特許第6643988号(P6643988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6643988乳児の過剰な泣きのためのプロバイオティクス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643988
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】乳児の過剰な泣きのためのプロバイオティクス
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20200130BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20200130BHJP
   A23L 33/135 20160101ALN20200130BHJP
   A23C 9/152 20060101ALN20200130BHJP
   A61K 35/74 20150101ALN20200130BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20200130BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20200130BHJP
   A61P 25/20 20060101ALN20200130BHJP
   A61P 25/22 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   C12N1/20 AZNA
   C12N1/20 E
   C12Q1/04
   !A23L33/135
   !A23C9/152
   !A61K35/74 A
   !A61P1/04
   !A61P25/04
   !A61P25/20
   !A61P25/22
【請求項の数】3
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-532685(P2016-532685)
(86)(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公表番号】特表2016-526918(P2016-526918A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014066970
(87)【国際公開番号】WO2015018883
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年7月27日
(31)【優先権主張番号】13382324.5
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】EP
【微生物の受託番号】CECT  CECT 8330
【微生物の受託番号】CECT  CECT 7894
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511083949
【氏名又は名称】エービー−バイオティクス,エセ.ア.
(73)【特許権者】
【識別番号】516039631
【氏名又は名称】ベンファルマ ラボラトリオス, エセ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クニェ カステリャーナ, ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】ラツァーロ マレン, エリザベット
(72)【発明者】
【氏名】エスパダレル マソ, ジョルディ
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−539371(JP,A)
【文献】 特開2010−235528(JP,A)
【文献】 Biosci. Biotechnol. Biochem., 2010, Vol.74, No.11, p.2171-2175
【文献】 Food Microbiol., 2012, Vol.31, p.116-125
【文献】 J. Biosci. Bioeng., 2008, Vol.106, No.1, p.69-73
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−10の産生を誘導する能力を有するペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)生細胞10から1012cfu/gを含む細菌性組成物であって、
ペディオコッカス ペントサセウス生細胞の存在下でのTHP−1マクロファージによる、正規化された増加として表されるインターロイキン−10の産生が、陰性コントロールである、ペディオコッカス ペントサセウス生細胞の非存在下でのTHP−1マクロファージによるインターロイキン−10の産生よりも高く、
前記正規化された増加が
(a)Public Health Englandの細胞収集物、カタログ番号88081201から得たTHP−1単球細胞株を、10%ウシ胎児血清(FBS)及び最終濃度0.16μMのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)を含むロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地において増殖させることによってTHP−1単球をマクロファージに分化させる工程、
(b)24ウエルELISAプレートにおいて10%FBSを含むRPMI1640培地中で、THP−1マクロファージを、最終濃度マクロファージ10個/ウエルまで増殖させる工程、
(c)最終濃度10ng/mlのリポ多糖類(LPS)と共にTHP−1マクロファージを2.5時間インキュベートし、THP−1マクロファージをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水培地(D−PBS)で洗浄する工程、
(d)Man、Rogosa and Sharpe(MRS)培地中、37℃、5%CO雰囲気中で一晩増殖させることによってペディオコッカス ペントサセウス生細胞の培養物を用意する工程、
(e)各ELISAウエルに10%FBSを含むRPMI 1640培地500μl及び最終比25:1、すなわち、ペディオコッカス ペントサセウス(pediococcus pentosaceus)生細胞2.5×10cfu:THP−1マクロファージ10個を得るために適切な量のペディオコッカス ペントサセウス生細胞の希釈物を加える工程、
(f)THP−1マクロファージを、ペディオコッカス ペントサセウス生細胞と共に2.5時間、37℃で、又は陰性コントロールとして同じ条件下でペディオコッカス ペントサセウス生細胞を含まずに、インキュベートする工程、
(g)THP−1マクロファージをD−PBS培地で洗浄してペディオコッカス ペントサセウス生細胞を除去し、続いて50μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlアンピシリン及び12μg/mlクロラムフェニコールを補充した10%FBSを含むRPMI1640培地をTHP−1マクロファージに加え、37℃、5−7%COでインキュベートし、5及び24時間でアリコートを取る工程、
(h)アリコートを遠心分離し、フローサイトメトリーによるインターロイキン−10定量化のために上清をアッセイする工程、並びに
(i)インターロイキン−10濃度の正規化された増加を式(IL1024h−IL105h)/IL105hで算出する工程であって、IL105h及びIL1024hがそれぞれpg/mlでのインターロイキン−10の5及び24時間での濃度である、工程
によって決定され、
ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)がスペインタイプカルチャーコレクションに寄託番号CECT 8330で寄託されたペディオコッカス ペントサセウスである、細菌性組成物。
【請求項2】
ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)CECT 7894の細胞10から1012cfu/gをさらに含む、請求項1に記載の細菌性組成物。
【請求項3】
新規ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)生細胞をスクリーニング及び単離するための方法であって、
以下の工程:
(a)Public Health Englandの細胞収集物、カタログ番号88081201から得たTHP−1単球細胞株を、10%ウシ胎児血清(FBS)及び最終濃度0.16μMのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)を含むロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地において増殖させることによってTHP−1単球をマクロファージに分化させる工程、
(b)24ウエルELISAプレートにおいて10%FBSを含むRPMI1640培地中で、THP−1マクロファージを、最終濃度マクロファージ10個/ウエルまで増殖させる工程、
(c)最終濃度10ng/mlのリポ多糖類(LPS)と共にTHP−1マクロファージを2.5時間インキュベートし、THP−1マクロファージをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水培地(D−PBS)で洗浄する工程、
(d)Man、Rogosa and Sharpe(MRS)培地中、37℃、5%CO雰囲気中で一晩増殖させることによってペディオコッカス ペントサセウス生細胞の培養物を用意する工程、
(e)各ELISAウエルに10%FBSを含むRPMI 1640培地500μl及び最終比25:1、すなわち、ペディオコッカス ペントサセウス(pediococcus pentosaceus)生細胞2.5×10cfu:THP−1マクロファージ10個を得るために適切な量のペディオコッカス ペントサセウス生細胞の希釈物を加える工程、
(f)THP−1マクロファージを、ペディオコッカス ペントサセウス生細胞と共に2.5時間、37℃で、又は陰性コントロールとして同じ条件下でペディオコッカス ペントサセウス生細胞を含まずに、インキュベートする工程、
(g)THP−1マクロファージをD−PBS培地で洗浄してペディオコッカス ペントサセウス生細胞を除去し、続いて50μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlアンピシリン及び12μg/mlクロラムフェニコールを補充した10%FBSを含むRPMI1640培地をTHP−1マクロファージに加え、37℃、5−7%COでインキュベートし、5及び24時間でアリコートを取る工程、
(h)アリコートを遠心分離し、フローサイトメトリーによるインターロイキン−10定量化のために上清をアッセイする工程、並びに
(i)インターロイキン−10濃度の正規化された増加を式(IL1024h−IL105h)/IL105hで算出する工程であって、IL105h及びIL1024hがそれぞれpg/mlでのインターロイキン−10の5及び24時間での濃度である、工程
に従って、ペディオコッカス ペントサセウス生細胞のプール由来の新たなペディオコッカス ペントサセウス生細胞を、インターロイキン−10の産生を誘導する能力についてアッセイする工程、及び
