特許第6643984号(P6643984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643984カプセル化細胞を凍結乾燥する方法、凍結乾燥されたカプセル化細胞、凍結乾燥されたカプセル化細胞を含む組成物、ならびに、そのような細胞および組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643984
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】カプセル化細胞を凍結乾燥する方法、凍結乾燥されたカプセル化細胞、凍結乾燥されたカプセル化細胞を含む組成物、ならびに、そのような細胞および組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20200130BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20200130BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20200130BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20200130BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20200130BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200130BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20200130BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20200130BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20200130BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20200130BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20200130BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20200130BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20200130BHJP
   A23L 33/14 20160101ALI20200130BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20200130BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20200130BHJP
   A61K 35/16 20150101ALN20200130BHJP
【FI】
   C12N1/00 N
   A61K35/12
   A61K36/06 Z
   A61K36/064
   A61K36/062
   A61K35/74 A
   A61K35/74 Z
   A61K9/50
   A61K47/36
   A61K47/42
   A61K47/34
   A61K47/38
   A61K47/46
   A61K47/10
   A61K47/20
   A61K47/16
   A61K47/32
   A61K47/26
   A61P1/04
   A61P1/12
   A61P3/04
   A61P1/00
   A61P3/00
   A61P3/02
   A61P19/02
   A61P31/04
   A61P31/00
   A61K8/99
   A61K8/98
   A61Q19/10
   A61Q19/00
   A61K8/02
   A61Q1/00
   A61Q5/02
   A61K8/73
   A61K8/65
   A61K8/64
   A61K8/34
   A61K8/46
   A61K8/42
   A61K8/81
   A61K8/60
   A23L33/135
   A23L33/14
   C12N1/16 J
   C12N1/20 C
   !A61K35/16 Z
【請求項の数】18
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-522603(P2016-522603)
(86)(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公表番号】特表2016-524900(P2016-524900A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2014064087
(87)【国際公開番号】WO2015000972
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年6月27日
(31)【優先権主張番号】13174681.0
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513187298
【氏名又は名称】オーストリアノヴァ シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グエンツバーグ、ウォルタ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】サルモンズ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ダンガーフィールド、ジョン エィ.
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−525338(JP,A)
【文献】 特開2002−000248(JP,A)
【文献】 米国特許第05071741(US,A)
【文献】 特表2012−508584(JP,A)
【文献】 特表平09−505032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
A23L 33/135
A23L 33/14
C12N 1/16
C12N 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル化細胞を凍結乾燥する方法であって、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップを含み、前記カプセル化細胞は、それぞれのインキュベーションステップにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中で適切な時間にわたってインキュベートされ、前記インキュベーション溶液中の前記凍結保護剤の濃度は、それぞれの後続のインキュベーションステップで増加され、前記カプセル化細胞は細菌細胞または酵母細胞であり、前記凍結保護剤はスキムミルク、グリセロールおよびトレハロースを含む組成物であり、かつ、該スキムミルクが、3%(w/v)〜8%(w/v)の濃度で存在し、該グリセロールが0.5%(w/v)〜2%(w/v)の濃度で存在し、該トレハロースが5%(w/v)〜13%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする方法。
【請求項2】
3、4、5、6、7、8、9または10のインキュベーションステップを含み、それぞれのインキュベーションステップにおいて前記凍結保護剤の濃度が増加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれのインキュベーションステップにおいて同じ凍結保護剤が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵母細胞が、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、デバロマイセス属(Debaromyces)、カンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)およびトルロプシス属(Torulopsis)からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、メリソコッカス属(Melissococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属(Bacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ワイセラ属(Weissella)、アエロコッカス属(Aerococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ジオバチルス属(Geobacillus)、およびラクトバチルス属(Lactobacillus)からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は、プロバイオティック細胞であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロバイオティック細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ、ラクトバチルス・クルヴァトゥス、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ファルシミナス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・ラクティ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントサセウス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス(ラクトバチルスGG)、ラクトバチルス・サケ、ラクトバチルス・サリヴァリウス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・サーモトレランス、ラクトバチルス・ムコサエ、マイクロコッカス・ヴァリアンス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ハロフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスおよびスタフィロコッカス・キシロサスからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法であって、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップを含み、前記カプセル化細胞は、それぞれのインキュベーションステップにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中で適切な時間にわたってインキュベートされ、前記インキュベーション溶液中の前記凍結保護剤の濃度は、それぞれの後続のインキュベーションステップで増加され、前記カプセル化細胞は細菌細胞または酵母細胞であり、前記方法はスキムミルク、グリセロールおよびトレハロースを含む組成物中で前記カプセル化細胞をインキュベートするステップを含み、かつ、該スキムミルクが、3%(w/v)〜8%(w/v)の濃度で存在し、該グリセロールが0.5%(w/v)〜2%(w/v)の濃度で存在し、該トレハロースが5%(w/v)〜13%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記酵母細胞が、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、デバロマイセス属(Debaromyces)、カンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)およびトルロプシス属(Torulopsis)からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、メリソコッカス属(Melissococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属(Bacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ワイセラ属(Weissella)、アエロコッカス属(Aerococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ジオバチルス属(Geobacillus)、およびラクトバチルス属(Lactobacillus)からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞は、プロバイオティック細胞であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プロバイオティック細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ、ラクトバチルス・クルヴァトゥス、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ファルシミナス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・ラクティ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントサセウス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス(ラクトバチルスGG)、ラクトバチルス・サケ、ラクトバチルス・サリヴァリウス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・サーモトレランス、ラクトバチルス・ムコサエ、マイクロコッカス・ヴァリアンス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ハロフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスおよびスタフィロコッカス・キシロサスからなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カプセル化細胞を凍結するために適切な組成物において、スキムミルク、グリセロールおよびトレハロースを含み、前記スキムミルクが3%(w/v)〜8%(w/v)の濃度で存在し、前記グリセロールが0.5%(w/v)〜2%(w/v)の濃度で存在し、前記トレハロースが5%(w/v)〜13%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする組成物。
