特許第6643965号(P6643965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643965充填材用モルタル混練物及び添加剤並びに中詰注入充填工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643965
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】充填材用モルタル混練物及び添加剤並びに中詰注入充填工法
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20200130BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20200130BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20200130BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20200130BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20200130BHJP
   C04B 24/10 20060101ALI20200130BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20200130BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C04B24/26 E
   C04B28/04
   C04B14/28
   C04B22/08 B
   C04B24/06 A
   C04B24/10
   E21D11/10 C
   E04G21/02 103Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-197070(P2016-197070)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-58724(P2018-58724A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】593132814
【氏名又は名称】キザイテクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515150265
【氏名又は名称】ジーシーピー・アプライド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】近藤 賢
(72)【発明者】
【氏名】石田 周平
(72)【発明者】
【氏名】川合 諭志
(72)【発明者】
【氏名】松本 光善
(72)【発明者】
【氏名】小谷田 秀雄
【審査官】 西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−166973(JP,A)
【文献】 特開平09−241058(JP,A)
【文献】 特開2004−300008(JP,A)
【文献】 特開2009−001446(JP,A)
【文献】 特開2008−184353(JP,A)
【文献】 特開2009−150130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
E21D 10/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E04G 21/00−21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント100重量部と炭酸カルシウム成分が30重量%以上である微粒子混和材40〜200重量部とを含有し、4週経過の圧縮強度が21N/mm以上である充填材用モルタル混練物に用いる添加剤であって、ポリカルボン酸化合物10〜50重量%、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、またはその混合物40〜80重量%、オキシカルボン酸化合物又は糖化合物0〜20重量%の比率で構成される有効固形成分を、20〜45重量%の全固形分濃度で含有する水溶液であることを特徴とする添加剤。
【請求項2】
オキシカルボン酸化合物又は糖化合物の比率が5〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
セメント100重量部、炭酸カルシウム成分が30重量%以上である微粒子混和材40〜200重量部、水50〜100重量部、及び請求項1又は2に記載の添加剤0.5〜5重量部を含有する充填材用モルタル混練物。
【請求項4】
