
実施の形態1にかかる電池システム1では、電池ストリングが複数個並列に接続された状態で負荷に接続され、複数の当該電池ストリングがそれぞれ1つの電池パックを含む例について説明する。
【0016】
実施の形態1にかかる電池システム1のブロック図を
図1に示す。
図1に示す例では、電池システム1を制御する電池システム制御部(例えば、車両部側電池制御部11)と、電池システム1により電源が供給される負荷(例えば、モータ)を含む車両部10を示した。なお、電池システム1は、車両部10に含まれるモータを発電機として機能させた場合には当該発電機により充電される。つまり、車両部10に含まれるモータは、電池システム1に対する充放電装置としても機能するものである。また、車両部側電池制御部11は、車両部10のモータの状態と電池システム1に含まれる電池の状態に応じて電池システム1内の電池パック制御部に対してリレーを制御するための指示を行う。
【0017】
図1に示すように、実施の形態1にかかる電池システム1は、電池パックP1〜Pn(nは、電池ストリングの数を表す整数)、正極配線13、負極配線14を有する。正極配線は、電池パックの正極と負荷となる車両10とを接続する配線である。負極配線14は、電池パックの負極と負荷となる車両10とを接続する配線である。電池パックP1〜Pnは、それぞれ正極配線13と正極配線14との間に並列に接続される。なお、電池パックP1〜Pnは、電池ストリングST1〜STnに対応するものである。
【0018】
電池パックP1〜Pnは、同じ構成を有するものであるため、ここでは電池パックの説明として電池パックP1を説明する。なお、
図1では、電池パックP2〜Pnにおいて電池パックP1内の構成と対応する構成について符号の末尾以外の符号を電池パックP1の符号と同じにした。
【0019】
電池パックP1は、正側メインリレー111、負側メインリレー121、サブリレー131、電流センサ141、抵抗(例えば、抵抗PR1)、電池(例えば、組電池201)、電池パック制御部301を有する。
【0020】
組電池201は、車両部10のモータに対して電源を与えると共に発電機として機能する車両部10のモータにより充電される。組電池201は、複数の電池セル(或いは単位電池)を直列に接続したものである。組電池201は、正極が正極配線13を介して車両部10に接続され、負極が負極配線14を介して車両部10に接続される。
【0021】
正側メインリレー111は、組電池201の正極と正極配線13との間に接続される。この正側メインリレー111は、組電池201の正極と車両部10との間の接続状態と遮断状態とを切り替える。
【0022】
サブリレー131と抵抗PR1とは、直列回路を構成する。そして、当該直列回路は、正側メインリレー111と並列に接続される。サブリレー131は、組電池201と車両部10との間の接続状態と遮断状態とを切り替える。また、抵抗PR1は、組電池201の充放電電流を制限する。なお、上記直列回路はプリチャージ回路としても機能する。
【0023】
負側メインリレー121は、組電池201の負極と負極配線14との間に接続される。負側メインリレー121は、組電池201の負極と車両部10との間の接続状態と遮断状態とを切り替える。
【0024】
電流センサ141は、組電池201の負極側の電極と負極配線との間に設けられる。電流センサ141は、組電池201に流れる電流を検出して、電流値I1を電池パック制御部301に出力する。
【0025】
電池パック制御部301は、組電池201の電圧測定及び組電池201に流れる電流の測定を行う。また、電池パック制御部301は、他の制御部と測定した電圧値及び電流値の送受信を行う。この測定した電圧値及び電流値の送受信についての詳細は後述する。また、電池パック制御部301は、正側メインリレー111、負側メインリレー121及びサブリレー131の開閉状態を制御する。なお、電池パック制御部301は、正側メインリレー111とサブリレー131の少なくともいずれか一方がオン状態(例えば、スイッチが閉じた状態であり、スイッチの電極間が導通した状態)となった場合に負側メインリレー121をオン状態とする。従って、以下の説明におけるリレーの開閉状態の説明では、正側メインリレー111とサブリレー131の開閉状態についてのみ説明する。
【0026】
ここで、電池パック制御部301の電圧測定、電流測定及び他の制御部との通信について詳細に説明する。電池パック制御部301は、組電池201の最上段の正極の電圧VSと、最下段の負極の電圧VDとの電圧差を組電池201の電圧値V1として測定する。また、電池パック制御部301は、電流センサ141から電流値I1を取得する。
【0027】