【請求項14】
カプセル化細胞を凍結するための請求項13記載の組成物の使用であって、該カプセル化細胞が細菌細胞または酵母細胞である、使用
【請求項15】
前記酵母細胞が、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、デバロマイセス属(Debaromyces)、カンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)およびトルロプシス属(Torulopsis)からなる群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記細菌細胞が、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、メリソコッカス属(Melissococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属(Bacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ワイセラ属(Weissella)、アエロコッカス属(Aerococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ジオバチルス属(Geobacillus)、およびラクトバチルス属(Lactobacillus)からなる群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記細胞は、プロバイオティック細胞であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記プロバイオティック細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ、ラクトバチルス・クルヴァトゥス、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ファルシミナス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・ラクティ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントサセウス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス(ラクトバチルスGG)、ラクトバチルス・サケ、ラクトバチルス・サリヴァリウス、ラクトコッカス・ラクティス、マイクロコッカス・ヴァリアンス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ハロフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスおよびスタフィロコッカス・キシロサスからなる群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2013年7月2日に欧州特許庁に提出された欧州特許出願番号13 174 681.0の優先権の利益を主張し、これにより、その内容がすべての目的のためにそっくりそのままここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、全体として、カプセル化細胞を凍結乾燥する方法に関する。本発明は、また、この方法により得られる凍結乾燥された細胞、同様に、凍結乾燥されたカプセル化細胞を含む組成物、および、これらの細胞の種々の使用、例えば、医薬品としての使用、機能性食品としての使用、食品添加物や化粧品への添加物としての使用、を提供する。本発明は、また、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含有し、例えば細胞を凍結乾燥するために使用可能な新規な組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
プロバイオティクスは、世界保健機関(WHO)によれば適正な量で投与されたときに、受容者に健康の利益を供与する生きた微生物である。特に、ラクトバチルス・アシドフィルス(lactobacillus acidophilus)細菌は、受容者の一般的な健康状態の主要事項である腸の健康を増進する。プロバイオティク産物は、それらの安定性および生存度を確保するいくつかのプロセスステップを要する。それらは、保管により、また摂取に伴い胃腸管を通過する間にネガティブに影響され得る。
【0004】
多くのプロバイオティク産物は、それらが使用されるまで保存するために凍結乾燥される。このことは、それらがまず急速冷凍され、その後減圧下で脱水されることを意味する。凍結乾燥プロセスは、食品添加物、補助食品や機能性食品としてプロバイオティク細菌の安定性および生存度を維持するために非常に重要である。
【0005】
凍結乾燥(freeze-drying、フリーズドライ)は、技術的に、リオフィリセーション(lyophilisation)、リオフィリゼーション(lyophilization)やクリオデシケーション(cryodesiccation)としても知られており、液体サンプルの冷却、結果的に凍結可能な溶液の氷への転換、結晶化可能な溶質の結晶化、および、不凍結混合物と関連した非結晶性溶質を含む非晶質マトリックスの形成、続いて非晶質マトリックスからの水のエバポレーション(evaporation)(昇華)として定義され得る。材料中で凍結した水のエバポレーション(昇華)は、通常、材料中で凍結した水に、固相から気相へ直接的に昇華することを許容するために周囲の圧力を低下させることにより行われる。凍結乾燥の大きな優位点は、保管のために材料を安定化させることである。
【0006】
さらに、凍結乾燥は、カプセル化細胞にとって、解凍のリスクがないという優位性を有している(サンティバランクナ、クロジックおよびフェルストによる、乳酸スタータカルチャの工業的保存のための代替乾燥プロセス(Santivarangkna, C., Kulozik, U. and Foerst, P. (2007) Alternative drying processes for the industrial preservation of lactic acid starter cultures. Biotechnology Progress, 23(2), 302-315))。凍結乾燥後に、膜の完全性の損失および高分子の変性に起因して、細菌細胞の顕著な死亡率が報告されている。フランクスによる「低温におけるタンパク質の脱安定化」(Franks, F. (1995) "Protein destabilization at low temperatures". Advances in Protein Chemistry, 46, 105-139)、タマフォングスらによる「エンテロコッカス・フェカリス JH2−2のコールドショックに対する生理学的応答:低温における増殖および凍結/解凍のチャレンジ」(Thammavongs, et al (1996) "Physiological response of Enterococcus faecalis JH2-2 to cold shock: Growth at low temperatures and freezing/thawing challenge" Letter in Applied Microbiology, 23(6), 398-402)、ドゥ アンジェリスおよびゴベッティによる「ラクトバチルス属における環境ストレス応答:レビュー」(De Angelis, M. and Gobbetti, M. (2004) "Environmental stress responses in Lactobacillus: A review" Proteomics, 4(1), 106-122)を参照する。
【0007】
セルロース硫酸塩中での細菌のカプセル化は、凍結乾燥の間に細菌に保護効果を及ぼすことができることが示されている。カプセル化材料としてアルギン酸塩−キトサンを用いたある報告では、擬似腸液中でインキュベートされたときにカプセルが膨潤することが指摘されている(パウラジ カンマニ、サティシュ クマール、ユバラジ、パアリ、パットゥクマールおよびヴェンカテサン アルルによる「アルギン酸塩−キトサンカプセルにおけるプロバイオティックの凍結保存およびマイクロカプセル化が擬似胃腸コンディションにおける生存性を改善する。」)(Paulraj Kanmani, R. Satish Kumar, N. Yuvaraj, K. A. Paari, V. Pattukumar, and Venkatesan Arul (2011) Cryopreservation and Microencapsulation of a Probiotic in Alginate-chitosan Capsules Improves Survival in Simulated Gastrointestinal Conditions. Biotechnology and Bioprecess Engineering, (16) 1106-1114)。カンマニ(Kanmani)らは、また、この報告において、アルギン酸ナトリウム塩−キトサンでコートしたマイクロカプセルが擬似腸液と接触すると10%収縮することを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、細菌細胞のような細胞への凍結乾燥プロセスの不利益な作用は、セルロース硫酸ナトリウム塩でのマイクロカプセル化により相殺されることがあり、そのようなカプセル化材料がカプセルの改善された安定性やカプセル化細菌のより高い生存度の結果となるためである。しかしながら、細菌細胞のような細胞への凍結乾燥プロセスの不利益な作用を克服することの要求がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カプセル化細胞を凍結乾燥するための新たな方法、その方法により得られたカプセル化細胞、並びに、これらのカプセル化細胞およびこれらのカプセル化細胞を含む組成物の種々の使用を提供することによりこの要求に応えるものである。
【0010】
第1の態様において、本開示は、カプセル化細胞を凍結乾燥する方法であって、少なく
とも2つの連続したインキュベーションステップを含み、カプセル化細胞がそれぞれのイ
ンキュベーションステップにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中で適
切な時間にわたってインキュベートされ、インキュベーション溶液中の凍結保護剤の濃度
がそれぞれの後続のインキュベーションステップで増加され方法を提供する。
【0011】
第2の態様において、本開示は、凍結乾燥されたカプセル化細胞であって、ここに記載
されたようにカプセル化細胞を凍結乾燥する方法により得られたカプセル化細胞を提供す
る。
【0012】
第3の態様において、本開示は、適切なキャリアと、ここに記載されたようにカプセル
化細胞を凍結乾燥する方法により得られたカプセル化細胞とを含む組成物を提供する。典
型的な実施形態において、組成物は、例えば、ヒトや動物用の補助食品、石鹸製剤(a so
ap formulation)、化粧品組成物または医薬品組成物とすることができる。
【0013】
第4の態様において、本開示は、下痢、抗生物質に起因する下痢、関節炎、肥満症、過
敏性腸症候群、胸やけ、慢性疲労症候群、胃腸癌、および、腸内でのアンバランスな細菌
集団から受ける他の状態を治療し、または、予防する方法であって、対象(subject)に
、ここに記載されたように凍結乾燥されたカプセル化細胞または凍結乾燥されたカプセル
化細胞を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0014】
第5の態様において、本開示は、下痢、抗生物質に起因する下痢、関節炎、肥満症、過
敏性腸症候群、胸やけ、慢性疲労症候群、胃腸癌、および、腸内でのアンバランスな細菌
集団から受ける他の状態を治療し、または、予防するために、ここに記載されたように凍
結乾燥されたカプセル化細胞または凍結乾燥されたカプセル化細胞を含む組成物の使用を
提供する。
【0015】
第6の態様において、本開示は、ここに記載されたように凍結乾燥されたカプセル化細
胞または凍結乾燥されたカプセル化細胞を含む組成物の医薬品、食品添加物や化粧品への
添加物としての使用を提供する。本発明の典型的な実施形態では、食品添加物として使用
されるときに、その食品を、ヨーグルト、カッテージチーズやバターミルク等のミルクベ
ースの産物とすることができる。本発明の典型的な他の実施形態では、食品添加物として
使用されるときに、ここに記載されたように凍結乾燥されたカプセル化細胞または凍結乾
燥されたカプセル化細胞を含む組成物がその食品を包含する食品容器の独立した区画に保
管される。
【0016】
