特許第6643971号(P6643971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643971エンジン制御装置およびエンジン制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643971
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】エンジン制御装置およびエンジン制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20200130BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20200130BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20200130BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   F02D29/02 321A
   F02D17/00 Q
   F02D41/04
   F02D43/00 301K
   F02D43/00 301A
   F02D43/00 301H
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-232801(P2016-232801)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-91159(P2018-91159A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】養畑 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】小山 和哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕介
【審査官】 平井 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225289(JP,A)
【文献】 特開2010−248998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00−29/06
F02D 41/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の停止条件が成立した場合にエンジンを停止させ、前記停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動させる停止・再始動制御部と、
前記停止条件の成立後、前記エンジンのスロットル弁の開度をアイドル開度よりも大きい第1スロットル開度に制御した後に、前記アイドル開度よりも小さい第2スロットル開度に制御するスロットル開度制御部と
を備え
前記スロットル開度制御部は、
前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル開度に制御する前に、前記アイドル開度以下の初期スロットル開度に制御すること
を特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジンの吸気管圧を検出する吸気管圧検出部
を備え、
前記スロットル開度制御部は、
前記吸気管圧検出部によって検出された前記吸気管圧に基づき、前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル開度から前記第2スロットル開度へ制御すること
を特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記スロットル開度制御部は、
前記吸気管圧が目標吸気管圧に到達して前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル開度から前記第2スロットル開度へ制御した後、前記吸気管圧が前記目標吸気管圧を維持するように前記スロットル弁の開度を制御すること
を特徴とする請求項に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記スロットル開度制御部は、
前記再始動条件が成立した場合、前記スロットル弁の開度を前記第2スロットル開度よりも大きい第3スロットル開度に制御すること
を特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
所定の停止条件が成立した場合にエンジンを停止させ、前記停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動させる停止・再始動制御工程と、
前記停止条件の成立後、前記エンジンのスロットル弁の開度をアイドル開度よりも大きい第1スロットル開度に制御した後に、前記アイドル開度よりも小さい第2スロットル開度に制御するスロットル開度制御工程
を含み、
前記スロットル開度制御工程は、
前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル開度に制御する前に、前記アイドル開度以下の初期スロットル開度に制御すること