電池パック制御部301は、車両部側電池制御部11及び他の電池パックの電池パック制御部と信号配線12を介して接続される。電池パック制御部301は、信号配線12を介して測定した電圧値及び電流値等の送受信を行う。そして、電池パック制御部301は、車両部側電池制御部11及び他の電池パックの電池パック制御部の少なくとも一方との通信結果に応じて正側メインリレー111及びサブリレー131を制御する。
【0028】
具体的には、電池パック制御部301は、サブリレー131を接続状態とした後に、自電池パック内の組電池の電圧の大きさを示す電圧値と他の電池パックの電圧の大きさを示す電圧値との差、及び、自電池パック内の組電池に流れる電流の大きさを示す電流値と他の電池パックに流れる電流の大きさを示す電流値との差、が予め設定された許容値以下となったことに応じて、接続状態とするリレースイッチをサブリレー131からメインリレー111に切り替える。
【0029】
電池パック制御部301による上記のようなリレースイッチの制御は、電池パック制御部301が他の電池パックの電池パック制御部から取得した電圧値及び電流値に基づき行っても良い。なお、実施の形態1にかかる電池システム1では、接続状態とするリレースイッチをサブリレー131からメインリレー111に切り替える場合に、他の電池パックのリレースイッチの接続状態を勘案し、電池システム全体で接続状態から遮断状態となるサブリレーの個数を段階的に減らすと共に、遮断状態から接続状態となるメインリレーの個数を段階的に増やす。そのため、電池パック制御部301によりリレースイッチの制御を行う場合、各電池パック制御部は、互いのリレースイッチの接続状態を協調して制御する。
【0030】
また、車両部側電池制御部11が電池システム1内の各電池パックから取得した電圧値及び電流値に応じて判断したリレースイッチの切替タイミング信号に基づき、電池パック制御部301が上記リレースイッチの制御を行うとしても良い。実施の形態1にかかる電池システム1の説明では、電池パック制御部301が電池システム1内の他の電池パックから取得した電圧値及び電流値に基づきリレースイッチを制御する例について説明する。
【0031】
続いて、実施の形態1にかかる電池システム1における電池パックの交換手順について説明する。そこで、
図2に実施の形態1にかかる電池パックの交換手順を説明するフローチャートを示す。
図2に示す例では、
図1の電池パックP1を新規な電池と交換する例を示した。
【0032】
図2に示すように、実施の形態1にかかる電池システム1では、まず、電池パックP1〜Pnのメインリレー及びサブリレーを遮断状態とした状態で、交換対象電池ストリング(実施の形態1では、新規な電池パックP1)を組み込む(ステップS10)。その後、電池パックP1〜Pn及び車両部に対して電池パック交換モードへの移行を指示する(ステップS11)。なお、電池パック交換モードへの移行指示は、車両部10で電池パックを交換する者が所定の操作を行うことで車両部側電池制御部11から各電池パックに対して与えられる。
【0033】
続いて、実施の形態1にかかる電池システム1は、新規な電池パックP1及び非交換電池ストリング(実施の形態1では、交換対象外の電池パックP2〜Pn)のサブリレーを接続状態とする(ステップS12)。このステップS12の処理は、交換された電池パックP1の電池パック制御部301から他の電池パックの電池パック制御部に与えられる指示に基づき実行される。
【0034】
続いて、各電池パックは、それぞれ自電池パック内の組電池の電圧を測定し、測定により得られた電圧値を互いに送受信する。そして、電池パックP1の電池パック制御部301は、他の電池パックから得た電圧値V2〜Vnのそれぞれと、自電池パックの電圧値V1と、の差が、それぞれ予め設定した所定の電圧差(例えば、許容電圧差Vd)以下であるか否かを判断する(ステップS13)。そして、ステップS13において、電圧値V1と電圧値V2〜Vnとの差がそれぞれ許容電圧差Vdよりも大きければ、電池パック制御部301は、リレースイッチの状態を維持したまま電圧の監視を継続する。一方、ステップS13において、電圧値V1と電圧値V2〜Vnとの差がそれぞれ許容電圧差Vdよりも小さければ、電池パック制御部301は、他の電池パックから得た電流値I2〜Inのそれぞれと、自電池パックの電流値I1と、の差が、それぞれ予め設定した所定の電流差(例えば、許容電流差Id)以下であるか否かを判断する(ステップS14)。そして、ステップS14において、電流値I1と電流値I2〜Inとの差がそれぞれ許容電流差Idよりも大きければ、電池パック制御部301は、リレースイッチの状態を維持したまま電流値の監視を継続する。
【0035】