II)正規化された増加が(I)の工程に従って決定される場合に、陰性コントロールによるインターロイキン−10の産生よりも高い、正規化された増加として表されるインターロイキン−10の産生を誘導するプールから新たなペディオコッカス ペントサセウス生細胞を選択及び単離する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、微生物学及び栄養の分野に、詳細にはペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)細胞をベースとする新規なプロバイオティクス組成物に関する。それらの生物機能性により、組成物は、乳児における過剰な泣き(crying)の改善において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
過剰な泣きは、乳児の人生の最初の12ヵ月における小児科医来診の最も多い原因の1つである。その頻度は、40%に至る値に達する場合がある。その泣きが3ヵ月を過ぎて継続する乳児は、不安、攻撃性、多動性、アレルギー、睡眠障害を含む学校時代での有害転帰の危険性があり、後年に精神的不健康の危険さえある。過剰な泣きは、乳児にとってだけでなく両親にとっても、及び一般に家族の生活の質に関する重大な問題である。過剰な泣きは、親の疲弊をもたらし、集中困難、忍耐の喪失、欲求不満、無力感、子供に害を及ぼす恐れ、母乳栄養の早期休止及び彼らの子供との対面交流の低減を含む多数の悪い結果を有する。さらにいくつかの場合では欲求不満は、子供を叩く又は揺するなどの泣きを止めさせるためのある種の有害な行動を生じる場合がある。
【0003】
乳児の泣きが明らかな疾病状態に一般的に関連するにもかかわらず、過剰な発作性の泣きは、健康で栄養十分と見られる乳児に原因不明のさまざまな状態の結果として(例えば乳児疝痛)明確な理由もなく現れる場合がある。そのような状態の原因及びそれらがどのように規定されるべきかに関する合意はほとんどない。しかし、それらが消化管の未成熟性、痙攣性結腸(spastic colon)、食物過敏症、消化管内微生物叢の変化及びガス産生などの胃腸障害によってしばしば引き起こされる場合があることが提案されている。
【0004】
これまで、さまざまな薬物療法が、泣き及びぐずりの低減のために、特に「夜泣きする乳児」において使用されてきた。最も一般的に使用されている薬物の1つはシメチコンであるが、臨床治験の結果は確証的ではない。ジシクロミン塩酸塩又はシメトロピウム臭化物をべースとする他の治療は、本発明者にさらに有効であると示されているが、それらの使用を、特に月齢6ヵ月未満の乳児において限定する望ましくない副作用をもたらす場合がある。
【0005】
ハーブ薬は、科学的証拠はほとんどないが代替法として提案されている。市販の組成物ColiMil(登録商標)(カミツレ(Matricaria recutita)、ウイキョウ(Foeniculum vulgare)及びレモンバーム(Melissa officinalis)由来の植物抽出物を含む)は、二重盲検プラセボ−コントロール臨床治験において泣き時間を低減することが示された。対照的に、ペパーミント(Mentha piperita)抽出物は、乳児疝痛の治療のためには有効でないことが報告されている。さらに、嘔吐、眠気、便秘及び食欲不振を含むいくつかの有害作用がハーブ系サプリメントを評価するいくつかの研究において同定されている。
【0006】
食物アレルギーを克服するように設計された調製粉乳(すなわち、低ラクトース含有量又は部分的に加水分解された乳清タンパク質を含む処方)は、泣きエピソードを低減すると報告されている。しかしこれらの処方は、その過剰な泣きが食物アレルギーに主に関連している乳児に恩恵を与えることができる。高繊維又は繊維が豊富な処方も可能性がある治療として提案されているが、標準的処方と比較した場合に症状に顕著な差異は見出されていない。
【0007】
異常な腸内細菌叢が過剰な泣き状態に寄与しているとの仮説に基づいて、有望な治療としてプロバイオティクスに非常な関心が生じている。プロバイオティクスは「一定量での経口摂取において、本来の基本的栄養を超える健康上の利益を発揮する生きている微生物」と定義される。ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)又はラクトバチルス(Lactobacillus)属由来のいくつかの乳酸菌及び種は、特定の健康上の利益を促進することが示されていることを意味するプロバイオティクスである。プロバイオティクス細菌は、毒性の欠如、生存率、接着及び有益な効果に関連するいくつかの要件を満たさなければならない。これらのプロバイオティクス特性は、同じ種の細菌であってさえ株依存的である。したがって、望ましいプロバイオティクス機能を発揮するこれらの株を見出すことは重要である。
【0008】
過剰な泣きの治療のために研究されているプロバイオティクス組成物はごくわずかである。ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)GG、ラクトバチルス・ラムノサスLC705、ビフィドバクテリウム・ブレヴェ(Bifidobacterium breve)Bbi99及びプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)ssp.シェルマニ(shermanii)JSを含むプロバイオティクス処方の有効性は、泣きパターンに満足のいく結果を伴うことなく研究されている(Mentula, S.等"Microbial composition and fecal fermentation end products from colicky infants - A probiotic supplementation pilot", Microbial Ecology in Health and Disease 2008, vol. 20, no. 1, p 37-47)。別の研究は、アルファラクトアルブミンリッチ及びプロバイオティクス補充処方(ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis))の疝痛への効果を評価した。この処方は、哺乳関連胃腸管副作用、易刺激性及び興奮(agitation)を低減したが、泣き持続時間に差異は見出されなかった(Dupont, C.等"Α-Lactalbumin-Enriched and Probiotic-Supplemented Infant Formula in Infants with Colic: Growth and Gastrointestinal Tolerance" European Journal of Clinical Nutrition 2010, vol. 64, no. 7, p 765-767)。疝痛に関連する過剰な泣きの治療のためのラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 17938の有益な効果は、国際公開第2007142596号に開示されている。この株の有効性は、乳児の泣きに良好な転帰を有してアッセイされたが(Savino、F. 等"Lactobacillus reuteri (American Type Culture Collection Strain 55730) versus Simethicone in the Treatment of Infantile Colic: A Prospective Randomized Study" Pediatrics 2007, vol. 119, no. 1: e124-e130; Savino, F. 等"Lactobacillus reuteri DSM 17938 in Infantile Colic: A Randomized, Double-Blind、Placebo- Controlled Trial " Pediatrics 2010, vol. 126, no. 3: e526-e533; Szajewska, H. 等"Lactobacillus reuteri DSM 17938 for the Management of Infantile Colic in Breastfed Infants: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial", Journal of Pediatrics 2012, vol. 162, no. 2, p 257-262)、腸管の生物多様性を改善できなかった(Roos, S. 等 “454 Pyrosequencing Analysis on Faecal Samples from a Randomized DBPC Trial of Colicky Infants Treated with Lactobacillus reuteri DSM 17938”, PLoS ONE 2013, vol. 8, no. 2, e56710 1-5)。
【0009】
疝痛を有する乳児の腸内微生物叢の研究についての最近の論文において、過剰な泣きが高レベルの病原体及び抗炎症乳酸桿菌(lactobacillus)の低減による炎症の増加によって生じる可能性があることが提案されている(De Weerth, C. 等"Intestinal Microbiota of infants With Colic: Development and Specific Signatures" Pedriatrics 2013, vol. 131, Number 2, e550-e558)。
【0010】
国際公開第2007142596号は、ラクトバチルス・ロイテリDSM17938の株が、大量の抗炎症サイトカインIL−10を促進するその能力により乳児疝痛の治療において有用であることを開示している。
【0011】
ペディオコッカス・ペントサセウス及びペディオコカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)は、野菜及び肉の発酵において一般に使用されており、食品を腐らせる細菌及び食品が媒介する病原体の増殖を防ぐために飼料に食品保存剤として加えられている。しかし、ヒトにおけるプロバイオティクスとしての使用のためのペディオコッカス・ペントサセウスをベースとする製品は市場にないと考えられている。
【0012】
植物由来ペディオコッカス・ペントサセウス株は、オボアルブミン感受性化マウス脾臓細胞におけるインターフェロンガンマ及びインターロイキンIL−12 p70の分泌レベルの誘導因子として、並びにIL−4産生の抑制因子として開示されている。したがって、細菌は、免疫活性を有効に刺激でき、そのような炎症促進性サイトカインの誘導によりアレルギー阻害効果を示した(Jonganurakkun, B. 等"Pediococcus pentosaceus NB-17 for probiotic use", Journal of Bioscience and Bioengineering 2008 vol.106, Issue 1, p 69-73)。
【0013】
同じ方向で、Igarashi T.2010は、株ペディオコッカス・ペントサセウス(KKM122)が炎症促進性サイトカインIL−12の産生を強く誘導することを開示している(Igarashi T. "Study of the relationship between changes in lactic acid bacterial cell components and stimulation of IL-12 production under salt-stressed conditions", Bioscience、Biotechnology and Biochemistry 2010, 74, p 2171-2175)。
【0014】