請求項に記載の充填材用モルタル混練物を、既設水路、シールド内及びずい道内の施工個所までポンプ圧送し注入充填することを特徴とする中詰注入充填工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工事一次覆工完了後、二次覆工としてプラスチックセグメントを設置した部分の間隙や、既設の隧道、3面張水路、その他管路の補強、補修工事において、レジンコンクリートパネルや二次製品のパイプ等を設置した部分の間隙を中詰め充填する場合に、必要な圧縮強度を保有し、長距離圧送に優れた充填材(グラウト材)として用いる高強度微粒子モルタル混練物及びその注入工法に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般的に水路補修をレジンコンクリートパネル等の材料を使用する工法は、既設水路と補修材との間隙にはエポキシ樹脂系の接着剤を注入する接着工法や、無収縮モルタルを注入するアンカー工法で行われている。このアンカー工法における充填材(グラウト材)である無収縮モルタルは高い強度を発現し、かつモルタル自体の収縮もなく間隙部分に隙間なく充填できれば補修工事としての目的が達成できる。しかし、従来から用いられているモルタルでは、混練後約30分程度で硬化が始まるため、施工個所において混練し、充填を行わなければならなかった。また、細砂等の細骨材が用いられており、充填性も十分なものではなかった。
【0003】
一方、現在の日本においては様々なインフラが寿命を迎えつつあり、補強、補修が急務である。そして、その規模は一つの管渠をとっても延長が長く、また、建設された当時とは異なり、新設工事でなく補修工事に関しては施工できる作業ヤード等は限られており、いかに効率よく作業できるかが問われている。
【0004】
このような状況下で、補強補修工事を効率よく行うには、既設水路と補修材の間隙に充填する材料を、坑内ではなく坑外にて製造し、ついで、ポンプ等により圧送し、所定の場所で充填できることが必要となる。この場合、充填材に求められるのは所定の強度を発現できること、一定時間硬化せずポンプ圧送が可能な流動性を有すること、ブリージングをおこさず、体積減少がほとんどないことである。すなわち、充填材用モルタル混練物に求められる特性としては、所定の硬化後強度(一般的には、一軸圧縮強度試験において4週強度が21N/mm2以上)が得られるセメント量としても、モルタルの流動性が確保され、長距離のポンプ圧送が可能でありかつブリージングを起こすことなく、適切な硬化開始時間と硬化速度を有し、ポンプ圧送中は硬化を開始することなく、注入充填後は速やかに硬化を開始することが求められる。
【0005】
これまでに、強度を発現し、流動性を維持し、ブリージングを起こさない各種のセメント組成物に使用される各種の混和材や添加剤が提案されている。特許文献1には、ジェットグラウト工法用地盤改良セメント組成物の添加剤として、オレフィンと無水マレイン酸と共重合物のアルカリ加水分解物と亜硝酸ナトリウムなどのナトリウム塩とさらにオキシカルボン酸系化合物の各成分から成る添加剤が示されている。この添加剤は、セメントミルクと掘削した土壌との均一混合性を促し、スライムの流動性を向上させ、注入率を下げ建築汚泥の発生量減らし、さらに早期強度を確保することを同時に確保する地盤改良用セメント組成物に向けたものであり(特許文献1、段落[0004]参照)、上記した充填材として求められる特性を満たすものではない。
【0006】
また、特許文献2には、セメント、ポラゾン質微粉末、水、減水剤(ポリカルボン酸系他)及びカルシウム塩(亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等)からなるセメントスラリーが提案されている。この文献のセメントスラリーは凝結が遅延して、生産性の低下を招かないように、流動性が高く、かつ比較的硬化速度が大きく、その上で圧縮強度100MPaを超える超高強度を発現するセメントスラリーとして提供されているものである。ポラゾン質微粉末添加によるマイクロフィラー効果とセメント分散効果を生じさせ、スラリーの流動性が向上すると共に、硬化後には、硬化体を緻密化させ、圧縮強度の向上を図るものであり(特許文献2、段落[0008]参照)、さらに強度を高めるために粒状の骨材や金属繊維や有機質繊維を配合することが好ましいとされている。さらに、特許文献3にはセメント、特定の比表面積の微粉末及び無機粉末、アルカリ土類金属塩、細骨材、減水剤水を含むセメント組成物が提案されている。ここではアルカリ土類金属は硝酸カルシウム及び/又は亜硝酸カルシウムであり、減水剤はポリカルボン酸エーテル系高性能減水剤を用いて、高流動性を維持しつつ、特許文献2と同様に、圧縮強度が100N/mm2(MPa)以上となる超高強度を発現させるために、これらの各材料の配合割合を特定とすることにより実現するものであり(特許文献3、段落[0007]参照)、同様に超高強度を目的とし、硬化後の強度をより高めるために、金属繊維や有機質繊維を加える態様も示されている(特許文献3、段落[0016])。このように特許文献2、3に示されるセメント組成物では、硬化体の強度には優れるものの、間隙や割目への注入を目的とする充填材としては必ずしも適しているものではない。