一方、このステップS14において、電流値I1と電流値I2〜Inとの差がそれぞれ許容電流差Idよりも小さければ、電池パック制御部301は、メインリレーが遮断状態となっている電池パックP1〜Pnの1つを選択して、選択した電池パックのメインリレーを遮断状態から接続状態に切り替えるよう、選択した電池パックにスイッチ切替指示を出力する(ステップS15)。続いて、電池パック制御部301は、ステップS15で選択した電池パックに対してサブリレーを遮断状態に切り替えるようにスイッチ切替信号を出力する(ステップS16)。
【0036】
続いて、各電池パックは、ステップS15、S16でリレースイッチの状態が変化した後の状態で、それぞれ自電池パック内の組電池の電圧を測定し、測定により得られた電圧値を互いに送受信する。そして、電池パックP1の電池パック制御部301は、他の電池パックから得た電圧値V2〜Vnのそれぞれと、自電池パックの電圧値V1と、の差が、それぞれ予め設定した所定の電圧差(例えば、許容電圧差Vd)以下であるか否かを判断する(ステップS17)。そして、ステップS17において、電圧値V1と電圧値V2〜Vnとの差がそれぞれ許容電圧差Vdよりも大きければ、電池パック制御部301は、リレースイッチの状態を維持したまま電圧の監視を継続する。一方、ステップS17において、電圧値V1と電圧値V2〜Vnとの差がそれぞれ許容電圧差Vdよりも小さければ、電池パック制御部301は、他の電池パックから得た電流値I2〜Inのそれぞれと、自電池パックの電流値I1と、の差が、それぞれ予め設定した所定の電流差(例えば、許容電流差Id)以下であるか否かを判断する(ステップS18)。そして、ステップS18において、電流値I1と電流値I2〜Inとの差がそれぞれ許容電流差Idよりも大きければ、電池パック制御部301は、リレースイッチの状態を維持したまま電流値の監視を継続する。
【0037】
一方、このステップS18において、電流値I1と電流値I2〜Inとの差がそれぞれ許容電流差Idよりも小さければ、電池パック制御部301は、全ての電池パックのメインリレーが接続状態であるか否かを確認する(ステップS19)。このステップS19において、未だ遮断状態のメインリレーがあるとわかった場合、電池パック制御部301は、ステップS15〜S19の処理を繰り返す。一方、ステップS19において、全てのメインリレーが接続状態であるとわかった場合、電池パック制御部301は、他の電池パックも含めた全てのメインリレー及びサブリレーを遮断状態に切り替えて(ステップS20)、電池パックの交換処理を終了する。
【0038】
ここで、
図2では、図示を省略したが、実施の形態1にかかる電池システム1では、交換対象電池パックの電圧と非交換電池パックの電圧との差が許容電圧差Vdを下回る毎に許容電圧差Vdの値を小さくする。また、実施の形態1にかかる電池システム1では、交換対象電池パックの電流と非交換電池パックの電流との差が許容電流差Idを下回る毎に許容電流差Idの値を小さくする。そして、実施の形態1にかかる電池システム1では、全てのメインリレーを遮断状態とすると共に全てのサブリレーを遮断状態とした後に設定される許容電圧差Vd及び許容電流差Idを特に完了判定電圧差及び完了判定電流差と称す。
【0039】
なお、実施の形態1では、電池パックP1と、他の電池パックについて、電圧差を比較する際、他の電池パック全ての電圧と比較している。しかし、他の電池パックについて、電圧が同じであると仮定できる場合は、全ての電池パックと比較せず、代表の他の電池パックや他の電池パック全ての平均値と比較しても良い。車両では、それぞれの電池パックの電圧を均一に制御している場合も多く、そのような場合に有効である。
【0040】
続いて、
図2に示した電池パックの交換手順を実施した場合の実施の形態1にかかる電池システム1の動作をタイミングチャートを用いて説明する。そこで、
図3に実施の形態1にかかる電池パックの交換手順を説明するタイミングチャートを示す。
図3に示す例では、2つの電池パック(例えば、電池パックP1、P2)の一方(例えば電池パックP1)を交換する例を示す。また、電池パックP1、P2は、交換する電池パックP1の充電率(SOC:State Of Charge)が高く、交換対象ではない電池パックP2のSOCが低いものとする。
【0041】
図3に示すタイミングチャートでは、タイミングT1において、
図2のステップS12間での処理が完了し、電池パックの電圧及び電流の監視が開始される。このタイミングT1では、サブリレー131、132が接続状態となると共にメインリレー111、112が遮断状態となっている。また、タイミングT1では、SOCが高い電池パックP1の電圧が高く、SOCが低い電池パックP2の電圧が低い。そして、タイミングT1以降、充電率の高い電池パックP1から充電率の低い電池パックP2への充電が行われる。なお、タイミングT1では、電池パックP1から電池パックP2への充電が開始されるに辺り、電池に電流が流れるため、電池内の内部抵抗と流れる電流とによる電圧変動が生じる。