Vitali等2012は、27個の免疫メディエーター(サイトカイン、ケモカイン及び増殖因子)の合成を調節する性能についてさまざまな種に属する乳酸菌の株48個の研究を開示している。そのような免疫メディエーターにおいて、アッセイはL−10を検出するように用意された。アッセイは、LPSで刺激したCaco−2及びPBMC細胞で実施された。結果は、わずかなケモカインが刺激されたことを示していた。炎症促進性活性を有する免疫メディエーター(IL−17、エオタキシン及びインターフェロンガンマ)は、すべての株によって顕著に刺激され、サイトカインIL−1ベータ、ケモカインインターフェロンガンマ誘導タンパク質−10(IP−10)、サイトカインIL−6、及びケモカインマクロファージ炎症タンパク質−1アルファ(MIP−1アルファ)が続いた。わずかな株だけが抗炎症活性を有するサイトカインの合成を増加させた。検査した株の内、トマトから単離されたペディオコッカス・ペントサセウスの株は、サイトカインIL−1ベータ、IL−4、IL−17、及びインターフェロンガンマを刺激したが、IL−10はしなかった。免疫調節活性に基づいてこの株は、新規プロバイオティクス候補としてのさらなる特徴づけのために本研究において選択されなかった(Vitali, B. 等"Novel probiotic candidates for humans isolated from raw fruits and vegetables", Food Microbiology 2012, 31(1), p 116-125)。
【0015】
したがって、過剰な発作性の泣きは、両親及び乳児の両方に、差し迫った、非常に重大な結果をまねく可能性があることは明白である。したがって、安全で有効な組成物及び治療が必要である。この分野においてプロバイオティクスは、現在の療法への有望な代替物と考えられるが、さらなる調査が必要である。
【発明の概要】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、乳児における過剰な泣きの改善において有用な新たな組成物及び薬を提供することである。
【0017】
問題を解決するための手段は、本発明者らが乳児における過剰な泣きの改善において有用な関連する生物機能性を有することを見出したペディオコッカス・ペントサセウスの新たな株に基づく。
【0018】
プロバイオティクス製剤において最も一般的に使用される細菌が、乳酸桿菌及びビフィドバクテリウム属由来であることを最初に記載することは重要である。したがって、ペディオコッカス属はプロバイオティクスとしての使用のためには非常に稀であり、子供にはさらに通常ではない。
【0019】
上に述べたとおり先行技術は、過剰な泣きが、病原体レベルの増加及び抗炎症乳酸桿菌の低減による炎症の増加によって生じる可能性があることを記載している。ラクトバチルス・ロイテリDSM 17938(L.ロイテリATCC 55730に由来する)が、多量の抗炎症性サイトカインインターロイキン−10(IL−10)を促進するその能力によって乳児疝痛の治療において有用であることも記載されている。したがって、IL−10の量を増加させる能力は泣きの改善に関連すると考えられる。
【0020】
しかし、先行技術はこの特性を有するペディオコッカス・ペントサセウス株を記載していないと考えられる。実際に関連する先行技術は、本発明とは完全に反対の方向である特性を有するペディオコッカス・ペントサセウス株を記載している。したがって、IL−10の産生を誘導する能力は、ペディオコッカス・ペントサセウス細菌の固有の又は本来の特性ではない。例えば、Igarashi T.2010は、本発明のものとは反対の効果である炎症促進性サイトカインIL−12の産生を強く誘導し、それにより炎症を生じるペディオコッカス・ペントサセウス(KKM122)の株を開示している。さらにVitali等2012は、IL−10を含む27個の免疫メディエーターの決定を可能にする広範な研究を開示している。しかしわずかな株だけが抗炎症活性を有するサイトカインの合成を増加させ、トマトから単離されたペディオコッカス・ペントサセウスの株はサイトカインIL−1ベータ、IL−4、IL−17及びインターフェロンガンマを刺激したが、IL−10には効果を有さなかった。IL−10を決定するためにVitali等2012において使用されたアッセイが本発明において記載されるものに非常に類似していると述べることは妥当であるが、意外なことに、IL−10を誘導する能力を有するペディオコッカス・ペントサセウスの株はVitali等2012において同定されていない。
【0021】
要約すると、この特性を有する細菌に関する先行技術を見た場合、ペディオコッカス・ペントサセウスはこの特性を有する細菌種中に見出されていない。したがって、本明細書に記載の腸管における炎症を低減するためにIL−10の産生を誘導する能力を有するペディオコッカス・ペントサセウス細胞を10から1012cfu/g含む細菌性組成物を記載している先行技術はないと考えられる。
【0022】
驚くべきことに、本発明者らは、IL−10の産生を誘導する能力を有するペディオコッカス・ペントサセウスの株を見出した。先行技術から判断すると、ペディオコッカス・ペントサセウス細菌がこれらの特性を有することは知り得なかった。
【0023】
したがって、ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330株は本明細書において提供される。さらに、詳細に記載されるスクリーニング方法の手段によって、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞のプール内でIL−10の産生を誘導するための同じ能力を有する株CECT 8330以外のペディオコッカス・ペントサセウスの株を同定及び単離することは妥当である。
【0024】
したがって、本発明は、一態様としてペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330の株を提供する。本発明は、過剰な泣きの改善に関連する細菌における特定の生物学的特性;すなわち、最も関連する特性としてIL−10の産生を誘導する能力を記載している。本明細書において、前記特性が乳児における過剰な泣きの改善に妥当に関連することは、実施例の手段によって実証される。したがって、この特性を有するペディオコッカス・ペントサセウスの1つの株が同定されているが(CECT 8330)、理論に限定されることなく、他の良い株を得る方法のすべての工程が本明細書に妥当に記載されていることから、本発明の範囲をそのような株に限定する理由はない。したがって、本発明は、同じ特性を有する株CECT 8330以外のペディオコッカス・ペントサセウスの株のプールも提供する。ペディオコッカス・ペントサセウス種に属するすべての株がIL−10を誘導する能力を有するとは限らない。本発明は、これらを認識する方法を提供する。
【0025】
したがって、本発明の第1の態様は、インターロイキン−10の産生を誘導する能力を有するペディオコッカス・ペントサセウス細胞10から1012cfu/gを含む細菌性組成物であって、正規化された増加が次の工程:
(a)Public Health Englandの細胞収集物、カタログ番号88081201から得たTHP−1単球細胞株を、10%ウシ胎児血清FBS及び最終濃度0.16μMのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)を含むロズウェルパーク記念研究所 RPMI1640培地において増殖させることによってTHP−1単球をマクロファージに分化させる工程;
(b)24ウエルELISAプレートにおいて10%FBSを含むRPMI1640培地中で、THP−1マクロファージを、最終濃度マクロファージ10個/ウエルまで増殖させる工程;
(c)最終濃度10ng/mlのリポ多糖類(LPS)と共にTHP−1マクロファージを2.5時間インキュベートし、THP−1マクロファージをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水培地(D−PBS)で洗浄する工程;
(d)Man、Rogosa and Sharpe培地(MRS)中、37℃、5%CO雰囲気中で一晩増殖させることによってペディオコッカス・ペントサセウス細胞の培養物を用意する工程;
(e)各ELISAウエルに10%FBSを含むRPMI1640培地500μl及び最終比25:1、すなわち、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞2.5×10cfu:THP−1マクロファージ10個を得るために適切な量のペディオコッカス・ペントサセウス細胞の希釈物を加える工程;
(f)THP−1マクロファージを、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞と共に2.5時間、37℃で、又は陰性コントロールとして同じ条件下でペディオコッカス・ペントサセウス細胞を含まずに、インキュベートする工程;
(g)THP−1マクロファージをD−PBS培地で洗浄してペディオコッカス・ペントサセウス細胞を除去し、続いて50μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlアンピシリン及び12μg/mlクロラムフェニコールを補充した10%FBSを含むRPMI1640培地をTHP−1マクロファージに加え、37℃、5−7%COでインキュベートし、5及び24時間でアリコートを取る工程;
(h)アリコートを遠心分離し、フローサイトメトリーによるインターロイキン−10定量化のために上清をアッセイする工程;並びに
(i)インターロイキン−10濃度の正規化された増加を式(IL1024h−IL105h)/IL105hで、算出する工程であって、IL105h及びIL1024hがそれぞれpg/mlでのインターロイキン−10の5及び24時間での濃度である工程
によって決定される場合に、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞の存在下でのTHP−1マクロファージによる、正規化された増加として表されるインターロイキン−10の産生が、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞の非存在下でのTHP−1マクロファージである、陰性コントロールによるインターロイキン−10の産生よりも高い、細菌性組成物に関する。
【0026】
したがって、本明細書に記載の詳細なアッセイに基づいて(IL−10誘導アッセイについて実施例1を参照されたい)当業者は、目的のペディオコッカス・ペントサセウスが本発明の第1の態様のIL−10レベルに適合するかどうかを客観的に決定するために常套的にこのアッセイを反復できる。IL−10誘導レベルに適合するペディオコッカス・ペントサセウス細胞内で、寄託株ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330は、本明細書において提供される。
【0027】
本明細書に記載の新規な細菌性組成物は、ヒトのため及び特に乳児のためのプロバイオティクスサプリメントとして有用である。したがって、本発明の第2の態様は、乳児における過剰な泣きの改善における使用のために本明細書で定義の細菌性組成物に関する。この意味において、乳児における過剰な泣きの改善における使用のためのペディオコッカス・ペントサセウス細胞を記載している先行技術はないと考えられる。
【0028】
この態様は、乳児における過剰な泣きの改善のための栄養補助食品、医薬、調製粉乳、食用製品又は食料品の製造のために本発明の第1の態様において定義の細菌性組成物の使用のために代替的に製剤化されてよい。これは、前記乳児に、本発明の第1の態様に定義の細菌性組成物の有効量を投与することを含んで乳児において過剰な泣きを改善するための方法として代替的に製剤されてよい。
【0029】