を特徴とするエンジン制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置およびエンジン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の停止条件が成立した場合にエンジンを停止させ、その後に所定の再始動条件が成立した場合にエンジンを再始動させる、所謂アイドリングストップ制御を行うエンジン制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
かかるエンジン制御装置においては、例えば赤信号等によって車両が一時的に停車している間のみエンジンを停止状態とすることで、燃料の消費量や排気ガスの排出などを抑制することができる。なお、上記したエンジン制御装置にあっては、停止条件の成立後、スロットル弁を全閉状態に制御することで、エンジンの停止過程で発生する振動を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、運転者の運転操作によっては、例えば停止条件が成立してからエンジンが完全に停止するまでの間に、再始動条件が成立する場合がある。かかる場合、上記した従来技術にあっては、停止条件の成立後にスロットル弁を全閉状態としていることから、再始動に必要な空気量を確保できず、再始動できないおそれがあった。このように、従来技術には、停止条件成立後におけるエンジンの再始動性の向上という点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、停止条件成立後におけるエンジンの再始動性を向上させることができるエンジン制御装置およびエンジン制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、エンジン制御装置において、停止・再始動制御部と、スロットル開度制御部とを備える。停止・再始動制御部は、所定の停止条件が成立した場合にエンジンを停止させ、前記停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動させる。スロットル開度制御部は、前記停止条件の成立後、前記エンジンのスロットル弁の開度をアイドル開度よりも大きい第1スロットル開度に制御した後に、前記アイドル開度よりも小さい第2スロットル開度に制御する。また、前記スロットル開度制御部は、前記スロットル弁の開度を前記第1スロットル開度に制御する前に、前記アイドル開度以下の初期スロットル開度に制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、停止条件成立後におけるエンジンの再始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係るエンジン制御方法の概要を示す図である。
図2図2は、エンジン制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、スロットル開度制御部が行うスロットル開度制御を示すタイミングチャートである。
図4図4は、エンジン制御装置が実行するアイドリングストップ制御における、スロットル開度制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係るエンジン制御装置の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、第2の実施形態に係るエンジン制御装置が実行するアイドリングストップ制御における、スロットル開度制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するエンジン制御装置およびエンジン制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
<1.エンジン制御装置によるエンジン制御方法の概要>
以下では先ず、第1の実施形態に係るエンジン制御方法の概要について図1を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係るエンジン制御方法の概要を示す図である。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態に係るエンジン制御方法は、例えばエンジン制御装置40によって実行される。以下、具体的に説明すると、エンジン制御装置40は、エンジン1の全体を制御する。
【0013】
エンジン1は、例えば4ストローク1サイクルの火花点火型の多気筒内燃機関であり、自動車などの図示しない車両に搭載される。なお、上記したエンジン1の種類は、例示であって限定されるものではなく、単気筒内燃機関などその他の種類の内燃機関であってもよい。
【0014】
エンジン1は、気筒10と、ピストン11と、クランクシャフト12と、スタータ13と、燃料噴射弁14と、点火プラグ15と、吸気管16と、排気管17と、スロットル装置20とを備える。なお、エンジン1は多気筒内燃機関であるため、気筒10は複数(例えば4つ)あるが、図1では1つのみ示している。
【0015】
気筒10は、シリンダブロック10aと、シリンダヘッド10bとを備える。シリンダブロック10aの内部には、ピストン11が上下移動自在に配置される。また、シリンダブロック10aの下部には図示しないクランクケースが設けられ、クランクケースの内部にはクランクシャフト12が回転自在に支持される。クランクシャフト12は、上記したピストン11とコネクティングロッド30を介して連結される。
【0016】
クランクシャフト12には、スタータ13が接続される。スタータ13は、スタータモータ13aを備え、かかるスタータモータ13aの回転力をギヤ(図示せず)を介してクランクシャフト12へ伝達し、クランクシャフト12を回転させることで、エンジン1を始動させる。なお、スタータ13は、エンジン1が完全に停止している場合に作動してエンジン1を始動させるが、これについては後述する。
