(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6643998
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】水平化手段を有する溝掘り装置
(51)【国際特許分類】
E02F 5/10 20060101AFI20200130BHJP
E02F 5/14 20060101ALI20200130BHJP
E02F 9/10 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
E02F5/10 B
E02F5/14 Z
E02F9/10
【請求項の数】27
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-548087(P2016-548087)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公表番号】特表2017-503941(P2017-503941A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】GB2015050165
(87)【国際公開番号】WO2015110834
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】1401236.3
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514099824
【氏名又は名称】アイエイチシー エンジニアリング ビジネス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IHC ENGINEERING BUSINESS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ マンチェスター
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ウイルキンソン
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−154237(JP,A)
【文献】
特表2002−512323(JP,A)
【文献】
米国特許第03430790(US,A)
【文献】
実開昭63−039092(JP,U)
【文献】
米国特許第03099098(US,A)
【文献】
特表平09−511712(JP,A)
【文献】
特開平04−194126(JP,A)
【文献】
特開昭55−039848(JP,A)
【文献】
特開昭61−191729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 5/10
E02F 5/14
E02F 9/10
E02F 9/12
B60G 3/06
B60G 17/00
E02F 3/43
E02F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域の底に地盤表面から下方に延びる溝を掘削するよう構成した水中溝掘り装置において、
主本体部分と、
前記主本体部分から垂下する溝掘削機器と、
前記主本体部分の互いに対向する両側の側面に配置し、前記主本体部分を支持する少なくとも2つの接地ユニットであって、各接地ユニットはそれぞれに対応した独立的に動作可能な懸架アセンブリによって前記主本体部分に連結し、対応の各懸架アセンブリは前記地盤の不整性を補償して前記溝掘削機器の鉛直線に対する所望角度指向性を維持するよう構成した、該接地ユニットと、を備え、
独立的に動作可能な懸架アセンブリの各々は、前記溝掘削機器を縦方向に2等分する平面上にほぼ配置した枢動中心を有し、前記平面は、前記溝掘り装置が平坦で水平な地盤上に存立するとき公称垂直面となるものとし、
独立的に動作可能な懸架アセンブリの各々は、前記各接地ユニットの接地部分が前記溝掘削機器が前記地盤表面に交差する点をほぼ中心に枢動するよう構成する、溝掘り装置。
【請求項2】
請求項1記載の溝掘り装置において、前記対応する各懸架アセンブリは、前記装置が不整地盤上通過するとき、前記溝掘削機器の横方向変位をほぼ防止するよう構成する、溝掘り装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の溝掘り装置において、前記溝掘削機器の前記所望角度指向性は公称垂直方向とする、溝掘り装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、前記溝掘削機器は、側方角度変位に対して前記溝掘り装置の前記主本体部分に固定関係となるよう取り付け、また前記それぞれに対応する独立的に動作可能な懸架アセンブリは、前記溝掘削機器の前記所望角度指向性を維持するよう前記主本体部分を前記水平に対して所望の角度指向性に維持する構成とする、溝掘り装置。