【0042】
タイミングT1からタイミングT2にかけて、2つの電池パックの間の電圧差及び電流差が徐々に小さくなる。そして、タイミングT2において、電池パックP1の電圧と電池パックP2の電圧との電圧差が許容電圧差Vd1以下、かつ、電池パックP1の電流と電池パックP2の電流との電流差が許容電流差Id1以下となったことに応じて、電池パックP1の電池パック制御部301は、電池パックP2のメインリレー112を遮断状態から接続状態に切り替えるよう、電池パックP2の電池パック制御部302に指示する。また、電池パックP1の電池パック制御部301は、電池パックP2のサブリレー132を接続状態から遮断状態に切り替えるよう、電池パックP2の電池パック制御部302に指示する。これにより、タイミングT2では、電池パックP1から電池パックP2に流れる電流が増加すると共に、電池パックP1の電圧と電池パックP2の電圧との差の縮小速度が加速する。
【0043】
タイミングT2からタイミングT3にかけて、2つの電池パックの間の電圧差及び電流差が徐々に小さくなる。そして、タイミングT3において、電池パックP1の電圧と電池パックP2の電圧との電圧差が許容電圧差Vd2以下、かつ、電池パックP1の電流と電池パックP2の電流との電流差が許容電流差Id2以下となったことに応じて、電池パックP1の電池パック制御部301は、電池パックP1のメインリレー111を遮断状態から接続状態に切り替える。また、電池パックP1の電池パック制御部301は、電池パックP2のサブリレー131を接続状態から遮断状態に切り替える。これにより、タイミングT3では、電池パックP1から電池パックP2に流れる電流が増加すると共に、電池パックP1の電圧と電池パックP2の電圧との差の縮小速度が加速する。
【0044】
タイミングT3からタイミングT4にかけて、2つの電池パックの間の電圧差及び電流差が徐々に小さくなる。そして、タイミングT4において、電池パックP1の電圧と電池パックP2の電圧との電圧差が許容電圧差Vd3以下、かつ、電池パックP1の電流と電池パックP2の電流との電流差が許容電流差Id3以下となったことに応じて、電池パックP1の電池パック制御部301は、電池の交換作業が終了したと判断する。
【0045】
ここで、
図3に示すように、許容電圧差Vd1〜Vd3は、Vd1>Vd2>Vd3となる関係を有する。また、許容電流差Id1〜Id3は、Id1>Id2>Id3となる関係を有する。そして、許容電圧差Vd3は完了判定電圧差であって、許容電流差Id3は完了判定電流差である。また、
図3に示すように、実施の形態1にかかる電池システム1における交換手順では、電池パック間のSOC差の減少速度が徐々に低下するが、リレースイッチを切り替えることで、電池パック間のSOC差の減少速度を再加速させる。
【0046】
上記説明より、実施の形態1にかかる電池システム1では、電池パック交換工程(ステップS10)、交換電池接続工程(ステップS12)、充電率差解消工程(ステップS13〜S18)、完了判定工程(ステップS18)を行う。電池パック交換工程では、電池パックすべてにおいてメインリレーとサブリレーとを遮断状態とした上で、交換対象の電池パックが属する電池ストリングを新規電池パックで構成される交換対象電池ストリングと交換する。交換電池接続工程では、電池パックの全てのメインリレーを遮断状態とし、電池パックの全てのサブリレーを接続状態とする。充電率差解消工程では、新規電池パックを含まない非交換電池ストリングの電圧と、新規電池パックを含む交換対象電池ストリングの電圧と、の差が予め設定した許容電圧差以下となる毎に条件切替処理を行う。この条件切替処理は、接続状態となっているサブリレーを減少させると共に、当該条件切替処理で接続状態から遮断状態に切り替えたサブリレーと並列に接続されたメインリレーを状態から接続状態に切り替え、かつ、許容電圧差を小さい値に更新する。完了判定工程では、全てのメインリレーを接続状態とした後に、非交換電池ストリングに流れる電流と、交換対象電池ストリングに流れる電流と、の差が予め決定された完了判定電流差以下となったことに応じて交換対象電池ストリングが利用可能となったことを判定する。
【0047】
