特許第6643930号(P6643930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643930
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20200130BHJP
   F02D 13/06 20060101ALI20200130BHJP
   F02D 17/02 20060101ALI20200130BHJP
   F02D 25/00 20060101ALI20200130BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20200130BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20200130BHJP
   F02M 31/08 20060101ALI20200130BHJP
   F02M 33/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   F02D19/02 C
   F02D19/02 F
   F02D13/06 A
   F02D17/02 M
   F02D17/02 C
   F02D25/00
   F02M21/02 K
   F02M21/02 301Z
   F02M25/00 G
   F02M25/00 Z
   F02M31/08 311D
   F02M31/08 321Z
   F02M33/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-58896(P2016-58896)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-194294(P2016-194294A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-74144(P2015-74144)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 良胤
(72)【発明者】
【氏名】片山 智史
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 新吾
(72)【発明者】
【氏名】佐古 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 大樹
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−332891(JP,A)
【文献】 特開2001−263110(JP,A)
【文献】 特開2003−097306(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0196702(US,A1)
【文献】 特開2014−136978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 − 28/00
F02B 43/00 − 45/10
F02B 47/00 − 47/06
F02M 21/00 − 21/12
F02M 25/00 − 25/14
F02M 31/00 − 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と燃焼用空気とを含む混合気を燃焼する通常気筒を少なくとも一つ備えると共に、混合気の少なくとも一部を不完全燃焼させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くエンジンシステムにおいて、
前記通常気筒及び前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部とを各別に備え、
前記改質気筒での混合気の空気過剰率が1より小さくなるように、前記第2燃料供給部による燃料の供給量を調整する第2燃料供給量調整手段を備え、
前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を前記通常気筒とは別に変更する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を制御する改質ガス供給量制御手段を備えるエンジンシステム。
【請求項2】
吸気行程と圧縮行程と膨張行程と排気行程とを4ストロークで行う4ストローク運転に対して、前記吸気行程と前記圧縮行程との間に燃焼を伴わないで吸気弁と排気弁の双方を閉じてピストンを往復動させる一対の休止行程を追加する形態で、前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を前記通常気筒とは別に変更可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を制御する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を制御する請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を増加する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を減少する請求項2に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記改質気筒が、1サイクルにおいて、吸気行程及び圧縮行程を1ストロークで行うと共に膨張行程及び排気行程を1ストロークで行う2ストローク運転を、前記通常気筒とは別に実行可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において前記2ストローク運転を実行する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を増加する請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記通常気筒及び前記改質気筒へ導かれる混合気を通流する吸気本管において混合気を圧縮するコンプレッサを有する過給機を備えている請求項1〜4の何れか一項に記載のエンジンシステム。
【請求項6】
燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を不完全燃焼させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備えた改質エンジンを有するエンジンシステムにおいて、
