特許第6643928号(P6643928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643928
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】インターホンシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20200130BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   H04M9/00 D
   G08B25/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-57395(P2016-57395)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-175286(P2017-175286A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】太田 稔
【審査官】 田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135312(JP,A)
【文献】 特開2008−177865(JP,A)
【文献】 特開2003−256946(JP,A)
【文献】 特開平08−149457(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0225152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 9/00−9/10
H04N 7/18
G08B 19/00−31/00
H04N 5/222−5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄関等に設置され、来訪者が居住者を呼び出すためのインターホン子機と、居室内等に設置され、前記インターホン子機からの呼び出しに応答するためのインターホン親機とを備え、
前記インターホン子機に、前記インターホン親機を呼び出す際に操作する呼出ボタンと、周囲を撮像するためのカメラとが設けられている一方、前記インターホン親機に、前記カメラにより撮像された映像を表示するモニタが設けられており、
前記インターホン子機において前記呼出ボタンが操作されると、前記インターホン親機が呼び出されるとともに、前記カメラが作動して、前記モニタに映像が表示されるインターホンシステムであって、
前記インターホン子機に、前記インターホン親機へ送信する映像の画角を段階的に調整する画角調整手段が設けられているとともに、前記呼出ボタンを所定の操作態様で操作したことをもって移行するモードであって、前記画角調整手段によって映像の画角が調整される調整モードが設定されており、
前記インターホン子機は、前記調整モードへの移行後に前記インターホン親機から所定の信号を受信すると、当該信号を前記画角調整手段による映像の画角の調整を指令する調整信号であると読み替え、映像の画角を現在の画角から別の画角へ変更し、画角が変更された映像を前記インターホン親機へ送信することを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記インターホン親機は、前記モニタに表示する映像の逆光補正を指令する逆光補正信号を前記インターホン子機へ送信可能であり、
前記インターホン子機は、前記調整モードへの移行後に前記インターホン親機から前記逆光補正信号を受信すると、当該逆光補正信号を前記調整信号であると読み替えることを特徴とする請求項1に記載のインターホンシステム。
【請求項3】
前記インターホン子機は、前記調整モードへの移行後、前記インターホン親機から所定の信号を受信し、映像の画角を現在の画角から別の画角へ変更する度に、その都度変更した画角を記憶することを特徴とする請求項1又は2に記載のインターホンシステム。
【請求項4】
玄関等に設置され、来訪者が居住者を呼び出すためのインターホン子機と、居室内等に設置され、前記インターホン子機からの呼び出しに応答するためのインターホン親機とを備え、
前記インターホン子機に、前記インターホン親機を呼び出す際に操作する呼出ボタンと、周囲を撮像するためのカメラとが設けられている一方、前記インターホン親機に、前記カメラにより撮像された映像を表示するモニタが設けられており、
前記インターホン子機において前記呼出ボタンが操作されると、前記インターホン親機が呼び出されるとともに、前記カメラが作動して、前記モニタに映像が表示されるインターホンシステムであって、
前記インターホン子機に、前記インターホン親機の前記モニタでズーム表示すべく、前記カメラが撮像する映像のうち一部の範囲のみを切り出すとともに、その切り出し範囲を調整可能な範囲調整手段が設けられているとともに、前記呼出ボタンを所定の操作態様で操作したことをもって移行するモードであって、前記範囲調整手段によって切り出す範囲が調整される調整モードが設定されており、