本発明の別の態様は、医薬としての使用のために本明細書で定義された細菌性組成物である。
【0030】
本明細書で使用する用語「有効量」は、健全な医学的判断の範囲内で、治療される状態を肯定的に顕著に修正するために十分高いが重大な副作用を回避するために十分低い(合理的な利益/危険性比で)、組成物中の各株についてのコロニー形成単位(cfu)の量である。
【0031】
本発明の第3の態様は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)CECT 7894の株に関する。
【0032】
最後に本発明の第4の態様は、新規ペディオコッカス・ペントサセウス細胞をスクリーニング及び単離するための方法であって、次の工程:
(i)上に記載のIL−10誘導工程に従って、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞のプール由来の新たなペディオコッカス・ペントサセウス細胞を、IL−10の産生を誘導する能力についてアッセイする工程;及び
(ii)正規化された増加がIL−10誘導アッセイの工程に従って決定される場合に、陰性コントロールの正規化された増加よりも高い、正規化された増加として表されるIL−10の産生を誘導する、新たなペディオコッカス・ペントサセウス細胞をプールから選択及び単離する工程
を含む方法に関する。
【0033】
本明細書において本発明者らが関連する検定アッセイに加えて、誘導のIL−10レベルに適合する寄託株CECT 8330を開示すると、それは、本発明の第1の態様の基準に適合する他の新たなペディオコッカス・ペントサセウス細胞を選択することが、当業者の常套的仕事になることは当業者に明らかである。
【0034】
本発明の詳細な記載
用語「細菌性組成物」は、当技術分野により、10から1012cfu/gが第1の態様による目的の特徴を有するペディオコッカス・ペントサセウス細胞由来である多数の細菌細胞を含む組成物として理解されるべきである。細菌性組成物は、そのような担体又は賦形剤などの添加剤を含有する場合がある。細菌性組成物は、次いで適切な容器に詰められる。
【0035】
用語「cfu/g」は、組成物中に存在する関連する添加剤を含む組成物それ自体のグラム重量に関する。それは、細菌性組成物を詰めるために使用される適切な容器の重量は含まない。
【0036】
本発明の第1の態様は、正規化された増加が上に述べた工程によって決定される場合に、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞の非存在下でのTHP−1マクロファージ細胞によるIL−10の産生よりも高いTHP−1マクロファージ細胞によるインターロイキン−10の産生を誘導する能力を有するペディオコッカス・ペントサセウス細胞を10から1012cfu/g含む細菌性組成物に関する。
【0037】
ヒトサイトカイン合成阻害因子(CSIF)としても既知のIL−10は、活性化マクロファージによって及びヘルパーT細胞によって産生され、IFNガンマ、IL−2、IL−3、TNF、及びGM−CSFを含む多数のサイトカインの合成を阻害する抗炎症性サイトカインである。用語サイトカインは、細胞シグナル伝達のために使用される低分子量シグナル伝達分子を指す。サイトカインは、タンパク質、ペプチド又は糖タンパク質として分類される場合がある。この場合、IL−10は免疫調節特性を有するタンパク質サイトカインである。
【0038】
特定の実施態様では、正規化された増加が上に述べた工程によって決定される場合に、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞の存在下でのTHP−1細胞による、正規化された増加として表されるIL−10の産生は、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞の非存在下でのTHP−1細胞によるIL−10の産生よりも少なくとも2倍高い。他の特定の実施態様では、正規化された増加はコントロールより少なくとも3倍、4倍、5倍又は6倍高い。
【0039】
IL−10の産生を誘導する能力に加えて、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞は、過剰な泣きを有する乳児において一般的に豊富な望ましくない細菌種のメンバーに対して興味深い拮抗作用特性を有する(実施例2を参照されたい)。用語「拮抗作用」は、細菌増殖の阻害又は低減として本明細書において理解される。したがって、別の特定の実施態様では、細菌性組成物のペディオコッカス・ペントサセウス細胞は、グラム陽性及びグラム陰性腸内細菌に拮抗する能力を有する。特に、グラム陽性細菌は、クロストリジウム・ディフィシル((Clostridium difficile))及びフェカリス菌(Enterococcus faecalis)からなる群から選択される細菌を含む。別の特定の実施態様では、グラム陰性細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)及びバクテロイデス・ブルガータス(Bacteroides vulgatus)からなる群から選択される細菌を含む。別の特定の実施態様では、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞は、クロストリジウム・ディフィシル、フェカリス菌、大腸菌、エンテロバクター・エロゲネス、クレブシエラ・オキシトカ及びバクテロイデス・ブルガータスに拮抗する能力を有し、拮抗する能力は次の工程:
(i)オキソイド培地を含有するプレートに病原体株を均一に塗布し、各病原体の増殖のために好適な温度及び%COでCOインキュベーターにおいてコンフルエンスまで増殖させる工程;
(ii)ペディオコッカス・ペントサセウス細胞を均一に播種したコンフルエントな寒天板の6mm直径の円柱切片2個を、病原体を播種したプレートに接触させて配置して、(a)一方の円柱切片の増殖側を病原体を播種したプレートに向けるだけでなく、(b)他方の円柱切片の非増殖側を病原体を播種したプレートに向け、一晩37℃でインキュベートする工程;
(iii)寒天板を平らな定規上に置くことによって阻害領域を翌日測定する工程;並びに
(iv)式GI=(IZD−CD)/2に従って、センチメートルで測定した阻害領域直径(IZD)から円柱直径(CD)を減算し、この差を2で割ることによって増殖阻害活性を算出する工程
によって決定される。
【0040】
特定の実施態様では、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞は、スペインタイプカルチャーコレクションに寄託番号CECT 8330で寄託されたペディオコッカス・ペントサセウス由来である。
【0041】
ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330
新規ペディオコッカス・ペントサセウス株の試料は、the Edificio 3 CUE、Parc Cientific Universitat de Valencia、Catedratico Agustin Escardino、9、46980 Paterna、Valencia(Spain)のCECT(Coleccion Espanola de Cultivos Tipo)に、Edifici Eureka、office P1M1.1、Campus UAB、08193−Bellaterra(Spain)の寄託者AB−Biotics S.A.によって寄託された。株は、寄託番号CECT 8330の下に寄託日2013年4月30日で寄託された。寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条件下で行われた。寄託者によって与えられた識別照会はF3403であった。
【0042】
下の実施例に示すとおり、ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330は、乳児における過剰な泣きの改善ための次の興味深い特性を示す:
・実施例1、表1に示すIL−10産生を誘導する能力。
・研究した病原体のすべてのスペクトラムに対する阻害活性(実施例2、表2)。株は、グラム陽性だけでなくグラム陰性細菌も有効に阻害する。これは、過剰な泣きを示す乳児において異常に豊富である大腸菌、クラブシエラ(Klebsiella)及びクロストリジウム(Clostridium)ssp.などの細菌に対する保護を提供することから重要である。
・エタノール及びCOを産生せず、それにより乳児に動揺(disturbance)を生じない。
【0043】
さらに、株CECT 8330は、プロバイオティクスとして特に有用である有利点を有する。プロバイオティクス細菌は、毒性の欠如、生存率、接着及び有益な効果に関連するいくつかの要件を満たさなければならない。各細菌株の特性は独特であり、同じ種の他の株から推定できない。したがって、すべてのプロバイオティクス要件により良い性能を有するこれらの株を見出すことは重要である。株CECT 8330が胃腸(GI)管を確実に克服できるように、インビトロプロトコールがその条件を模倣して開発された。リゾチーム、過酸化水素、酸性環境及び胆汁酸塩での治療後の生存が定量化された。これは、株がヒト糞便から非常に高い希釈を使用して単離され、それらの糞便中の存在多いことから、確認実験である。結果は、株がGI管を何とか通過できることを示している。
【0044】
株CECT 8330は、腸管にコロニーを作るその能力についてもアッセイされた。これは、観察された生物機能性が株によって発達され得ることを確実にすることから重要な点である。実験開発では、プロバイオティクス株の結腸付着部位を模倣する腸管粘液及びCaco−2細胞が使用された。株の接着性能は、トリチウム標識されたチミジンのシンチレーションから測定され、コントロールとして使用されるラクトバチルス・ロイテリ株のものと比較された。粘液細胞接着及びCaco−2細胞接着は、それぞれ1.40×10及び4.5×10cfu/cmであった(L.ロイテリ:6.58×10及び1.01×10cfu/cm)。したがって、結果は、CECT 8330がL.ロイテリに匹敵する腸管上皮への良好な接着を有し、腸管に残存し、それらのプロバイオティクス効果を発揮することを可能にすることを示している。
【0045】
株CECT 8330は、産業用培地において良好な増殖を有する。
【0046】
さらに株CECT 8330は、QPS状態を有する細菌種に属する(Andreoletti, O. 等"The maintenance of the list of QPS microorganisms intentionally added to food or feed. Question no: EFSA-Q-2008-006", The EFSA Journal 2008. 923: p 1-48)。QPS(「安全性適格推定(Qualified Presumption of Safety)」)は、欧州食品安全機関によって開発された、安全な使用の実績のある長い歴史を有する分類単位の状態を承認する系である。
【0047】
ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894
別の特定の実施態様では、細菌性組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894の細胞10から1012cfu/gをさらに含む。
【0048】