燃料と燃焼用空気とを含む混合気を燃焼する外部出力気筒を備えた外部出力エンジンを備え、
前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記外部出力気筒へ導くように構成され、
前記改質エンジンの前記改質気筒を含む気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部とを各別に備え、
前記改質気筒での混合気の空気過剰率が1より小さくなるように、前記第2燃料供給部による燃料の供給量を調整する第2燃料供給量調整手段を備え、
前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を変更する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を制御する改質ガス供給量制御手段を備えるエンジンシステム。
【請求項7】
吸気行程と圧縮行程と膨張行程と排気行程とを4ストロークで行う4ストローク運転に対して、前記吸気行程と前記圧縮行程との間に燃焼を伴わないで吸気弁と排気弁の双方を閉じてピストンを往復動させる一対の休止行程を追加する形態で、前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を変更可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を制御する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を制御する請求項6に記載のエンジンシステム。
【請求項8】
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を増加する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を減少する請求項7に記載のエンジンシステム。
【請求項9】
前記改質気筒が、1サイクルにおいて、吸気行程及び圧縮行程を1ストロークで行うと共に膨張行程及び排気行程を1ストロークで行う2ストローク運転を実行可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において前記2ストローク運転を実行する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を増加する請求項6〜8の何れか一項に記載のエンジンシステム。
【請求項10】
前記改質エンジンの前記改質気筒を含む気筒へ導かれる混合気を通流する吸気本管において混合気を圧縮するコンプレッサを有する過給機を備えている請求項6〜9の何れか一項に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と燃焼用空気とを含む混合気を燃焼する燃焼室を有する通常気筒を少なくとも一つ備えると共に、混合気を燃焼室にて燃焼させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くエンジンシステム、及び燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を不完全燃焼させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備えた改質エンジンを有するエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒エンジンにおいて、燃料と燃焼用空気とを含む混合気を燃焼する燃焼室を有する通常気筒を少なくとも1つ備えると共に、混合気の少なくとも一部を燃焼室にて不完全燃焼させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも通常気筒へ導くエンジンが知られている(特許文献1を参照)。
改質気筒において、例えば、メタンを主成分とする燃料を含む過濃混合気を不完全燃焼させることで、水素等の燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスを生成することができる。そして、当該改質ガスを通常気筒へ導くことで、例えば、通常気筒の燃焼室での火花伝播速度を上昇させ、燃焼の安定性を改善できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/03080870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術において、通常気筒へ導かれる改質ガスの流量を制御すれば、通常気筒へ導かれる燃焼速度の速い燃焼促進性ガスの流量が制御されることとなり、通常気筒での燃焼状態を制御することが可能となる。
上記特許文献1に開示の技術において、改質気筒への過濃混合気の濃度を一定に維持した状態で、通常気筒へ導く改質ガスの流量を変動させるには、改質気筒への燃焼用空気を通流する改質気筒用吸気支管にスロットル弁を設け、当該スロットル弁の開度を調整するように構成することが考えられる。しかしながら、当該構成にあっては、スロットル弁におけるポンプ損失が増大する虞があった。
改質気筒への過濃混合気の濃度を一定に維持した状態で、通常気筒へ導く改質ガスの流量を変動させる別の構成としては、改質気筒からの改質ガスのうち一部を通常気筒へ導くことなく排気ガスとして排出する構成が考えられる。しかしながら、当該構成にあっては、燃焼促進性ガスとしての未燃の水素等を排気として排出することになるから、熱効率の低下が避けられない。また、触媒等への後処理装置へ悪影響を及ぼす虞があると共に、燃焼促進性ガスが煙道にて爆発する虞もある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポンプ損失を十分に抑制しつつ熱効率を維持しながらも、通常気筒への改質ガスの流量を大幅に制御し得るエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのエンジンシステムは、
燃料と燃焼用空気とを含む混合気を燃焼する通常気筒を少なくとも一つ備えると共に、混合気の少なくとも一部を不完全燃焼させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くエンジンシステムであって、その特徴構成は、
前記通常気筒及び前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部とを各別に備え、