前記インターホン子機は、前記調整モードへの移行後に前記インターホン親機から所定の信号を受信すると、当該信号を前記範囲調整手段による切り出し範囲の調整を指令する調整信号であると読み替え、切り出す範囲を現在の範囲から別の範囲へ変更し、切り出した範囲が変更された映像を前記インターホン親機へ送信することを特徴とするインターホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば住戸の玄関等に設置されるインターホン子機と、室内等に設置されるインターホン親機とを有するインターホンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インターホンシステムを構成するインターホン子機には、玄関の周囲や来訪者を撮像するためのカメラが設けられていることが多い。そして、近年、画角が略180°もあるような広角カメラを備えたインターホン子機が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−230318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インターホン子機のカメラが広角カメラであると、必要以上に広範囲の映像が表示されてしまうこともあり、たとえば隣の住戸の玄関まで見えてしまったり、所謂角部屋であると壁面ばかりが表示されてしまう等といった事態が起こり得る。そこで、インターホン親機に、モニタに表示される映像の表示範囲を調整する機能、たとえば画角や映像の切り出し範囲の調整をインターホン子機へ指令する機能を備えることが望まれる。しかしながら、従来のインターホン親機にそのような機能を新たに付与することは困難で、上記事態が生じないインターホンシステムを構成するにあたり、上記機能を有さない既設のインターホン親機や従来のインターホン親機を採用することができないという問題が生じかねない。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、たとえインターホン親機が上述したような機能を有していなかったとしても、インターホン親機のモニタに表示する映像を適切に調整することができるインターホンシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、玄関等に設置され、来訪者が居住者を呼び出すためのインターホン子機と、居室内等に設置され、インターホン子機からの呼び出しに応答するためのインターホン親機とを備え、インターホン子機に、インターホン親機を呼び出す際に操作する呼出ボタンと、周囲を撮像するためのカメラとが設けられている一方、インターホン親機に、カメラにより撮像された映像を表示するモニタが設けられており、インターホン子機において呼出ボタンが操作されると、インターホン親機が呼び出されるとともに、カメラが作動して、モニタに映像が表示されるインターホンシステムであって、インターホン子機に、インターホン親機へ送信する映像の画角を段階的に調整する画角調整手段が設けられているとともに、呼出ボタンを所定の操作態様で操作したことをもって移行するモードであって、画角調整手段によって映像の画角が調整される調整モードが設定されており、インターホン子機は、調整モードへの移行後にインターホン親機から所定の信号を受信すると、当該信号を画角調整手段による映像の画角の調整を指令する調整信号であると読み替え、映像の画角を現在の画角から別の画角へ変更し、画角が変更された映像をインターホン親機へ送信することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、インターホン子機に、インターホン親機へ送信する映像の画角を段階的に調整する画角調整手段が設けられているとともに、呼出ボタンを所定の操作態様で操作したことをもって移行するモードであって、画角調整手段によって映像の画角が調整される調整モードが設定されており、インターホン子機は、調整モードへの移行後にインターホン親機から所定の信号を受信すると、当該信号を画角調整手段による映像の画角の調整を指令する調整信号であると読み替え、映像の画角を現在の画角から別の画角へ変更し、画角が変更された映像をインターホン親機へ送信する。したがって、インターホン子機へ画角の調整を指令するような画角調整機能を有さないインターホン親機、たとえば既設のインターホン親機や従来のインターホン親機であっても、インターホン親機のモニタに表示する映像を適切に調整することができ、必要以上に広範囲の映像が表示されることのないインターホンシステムを構成することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、インターホン親機は、モニタに表示する映像の逆光補正を指令する逆光補正信号をインターホン子機へ送信可能であり、インターホン子機は、調整モードへの移行後にインターホン親機から逆光補正信号を受信すると、当該逆光補正信号を調整信号であると読み替えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、インターホン子機は、調整モードへの移行後にインターホン親機から逆光補正信号を受信すると、当該逆光補正信号を調整信号であると読み替える。