新規ビフィドバクテリウム・ロンガム株の試料は、the Edificio 3 CUE、Parc Cientific Universitat de Valencia、Catedratico Agustin Escardino、9、46980 Paterna、Valencia(Spain)のCECT(Coleccion Espanola de Cultivos Tipo)にEdifici Eureka、office P1M1.1、Campus UAB、08193−Bellaterra(Spain)の寄託者AB−Biotics S.A.によって寄託された。株は、寄託番号CECT 7894の下に寄託日時2011年3月30日で寄託された。寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国債承認に関するブダペスト条約の条件下で行われた。寄託者によって与えられた識別照会はBif F2であった。
【0049】
株ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894は、実施例に示すとおり乳児における過剰な泣きの改善ための次の興味深い特性も有する:
・実施例1、表1に示すIL−10産生を誘導する能力。
・研究した病原体のすべてのスペクトラムに対する阻害活性(実施例2、表2)。株は、グラム陽性だけでなくグラム陰性細菌も有効に阻害する。株CECT 8330についての解説も参照されたい。
・エタノール及びCOを産生せず、それにより乳児に動揺を生じない。
【0050】
ペディオコッカス・ペントサセウス株CECT 8330に関して、ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894も胃腸(GI)管を克服するその能力についてアッセイされた。結果は、株がGI管を何とか通過できることを示している。
【0051】
株CECT 7894は、ペディオコッカス・ペントサセウスについて上に述べたアッセイに従って、腸管にコロニーを作るその能力についてもアッセイされた。株CECT 7894についての粘液細胞接着及びCaco−2細胞接着は、それぞれ1.21x10及び1.18×10cfu/cmであった(L.ロイテリ:6.58×10及び1.01×10cfu/cm)。したがって、結果は、CECT 7894がL.ロイテリに匹敵する腸管上皮への良好な接着を有し、腸管に残存し、それらのプロバイオティクス効果を発揮することを可能にすることを示している。
【0052】
株CECT 7894も産業用培地において良好な増殖を有する。
【0053】
したがって、両株、ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330及びビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894は、株を別々又は単一の処方中に合わせて使用することによって乳児における過剰な泣きの改善における使用のために、それらを適するものにする種々の機能的特性を共有している。他の特性のなかでもそれら両方は、IL−10産生を誘導する能力を有し、それらは、腸内細菌(グラム陽性のみならずグラム陰性細菌も)の増殖を効率的に阻害する。
【0054】
さらに株は、それらがガスを産生しないという有利点を有する。ヘテロ型発酵細菌は、グルコース発酵によってCO及びエタノール並びに乳酸を産生する。エタノールは、夜泣きする乳児に特徴的な腹部膨満を産生する腸の運動性に影響を与える場合がある。COは、夜泣きする乳児に同様に典型的な鼓腸(meteorism)(ガスの蓄積)及び膨満(flatulence)を導くことがある。夜泣きする乳児においてヘテロ型発酵株のより多い存在が記載されている。対照的に本発明の株は、エタノール及びCOを産生せず、それにより乳児にこの意味で動揺を生じない。
【0055】
当業者に明らかであるとおり、ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330及びビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894は、それら自体で、又は単一の組成物中に混合されて使用された場合に有効である。それらは、同時に、連続的に又は一定期間後に別々に投与される2つの異なる組成物でも投与され得る。
【0056】
上に記載の特性を前提として、細菌性組成物は、過剰な泣きに関連するいくつかの臨床症状の改善を導く泣きの前述の原因において生理的改善を発揮する。したがって、本発明の細菌性組成物は、乳児における過剰な泣きの改善において特に有用である。用語「過剰な泣き」は、本明細書において普通の世帯機能に問題である激烈、持続的及び癒やしがたい泣きとして理解され、少なくとも1週間観察される1日あたり少なくとも60分間(3回以上のエピソードで)を示している。
【0057】
用語「乳児」は、本記載においてヒト又は動物の非常に若い子孫として理解される。ヒトに適用される場合、この用語は、用語「ベビー」と同義であると考えられる。用語「子供」は、誕生と思春期との間の段階のヒトを指す。「子供」は、「息子」及び「娘」の同義語として親との関係も記載する。しかしこの記載において用語「乳児」、「ベビー」及び「子供」は、同義であると考えられ、互換的に使用される。
【0058】
特定の実施態様では、本発明の細菌性組成物は、乳児疝痛に関連する過剰な泣きの改善において有用である。用語「乳児疝痛」は本明細書において、両親を疲れさせる未解明で慰められない泣き(「ぐずり(fussy)」)として理解される。用語「ぐずり」は、泣きの種類を分類することが両親及び医師に困難であることから非常に主観的な測定である。加えて、過剰な泣き行動(静まりやすいかどうかに関わらず)は、疝痛を示している場合がある。その結果、夜泣きする乳児の最も頻繁に引用される対象となる基準の1つは:少なくとも1週間について1日あたり3時間を超える泣き(Savino, F. 等2010上記)とする時間則に基づく(すなわち、ヴェッセル基準に基づく)。
【0059】
本発明の別の実施態様では、乳児は、週齢3週から月齢12ヵ月である。
【0060】
20名の乳児での試験的な臨床治験が、株CECT 8330及びCECT 7894の混合物をベースとする生成物の有効性及び安全性を評価するために実行された(実施例7を参照されたい)。プラセボ及び株の混合物は1日1回(5滴/日)14日間投与された。図3において見られるとおり、プロバイオティクス処方は、平均の毎日の泣き時間及び各エピソードの持続時間に大きな低減を生じた。プラセボ又はプロバイオティクス群の何れにおいても有害作用は観察されず、プロバイオティクス処方が安全であると考えられることを確認している。したがって、株の混合物は、泣きパターンを改善するために有用である。
【0061】
上に説明の細菌性組成物の関連する特性から、細菌性組成物の投与はまた、免疫系の未成熟の結果としての炎症に関連する胃腸障害を特徴とする他の状態を治療するのに;腸の過敏症を治療するのに、及び腸内の過剰な望ましくない細菌を均衡させるのにも有用であることが推論される。
【0062】
上に述べた特性を考慮して、株CECT 8330及び7894は、当該技術分野で既知の市販の株と比較した場合に過剰な泣きに関連して研究されたパラメーターについてより良い性能を有する。下の実施例に示すとおり、株CECT 8330は、ラクトバチルス・ロイテリ株の1つと比較してIL−10産生の誘導に関連するより良い正規化された増加を示した。さらに本発明の株は、研究した病原体のすべてのスペクトラムに対して阻害活性を示した。本発明の株は、グラム陽性だけでなくグラム陰性細菌も効率的に阻害した。これは、大腸菌及びB.ブルガータス(B.vulgatus)の増殖を非効率的に阻害したL.ロイテリの場合はそうではなかった。大腸菌などの細菌の異常な量が過剰な泣きを呈する乳児において一般的に存在することからこれは、重要である。一般に、L.ロイテリと比較してCECT 8330及び特にCECT 7894が、ほとんどすべての病原細菌の増殖をさらに効率的に阻害することは注目に値する。さらに、株CECT 8330及びCECT 7894はガスを産生しなかったが、一方L.ロイテリはガスを産生する。
【0063】
IL−10産生の誘導を測定するためのアッセイ
本明細書の実施例1を行うことは、IL−10産生の誘導を測定するために適したアッセイの詳細な記載を、本発明の第1の態様の工程(a)〜(i)を参照して提供する。第1の態様の工程(a)〜(i)及び実施例1において開示されるIL−10誘導アッセイの記載及び条件が本発明の範囲を限定しないことを記すことは適切である。アッセイは、IL−10産生を誘導するペディオコッカス・ペントサセウス細胞の能力を検査するために適しているものである。実施例1の詳細な条件は、本明細書において、目的のペディオコッカス・ペントサセウス細胞が第1の態様の基準に適合するかどうかを決定するための好ましいアッセイを形成する。
【0064】
したがって、本明細書に記載の詳細なアッセイに基づいて当業者は、目的のペディオコッカス・ペントサセウス細胞が第1の態様のIL−10産生における誘導に適合するかどうかを客観的に決定するためにこのアッセイを常套的に反復できる。
【0065】
記載されたアッセイを使用する場合、第1の態様により正規化された増加として表されるペディオコッカス・ペントサセウス細胞の存在下でTHP−1細胞によって産生されるIL−10のレベルは、コントロールより高い。本明細書において及び第1の態様により理解されるコントロールは、ペディオコッカス・ペントサセウス細胞の非存在下でTHP−1細胞によって産生されるIL−10の正規化された増加である。特定の実施態様では、ペディオコッカス・ペントサセウスの存在下でTHP−1細胞によって産生されるIL−10のレベルは、コントロールのレベルの少なくとも2倍である。他の特定の実施態様では、正規化された増加は、コントロールより少なくとも3倍、4倍、5倍又は6倍高い。
【0066】
腸内細菌に対する拮抗能を測定するためのアッセイ
本明細書の実施例2を行うことは、本発明の一実施態様を参照して、腸内細菌に拮抗するペディオコッカス・ペントサセウス細胞の性能を測定するために適したアッセイの詳細な記載を提供する。実施例2に開示のアッセイの記載及び条件が本発明の範囲を限定しないことを記すことは適切である。アッセイは、腸内細菌に拮抗するペディオコッカス・ペントサセウス細胞の能力を検査するために適しているものである。
【0067】
したがって、本明細書に記載の詳細なアッセイに基づいて当業者は、目的のペディオコッカス・ペントサセウス細胞が上に詳述の細菌スペクトルと適合するかどうか;すなわちクロストリジウム・ディフィシル、フェカリス菌、大腸菌、エンテロバクター・エロゲネス、クレブシエラ・オキシトカ及びバクテロイデス・ブルガータスに拮抗するかどうかを客観的に決定するためにこのアッセイを常套的に反復できる。
【0068】
組成物及び投与形態
本発明の特定の実施態様では、上に定義の細菌性組成物は、栄養補助食品、医薬、調製粉乳、食用製品及び食料品からなる群から選択される形態である。
【0069】
本発明の細菌性組成物は、本発明の組成物を形成する細菌細胞の生存率に負に影響しない任意の適切な形態に調製されてよい。組成物の特定の目的を考慮した賦形剤及び最も適切な製剤化方法の選択は、製薬及び食品技術の当業者の範囲内である。
【0070】
本発明による細菌性組成物は、細菌細胞がただ1つの活性剤である形態、又は他の活性剤(一若しくは複数)と混合された形態及び/又は、薬学的に許容される賦形剤若しくは適当な添加剤若しくは食料品の場合は成分と混合された形態に製剤化することができる。本発明の特定の実施態様では、組成物は、さらなる活性剤(一又は複数)を追加的に含有する。好ましくは追加的活性剤(一又は複数)は、本発明の組成物を形成する細菌細胞にアンタゴニスト的ではない他のプロバイオティクス細菌である。製剤に応じて細菌細胞は、精製された細菌として、細菌培養物として、細菌培養物の一部として、後処置された細菌培養物として単独又は適切な担体若しくは成分と合わせて加えられてよい。プレバイオティックも加えられてよい。