前記改質気筒での混合気の空気過剰率が1より小さくなるように、前記第2燃料供給部による燃料の供給量を調整する第2燃料供給量調整手段を備え、
前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を前記通常気筒とは別に変更する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を制御する改質ガス供給量制御手段を備える点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、まずもって、通常気筒及び改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部と、改質気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部とを各別に備えるから、通常気筒と改質気筒との空気過剰率を各別に設定できる。そして、第2燃料供給量調整手段が、改質気筒での混合気の空気過剰率が1より小さくなるように、第2燃料供給部による燃料の供給量を調整するから、改質気筒にて過濃混合気を形成し不完全燃焼させることで、未燃の水素等の燃焼促進性ガスを含む改質ガスを、良好に生成できる。
また、上記特徴構成によれば、改質気筒における1サイクルでのストローク数を通常気筒とは別に変更可能に構成されているから、通常気筒の1サイクルでのストローク数を維持した状態で、改質ガス供給量制御手段が、改質気筒における1サイクルでのストローク数を通常気筒とは別に変更する形態で、通常気筒への改質ガスの供給量を制御できる。これにより、例えば、改質気筒専用のスロットル弁を設けて改質ガスの流量を制御する構成に比べ、ポンプ損失を低下することができる。また、改質ガスの一部を排気ガスとして排出する形態で通常気筒へ導く改質ガスの流量を制御する構成に比べ、生成した改質ガスのすべてを排気ガスとして排出することなく、通常気筒へ導くことができるから、高い熱効率を維持することができる。
【0008】
エンジンシステムの更なる特徴構成は、
吸気行程と圧縮行程と膨張行程と排気行程とを4ストロークで行う4ストローク運転に対して、前記吸気行程と前記圧縮行程との間に燃焼を伴わないで吸気弁と排気弁の双方を閉じてピストンを往復動させる一対の休止行程を追加する形態で、前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を前記通常気筒とは別に変更可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を制御する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を制御する点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、改質気筒から通常気筒に導かれる改質ガスの流量は、1対の休止行程の数により制御しており、当該一対の休止行程を追加する数は実質的に零から無限大まで変化させることができるから、改質気筒から通常気筒に導かれる改質ガスの流量の制御幅を十分に大きくとることができる。これにより、通常気筒に導かれる改質ガス(燃焼促進性ガス)の流量を、比較的簡易な構成で制御できるから、通常気筒での燃焼性を良好に調整できる。
【0010】
エンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を増加する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を減少する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、改質ガス供給量制御手段は、改質気筒において1サイクルに追加する一対の休止行程の数を追加する形態で、一対の休止行程を追加する前よりも、通常気筒への改質ガスの供給量を減少する制御を実行するから、ポンプ損失を十分に抑制しつつ、熱効率を維持しながらも、改質気筒から通常気筒への改質ガスの供給量を、段階的に調整できる。
【0012】
エンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記改質気筒が、1サイクルにおいて、吸気行程及び圧縮行程を1ストロークで行うと共に膨張行程及び排気行程を1ストロークで行う2ストローク運転を、前記通常気筒とは別に実行可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において前記2ストローク運転を実行する形態で、前記通常気筒への改質ガスの供給量を増加する点にある。
【0013】
従来技術で説明した特許文献1に開示の技術にあっては、改質気筒への新気の供給量が一定に維持されている状態では、改質気筒から通常気筒への改質ガスの供給量を増加させることはできなかった。
上記特徴構成によれば、通常気筒とは別に、改質気筒において、所謂、2ストローク運転をすることで、例えば、改質気筒にて4ストローク運転を1サイクル実行している間に、2サイクル実行することができるから、実質的に改質気筒にて改質され排出される改質ガスの流量を増加できる。尚、2ストローク運転は、4ストローク運転に比べて、吸気効率及び掃気効率が低下することが一般的に知られているが、吸気効率及び掃気効率の低下を考慮に入れたとしても、実質的に排出される改質ガスの流量は、4ストローク運転に比べて増加する。
【0014】
これまで説明してきたエンジンシステムは、前記通常気筒及び前記改質気筒へ導かれる混合気を通流する吸気本管において混合気を圧縮するコンプレッサを有する過給機を備えていることが好ましい。
【0015】
上記目的を達成するためのエンジンシステムは、
燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を不完全燃焼させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備えた改質エンジンを有するエンジンシステムであって、その特徴構成は、
燃料と燃焼用空気とを含む混合気を燃焼する外部出力気筒を備えた外部出力エンジンを備え、
前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記外部出力気筒へ導くように構成され、
前記改質エンジンの前記改質気筒を含む気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部とを各別に備え、
前記改質気筒での混合気の空気過剰率が1より小さくなるように、前記第2燃料供給部による燃料の供給量を調整する第2燃料供給量調整手段を備え、