第7の態様において、本開示は、凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法で
あって、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップを含み、カプセル化細胞
がそれぞれのインキュベーションステップにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーシ
ョン溶液中で適切な時間にわたってインキュベートされ、インキュベーション溶液中の凍
結保護剤の濃度がそれぞれの後続のインキュベーションステップで増加される方法を提供
する。
【0017】
第8の態様において、本開示は、凍結乾燥されたセルカプセル化原核細胞または凍結乾
燥されたカプセル化酵母細胞を提供する。
【0018】
第9の態様において、本開示は、細胞を凍結するために適切な組成物であって、スキム
ミルク、グリセロールおよび炭水化物を含む組成物を提供する。
【0019】
第10の態様において、本開示は、凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法
であって、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含む組成物中でカプセル化細胞
をインキュベートすることを含む方法を提供する。
【0020】
第11の態様において、本開示は、凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製するため
の組成物の使用であって、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含む組成物の使
用を提供する。
【0021】
第12の態様において、本開示は、カプセル化細胞を凍結するための組成物の使用であって、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含む組成物の使用を提供する。
以下に、本発明の基本的な諸特徴および種々の態様を列挙する。
[1]
カプセル化細胞を凍結乾燥する方法であって、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップを含み、前記カプセル化細胞は、それぞれのインキュベーションステップにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中で適切な時間にわたってインキュベートされ、前記インキュベーション溶液中の前記凍結保護剤の濃度は、それぞれの後続のインキュベーションステップで増加されることを特徴とする方法。
[2]
3、4、5、6、7、8、9または10のインキュベーションステップを含み、それぞれのインキュベーションステップにおいて前記凍結保護剤の濃度が増加されることを特徴とする[1]の方法。
[3]
それぞれのインキュベーションステップにおいて同じ凍結保護剤が用いられることを特徴とする[1]または[2]の方法。
[4]
前記凍結保護剤は、スキムミルク、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、ホルムアミドおよびDMSOの混合物、N−メチルアセトアミド(MA)、ポリビニルピロリドン、プロパンジオール、プロピレングリコール、血清アルブミン、血清アルブミンのメタノールとの混合物、炭水化物およびアルギン酸塩で構成するグループから選択されることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかの方法。
[5]
前記炭水化物は、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、デキストラン、ペクチン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)およびセルロース硫酸塩で構成するグループから選択されることを特徴とする[4]の方法。
[6]
前記凍結保護剤は、スキムミルクおよび炭水化物の混合物であることを特徴とする[4]または[5]の方法。
[7]
前記炭水化物は、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースおよびデキストランで構成するグループから選択されることを特徴とする[6]の方法。
[8]
前記スキムミルクの濃度は、前記少なくとも2つの連続したインキュベーションステップのそれぞれにおいて増加されることを特徴とする[7]の方法。
[9]
前記炭水化物の濃度は、前記少なくとも2つの連続したインキュベーションステップにおいて一定に保たれることを特徴とする[8]の方法。
[10]
前記カプセル化細胞は、真核細胞または原核細胞であることを特徴とする[1]ないし[9]のいずれかの方法。
[11]
前記真核細胞は、哺乳動物細胞、真菌細胞または酵母細胞であることを特徴とする[10]の方法。
[12]
前記酵母細胞は、サッカロマイセス属、デバロマイセス属、カンディダ属、ピキア属およびトルロプシス属で構成するグループから選択されることを特徴とする[11]の方法。
[13]
前記真菌細胞は、アスペルギルス属、リゾプス属、ムコール属およびペニシリウム属で構成するグループから選択されることを特徴とする[11]の方法。
[14]
前記原核細胞は、細菌細胞であることを特徴とする[10]の方法。
[15]
前記細菌細胞は、ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、クロストリジウム属、フソバクテリウム属、メリソコッカス属、プロピオニバクテリウム属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、スタフィロコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、バチルス属、ペディオコッカス属、マイクロコッカス属、リューコノストック属、ワイセラ属、アエロコッカス属、オエノコッカス属、ジオバチルス属およびラクトバチルス属で構成するグループから選択されることを特徴とする[11]の方法。
[16]
前記細胞は、プロバイオティック細胞であることを特徴とする[10]の方法。
[17]
前記プロバイオティック細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ、ラクトバチルス・クルヴァトゥス、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ファルシミナス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・ラクティ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントサセウス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス(ラクトバチルスGG)、ラクトバチルス・サケ、ラクトバチルス・サリヴァリウス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・サーモトレランス、ラクトバチルス・ムコサエ、マイクロコッカス・ヴァリアンス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ハロフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスおよびスタフィロコッカス・キシロサスで構成するグループから選択されることを特徴とする[16]の方法。
[18]
前記細胞は、カプセル化されるときに対数増殖期にあることを特徴とする[1]ないし[17]のいずれかの方法。
[19]
前記細胞は、多孔性カプセル壁を有するマイクロカプセルにカプセル化されることを特徴とする[1]ないし[18]のいずれかの方法。
[20]
前記多孔性カプセル壁は、アルギン酸塩ポリマ、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、アガロース、ポリリジンポリマ、セルロース硫酸塩ポリマおよびそれらの組み合わせで構成するグループから選択された材料を含むことを特徴とする[19]の方法。
[21]
前記アルギン酸塩ポリマは、純粋アルギン酸塩ポリマ、修飾アルギン酸塩−デンプンポリマ、アルギン酸塩−イヌリン−キサンタンガム、アルギン酸塩およびポリL−リジンポリマ、キトサン/アルギン酸塩ポリマ、ならびに、キトサン/キサンタンポリマで構成するグループから選択されることを特徴とする[20]の方法。
[22]
前記セルロース硫酸塩ポリマは、セルロース硫酸ナトリウム塩(NaCS)/ポリ[ジアリル(ジメチル)アンモニウムクロライド](pDADMAC)から形成された複合体を含むこと特徴とする[21]の方法。
[23]
前記カプセル化細胞は、中間の洗浄ステップを含むことなく、適切な凍結乾燥メディウムに移されることを特徴とする[1]ないし[22]のいずれかの方法。
[24]
前記カプセル化細菌細胞は、最終インキュベーションステップの後、適切な凍結乾燥メディウム中で凍結乾燥されることを特徴とする[23]の方法。
[25]
前記凍結乾燥メディウムは、凍結保護剤を含有することを特徴とする[24]の方法。
[26]
前記凍結乾燥メディウムは、前記インキュベーション溶液と同じ凍結保護剤を含有することを特徴とする[24]または[25]の方法。
[27]
前記凍結保護剤は、スキムミルク、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、ホルムアミドおよびDMSOの混合物、N−メチルアセトアミド(MA)、血清アルブミン、血清アルブミンのメタノールとの混合物、ポリビニルピロリドン、プロパンジオール、プロピレングリコール、炭水化物ならびにアルギン酸塩で構成するグループから選択されることを特徴とする[26]の方法。
[28]
前記炭水化物は、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、デキストラン、ペクチン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)およびセルロース硫酸塩で構成するグループから選択されることを特徴とする[27]の方法。
[29]
前記凍結乾燥メディウムは、前記凍結保護剤を含有する水溶液であることを特徴とする[26]ないし[28]のいずれかの方法。
[30]
[1]ないし[29]のいずれかで定められる方法により得られた凍結乾燥されたカプセル化細胞。
[31]
[30]で定められるカプセル化細胞および適切なキャリアを含む組成物。
[32]
前記組成物は、食品添加物、石鹸製剤、化粧品組成物または医薬品組成物であることを特徴とする[31]の組成物。
[33]
下痢、抗生物質に起因する下痢、関節炎、肥満症、過敏性腸症候群、胸やけ、慢性疲労症候群、および、腸内でのアンバランスな細菌集団から受ける他の状態を治療し、または、予防する方法であって、対象に、[25]で定められるカプセル化細胞または[31]もしくは[32]で定められる組成物を投与することを含む方法。
[34]
下痢、抗生物質に起因する下痢、関節炎、肥満症、過敏性腸症候群、胸やけ、慢性疲労症候群、胃腸癌、および、腸内でのアンバランスな細菌集団から受ける他の状態を治療し、または、予防するための[30]で定められるカプセル化細胞または[31]もしくは[32]で定められる組成物の使用。
[35]
[30]で定められるカプセル化細胞または[31]もしくは[32]で定められる組成物の医薬品としての使用、食品への添加物または化粧品への添加物としての使用。
[36]
前記食品は、ミルクベースの産物であることを特徴とする[35]の使用。
[37]
前記ミルクベースの産物は、ヨーグルト、カッテージチーズまたはバターミルクであることを特徴とする[36]の使用。
[38]
前記食品への添加物としての使用のために、[30]で定められるカプセル化細胞または[31]もしくは[32]で定められる組成物は、前記食品を包含する食品容器の独立した区画に保管されることを特徴とする[36]または[37]の使用。
[39]
前記化粧品は、石鹸、ローション、メークアップ、クリーム、シャワーゲル、バスソルトおよび毛髪洗浄剤で構成するグループから選択されることを特徴とする[35]の使用。
[40]
凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法であって、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップを含み、前記カプセル化細胞は、それぞれのインキュベーションステップにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中で適切な時間にわたってインキュベートされ、前記インキュベーション溶液中の前記凍結保護剤の濃度は、それぞれの後続のインキュベーションステップで増加されることを特徴とする方法。
[41]
凍結乾燥されたカプセル化原核細胞または凍結乾燥されたカプセル化酵母細胞。
[42]
前記原核細胞は、細菌細胞であることを特徴とする[41]の細胞。
[43]
前記細菌細胞は、ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、クロストリジウム属、フソバクテリウム属、メリソコッカス属、プロピオニバクテリウム属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、スタフィロコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、バチルス属、ペディオコッカス属、マイクロコッカス属、リューコノストック属、ワイセラ属、アエロコッカス属、オエノコッカス属、ジオバチルス属およびラクトバチルス属で構成するグループから選択されることを特徴とする[42]の細胞。
[44]