【0017】
シリンダヘッド10bは、シリンダブロック10aの上部に締結固定される。そして、シリンダブロック10aの内壁面とシリンダヘッド10bの下面とピストン11の上面(頂面)との間に、燃焼室31が形成される。
【0018】
シリンダヘッド10bにおいて燃焼室31を臨む位置には、吸気ポート10b1および排気ポート10b2が形成される。吸気ポート10b1には吸気弁32が、排気ポート10b2には排気弁33がそれぞれ軸方向に沿って移動自在に設けられる。従って、吸気弁32および排気弁33は、所定のタイミングで移動することで、吸気ポート10b1および排気ポート10b2を開閉し、吸気ポート10b1と燃焼室31、排気ポート10b2と燃焼室31とをそれぞれ連通することができる。
【0019】
燃料噴射弁14および点火プラグ15は、シリンダヘッド10bにおいて燃焼室31を臨む位置に取り付けられる。燃料噴射弁14は、図示しない燃料タンクに接続され、かかる燃料タンクから供給された燃料を燃焼室31に直接噴射する。点火プラグ15は、燃焼室31内の燃料を含む混合気を着火させて燃焼させる。なお、燃料としては、例えばガソリンを用いることができるが、これに限られずアルコール燃料などその他の燃料であってもよい。
【0020】
吸気管16は、シリンダヘッド10bの吸気ポート10b1に連結される。また、排気管17は、排気ポート10b2に連結される。
【0021】
スロットル装置20は、吸気管16に設けられる。スロットル装置20は、電子制御式スロットル装置であり、スロットル弁21と、スロットルモータ22とを備える。スロットル弁21は、吸気管16の流路に開閉駆動自在に設けられ、開閉駆動することで、吸気管16を流れる空気の量を調節する。スロットルモータ22は、スロットル弁21に接続されてスロットル弁21を開閉駆動させる。
【0022】
上記したスロットル装置20や燃料噴射弁14、点火プラグ15等は、エンジン制御装置40により制御され、よってエンジン1において、吸気、圧縮、膨張および排気の各行程からなる燃焼サイクルが行われる。
【0023】
すなわち、吸気工程では、スロットル弁21で調量された空気が吸気管16から吸気ポート10b1へ流れ、吸気弁32が開弁されたときに燃焼室31へ流入する。また、吸気工程から圧縮工程の間に、燃料が燃料噴射弁14から燃焼室31へ噴射されて混合気が形成される。混合気は、膨張行程において点火プラグ15によって点火されて燃焼し、ピストン11を駆動してクランクシャフト12を回転させた後、排気工程において排気弁33が開弁されたときに排気ポート10b2および排気管17を通ってエンジン1の外部へ放出される。
【0024】
上記したエンジン制御装置40は、アイドリングストップ制御を実行することができる。詳しくは、エンジン制御装置40は、例えば赤信号等で運転者によるブレーキ操作がなされ、車両が一時的に停車していることを示す所定の停止条件が成立した場合、エンジン1を停止させる。
【0025】
具体的には、エンジン制御装置40は、燃料噴射弁14からの燃料の供給を停止させる燃料カットを行ったり、点火プラグ15による点火を中止させたりしてエンジン1を停止させる。これにより、エンジン1の回転数は徐々に低下していき、やがてゼロとなってエンジン1は完全停止する。
【0026】
続いて、エンジン制御装置40は、例えば運転者によるブレーキ操作が解除されたり、アクセル操作がなされたりしたことを示す所定の再始動条件が成立した場合、上記したスタータ13を作動させつつ、燃料の供給や点火を再開してエンジン1を再始動させる。このようなアイドリングストップ制御により、燃料の消費量や排気ガスの排出などを抑制することができる。
【0027】
ところで、運転者の運転操作によっては、停止条件が成立してからエンジンが完全停止するまでの間に、再始動条件が成立することがある。例えば、エンジン1が完全停止する前、すなわちエンジン1の極低回転時に、ブレーキ操作の解除等がなされて再始動条件が成立する場合がある。
【0028】
上記したスタータ13にあっては、エンジン1が回転していると、スタータモータ13a側のギヤがクランクシャフト12側のギヤに弾かれてしまうため、クランクシャフト12に接続できず、エンジン1を再始動させることは難しい。
【0029】
そのため、本実施形態に係るエンジン制御装置40にあっては、エンジン1が完全停止する前の極低回転時に再始動条件が成立した場合、例えば膨張行程にある気筒10に対して、燃料の供給および点火を再開することで、スタータ13を用いずに、エンジン1を自立的に再始動させるようにしている。これにより、再始動条件成立後において、エンジン1の完全停止を待たずに、エンジン1を早期に再始動させることが可能となる。なお、以下では、上記したエンジン1の自立的な再始動を「自立再始動」と記載する場合がある。
【0030】
しかしながら、従来技術においては、停止条件が成立した後にスロットル弁21を全閉状態にすることで、エンジン回転数の変動を抑え、よってエンジン停止過程で発生する振動を抑制している。このように、従来技術にあっては、スロットル弁21を全閉状態としているため、例えば自立再始動させる際、膨張行程にある気筒10において燃焼に必要な空気量を確保できず、エンジン1を再始動できないおそれがあった。
【0031】