【0007】
特許文献4には、コンクリート舗装用のセメント組成物として、各種のセメントに亜硝酸カルシウム、ポリカルボン酸系減水剤及びメラミン系減水剤を含むセメント組成物が示され、使用時間経過後の急硬化性を維持しつつ、硬化前における優れた流動性、硬化後の優れた強度有するセメント組成物が示されている。しかしながら、本セメント組成物は必ずしも充填材として、優れた作業性と硬化後の物性値を実現するものではなかった。さらに、特許文献5にも、舗装用のセメント組成物が示され、ポルトランドセメントと、ポリカルボン酸系混和剤と、硝酸カルシウム及び亜硝酸カルシウムの少なくとも一方とを含むセメント組成物が示され、流動性を比較的長く維持でき、かつ比較的短時間で実用強度が得られるセメント硬化体を低コストで得られるセメント組成物の提案がなされている。これらのセメント組成物は、舗装用としては硬化前の流動性と適度の硬化速度を持つセメント組成物ではあるが、充填材としては十分な特性を持つものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−92016号公報
【特許文献2】特開2002−37653号公報
【特許文献3】特開2010−228953号公報
【特許文献4】特開2010−285338号公報
【特許文献5】特開2013−67536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
充填材用モルタル混練物において、混練物の硬化体が所定の強度(例えば、一軸圧縮強度試験において4週強度が21N/mm2以上)を得るために、単位セメント量を増加することが行われるが、セメントの使用量の増加はモルタル粘度の上昇となり、ポンプ圧送が難しくなる。一方、ポンプ圧送を容易にするために、水/セメント比(W/C)を大きくして、単位水量を増加させると、ブリージングを起こしやすくなる。また、既設水路、シールド内、隧道内のコンクリート覆工や補強補修工事における裏込めや中詰の注入充填工法に用いられる充填材用モルタル混練物には、混練後の一定時間は長距離ポンプ圧送が可能な流動性を維持し、一定時間経過後には適切な硬化速度を持ち、硬化体は所定の強度を有し、かつ体積減少がほとんどないことが要求される。
【0010】
従って、本発明における課題は、上記の注入充填工法に用いられる充填材用モルタル混練物として要求される特性である混練物の長距離ポンプ圧送可能な流動特性と適切な硬化速度を持ち、硬化体は所定の強度を有し、体積減少がほとんどない充填材用モルタル混練物を得るための添加剤とモルタル混練物の提供及び注入充填工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の添加剤は、セメント100重量部と炭酸カルシウム成分が30重量%以上である微粒子混和材40〜200重量部とを含有する充填材用モルタル混練物に用いる添加剤であって、ポリカルボン酸化合物10〜50重量%、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、またはその混合物40〜80重量%、オキシカルボン酸化合物又は糖化合物0〜20重量%の比率で構成される有効固形成分を、20〜45重量%の全固形分濃度で含有する水溶液であることを特徴とする。
【0012】
上記の通り、本発明の添加剤は、ポリカルボン酸化合物、硝酸カルシウムと亜硝酸カルシウムのいずれか又はその両者、及び必要に応じて加えられるオキシカルボン酸又は糖化合物を一液に調合して水溶液としたものであり、セメントと上記の微粒子混和材とを混練してモルタル混練物とするのに用いられる添加剤である。
【0013】
そして、本発明において提供される充填材用モルタル混練物は、セメント100重量部、炭酸カルシウム成分が30重量%以上である微粒子混和材40〜200重量部、水50〜100重量部、及び上記に記載の添加剤0.5〜5重量部を含有する。そして、本発明の充填材用モルタル混練物の製造方法は、グラウトミキサーに水50〜100重量部に請求項1に記載の添加剤0.5〜5重量部を投入し、撹拌混合した後、セメント100重量部と炭酸カルシウム成分が30重量%以上である微粒子混和材40〜200重量部とを投入し、撹拌混練することが好ましいが、必要に応じて投入順序を変えて撹拌混合することもできる。
【0014】