前記細胞は、プロバイオティック細胞であることを特徴とする[41]ないし[43]のいずれかの細胞。
[45]
前記プロバイオティック細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サブチリス、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ、ラクトバチルス・クルヴァトゥス、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ラクティス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ファルシミナス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・ラクティ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントサセウス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス(ラクトバチルスGG)、ラクトバチルス・サケ、ラクトバチルス・サリヴァリウス、ラクトコッカス・ラクティス、マイクロコッカス・ヴァリアンス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ハロフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスおよびスタフィロコッカス・キシロサスで構成するグループから選択されることを特徴とする[41]ないし[44]のいずれかの細胞。
[46]
カプセル化細胞を凍結するために適切な組成物において、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含むことを特徴とする組成物。
[47]
前記炭水化物は、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、デキストラン、ペクチン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、セルロース硫酸塩およびそれらの混合物で構成するグループから選択される炭水化物で構成するグループから選択されることを特徴とする[46]の組成物。
[48]
前記炭水化物は、スクロース、ラクトース、ラフィノースまたはトレハロースであることを特徴とする[47]の組成物。
[49]
スキムミルクが約1%(w/v)から約10%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする[46]ないし[48]のいずれかの組成物。
[50]
グリセロールが約0.2(w/v)から約5%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする[46]ないし[49]のいずれかの組成物。
[51]
前記炭水化物が約1%(w/v)から約15%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする[46]ないし[50]のいずれかの組成物。
[52]
スキムミルクが約3%(w/v)から約8%(w/v)の濃度で存在し、グリセロールが約0.5(w/v)から約2%(w/v)の濃度で存在し、前記炭水化物が約5%(w/v)から約13%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする[51]の組成物。
[53]
凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製するための[46]ないし[52]のいずれかで定められる組成物の使用。
[54]
カプセル化細胞を凍結乾燥するための[46]ないし[52]のいずれかで定められる組成物の使用。
[55]
凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法であって、[46]ないし[52]のいずれかで定められる組成物中でカプセル化細胞をインキュベートすることを含む方法。
【0022】
本発明は、非制限的な実施例および添付の図面とともに考慮したときに詳細な説明を参照してさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】凍結保護剤として5%脱脂乳粉末および1%グリセロールを用い本発明の方法で処理した後、凍結乾燥された形態でのカプセル化ラクトバチルス・アシドフィルス細胞の明視野顕微鏡像を示し、細胞を、それぞれのインキュベーションステップにおいて増加する濃度の凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中でインキュベートしたものである。凍結保護剤の増加する濃度は、それぞれのインキュベーションステップにおいて細菌増殖溶液を100%から50%へ、25%へ、12.5%へ、6.25%へ、3.125%へ、0%へ、凍結保護剤溶液(5%脱脂乳粉末および1%グリセロール)で連続的に希釈することにより達成される。
図2】凍結保護剤としてスキムミルクおよびグリセロール(水中に5%スキムミルクおよび1%グリセロール)を含有するインキュベーション溶液を用いた凍結乾燥の間のラクトバチルス・アシドフィルス細菌におけるカプセルの保護効果を示す。保護効果は、凍結乾燥された細菌の再加水(rehydration)に続く生存度テストにより測定した。生存度は、参照としてカプセル化されたばかりの細菌細胞(freshly encapsulated bacterial cells)と比較されており、%生存度で表される。
図3】凍結乾燥の間のラクトバチルス・アシドフィルス細菌の生存性に関し、2つの異なる凍結メディウム/インキュベーション溶液(インキュベーション溶液1:凍結保護剤としてDMSOを含有するドゥ マン(de Man)、ロゴサ(Rogosa)およびシャープ(Sharpe)(MRS)メディウム、インキュベーション溶液2:水中に5%スキムミルクおよび1%グリセロール)の比較を示す。
図4】凍結乾燥後、再加水した空のカプセルの明視野顕微鏡像を示す。用いた凍結メディウムは、1%グリセロールを含むスキムミルクとした。凍結乾燥前の凍結ステップを液体窒素中で行った。
図5】凍結乾燥後、再加水した空のカプセルの明視野顕微鏡像を示す。用いた凍結メディウムは、1%グリセロールを含むスキムミルクとした。凍結乾燥前の凍結ステップをエタノール/ドライアイス槽で行った。
図6】予備凍結ステップをエタノール/ドライアイス槽で行い、凍結保護剤を含有しないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で凍結乾燥された空のカプセルの明視野顕微鏡像を示す。
図7】予備凍結ステップがエタノール/ドライアイス槽で行われ、10%DMSOを含むPBS中で凍結乾燥された空のカプセルの明視野顕微鏡像を示す。
図8】予備凍結ステップが液体窒素中で行われ、凍結保護剤を含まないMRS中で凍結乾燥された空のカプセルの明視野顕微鏡像を示す。
図9】凍結がエタノール/ドライアイス槽で行われ、凍結保護剤を含まないMRS中で凍結乾燥された空のカプセルの明視野顕微鏡像を示す。
図10】増加する濃度の凍結保護剤を含む逐次のインキュベーション用のインキュベーション溶液として、および、凍結乾燥溶液としての両方に、凍結保護剤として5%脱脂乳、1%グリセロールおよび10%トレハロースの組み合わせを用いた本発明の凍結乾燥方法の実施形態の結果を示す。以下のサンプルをこの実験に用いた:1)スキムミルク/グリセロール/トレハロースを含んで凍結乾燥されたフリーな(カプセル化されていない)ラクトバチルスのサンプル(塗りつぶした菱形)、2)スキムミルク/グリセロール/トレハロースを含まずに凍結乾燥されたフリーなラクトバチルスのサンプル(塗りつぶした四角)、3)インキュベーション溶液における凍結保護剤としてスキムミルク、グリセロールおよびトレハロースの濃度で本発明の方法を用いて凍結乾燥されたカプセル化ラクトバチルス細菌のサンプル(バツ印)(凍結保護剤の増加する濃度は、それぞれのインキュベーションステップにおいて細菌増殖溶液を100%から50%へ、25%へ、12.5%へ、6.25%へ、3.125%へ、0%へ、凍結保護剤溶液(5%スキムミルク粉末、1%グリセロールおよび10%トレハロース)で連続的に希釈することにより達成された)、4)トレハロースを含まずに凍結乾燥されたカプセル化ラクトバチルス細菌のサンプル(塗りつぶした三角)。凍結乾燥後2ヶ月の期間にわたって室温でトレハロースを含むかまたは含まずに凍結保存した後の細菌の生存度を評価するために、サンプルを再加水する時点を凍結乾燥後1、2、3、4、6、7および8週間とした。図10におけるそれぞれのデータポイントは、2つの凍結乾燥サンプル(各サンプルを4回テストした)の平均を表しているが、2つの例外:10%トレハロースを含むフリーな細菌の第6週および10%トレハロースを含むカプセル化細菌の第8週がある。RFU(Relative fluorescent units)は相対蛍光ユニットである。
図11】カプセル化および凍結乾燥後の異なる時点でのラクトバチルス・カゼイのカプセルを示し、図11Aはカプセル化直後のラクトバチルス・カゼイのカプセルを示し、図11Bは凍結乾燥前でカプセル化1日後のラクトバチルス・カゼイのカプセルを示し、図11Cは凍結乾燥されたラクトバチルス・カゼイのカプセルを再加水したカプセルを示す。
図12】凍結乾燥1日前および凍結乾燥後におけるラクトバチルス・カゼイのカプセルの生存度の比較を示す。
図13】カプセル化および凍結乾燥後の異なる時点でのビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムのカプセルを示し、図13Aは凍結乾燥前でカプセル化1日後のビフィドバクテリウム・インファンティスのカプセルを示し、図13Bは凍結乾燥されたビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムのカプセルを再加水したカプセルを示す。
図14】凍結乾燥1日前および凍結乾燥後におけるビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムのカプセルの生存度の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明はカプセル化細胞を凍結乾燥する方法を提供するものであり、この方法は少なくとも2つの連続したインキュベーションステップを含む。カプセル化細胞は、インキュベーションステップのそれぞれにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中で適切な時間にわたってインキュベートされ、インキュベーション溶液中の凍結保護剤の濃度がそれぞれの後続のインキュベーションステップで増加される。本発明者らは、この方法が凍結乾燥プロセスの前およびその間の両方において、カプセル(カプセル化材料)の(構造的)完全性に保護効果をもたらすことを見いだしている。さらに、細胞がその中にカプセル化されたカプセルの貯蔵寿命が延長され、カプセル化細胞の生存度が顕著に増加する(実施例の欄を参照)。機構論レベルでは、理論に束縛されることを望んではいないものの、本発明の方法における少なくとも2つの連続したインキュベーションステップにカプセル化細胞をさらすことがカプセルがしわくちゃになること(crumpling)を回避すると思われる。
【0025】
連続したインキュベーションステップの間に、インキュベーション溶液における凍結保護剤(ここで用いられる用語「凍結保護剤」は、単独の凍結保護剤および2種以上の凍結保護剤の混合物/組み合わせの両者に適用することをここに示す。)の濃度の増加は、種々のやり方で達成され得る。例えば、それぞれのインキュベーションステップにおいて、カプセル化細胞の懸濁液に凍結保護剤のストック溶液を添加することが可能である。例えば、DMSO、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド(MA)やプロパンジオール等の凍結保護剤が用いられるのであれば、純粋な凍結保護剤のストック溶液(100%ストック溶液)が用いられてもよく、それぞれのインキュベーションステップにおいて凍結保護剤の濃度を増加させるために、ストック溶液の特定量が細胞懸濁液に添加される(実施例の欄の実施例1参照)。これに代えて、例えば、凍結保護剤の濃度の増加を達成するためのスターティング/ストック溶液として、カプセル化細胞に凍結乾燥を受けさせる溶液(すなわち、凍結溶液または凍結保存(cryopreservation)メディウム)を用いることも可能である。この目的のために最終の凍結溶液を用いることは、連続したインキュベーションステップのために特別なストック溶液を準備すべきことを要しないという優位性を有している。このアプローチは、インキュベーションステップにおいて凍結保護剤の混合物、例えて言えば、スキムミルク粉末のグリセロールとの混合物、または、スキムミルク粉末、グリセロールおよびスクロースやトレハロース等の炭水化物の混合物、が用いられるときに、インキュベーションステップの操作を単純化する。そのような場合、調製した凍結溶液(例えて言えば、水中に5%(w/v)スキムミルクおよび1%(v/v)グリセロール、または、5%(w/v)スキムミルク、1%(v/v)グリセロールおよび10%(w/v)のスクロースやトレハロース等の炭水化物の水溶液)は、それぞれのインキュベーションステップにおいて、カプセル化細胞が保管されるメディウムを「連続して希釈する」ために用いられる。この「連続的な希釈」は、例えば、次のようにして達成され得る。カプセル化細胞が存在している細胞メディウムの半分の容量がそれぞれのバイアル(vial)から取り除かれ、最初のインキュベーションステップのために、同じ容量の凍結溶液が添加される。その後、カプセル化細胞が所定時間インキュベートされた後、再度、インキュベーション混合物の50%分の容量が取り除かれ、第2のインキュベーションステップのために、同じ容量の凍結溶液で置換される。この手順が必要分繰り返され、それによりそれぞれのインキュベーションステップにおける凍結保護剤の濃度が増加する。所望により、最終のインキュベーションステップは凍結溶液中で行われてもよい。