そこで、本実施形態に係るエンジン制御装置40およびエンジン制御方法にあっては、スロットル弁21を適切に制御することで、停止条件成立後におけるエンジン1の再始動性を向上させるようにした。
【0032】
具体的には、エンジン制御装置40は先ず、所定の停止条件が成立したか否かを判定する。なお、ここでは停止条件が成立したと判定されるものとする(図1のステップS1)。エンジン制御装置40は、停止条件の成立に伴って燃料カット等を行い、これによってエンジン1の回転数は徐々に低下することとなる。
【0033】
続いて、エンジン制御装置40は、自立再始動が行われる場合に備える。具体的には、エンジン制御装置40は、スロットル弁21を第1スロットル開度θ1まで開弁する(ステップS2)。なお、第1スロットル開度θ1は、例えばアイドル開度θiよりも大きい値に設定される。
【0034】
このとき、エンジン1は、完全停止前でまだ低速で回転している状態であるため、上記したスロットル弁21の開弁によって、エンジン1における吸気管16の吸気管圧が上昇し、気筒10には自立再始動時の燃焼に必要な空気が流入するようになる。このように、エンジン制御装置40は、自立再始動が行われる場合に備えて、エンジン1において燃焼に必要な空気量を確保しておく。
【0035】
燃焼に必要な空気量が確保されると、エンジン制御装置40は、スロットル弁21を第2スロットル開度θ2まで閉弁する(ステップS3)。なお、第2スロットル開度θ2は、例えばアイドル開度θiよりも小さい値に設定される。
【0036】
上記したスロットル弁21の閉弁によって、吸気管圧は、上昇が止まって一定または略一定となる。ここで例えば仮に、スロットル弁21を第1スロットル開度θ1で開弁した状態を継続すると、吸気管圧は上昇を続けて気筒10に流入する空気量が時間の経過に伴って変わり、停止過程においてエンジン1の回転数が比較的大きく変動して、振動が増加してしまう。
【0037】
これに対し、本実施形態では、スロットル弁21を第2スロットル開度θ2まで閉弁し、吸気管圧を一定にしたことから、気筒10に流入する空気量が変わり難くなって、エンジン1の回転数の変動を抑えることができ、結果として停止過程で発生する振動を抑制することができる。
【0038】
次に、エンジン制御装置40は、所定の再始動条件が成立したか否かを判定する。そして、エンジン制御装置40は、再始動条件が成立したタイミングに応じてエンジン1を適宜に再始動させる(ステップS4)。すなわち、再始動条件の成立タイミングが、エンジン1の完全停止後か完全停止前かに応じて、エンジン1を再始動させる手法を異ならせる。
【0039】
詳しくは、エンジン1が完全停止した後に再始動条件が成立した場合、エンジン制御装置40は、スタータ13を作動させてエンジン1を再始動させる。なお、エンジン制御装置40は、例えば再始動条件が成立した場合(あるいはエンジン1が完全停止した場合)、スロットル弁21を第2スロットル開度θ2よりも大きい第3スロットル開度θ3まで開弁するものとする。
【0040】
他方、エンジン1が完全停止する前に再始動条件が成立した場合、エンジン制御装置40は、膨張行程にある気筒10に対し、燃料の供給および点火を再開してエンジン1の自立再始動を行う。上記したように、エンジン1においては、燃焼に必要な空気量が確保されているため、膨張行程にある気筒10では即座に燃焼(爆発)が起こり、よってエンジン1を確実に自立再始動させることができる。
【0041】
このように、エンジン制御装置40にあっては、上記のようにスロットル弁21を制御することで、停止条件成立後におけるエンジン1の再始動性を向上させることができる。さらに、エンジン制御装置40にあっては、上記のようにスロットル弁21を制御することで、エンジン1の停止過程で発生する振動を抑制することもできる。すなわち、本実施形態においては、エンジン1の再始動性の向上と、停止過程時の振動の抑制とを両立させることができる。
【0042】
<2.エンジン制御装置の構成>
次に、エンジン制御装置40の構成について、図2を用いて説明する。図2は、エンジン制御装置40の構成例を示すブロック図である。なお、図2では、エンジン制御装置40が行うアイドリングストップ制御の説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0043】
図2に示すように、エンジン制御装置40には、センサ群70が接続される。センサ群70は、エンジン制御装置40を備えた車両に搭載され、アイドリングストップ制御に必要な情報を検出する各種のセンサを含む。
【0044】
例えば、センサ群70は、車速を検出する車速センサ、ブレーキ操作量を検出するブレーキセンサ、アクセル操作量を検出するアクセルセンサ、エンジン回転数検出や気筒判別に用いられるクランク角度を検出するクランク角センサ、シフトレバーのポジションを検出するシフトポジションセンサなどが含まれる。
【0045】
センサ群70は、各種のセンサで得られた車速やブレーキ操作量などを示す信号をエンジン制御装置40へ出力する。なお、センサ群70は、上記した各種のセンサの全てを含むことを要さず、一部であってもよい。また、上記したセンサの種類は、あくまでも例示であって限定されるものではなく、例えばハンドルの操舵角を検出する操舵角センサや車両の加速度を検出する加速度センサなど、その他の種類のセンサを含んでいてもよい。
【0046】
エンジン制御装置40は、制御部50と、記憶部60とを備える。制御部50は、停止・再始動制御部51と、スタータ制御部52と、噴射弁制御部53と、点火制御部54と、スロットル開度制御部55とを備える。なお、エンジン制御装置40は、例えばCPUなどを備えたマイクロコンピュータである。