前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を変更する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を制御する改質ガス供給量制御手段を備える点にある。
【0016】
即ち、本発明のエンジンシステムとしては、改質ガスを生成するための改質エンジンとは別に、外部出力用の外部出力エンジンを備える構成をも権利範囲に含むものである。
改質エンジンと外部出力エンジンとを備えるエンジンシステムであっても、これまで説明してきた改質ガス供給量制御手段による改質ガスの供給量の制御と同一の制御を、良好に実行することができる。
【0017】
即ち、改質エンジンと外部出力エンジンとを備えるエンジンシステムは、
吸気行程と圧縮行程と膨張行程と排気行程とを4ストロークで行う4ストローク運転に対して、前記吸気行程と前記圧縮行程との間に燃焼を伴わないで吸気弁と排気弁の双方を閉じてピストンを往復動させる一対の休止行程を追加する形態で、前記改質気筒における1サイクルでのストローク数を変更可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を制御する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を制御する点を、更なる特徴構成としている。
【0018】
また、改質エンジンと外部出力エンジンとを備えるエンジンシステムは、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において1サイクルに追加する一対の前記休止行程の数を増加する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を減少する点を、更なる特徴構成としている。
【0019】
また、改質エンジンと外部出力エンジンとを備えるエンジンシステムは、
前記改質気筒が、1サイクルにおいて、吸気行程及び圧縮行程を1ストロークで行うと共に膨張行程及び排気行程を1ストロークで行う2ストローク運転を実行可能に構成され、
前記改質ガス供給量制御手段は、前記改質気筒において前記2ストローク運転を実行する形態で、前記外部出力気筒への改質ガスの供給量を増加する点を、更なる特徴構成としている。
【0020】
改質エンジンと外部出力エンジンとを備えるエンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記改質エンジンの前記改質気筒を含む気筒へ導かれる混合気を通流する吸気本管において混合気を圧縮するコンプレッサを有する過給機を備えている点にある。
【0021】
以上の如く、過給機を備えることにより、改質エンジンにおいて改質ガスを生成する改質気筒を備えることで低下するエンジン出力を補う構成とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係るエンジンシステムの概略構成を示す図
図2】通常の改質ガス量を生成するための改質気筒での4ストローク運転を説明する概念図
図3】生成する改質ガス量を減少するための改質気筒での6ストローク運転を説明する概念図
図4】生成する改質ガス量を減少するための改質気筒での8ストローク運転を説明する概念図
図5】生成する改質ガス量を増加するための改質気筒での2ストローク運転を説明する概念図
図6】改質気筒でのストローク数を変更した場合の改質ガス量の変動量を示すグラフ図
図7】第2実施形態に係るエンジンシステムの概略構成を示す図
図8】別実施形態に係るエンジンシステムの概略構成を示す図
図9】別実施形態に係るエンジンシステムの概略構成を示す図
図10】別実施形態に係るエンジンシステムの概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態に係るエンジンシステム100は、図1に示すように、エンジン本体40に、都市ガス13A等の燃料Fと燃焼用空気Aとを含む混合気Mを燃焼する通常気筒40a、40b、40cと、混合気Mの少なくとも一部を不完全燃焼させて燃料Fよりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスKへ改質する改質気筒40dとを備え、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを通常気筒40a、40b、40cへ導くエンジンシステムに関するものであり、ポンプ損失を十分に抑制しつつ熱効率を維持しながらも、通常気筒40a、40b、40cへの改質ガスの流量を大幅に制御し得るエンジンシステムに関するものである。
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜6に基づいて、第1実施形態のエンジンシステム100について説明する。
第1実施形態のエンジンシステム100は、ターボ過給式のエンジンシステムとして構成されており、少なくとも1つ以上(当該第1実施形態では3つ)の通常気筒40a、40b、40cと、少なくとも1つ以上(当該第1実施形態では1つ)の改質気筒40dとを備えている。更には、エンジンシステム100の運転状態を検出するセンサ等の測定結果が入力され、その入力信号に基づいてターボ過給式エンジンの運転を制御するハードウェア群とソフトウェア群とから構成されているエンジンコントロールユニット(以下、制御装置50と呼ぶ)を備えている。
【0025】
この種のエンジンシステム100は、詳細な図示は省略するが、吸気本管20から通常気筒40a、40b、40cの燃焼室(図示せず)へ吸気弁(図示せず)を介して吸気した新気を、ピストンの上昇により圧縮した状態で点火プラグにて火花点火して燃焼・膨張させることで、ピストンを押し下げて回転軸(図示せず)から回転動力を出力すると共に、燃焼により発生した排ガスEは、通常気筒40a、40b、40cの燃焼室から排気弁(図示せず)を介して排気路27に押し出され、外部へ排出される。
尚、詳細については後述するが、吸気本管20から供給される新気は、改質気筒40dにも供給され、改質気筒40dにてピストンを押し下げて回転軸から回転動力を出力することになるのであるが、当該改質気筒40dにて排ガスとして生成される改質ガスKは、外部へ排出されることなく、そのすべてが改質ガス通流路28を介して吸気本管20へ導かれる。
【0026】