【0026】
用語「凍結乾燥」は、リオフィリセーション、リオフィリゼーションやクリオデシケーションとしても知られるが、その一般的な意味で用いられるものであり、液体サンプルの冷却、結果的に凍結可能な溶液の氷への転換、結晶化可能な溶質の結晶化、および、不凍結混合物と関連した非結晶性溶質を含む非晶質マトリックスの形成、続いて非晶質マトリックスからの水のエバポレーション(昇華)として用いられる。このプロセスにおいて、材料中で凍結した水のエバポレーション(昇華)は、通常、材料中で凍結した水に、固相から気相へ直接的に昇華することを許容するために周囲の圧力を低下させることにより行われる。凍結乾燥は、典型的には、前処理、凍結、一次乾燥および二次乾燥のステップを含む。
【0027】
前処理は、所望の産物、つまり、ここではカプセル化細胞を凍結前に処理する方法を含む。前処理は、例えば、細胞の洗浄、処方の修正(つまり、安定性を増加させる、および/または、プロセスを促進するための成分の添加)、または、高蒸気圧溶媒の量を減少させることや表面積を増加させることを含む。
【0028】
凍結ステップは、カプセル化細胞を凍結するために適切な方法を含む。例えば、ラボラトリでの少量スケールにおいて、凍結は、凍結乾燥フラスコに材料を投入し、例えば機械的冷却により、ドライアイスのメタノールやエタノール等のアルコールとの混合物により、または、液体窒素により冷やされるシェルフリーザ(shell freezer)としても知られる槽内でフラスコを回転させることにより行われる。もちろん、サーモフィッシャサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific Inc.)から供給されているサーモ サイエンティフィック(登録商標)モデュリオ フリーズドライ システム(Thermo Scientific Modulyo Freeze-Dry System)等の市販の凍結乾燥装置を用いることも可能である。大量スケールにおいて、凍結は、通常、市販の温度管理可能な凍結乾燥機が用いられている。カプセル化細胞を凍結するときは、氷晶の形成を回避するために、通常、凍結が急速に行われる。一般に、凍結温度は、−50℃および−80℃の間である。
【0029】
次のステップは,一次乾燥である。一次乾燥フェースの間には、圧力を低下させ(概して、数ミリバールの範囲)、水を昇華させるために十分な熱が材料に供給される。必要な熱の量は、昇華する分子の昇華潜熱を用いて計算され得る。この初期乾燥フェースでは、材料中の水の約95%が昇華する。過剰の熱が加えられると、材料の構造が変化してしまうため、このフェースは、ゆっくり行われる(工業的には数日である)。
【0030】
二次乾燥は、凍結乾燥における最終ステップとして続いて行うことができる。一次乾燥フェースで氷が除去されたため、二次乾燥フェースは、もし存在するなら、不凍結の水分子を除去することを目的とする。このフェースでは、通常、温度を一次乾燥フェースにおけるより高くし、水分子および凍結した材料間に形成される物理−化学的相互作用を破壊するために、0℃より高くする。また、通常、このステージにおいては、脱離を促進するために圧力を低下させる(典型的には、マイクロバールの範囲、または1パスカルの分数)。凍結乾燥プロセスが完了した後には、凍結乾燥したカプセル化細胞が今後の使用のために包装され、および/または、保管される前に、真空状態は、通常、窒素等の不活性ガスで戻される。
【0031】
上述から明らかなように、本発明の方法は、当業者に理解されるような「前処理」に属し、ここに記載されたフリーな細胞やカプセル化細胞のような材料を凍結し乾燥する公知の方法論とともに用いられ得る。
【0032】
従って、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップが後に続く適切な凍結乾燥ステップとともに行われ得るため、本発明は、凍結乾燥のためにカプセル化細胞を調製する方法にも関し、この方法が少なくとも2つの連続したインキュベーションステップを含み、カプセル化細胞がそれぞれのインキュベーションステップにおいて凍結保護剤を含有するインキュベーション溶液中で適切な時間にわたってインキュベートされ、インキュベーション溶液中の凍結保護剤の濃度がそれぞれの後続のインキュベーションステップで増加される。このため、以下において、凍結乾燥方法についてより詳細に本発明が説明されるが、これら全ての実施形態がここで定められるような凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法に等しく関連することが理解されるべきである。
【0033】
本発明の方法において、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップの適切な数は、例えば、凍結乾燥後のカプセル化細胞の生存度に所望の効果をもたらすために十分な長さの数で行われる。実際の実施形態では、本方法は、3、4、5、6、7、8、9または10のインキュベーションステップを含み、それぞれのインキュベーションステップで凍結保護剤の濃度が増加される。インキュベーションステップのそれぞれにおけるインキュベーションは、適切な時間、例えば、カプセルの所望の長期安定性および/またはカプセル化細胞の生存度を達成することが可能となることが見出される時間にわたって行われ得る。適切なインキュベーション時間および適切なインキュベーションステップの数は、例えば、凍結乾燥後に続いて細胞を(一定の期間後に)再加水することによるカプセル化細胞の生存度を評価することにより、経験的に定められ得る(この点に関しては実施例の欄参照)。いくつかの実施形態では、インキュベーション時間は、概してインキュベーションステップごとに約数分間から約数時間である(この点に関しても、細菌細胞がそれぞれのインキュベーションステップにおいて約25分間インキュベートされた実施例の欄を参照)。インキュベーションは、攪拌しなくても行われ得るものであり、カプセル化材料や細胞による凍結保護剤の取り込みを促進するために(例えば、シェーキング(shaking)やローリング(rolling)等の)攪拌下でも行われ得るものである。
【0034】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、同じ凍結保護剤または同じ凍結保護剤の混合物がそれぞれのインキュベーションステップにおいて用いられる。凍結保護剤は、凍結乾燥中に、用いるカプセル化材料やカプセル化細胞へのダメージに対する保護をもたらすことが可能な化合物とすることができる。適切な凍結保護剤の例は、制限されるものではないが、スキムミルク、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、ホルムアミドおよびDMSOの混合物、N−メチルアセトアミド(MA)、ポリビニルピロリドン、プロパンジオール(1,2−プロパンジオールもしくは1,3−プロパンジオールのいずれか、または、両者の混合物)、プロピレングリコール、血清アルブミン、血清アルブミンのメタノールとの混合物、炭水化物、ならびに、アルギン酸塩を含む。凍結保護剤として用いられ得るアルギン酸塩の例は、いずれもカーギル(Cargill)から提供されるサティアルギン(Satialgine、登録商標)アルギン酸塩やアルゴゲル(Algogel、登録商標)アルギン酸塩を含む(カペラら、「ヨーグルトおよび凍結乾燥ヨーグルトでのプロバイオティック微生物の生存性における凍結保護剤、プレバイオティクスおよびマイクロカプセル化の効果」(P. Capelaa et al, "Effect of cryoprotectants, prebiotics and microencapsulation on survival of probiotic organisms in yoghurt and freeze-dried yoghurt" Food Research International Volume 39, Issue 2, March 2006, Pages 203-211)参照)。
【0035】
凍結保護剤として用いられ得る炭水化物の例は、制限されるものではないが、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、デキストラン、ペクチン(例えば、同じくカーギルから提供され、前掲のFood Research International Volume 39でカペラらにより凍結保護剤として議論されているユニペクチン(Unipectine、登録商標))、ヒドロキシエチルデンプン(HES)およびセルロース硫酸塩を含む。
【0036】
本発明では、インキュベーション溶液において2またはそれ以上の凍結保護剤の混合物、例えば、制限することを意味するものではないが、スキムミルクのグリセロールとの混合物やスキムミルクの炭水化物との混合物を用いることも可能である(実施例の欄参照)。そのような実施形態では、連続したインキュベーションステップにおいて凍結保護剤の1種のみの濃度を増加させることが可能であり、第2(または、それ以外)の凍結保護剤の濃度がインキュベーションのコースの間で一定に維持される(同様に実施例の欄参照)。そのような実施形態の1つでは、濃度が一定に保たれる凍結保護剤は、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースまたはデキストランから選択されてもよい。特定の一実施形態では、少なくとも2つの連続したインキュベーションステップのそれぞれにおいてスキムミルクの濃度が増加されており、炭水化物(例えば、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースまたはデキストラン)の濃度が少なくとも2つの連続したインキュベーションステップにおいて一定に維持される。
【0037】
本発明では、適切な(カプセル化)細胞が用いられ得る。カプセル化細胞は、真核細胞や原核細胞またはいくつかの真核細胞やいくつかの原核細胞の混合物とすることができる。また、細胞は、真核細胞の原核細胞との混合物とすることもできる。真核細胞の例は、制限されるものではないが、哺乳動物細胞、真菌細胞または酵母細胞を含む。哺乳動物細胞の純粋に実際の例は、ヴィックストロームらによる「凍結乾燥されたマイクロカプセル化ヒト網膜色素上皮細胞の生存度」ヨーロピアン ジャーナル オブ ファーマシューティカル サイエンス 47巻、2号、2012年9月29日、520−526ページ(Wikstrom et al. "Viability of freeze dried microencapsulated human retinal pigment epithelial cells" Eur. J. Pharm. Sci. Volume 47, Issue 2, 29 September 2012, Pages 520-526)に記載されたヒト網膜色素上皮(retinal pigment epithelial、RPE)細胞、または、2001年のゴードンらによる「ヒト間葉系幹細胞の脱水および再加水後の回復」クライオバイオロジィ 43、182(Gordon et al, 2001, "Recovery of human mesenchymal stem cells following dehydration and rehydration" Cryobiology 43, 182)に記載された間葉系幹細胞である。適切な酵母細胞の例は、単なるいくつかの実例を挙げるとすれば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、デバロマイセス属(Debaromyces)、カンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)およびトルロプシス属(Torulopsis)を含む。真菌細胞の例は、もちろん制限されるものではないが、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス属(Rhizopus)、ムコール属(Mucor)およびペニシリウム属(Penicillium)を含む。本発明で用いられる原核細胞は、細菌細胞とすることができる。細菌細胞は、好気性細胞または嫌気性細胞としてもよい。本発明の方法における実際の例では、細菌細胞は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、メリソコッカス属(Melissococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属(Bacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ワイセラ属(Weissella)、アエロコッカス属(Aerococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ジオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)およびこれら細胞の混合物で構成するグループから選択されてもよい。
【0038】
