特許第6643944号(P6643944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643944液晶光学素子用シール剤及びそれを用いた液晶光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643944
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】液晶光学素子用シール剤及びそれを用いた液晶光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20200130BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20200130BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C08G59/17
   C09K3/10 B
   C09K3/10 Q
   C09K3/10 E
   C09K3/10 L
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-86868(P2016-86868)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-198726(P2017-198726A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂野 常俊
(72)【発明者】
【氏名】太田 英之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】竹居 祥行
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/010152(WO,A1)
【文献】 特開2011−090213(JP,A)
【文献】 特開2013−076967(JP,A)
【文献】 特開2014−106255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08G 59/17
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性化合物、(B)無機フィラーを含有、及び(C)熱硬化剤を含有する液晶光学素子用液晶シール剤であって、(A)硬化性化合物はビスフェノールA型エポキシアクリレート、及びエポキシ基を有する化合物を含み、かつ(A)硬化性化合物中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基の総量のうちエポキシ基の割合が11.6mol%以上25mol%以下であり、(B)無機フィラーの液晶シール剤総量中の含有率が10質量%以上50質量%以下であり、(C)熱硬化剤の液晶シール剤総量中の含有率が2質量%以上5質量%以下であり、紫外線を3000mJ/cm照射し120℃で1時間の熱硬化を行った硬化物の温度85℃湿度85%の雰囲気下に24時間放置した後の吸水率が1%以下である液晶光学素子用シール剤。
【請求項2】
前記ビスフェノールA型エポキシアクリレートの分子量が380以上であるものを含有する請求項1に記載の液晶光学素子用シール剤。
【請求項3】
前記成分(C)熱硬化剤が有機酸ジヒドラジドである請求項1又は2に記載の液晶光学素子用シール剤。
【請求項4】
更に(D)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
【請求項5】
更に、(E)熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
【請求項6】
更に、(F)光ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至5にいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
【請求項7】
2枚の基板により構成される液晶光学素子用液晶セルにおいて、一方の基板に形成された請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後光及び熱により硬化することを特徴とする液晶光学素子用液晶セルの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶光学素子用液晶セル。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶光学素子用液晶セルを含む、液晶レンズ、光ピックアップ装置用液晶素子又は液晶光シャッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線および熱によって硬化する液晶光学素子用シール剤であって、液晶滴下工法に使用される液晶光学素子用シール剤に関する。より詳細には、特にスクリーン印刷方式に対応し、低液晶汚染性等の一般的特性においても優れる液晶滴下工法用液晶光学素子用シール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極が形成された透明基板同士の間に液晶層を封入した構造を持つ液晶光学素子が知られている。これら液晶光学素子は、電極間に印加する電圧を制御することで、液晶の配向を制御し、所望の光学特性を可変するものである。この液晶光学素子は、偏光板不要となることもあり、光透過率が基本的に高く、散乱特性と組み合わせ、調光ガラス、光シャッター、レーザー装置などに用いられている。
【0003】
液晶表示用液晶セルの分野においては、液晶滴下工法による製造が主流となっている。この液晶滴下工法とは、一方の基板に形成された液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせることにより液晶が封止される液晶表示セルの製造方法である。
【0004】
液晶滴下工法は、生産性を最優先した工法である為、特に寸法安定性や、液晶汚染性に厳しい液晶光学素子用としては、用いられていなかった。しかし近年、例えば液晶レンズ、光ピックアップ装置用液晶素子、液晶光シャッター等の小型の液晶光学素子について、液晶滴下工法が提案されるようになった(特許文献1〜3)。しかしながら液晶光学素子は信頼性試験後にシール剤が膨張し、不具合が発生したり、素子が小型のため液晶汚染性が問題となっている。
【0005】
