(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芯パッドの裏面側に、前記凹みの側壁を担ってその凹底よりも裏面側へ隆起して、前記凹みを仕切る延在部分が半島状に延出形成され、且つ該延在部分の裏面が平坦面に形成された請求項1又は2に記載の車両用クッションパッド。
前記凹みを囲む周縁部の裏面が、前記芯パッドの裏面から段差状に凹ませた段差面に形成され、且つ該段差面と前記延在部分の裏面とが一様の平坦面に形成された請求項3記載の車両用クッションパッド。
前記芯パッドの裏面側に、前記凹みの側壁を担ってその凹底よりも裏面側へ隆起させて、前記凹みを仕切る延在部分を半島状に延出形成し、且つ該延在部分の裏面が平坦面に形成され、さらに前記凹みを囲む周縁部の裏面が、前記芯パッドの裏面から段差状に凹ませた段差面に形成され、且つ該段差面と前記延在部分の裏面とが一様の平坦面に形成された請求項5又は6に記載の車両用クッションパッドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用クッションパッド(以下、単に「クッションパッド」ともいう。)及びその製造方法について詳述する。
図1〜
図12は本発明のクッションパッド及びその製造方法の一形態で、
図1はその製法に用いる型開状態にある発泡型に芯パッドをセットし且つ発泡原料を注入する説明断面図、
図2は
図1の発泡原料注入後、型閉じした説明断面図、
図3は芯パッド付き上層パッドを発泡成形した説明断面図、
図4は脱型した
図3の芯パッド付き上層パッドに、下層パッドを接合してクッションパッドとした説明断面図、
図5は脱型した
図3の芯パッド付き上層パッドと下層パッドの斜視図、
図6は
図4に示したクッションパッドの対応斜視図、
図7は
図6のクッションパッドを意匠面側から見た斜視図、
図8は
図5に代わる他態様の芯パッドと下層パッドの斜視図、
図9は
図1に対応する型開状態の説明断面図、
図10は
図3に対応する説明断面図、
図11は
図10の芯パッド付き上層パッドと下層パッドの説明断面図、
図12は
図11の芯パッドに下層パッドを接合しクッションパッドとした説明断面図である。
図9の芯パッドは
図8のIX-IX線矢視図に相当する。
各図は図面を判り易くするため簡略図示し、また本発明と直接関係しない部分は省略する。芯パッド2と下層パッド6は断面表示のハッチングを省く。
【0010】
(1)車両用クッションパッドの製造方法
車両用クッションパッドの製造方法は、少なくとも乗員が当接する座面部分41を軟質ポリウレタン発泡体で構成して、配風流路uを備えた車両用クッションパッドの製造方法である。発泡型7を用い、芯パッド2をインサートして、軟質ポリウレタン発泡体の上層パッド4を発泡成形して芯パッド2付き上層パッド4を成形する。そして、脱型後、芯パッド裏面2bに下層パッド6を接合させてクッションパッドPを造る。本クッションパッドPは、車両用後部座席や運転座席,助手席等の座席シートの座部に使用される。ここでは、
図7のような運転座席のクッションパッドPに適用する。上層パッド4の発泡成形に先立ち、芯パッド2,下層パッド6,発泡型7が用意される。
【0011】
芯パッド2は、上層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも見掛け密度が小の非通気性発泡体で構成し、
図4のごとくクッションパッドPの裏面側に配される芯部材である。芯パッド2と上層パッド4との密度比較は、発泡前の素材の密度でなく、発泡後の見掛け密度で比較する。
上層パッド4の発泡成形に先立ち、予め発泡成形された芯パッド2,下層パッド6が用意される。芯パッド2には、裏面2b側に裏面過半部の大きさがある配風流路u用凹み21が設けられ、さらに凹み21の凹底211から表面2a側へ貫通する透孔23が複数設けられる(
図2,
図5)。本実施形態は、配風流路用凹み21が
図5のごとく皿状で略方形に窪む形にする。透孔23の数を四つとする。ここで、芯パッド2の「表面側」,「裏面側」は、車両に取付け姿態にある
図7のクッションパッドPでいえば、文字通り紙面の「表面側」,紙面の「裏面側」となる。上層パッド4の「意匠面側」,「内面側」や、下層パッド6の「上面側」,「下面側」も、車両に取付け姿態にある