そして、本発明では、上記の充填材用モルタル混練物を、既設水路、シールド内及び隧道内の施工個所までポンプ圧送し注入充填することを特徴とする注入充填工法も提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の添加剤を使用した充填材用モルタル混練物は、炭酸カルシウム成分が30重量%以上である微粒子混和材を用いることにより、セメントの使用量を極力減らすことができ、長距離ポンプ圧送を実現している。そして、添加剤の成分である硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、またはその混合物である水溶性カルシウム塩が炭酸カルシウムを主成分とする微粒子混和材との相互反応により、セメントの使用量を増加させるのと同様の強度発現効果を示すものである。この水溶性カルシウム塩はセメントの凝結促進効果もあり、本発明のモルタル混練物において、炭酸カルシウムを主成分とする微粒子混和材と共にカルシウムイオンを過飽和状態となし、セメント水和物の結晶成長を促進させ、その結果、モルタル混練物の硬化反応を促進する。この硬化反応の促進は、混練した後の一定時間経過後に急速な硬化速度が得られるだけでなく、セメント水和物の結晶成長促進により、結合材であるセメントの使用量を増加させたのと同様な効果も発現し、セメントの単位セメント量を増加させることなく、硬化体の圧縮強度の増加も実現することができ、さらに、硬化体の体積減少がほとんどなく、充填材用として好ましいモルタル混練物となる。
【0016】
また、添加剤中にポリカルボン酸化合物を添加することで、水/セメント比(W/C)の値を低くしてもセメント粒子の分散性を維持して、流動性を向上させ、ブリージング抑制に効力を発揮し、フレッシュモルタル状態の性状を必要時間維持し、長距離ポンプ圧送を実現することができる。さらに、必要に応じて加えられるオキシカルボン酸又は糖化合物は、凝結遅延剤として働き、フレッシュモルタル状態の性状を維持する時間を調整でき、上記の水溶性カルシウム塩と併用し、前記の配合割合の範囲内で配合比を調整することで、流動性を維持する必要時間を適切に調整することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の添加剤は、上記のように効果を示す各成分を一液に配合し、現場の状況に合わせたオールインワンの添加剤としているため、現場で簡単に使用でき、作業の効率化に寄与する添加剤とすることができる。すなわち、モルタル混練物の流動特性や硬化特性に対する要求値は常に一定でなく、施工条件によって要求される特性が変化するが、本発明の添加剤は、ポリカルボン酸化合物、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、またはその混合物、及び必要に応じて加えられるオキシカルボン酸化合物又は糖化合物で構成される有効固形成分を含有する水溶液としているため、それぞれの各有効固形成分の比率を前記した範囲内で変化させた添加剤を容易に調合することができ、様々の施工条件下での対応が可能となるモルタル特性が得られる各種タイプの添加剤とすることができ、施工条件を加味してタイプを選択し、現場で簡単に使用することができる添加剤となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】モルタル混練物の混練圧送プラントの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
本発明の添加剤は、セメント100重量部と炭酸カルシウム成分が30重量%以上である微粒子混和材40〜200重量部とを含有する充填材用モルタル混練物に用いられる添加剤であって、ポリカルボン酸化合物10〜50重量%、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、またはその混合物40〜80重量%、オキシカルボン酸化合物又は糖化合物0〜20重量%の比率で構成される有効固形成分を、20〜45重量%の全固形分濃度で含有する水溶液である。さらに、これらの有効固形成分に加えて、必要に応じてモルタル混練物の空気量調整剤として消泡剤や空気連行剤添加してもよい。
【0021】
前記のモルタル混練物において、微粒子混和材の含有量が、セメント100重量部に対して40重量部未満では、モルタル粘度の上昇となり、ポンプ圧送が難しくなる。また200重量部を超える含有量ではセメントの結合材としての作用効果が限定され、強度発現効果が少なくなり、添加剤によってそれらの作用を補うことが難しくなる。
【0022】
添加剤の有効固形成分の構成比率の範囲は前記したとおりであり、その範囲を逸脱した場合には、各成分の比率を調整しても、モルタル混練物の好ましい特性であるフレッシュモルタルの流動性を維持しつつブリージングを抑制し、一定時間経過後(本発明の添加剤では3時間以上流動性の維持が可能)には、一気の硬化促進作用を発揮し、強度の優れた硬化体を得る添加剤とすることが難しくなる。また、有効固形成分濃度が20重量%未満では、モルタル混練物への添加量が多くなり、45重量%を超える濃度では、有効成分の種類によっては一液タイプの水溶液とするのが難しくなることがある。
【0023】
本発明のセメントはJIS R 5210〜5213に規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントであり、特に各種のポルトランドセメントが好ましく用いられる。微粒子混和材は炭酸カルシウム成分を30重量%以上含有する微粉末であり、天然鉱物である石灰石を乾燥粉砕して得られる。この微粒子混和材は微粉末状であれば使用することができ、粒度は特に限定されるものではないが平均粒子径50μm以下のものが好ましく使用される。そして、比表面積が3000〜8000cm2/gとなるように粒度を調整した微粉末が好ましい。また必要に応じてフライアッシュやスラグ微粉末なども併用することができる。