【請求項5】
請求項4記載の溝掘り装置において、前記主本体部分の前記所望角度指向性はほぼ水平とする、溝掘り装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、さらに、前記主本体部分及び前記懸架アセンブリの素子に取り付け、また前記懸架アセンブリの位置、及びひいては前記接地ユニットの前記主本体部分に対する位置を調整し、したがって、前記地盤の不整性を補償するよう構成したアクチュエータを備える、溝掘り装置。
【請求項7】
請求項6記載の溝掘り装置において、さらに、前記アクチュエータの調整を行うよう動作する電子制御装置を備える、溝掘り装置。
【請求項8】
請求項7記載の溝掘り装置において、さらに、前記装置の位置条件及び/又は装置が通過している若しくは通過しようとする地盤の局所的特徴の存在及び特性を決定することができる1個又は複数個の測定デバイスを備え、前記電子制御装置は、前記1個又は複数個の測定デバイスから受け取る1つ又は複数の出力に応答して少なくとも1個の前記アクチュエータの調整を行うよう動作する、溝掘り装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、前記懸架アセンブリは、前記主本体部分に対して固定関係となるよう配置し、かつ第1枢動ポイント及び第2枢動ポイントを有する第1懸架アームと、前記接地ユニットに取り付け、かつ第1枢動ポイント及び第2枢動ポイントを有する第2懸架アームと、前記第1及び第2の懸架アームそれぞれの第1枢動ポイントに枢動可能に取り付けた第1懸架枢動アームと、並びに前記第1及び第2の懸架アームそれぞれの第2枢動ポイントに枢動可能に取り付けた第2懸架枢動アームと、を有する、溝掘り装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、前記接地ユニットは、使用にあたり前記溝掘り装置を移動させる牽引力を伝達するよう構成した無限軌道ユニットとする、溝掘り装置。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、前記接地ユニットそれぞれは接地面を有し、また独立的に動作可能な懸架アセンブリの各々は、前記接地面の側方傾斜角度が前記地盤表面の傾斜角度にほぼ等しくなり、前記接地面で前記地盤表面に接触するよう前記接地面の側方傾斜角度を設定できる構成とする、溝掘り装置。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、前記溝掘削機器は、1個又は複数個のジェット噴射ツール、1個又は複数個のチェーンカッタ、1個又は複数個のオーガ、1個又は複数個の削岩ホイール、及びバックホーのような不連続動作カッタから選択する、溝掘り装置。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、前記地盤の不整性は、装置の縦方向前方の方向に対して側方傾斜である、又は側方傾斜を含む、溝掘り装置。
【請求項14】
請求項1〜13のうちいずれか一項記載の溝掘り装置において、前記地盤の不整性は、岩、隆起部、巨石等のような局部的地盤特徴部又は形成部とする、溝掘り装置。
【請求項15】
水域の底における地盤表面から下方に延びる溝を掘削するよう構成した溝掘り方法において、
溝掘り装置により前記溝を掘削する溝掘削ステップであって、前記溝掘り装置は、主本体部分、前記主本体部分から垂下する溝掘削機器、前記主本体部分の互いに対向する両側の側面に配置し、前記主本体部分を支持する少なくとも2つの接地ユニットであって、各接地ユニットはそれぞれに対応した独立的に動作可能な懸架アセンブリによって前記主本体部分に連結し、対応の各独立的に動作可能な懸架アセンブリは、前記溝掘削機器を縦方向に2等分する平面上にほぼ配置した枢動中心を有し、前記平面は、前記溝掘り装置が平坦で水平な地盤上に存立するとき公称垂直面となるようにする、該接地ユニットを備えるものとする、該溝掘削ステップと、
前記溝掘削ステップを行いながら、前記対応の各懸架アセンブリを調整する調整ステップであって、前記対応の各懸架アセンブリが前記地盤の不整性を補償して前記溝掘削機器の鉛直線に対する所望角度指向性を維持する、該調整ステップと、
を有し、
独立的に動作可能な懸架アセンブリの各々は、前記各接地ユニットの接地部分が前記溝掘削機器が前記地盤表面に交差する点をほぼ中心に枢動するよう構成する、溝掘り方法。
【請求項16】
請求項15記載の溝掘り方法において、前記調整ステップは、溝掘削作業中、掘削している又は掘削すべき地盤の地形変化に落としてほぼ連続的に調整する、溝掘り方法。
【請求項17】
請求項15又は16記載の溝掘り方法において、前記対応の各懸架アセンブリの前記調整ステップは、前記装置が不整地盤上通過するとき、前記溝掘削機器の横方向変位をほぼ防止する、溝掘り方法。