図7のクッションパッドPでいえば、紙面の「表面側」,紙面の「裏面側」となり、同じ意である。文言を使い分けて部位を特定し易くしている。
凹み21を取り囲む周縁部沿い裏面は、芯パッド2の裏面2bから落差壁262を介して段差状に凹ませた段差面261のある段差26に形成され(
図1)、且つ略一定幅の段差面261が一様の平坦面に形成される。符号28は発泡型7に芯パッド2をセットした時、芯パッド2の外方へせり出す出っ張り部の上端面である。符号29は芯パッド2に設けた開孔で、符号291は裏面側に配される大径部、符号292は小径部、符号293は受面を示す。芯パッド2を
図2のように上型9にセットした時、受面293と上型型面91との間にスペースが確保される。
【0012】
下層パッド6は
図4,
図5ごとくの塊状体で、非通気性発泡体で構成されて、上面6a側が、配風流路uを形成するように前記凹み21の開口210を覆って、前記芯パッド2の裏面2bに接合する。芯パッド裏面2bに接合してなる下層パッド6の下面6bはクッションパッドPの裏面に合わせた形状とする。そして、下層パッド6の下面6b側から該配風流路u内へ貫通するエア導入孔61が設けられる。
下層パッド6を構成する非通気性発泡体の見掛け密度は、軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも小さい。下層パッド6(及び芯パッド2)を構成する非通気性発泡体は、その見掛け密度が上層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも小さければ充足するが、非通気性の発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体がより好ましい。例えばビーズ法発泡スチロールの発泡スチロールの成形体は、気泡が内部に密閉された非通気性発泡体となっており、芯パッド2の凹み21や、下層パッド6で該凹み21を覆った配風流路uからは、空調エアが漏れ出さない。且つ、体積の大部分が気体で軽量にして、その見掛け密度を軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも小さくできる。ビーズ法発泡ポリプロピレンの発泡ポリプロピレンも発泡スチロールに酷似し、気泡が内部に密閉された非通気性発泡体にして、配風流路用凹み21が在る芯パッド2や凹み21を覆う下層パッド6の材料として機能的に優れ、且つその見掛け密度を小さくできる。下層パッド6の非通気性発泡体は、芯パッド2の非通気性発泡体と異にしてもよいが、同一材料を用いるとクッションパッドPの製造が容易になる。本実施形態の芯パッド2,下層パッド6も発泡ポリプロピレンの同一材料を用いる。発泡ポリプロピレンは、発泡ポリスチレン(発泡スチロール)よりも弾力があり、クッションパッド用芯パッド2,下層パッド6の構成材としてさらに好ましくなっている。
符号63は、配風流路uの断面積が大きくなるよう、凹み21の開口210を覆う下層パッド上面6aの部位がへこむ凹所を示す。
【0013】
発泡型7は、
図1ごとくの分割型で、下型8と上型9はヒンジ71により開閉可能に接続されている。ヒンジ71を支点に
図2のごとく型閉じすると、全体が椀状にへこんで座面部分41の意匠面4aを形成する下型型面81と、中央にへこみを有するものの全体がやや凸状にして芯パッド2の裏面2bに合わせた上型型面91とで、芯パッド2付き上層パッド4のキャビティCをつくる。上型型面91に複数のピン92が立設する。各ピン92はピン径が透孔23の孔径に略等しく且つピン長が長く、芯パッド2の上型型面91へのセットで、各透孔23に挿通して芯パッド2から突き出す。本実施形態は、四つの透孔23に対応する上型型面91の部位に四本のピン92を突出形成するようにしている。型閉じで、各ピン92の先端が下型型面81に
図2のごとく当接する。尚、
図1〜
図3の発泡型7は、車両設置状態に在る
図7のクッションパッドPと上下が逆の姿態で、該クッションパッドPに係る芯パッド2付き上層パッド4を造る型構造になっている。
【0014】
前記発泡型7,芯パッド2,下層パッド6を用いて、クッションパッドPが例えば次のように製造される。
まず、発泡型7を