本方法のいくつかの実施形態において、ここに開示されるインキュベーションにさらされる細胞は、プロバイオティック細胞である。適切なプロバイオティック細胞の例は、制限されるものではないが、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cereviseae)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・アンギュラタム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ(Lactobacillus casei Shirota)、ラクトバチルス・クルヴァトゥス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ファルシミナス(Lactobacillus farciminus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ラクティ(Lactobacillus lacti)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ペントサセウス(Lactobacillus pentosaceus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)(ラクトバチルスGG、Lactobacillus GG)、ラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sake)、ラクトバチルス・サリヴァリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サーモトレランス(Lactobacillus thermotolerans)、ラクトバチルス・ムコサエ(Lactobacillus mucosae)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、マイクロコッカス・ヴァリアンス(Micrococcus varians)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ハロフィラス(Pediococcus halophilus)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)およびこれら細胞の混合物を含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、特に、酵母等の真核細胞や細菌細胞が用いられるときは、細胞がカプセル化されるときに対数増殖期にある。しかしながら、他のいずれかの増殖期にある細胞、例えば、コンフルーエンス(confluence)に増殖している哺乳動物細胞をカプセル化し、続いて凍結乾燥することももちろん可能である(この点については、前掲のヴィックストロームらによる、ヨーロピアン ジャーナル オブ ファーマシューティカル サイエンス(2012)参照)。
【0040】
本発明の典型的な実施形態において、細胞は、多孔性カプセル壁を有するマイクロカプセルにカプセル化される。多孔性カプセル壁(殻)は、アルギン酸塩ポリマ、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、アガロース、ポリリジンポリマ、セルロース硫酸塩ポリマおよびこれらの組み合わせで構成するグループから選択された材料を含むことができる。
【0041】
本文脈では、用語「カプセル化」は、当該技術分野における従来の意味に従い本発明で用いられることを指摘する。ここで用いられるカプセル化は、カプセル化材料のコア(core)としてカプセル壁内に全体として含まれる内部マトリクスや細胞の周囲に連続的なコーティングを形成するプロセスに関する。カプセル化は、マトリクス内またはマトリクス全体に細胞等の材料が取り囲まれることに関する「固定化(immobilisation)」と区別されるべきである。カプセル化に対して、固定化は、固定化された要素の割合が表面にさらされるような不確定の粒子サイズの結果となるランダムプロセスである。カプセル化やマイクロカプセル化(いずれの用語もここでは交換可能に用いられる。)は、コアとなる材料を周囲から区分することを補助し、それにより、コアとなる材料の安定性を向上させ貯蔵寿命を延長する。コアとなる物質の周囲にマイクロカプセル化剤により形成された構造は、壁や殻として知られている。壁システムの性質は、概して、コアとなる材料を保護するために、また、低分子が多孔性カプセル壁(膜として作用する)の内外に通過することを許容しつつ、特定の条件下でコアとなる材料を潜在的に放出するために設計される。カプセルおよびカプセル化材料は、ここに記載される凍結乾燥方法に供され得る。カプセルは,例えば、サブミクロンから数ミリメートルの範囲のサイズであり、異なる形状であってもよい。
【0042】
上述の開示に従い、アルギン酸塩、デンプン、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガムおよびカラギーナンガム、ならびに、ホエータンパク質等のいくつかの食品グレードのバイオポリマは、例えば、酸感受性微生物細胞をさまざまな首尾(successes)で保護するためにマイクロカプセル化材料としてテストされている。最近の報告として、イスラムらによる「生きたプロバイオティック細菌のマイクロカプセル化」ジャーナル オブ マイクロバイオロジィ アンド バイオテクノロジィ(Islam et al. "Microencapsulation of Live Probiotic Bacteria" J. Microbiol. Biotechnol. (2010), 20(10) 1367-1377)を参照する。これらのカプセル化材料のすべて、また、すべてのこれらプロバイオティック細菌も、本発明で用いることができる。全てのカプセル化材料、例えば、本発明で用いられ得る微生物細胞についての概説は、国際特許出願WO2012/101167「微生物細胞の酸劣化からの保護(Protection Of Microbial Cells From Acidic Degradation)」に示されている。
【0043】
アルギン酸塩ポリマは、細胞用の所望のカプセル化材料としてここで用いられるとすれば、純粋(pure)アルギン酸塩ポリマ、修飾(modified)アルギン酸塩−デンプンポリマ、アルギン酸塩−イヌリン−キサンタンガム、アルギン酸塩およびポリL−リジンポリマ、キトサン/アルギン酸塩ポリマ、ならびに、キトサン/キサンタンポリマとすることができる。そのようなアルギン酸塩カプセル化材料の多くの実例は、上掲のヴィックストロームらの報告、国際特許出願WO2012/101167およびこの国際出願に示された参考文献に開示されている。
【0044】
本発明の他の実施形態において、カプセル化材料は、セルロース硫酸塩ポリマとすることができる。このポリマは、制限されるものではないが、セルロース硫酸ナトリウム塩(NaCS)/ポリ[ジアリル(ジメチル)アンモニウムクロライド](pDADMAC)から形成された複合体を含むセルロース硫酸塩ポリマを含む公知のセルロース硫酸塩ポリマとしてもよい。そのようなアルギン酸塩カプセル化材料の多くの例は、国際特許出願WO2012/101167およびこの国際出願に示された参考文献に開示されている。
【0045】
本発明のカプセル化細胞を凍結乾燥する方法(または凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法)の実施形態において、カプセル化細胞は、連続した少なくとも2つのインキュベーションステップの後、中間の洗浄ステップを有することなく、適切な凍結乾燥メディウムに移される。「洗浄ステップ」は、特に、インキュベートされた細胞が凍結保護剤の全く含まれない洗浄バッファ/メディウムと接触されるステップを意味している。
【0046】
他の実施形態において、細菌細胞等のカプセル化細胞は、最終のインキュベーションステップ後に、適切な凍結乾燥メディウム中で凍結乾燥される。これらの実施形態において、凍結乾燥メディウムは、凍結保護剤を含有していてもよい。これらの実施形態において、凍結乾燥メディウムは、インキュベーション溶液と同じ凍結保護剤を含有する。
【0047】
凍結ステップ(本発明の方法の後に行われ得る)で用いられ得る適切な凍結保護剤の例は、制限されるものではないが、スキムミルク、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、ホルムアミドおよびDMSOの混合物、N−メチルアセトアミド(MA)、血清アルブミン、血清アルブミンのメタノールとの混合物、ポリビニルピロリドン、プロパンジオール、プロピレングリコール、炭水化物ならびにアルギン酸塩を含むものであり、単なるいくつかの実例を再度挙げるものである。
【0048】
凍結保護剤のもととなる適切な炭水化物の例は、制限されるものではないが、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、デキストラン、ペクチン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)およびセルロース硫酸塩を含む。
【0049】
この凍結ステップの典型的な実施形態において、凍結乾燥メディウムは、凍結ステップで選択される凍結保護剤の1つまたはそれ以上を含有する水溶液である。
【0050】
上述の開示に従い、本発明は、また、ここに開示された方法により得られた凍結乾燥されたカプセル化細胞にも関する。ここに開示されたカプセル化細胞を適切なキャリアと共に含む組成物も本発明に包含される。キャリアは、例えば、医薬品、化粧品や食品に用いられる従来のキャリアとすることができる。従って、本発明の組成物は、補助食品、化粧品組成物または医薬品組成物とすることができる。
【0051】
本発明のカプセル化細胞が含まれ得る化粧品組成物の例は、石鹸(液体、固体の両方)、ローション、メークアップ(make-up)、クリーム、シャワーゲル、バスソルトや毛髪洗浄剤等の問題の(topical)組成物である。そのような組成物の実際の例は、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属やバチルス・コアギュランス(例えば、GanedenBC30(登録商標)株(Bacillus coagulans GBI-30, 6086 of Ganeden Biotec, Cleveland, Ohio, USA))等のプロバイオティック細菌細胞を含む。そのような化粧品組成物は、例えば、皮膚の加水、伸縮性、眼下の膨張を改善するために、または、ヒトの微細線やしわを減少させるために用いることができる。
【0052】
本発明で得られるカプセル化細胞やそのようなカプセル化細胞を含む組成物が食品用サプリメントとして用いられるとすれば、食品は、例えば、シリアル(cereal)、または、ヨーグルト、カード(curd、擬乳)、プリン、カッテージチーズやバターミルク等のミルクベースの産物とすることができる。ヨーグルトやプリン等の食品用添加物として用いられるとすれば、本発明のカプセル化細胞や本発明のカプセル化細胞を含む組成物は、食品を包含する食品容器の独立した区画に保管されてもよい。例えば、独立した区画は、本発明のカプセル化細胞やそれぞれの組成物を意味するその内容物を、例えばヨーグルトやプリンで満たされた食品容器の他の区画に移して空にできるため、折り曲げ可能としてもよい。そのような独立した区画を用いることは、例えば、カプセル化プロバイオティック細胞を食品に、その摂取直前に添加することを許容する。
【0053】
この開示に従い、本発明は、種々の医薬品や機能性食品への使用にも関する。そのような使用は、制限されるものではないが、下痢、抗生物質に起因する下痢、関節炎、肥満症、過敏性腸症候群、胸やけ、慢性疲労症候群、および、腸内でのアンバランスな細菌集団から受ける他の状態を治療すること、または、予防することを含む。そのような使用のために、本発明のカプセル化細胞またはそのようなカプセル化細胞を含む組成物は、単にいくつかの実例を挙げるとすれば、通常、ヒト等の哺乳動物、または、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウシ、ブタ、家禽や魚等の家畜動物や飼育動物である対象に投与される。
【0054】
本発明は、さらに、細胞を凍結するために適切な組成物に関し、その細胞をカプセル化細胞またはフリーな(カプセル化されていない)細胞のいずれとすることもできる。そのような組成物は、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含む。このため、この組成物は、ここに記載され、従来公知でもある凍結乾燥の方法論に用いられ得る凍結溶液(または凍結保存溶液)となり得る。そのような組成物は、それゆえ、凍結保護剤(つまり、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物)のためのキャリアを含む。キャリアは、概して、例えば(純粋な)水、または、塩を含有する水溶液である。
【0055】
この組成物の実施形態において、炭水化物は、制限されるものではないが、スクロース、メタノールと混合されたグルコース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、デキストラン、ペクチン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、セルロース硫酸塩およびこられ炭水化物の混合物としてもよい。いくつかの実施形態において、炭水化物は、スクロース、ラクトース、ラフィノースまたはトレハロースである。
【0056】
スキムミルクは、凍結中に細胞やカプセル化細胞の十分な保護をもたらす適切な濃度で存在していてもよい。実際の実施形態において、スキムミルクは、本発明の組成物(凍結溶液)中に、約1%(w/v)から約10%(w/v)の濃度で存在してもよい。この文脈において、(脱脂乳としても知られる)スキムミルクは、全乳から全ての(乳脂肪とも称される)クリームが取り除かれたときに得られるミルクに関する一般的な意味で用いられる。有効なスキムミルク/脱脂乳は、本発明の凍結溶液/組成物に用いられ得る。概して、スキムミルク粉末は、本発明の凍結組成物の調製のために用いられる。このため、ここで供されるスキムミルクの濃度は、凍結溶液の容積に基づいたスキムミルクの重量%として参照される。