【0047】
また、記憶部60は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部であり、停止条件情報61と、再始動条件情報62と、所定時間情報63とを記憶する。
【0048】
停止条件情報61には、所定の停止条件を示す情報、詳しくは、エンジン1を停止させてアイドリングストップ制御を開始する条件を示す情報が含まれる。停止条件情報61としては、例えば、車速がゼロで車両が停止している、エンジン回転数がアイドル回転数である、ブレーキ操作がなされている、アクセル操作がなされていないなど種々の条件が含まれる。
【0049】
再始動条件情報62には、所定の再始動条件を示す情報、詳しくは、停止または停止過程にあるエンジン1を再始動させてアイドリングストップ制御を終了する条件を示す情報が含まれる。再始動条件情報62には、例えば、ブレーキ操作が解除される、アクセル操作がなされる、シフトレバーがP(Parking)レンジまたはN(Neutral)レンジからD(Drive)レンジやR(Reverse)レンジへ切り替えられるなど種々の条件が含まれる。
【0050】
なお、上記では、停止条件情報61および再始動条件情報62に含まれる条件を具体的に記載したが、これらは例示であって限定されるものではなく、例えば車両の加速度、エンジン温度、外気温やエアコンの使用状態などその他の条件を含んでいてもよい。
【0051】
所定時間情報63には、所定時間t0,t1を示す情報が含まれる。所定時間t0は、スロットル弁21を後述する初期スロットル開度θ0で維持する時間である。また、所定時間t1は、スロットル弁21を第1スロットル開度θ1で維持する時間である。なお、これら所定時間t0,t1については、図3を用いて後述する。
【0052】
停止・再始動制御部51は、アイドリングストップ制御におけるエンジン1の停止および再始動の制御を行う。詳しくは、停止・再始動制御部51は、先ず停止条件情報61から所定の停止条件を取得する。そして、停止・再始動制御部51は、センサ群70から出力された車速などを示す信号に基づき、所定の停止条件が成立したか否かを判定する。
【0053】
なお、停止・再始動制御部51においては、上記した停止条件情報61に含まれる条件の全てを満たしている場合に停止条件が成立したと判定する必要はなく、一部を満たしている場合に停止条件が成立したと判定してもよい。ここでは、理解の便宜のため、車速がゼロで、エンジン回転数がアイドル回転数で、かつブレーキ操作がなされている場合に、停止条件が成立したと判定するものとする。
【0054】
停止・再始動制御部51は、所定の停止条件が成立したと判定された場合、エンジン1を停止させる。具体的には、停止・再始動制御部51は、エンジン1を停止させる指示を示す停止指示信号を、噴射弁制御部53、点火制御部54およびスロットル開度制御部55へ出力する。
【0055】
また、停止条件の成立後、停止・再始動制御部51は、所定の再始動条件が成立したか否かを判定する。詳しくは、停止・再始動制御部51は、再始動条件情報62から所定の再始動条件を取得する。そして、停止・再始動制御部51は、センサ群70からの出力信号に基づき、所定の再始動条件が成立したか否かを判定する。
【0056】
なお、停止・再始動制御部51においては、停止条件のときと同様、上記した再始動条件情報62に含まれる条件の全てを満たしていることを必要とせず、一部を満たしている場合に再始動条件が成立したと判定してもよい。ここでは、理解の便宜のため、ブレーキ操作が解除された場合に、再始動条件が成立したと判定するものとする。
【0057】
そして、停止・再始動制御部51は、所定の再始動条件が成立したと判定された場合、エンジン1を再始動させる。具体的には、停止・再始動制御部51は、エンジン1を再始動させる指示を示す再始動指示信号を、噴射弁制御部53、点火制御部54およびスロットル開度制御部55へ出力する。また、停止・再始動制御部51は、エンジン1の完全停止後に再始動条件が成立したと判定された場合、スタータ制御部52にも再始動指示信号を出力する。
【0058】
スタータ制御部52は、再始動指示信号が入力された場合、スタータ13を作動させる。噴射弁制御部53は、停止指示信号が入力された場合に燃料噴射弁14を制御して燃料供給の停止(燃料カット)を行う一方、再始動指示信号が入力された場合に燃料の供給を再開する。
【0059】
点火制御部54は、停止指示信号が入力された場合に点火プラグ15(正確には、点火プラグ15に接続されるイグニッションコイル)を制御して点火の中止を行う一方、再始動指示信号が入力された場合に点火を再開する。
【0060】
スロットル開度制御部55は、停止・再始動制御部51から出力された停止指示信号および再始動指示信号に基づいてスロットルモータ22を制御し、スロットル弁21のスロットル開度を制御する。
【0061】
ここで、スロットル開度制御部55によるスロットル開度制御について図3を参照しつつ説明する。図3は、スロットル開度制御部55が行うスロットル開度制御を示すタイミングチャートである。なお、図3においては、紙面の上から順に、エンジン回転数、吸気管圧およびスロットル開度を示している。
【0062】
図3に示すように、先ず、エンジン回転数はアイドル回転数NEi、吸気管圧は大気圧Patmよりも低い負圧の値P0、スロットル開度はアイドル開度θi(例えば5度)であるものとする。そして、時刻T1において停止条件が成立すると、上記した燃焼カット等が行われてエンジン回転数は徐々に低下する。