図1の型開状態とする。この型開状態の上型9に芯パッド2をセットする。芯パッド2に設けた各透孔23に複数のピン92を夫々挿通し、且つ上型型面91に凹み21が在る芯パッド裏面2b側を当接させて、該芯パッド2を上型型面91にセットする。凹み21の凹底211にも上型型面91が当接する。
上型型面91へ芯パッド2をセットした後、椀状にへこむ下型型面81上に、注入ノズルNL等を使用して上層パッド4成形用発泡原料g(軟質ポリウレタン発泡体用原料)を所定量注入する。
【0015】
次いで、クッションパッドPの座面部分41を形成する下型型面81側に、前記ピン92の先端を当接させて型閉じする。尚、型閉じ時のピン92が当接する下型型面81のピン当て部83を
図2のごとくアール曲面状に少し盛り上げて、ピン92が上層パッド4に形成するエア吹出孔45の出口周りの意匠面4aを綺麗にしている。
【0016】
型閉じ後、意匠面4a側に座面部分41を有する、軟質ポリウレタン発泡体からなる上層パッド4を発泡成形する。上層パッド4の意匠面4aと反対側にあたる内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合し、芯パッド2付き上層パッド4となる。発泡成形過程では、芯パッド2から突き出すピン92周りのキャビティCに、注入された発泡原料gが、上層パッド4となって発泡成形され、芯パッド2から突き出すピン92がエア吹出孔45を形成する。該エア吹出孔45を形成する各ピン92が透孔23に挿通しているので、各エア吹出孔45は各透孔23に夫々導通する。
ところで、軟質ポリウレタン発泡体の上層パッド4が、発泡成形されても、芯パッド2を構成する発泡ポリプロピレン,発泡スチロール等の非通気性発泡体とは接着性に乏しく、そのままでは両者の一体化が不十分となる虞がある。双方を両面テープや粘着剤に頼ってもよいが、本実施形態は、
図1のごとく芯パッド2に受面293付き開孔29や、セット時に上端面28が略水平になる出っ張り部等を形成して、芯パッド2と上層パッド4との一体化を図っている。上層パッド4の発泡成形時に、発泡原料gが開孔29の小径部292を潜り、大径部291側の受面293上に発泡原料gが浸入して発泡硬化し、大径部291内を埋める露出部分43が受面293に受け止められて、芯パッド2と上層パッド4の一体化を図る(
図3)。また、上層パッド4の発泡成形で、該上層パッド4が
図4のごとく芯パッド2の出っ張り部上端面28に乗り上げ、これを該上層パッド4が巻き込む形となって、両者の一体化を図っている。
【0017】
上層パッド4の発泡成形を終え、脱型すれば、芯パッド2付き上層パッド4が得られる。脱型時に上型9を開くと、上型9側に発泡成形を終えた芯パッド2付き上層パッド4がピン92に保持された状態で現れる。作業者は立ったままの楽な姿勢で、芯パッド2付き上層パッド4をピン92から外し脱型できる。
しかる後、エア導入孔61を貫通させた下層パッド6の上面6a側で配風流路uを形成するように凹み21の開口210を覆い、且つエア導入孔61を配風流路uと導通させて芯パッド2の裏面2bに下層パッド6を接合させる(
図4)。符号661は芯パッド裏面2bの段差面261と接合する下層パッド6側の当接面を示す。下層パッド上面6a側で配風流路uを形成するように凹み21の開口210を覆って、芯パッド裏面2bに下層パッド6を接合させ、
図4,
図6のような所望の車両用クッションパッドPとする。このクッションパッドPに図示しない表皮を被せれば、車両用座席シートのシートクッションが出来上がる。
下層パッド6と芯パッド2との接合は、両者間に両面テープを介在させた一体化接合や接着剤による接着接合とする。図中、符号84は横溝形成部、符号89,符号99は型合せ面、符号4Aはメイン部、符号4Bはサイド部、符号4Cはバックレストとの合わせ部、符号49は吊溝で、符号491は縦溝、符号492は横溝を示す。
【0018】
図8〜
図12は、
図1〜
図7に代わる他態様のクッションパッドPの製造方法を図示する。
ここでは、
図8のような芯パッド2,下層パッド6が用意される。下層パッド6は図示のごとく盤状体とする。芯パッド2には、その裏面側で、
図1〜
図7の皿状で略方形に大きく窪む凹み21を形成しながらも、該凹み21内へ張り出す延在部分25が設けられる。凹み21の側壁212を担ってその凹底211よりも裏面2b側へ隆起して、方形の凹み21を略二分する形で、該凹み21を仕切る延在部分25が半島状に延出形成される。本発明でいう凹み21を仕切るとは、