したがって、逆光補正信号の送信といった従来周知の機能しか有さないインターホン親機であっても好適に採用することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、インターホン子機は、調整モードへの移行後、インターホン親機から所定の信号を受信し、映像の画角を現在の画角から別の画角へ変更する度に、その都度変更した画角を記憶することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、インターホン子機は、調整モードへの移行後、映像の画角を現在の画角から別の画角へ変更する度に、その都度変更した画角を記憶するため、たとえば調整の終了時に、調整された画角や切り出し範囲に係る調整情報の記憶に十分な時間がないようなインターホンシステムであっても、調整後の画角や切り出し範囲に係る調整情報を確実に記憶することができる。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項4に記載の発明は、玄関等に設置され、来訪者が居住者を呼び出すためのインターホン子機と、居室内等に設置され、インターホン子機からの呼び出しに応答するためのインターホン親機とを備え、インターホン子機に、インターホン親機を呼び出す際に操作する呼出ボタンと、周囲を撮像するためのカメラとが設けられている一方、インターホン親機に、カメラにより撮像された映像を表示するモニタが設けられており、インターホン子機において呼出ボタンが操作されると、インターホン親機が呼び出されるとともに、カメラが作動して、モニタに映像が表示されるインターホンシステムであって、インターホン子機に、インターホン親機のモニタでズーム表示すべく、カメラが撮像する映像のうち一部の範囲のみを切り出すとともに、その切り出し範囲を調整可能な範囲調整手段が設けられているとともに、呼出ボタンを所定の操作態様で操作したことをもって移行するモードであって、範囲調整手段によって切り出す範囲が調整される調整モードが設定されており、インターホン子機は、調整モードへの移行後にインターホン親機から所定の信号を受信すると、当該信号を範囲調整手段による切り出し範囲の調整を指令する調整信号であると読み替え、切り出す範囲を現在の範囲から別の範囲へ変更し、切り出した範囲が変更された映像をインターホン親機へ送信することを特徴とする。
したがって、インターホン子機へ切り出し範囲を指令するような範囲調整機能を有さないインターホン親機、たとえば既設のインターホン親機や従来のインターホン親機であっても、モニタに表示される映像を適切に調整することができるインターホンシステムを構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インターホン子機が、調整モードへの移行後にインターホン親機から所定の信号を受信すると、当該信号を画角調整手段による映像の画角の調整を指令する調整信号であると読み替え、映像の画角を現在の画角から別の画角へ変更し、画角が変更された映像をインターホン親機へ送信する。したがって、インターホン子機へ画角の調整を指令するような画角調整機能を有さないインターホン親機、たとえば既設のインターホン親機や従来のインターホン親機であっても、インターホン親機のモニタに表示する映像を適切に調整することができ、必要以上に広範囲の映像が表示されることのないインターホンシステムを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インターホンシステムを示した説明図である。
図2】インターホンシステムのブロック構成図である。
図3】カメラで撮像した映像のモニタでの表示を示した説明図である。
図4】インターホン子機での画角や映像の切り出し範囲の調整に係る制御を示したフローチャート図である。
図5】調整モードにおける画角や映像の切り出し範囲の調整の具体例を示した説明図である。
図6】集合住宅インターホンシステムを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態となるインターホンシステムについて、図面にもとづき詳細に説明する。
【0013】
図1は、インターホンシステム1を示した説明図である。図2は、インターホンシステム1のブロック構成図である。
インターホンシステム1は、玄関の壁面等に設置され、居住者を呼び出すためのインターホン子機2と、室内等に設置され、インターホン子機2からの呼び出しに応答するためのインターホン親機3とを有してなる。そして、インターホン子機2には、呼び出し操作した来訪者や自身が設置されている箇所の周囲等を撮像するためのカメラ11、スピーカ部12aやマイク部12b等からなる通話部12、来訪者が居住者を呼び出す際に操作する呼出ボタン13、点灯/点滅してインターホン親機3との通話状態等を報知する表示灯14(図2に示す)、及び自身の動作を制御する子機CPU15等が備えられている。