実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法によれば、新規電池パックを電池システム内に組み込んだ際に、全てのメインリレーを遮断状態とすると共に全てのサブリレーを接続状態とした状態で充電率解消工程を開始する。そして、実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法では、段階的に接続状態とするメインリレーの個数を増やしていく。これにより、実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法では、新規な電池パックと既存の電池パックとの間に流れる電流に制限をかけて増減させながら、新規な電池パックと既存の電池パックとの間の充電率を解消する。
【0048】
これにより、実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法では、新規電池パックと既存の電池パックとの間の電圧差に起因するアーク放電の発生を防止することができる。つまり、実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法によれば、電池パックの交換時に発生する不具合を防止すると共に電池パック交換時の安全性を向上させることができる。
【0049】
特に組電池では、多数の電池が直列接続されるため、電池パック間の電圧差が大きくなる傾向がある。さらに、既に利用されている電池パックと新規電池パックとでは電圧差が大きくなる傾向がある。このようなことから、組電池を含む電池パックでは、電池パック間の電圧差に起因したアーク放電による不具合発生の確率が高く、かつ、電池交換時の安全性の確保が難しい。このようなことから、実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法による不具合の回避及び安全性の向上の効果は、組電池を含む電池パックの交換においては非常に大きいものである。
【0050】
また、実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法では、電池パック間のSOC差の減少速度が徐々に低下するが、リレースイッチを切り替えることで、電池パック間のSOC差の減少速度を再加速させる。これにより、実施の形態1にかかる電池システム1に含まれる電池パック及び電池システム1の電池パック交換方法では、リレースイッチで起きる不具合の発生を防ぎながら充電率解消工程にかかる時間を短縮することができる。
【0051】
ここで、
図2で示した実施の形態1にかかる電池システム1の電池パックの交換手順では、省略できる処理がある。例えば、電池パック間の電流比較は、電池パックの充電率の解消完了を判定する際には必須であるものの、それより前のリレースイッチの切替タイミングを判定する場合には省略することが可能である。これは、接続状態とするリレースイッチが全てメインリレーとなった場合、電池パック間の電圧差は小さくなるため、電池パック間の電圧差だけでは充電率の差が解消されたかどうかを判定することは難しく、電流差による判定を行う必要があるためである。そこで、
図4に実施の形態1にかかる電池パックの交換手順の別の例を説明するフローチャートを示す。
図4に示す例では、
図2のステップS14の電流比較工程が省略されている。
【0052】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる電池システムにおける電池パック交換手順の別の形態について説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ処理及び同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
図5に実施の形態2にかかる電池パックの交換手順を説明するフローチャートを示す。
【0053】
図5に示すように、実施の形態2にかかる電池パックの交換手順では、
図2に示した実施の形態1にかかる電池パックの交換手順のステップS15をステップS30に置き換えたものである。実施の形態2にかかるステップS30では、メインリレーが遮断状態となっている電池パックのうち同じSOC(或いはSOCと相関のある電圧)となる電池パックを選択して、選択した電池パックのメインリレーを接続状態とする。また、ステップS16では、ステップS30で選択した電池パックのサブリレーを遮断状態に切り替える。
【0054】
リレースイッチを切り替える電池パックをこのように選択することで、例えば、複数の電池パックのメインリレー及びサブリレーを一度に切り替えることができる。このとき、SOCが同じであれば、遮断状態から接続状態に切り替えられたメインリレーが属する電池パックに流れる電流は実施の形態1にかかる交換手順の電池パックと同じであり、サブリレーが接続状態に維持される電池パックに流れる電流もプリチャージ抵抗により制限される。このようなことから、実施の形態2にかかる電池パック交換手順を採用しても、リレースイッチがアーク放電等により破損するおそれはない。