図8のように延在部分25により凹み21内で空調エアが流れるように分けて区画化する意で、凹み21の分断はしない。延在部分25の裏面25bは図示のごとく平坦面に形成される。さらに凹み21を囲む周縁部22の裏面22bが、芯パッド2の裏面2bから段差状に凹ませた段差面261に形成され、且つ該段差面261と前記延在部分25の裏面25bとが一様の平坦面に形成された芯パッド2とする。延在部分25,段差面261に対面接合する下層パッド6の部分も、一様な平面になっている。下層パッド6が凹み21の開口210を覆って配風流路uを形成する際、下層パッド6が延在部分25,段差面261に密着接合する。
図8の下層パッド6に設けたエア導入孔61は
図1〜
図7と同様、一つとするが、芯パッド2に設けた透孔23は六つとする。
発泡型7は、芯パッド2,上層パッド4に対応するキャビティCを備えたものが用意される。上型型面91には芯パッド2の六つの透孔23に対応する上型型面91の部位に六本のピン92が起立する。
【0019】
図4に代わる他態様の
図12に示すクッションパッドPは、
図8,
図9の芯パッド2,下層パッド6,発泡型7を用いて、次のようにして製造される。
まず、
図9の型開状態下、芯パッド2の各透孔23に、上型型面91から突出する各ピン92を夫々挿通し且つ芯パッド裏面2b側を上型型面91に当接させて、該芯パッド2をセットする。ここで、発泡型7への芯パッド2のセットに際し、上型型面91に凹み21が在る芯パッド裏面2b側を当接させるが、
図2のごとく凹底211に上型型面91は当接しない。凹み21周囲の段差面261に上型型面91の対応部分が当接シールし、凹み21内を空所に保つ。上型9は、凹み21内へ張り出す型面部分がなしの型面91になっている。
【0020】
次に、下型型面81上に軟質ポリウレタン発泡体用原料gを注入し、さらに座面部分41を形成する下型型面81側に、前記ピン92の先端を当接させて型閉じする。
続いて、意匠面4a側に座面部分41を有する軟質ポリウレタン発泡体たる上層パッド4を発泡成形し(
図10)、芯パッド2付き上層パッド4とする。上層パッド4の内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合する。ここで、
図10のごとく上型9にセットされた芯パッド2は、キャビティC内で、下型型面81に近い側に水平外方に張り出す張出部271が配される一方、上型型面91に近い側に水平内方に引っ込む後退部272が配される。上層パッド4が後退部272まで覆って張出部271を巻き込む形で芯パッド2付き上層パッド4として発泡成形され、両者が一体化する。
【0021】
その後、前記芯パッド2付き上層パッド4を脱型する。しかる後、脱型した芯パッド2付き上層パッド4に対し、下層パッド6の上面側で配風流路uを形成するように凹み21の開口210を覆い、且つエア導入孔61が配風流路u内へ導通するようにして、芯パッド裏面2bに下層パッド6を接合させて所望のクッションパッドPとする(
図11,
図12)。芯パッド裏面2bと下層パッド6との接合は、接着剤等を介在させた接着接合とする。他の構成は
図1〜
図7のクッションパッドPの説明と同様で、その説明を省く。
図1〜
図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0022】
(2)クッションパッド
図1〜
図7の上記製造方法等で得られるクッションパッドPは、少なくとも乗員が当接する座面部分41を軟質ポリウレタン発泡体で形成して、配風流路uを備えた車両用クッションパッドPであって、芯パッド2と上層パッド4と下層パッド6とを具備するクッションパッドPである。
芯パッド2は、非通気性発泡体で形成され、裏面2b側に配風流路用凹み21が設けられる。凹み21は芯パッド裏面2bで、
図5のごとく裏面過半部を占めて、芯パッド裏面2b側から表面2a側へ向けて略方形の形で皿状に窪む。凹み21には、その凹底211から表面2a側へ貫通する透孔23が複数(ここでは四個)設けられる。
上層パッド4は、軟質ポリウレタン発泡体で形成され、意匠面4a側に前記座面部分41が設けられる(