また、液晶光学素子は一般的に液晶表示素子よりもマザーガラス、一つの液晶光学素子ともに小型であり、液晶光学素子用シール剤を塗布する際はスクリーン印刷方式で塗布することが作業上効率がよい。スクリーン印刷方式に適応するためには液晶光学素子用シール剤の粘度を低下させる必要があるが、低粘度化することで液晶との相溶性が高まり、さらに液晶汚染性が厳しくなってくる。スクリーン印刷方式で液晶光学素子用シール剤を塗布し、液晶滴下工法によって作成さる液晶光学素子については特許文献4に記載があるが、このように信頼性に優れ、かつ作業性の良い液晶光学素子用シール剤の実現には未だ至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−257561号公報
【特許文献2】特開2009−180775号公報
【特許文献3】特開2012−073493号公報
【特許文献4】特許第4970999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、塗布作業性に優れ、紫外線および熱によって硬化する液晶光学素子用シール剤であって、液晶滴下工法に使用される液晶光学素子用シール剤に関する。より詳細には、スクリーン印刷性に優れ、高温高湿試験後の体積膨張が極めて少なく、低液晶汚染性等の一般的特性においても優れる液晶光学素子用シール剤を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、高温高湿試験後のシール剤の体積が膨張する課題を解決する為に鋭意検討した結果、液晶光学素子用シール剤の吸水率が影響していることを見出し、本願発明に至ったものである。
即ち本発明は、次の1)〜12)に関するものである。なお本明細書において、「(メタ)アクリル」と記載した場合には、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を、「(メタ)アクリロイル」と記載した場合には、「アクリロイル」及び/又は「メタクリロイル」意味するものとする。
【0009】
1)
25℃雰囲気下での粘度が100Pa・s以下であり、(A)硬化性化合物、(B)無機フィラーを含有し、(A)硬化性化合物は一分子中に(メタ)アクロイル基及びエポキシ基を有する化合物を含み、かつ(A)硬化性化合物中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基の総量のうちエポキシ基の割合が25mol%以下であり、かつ、(A)硬化性化合物に一分子中に反応性基を3個以上有する(メタ)アクリルエステルを含有し、紫外線を3000mJ/cm照射し120℃で1時間の熱硬化を行った硬化物の温度85℃湿度85%の雰囲気下に24時間放置した後の吸水率が1%以下である液晶光学素子用シール剤。
2)
上記成分(A)硬化性化合物にエポキシ(メタ)アクリレートを含有する上記1)に記載の液晶光学素子用シール剤。
3)
上記成分エポキシ(メタ)アクリレートの分子量が380以上であるものを含有する上記2)に記載の液晶光学素子用シール剤。
4)
上記成分(B)無機フィラーの液晶シール剤総量中の含有率が10%以上50%以下である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
5)
更に、(C)熱硬化剤を含有する上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
6)
上記成分(C)熱硬化剤が有機酸ジヒドラジドである上記5)に記載の液晶光学素子用シール剤。
7)
更に(D)シランカップリング剤を含有する上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
8)
更に、(E)熱ラジカル重合開始剤を含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
9)
更に、(F)光ラジカル重合開始剤を含有する上記1)乃至8)にいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤。
10)
2枚の基板により構成される液晶光学素子用液晶セルにおいて、一方の基板に形成された上記1)乃至10)のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後光及び/又は熱により硬化することを特徴とする液晶光学素子用液晶セルの製造方法。
11)
上記1)乃至9)のいずれか一項に記載の液晶光学素子用シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶光学素子用液晶セル。
12)
上記11)に記載の液晶光学素子用液晶セルを含む、液晶レンズ、光ピックアップ装置用液晶素子又は液晶光シャッター。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶光学素子用シール剤は、スクリーン印刷方式で塗布することができ、耐湿信頼性試験後の体積膨張率を最大限抑えることができ、かつ低液晶汚染性においても優れる為、液晶光学素子用液晶シール剤として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[(A)硬化性化合物]
本発明の液晶光学素子用シール剤は、(A)硬化性化合物を含有する。
成分(A)は、光又は熱によって重合反応するものであり、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物、エポキシ基を有する硬化性化合物等を挙げることができる。 (メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルエステル等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち吸水性および液晶汚染性の観点から、分子量が380以上であるものを含有することが好ましく、ビスフェノールA骨格を有するエポキシ化合物が好ましく、例えばビスフェノールジグリシジルエーテル等である。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性及び液晶汚染性の観点から適切に選択される。分子量としてさらに好ましくは400以上である。
したがって、好ましい(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有し、さらにビスフェノールA骨格を有する硬化性化合物であり、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸エステルやビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸エステルである。
【0012】
(メタ)アクリルエステルとしては、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フロログリシノールトリアクリレート等が挙げられる。なお、成分(A)中には、液晶汚染性の観点から一分子中に官能基数が3以上の(メタ)アクリルエステルを必ず含有する。このような(メタ)アクリルエステルとして、KAYARADRTMPET−30、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DPEA−12、GPO−303、TMPTA、THE-330、TPA−320、TPA−330、D−310,D−330、RP−1040、UX−5000、DPHA−40H(いずれも日本化薬株式会社製)、NKエステルRTMA−9300、A−9300−1CL、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、AD−TMP、ATM−35E、A−TMMT、A−9550、A−DPH(いずれも新中村化学工業株式会社)、SR295、SR350、SR355、SR399、SR494、CD501、SR502、CD9021、SR9035、SR9041(いずれもサートマー社製)等を挙げることができる。 た更に、(メタ)アクリルエステルは、分子量が800以上である場合が好ましい。(メタ)アクリルエステルのモル平均分子量が800より低い場合、溶剤のように液晶へ溶解し易くなる為、硬化前の状態でシール剤が液晶と接触した際に液晶を汚染し、表示性能を劣化させてしまう可能性がある為である。
好ましい成分(A)としては、例えばKAYARADRTMDPCA−20(分子量807)、DPCA−30(分子量921)、DPCA−60(分子量1262)DPEA−12(分子量1191)等をあげることができる。
【0013】
エポキシ基を有する硬化性化合物としては、エポキシ化合物が挙げられる。該エポキシ化合物としては特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点より好ましいのはビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物である。
【0014】
本発明における成分(A)は、一分子中に(メタ)アクロイル基及びエポキシ基を有する化合物を含有する。当該化合物は、例えば部分エポキシ(メタ)アクリレート等挙げることができる。これは、上記エポキシ(メタ)アクリレートと同じ意味を表すが、アクリルエステル化率を100%未満としたものであり、好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%である。
【0015】
本発明はの硬化性化合物(A)は、吸水性の観点から(メタ)アクリロイル基とエポキシ基の総量のうちエポキシ基の割合が25mol%以下にする必要があり、好ましくは20mol%以下である。
【0016】
[(B)無機フィラー]
本発明の液晶光学素子用シール剤では成分(B)無機フィラーを含有する。無機フィラーを含有することで、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。この(B)無機フィラーとしては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が適当であり、好ましくは2μm以下である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定した。
【0017】
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤で使用しうる無機フィラー(B)の液晶光学素子用液晶シール剤中の含有量は、本発明の液晶光学素子用液晶シール剤の総量中、10〜50質量%である。無機フィラーの含有量が少な過ぎる場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が多過ぎる場合、フィラー含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0018】
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤で使用しうる無機フィラー(B)は無機フィラー表面の水酸基を介してエポキシ骨格とアルコキシシリル基とが結合した構造を有するエポキシシラン化合物等により表面処理されていてもよい。このような表面処理を行うことによって、無機フィラー(B)と樹脂とのなじみ性が良好になり、耐湿性や密着性が向上する。
【0019】
[吸水率について]
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤は、紫外線を3000mJ/cm^2照射し、120℃で1時間の熱硬化のみを行った硬化物の、JIS−K7209(D法)に従って測定した吸水率が1.0%以下である(ただし、試験条件は、85℃85%の環境を用いる)。液晶シール剤に吸収された水分は、液晶シール剤を膨張させてギャップムラを発生させたり、液晶シール剤中の有機物の分解を促し、更には分解物や不純物イオンを液晶シール剤外に運び出し、液晶汚染の原因となったりする。
この吸水率は好ましくは0.8%以下であり、更に好ましくは0.6%以下である。
【0020】
[粘度について]
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤の粘度は25℃雰囲気下、5rpmの粘度が100Pa・以下である。100Pa・s以上であるとスクリーン印刷時に所望の断面積が出せなかったり、線形状が悪かったり不具合が発生する。
【0021】
[(C)熱硬化剤]
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤は、(C)熱硬化剤を含有しても良い。
熱硬化剤は、具体的には、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えば多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド化合物等を挙げる事ができる。ただしこれらに限定されるものではない。これらのうち有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