【0063】
スロットル開度制御部55は、時刻T1において、停止・再始動制御部51から停止指示信号が入力されると、スロットル開度を所定時間t0の間、初期スロットル開度θ0に制御する。初期スロットル開度θ0は、例えばアイドル開度θi以下の値(例えば3度)に設定される。これにより、エンジン1においてエンジン回転数が吹き上がることを防止することができる。
【0064】
すなわち、スロットル開度制御部55は、停止条件が成立した後、スロットル弁21を上記した第1スロットル開度θ1まで開弁して自立再始動が行われる場合に備えるが、停止条件成立直後に第1スロットル開度θ1まで開弁すると、燃料カットが間に合わずにエンジン回転数が吹き上がるおそれがある。
【0065】
そこで、本実施形態にあっては、スロットル開度を第1スロットル開度θ1に制御する前に、所定時間t0、初期スロットル開度θ0に制御する(閉弁する)ようにした。これにより、燃料カットが完了してから、スロットル弁21を第1スロットル開度θ1まで開弁することが可能となり、よって上記したエンジン回転数の吹き上がりを防止することができる。従って、上記した所定時間t0は、例えば、停止条件が成立してから燃料カットが完了するまでの時間に設定される。
【0066】
次に、スロットル開度が初期スロットル開度θ0に制御されてから所定時間t0が経過した時刻T2において、スロットル開度制御部55は、スロットル開度を初期スロットル開度θ0から第1スロットル開度θ1に制御する(開弁する)。かかる第1スロットル開度θ1は、上記したように、アイドル開度θiや初期スロットル開度θ0よりも大きい値に設定され、例えば20度に設定される。
【0067】
上記したようにスロットル弁21が開弁されると、時刻T2においてエンジン1はまだ回転しているため、吸気管圧は大気圧Patmに向けて上昇し、気筒10には比較的多くの空気が流入する。
【0068】
続いて、スロットル開度制御部55は、スロットル弁21を第1スロットル開度θ1で所定時間t1維持する。これにより、図3の時刻T2〜T3に示すように、吸気管圧は上昇を続け、気筒10において自立再始動時の燃焼に必要な空気を確保可能な値P1に到達する。従って、所定時間t1は、例えば実験などを通じ、吸気管圧が上記した値P1に到達するのに要すると推定される時間に設定される。
【0069】
スロットル開度が第1スロットル開度θ1に制御されてから所定時間t1が経過した時刻T3において、スロットル開度制御部55は、スロットル開度を第1スロットル開度θ1から第2スロットル開度θ2に制御する(閉弁する)。かかる第2スロットル開度θ2は、例えばスロットル弁21が全閉状態となるような値(例えば1〜2度)に設定されるが、これに限定されるものではなく、アイドル開度θiよりも小さい値であればどのような値であってもよい。
【0070】
スロットル弁21が閉弁されると、図3に閉曲線Aで示すように、吸気管圧は値P1付近で一定または略一定となる。このように、吸気管圧を一定または略一定にすることで、エンジン1の停止過程で発生する振動を抑制することができることは既に述べた。
【0071】
そして、エンジン1が完全停止する前の時刻T4において、再始動条件が成立すると、自立再始動が行われる。すなわち、膨張行程にある気筒10に対し、燃料の供給および点火が再開される。このとき、エンジン1においては、スロットル開度制御部55によるスロットル開度制御により、吸気管圧は値P1で一定であって燃焼に必要な空気量が確保されていることから、自立再始動が確実に行われ、よってエンジン回転数が上昇し始める。
【0072】
なお、図3においては二点鎖線で、停止条件成立後にスロットル弁21を全閉状態にする、従来技術のスロットル開度制御を示した。かかる従来技術では、吸気管圧が上昇し難いため、気筒10に空気が十分に流入せず、自立再始動時の燃焼に必要な空気を確保できないおそれがある。そのため、時刻T4で燃料供給および点火が再開されても、エンジン1が自立再始動されないことがある。
【0073】
本実施形態について説明を続ける。スロットル開度制御部55は、時刻T4において、停止・再始動制御部51から再始動指示信号が入力されると、スロットル開度を第2スロットル開度θ2から第3スロットル開度θ3に制御する(開弁する)。図3に示す例では、第3スロットル開度θ3は、アイドル開度θiと同じ値(例えば5度)に設定されるが、上記したように、第2スロットル開度θ2よりも大きい値であればどのような値であってもよい。
【0074】
これにより、エンジン1の自立再始動後において、燃焼に必要な空気量を十分に確保することができ、よって自立再始動したエンジン1の運転を確実に継続することができる。
【0075】
なお、スロットル開度制御部55は、再始動条件が成立した時点でスロットル開度を第3スロットル開度θ3に制御するが、これに限られない。すなわち、図3に一点鎖線で示すように、例えば、エンジン1が完全停止するまで再始動条件が成立しなかった場合、スロットル開度制御部55は、エンジン1が完全停止した時点(時刻T5)でスロットル開度を第3スロットル開度θ3に制御するようにしてもよい。これにより、エンジン1の完全停止後に再始動条件が成立した場合に、燃焼に必要な空気量を十分に確保することができ、よってエンジン1の再始動性をより一層向上させることができる。
【0076】
<3.第1の実施形態に係るエンジン制御装置の処理手順>