【0071】
細菌性組成物は、医薬製品の形態であってよい。用語「医薬製品」は、活性成分−この場合、薬学的に許容される賦形剤を合わせた細菌細胞を含む任意の組成物を含んで、本記載において広い意味で理解される。用語「医薬製品」は、医薬を指すことに限定されない。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激作用(irritation)、アレルギー応答又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、合理的な利益/危険性比に見合って、対象(例えばヒト)の組織と接触させる使用のために適している化合物、材料、組成物、及び/又は投与形態に関する。各担体、賦形剤などは、製剤の他の成分と適合する意味でも「許容可能」でなければならない。適する担体、賦形剤などは、標準的な調剤テキストに見出すことができる。
【0072】
医薬製品は、製品承認経路に依存して及び国にも依存してさまざまな形態又は名称を採用できる。例えば、医薬は特定の医薬製品である。医療食品は、本記載において別の特定の医薬製品とみなされる。用語「医療食品」又は「特別な医学的目的のための食品」は、いくつかの国において、通常の食事だけでは対応できない特有の栄養的必要性を有する、疾患の食事管理を目的として特別に製剤化された食品を指して使用される。それらは、米国の食品医薬品局の1988 Orphan Drug Act Amendments、及び欧州のCommission Directive 1999/21/ECなどの規制において定義されている。医療食品は、栄養補助食品の幅広い分類及び栄養機能表示を有するこれまでの食品とは異なる。したがって、特定の実施態様では、本発明の組成物は、医療食品である。
【0073】
多くの場合、本明細書において開示のものなどのプロバイオティクス細菌性組成物は、栄養補助食品とみなされる。食事サプリメント又は栄養サプリメントとしても周知である栄養補助食品は、別の具体的な医薬製品とみなされる。これは、食事を補う目的の調製物であり、通常の食事において摂取されない、又は十分な量で吸収されない場合がある栄養又は有益な成分を提供する。大部分の栄養補助食品は、食料品とみなされるが、時には薬物、天然健康製品又は栄養補給食品(nutraceutical product)として定義される。本発明の意味において栄養補助食品は、栄養補給食品も含む。栄養補助食品は、通常「店頭で」、すなわち処方箋なしで販売される。栄養補助食品が丸剤又はカプセル剤の形態を採用する場合、医薬における使用と同様に賦形剤を含む。しかし栄養補助食品は、いくつかの栄養を強化した食料品の形態を採用することもできる(例えば、調製粉乳)。
【0074】
したがって、特定の実施態様では、本発明の組成物は、栄養補助食品、より特定すると乳児栄養補助食品である。
【0075】
本発明による組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、懸濁剤、サシェ剤、シロップ剤の形態又は通常、単位用量の形態で、そのまま又は適切な食用の液体若しくは固体と混合され、凍結乾燥されて投与することができる。それは、投与前に混合される別々の液体容器と一緒に提供される凍結乾燥組成物の単回用量(monodose)の形態であってもよい。
【0076】
非常に幼い乳児において、投与はわずかな投与形態に限定される。したがって、好ましい実施態様では、本発明の細菌性組成物は、単独又は液体との組合せで投与される油性懸濁物の形態である。油性懸濁物は、オリーブ油、コーン油、ダイズ油、アマニ油、ヒマワリ油又はコメ油などの少なくとも1つの食用油を含む。油は、少なくとも70%重量/重量の量で存在する。特定の実施態様では、油性懸濁物は、乳化剤、安定剤又は抗固化剤であり、0.1−15%w/wの量である少なくとも1つの賦形剤も含む。適切な薬剤は、シリコンジオキシド、シリカゲル、コロイドシリカ、沈降シリカ、タルク、ケイ酸マグネシウム、レシチン、ペクチン、デンプン、修飾されたデンプン、コンニャクガム、キサンタンガム、ジェランガム、カラゲナン、アルギン酸ナトリウム、グリセロールモノステレート又はグリセロールモノオレートなどの脂肪酸のモノ又はジグリセリド及びモノ又はジグリセリドのクエン酸エステルである。
【0077】
油性懸濁物は、当業者に周知の技術により既知の機械を使用して調製される。所与の量の油が撹拌しながら及び加熱手段を伴って容器に導入される。続いて少なくとも1つの賦形剤が撹拌しながら加えられ、必要に応じて完全な均質化まで塊の形成及び凝集を回避するために20から50℃を含む温度へのわずかな加熱を伴う。懸濁物を室温まで冷却し、固体形態の細菌細胞を懸濁物の完全な均質化まで撹拌しながら徐々に加えた。
【0078】
具体的には本発明の細菌性組成物は、油性懸濁物の形態での乳児栄養補助食品の形態である。特定の実施態様では、油性懸濁物は、ヒマワリ油及びコロイド状シリカを、好ましくは1重量%で、並びに細菌細胞を含む。
【0079】
別の実施態様では、油性懸濁物は、ヒマワリ油及び、レシチン、脂肪酸のモノ又はジグリセリド、カラゲナンとアルギン酸ナトリウムから選択される薬剤並びに細菌細胞を含む。
【0080】
本発明の細菌性組成物は、乳児の場合の乳製品など、種々の食料品又は食用製品に含めることもできる。用語「食用製品」は、動物によって摂取され得る任意の種類の製品、任意の体裁の形態;すなわち官能的に許容される製品を含んで、その最も広い意味で本明細書において使用される。用語「食料品」は、身体のための栄養補給も提供する食用製品として理解される。特に興味深い食料品は、栄養補助食品及び調製粉乳である。食料品は、好ましくはオートミール粥、乳酸発酵食品、難消化性デンプン、食物繊維、糖(炭水化物)、タンパク質及びグリコシル化タンパク質などの担体材料を含む。特定の実施態様では、本発明の細菌細胞は、調製粉乳を構成するために穀類又は粉乳などの他の成分と共に均質化される。
【0081】
したがって、本発明の細菌性組成物が組成物の形態に関わらず;すなわち医薬製品、医薬、食料品、食用製品、栄養補助食品又は医療食品であるかに関わらず乳児における過剰な泣きの管理において有用であることは理解されている。
【0082】
細菌細胞増殖、変異体及び用量
細菌は、適切な培地中で、適切な条件下でそれらを培養することによって増殖される。本発明の細菌細胞は、純粋培養物を形成するように単独で、又は他の微生物と共に混合培養として、又は異なる種類の細菌を別々に培養し、次いで望ましい割合でそれらの組み合わせることによって培養されてよい。培養後、細胞懸濁物を回収し、そのまま又は望ましいやり方、例えば医薬の調製物又は食料品においてさらに用いられるように濃縮する、脱水する、スプレー若しくは凍結乾燥で処置して使用される。時にはプロバイオティクス調製物は、有効期間を改善するために固定化又はカプセル封入工程に供される。細菌の固定化又はカプセル封入のためのいくつかの技術は、当該技術分野で既知である。
【0083】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の新規株又は「その変異体」に関する。出発物質として寄託株を使用することによって当業者が、従来の突然変異誘発又は再単離技術によって、本明細書に記載の関連する特性及び本発明の組成物を形成する株の有利点を少なくとも保持しているさらなる変異体又はその誘導体を常套的に得ることができることは明らかである。したがって、用語「その変異体」は、出発物質として寄託株を使用することによって得られた変異体株に関する。一実施態様では、変異体は、組換えDNA技術を使用することによって得られる。本発明の第1の態様の別の実施態様では、変異体は、ランダム突然変異誘発によって得た。本発明の第1の態様の特定の実施態様では、変異体は天然に存在する変異体である。これは、本明細書に記載の寄託株の1つを出発株として使用すること、寄託株の変異体を作ること及び新規株を単離することを含む株を得るための方法として、代替的に構築されてよく、ここで変異体は寄託株の必須の特性を保持している。
【0084】
細菌細胞の有効量は、当業者によって決定され、達成使用とする特定の目標、治療される患者の年齢及び健康状態、基礎疾患の重症度及び最終製剤に応じて変化する。経口で投与される場合本発明の株は、現在の法律により10から1012cfu、好ましくは10から1011cfuの有効日用量を与える量で組成物中に存在する。表現「コロニー形成単位」(「cfu」)は、寒天板上の微生物数によって明らかになる細菌細胞の数として定義される。本発明の組成物の形態で使用される場合、異なる株は、好ましくは濃度比1:1である。
【0085】
本発明の株の一般的使用は、生細胞の形態においてである。しかし、殺菌培養物若しくは細胞溶解物(例えば、変更したpH、超音波、照射、温度若しくは圧力への曝露、細菌を殺菌若しくは溶菌する他の手段などによって得られる)などの非生細胞又は、本発明の株によって産生される有益な因子を含有する組成物にも拡張されてよい。
【0086】
記載及び特許請求の範囲全体を通じて語「含む(comprise)」及びその変化形は、他の技術的特性、添加剤、成分又は工程を排除することを目的としない。本発明の追加的目的、有利点及び特性は、記載の検討により当業者に明らかになる又は本発明の実施によって習得され得る。さらに本発明は、本明細書に記載の特定の及び好ましい実施態様のすべての可能性がある組合せを網羅する。次の実施例及び図は、例示の目的のために、本発明に限定されることを意図することなく本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】左から右へ:ラクトバチルス・ラムノサスGG(LGG)、ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330(8330)、コントロールとしてのペディオコカス・アシディラクティシの2つの株(1、2)及び分子マーカー(M)、のSma−I(左)及びNot−I(右)制限ゲノムDNAのパルスフィールドゲル電気泳動パターンを示す図である。
図2】左から右へ:ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894(7894)、ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 4551(4551)及び分子マーカー(M)、のXba−I(左)及びSpe−I(右)制限ゲノムDNAのパルスフィールドゲル電気泳動パターンを示す図である。
図3】平均の毎日の泣き時間及び各エピソードの持続時間における低減を示すグラフである。A)平均の毎日の泣き時間における低減(1日あたりの泣きの合計分数)。B)各エピソードの平均持続時間における低減(エピソードあたりの分数)。結果は、プラセボ群でn=9及びプロバイオティクス処方群でn=11についての平均±平均の標準誤差(SEM)として表す。PLAは、プラセボ群に対応する。PROは、プロバイオティクス群に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0088】
ラクトバチルス・ロイテリの株ATCC 55730をいくつかの実験においてコントロールとして使用する。
【実施例】
【0089】
実施例1.腸粘膜モデルにおけるIL−10産生を誘導する能力のインビトロ評価
消化管免疫系(しばしば腸管関連リンパ組織とも称される、GALT)とのその相互作用から生じる細菌株の免疫調節性能を研究した。より具体的には、細菌株が腸管炎症を低減する抗炎症IL−10の産生を誘導する能力を有するかどうかを検査することを試みた。これの分子的基盤は、プロバイオティクス細胞表面受容体と、パイエル板に存在する樹状細胞に見出すことができるTLR−2及びTLR−4(トール様受容体)との相互作用である。