成分(C)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の液晶シール剤において、成分(C)を使用する場合には、液晶光学素子用液晶シール剤総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0022】
[(D)シランカップリング剤]
本発明の液晶光学素子用シール剤は、成分(D)としてシランカップリング剤を添加して、接着強度や耐湿性の向上を図ることができる。
成分(D)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明の液晶シール剤において、成分(D)を使用する場合には、液晶光学素子用液晶シール剤総量中、0.05〜3質量%が好適である。
【0023】
[(E)熱ラジカル重合開始剤]
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤は、(E)熱ラジカル重合開始剤を用いて、硬化速度、硬化度の向上を図ることができる。
熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、O−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC−75、AIC−75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、パTMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND、(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。
【0024】
また、アゾ化合物としては、VA−044、V−070、VPE−0201、VSP−1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。なお、本明細書中、上付きのRTMは登録商標を意味する。
【0025】
成分(F)として好ましいものは、分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)又は窒素−窒素結合(−N=N−)を有さない熱ラジカル重合開始剤である。分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)や窒素−窒素結合(−N=N−)を有する熱ラジカル重合開始剤は、ラジカル発生時に多量の酸素や窒素を発するため、液晶光学素子用液晶シール剤中に気泡を残した状態で硬化し、接着強度等の特性を低下させる虞がある。ベンゾピナコール系の熱ラジカル重合開始剤(ベンゾピナコールを化学的に修飾したものを含む)が特に好適である。具体的には、ベンゾピナコール、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン等、が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、特に好ましくは1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンである。
上記ベンゾピナコールは東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化することは、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化することは、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤をピリジン等の塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)やトリエチルシリル化剤としてトリエチルクロロシラン(TECS)、t−ブチルジメチルシリル化剤としてt−ブチルメチルシラン(TBMS)等が挙げられる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することが出来る。シリル化剤の反応量としては対象化合物のヒドロキシ基1モルに対して1.0〜5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5〜3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になったりしてしまう。
【0026】
成分(E)は粒径を細かくし、均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる際のギャップ形成が上手くできない等の不良要因となるため、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。また、際限なく細かくしても差し支えないが、通常下限は0.1μm程度である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
【0027】
成分(E)の含有量としては、液晶光学素子用液晶シール剤の総量中、0.0001〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜5質量%であり、0.001〜3質量%が特に好ましい。
【0028】
[(F)光ラジカル重合開始剤]
本発明の液晶光学素子用シール剤は、(F)光ラジカル重合開始剤を含有する。
光ラジカル重合開始剤は、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
【0029】
[(G)有機フィラー]
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤は、(G)有機フィラーを用いて、接着強度の向上を図ることができる。成分(G)有機フィラーとしては、例えばウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子及びシリコーン微粒子が挙げられる。
上記アクリル微粒子を使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアックRTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