【0014】
一方、インターホン親機3は、インターホン子機2のカメラ11の画角を調整するような機能を有さない従来周知のインターホン親機であって、インターホン子機2から受信した映像を表示するためのモニタ21、インターホン子機2との間で通話するための通話部22、自身の設定を変更したりインターホン子機2へ逆光補正信号を送信したりするためのボタン等、複数のボタン23a、23a・・を有する操作部23、及び自身の動作を制御する親機CPU24等を備えている。なお、インターホン子機2とインターホン親機3とは、共に内蔵されている通信部16、26を介して通信・通話可能に接続されている。また、17、27は、インターホン子機2やインターホン親機3に内蔵されている記憶部である。
【0015】
そして、このようなインターホンシステム1では、来訪者によって呼出ボタン13が操作されると、インターホン子機2が、インターホン親機3を呼び出すとともにカメラ11を作動させて来訪者を撮像する。そして、インターホン子機2が、その映像をインターホン親機3へ送り、インターホン親機3が、受信した映像をモニタ21に表示する。また、その呼び出しに応じてインターホン親機3で応答操作がなされると、インターホン子機2とインターホン親機3との間で通話が可能となる。
【0016】
ここで、本発明の要部となるインターホンシステム1においてモニタ21に表示される映像の画角や表示範囲の調整について詳細に説明する。図3は、カメラ11で撮像した映像30のモニタ21での表示を示した説明図である。図4は、インターホン子機2での画角や映像の切り出し範囲の調整に係る制御を示したフローチャート図である。図5は、調整モードにおける画角や映像の切り出し範囲の調整の具体例を示した説明図である。
インターホン子機2は、インターホン親機3へ送信する映像の画角を90°、120°、150°、及び170°の4段階で調整する画角調整機能を有している。また、カメラ11で撮像した映像を9つの範囲(左上A、上中B、右上C、左中D、中央E、右中F、左下G、下中H、及び右下I)で区切り、各範囲毎に切り出す範囲調整機能をも有している。さらに、インターホン子機2には、インターホン親機3と通話したり、呼出ボタン13の操作を待機したりする通常モードに加え、インターホン親機3へ送信する映像の画角を変更等するための調整モードが設定されている。
【0017】
そして、インターホンシステム1では、以下のようにしてモニタ21に表示する映像の画角や切り出し範囲を調整する。
インターホン子機2では、待機状態において呼出ボタン13が操作される(S1)と、カメラ11を作動させて撮像を開始するとともに、所定時間以内にインターホン親機3から応答信号を受信したか、それとも呼出ボタン13が再度操作され、且つ、当該操作が長押し操作(たとえば、3秒間にわたる押し込み操作)であったかの何れかを検知したか否かを判断する(S2)。そして、呼出ボタン13の1度目の操作後、所定時間以内にインターホン親機3からの応答信号を受信することもなく、また呼出ボタン13の長押し操作も検知しない(S2でNOと判断する)と、カメラ11による撮像を停止するとともに再び待機状態へ復帰する。また、呼出ボタン13の1度目の操作後、所定時間以内にインターホン親機3で応答ボタンが操作される等して、インターホン親機3から応答信号を受信する(S2で応答信号ありと判断する)と、インターホン親機3との間で通話する通話状態とし(S7)、インターホン親機3で終話ボタンが操作される等して、インターホン親機3からの通話終了信号の受信(S8でYESと判断する)すると、インターホン親機3との間での通話状態を終了し、待機状態へ復帰する。
【0018】
しかしながら、呼出ボタン13の1度目の操作後、所定時間以内に呼出ボタン13の再度の操作、しかも長押し操作を検知する(S2で長押し操作ありと判断する)と、インターホン親機3との間で通話等する通常モードから、インターホン親機3へ送信する映像の画角を変更等するための調整モードへとモード移行する(S3)。そして、調整モードでは、インターホン親機3から逆光補正信号を受信する度に、当該逆光補正信号を映像調整信号と読み替え、カメラ11が撮像した映像の画角や切り出し範囲を調整し(S4)、その調整した映像をインターホン親機3へ送信するとともに、今回調整した映像の画角や切り出し範囲に係る情報を記憶部17に更新記憶する。すなわち、インターホン子機2の設置当初は、画角120°の映像をインターホン親機3へ送信していたとする。すると、調整モードへの移行後、最初の逆光補正信号の受信をもって画角150°の映像をインターホン親機3へ送信するとともに、画角150°に調整したことを記憶部17に更新記憶する。また、2回目の逆光補正信号の受信をもって画角170°の映像をインターホン親機3へ送信するとともに、画角170°に調整したことを記憶部17に更新記憶する。さらに、3回目の逆光補正信号の受信をもって画角90°の映像をインターホン親機3へ送信するとともに、画角90°に調整したことを記憶部17に記憶する。なお、このような画角の切り替え時には、図3(a)に示すように、モニタ21には所定の画角での映像30の全体が表示されることになる。