図4)。上層パッド4の内面4b側は芯パッド表面2aに接合し、さらに該内面4b側から意匠面4a側へ貫通するエア吹出孔45が複数(ここでは四個)設けられる。各エア吹出孔45が各透孔23に夫々導通するように配される。
下層パッド6は、非通気性発泡体で形成され、上面6a側が、配風流路uを形成するように前記凹み21の開口210を覆って、前記芯パッド2の裏面2bに接合する。下層パッド6には、下面6b側から上面6a側へエア導入孔61が貫通する。下層パッド上面6aと芯パッド裏面2bとの接合に伴い、エア導入孔61が下層パッド6の下面6b側から配風流路uと導通する。
芯パッド2と上層パッド4とは、
図3,
図4のごとく上層パッド4の軟質ポリウレタン発泡体が開孔29を潜って受面293外の芯パッド裏面2b側に露出した露出部分43が受面293で受け止められたり、芯パッド2の出っ張り部上端面28に載る上層パッド4が上端面28を巻き込む形になったりして、両者が接合一体化される。下層パッド6と芯パッド2とは、両面テープや接着剤を介在させて両者が接合一体化される。
【0023】
そして、芯パッド2と下層パッド6を形成する非通気性発泡体の見掛け密度が、上層パッド4の上層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも小さく設定されて、
図4,
図6,
図7に示す所望のクッションパッドPが出来上がっている。斯かるクッションパッドPに図示しない表皮を被せれば、車両用座席の座部側シートクッションが完成する。
ここで、芯パッド2及び下層パッド6の非通気性発泡体が発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体であると、より好適となる。軟質ポリウレタン発泡体に比し低コストで、独立気泡として且つ体積の大部分が気体である発泡ポリプロピレンや発泡スチロールの成形体は、軽量にして気密性があり、配風流路uから空調エアが漏れ出ないようにしなければならない芯パッド2及び下層パッド6に好都合となっている。
【0024】
さらに、
図8〜
図12に示す他態様のクッションパッドPでは、芯パッド2の裏面2b側に、凹み21の側壁212を担ってその凹底211よりも裏面2b側へ隆起して、凹み21を仕切る延在部分25が半島状に延出形成される。図示ごとくの延在部分25によって、芯材パッド裏面2b側で、方形に窪む比較的大きな凹み21は特開2011-110366号公報のダクトと同じような配風流路uを形成する凹溝へと変化し、各エア吹出孔45への空調エアの均等分配化に延在部分25が貢献する。延在部分25の裏面25bは平坦面に形成されている。
加えて、
図8,
図11のごとく、凹み21を囲む周縁部22の裏面22bが、芯パッド2の裏面2bから段差状に凹ませた一定幅の段差面261に形成され、且つ段差面261と延在部分25の裏面25bとが一様の平坦面に形成されている。
【0025】
また、
図8〜
図12のクッションパッドPでは、芯パッド2がその表面2a側で水平外方に張り出す張出部271が配される一方、裏面2b側に水平内方に引っ込む後退部272が配され、且つ上層パッド4が意匠面4a側から後退部272までを含めて覆っている。上層パッド4が張出部271を巻き込んで、芯パッド2と上層パッド4とを一体接合している。
他の構成は(1)クッションパッドの製造方法で述べた構成と同様で、その説明を省く。(1)で述べた符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0026】
(3)効果
このように構成した車両用クッションパッド及びその製造方法は、芯パッド2と上層パッド4と下層パッド6とを備えて、芯パッド2と下層パッド6とが、軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも見掛け密度が小の非通気性発泡体で形成されるので、軽量化が進む。それでいて、軟質ポリウレタン発泡体で構成された上層パッド4の意匠面4a側には座面部分41が設けられているので、クッション性等の快適性は確保される。
【0027】