これらのものは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。本発明の液晶光学素子用液晶シール剤において、成分(G)を使用する場合には、液晶光学素子用液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0030】
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機酸やイミダゾール等の硬化促進剤、ラジカル重合防止剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
上記硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2 ,4−ジアミノ−6(2 ’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4− ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1 ’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の液晶光学素子用液晶シール剤において、硬化促進剤を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0031】
上記ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の液晶光学素子用液晶シール剤総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
【0032】
本発明の液晶光学素子用シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(A)に必要に応じて必要に応じて(F)、重合禁止剤等を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後、成分(B)を添加し、必要に応じて成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(G)並びに有機酸、硬化促進剤、レベリング剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0033】
本発明の液晶光学素子用セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶光学素子用シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶光学素子用液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、60〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶光学素子用液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、紫外線照射機により液晶シール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500〜10000mJ/cm、より好ましくは1000〜6000mJ/cmの照射量が好ましい。その後必要に応じて、90〜140℃で30分〜120分硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶光学素子用セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜70μm、好ましくは4〜60μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量%に対し通常0.1〜4質量%、好ましくは0.5〜2質量%、更に、好ましくは0.9〜1.5質量%程度である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0035】
[合成例1]
[ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルの全アクリル化物の合成]
ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル282.5g(製品名:YD−8125、新日鉄化学株式会社製)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリルエステル化物395gを得た。
【0036】
[合成例2]
[レゾルシンジグリシジルエーテルの全アクリル化物の合成]
[工程1]
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコにレゾルシン5500g、エピクロルヒドリン37000gテトラメチルアンモニウムクロライド500gを加え撹拌下で溶解し、70℃まで昇温した。次いで、フレーク状の水酸化ナトリウム4000gを100分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間、後反応を行った。反応終了後、水15000gを加えて水洗した後、油層から130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン22200gを加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液を1000g加え1時間反応を行った後、水5550gで水洗を3回行い、180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、レゾルシンジグリシジルエーテル10550gを得た。得られたエポキシ化合物のエポキシ当量は129g/eqであった。
[工程2]
上記合成例1で得られたレゾルシンジグリシジルエーテル181.2gをトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え、さらに80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して98℃で約30時間撹拌した。得られた反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするレゾルシンジグリシジルエーテルのアクリルエステル化物253gを得た。
【0037】
[合成例3]
[1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンの合成]