【0019】
さらにまた、4回目の逆光補正信号を受信すると、今度は画角90°の映像のうち左上Aの範囲を切り出し、その切り出した範囲の映像をインターホン親機3へ送信するとともに、画角90°で左上Aの範囲を切り出すように調整したことを記憶部17に更新記憶する。また、5回目の逆光補正信号を受信すると、画角90°の映像のうち上中Bの範囲の映像をインターホン親機3へ送信するとともに、画角90°で上中Bの範囲を切り出すように調整したことを記憶部17に更新記憶する。さらに、6回目の逆光補正信号の受信から12回目の逆光補正信号の受信にかけて、画角90°のまま右上C、左中D、中央E、右中F、左下G、下中H、右下Iと切り出す範囲を夫々変更しながら、切り出した範囲の映像をインターホン親機3へ送信するとともに、画角90°でどの範囲を切り出すように調整したかを調整する度に記憶部17に更新記憶する。そして、13回目の逆光補正信号を受信すると、当初に戻り、再び画角120°の映像をインターホン親機3へ送信するとともに、画角120°に調整したことを記憶部17に更新記憶する。なお、このような撮像範囲の切り替え時には、図3(b)に示すように、モニタ21には、映像30の一部が拡大表示されることになる。
【0020】
また、そのような映像の調整中に、インターホン親機3で終話ボタンが操作される等してインターホン親機3から通話終了信号を受信すると、インターホン親機3から調整終了信号を受信したと判断して(S5でYESと判断する)、調整モードから通常モードへ移行させ(S6)、待機状態へ復帰させる。そして、次の呼出ボタン13が操作された際には、記憶部17に記憶されている調整済みの画角や切り出し範囲での映像をインターホン親機3へ送信する。
【0021】
一方、インターホン親機3では、インターホン子機2で呼出ボタン13が操作されるとモニタ21を起動させ、カメラ11による撮像開始に応じて受信した映像をモニタ21に表示する。そして、呼出ボタン13の操作から所定時間以内に応答ボタンを操作する等の応答操作すると、インターホン子機2へ応答信号が送信され、インターホン子機2との間で通話可能となる。また、通話の終了に伴い、終話ボタンを操作する等の終話操作をすると、インターホン子機2へ通話終了信号が送信され、インターホン子機2との間での通話が終了となる。
【0022】
また、インターホン親機3で映像の逆光補正を指令する信号をインターホン子機2へ送信するためのボタン23aを操作した場合、インターホン子機2が通常モードにあると、インターホン子機2で映像の逆光補正が実行される。しかしながら、インターホン子機2が調整モードにあると、上述したようにインターホン子機2では逆光補正信号の受信をもって画角や切り出し範囲の調整が行われるため、ボタン23aを操作する度にモニタ21に表示される映像の画角や表示範囲が切り替わる。また、このように映像が切り替わる状況において終話ボタンを操作する等すれば、インターホン子機2に調整終了信号が送信され(インターホン子機2で通話終了信号が調整終了信号に読み替えられ)、映像の画角や切り出し範囲の調整が終了となる。
【0023】
ここで、作業者によるインターホンシステム1でのモニタ21に表示する映像の画角や撮像範囲の調整作業について説明する。
モニタ21に表示する映像の画角や表示範囲の調整に係り、作業者は、まず玄関等のインターホン子機2の設置場所に赴き、インターホン子機2の呼出ボタン13を1度操作した後、再び呼出ボタン13を操作して(今度は長押し操作して)インターホン子機2のモードを調整モードとする。その後、居室内へ入る等してインターホン親機3の設置場所に赴く。すると、モニタ21に映像が表示されているため、映像を確認しつつ逆光補正のためのボタン23aを操作して、画角や表示範囲が最適となる映像を選択し、当該映像がモニタ21に表示された状態のまま終話操作する。すると、画角や切り出し範囲は調整される度にインターホン子機2に更新記憶され、次回のインターホン子機2からの呼び出しに応じては、画角や表示範囲が最適な映像がモニタ21に表示されることになる。
【0024】
以上のような構成を有するインターホンシステム1によれば、インターホン子機2に、インターホン親機3へ送信する映像の画角を4段階で調整する画角調整機能や、カメラ11で撮像した映像を9つの範囲で区切って切り出す範囲調整機能が備えられているとともに、呼出ボタン13を所定の操作態様で操作したことをもって移行するモードであって、映像の画角調整や切り出し範囲の調整を行うための調整モードが設定されている。そして、インターホン子機2は、調整モードへの移行後にインターホン親機3から逆光補正信号を受信すると、当該逆光補正信号を映像の画角や切り出し範囲の調整を指令する調整信号であると読み替え、映像の画角や切り出し範囲を変更し、画角や切り出し範囲が変更された映像をインターホン親機3へ送信するようになっている。したがって、インターホン子機2へ画角や切り出し範囲の調整を指令するような機能を有さないインターホン親機、すなわち逆光補正信号の送信といった従来周知の機能しか有さないインターホン親機3であって、たとえば既設のインターホン親機や従来のインターホン親機でも、インターホン親機3のモニタ21に表示する映像を適切に調整することができ、必要以上に広範囲の映像が表示されることのないインターホンシステム1を構成することができる。