吸気本管20には、燃焼用空気Aを浄化するエアクリーナ21、燃焼用空気Aに燃料Fを適切な比率(空燃比)で混合するベンチュリー式のミキサ14、及びミキサ14にて混合された混合気Mを圧縮する過給機30としてのコンプレッサ31、当該コンプレッサ31の昇圧により昇温した混合気Mを冷却するインタークーラ22、開度調整により通常気筒40a、40b、40c及び改質気筒40dへの混合気Mの吸気量を調整可能なスロットル弁23が、その上流側から記載の順に設けられている。
即ち、吸気本管20において、ミキサ14で燃料Fと燃焼用空気Aとを混合して生成された混合気Mは、過給機30としてのコンプレッサ31にて圧縮された後に、インタークーラ22にて冷却され、スロットル弁23を介して所定の流量に調整されて、通常気筒40a、40b、40c、及び改質気筒40dの燃焼室へ導入される。
【0027】
ミキサ14に燃料Fを導く第1燃料供給路11には、ミキサ14の上流側の吸気本管20における燃焼用空気Aの圧力と第1燃料供給路11における燃料Fの圧力差を一定に保つ差圧レギュレータ12、ミキサ14を介して通常気筒40a、40b、40c及び改質気筒40dの燃焼室へ供給される燃料Fの供給量を調整する第1燃料流量制御弁13が設けられている。即ち、第1燃料供給路11、差圧レギュレータ12、ミキサ14、及び第1燃料流量制御弁13が、第1燃料供給部として機能する。
【0028】
過給機30は、通常気筒40a、40b、40cに接続される排気路27に設けられるタービン32に、通常気筒40a、40b、40cから排出される排ガスEを供給し、タービン32に連結される状態で吸気本管20に設けられるコンプレッサ31により、通常気筒40a、40b、40c及び改質気筒40dの燃焼室に吸気される混合気Mを圧縮するターボ式の過給機として構成されている。即ち、当該過給機30は、排気路27を通流する排ガスEの運動エネルギによりタービン32を回転させ、当該タービン32の回転力により吸気本管20を通流する新気としての混合気Mを圧縮して、通常気筒40a、40b、40c及び改質気筒40dの燃焼室へ供給する、所謂、過給を行う。
【0029】
エンジン本体40の回転軸(図示せず)には、当該回転軸の回転数を計測する回転数センサ(図示せず)が設けられており、制御装置50は、当該回転数センサにて計測されるエンジン回転数を目標回転数に維持するべく、当該回転数センサの計測結果に基づいてスロットル弁23の開度を制御する。
更に、制御装置50は、例えば、回転数センサにて計測されるエンジン回転数と、エンジン本体40の回転軸のトルクに基づいて計算されるエンジン出力が、目標出力となるように、第1燃料流量制御弁13やスロットル弁23の開度を制御する。
【0030】
吸気本管20は、スロットル弁23の下流側において、通常気筒40a、40b、40cの夫々へ混合気Mを導く複数の通常気筒用吸気支管20a、20b、20cに接続されると共に、改質気筒40dへ混合気Mを導く改質気筒用吸気支管20dに接続されている。
改質気筒40dは、自身の燃焼室において、新気を不完全燃焼させて、燃料F(例えば、メタン)よりも燃焼速度の速い水素等の燃焼促進性ガスを含む改質ガスKを生成するように構成されている。ここで、水素は、メタン及び空気を混合して燃焼する場合、空気過剰率が1より小さい燃料過濃領域に、その発生量のピークがあることが知られている(「燃焼の基礎と応用(共立出版株式会社)」の第2章を参照)。
そこで、当該第1実施形態にあっては、改質気筒40dへ新気を供給する改質気筒用吸気支管20dに、ベンチュリー式のミキサ16を介する形態で燃料Fを供給する第2燃料供給路29が接続されており、当該第2燃料供給路29には、燃料Fの流量を制御する第2燃料流量制御弁15が設けられている。第2燃料供給路29の第2燃料流量制御弁15の上流側には、燃料Fの供給圧を吸気本管20のコンプレッサ31出口の過給圧まで昇圧するべく、圧縮機(図示せず)等が設けられている。
更に、改質気筒40dには、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを通流する改質ガス通流路28が接続されており、当該改質ガス通流路28の下流端が、吸気本管20のスロットル弁23の下流側に接続されている。即ち、当該第1実施形態にあっては、改質ガスKは、そのすべてが通常気筒40a、40b、40c及び改質気筒40dに導かれるように構成されている。
第2燃料供給量調整部51としての制御装置50は、改質気筒40dへの新気の空気過剰率が1より小さくなるように、第2燃料流量制御弁15の開度を制御する。つまり、第2燃料供給路29、ミキサ16、及び第2燃料流量制御弁15が、第2燃料供給部として機能すると共に、第2燃料供給部及び第2燃料供給量調整部51としての制御装置50が、第2燃料供給量調整手段として働く。
【0031】
さて、改質ガスKに対する燃焼促進性ガスの含有率が一定である場合、改質気筒40dから通常気筒40a、40b、40cへ導かれる燃焼促進性ガスを含む改質ガスKの流量は、多くなるほど、通常気筒40a、40b、40cの新気に含まれる燃焼促進性ガスの量は増加するため、通常気筒40a、40b、40cの燃焼室での着火後の火花伝搬速度が上昇し、失火や燃焼変動を低減できるから、燃焼の安定性を向上できるという効果がある。
一方、改質ガスKの流量が少なくなるほど、通常気筒40a、40b、40cへ導かれる新気に含まれる燃焼促進性ガスの量は低下し、通常気筒40a、40b、40cの燃焼室での吸気行程初期から圧縮行程後期における温度上昇速度が低下するため、アンチノック性が高くなり、ノッキングの発生を抑制できるという効果がある。
このため、改質気筒40dから通常気筒40a、40b、40cへ導かれる改質ガスKの流量を制御できることが好ましい。しかしながら、例えば、改質気筒用吸気支管20dに流量制御用の弁を設けるような構成を採用すれば、ポンプ損失が増加するため好ましくない。また、改質ガス通流路28に排気用の流路を設け、改質ガスKの一部を排ガスEと共に排気すれば、改質ガスKに含まれる燃焼促進性ガスの熱エネルギを有効に利用できずに好ましくない。また、排気用の改質ガスKに対する燃焼促進性ガスの含有率が高くなると排気煙道にて爆発する虞も出てくる。
【0032】
そこで、当該第1実施形態に係るエンジンシステム100にあっては、改質気筒40dにて1サイクルに含まれる工程数を変更する形態で、通常気筒40a、40b、40cから改質気筒40dへ導かれる改質ガスKの流量を制御する。
説明を追加すると、当該第1実施形態においては、特に、改質気筒40dに対し、改質気筒40dに対して設けられる吸気弁(図示せず)と排気弁(図示せず)との開閉タイミングを設定するカムのカム軸(図示せず)とエンジン本体40の回転軸(図示せず)との間のギヤ比を変更可能な動弁機構41を備えている。