【請求項18】
請求項15〜17のうちいずれか一項記載の溝掘り方法において、前記対応の各懸架アセンブリの前記調整ステップは、前記溝掘削機器の公称垂直指向性を維持するのに有効となるよう行う、溝掘り方法。
【請求項19】
請求項15〜18のうちいずれか一項記載の溝掘り方法において、前記溝掘削機器は、側方角度変位に対して前記溝掘り装置の前記主本体部分に固定関係となるよう取り付け、また前記それぞれに対応する独立的に動作可能な懸架アセンブリは、前記溝掘削機器の前記所望角度指向性を維持するよう前記主本体部分を前記水平に対して所望の角度指向性に維持する構成とする、溝掘り方法。
【請求項20】
請求項19記載の溝掘り方法において、前記主本体部分の前記所望角度指向性はほぼ水平とする、溝掘り方法。
【請求項21】
請求項15〜20のうちいずれか一項記載の溝掘り方法において、溝掘り装置は、さらに、前記主本体部分及び前記懸架アセンブリの素子に取り付けたアクチュエータを備え、また前記溝掘り方法は、さらに、前記アクチュエータを操作して、前記懸架アセンブリの位置、及びひいては前記接地ユニットの前記主本体部分に対する位置を調整し、したがって、前記地盤の不整性を補償するステップを有する、溝掘り方法。
【請求項22】
請求項21記載の溝掘り方法において、溝掘り装置は、さらに、前記アクチュエータの調整を行うよう動作する電子制御装置を備えるものとする、溝掘り方法。
【請求項23】
請求項22記載の溝掘り方法において、溝掘り装置は、さらに、前記装置の位置条件及び/又は装置が通過している若しくは通過しようとする地盤の局所的特徴の存在及び特性を決定することができる1個又は複数個の測定デバイスを備え、前記電子制御装置は、前記1個又は複数個の測定デバイスから受け取る1つ又は複数の出力に応答して少なくとも1個の前記アクチュエータの調整を行うものとする、溝掘り方法。
【請求項24】
請求項15〜23のうちいずれか一項記載の溝掘り方法において、前記接地ユニットそれぞれは接地面を有し、また独立的に動作可能な懸架アセンブリは、前記接地面の側方傾斜角度が前記地盤表面の傾斜角度にほぼ等しくなり、前記接地面で前記地盤表面に接触するよう前記接地面の側方傾斜角度を設定できる構成とする、溝掘り方法。
【請求項25】
請求項15〜24のうちいずれか一項記載の溝掘り方法において、前記溝掘削機器は、1個又は複数個のジェット噴射ツール、1個又は複数個のチェーンカッタ、1個又は複数個のオーガ、1個又は複数個の削岩ホイール、及びバックホーのような不連続動作カッタから選択する、溝掘り方法。
【請求項26】
請求項15〜25のうちいずれか一項記載の溝掘り方法において、前記地盤の不整性は装置の縦方向前方の方向に対して側方傾斜である、溝掘り方法。
【請求項27】
請求項15〜26のうちいずれか一項記載の溝掘り方法において、前記地盤の不整性は、岩、隆起部、巨石等のような局部的地盤特徴部又は形成部とする、溝掘り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤又は陸地の一部に溝を形成する装置に関する。より具体的には、本発明は、湖底又は海底のような水域の底に溝を形成する装置に関する。このような溝は、一般的にパイプライン又はケーブル、とくに、水中のパイプライン又はケーブルを埋設し、パイプライン又はケーブルを損傷から保護するのに必要とされる。水中環境での使用に適した様々な溝掘り装置が知られており、このような装置は、必然的に水中の特別な要件に合致する適応性及び陸地で使用することを意図した装置との相違性を有する。
【0002】
本明細書における「海中(subsea)」は、海又は湖の下方環境に言及するのに使用し、「海底(seabed)」は、湖の底又は海の底に言及するのに使用する。
【背景技術】
【0003】
多数の異なる溝掘り装置が知られている。幾つかの代表的な例としては、特許文献1(米国特許第3099098号)、特許文献2(独国特許第4243696号)、特許文献3(国際公開第99/54556号)、特許文献4(国際公開第2013/088167号)、特許文献5(英国特許第2495950号)、特許文献6(欧州特許第1167636号)、特許文献7(オランダ国特許9201058号)がある。
【0004】
特許文献6は、中心に取り付けた溝掘削デバイスを有する溝掘り装置について記載している。この装置は、それぞれ4バー懸架アセンブリを介してホイール又はスキッド(そり)に取り付け、これら懸架アセンブリは装置の主本体から側方に突出することができる。
【0005】
特許文献7は水中溝用の溝掘り装置について記載している。この装置は主本体を有し、この主本体に溝掘削ツールを取り付ける。主本体は、4つの無限軌道ユニットに取り付ける。各無限軌道ユニットは、主本体に対して高さ、方向及び側方間隔を調整することができる。