次に、エンジン制御装置40におけるスロットル開度制御の処理手順について図4を用いて説明する。図4は、エンジン制御装置40が実行するアイドリングストップ制御における、スロットル開度制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0077】
図4に示すように、エンジン制御装置40の制御部50は、所定の停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS10)。制御部50は、停止条件が成立していないと判定された場合(ステップS10,No)、そのまま処理を終了する。
【0078】
一方、制御部50は、停止条件が成立したと判定された場合(ステップS10,Yes)、スロットル開度を初期スロットル開度θ0に制御する(ステップS11)。次いで、制御部50は、スロットル開度を初期スロットル開度θ0に制御してから所定時間t0が経過したか否かを判定する(ステップS12)。
【0079】
制御部50は、所定時間t0が経過していないと判定された場合(ステップS12,No)、ステップS12の処理を繰り返す。一方、制御部50は、所定時間t0が経過したと判定された場合(ステップS12,Yes)、スロットル開度を第1スロットル開度θ1に制御して開弁する(ステップS13)。
【0080】
続いて、制御部50は、スロットル開度を第1スロットル開度θ1に制御してから所定時間t1が経過したか否かを判定する(ステップS14)。制御部50は、所定時間t1が経過していないと判定された場合(ステップS14,No)、ステップS14の処理を再度行う。他方、制御部50は、所定時間t1が経過したと判定された場合(ステップS14,Yes)、スロットル開度を第2スロットル開度θ2に制御して閉弁する(ステップS15)。
【0081】
次いで、制御部50は、再始動条件が成立したか否かを判定する(ステップS16)。制御部50は、再始動条件が成立していないと判定された場合(ステップS16,No))、エンジン1が完全停止したか否かを判定する(ステップS17)。
【0082】
制御部50は、エンジン1が完全停止したと判定されない場合(ステップS17,No)、ステップS16の処理に戻る。一方、制御部50は、再始動条件が成立したと判定された場合(ステップS16,Yes)、スロットル開度を第3スロットル開度θ3に制御する(ステップS18)。
【0083】
また、制御部50は、エンジン1が完全停止したと判定された場合(ステップS17,Yes)、すなわち、エンジン1が完全停止するまでに再始動条件が成立しなかった場合、ステップS18に進んで、スロットル開度を第3スロットル開度θ3に制御する。
【0084】
なお、図4に示す例では、制御部50は、エンジン回転数に基づいてエンジン1が完全停止したと判定された場合にスロットル開度を第3スロットル開度θ3に制御するが、これに限定されるものではない。すなわち、スロットル開度を第3スロットル開度θ3に制御するタイミングは、例えば燃料カット後にエンジン1が完全停止すると推定される時間を予め設定しておき、設定された時間が停止条件の成立後に経過したタイミングとしてもよい。
【0085】
上述してきたように、第1の実施形態に係るエンジン制御装置40は、停止・再始動制御部51と、スロットル開度制御部55とを備える。停止・再始動制御部51は、所定の停止条件が成立した場合にエンジン1を停止させ、停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合にエンジン1を再始動させる。スロットル開度制御部55は、停止条件の成立後、エンジン1のスロットル弁21の開度をアイドル開度θiよりも大きい第1スロットル開度θ1に制御した後に、アイドル開度θiよりも小さい第2スロットル開度θ2に制御する。これにより、エンジン制御装置40にあっては、停止条件成立後におけるエンジンの再始動性を向上させることができる。
【0086】
(第2の実施形態)
<4.第2の実施形態に係るエンジン制御装置の構成>
次いで、第2の実施形態に係るエンジン制御装置40について説明する。第1の実施形態では、エンジン制御装置40は、スロットル開度を所定時間t1、第1スロットル開度θ1とした後、第2スロットル開度θ2に制御するようにしたが、第1スロットル開度θ1から第2スロットル開度θ2へ切り替えるタイミングは、これに限定されるものではない。
【0087】
すなわち、第2の実施形態に係るエンジン制御装置40にあっては、エンジン1の吸気管圧を検出し、検出された吸気管圧に基づき、スロットル開度を第1スロットル開度θ1から第2スロットル開度θ2へ制御するようにした。
【0088】
図5は、第2の実施形態に係るエンジン制御装置40の構成例を示すブロック図である。なお、以下においては、第1の実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
図5に示すように、第2の実施形態において、エンジン1の吸気管16のスロットル弁21(図1参照)の下流側には、吸気管圧センサ71が設けられる。吸気管圧センサ71は、吸気管16を通過する空気の圧力(吸気管圧)を示す信号をエンジン制御装置40の制御部50へ出力する。なお、図2では、理解の便宜のため、吸気管圧センサ71をセンサ群70とは別のブロックで示したが、吸気管圧センサ71がセンサ群70に含まれる構成であってもよい。
【0090】
エンジン制御装置40の制御部50は、吸気管圧検出部56をさらに備える。吸気管圧検出部56は、吸気管圧センサ71から出力された信号に基づき、吸気管圧を検出する。