即ち、改質ガス供給量制御部52としての制御装置50は、動弁機構41を制御して、図2に示すように、吸気行程と圧縮行程と膨張行程と排気行程との夫々を上死点(TDC)と下死点(BDC)との間の1ストロークで実行する4ストローク運転と、図3、4に示すように、4ストローク運転に対して吸気行程と圧縮行程との間に燃焼を伴わないで吸気弁と排気弁との双方を閉じて改質気筒40dのピストンを往復運動させる一対の休止行程を少なくとも1つ以上追加する増加ストローク運転(図3は6ストローク運転を、図4は8ストローク運転を、夫々例示)と、図5に示すように、吸気と圧縮の双方を行う吸気・圧縮行程を1ストロークで行うと共に膨張と排気の双方を行う膨張・排気行程を1ストロークで実行する2ストローク運転とを、各別に実行可能に構成されている。
上述した4ストローク運転、増加ストローク運転、及び2ストローク運転の夫々につき、動弁機構41による吸気弁と排気弁との開閉状態の一例について説明すると、4ストローク運転において、動弁機構41は、図2に示すように、吸気弁を吸気行程に開放状態とすると共に圧縮行程と膨張行程と排気行程とで閉状態とし、排気弁を排気行程に開放状態とすると共に吸気行程と圧縮行程と膨張行程とで閉状態とする。
6ストローク運転において、動弁機構41は、図3に示すように、吸気弁を吸気行程に開放状態とすると共に一対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程と排気行程とで閉状態とし、排気弁を排気行程に開放状態とすると共に吸気行程と一対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程とで閉状態とする。
8ストローク運転において、動弁機構41は、図4に示すように、吸気弁を吸気行程に開放状態とすると共に二対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程と密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程と排気行程とで閉状態とし、排気弁を排気行程に開放状態とすると共に吸気行程と二対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程と密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程とで閉状態とする。
2ストローク運転において、動弁機構41は、図5に示すように、吸気・圧縮行程を開始する時点の上死点を基準として、吸気弁を吸気・圧縮行程の60°ATDC〜210°ATDCで開放状態とし、吸気・圧縮行程の0°ATDC〜60°ATDCと膨張・排気行程の210°ATDC〜360°ATDCにおいて閉止状態とし、排気弁を150°ATDC〜240°ATDCで開放状態とし、吸気・圧縮行程の0°ATDC〜150°ATDCと膨張・排気行程の240°ATDC〜360°ATDCで閉止状態とする。
【0033】
改質ガス供給量制御部52としての制御装置50は、改質気筒40dにおいて、2ストローク運転、4ストローク運転、6ストローク運転、8ストローク運転と、記載の順に1サイクルでのストローク数を増加することで、単位ストローク当たりの改質ガスKの流量を減少させることができる。
説明を追加すると、2ストローク運転、4ストローク運転、6ストローク運転、8ストローク運転において、単位ストロークに対する改質ガスKの流量は、理論的には、図6のグラフの理論改質ガス量変動曲線に沿う形態で、ストローク数が増加するに従って、減少することとなる。
ただし、2ストローク運転においては、吸気効率・掃気効率が低下する関係で、改質ガスKの流量が、理論上の値(図6で白丸で示す値)よりもΔX2で示す分だけ低い値(図6で黒丸で示す値)となる。しかしながら、当該改質ガスKの流量の低下量ΔX2を考慮したとしても、2ストローク運転における改質ガスKの流量は、4ストローク運転における改質ガスKの流量よりも増加することとなる。
また、増加ストローク運転において、8ストローク運転よりも追加する一対の休止行程の数を増加することができるから、この点も考慮すると、改質ガス量可変範囲ΔX1は、図6に示すように、十分に広い範囲(例えば、最低の改質ガスKの流量に対する最大の改質ガスKの流量の比が4倍以上の範囲)とすることができる。
以上より、動弁機構41及び改質ガス供給量制御部52としての制御装置50が、改質気筒40dにおける1サイクルでのストローク数を通常気筒40a、40b、40cとは別に変更する形態で、通常気筒40a、40b、40cへの改質ガスKの供給量を制御する改質ガス供給量制御手段として機能する。
【0034】
尚、当該第1実施形態にあっては、2ストローク運転、4ストローク運転、6ストローク運転、及び8ストローク運転の何れにあっても、制御装置50は、圧縮行程において60°BTDC〜10°ATDCの間に改質気筒40dの点火時期を設定するように構成されている。
【0035】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態に係るエンジンシステム100にあっては、単一の多気筒エンジンにおいて、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを通常気筒40a、40b、40c(改質気筒40dを含む)へ導く構成例を示した。
当該第2実施形態に係るエンジンシステム200は、図7に示すように、改質気筒40dにて混合気Mを改質して改質ガスKを生成するための改質エンジン200aに加えて、改質エンジン200aにて生成された改質ガスKが導かれる外部出力エンジン200bを備えて構成されている。尚、当該エンジンシステム200には、改質エンジン200a及び外部出力エンジン200bの運転状態を検出するセンサ等の測定結果が入力され、その入力信号に基づいて外部出力エンジン200bの運転を制御するハードウェア群とソフトウェア群とから構成されているエンジンコントロールユニット(以下、制御装置50と呼ぶ)を備えている。
【0036】
第2実施形態に係るエンジンシステム200における改質エンジン200aは、改質気筒40dにて生成された改質ガスKを、改質エンジン200aの吸気本管20に戻していない点を除き、上述した第1実施形態に係るエンジンシステム100と実質的に同一の構成をしており、同一の制御を実行する。
以下、上記第1実施形態に係るエンジンシステム100と異なる構成及び制御に重点をおいて説明することとし、同一の構成及び制御については、その詳細な説明を省略することがある。