【0006】
溝掘り装置には、溝を掘削すべき地盤又は陸地の不整地形を取り扱う際に問題が起こり得る。本明細書における「陸地(land)」又は「地盤(ground)」は、溝掘り装置を水中で使用する構成にするとき海底を意味する。このような不整地形としては、溝掘り装置が通過しなければならない傾斜、及び隆起部、巨石等のような溝掘り装置の経路における上方に突出し得る陸地(海底)の局所的形体がある。
【0007】
このような不整地形は、溝掘り装置の溝掘削機器にとって困難なことを生じ得る。幾つかの典型的構成において、溝掘削機器は、通常溝掘削機器が保管位置と使用位置との間で移動できるよう垂直平面内で上昇及び下降するよう溝掘り装置に取り付ける。しかし、溝掘削機器は、一般的には溝掘り装置の主本体部分に対して角度を固定して取り付ける。この結果、主本体部分の角度位置が変化すると、溝掘削機器の角度指向性も変化する。溝掘削機器のこのような角度指向性変化は掘削している溝に対して大きな影響を及ぼす結果となる。とくに、溝掘削機器の角度指向性変化は、掘削される溝の壁が望ましい掘削角度以外の角度で形成されることになり得る。一般的に、望ましい掘削角度は垂直である。望ましい掘削角度からのこのような逸脱(とくに、垂直掘削角度からの逸脱)は、壁の安定的低下又は喪失を招き、溝が崩壊するおそれがある。
【0008】
特許文献3に記載のような他の既知のデバイスにおいて、溝掘削機器は、溝掘り装置の主本体部分に対して公称縦方向水平軸線周りに運動可能に取り付けることができる。同様に、特許文献1は、装置の主本体に対して角度を固定した溝掘削機器を有する溝掘り装置について記載している。主本体はシャーシに取付け、主本体はシャーシに対して縦方向水平軸線周りに移動可能にする。これら従来技術の構造において、主本体部分の角度変位に対する幾分の補償が得られ、また溝掘削機器はほぼ公称垂直指向性を維持できる。しかし、このような構成によっては、溝掘り装置の主本体部分の角度指向性が変化するとき生ずる溝掘削機器の側方変位を補償しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3099098号明細書
【特許文献2】独国特許第4243696号明細書
【特許文献3】国際公開第99/54556号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2013/088167号パンフレット
【特許文献5】英国特許第2495950号明細書
【特許文献6】欧州特許第1167636号明細書
【特許文献7】オランダ国特許9201058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の幾つかの実施形態は上述の問題のうち1つ又はそれ以上に対処することを目指す。本発明の実施形態は、地盤、とくに海底における地形変化に適応して、溝掘削機器の所望の角度指向性(とくに、垂直指向性)をよりよく維持できる溝掘り装置を提供できるようにする。
【0011】
本発明の実施形態は、地盤、とくに海底における地形変化に適応して、溝掘削機器の意図した溝掘りコース又は経路からの意図しない又は望ましくない側方変位を回避、減少又は最小化できる溝掘り装置を提供できるようにする。
【0012】
本発明の実施形態は、地盤、とくに海底における地形変化に適応して、溝掘削機器を取り付ける溝掘り装置の主本体部分の角度変位を最小化、減少又は防止できる溝掘り装置を提供できるようにする。
【0013】
本発明の特別な実施形態は、実際にほぼ実質的中心点周りに枢動して溝掘削機器の所望角度指向性を維持する溝掘り装置を提供できるようにする。
【0014】
本発明装置の好適な実施形態は、装置の主本体と装置を存立させる接地ユニットとの間に懸架アセンブリを有することができるものとする。対応する各懸架アセンブリは、溝掘り装置(又は少なくとも装置の主本体部分)が実際にほぼ実質的中心点周りに枢動して、下側の地盤地形の変化に係わらず、溝掘削機器の所望角度指向性を維持する溝掘り装置を提供できるようにする。溝掘削機器の所望角度指向性は公称垂直方向とすることができる。溝掘削機器の所望指向性は、溝掘削機器を取り付ける溝掘り装置の主本体部分の所望指向性を維持することによって維持できるものとする。
【0015】
本発明の実施形態は、実質枢動系を含み、またこの枢動系はほぼ溝掘削機器の中心線上に存在する枢動中心を有することができるものとする。幾つかの好適な構造において、溝掘削機器の中心線は溝掘り装置の中心線に一致するものとすることができる。
【0016】
本発明の特別な実施形態において、対応する各懸架アセンブリによって実現できる実質枢動系を好適に最適化し、
重力に基づく加速度に起因して方向に対する主本体部分の角度変位を最小に維持する、及び/又は