【0025】
また、インターホン子機2では、映像の画角や切り出し範囲を調整する度に、その都度調整後の画角や切り出し範囲に係る調整情報を記憶部17に更新記憶する。したがって、調整の終了に際しての通話終了信号をうけて、インターホン子機2への電源供給が遮断されてしまうようなインターホンシステム、すなわち調整の終了時に、調整された画角や切り出し範囲に係る調整情報の記憶に十分な時間がないようなインターホンシステムであっても、調整後の画角や切り出し範囲に係る調整情報を、記憶部17に確実に記憶させることができる。
【0026】
なお、本発明に係るインターホンシステムは、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、インターホン子機やインターホン親機の全体的な構成は勿論、映像の調整に係る構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0027】
たとえば、上記実施形態では、調整モードになるとインターホン子機において逆光補正信号が調整信号と読み替えられるとしているが、他の信号が調整信号と読み替えられるように構成することも可能である。この他の信号としては、カメラのパン・チルトの調整を要求する信号や、映像のズームを要求する信号が考えられる。また、それら複数種類の信号を調整信号として読み替えられるように構成してもよい。すなわち、たとえば逆光補正信号とパン・チルトの調整を要求する信号との何れであっても調整信号と読み替え、画角や切り出し範囲を切り替えるように構成しても何ら問題はない。ただし、インターホン子機との通話に係る信号、具体的には応答信号や通話終了信号を調整信号として採用することは望ましくない。
【0028】
また、インターホン子機を調整モードへ移行させるための呼出ボタンの操作態様として、上記実施形態では、1度呼出ボタンを操作した後、呼出ボタンをもう1度、今度は長押し操作するといった操作態様を採用しているが、他の操作態様を採用しても何ら問題はない。他の操作態様としては、たとえば単に呼出ボタンを長押し操作とするといった操作態様や、所定時間内に呼出ボタンを断続的に3度操作するといった操作態様が考えられる。
【0029】
さらに、インターホン子機とインターホン親機との通信において、インターホン子機がインターホン親機のID等をもとに、インターホン親機が画角調整機能や範囲調整機能を有するか否かを判断し、画角調整機能や範囲調整機能を有するインターホン親機であると判断すると、たとえ呼出ボタンが調整モードへの移行に係る操作態様で操作されたとしても、調整モードへ移行しないようにするといった制御を採用することも可能である。
また、上記実施形態では、インターホン子機において、画角や切り出し範囲を調整する度に記憶部に更新記憶するように構成しているが、調整の終了時に十分な時間があるようなインターホンシステムにあっては、調整終了信号の受信をもって、調整後の画角や切り出し範囲を記憶するように構成しても何ら問題はない。
【0030】
さらにまた、上記実施形態では画角を4段階に変更可能としているが、何段階で変更可能とするか、各段階での画角を具体的に何度にするか、そしてどのような順で切り替えるか等については、言うまでもなく適宜変更可能である。
またさらに、インターホン子機では、調整モードへ移行すると表示灯を点滅させる等して、現在調整モードへ移行している旨を作業者に報知するように構成することも可能である。
【0031】
加えて、本発明のインターホンシステムを用いて、たとえば図6に示すような集合住宅インターホンシステム51を構成してもよい。尚、図6中における52は、集合住宅のエントランス等に設置され、来訪者が居住者を呼び出すための玄関機であり、53は、各住戸の玄関等に設置され、来訪者が住戸内の居住者を呼び出すためのインターホン子機である。また、54は、各住戸内に設置され、玄関機52やインターホン子機53からの呼び出しに応答するためのインターホン親機であり、55は、玄関機52とインターホン親機53、53・・間に設けられ、玄関機52からの呼び出し時に通話ラインの接続や切り換え等を行う制御機である。
【符号の説明】
【0032】
1・・インターホンシステム、2・・インターホン子機、3・・インターホン親機、11・・カメラ、13・・呼出ボタン、14・・表示灯、15・・子機CPU(画角調整手段、範囲調整手段)、16・・通信部、17・・記憶部、21・・モニタ、23・・操作部、23a・・ボタン、24・・親機CPU、26・・通信部、27・・記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6