市販ベンゾピナコール(東京化成工業株式会社製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアルデヒド350部に溶解させた。これに塩基触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業株式会社製)150部(0.58モル)を加え70℃まで昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液を冷却し、攪拌しながら、水200部を入れ、生成物を沈殿させると共に未反応シリル化剤を失活させた。沈殿した生成物をろ別分離した後十分に水洗した。次いで得られた生成物をアセトンに溶解し、水を加えて再結晶させ、精製した。目的の1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタンを105.6部(収率88.3%)得た。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した結果、純度は99.0%(面積百分率)であった。
【0038】
[実施例1〜4、比較例1〜4の調製]
下記表1に示す割合で合成例1で合成した化合物、合成例2で合成した化合物等の硬化性化合物(成分(A))に、光ラジカル重合開始剤(成分(F))、重合禁止剤等を加え、90℃で加熱溶解した。室温まで冷却し、無機フィラー(成分(B))、熱硬化剤(成分(C))、シランカップリング剤(成分(D))、熱ラジカル重合開始剤(成分(E))、有機フィラー、有機酸等を加え、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、液晶光学素子用液晶シール剤(実施例1〜4、比較例1〜3)を調製した。
【0039】
[吸水率測定]
実施例、比較例で製造された液晶光学素子用液晶シール剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み厚み100μmの薄膜としたものをメタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製)3000mJ/cm^2(100W、30秒)照射後120℃オーブンに1時間投入し硬化させ、硬化後PETフィルムをはがしシール剤硬化膜を得られたのち、これを20mm×50mmの短冊状にカットする事でサンプル片とした。得られたサンプル片をJIS−K7209 D法に準拠し、25℃50%RHの条件において24時間安定化させたのちに初期重量を測定し、85℃85%RHの条件において24時間吸水させたのちに重量を測定し吸水後重量とした。測定後下記式によって吸水率を算出した。

吸水率(%)=((吸水後重量(g)−初期重量(g))/初期重量(g))×100(%)
【0040】
[スクリーン印刷性]
調整した液晶光学素子用液晶シール剤をガラス基板上にスクリーン印刷機(ニューロング株式会社製LS−150)を使用して塗付した。以下に示す評価基準にて評価を行った。

(印刷性の評価)
○:カスレ、シール切れがない。
×:カスレ、シール切れがある。
【0041】
(評価用液晶セルの作成)
透明電極付き基板に配向膜液(PIA−5540−05A;JNC株式会社製)を塗布、焼成し、ラビング処理を施した。この基板に得られた液晶シール剤を貼り合せ後の線幅が1mmとなるようにメインシールおよびダミーシールを縦30mm横40mmの長方形にディスペンスし、次いで液晶(JC−5015LA;JNC株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。更にもう一枚のラビング処理済み基板に面内スペーサ(ハヤビーズ SD−BD 直径30μm:早川ゴム株式会社;貼り合せ後のギャップ幅30μm)を散布、貼り合せ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合せた。大気開放してギャップ形成した後、シールパターン枠内のみマスクをしてUV照射機により3000mJ/cmの紫外線を照射後、オーブンに投入して120℃1時間熱硬化させた。その後ダミーシール部分の基板を切りおとし、評価用液晶セルを作成した。
【0042】
[初期のシール近傍の液晶配向の評価]
作成した評価用液晶セルのシール近傍の液晶配向乱れを偏光顕微鏡にて観察し、シール近傍の液晶配向について以下に示す基準に従って評価を行った。結果を表1に示す。

(シール近傍の液晶配向の評価)
○:液晶の配向乱れがシールから0.2mm未満である。
△:液晶の配向乱れがシールから0.2mm以上0.4mm未満である。
×:液晶の配向乱れがシールから0.4mm以上である。
【0043】
[高温高湿試験後の液晶シール剤の膨潤評価]
上記で作成した評価用液晶セルを85℃85%に設定した高温高湿試験機に投入し、24時間経過後の液晶セルの液晶光学素子用液晶シール剤の膨潤度合確認のためニュートンリングの有無を以下に示す基準に従って確認した。結果を表1に示す。

(高温高湿試験後の液晶シール剤の膨潤評価)
○:目視にてパネルにニュートンリングが観察できない。
×:目視にてパネルにニュートンリングが観察できる。
【0044】
[高温高湿試験後のシール近傍の液晶配向の評価]
さらに高温高湿試験後の評価用液晶セルの液晶光学素子用液晶シール剤近傍の液晶配向乱れを偏光顕微鏡にて観察し、シール近傍の液晶配向について以下の基準に従って評価を行った。結果を表1に示す。

(高温高湿試験後のシール近傍の液晶配向の評価)
○:液晶の配向乱れがシールから0.2mm未満である。
△:液晶の配向乱れがシールから0.2mm以上0.4mm未満である。
×:液晶の配向乱れがシールから0.4mm以上である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果より、本願発明の実施例1〜4は、高温高湿試験後でも液晶光学素子用シール剤の体積膨張がなく、また低液晶汚染性にも優れる結果を示した。一方比較例に記載の液晶シール剤は高温高湿試験後に体積膨張があり、寸法安定性が問題となる為、液晶光学素子用シール剤としては使用できない。このことから本願発明は高温高湿試験後の信頼性に非常に優れた液晶光学素子用シール剤であり、またこれを用いた製造された液晶光学素子用セルの信頼性も優れたものであると言える。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の液晶光学素子用シール剤は、高温高湿試験後の液晶表示特性に与える影響が極めて小さい為、信頼性の高い液晶表示素子の製造を実現することができる。