ツール地盤係合ポイントと接地ユニットとの間の距離変動を最小化する(すなわち、側方変位を最小化する)、及び/又は
接地ユニットの接地面を接地ユニットが存立する地盤に対してほぼ平行に保持する条件に接地ユニットを維持するため接地ユニットを回転可能にできるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1態様によれば、地盤表面から下方に延びる溝を掘削するよう構成した溝掘り装置を提供し、この溝掘り装置は、主本体部分と、前記主本体部分から垂下する溝掘削機器と、前記主本体部分の互いに対向する両側の側面に配置し、前記主本体部分を支持する少なくとも2つの接地ユニットであって、各接地ユニットはそれぞれに対応した独立的に動作可能な懸架アセンブリによって前記主本体部分に連結し、対応の各懸架アセンブリは前記地盤の不整性を補償して前記溝掘削機器の鉛直線に対する所望角度指向性を維持するよう構成した、該接地ユニットと、を備え、前記独立懸架アセンブリは、前記溝掘削機器を縦方向に2等分する平面上にほぼ配置した枢動中心を有し、前記平面は、前記溝掘り装置が平坦で水平な地盤上に存立するとき公称垂直面となるものとする。
【0018】
幾つかの好適な実施形態において、前記各接地ユニットの枢動中心はほぼ前記溝掘削機器が前記地盤表面に交差する位置に配置することができる。とくに、接地ユニットの接地面の枢動中心は、ほぼ溝掘削機器が地盤表面に交差する位置に配置することができる。
【0019】
幾つかの好適な実施形態において、前記対応する各懸架アセンブリは、前記装置が不整地盤上通過するとき、前記溝掘削機器の横方向変位、とくに、側方角度変位をほぼ防止するよう構成することができる。
【0020】
幾つかの好適な実施形態において、前記溝掘り装置は、水域の底に溝を掘削するよう構成した水中溝掘り装置とすることができる。
【0021】
幾つかの好適な実施形態において、前記溝掘削機器の前記所望角度指向性は公称垂直方向とすることができる。
【0022】
幾つかの好適な実施形態において、前記溝掘削機器は、側方角度変位に対して前記溝掘り装置の前記主本体部分に固定関係となるよう取り付けることができ、また前記それぞれに対応する独立懸架アセンブリは、前記溝掘削機器の前記所望角度指向性を維持するよう前記主本体部分を前記水平に対して所望の角度指向性に維持する構成とすることができる。
【0023】
幾つかの好適な実施形態において、前記主本体部分の前記所望角度指向性はほぼ水平とすることができる。
【0024】
幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、さらに、前記主本体部分及び前記懸架アセンブリの素子に取り付けたアクチュエータを備えることができる。このアクチュエータは、前記懸架アセンブリの位置、及びひいては前記接地ユニットの前記主本体部分に対する位置を調整し、したがって、前記地盤の不整性を補償するよう構成することができる。
【0025】
幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、さらに、前記アクチュエータの調整を行うよう動作する電子制御装置を備えることができる。
【0026】
幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、さらに、1個又は複数個の測定デバイスを備えることができる。この測定デバイスは、前記装置の位置条件及び/又は装置が通過している若しくは通過しようとする地盤の局所的特徴の存在及び特性を決定することができる。前記電子制御装置は、前記1個又は複数個の測定デバイスから受け取る1つ又は複数の出力に応答して少なくとも1個の前記アクチュエータの調整を行うよう動作できる。
【0027】
幾つかの好適な実施形態において、前記懸架アセンブリは、前記主本体部分に対して固定関係となるよう配置し、かつ第1枢動ポイント及び第2枢動ポイントを有する第1懸架アームと、前記接地ユニットに取り付け、かつ第1枢動ポイント及び第2枢動ポイントを有する第2懸架アームと、前記第1及び第2の懸架アームそれぞれの第1枢動ポイントに枢動可能に取り付けた第1懸架枢動アームと、並びに前記第1及び第2の懸架アームそれぞれの第2枢動ポイントに枢動可能に取り付けた第2懸架枢動アームと、を有することができる。幾つかの好適な実施形態において、前記第1及び第2の懸架アームは前記主本体部分から側方かつ外方に突出することができる。例えば、前記第1及び第2の懸架アームは主本体部分からほぼ垂直方向外方に突出することができる。前記第1及び第2の懸架アームそれぞれの取付けは、(主本体部分の姿勢がほぼ水平であるとき)懸架アームがほぼ垂直な平面内でのみ移動できるよう行う。
【0028】
幾つかの好適な実施形態において、前記接地ユニットは、使用にあたり前記溝掘り装置を移動させる牽引力を伝達するよう構成した無限軌道ユニットとすることができる。