【0091】
記憶部60は、目標吸気管圧P2を示す情報が含まれる目標吸気管圧情報64をさらに記憶する。目標吸気管圧P2について図3を参照して説明すると、目標吸気管圧P2は、例えば上記した値P1と同様な値、すなわち、気筒10において自立再始動時の燃焼に必要な空気を確保可能な吸気管圧の値に設定される。なお、目標吸気管圧P2と値P1とは、同じ値であっても異なる値であってもよい。
【0092】
第2の実施形態に係るスロットル開度制御部55(図5参照)は、第1の実施形態と同様、停止条件の成立後、スロットル開度を初期スロットル開度θ0、第1スロットル開度θ1と制御し、その後、吸気管圧検出部56によって検出された吸気管圧と目標吸気管圧P2とを比較する。
【0093】
そして、スロットル開度制御部55は、吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達した場合に、スロットル開度を第1スロットル開度θ1から第2スロットル開度θ2に制御する(時刻T3参照)。これにより、吸気管圧は目標吸気管圧P2付近で一定または略一定となる。
【0094】
なお、スロットル開度制御部55は、吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達してスロットル開度を第1スロットル開度θ1から第2スロットル開度θ2へ制御した後、吸気管圧の変化に応じてスロットル開度を制御してもよい。詳しくは、スロットル開度制御部55は、吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達した後、検出された吸気管圧と目標吸気管圧P2との差に応じて、吸気管圧が目標吸気管圧P2を維持するように(言い換えると、差がゼロになるように)スロットル開度をフィードバック制御してもよい。これにより、エンジン1において自立再始動時の燃焼に必要な空気量を確実に確保することができる。
【0095】
なお、吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達した後のスロットル開度の制御は、上記に限定されるものではない。すなわち、スロットル開度制御部55は、例えば吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達してスロットル開度を第2スロットル開度θ2にした後、かかる第2スロットル開度θ2を維持するようにしてもよい。
【0096】
以上のように構成された第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、気筒10において自立再始動時の燃焼に必要な空気を確保してエンジン1の再始動性を向上させることができるとともに、停止過程で発生する振動を抑制することもできる。
【0097】
<5.第2の実施形態に係るエンジン制御装置の処理手順>
次に、第2の実施形態に係るエンジン制御装置40におけるスロットル開度制御の処理手順について図6を用いて説明する。図6は、エンジン制御装置40が実行するアイドリングストップ制御における、スロットル開度制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0098】
図6に示すように、第2の実施形態に係るエンジン制御装置40の制御部50は、ステップS10からステップS13まで、第1の実施形態と同様の処理を行う。続いて、制御部50は、ステップS13の処理後、吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達したか否かを判定する(ステップS14a)。
【0099】
制御部50は、吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達していないと判定された場合(ステップS14a,No)、ステップS14aの処理を繰り返す。他方、制御部50は、吸気管圧が目標吸気管圧P2に到達したと判定された場合(ステップS14a,Yes)、スロットル開度を第2スロットル開度θ2に制御して閉弁する(ステップS15)。なお、ステップS16以降の処理は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0100】
このように、第2の実施形態にあっては、検出された吸気管圧に基づいてスロットル弁21を制御することで、吸気管圧を確実に自立再始動時の燃焼に必要な空気を確保可能な値にでき、エンジン1の再始動性を向上させることができる。
【0101】
なお、上記した第1、第2の実施形態において、所定時間t0,t1や目標吸気管圧P2は、それぞれ一つの値(固定値)に設定されるが、これに限られず、例えば外気温などに応じて可変する値としてもよい。
【0102】
また、上記では、初期スロットル開度θ0、第1〜第3スロットル開度θ1〜θ3およびアイドル開度θiについて、具体的な数値を挙げて説明したが、これらの数値はあくまでも例示であって限定されるものではない。
【0103】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 エンジン
20 スロットル装置
21 スロットル弁
22 スロットルモータ
40 エンジン制御装置
50 制御部
51 停止・再始動制御部
55 スロットル開度制御部
56 吸気管圧検出部
70 センサ群
71 吸気管圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6