そして、非通気性発泡体の下層パッド6,芯パッド2とで配風流路u,透孔23,エア導入孔61が形成され、且つ上層パッド4の発泡成形でエア吹出孔45が形成されるので、着座した乗員へ温度調整された空気を送り込むことができる。図示しない空調装置からエア導入孔61へ空調エアが送り込まれると、エア導入孔61から配風流路uを通って複数の各透孔23,各エア吹出孔45を通過して、座面410に着座する乗員の臀部や大腿部周りに快適な風を送り届ける。
芯パッド2の裏面2b側に配風流路用凹み21を設け、且つ該凹み21の凹底211から表面2a側へ貫通する透孔23を複数設けると共に、下層パッド6の上面6a側が配風流路uを形成するように凹み21の開口210を覆って芯パッド裏面2bに接合し、さらに下層パッド下面6b側から該配風流路u内へ貫通するエア導入孔61を設ける構成にすると、特許文献1のような下層が発泡スチロール等で形成されたクッションパッドにあっても、エア導入孔61を通って座面410からの空気送風が可能となる。配風流路u,透孔23,エア吹出孔45,エア導入孔61の形成によって、温度調整された空気の送風ができる。芯パッド2,上層パッド4,下層パッド6の三分割構成にすると、クッションパッドPの製造が比較的容易にして、該クッションパッドPを使用した座席に着座する乗員に温度調整された空気を送風できる。
その配風流路uは凹み21を設けた芯パッド2と下層パッド6との組合せ接合構成であるので、特開2011-110366号公報等で用いるダクトと違って低コスト作製でき、さらに芯パッド2付き上層パッド4の発泡成形で、凹み21内に発泡原料gが浸入しても容易に除去でき、歩留まりを落とさない。
【0028】
また、芯パッド2及び前記下層パッド6の非通気性発泡体が発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体であると、体積の大部分が気体で占める非通気性発泡体になり、クッションパッドPの軽量化が進み、且つ低コスト化が図れる。
【0029】
さらに、芯パッド2に凹み21を仕切る延在部分25が半島状に延出形成されると、下層パッド6の割れや損傷防止につながる。凹み21を覆う下層パッド6が、発泡ポリプロピレンや発泡スチロールの非通気性発泡体で造られるため、略方形に窪む形の凹み21に向けて少し大きな外力が加わると、下層パッド6が割れたり損傷したりする虞がある。凹み21内へ半島状に突き出し形成して、該凹み21を仕切る延在部分25が有り且つその裏面25bが平坦面であると、前記外力を延在部分25で受け止めて分散させるので、下層パッド6の割れや損傷防止に役立つ。凹み21内に延びる延在部分25の裏面25bが平坦面に形成されると、下層パッド6へ外力が加わった時、強度的に弱い発泡ポリプロピレンや発泡スチロールでできた下層パッド6にあっても、該平坦面の面で下層パッド6を受け止めて下層パッド6の割れや損傷を防ぐ。
さらにいえば、段差面261と延在部分25の裏面25とが一様の平坦面に形成されると、延在部分25に加え、段差面261とで外力を分散して受け止めることができ、下層パッド6の割れや損傷防止に一段と有効となる。延在部分25の裏面25と段差面261の双方で、外力をより分散させて受け止めるので、下層パッド6の割れや損傷をより確実に防止できる。
【0030】
加えて、芯パッド2の透孔23にピン92を挿通し、下型型面81側にピン92の先端を当接させて芯パッド2付き上層パッド4を発泡成形することで、透孔23に導通するエア吹出孔45を簡単に作製できる。しかも、突き出し長が長いピン92の存在で、脱型時に芯パッド2付き上層パッド4が上型9に付いて型が開くので、発泡型7からの芯パッド2付き上層パッド4の取出しが楽になり、作業性向上につながる。
かくのごとく、車両用クッションパッドP及びその製造方法は、軽量化,低コスト化を実現しながら、座面部分41は従来通りの快適なクッション性を損なわず、且つクッションパッド内部に配風流路u,エア導入孔61,透孔23,エア吹出孔45等を設けて、着座する乗員に向けて温度調整された空気の送風ができるなど、普及車仕様等のクッションパッドPに極めて有益となる。
【0031】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。クッションパッドP,芯パッド2,凹み21,透孔23,延在部分25,上層パッド4,エア吹出孔45,下層パッド6,発泡型7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。