【0029】
幾つかの好適な実施形態において、前記接地ユニットそれぞれは接地面を有することができる。前記独立懸架アセンブリは、前記接地面の側方傾斜角度が前記地盤表面の傾斜角度にほぼ等しくなり、前記接地面で前記地盤表面に接触するよう前記接地面の側方傾斜角度を設定できる。
【0030】
幾つかの好適な実施形態において、前記溝掘削機器は、1個又は複数個のジェット噴射ツール、1個又は複数個のチェーンカッタ、1個又は複数個のオーガ、1個又は複数個の削岩ホイール、及びバックホーのような不連続動作カッタから選択することができる。幾つかの好適な実施形態において、溝掘削機器は、削岩ホイール又はチェーンカッタとすることができる。幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、溝掘削機器が溝掘削に従事している間に前進移動するよう構成することができる。
【0031】
幾つかの好適な実施形態において、前記地盤の不整性は、装置の縦方向前方の方向に対して側方傾斜であり得る。
【0032】
幾つかの好適な実施形態において、前記地盤の不整性は、岩、隆起部、巨石等のような局部的地盤特徴部又は形成部であり得る。
【0033】
本発明の第2態様によれば、地盤区域における地盤表面から下方に延びる溝を掘削するよう構成した溝掘り方法を提供し、この方法は、
溝掘り装置により前記溝を掘削する溝掘削ステップであって、前記溝掘り装置は、主本体部分、前記主本体部分から垂下する溝掘削機器、前記主本体部分の互いに対向する両側の側面に配置し、前記主本体部分を支持する少なくとも2つの接地ユニットであって、各接地ユニットはそれぞれに対応した独立的に動作可能な懸架アセンブリによって前記主本体部分に連結し、対応の各独立懸架アセンブリは、前記溝掘削機器を縦方向に2等分する平面上にほぼ配置した枢動中心を有し、前記平面は、前記溝掘り装置が平坦で水平な地盤上に存立するとき公称垂直面となるようにする、該接地ユニットを備えるものとする、該溝掘削ステップと、
前記溝掘削ステップを行いながら、前記対応の各懸架アセンブリを調整する調整ステップであって、前記対応の各独立懸架アセンブリが前記地盤の不整性を補償して前記溝掘削機器の鉛直線に対する所望角度指向性を維持する、該調整ステップと、
を有する。
【0034】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記各接地ユニットの枢動中心は、ほぼ前記溝掘削機器が前記地盤表面に交差する位置に配置することができる。とくに、前記各接地ユニットにおける接地面の枢動中心は、ほぼ前記溝掘削機器が前記地盤表面に交差する位置に配置することができる。
【0035】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記調整ステップは、溝掘削作業中、掘削している又は掘削すべき地盤の地形変化に落としてほぼ連続的に調整することができる。
【0036】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記対応の各懸架アセンブリの前記調整ステップは、前記装置が不整地盤上通過するとき、前記溝掘削機器の横方向変位、とくに側方角度変位をほぼ防止することができる。
【0037】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記溝掘り装置は、水域の底に溝を掘削するよう構成した水中溝掘り装置とすることができる。
【0038】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記対応の各懸架アセンブリの前記調整ステップは、前記溝掘削機器の公称垂直指向性を維持するのに有効となるよう行うことができる。
【0039】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記溝掘削機器は、側方角度変位に対して前記溝掘り装置の前記主本体部分に固定関係となるよう取り付け、また前記それぞれに対応する独立懸架アセンブリは、前記溝掘削機器の前記所望角度指向性を維持するよう前記主本体部分を前記水平に対して所望の角度指向性に維持する構成とすることができる。
【0040】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記主本体部分の前記所望角度指向性はほぼ水平とすることができる。
【0041】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、さらに、前記主本体部分及び前記懸架アセンブリの素子に取り付けたアクチュエータを備え、また前記溝掘り方法は、さらに、前記アクチュエータを操作して、前記懸架アセンブリの位置、及びひいては前記接地ユニットの前記主本体部分に対する位置を調整し、したがって、前記地盤の不整性を補償するステップを有することができる。