【0024】
前記のポリカルボン酸化合物は、化学混和剤のポリカルボン酸系減水剤として市販されている製品に用いられる化合物であり、側鎖にポリエチレンオキシドを有する櫛形高分子化合物である。オキシカルボン酸化合物は水酸基を有するカルボン酸化合物であり、グルコン酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸及びこれらの水溶性塩などが挙げられる。糖化合物としては、ブドウ糖、果糖、しょ糖、乳糖、麦芽糖などが挙げられる。
【0025】
本発明の添加剤は、前記した比率で構成される有効固形成分が20〜45重量%の固形成分濃度となるように溶解して一液タイプの水溶液としたものである。効率の良い充填材用モルタル混練物に添加する方法としては、先ずグラウトミキサーに水50〜100重量部と添加剤0.5〜5重量部とを投入し、撹拌混合し、その後、微粒子混和材40〜200重量部、セメント100重量部の順に投入し、混練を行うことが好ましいが、必要に応じて投入順序を変えて撹拌混合することもできる。混練は使用するミキサーにもよるが、全材料投入後5分程度の撹拌混練を行い、モルタル混練物とする。そして、このモルタル混練物を注入充填個所までグラウトポンプにて長距離圧送を行い、注入充填作業を行うことができる。
【実施例】
【0026】
以下本発明をさらに具体的に説明するために、実施例を示す。図1に示すモルタル混練圧送プラントにおいて、後記する表1および表2に示した各実施例の配合に基づき各々計量されたモルタル1m3当たりの水、添加剤、微粒子混和材(高流動用MPグラウト)、セメント(普通ポルトランドセメント)を順次グラウトミキサー1に投入し、5分程度撹拌混練してモルタル混練物を製造する。製造されたモルタル混練物をプランジャー式の元押しグラウトポンプ2にて圧送し、施工個所に設けた注入口まで圧送し、注入口よりモルタル混練物を注入し、所定の間隙を充填閉塞して、固結させて中詰充填を行う。また、圧送延長が長距離の場合はさらにシールド内や隧道内の中間地点に設置された中継グラウトポンプ3を介して施工個所に設けた注入口まで圧送し、注入口よりモルタル混練物を注入し、所定の間隙を充填閉塞して、固結させて中詰充填を行う。
用いた微粒子混和材
石灰石粉末 「高流動用MPグラウト」(キザイテクト社製)
比重 2.7 比表面積 5000cm2/g
【0027】
(実施例1)
上記のようにして製造したモルタル混練物の圧送試験として、φ50mm、長さ2800mの圧送管を用い、中継グラウトポンプ3を1400mの地点に設置して、圧送を行った。モルタル混練物の配合は表1に示す配合で行い、水セメント比W/Cは84.1%であり、セメントと微粒子混和材に重量比は1:1.48である。添加剤は表1に示す範囲の構成比で有効固形成分を変動させたものを用いた。
【0028】
【表1】
【0029】
スラリーを製造してから、混練槽内で10分程度穏やかに撹拌した後に、モルタル混練物の圧送を開始し、1200m地点までは、0.1〜1.9MPa程度の圧力で、注入速度100リットル/分を維持し、その後、1400m地点に到着後、元押しグラウトポンプ2及び中継グラウトポンプ3にて、0.2〜1.6MPa程度の圧力で、注入速度60リットル/分を維持して注入を継続した。圧送開始後3時間を経過しても、モルタル混練物の流動性は確保されているのを確認した。この実施例1のモルタル混練物が固結した硬化体の体積減少はほとんど見られず、間隙を完全に充填しており、さらに4週経過の圧縮強度は21N/mm2以上を保持していることも確認できた。
【0030】
(実施例2)
モルタル混練物の配合を表2に示す配合で行う外は、実施例1と同様にモルタル混練物の製造と圧送試験を中継グラウトポンプを使用しないで1400m行った。その結果、実施例1と同様に、圧送開始後3時間を経過しても、モルタル混練物の流動性が確保されているのを確認した。また、実施例2のモルタル混練物が固結した硬化体の体積減少はほとんど見られず、間隙を完全に充填しており、さらに4週経過の圧縮強度は30N/mm2以上を保持していた。
【0031】
【表2】
【0032】
(実施例3)
表1に示されるモルタル混練物の配合において、添加剤の有効固形成分としてオキシカルボン酸化合物や糖化合物を構成成分として加えない添加剤を用いる他は、同様の配合物とし、実施例1と同様にして、モルタル混練物の製造と圧送試験を行った。その結果、モルタル混練物の流動性は1.5時間経過するまで確保されていることが確認でき、固結した硬化体の特性は実施例1と同じであった。
【符号の説明】
【0033】
1 グラウトミキサー
2 元押しグラウトポンプ
3 中継グラウトポンプ
5 元押しポンプ用流量計
6 中継ポンプ用流量計
図1