【0055】
実施の形態3
実施の形態3では、正極配線13と負極配線14との間に並列接続される複数の電池ストリングがそれぞれ複数の電池パックにより構成される例について説明する。そこで、実施の形態3にかかる電池システム2のブロック図を
図6に示す。
【0056】
図6に示すように、実施の形態3にかかる電池システム2では、電池ストリングST1〜STnがそれぞれ3つの直列接続された電池パックを有する。この電池パックは、それぞれ
図1で説明した電池パックP1と同等の構成を有するものである。なお、電池ストリングST1〜STnは、それぞれが直列接続された電池パックを有する場合だけでなく、並列接続された電池パックを有する場合や、直並列に接続された電池パックを有する場合も本発明に含まれる。
【0057】
また、
図6に示すように、実施の形態3にかかる電池システム2では、車両部10に代えて車両部20を示した。車両部20は、車両部10の車両部側電池制御部11を車両部側電池制御部21に置き換えたものである。そして、実施の形態3では、複数の電池パックと車両部側電池制御部21とが互いに通信可能なように信号配線22により接続される。
【0058】
実施の形態3にかかる電池システム2では、車両部側電池制御部21から各電池パックの電池パック制御部に対して、リレースイッチを制御する切替タイミング信号を出力し、当該切替タイミング信号に基づき各電池パックがリレースイッチを制御するものとする。
【0059】
なお、実施の形態3にかかる電池システム2においても、実施の形態1にかかる電池システム1と同様に、各電池パックの電池パック制御部の間で電圧値等を送受信し、電池パック制御部内の処理に基づきリレースイッチを制御することも可能である。この場合、電池ストリング毎に電池ストリングの電圧値に基づくリレースイッチの開閉状態を制御する代表電池パックを決めておくことが好ましい。
【0060】
また、実施の形態3にかかる電池システム2では、電池ストリングに含まれる電池パックのうち最上段に位置する電池パックの正極側電圧と、最下段に位置する電池パックの負極側電圧と、の電圧差を各電池ストリングの電圧とする。
【0061】
続いて、実施の形態3にかかる電池システム2における電池パックの交換手順について説明する。そこで、実施の形態3にかかる電池システム2の電池パック交換手順を示すフローチャートを
図7に示す。
図7に示す例では、
図6に示した電池パックP11〜P13を交換する例を示すものである。
【0062】
図7に示すように、実施の形態3にかかる電池システム2では、電池パックを交換する場合には電池ストリング単位で交換を行い、電池ストリング毎の電圧値に基づき、電池ストリング毎にリレースイッチを制御するものであり、実質的な交換手順は実施の形態1にかかる電池システム1と変わらない。そのため、ここでは実施の形態3にかかる電池システム2における電池パック交換手順を簡単に説明する。なお、実施の形態3にかかる電池システム2において、電池ストリング単位で交換するのは、電池パック1つを交換した場合、電池ストリング内の電池パック間で充電率の差を解消出来ないためである。
【0063】
図7に示すステップS40〜S50は、それぞれ
図2に示したステップS10〜S20に対応する処理である。ここで、実施の形態3にかかる電池パック交換手順では、ステップS45、S46において、電池ストリング毎にリレースイッチの制御を行う点が実施の形態1にかかる電池パック交換手順と大きく異なる。また、実施の形態3にかかる電池システム2では、同一の電池ストリングに属する電池パックには同一の電流が流れるため、電流値の計測は、同一の電池ストリングに属する複数の電池パックのうち1つで行えばよい。
【0064】
上記説明より、実施の形態3にかかる電池システム2では、1つの電池ストリングに複数の電池パックが含まれる場合であっても、交換を電池ストリング単位で行い、電池ストリングの電圧に応じて各電池パック内のリレースイッチを制御することで、実施の形態1と同様に、電池パック交換時の不具合の回避及び安全性の向上という効果を得ることができる。
【0065】
また、実施の形態3にかかる電池システム2では、車両部側電池制御部21において電池ストリング毎の電圧値及び電流値の計算及びリレースイッチの制御処理を行う。このような処理方法とすることで、各電池パックの電池パック制御部間及び電池パック制御部内で行われる処理を簡略化することができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、車両へ本発明を適用しているが、電池を充放電する装置であれば、車両以外にも適用可能である。