【0057】
また、グリセロールは、凍結中に細胞やカプセル化細胞の十分な保護をもたらす適切な濃度で本発明の組成物に存在していてもよい。実際の実施形態において、グリセロールは、約0.2(w/v)から約5%(w/v)の濃度で本発明の凍結溶液に存在してもよい。
【0058】
また、炭水化物は、凍結中に細胞やカプセル化細胞の十分な保護をもたらす適切な濃度で本発明の組成物に存在していてもよい。実際の実施形態において、炭水化物は、約1%(w/v)から約15%(w/v)の濃度で本発明の凍結溶液に存在してもよい。
【0059】
そのような組成物の実際の実施形態では、スキムキルクが約3%(w/v)から約8%(w/v)の濃度で存在し、グリセロールが約0.5%(w/v)から約2%(w/v)の濃度で存在し、炭水化物が約5%(w/v)から約13%(w/v)の濃度で存在している。さらなる一実施形態において、本発明の凍結組成物は、約5%(w/v)脱脂乳、約1%(w/v)グリセロールおよび約10%(w/v)炭水化物を含有する。実例の目的のために、ここに示すとすれば、そのような溶液は、100ml容のメモリ付き計量器にグリセロールの1g、スキムミルク粉末の5gおよびトレハロースの10gを計りとることにより調製されてもよい。そして、溶液の容積が2回蒸留滅菌水で100mlまで上げられる。
【0060】
上述の開示に従い、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含有する本発明の組成物は、ここに開示されるように、カプセル化細胞を凍結するために用いられ得る。しかしながら、スキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含有する本発明のそのような組成物は、ここに開示されるように、増加する濃度の凍結保護剤を含むカプセル化細胞の連続したインキュベーションを意味する凍結乾燥するためのカプセル化細胞を調製するためにも用いられ得る。従って、本発明は、凍結乾燥するためにカプセル化細胞を調製する方法にも関し、その方法がスキムミルク、グリセロールおよび炭水化物を含有する本発明の組成物中でカプセル化細胞をインキュベートすることを含む。
【0061】
本発明は、以下の制限されない実験に基づく実施例によりさらに立証されるであろう。
【実施例】
【0062】
<実施例1:インキュベーション溶液への凍結保護剤の逐次的添加を伴う凍結乾燥>
実験データ
ラクトバチルス・アシドフィルスのプロバイオティック細菌を、カプセル化し,凍結乾燥し、再加水し、生存度の計測として代謝活性をテストした。カプセルは、凍結乾燥および再加水の後、構造的完全性について分析した。
【0063】
細菌のカプセル化
波長600nmにおける1ODの光学密度でのラクトバチルス・アシドフィルスの細菌培養を採取し、セルロース硫酸ナトリウム塩およびポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(pDADMAC−化粧品材料の国際命名法(INCI)の基にGe18の名称としても知られる)中でカプセル化した。カプセル化細菌を、ドゥ マン、ロゴサおよびシャープ(MRS)メディウム中で、50rpmで振盪しながら37℃で培養した。
【0064】
凍結乾燥(リオフィリセーション)
カプセル化細菌およびフリーな細菌を、凍結保護剤として2回蒸留した滅菌水中における5%スキムミルク、1%のグリセロールまたはDMSOの逐次的添加を用い、エタノール/ドライアイス槽で凍結し、−80℃で保管した。フリーな細菌用の凍結メディウムは、逐次的なやり方で添加していないことを除いて、カプセル化細菌用のものと同じである。
【0065】
カプセル化細菌細胞用に、凍結保護剤を逐次的様式で以下のように添加した:
【0066】
一般的手順(培養メディウムの「系列希釈」用)
1mlあたり最大1,000カプセルまたはその倍数を用い、カプセル(細菌を含んでいる)を、フレッシュなMRSメディウムを含む50ml容ファルコンチューブに投入した。この細胞懸濁液(インキュベーション溶液)に、0.5ml/mlの凍結メディウムを凍結保護剤として添加し、凍結保護剤濃度50%(v/v)の凍結メディウムを得た。実際には、細胞懸濁液の全量が1mlであれば、0.5mlのメディウムを取り除き、0.5mlの凍結メディウムを添加すると、両者の50%希釈が得られる。カプセル化細胞を25分間インキュベートし、さらにインキュベーション溶液の50%(v/v)を凍結保存メディウムと交換した(すなわち、全量1mlの場合、0.5mlを取り除き、0.5mlの凍結メディウムを添加し、凍結メディウムの75%(v/v)の濃度を得た)。続くステップで再度50%のインキュベーションメディウムを凍結メディウムと置換する前に、再度25分間のインキュベーションを再び行った。最終のインキュベーションステップでは、カプセルのメディウムが100%凍結メディウムとなる。
【0067】
(A)DMSO凍結保護剤の逐次的添加
フレッシュなMRSメディウムの9mlを含む50ml容ファルコンチューブに16カプセルを投入した。この細胞懸濁液(インキュベーション溶液)に、200μlのDMSOを凍結保護剤として添加し、およそ2%(v/v)の初期DMSO濃度を得た。カプセル化細胞を25分間インキュベートし、さらに200μlのDMSOを添加し、約4.2%(v/v)のDMSO濃度を得た。続く3つのステップにおいて、10%の最終DMSO濃度(10mlのインキュベーション溶液に1mlのDMSO)に達するまで、追加の200μlのDMSOを添加する前に、再度25分間のインキュベーションを行った。
【0068】
(B)凍結保護剤としてスキムキルク/グリセロール混合物(水中に5%スキムミルクおよび1%グリセロール)の逐次的添加
本実施例では、フレッシュなMRSメディウムの9mlを含む50ml容ファルコンチューブに100の大きな手製カプセルを投入した。MRSメディウムの5mlをファルコンチューブから取り出し、続く連続したインキュベーションステップにおいて、凍結保護剤としてスキムミルクを含むインキュベーション溶液(水中に5%(w/v)スキムミルクおよび1%(w/v)グリセロール)の5mlを添加した。この実験では6つのインキュベーションステップを行い、凍結保護剤の濃度を順に50%、75%、87.5%、93.75%、97%、および100%に増加させており、最終のインキュベーションステップにおいてカプセル化細胞が凍結メディウム中にあることを意味する。スキムミルク凍結保護剤の添加後のそれぞれのステップにおけるインキュベーション時間をおよそ25分間とした。それぞれのインキュベーションステップの終わりに、カプセルを重力で沈降させ、それによりインキュベーションメディウムをピペッティングで取り除くことを許容した。そして、水中に5%(w/v)スキムミルクおよび1%(w/v)グリセロールでの最終のインキュベーションステップ後に、凍結したカプセル化細菌およびフリーな細菌の両者を、この凍結溶液中で直接(つまり、洗浄ステップを伴うことなく)一晩の凍結乾燥を受けさせた。凍結乾燥では、まず、100%凍結メディウムをプラスしたカプセルを、96%エタノール/ドライアイス槽を用いて衝撃凍結させた(shock-frozen)。そして、衝撃凍結させたペレットを、−80℃で保管してもよく、または、直ちに凍結乾燥に送出してもよい。いかなる凍結乾燥機でも製造者の指示に従うことにより凍結乾燥プロセスに用いることができる。本実験では、サーモ サイエンティフィック モデュリオD−230(Thermo Scientific ModulyoD-230)装置を用いた。これらの実験の結果を図1図9に示す。図1のカプセルの明視野顕微鏡像から明らかなように、本発明の方法におけるカプセルの連続したインキュベーションは、再加水後に、完全なカプセル化をもたらし、それゆえ、カプセル化の構造的完全性を向上させる。この点に関し図4および図5に示された像も参照すれば、本発明の方法の実施形態を用いて処理され、液体窒素またはエタノール/ドライアイスのいずれかで凍結乾燥されたセルロース硫酸塩カプセルが、再加水後に、平滑な(smooth)表面を有する本来の球形状を保持しており、これに対し、図6図9に示された像から明らかなように、凍結保護剤を含むことなく種々のバッファで凍結乾燥されたカプセルがかなり大きな程度にダメージを受け破壊されている。
【0069】
細胞が内部に含まれるカプセルの構造的完全性を保持することに加えて、本発明の凍結乾燥方法は、カプセル化細胞の顕著に高い生存率をももたらす。図2は、凍結の調製において凍結保護剤としてスキムミルクおよびグリセロールを増加する量で含有するインキュベーション溶液を用いたときに、凍結乾燥中におけるテストした細菌で(完全な)カプセルの保護効果を示す。保護効果は、凍結乾燥1日後に、続いて凍結乾燥された細菌を再加水する生存度テストにより検査した。生存度は、レファレンスとして調製したばかりの(freshly)カプセル化細菌細胞と比較したものであり、%生存度で表されている。図2に示すように、本発明の凍結乾燥方法を受けさせた後、カプセルは、凍結乾燥から細菌を保護しており(フリーな細胞における25%の生存度と比較して、カプセル化細菌における98%の生存度)、カプセル化細菌の生存度がフリーな細菌の生存度より顕著に高いことを意味している。
【0070】
図3は、凍結乾燥中の細菌の生存性に関し、本実施例で用いた2つの異なる/インキュベーション溶液(インキュベーション溶液1:凍結保護剤として増加する量のDMSOを含有するMRSメディウム、インキュベーション溶液2は増加する量のスキムミルクを含有する)の比較を示す。図3に表されるように、増加する濃度のスキムミルク(それに加えて、追加の凍結保護剤のグリセロールを含む)を含むインキュベーションは、凍結乾燥を受けさせていない調製したばかりのカプセル化細菌細胞と比較して、変わらない生存率をもたらすものの、DMSO処理の結果がほんの9%の生存率であり効率的ではなかった。
【0071】
<実施例2:セルロース硫酸ナトリウム塩でのカプセル化ラクトバチルス属の生存性における凍結保護剤としたトレハロースおよびスキムミルクの効果>
本実施例では、凍結乾燥されたカプセル化ラクトバチルス・アシドフィルスの生存性を、大気条件下に保管したときに、補足的な凍結保護剤として10%のトレハロースを含むかまたは含まずにテストした。連続したインキュベーションステップでも用いられる凍結乾燥溶液は、5%(w/v)脱脂乳、1%(w/v)グリセロールおよび10%(w/v)トレハロースを含有する水溶液とした。
【0072】
実験の詳細
予め凍結されたプロバイオティック細菌、ラクトバチルス・アシドフィルスのバイアルを−80℃から解凍し、20μlを50mlのMRSメディウムに添加した。続いて細菌を50rpmの速度で振盪しながら37℃で一晩培養した。翌日、細菌培養の光学密度をティーキャン インフィニット M200(Tecan Infinite M200)により600nm(OD600)で測定した。概して、OD600の読み取り値の1は、細菌が対数増殖期にあるときに対応する。細菌は、カプセル化されるときに対数増殖期にあるべきである。
【0073】
細菌のカプセル化では、OD600の読み取り値1の細菌培養の100μlを、0.9%の塩化ナトリウムを含有する1.8%のセルロース硫酸ナトリウム塩の2mlと混合した。カプセル化プロセスのために、5ml容のシリンジおよび23ゲージ(G)のニードルを用いた。細菌培養を、セルロース硫酸ナトリウム塩と混合し、1.3%のpDADMAC(24キロダルトン(kDa))、0.9%の塩化ナトリウムの150mlを含有するゲル化槽に滴下した。カプセルをpDADMAC中で4分間ゲル化させた。続いて、1倍(1×)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の300mlを加え、カプセルを8分間洗浄した。洗浄溶液の300mlを取り除き、さらにPBSの400mlを加え、カプセルをさらに4分間洗浄した。洗浄溶液を排液し、さらにPBSの100mlで3回の洗浄、フレッシュなMRSメディウムの30mlで3回の洗浄を行った。そして、カプセルを、フレッシュなMRSメディウムの100mlを含む250ml容コニカルフラスコに移した。これらのカプセルを50rpmの速度で振盪しながら37℃で一晩培養した。
【0074】
フリーな細菌では、一晩培養したOD600=1のラクトバチルス細胞の5mlを、15ml容ファルコンチューブに移し、3000gで5分間遠心分離した。細菌のペレットを、10%トレハロースを含むかまたは含まない凍結保存メディウム(水中に5%(w/v)スキムミルク、1%(w/v)グリセロール)の5mlに再懸濁させた。再懸濁させた細菌を15ml容ファルコンチューブに0.5ml分×10本に分取した。再懸濁させた細胞の5μlを96ウェルプレートの4つのウェルのそれぞれに入れ、細菌細胞の代謝活性を測定するためにアラマーブルーアッセイを行った。アラマーブルー(登録商標)は、レザズリンを蛍光分子であるレゾルフィンに転換するという、生きた細胞の自然の還元力を用いる立証された細胞生存度インジケータである。非蛍光性インジケータ色素であるレザズリンは、代謝的に活性な細胞の還元反応により、明赤色の蛍光を発するレゾルフィンに転換される。発生した蛍光の量は、生きた細胞の数に比例する。フレッシュなMRSメディウムの100μlおよびアラマーブルー試薬の10μlを細菌サンプルの5μlに添加し、サンプルを50rpmの速度で振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。アラマーブルーアッセイプレートをティーキャン インフィニット M200で読み取った。凍結保護メディウム中のフリーな細胞の残りの分は、エタノール/ドライアイス槽で凍結し、−80℃で保管する。
【0075】