【0037】
外部出力エンジン200bは、図7に示すように、吸気本管70から複数の気筒80a、80b、80c、80d(外部出力気筒の一例)の燃焼室(図示せず)へ吸気弁(図示せず)を介して吸気した新気を、ピストンの上昇により圧縮した状態で点火プラグにて火花点火して燃焼・膨張させることで、ピストンを押し下げて回転軸(図示せず)から回転動力を出力すると共に、燃焼により発生した排ガスEは、複数の気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室から排気弁(図示せず)を介して排気路に押し出され、外部へ排出される。
【0038】
吸気本管70には、燃焼用空気Aを浄化するエアクリーナ71、燃焼用空気Aに燃料Fを適切な比率(空燃比)で混合するベンチュリー式のミキサ64、開度調整により複数の気筒80a、80b、80c、80dへの混合気Mの吸気量を調整可能なスロットル弁73が、その上流側から記載の順に設けられている。
即ち、吸気本管70において、ミキサ64で燃料Fと燃焼用空気Aとを混合して生成された混合気Mは、スロットル弁73を介して所定の流量に調整されて、複数の気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室へ導入される。
【0039】
ミキサ64に燃料Fを導く第3燃料供給路61には、ミキサ64の上流側の吸気本管70における燃焼用空気Aの圧力と第3燃料供給路61における燃料Fの圧力差を一定に保つ差圧レギュレータ62、ミキサ64を介して複数の気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室へ供給される燃料Fの供給量を調整する第3燃料流量制御弁63が設けられている。
【0040】
外部出力エンジン200bのエンジン本体80の回転軸(図示せず)には、当該回転軸(図示せず)の回転数を計測する回転数センサ(図示せず)が設けられており、制御装置50は、当該回転数センサにて計測されるエンジン回転数を目標回転数に維持するべく、当該回転数センサの計測結果に基づいてスロットル弁73の開度を制御する。
更に、エンジン本体80の回転軸には、当該回転軸のトルクを計測するトルク計測センサ(図示せず)が設けられており、制御装置50は、例えば、回転数センサにて計測されるエンジン回転数と、トルク計測センサにて計測されるトルクに基づいて計算されるエンジン出力が、目標出力となるように、第3燃料流量制御弁63やスロットル弁73の開度を制御する。
【0041】
吸気本管70は、スロットル弁73の下流側において、複数の気筒80a、80b、80c、80dへ混合気Mを導く複数の吸気支管70a、70b、70c、70dに接続されている。
当該吸気本管70においてスロットル弁73の下流側で複数の吸気支管70a、70b、70c、70dの上流側には、改質エンジン200aの改質気筒40dにて生成された改質ガスKを通流する改質ガス通流路28が連通接続されている。当該構成により、上述の吸気支管70a、70b、70c、70dのすべてに対して、改質ガスKが略均等に通流することになる。
【0042】
以上の如く構成されたエンジンシステム200にあっては、改質エンジン200aにて第1実施形態にて説明した制御と同一の制御を実行することで、外部出力エンジン200bの運転状態毎に発生する異常燃焼や、燃焼の不安定を改善することが可能となる。
説明を追加すると、改質ガス供給量制御部52としての制御装置50は、動弁機構4を制御して、改質気筒40dにおいて、2ストローク運転、4ストローク運転、6ストローク運転、8ストローク運転と、記載の順に1サイクルでのストローク数を増加することで、単位ストローク当たりの改質ガスKの流量を減少させることができる。
即ち、動弁機構41及び改質ガス供給量制御部52としての制御装置50が、改質気筒40dにおける1サイクルでのストローク数を、改質エンジン200aの改質気筒40d以外の通常気筒40a、40b、40cとは別に変更する形態で、外部出力エンジン200bの気筒80a、80b、80c、80dへの改質ガスKの供給量を制御する改質ガス供給量制御手段として機能する。
【0043】
〔別実施形態〕
(1)上記第1実施形態では、通常気筒40a、40b、40cを3つとし、改質気筒40dの数を1つとした。しかしながら、通常気筒の数は、1つ以上であればいくつであっても構わないし、改質気筒の数も、1つ以上であればいくつであっても、本発明の機能を良好に発揮できる。
また、上記第2実施形態でも同様に、通常気筒の数は、1つ以上であればいくつであっても構わないし、改質気筒の数も、1つ以上であればいくつであっても、本発明の機能を良好に発揮できる。
ただし、第2実施形態に係るエンジンシステム200にあっては、改質エンジン200aは、改質ガスKの生成用のエンジンであるので、改質気筒40dの数は、多いほうが好ましい。また、改質エンジン200aは、その軸出力を取り出して発電等に用いる構成としても良い。
【0044】
(2)上記第1実施形態は、改質気筒40dの排気ポートに接続される改質ガス通流路28は、吸気本管20に接続される構成を有すると共に、改質ガスKを、通常気筒40a、40b、40cと改質気筒40dとの双方に導く例を示した。
しかしながら、例えば、改質ガス通流路28は、改質気筒40dの排気ポートと、通常気筒40a、40b、40cのみに新気を供給する通常気筒用吸気支管20a、20b、20cの夫々とを接続する構成を採用しても構わない。
これにより、改質ガスKを改質気筒40dに導くことなく、通常気筒40a、40b、40cのみに導くことができ、より一層の熱効率の向上が期待できる。
【0045】
(3)上記第1、2実施形態では、エンジンシステム100、200が過給機30を備える例を示したが、別に、当該過給機30を備えない構成であっても、本発明の目的は良好に達成される。
尚、上述の如く、過給機30を設けない構成にあっては、改質気筒用吸気支管20dは、過給圧まで昇圧されていない。このため、第2燃料供給部としてのミキサ16に供給される燃料Fの圧力を昇圧する必要がなく、昇圧のための圧縮機等を備えない簡易でコンパクトな構成にすることができる。ちなみに、この場合、ミキサ16から改質気筒用吸気支管20dへ供給される燃料Fの圧力は、通常の吸気圧力に設定される。
【0046】
(4)上記第1、2実施形態において、制御装置50は、改質気筒40dからの改質ガスKの供給量を減少する場合、4ストローク運転から、一対の休止行程を一つ追加する6ストローク運転、又は一対の休止行程を二つ追加する8ストローク運転へ変更する制御例を示した。しかしながら、当該追加する休止行程の数に制限はなく、3つ以上の休止行程を追加するような構成を採用しても構わない。