【0090】
THP−1細胞株
選択されたモデルは、TLR−2及びTLR−4を発現する細胞株THP−1であった。このモデルはリポ多糖類−LPS−(炎症応答の誘導因子として)などの細菌成分に感受性であり、抗炎症性サイトカインパターンの産生の誘導のために適切な分子が培地中にある場合サイトカイン産生を調節することは容易である。
【0091】
当技術分野による用語「THP−1細胞株」は、急性単球性白血病患者に由来するヒト単球細胞株に関する。これは、タンパク質−タンパク質相互作用及び免疫組織化学の免疫細胞化学的分析で白血病細胞株を検査するために使用される。
【0092】
THP−1細胞株は、Public Health Englandの細胞収集物(カタログ番号88081201)から得た。本出願の出願時に供給者Public Health England(www.hpacultures.org.uk)からの88081201についての製品カタログは、THP−1細胞に関して:「ヒト単球白血病、急性単球性白血病を有する1歳男児の末梢血に由来する」と記載している。
【0093】
培地及びLPS
THP−1単球をロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地+10%ウシ胎児血清(FBS)で増殖させた。RPMIは、標準的な市販の培地(RPMI 1640、照会61870−010 Gibcoから)であった。FBSもGibcoからであった。
【0094】
増殖培地にホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA、照会P8139 SIGMAから)5mgを最終濃度0.16μMとなるように加え、およそ72時間インキュベートすることによって、THP−1単球をマクロファージに分化させた。
【0095】
細菌株をMRS培地で増殖させた。それは、標準的な市販のMan、Rogosa and Sharpe培地(MRS、Broth Oxoid ref.CM0359)であった。
【0096】
THP−1マクロファージを炎症応答を誘導するためにLPSで刺激した。リポグリカンとしても知られるリポ多糖類(LPS)は、共有結合で繋がれた脂質及び多糖類からなる大きな分子であり、それらはグラム陰性細菌の外膜において見出され、動物において内毒素として作用し、強い免疫応答を励起する。本研究において使用されるLPSは、標準的な市販のリポ多糖類(照会L4391、Sigma)である。
【0097】
増殖、インキュベーション及びIL−10測定
THP−1マクロファージを24ウエルELISAプレート中のRPMI 1640+10%FBS培地で最終濃度マクロファージ10個/ウエルまで増殖させた。最終細胞濃度は、トリパンブルー色素及びノイバウアー(Neubauer)計数チャンバーを使用して算出した。
【0098】
THP−1マクロファージをLPS(最終濃度10ng/ml)と2.5時間共インキュベートした。次いで細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水培地(D−PBS、照会14190−094 Gibcoから)で洗浄した。RPMI 1640+10%FBS培地500μlを各ELISAウエルに加えた。
【0099】
細菌株は、予めMRS培地で37℃、5%CO雰囲気において一晩増殖させた。最終比25:1(細菌2.5×10cfu:THP−1マクロファージ10)を得るために適切に希釈した細菌株を各ウエルに加えた。濃度は、ノイバウアー計数チャンバーを使用して算出した。
【0100】
次いでTHP−1マクロファージを2.5時間、37℃で細菌株と共に又は伴わず(陰性コントロール)にインキュベートした。続いてマクロファージを細菌株を除去するためにD−PBS培地で2回洗浄した。次いでゲンタマイシン(50μg/ml)、アンピシリン(10μg/ml)及びクロラムフェノコール(12μg/ml)を補充したRPM I1640+10%FBS培地を加え、37℃、5−7%COでインキュベートし、アリコートを5及び24時間で採取した。
【0101】
アリコートを遠心分離し、上清をフローサイトメトリーによって市販のキットHuman IL−10 Flex Set(Bead B7照会番号558274、BD Bioscienciesから)を製造者の説明書に従って使用してIL−10についてアッセイした。
【0102】
算出
結果の解釈について、絶対値は使用しなかった。最も情報価値のある値は、5及び24時間で値を取った、正規化された増加として表されるサイトカインの放出、この場合IL−10濃度である。これは、消化管で何が起きているかを反映し、実験間の横断的比較を可能にする標準値を提供する。正規化された増加を式に従って算出する、式中IL105h及びIL1024hは、それぞれ5又は24時間でのIL−10のpg/mlでの濃度である:
(IL1024h−IL105h)/IL105h
【0103】
結果
値が高いほどIL−10の誘導は高い。表1に示すとおり、LPS−誘導THP−1マクロファージは、細菌株の存在下でIL−10の産生を誘導し、IL−10誘導は株CECT 8330の存在下で特に高い。CECT 8330によって生じる誘導は、L.ロイテリによって生じるものよりもわずかに高い。
【0104】
実施例2.腸内細菌に対する拮抗能
目的は、過剰な泣きを有する乳児において一般的に豊富な望ましくない種のメンバーに拮抗する細菌株の能力を評価することであった。
【0105】
これらの性能を検出及び評価するために使用したプロトコールは、Campbellプロトコールとして既知である。この技術は、プロバイオティクス株を均一に播種したコンフルエントな寒天板の円柱切片と共にペトリ皿で拮抗される細菌をインキュベートすることを含む。円柱切片周辺の増殖阻害のハローを測定する。
【0106】
培地
病原体株をオキソイド培地において増殖させた。それは、標準的な市販で入手可能なオキソイド培地(オキソイドCM0359)であった。
【0107】
インキュベーション及び測定値
オキソイド培地を含有するプレートに病原体株を均一に塗布し、各病原体の増殖のために適切な温度及び%COでCOインキュベーターにおいてコンフルエンスまで増殖させた。次いで、検査したプロバイオティクス株を均一に播種したコンフルエントな寒天板の6mm直径の円柱切片2個を病原体を播種したプレートに接触させて配置して、病原体を播種したプレートを一方の円柱切片の増殖側及び他方の円柱切片の非増殖側に向け、一晩37℃でインキュベートした。
【0108】
算出
翌日、阻害領域を寒天板を平たい定規上に置くことによって測定した。次いで、増殖阻害活性(GI)を式GI=(IZD−CD)/2に従って、センチメートルで測定した阻害領域直径(IZD)から円柱直径(CD)を減算し、この差を2で割ることによって算出した。本発明の株の阻害性能を市販の株L.ロイテリのものと比較した。最終的な阻害活性を各株についての2個の上に述べた円柱切片に関するGI値の平均として算出した。
【0109】
結果
【0110】
株は、研究した病原菌のすべてのスペクトラムに対して阻害活性を示した。したがって、株は、グラム陽性だけでなくグラム陰性細菌も効率的に阻害した。これは、大腸菌及びB.ブルガータスの増殖を非効率的に阻害したL.ロイテリの場合はそうではなかった。大腸菌などの細菌の異常な量が過剰な泣きを呈する乳児において一般的に存在することからこれは、重要である(De Weerth, C. 等2013 上記; Lehtonen, L. 等“Intestinal Microflora in colicky and noncolicky infants: Bacterial Cultures and Gas-Liquid Chromatography”, Journal of pediatric Gastroenterology and Nutrition 1994, vol. 19, p 310-314)。一般に、L.ロイテリと比較してCECT 8330及び特にCECT 7894が、ほとんどすべての病原体細菌の増殖をさらに効率的に阻害することは注目に値する。さらに、本発明の両方の株が過剰な泣きを呈する乳児の腸においても豊富であるクラブシエラ及びクロストリジウムに対する保護を提供することにも関連する(De Weerth, C. 等2013 上記; Lehtonen, L. 等1994 上記)。
【0111】
実施例3.ガスの不産生
ヘテロ型発酵細菌は、次の代謝経路:
1グルコース→1乳酸+1エタノール/酢酸+2ATP+1CO
グルコース発酵によってCO及びエタノール並びに、乳酸を産生する。
【0112】
株によるCOの産生を決定した。式に示すとおりCOの産生は、エタノールの産生にも情報価値がある。COの産生は、ガスが産生された場合に蓄積される、より小さな倒立したチューブを内部に含有しているヘテロ発酵ブロスでのプロバイオティクス株のインキュベーションに基づくDurham Tubes技術を使用して決定した(Pilone, G.J., 等, "Characterization of wine lactic acid bacteria: single broth culture for tests of heterofermentation、mannitol from fructose、and ammonia from arginine " Am J Enol Vitic 1991, vol. 42, p 153-157)。
【0113】
株CECT 8330及びCECT 7894はガスを産生しなかった。コントロールとして使用されたL.ロイテリは、ガスを産生した。
【0114】
実施例4.毒性アッセイ
ビフィドバクテリウム属及び乳酸桿菌属由来の細菌とは対照的に、ペディオコッカス・ペントサセウスは、ヒトの消費のためのプロバイオティクスとしては一般的には使用されない。したがって、本発明のプロバイオティクス株CECT 8330は、QPS状態を有する種に属するが、追加的毒性アッセイが安全についてのいかなる懸念も回避するために実行された。
【0115】
乳幼児の未成熟な消化管による高い感受性/感度を考えて、乳児における株の完全な安全性を確実にするために、Wistar Han IGS Crl:WI新生ラット(実験開始時の体重範囲18−23gを有する誕生10日後)を使用する急性毒性のさらに適切なモデルを開発することを決めた。
【0116】
妊娠中のメスを妊娠19日目に受け取った。誕生後、同腹仔はオス4匹及びメス4匹に調整し、母系的影響を回避し、等しいサイズの同腹仔を達成するためにすべての母親の仔を混合した。授乳中の各メスをオス4匹及びメス4匹と共に置いた。授乳中のメスにはSAFE A03食餌及び水を自由摂取させた。
【0117】
実験手順は4群を含んだ:ビヒクル−トランスロケーション、ビヒクル−臨床徴候、CECT8330−トランスロケーション、及びCECT8330−臨床徴候。
【0118】
各群は、授乳中のメス及びオス4匹及びメス4匹の同腹仔を含むケージを含んだ。CECT 8330製品を最終濃度0.5×1010cfu/ml製剤で毎日調製した。ビヒクル群は、プロバイオティクスの代わりに水を受けた。すべての新生ラットにビヒクル又はCECT 8330治療を、5ml/kg(CECT 8330の場合2.5×1010cfu/kg)の固定容量で経口胃カニューレを含む経口経管栄養によって5日間(研究0日目から4日目まで)投与した。ヒトにおける投与の目的の経路であることから経口経路を研究のために選んだ。
【0119】
実験中の観察は:罹患率/死亡率;体重;臨床徴候(水分補給(hydration)及び身体状態を含む子の様子;刺激に対する応答;自然な活動−仰臥位にしたときに体をくねらせる能力−皮膚の色)であった。
【0120】
動物を2つの異なる期間後に安楽死させた:
− 「トランスロケーション」の群は実験4日目に安楽死させた(5日間治療の最終日)。
− 「臨床徴候」の群は実験11日目に安楽死させた(最終経口投薬の1週間後)
【0121】
仔を頭切除術によって安楽死させ、無処置の動物及びその組織表面すべての検討を含み胸部及び腹部の腔の内部検討が続く剖検を実施した。「トランスロケーション」群に属する動物では、安楽死の直後に動物の肝臓を回収し、バクテリアルトランスロケーション分析まで2−4℃に維持した。各肝臓試料およそ5mgを0.01%ゼラチンPBS 1ml中で均質化した。この均質物から100μlをMcConkeyプレート又はMRSプレートにプレーティングした。コロニーを37℃、48時間のインキュベーション後に計数した。
【0122】
非自然死亡率又は毒性関連臨床徴候を研究中に観察した。コントロール(ビヒクル)とCECT 8330との間で体重に差異は検出されず、すべての動物の行動は正常であった。さらに、コントロールとCECT 8330群との間で、乳酸菌又は腸内細菌の肝臓中へのトランスロケーションを示していた動物の数に差異は観察されなかった。
【0123】
実施例5.株の単離
新鮮便を0−9歳児から回収し、PBSバッファー(pH7.4)に溶かし、アリコートを取り、種々の抗生物質組合せを補充したMRSにプレーティングした。株を微好気性条件(5%CO)下、37又は30℃で培養した。インキュベーション時間は、増殖率に依存したが、24時間から3日間通常どおり行った。グラム染色を最初の同定を得るために実行した。一度増殖されたら単離した株は15%スキムミルク粉を含む0.1×PBS中で凍結乾燥によって保存した。株は、10μg/mlバンコマイシンを補充したMRSアガーで増殖させた。顕微鏡検査は、ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894がグラム陽性桿菌であり、ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330がグラム陽性球菌であることを明らかにした。
【0124】
以前記載されたとおり属及び種の同定を、16S rRNA遺伝子の増幅によって行った(Bosch, M. 等, Probiotic properties of Lactobacillus plantarum CECT 7315 and CECT 7316 isolated from faeces of healthy children. Lett App. Microbiol, 2012 vol. 54, p 240-6)。配列番号1はペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330の16S rRNA配列に対応し、配列番号2はビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894の16S rRNA配列に対応する。
【0125】
株遺伝子型判定をゲノム消化及びパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によって実施した。
【0126】
ペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330をわずかな修正を伴って以前記載されているプロトコールに供した(Rodas, A.M.,等, Polyphasic study of wine Lactobacillus strains: taxonomic implications. Int J Syst Evol Microbiol, 2005. 55(1): p 197-207)。コントロールとして使用できる入手可能なペディオコッカス・ペントサセウスの市販の株がないことから、ペディオコカス・アシディラクティシ2つの市販の株をこのアッセイに含めた(図1における1及び2)。株をMRS寒天板で増殖させ、37℃、5%COで18時間インキュベートした。細胞を回収し、PET(10mM Tris pH7.6、1M NaCl)8mlで3回洗浄し、次いで6000rpmで10分間遠心分離した。沈殿物を700ml溶解バッファー(6mM Tris、1M NaCl、0.1M EDTA、0.5% SLS、0.2%デオキシコール酸;1mg/mlリゾチーム;40U/mlムタノリシン(mutanolysin);20mg/ml RNase)に再懸濁した。等容量の1.6%低融点アガロース(FMC BioProducts、Rockland、ME、USA)を再懸濁した細胞に加え、4℃、1時間凝固させた。挿入物を2ml溶解バッファーII(0.5M EDTA pH9.2、1% N−ラウリルサルコシン及び1mg/mlプロナーゼ)に移し、50℃、48時間インキュベートした。次いで挿入物を室温でTEバッファー(10mM Tris、1mM EDTA pH8.0)で洗浄した。総DNA消化をSma−I及びNot−1制限酵素(Roche Diagnostics)で別々に実施した。パルスフィールドゲル電気泳動をCHEF DRIII装置(BioRad Laboratories)を使用して実行した。挿入物を1%アガロースゲル(SeaKem ME agarose、FMC BioProducts、ME、USA)にロードした。表3は、各酵素についての電気泳動条件を記載している。DNA分子量マーカーは、ラムダラダーPFGマーカー及びLow Range PFG Maker(New England Biolabs)であった。電気泳動後、ゲルをGelDoc系(BioRad)を使用してエチジウム臭化物及びUVで染色した。
【0127】
ビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894を、Briczinski,E.P.等“Technical note:a rapid pulsed-field gel electrophoresis method for analysis of bifidobacteria”J.Dairy Sci.2006,vol.89,p 2424-2427に記載のとおりXba I及びSpe Iを制限酵素として使用するPFGEによって特徴を明らかにした。得られたパターンをB.ロンガムCECT4551のものと比較した。
【0128】
結果を図1及び図2に示す。パルスフィールドゲル電気泳動Not−I及びSma−I制限パターンは、ペディオコッカス・ペントサセウスの株CECT 8330及び、ペディオコカス・アシディラクティシ種に属する市販のコントロール株(1及び2)とは異なっていた。ペディオコッカス・ペントサセウス株をコントロールとして含むことはそれが市販でないことから不可能であった。PFGEは、同じ種の株間の識別を可能にし、それにより細菌種内で所与の細菌株を一意的に同定するために使用できる(Rodas, A.M.、等2005上記)。
【0129】
実施例6.油性懸濁物の調製物
ヒマワリ油400mlを撹拌手段を伴う容器に導入した。コロイドシリカ9.5gを完全な均質化まで塊の形成及び凝集を回避するために撹拌しながら(150rpm)ゆっくり加えた。5×1012cfusを含有するペディオコッカス・ペントサセウスCECT 8330 13.3gを完全な分散までゆっくり撹拌(50rpm)しながら容器に加えた。次いで、5×1012cfusを含有するビフィドバクテリウム・ロンガムCECT 7894 42.75gを完全な分散までゆっくり撹拌(50rpm)しながら容器に加えた。懸濁物をヒマワリ油で最終的に1000mlにし、最終懸濁物を均質に撹拌した。懸濁物を室温に保った。
【0130】
実施例7.臨床研究
研究の設計
試験的な臨床治験をP.ペントサセウスCECT 8330とB.ロンガムCECT 7894とを組み合わせたプロバイオティクス処方の有効性及び安全性を評価するために実施した。研究は、カタルーニャ(スペイン)から合計8ヵ所の参加施設を含む2つの並行アームでの前向き二重盲検プラセボコントロール、無作為臨床治験として設計した。研究プロトコールは、ヘルシンキ宣言に従ってEthical Committees from IDIAP Jordi Gol(Barcelona、Spain)によってFundacio Unio Catalana d’Hospitals(Barcelona、Spain)から承認された。
【0131】
次の対象基準のすべてに合致する男女の正期産児を採用した:21から120日齢;最少出生時体重2.5Kg;母乳栄養又は調製粉乳(加水分解又は開始処方)での栄養の何れか;定義「普通の世帯機能に問題である(少なくとも1週間に、3日以上で3回以上のエピソードが1日あたり少なくとも60分間観察されたことを意味する)激烈、持続的及び癒やしがたい泣きであり、予め腸重積などの器質的病因を排除したもの」による、過剰な泣き及びぐずり。排除基準は:早期産児(37週以前での出生);慢性疾患;胃腸障害(疝痛に関連しない)の病歴;免疫抑制された乳児;外科的治療の既往又は予定;登録前1週間でのプロバイオティクス又は抗生物質の摂取;両親又は代理人が研究要件に適切に従うことができない乳児であった。対象は、プロバイオティクス治療群又はプラセボ群の何れかに無作為に割り当てられた。治療は、実施例6に記載の組成物からなる。プラセボは、プロバイオティクスを含まない同じ油性懸濁物からなる。組成物は、14日間哺乳前30分に投与した(5滴/日)。研究中、両親は、治療の遵守(adhesion)、泣きの発生及び有害作用を記録する質問票を記入することを求められた。
【0132】
データ分析をIBM(登録商標)SPSS Statistic v20 for Windowsで実施し、結果を平均及び標準誤差として表した。臨床治験中の毎日の泣き時間における平均低減を、研究の最後の3日間(12、13及び14日目)での1日あたりの泣きの合計時間(分)の平均と、研究の最初の3日間(1、2及び3日目)での1日あたりの合計時間(分)の平均との間の差異として算出した。各エピソードの持続時間における平均低減を、研究の最後の3日間(12、13及び14日目)での各エピソード持続時間(分)の平均と、研究の最初の3日間(1、2及び3日目)での各エピソード持続時間(分)の平均との間の差異として算出した。
【0133】
結果
臨床治験の開始時に、プラセボ群に属する乳児n=9及び、プロバイオティクス処方群に属するn=11が泣き時間の提案された定義に合致し、それにより研究を継続できることを確認した。研究の開始時にこの集団の平均泣き時間は、60から240分間の範囲であった。研究中プラセボ及びプロバイオティクス処方の両方は、良好な耐容性を示し、補充に関連する有害作用は観察されなかった。さらに図3に示すとおり、泣き時間はプラセボ及びプロバイオティクス群の両方において研究中に低減した。しかしプロバイオティクス消費は、平均泣き時間においてさらに高い低減を生じた。同様の傾向が各エピソードの持続時間について観察された。
【0134】
観察された臨床効果は、インビトロで観察されたプロバイオティクス特性を裏付けた。この研究は、プロバイオティクスが疝痛を治療するために使用された他の研究と比較してある程度の強さを示したので、これらの結果は、関連して興味深い。例えば、研究は、母乳栄養及び人工栄養乳児の両方を含んでいた。現在のプロバイオティクス処方は人工栄養サブ集団においていかなる改善も示すことができていないので、これは関連して興味深い。さらに参加乳児を日常の診療によりさらに現実的に乳児疝痛の臨床定義に基づいて採用し、治療期間(14日間)は、多数の他の臨床治験(21−28日間)より短かった。
【0135】
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WO2007142596
図1
図2
図3A
図3B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]