一晩培養後、細菌含有カプセルを、まず250ml容フラスコ中のフレッシュなMRSメディウム50mlで3回洗浄し、フレッシュなMRSメディウムの10mlを含む15ml容ファルコンチューブに投入した。MRSメディウムの5mlを取り出し、(フリーな細菌用として)10%(w/v)トレハロースを含むかまたは含まない凍結保存メディウムの5mlを添加した。カプセルをこの懸濁液中で25分間インキュベートし、5mlのメディウムを取り除き、フレッシュな凍結保存メディウム(適宜、10%トレハロースを含むかまたは含まない)の5mlで置換した。この手順をさらに4回繰り返し、凍結保存メディウムの比率を凍結保存メディウムの最初の添加後の50%から、最終的な98.5%に上昇させた。続いて、メディウムから1つのカプセルを96ウェルプレートの4つのウェルのそれぞれに入れ、カプセル中の細菌細胞の代謝活性のレベルを測定するためにアラマーブルーアッセイを行った。アラマーブルー試薬の10μlおよびフレッシュなMRSメディウムの100μlを、カプセルを含むそれぞれのウェルに添加し、サンプルを50rpmの速度で振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。アラマーブルーアッセイプレートをティースキャン インフィニット M200で読み取った。凍結保存メディウムから4つのカプセルを、5%スキムミルク、1%を含有し、10%トレハロースを含むかまたは含まない(適宜)水系の凍結乾燥溶液の500μlを含む15ml容ファルコンチューブに投入した。そして、これらカプセルをエタノール/ドライアイス槽で凍結し、−80℃で保管した。
【0076】
スキムミルク凍結保護剤を含み10%トレハロースを含むかまたは含まないで、フリーな細菌またはカプセルのいずれかを含むファルコンチューブを、サーモ サイエンティフィック モデュリオD−230(Thermo Scientific ModulyoD-230)凍結乾燥装置を用いて一晩凍結乾燥した。凍結乾燥された細菌の生存性をテストするために、それぞれの時点で、凍結乾燥されたフリーなラクトバチルスおよびカプセル化ラクトバチルスのデュプリケート(duplicate)サンプルを、500μlのミリポア(Millipore)水、または、5−10mlのMRSメディウムをそれぞれ用いて5分間再加水した。そして、フリーなラクトバチルスおよびラクトバチルスのカプセルの両者で、アラマーブルーアッセイを行った。アッセイは、デュプリケートサンプルのそれぞれについて以下の条件のそれぞれの4回の繰り返しで構成される:
1.ブランクサンプル(100μlのMRSメディウム+10μlのアラマーブルー)
2.トレハロースを含んで凍結乾燥させたフリーなラクトバチルスサンプル(5μlの再加水した培養+100μlのMRSメディウム+10μlのアラマーブルー)
3.トレハロースを含まずに凍結乾燥させたフリーなラクトバチルスサンプル(5μlの再加水した培養+100μlのMRSメディウム+10μlのアラマーブルー)
4.トレハロースを含んで凍結乾燥させたカプセル化細菌サンプル(ウェルあたり1カプセル+100μlのMRSメディウム+10μlのアラマーブルー)
5.トレハロースを含まずに凍結乾燥させたカプセル化細菌サンプル(ウェルあたり1カプセル+100μlのMRSメディウム+10μlのアラマーブルー)
【0077】
サンプルを50rpmの速度で振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。アラマーブルーアッセイプレートをティーキャン インフィニット M200で読み取った。5%スキムミルク、1%グリセロールを含み、10%トレハロースを含むかまたは含まないで、凍結乾燥後室温での2ヶ月以上にわたる凍結保存後の細菌の生存度を評価するために、サンプルを再加水した時点を、凍結乾燥後の1、2、3、4、6、7および8週とした。
【0078】
この実験の結果を図10に示す。図10におけるそれぞれのデータポイントは、デュプリケートの凍結乾燥サンプル(それぞれのサンプルは4回テストした)の平均を表しているが、2つの例外:10%トレハロースを含むフリーな細菌の第6週および10%トレハロースを含むカプセル化細菌の第8週があり、いずれの場合もデュプリケートの1つのサンプルが完全に分解しており(原因は明らかではない)、含まれていない。生存率は、相対的蛍光ユニット(RFU)で測定した。図10から明らかなように、増加する濃度の凍結メディウム(凍結保護剤として5%脱脂乳、1%グリセロール、10%トレハロースを含有する)を含む溶液中で、カプセル化細菌細胞を連続してインキュベートする本発明の凍結乾燥方法は、60%以上の細胞の生存率、それによりフリーな細胞の生存率に対して顕著な改善をもたらす。この60%以上の生存率は、増加する濃度のスキムミルクのみでの細胞の処理により2週間の保管期間で達成されたものであるが、10%濃度でのトレハロースの添加により8週全体のテスト期間でこの顕著に増加した生存率を維持しており、カプセル/カプセル化細胞の貯蔵寿命を延長することを意味している。この結果は、また、本発明の方法およびこの方法により得られる凍結乾燥したカプセル化細胞が、プロバイオティック細胞等の細胞(他の細胞も同様)を使用されるまで一定の期間保管する商業的な応用のために有望な将来性を有することを示している。
【0079】
<実施例3:凍結保護剤としてスキムミルク、トレハロースおよびグリセロールを含む組成物を用いるカプセル化ラクトバチルス・カゼイの凍結乾燥>
予め凍結したプロバイオティック細菌、ラクトバチルス・カゼイのバイアルを−80℃から解凍し、20μlを50mlのMRSメディウムに添加した。続いて、細胞を、50rpmの速度で振盪しながら37℃で一晩培養した。翌日、細菌培養の光学密度をティーキャン インフィニット M200により600nm(OD600)で測定した。概して、OD600の読み取り値の1は、細菌が対数増殖期にあるときに対応する。細菌は、カプセル化されるときに対数増殖期にあるべきである。
【0080】
細菌のカプセル化では、OD600の読み取り値1の細菌培養の100μlを、0.9%の塩化ナトリウムを含有する1.8%のセルロース硫酸ナトリウム塩の2mlと混合した。カプセル化プロセスのために、5ml容のシリンジおよび23ゲージ(G)のニードルを用いた。細菌培養を、セルロース硫酸ナトリウム塩と混合し、1.3%のpDADMAC(24キロダルトン(kDa))、0.9%の塩化ナトリウムの150mlを含有するゲル化槽に滴下した。カプセルをpDADMAC中で4分間ゲル化させた。続いて、1倍(1×)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の300mlを加え、カプセルを8分間洗浄した。洗浄溶液の300mlを取り除き、さらにPBSの400mlを加え、カプセルをさらに4分間洗浄した。洗浄溶液を排液し、さらにPBSの100mlで3回の洗浄、フレッシュなMRSの30mlで3回の洗浄を行った。そして、カプセルを、フレッシュなMRSメディウムの100mlを含む250ml容コニカルフラスコに移した。これらのカプセルを50rpmの速度で振盪しながら37℃で一晩培養した。
【0081】
一晩培養後、細菌含有カプセルを、まず250ml容フラスコ中のフレッシュなMRSメディウムの50mlで3回洗浄し、フレッシュなMRSメディウムの10mlを含む15ml容ファルコンチューブに投入した。MRSメディウムの5mlを取り出し、凍結保存メディウム(水中に、5%(w/v)スキムミルク、1%(w/v)グリセロール、10%(w/v)トレハロース)の5mlを添加した。カプセルをこの懸濁液中で25分間インキュベートし、5mlのメディウムを取り除き、フレッシュな凍結保存メディウムの5mlで置換した。この手順をさらに4回繰り返し、凍結保存メディウムの比率を凍結保存メディウムの最初の添加後の50%から、最終的な98.5%に上昇させた。
【0082】
最後に、凍結保存メディウムからのカプセルを、5%スキムミルク、1%グリセロールおよび10%トレハロースを含有する水系の凍結乾燥溶液の500μlを含む15ml容ファルコンチューブに投入した。そして、これらのカプセルをエタノール/ドライアイス槽で凍結し、−80℃で保管した。
【0083】
カプセル化前後のカプセル化細胞を示す図11A−11C(図11Aはカプセル化直後のラクトバチルス・カゼイのカプセルを示しており、図11Bは凍結乾燥前でカプセル化1日後のラクトバチルス・カゼイのカプセルを示しており、図11Cは凍結乾燥し再加水したラクトバチルス・カゼイのカプセルを示している)から明らかなように、ラクトバチルス・カゼイのカプセルは、凍結乾燥後に完全であるように見えており、凍結乾燥により影響されないことを意味している。
【0084】
視覚的検査に加えて、カプセル化ラクトバチルス・カゼイ細菌の生存度を、上述の実施例2で説明したように、凍結乾燥前および凍結乾燥後にチェックした。図12から明らかなように、その結果は、ラクトバチルス・カゼイ細菌の生存度が凍結乾燥により影響されることを示しており、最大の生存度が凍結乾燥後に得られることを意味している。従って、実施例3では、本発明の凍結乾燥方法およびそれぞれの組成物の有効性および適合性が確認できる。
【0085】
<実施例4:凍結保護剤としてスキムミルク、トレハロースおよびグリセロールを含む組成物を用いたカプセル化ビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムの凍結乾燥>
ビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムは、完全な嫌気性細菌の一例である。それゆえ、細胞を、MRSメディウム中の嫌気性条件下、37℃および50rpmで一晩培養した。培養中に完全な嫌気性環境を創り出すためにガスパック(Gaspak、BD)を用いた。
【0086】
培養後ビフィドバクテリアを、実施例2および3に記載したように、ただし嫌気性条件下で、セルロース硫酸ナトリウム塩を用いてカプセル化した。一晩培養後、細菌含有カプセルを、まず250ml容フラスコ中のフレッシュなMRSメディウムの50mlで3回洗浄し、フレッシュなMRSメディウムの10mlを含む15ml容ファルコンチューブに投入した。MRSメディウムの5mlを取り出し、凍結保存メディウム(水中に5%(w/v)スキムミルク、1%(w/v)グリセロール、10%(w/v)トレハロースを含む)の5mlを添加した。カプセルをこの懸濁液中で25分間インキュベートし、5mlのメディウムを取り除き、フレッシュな凍結保存メディウムの5mlで置換した。この手順をさらに4回繰り返し、凍結保存メディウムの比率を凍結保存メディウムの最初の添加後の50%から、最終的な98.5%に上昇させた。
【0087】
最後に、凍結保存メディウムからのカプセルを、5%スキムミルク、1%グリセロールおよび10%トレハロースを含有する水系の凍結乾燥溶液の500μlを含む15ml容ファルコンチューブに投入した。そして、これらのカプセルをエタノール/ドライアイス槽で凍結し、−80℃で保管した。
【0088】
カプセル化前後のカプセル化細胞を示す図13図13Aは凍結乾燥前でカプセル化1日後のカプセルを示しており、図13Bは凍結乾燥し再加水したビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムのカプセルを示している)から明らかなように、ビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムのカプセルは、凍結乾燥後に、僅かに完全でないように見える。
【0089】
視覚的検査に加えて、カプセル化ビフィドバクテリウム・インファンティス細菌の生存度を、上述の実施例2で説明したように、凍結乾燥前および凍結乾燥後にチェックした。図14から明らかなように、ビフィドバクテリウム・インファンティス・ロンガムの生存度は、どういうわけか凍結乾燥に影響されており、図14では凍結乾燥後に約50%の細菌が生き残っていることを示している。しかしながら、フリーな(カプセル化されていない)ビフィドバクテリウム・インファンティス細菌の生存度がより低いと思われる。さらに、カプセルが凍結乾燥プロセス中に完全に乾燥することで、より高い生存度が期待され得る。従って、実施例4では、本発明の凍結乾燥方法およびそれぞれの組成物の有効性および適合性が確認できる。
【0090】
ここに実例を挙げて記載された本発明では、特に記載していないものの、いずれかの要素や複数の要素、制限や複数の制限が欠落しても当然の如く実行することができる。このため、例えば、用語「有する(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」等は、拡張的に、制限なく読み取られるべきである。さらに、ここに用いられる用語や表現は、説明用語として制限なく用いられるものであり、示され記載された特徴やその一部の同義語を排除するものとしてそのような用語や表現の使用の意図があるものではなく、クレームした発明の範囲内で種々の改変が可能であることが承認されるものである。従って、本発明が代表的な実施形態および選択的な特徴により限定的に開示されているとしても、本発明の改変や変更であってここに具体的に表現され、ここに開示された改変や変更が当業者により頼りにされてもよく、そのような改変や変更がこの発明の範囲内であると考えられるべきである。
【0091】
本発明は、ここに概括的に包括的に記載されている。包括的な開示の範囲となるようなさらに制限されたスピーシーズやサブジェネリックなグルーピングも本発明の部分を形成する。このことは、除かれる材料がここに特に記載されているか否かにかかわらず、ジーナスからいずれかの主題を除く条件やネガティブな制限を有する本発明の包括的な記載を含むものである。
【0092】
他の実施形態はクレームの範囲内である。さらに、本発明の特徴や態様がマーカッシュグループの用語で記載される場合、当業者は、それにより、本発明がいずれかの個々の要素やマーカッシュグループの要素のサブグループの用語としても記載されていることを承認するであろう。
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