即ち、制御装置50は、改質ガスKの目標供給量に対応する形態で、当該目標供給量が少ないほど、追加する一対の休止行程の数を増加するように動弁機構41を制御しても構わない。
また、上記第1、2実施形態では、制御装置50は、改質気筒40dにおいて、2ストローク運転を実行する形態で、改質気筒40dからの改質ガスKの流量を増加する例を示した。しかしながら、当該2ストローク運転しないもの、即ち、4ストローク運転と、増加ストローク運転(6ストローク運転、8ストローク運転を含む概念)とを実行するものであっても、本発明の機能を良好に発揮するものとなる。
【0047】
(5)上記第1、2実施形態において、4ストローク運転、増加ストローク運転、及び2ストローク運転の夫々において、改質気筒40dでの動弁機構41による吸気弁と排気弁との開閉タイミングの一例を示したが、これらは例示であり、通常知られている開閉状態を適宜採用することが可能である。
【0048】
(6)上記第1、2実施形態では、過給機30として、ターボ式のものを備える例を示したが、スーパーチャージャ式のものとしても構わない。
以下、第1実施形態の構成を例にとって説明を追加すると、図1に示す過給機30に替えて、図8に示すように、吸気本管20にコンプレッサ60を設けると共に、クランク軸の出力の一部が伝達されてコンプレッサ60を駆動する動力伝達手段94とを備える構成を採用しても構わない。
【0049】
(7)上記第1、2実施形態では、図1、7に示すように、過給機30として、単一のコンプレッサ31と単一のタービン32とを備える、所謂、一段過給の例を示したが、別に、二段以上の多段過給としても構わない。
以下、第1実施形態の構成を例にとって説明を追加すると、例えば、図9に示すように、排気路27に、排ガスEの流れ方向で、第2タービン32b、第1タービン32aを記載の順に備えると共に、吸気本管20に、混合気Mの流れ方向で、第1タービン32aに連結される第1コンプレッサ31aと、第2タービン32bに連結される第2コンプレッサ31bとを記載の順に備える構成を採用しても構わない。
【0050】
(8)上記第2実施形態においては、単一の改質エンジン200aと単一の外部出力エンジン200bとを備える構成例を示したが、改質エンジン200aを複数備える構成や、外部出力エンジン200bを複数備える構成を採用することもできる。
【0051】
(9)上記第2実施形態において、制御装置50は、単一の制御装置として示しているが、改質エンジン200a用の制御装置と、外部出力エンジン200bの制御装置とを、各別に備えることも可能である。
【0052】
(10)上記第2実施形態において、外部出力エンジン200bは、多気筒エンジンとして構成しているが、別に、単気筒であってもあっても構わない。また、改質エンジン200aは、その気筒のすべてが、改質気筒であっても構わない。
【0053】
(11)上記第2実施形態においては、改質ガス通流路28が、吸気本管70に接続される構成例を示した。しかしながら、当該改質ガス通流路28は、吸気支管70a、70b、70c、70dの少なくとも1つ以上に接続される構成、即ち、複数の気筒80a、80b、80c、80dの少なくとも1つ以上に改質ガスKが導かれる構成を採用しても構わない。
【0054】
(12)上記第1、2実施形態にあっては、エンジンの回転軸のトルクを直接測定する構成例を示したが、当該構成に替えて、例えば、スロットル開度やブースト圧などから回転軸のトルクを推定するトルク推定手段を備える構成を採用しても構わない。
【0055】
(13)上記第1、2実施形態にあっては、燃料Fは、都市ガス13Aとしたが、本発明の本質的意味からは、ガス燃料に限らずガソリン等の液体燃料であっても構わない。
【0056】
(14)過給機を備えたエンジンは、ノッキングの抑制に伴う制約条件が大きくなるため、通常、EGRによりノッキングを抑制する。しかしながら、EGRを行う場合、燃焼変動が大きくなるという課題が生じる。
そこで、当該別実施形態にあっては、図10に示すように、第2実施形態に係るエンジンシステム200の外部出力エンジン200bに対し過給機90を備える構成を採用する。以下、具体的構成について説明するが、過給機90に関連する構成以外については、第2実施形態と同一であるので、その説明を割愛する。
図10に示すように、外部出力エンジン200bの吸気本管70には、ミキサ64の下流側でスロットル弁73の上流側に、過給機90のコンプレッサ91と、当該コンプレッサ91の昇圧により昇温した混合気Mを冷却するインタークーラ93とが、記載の順に設けられると共に、外部出力エンジン200bの排気路95には、過給機90のタービン92が設けられている。
このような構成にあっては、外部出力エンジン200bは、過給機90が設けられていることから、ノッキングの抑制に伴う制約条件が大きくなるが、上記第2実施形態にて説明した制御を実行して、改質エンジン200aから改質ガスKを導く構成を採用すると共に、当該改質ガスKの流量を制御することで、外部出力エンジン200bのノッキングの抑制に伴う制約条件を緩和しつつも、燃焼変動を抑制できる。
尚、当該別実施形態にあっては、改質エンジン200aは、過給式のものを採用しているが、過給式でなくても構わない。
また、過給機90としては、二段過給式のものとして構成しても良いし、スーパーチャージャー式のものを採用しても構わない。
【0057】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のエンジンシステムは、ポンプ損失を十分に抑制しつつ熱効率を維持しながらも、通常気筒への改質ガスの流量を大幅に制御し得るエンジンシステムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
11 :第1燃料供給路
12 :差圧レギュレータ
13 :第1燃料流量制御弁
14 :ミキサ
15 :第2燃料流量制御弁
16 :ミキサ
29 :第2燃料供給路
40a、40b、40c:通常気筒
40d :改質気筒
41 :動弁機構
50 :制御装置
51 :第2燃料供給量調整部
52 :改質ガス供給量制御部
80a、80b、80c、80d:外部出力気筒
100 :エンジンシステム
200 :エンジンシステム
200a :改質エンジン
200b :外部出力エンジン
A :燃焼用空気
F :燃料
K :改質ガス
M :混合気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10