【0042】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、さらに、前記アクチュエータの調整を行うよう動作する電子制御装置を備えるものとすることができる。
【0043】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、さらに、1個又は複数個の測定デバイスを備えることができる。この測定デバイスは、前記装置の位置条件及び/又は装置が通過している若しくは通過しようとする地盤の局所的特徴の存在及び特性を決定するよう動作でき、前記電子制御装置は、前記1個又は複数個の測定デバイスから受け取る1つ又は複数の出力に応答して少なくとも1個の前記アクチュエータの調整を行うことができる。
【0044】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記接地ユニットそれぞれは接地面を有し、また前記独立懸架アセンブリは、前記接地面の側方傾斜角度が前記地盤表面の傾斜角度にほぼ等しくなり、前記接地面で前記地盤表面に接触するよう前記接地面の側方傾斜角度を設定できる。
【0045】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記溝掘削機器は、1個又は複数個のジェット噴射ツール、1個又は複数個のチェーンカッタ、1個又は複数個のオーガ、1個又は複数個の削岩ホイール、及びバックホーのような不連続動作カッタから選択する。幾つかの好適な実施形態において、溝掘削機器は、削岩ホイール又はチェーンカッタとすることができる。幾つかの好適な実施形態において、溝掘り装置は、溝掘削機器が溝掘削に従事している間に前進移動するよう構成することができる。
【0046】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記地盤の不整性は装置の縦方向前方の方向に対して側方傾斜であり得る。
【0047】
本発明による方法の幾つかの好適な実施形態において、前記地盤の不整性は、岩、隆起部、巨石等のような局部的地盤特徴部又は形成部であり得る。
【0048】
本発明の他の態様によれば、主本体部分と、前記主本体部分から垂下する溝掘削機器と、前記主本体部分の互いに対向する両側の側面に配置し、前記主本体部分を支持する少なくとも2つの接地ユニットであって、各接地ユニットはそれぞれに対応した独立的に動作可能な懸架アセンブリによって前記主本体部分に連結し、対応の各懸架アセンブリは前記地盤の不整性を補償して前記溝掘削機器の鉛直線に対する所望角度指向性を維持するよう構成した、該接地ユニットと、を備える溝掘り装置を提供する。
【0049】
幾つかの好適な実施形態において、前記独立懸架アセンブリは、前記溝掘削機器を縦方向に2等分する平面上にほぼ配置した枢動中心を有し、前記平面は、前記溝掘り装置が平坦で水平な地盤上に存立するとき公称垂直面となるものとすることができる。
【0050】
本発明の他の態様によれば、地盤区域に溝を掘削する方法を提供し、この方法は、主本体部分、前記主本体部分から垂下する溝掘削機器、前記主本体部分の互いに対向する両側の側面に配置し、前記主本体部分を支持する少なくとも2つの接地ユニットであって、各接地ユニットはそれぞれに対応した独立的に動作可能な懸架アセンブリによって前記主本体部分に連結した、該接地ユニットを備える溝掘り装置を準備するステップと、
前記対応の各懸架アセンブリを調整する調整ステップであって、前記対応の各独立懸架アセンブリが前記地盤の不整性を補償して前記溝掘削機器の鉛直線に対する所望角度指向性を維持する、該調整ステップと、
を有する。
【0051】
本発明方法の幾つかの好適な実施形態において、前記独立懸架アセンブリは、前記溝掘削機器を縦方向に2等分する平面上にほぼ配置した枢動中心を有し、前記平面は、前記溝掘り装置が平坦で水平な地盤上に存立するとき公称垂直面となるものとすることができる。
【0052】
本発明の実施形態をさらに添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】好適には水中溝掘り装置である本発明の一実施形態による溝掘り装置がほぼ水平な地盤上に位置するときの概略的正面図である。
【
図2】
図1の溝掘り装置が第1側方傾斜を有する地盤上に位置するときの概略的正面図である。
【
図3】
図1の溝掘り装置が第1側方傾斜よりも大きい第2側方傾斜を有する地盤上に位置するときの概略的正面図である。
【
図4】好適には水中溝掘り装置である
図1の装置に類似した溝掘り装置が水平部分及び側方に傾斜した部分を有する地盤上に位置するときの概略的正面図である。
【
図5a】
図1〜3に類似した図であり、懸架アセンブリ及びこれに関連する接地ユニットの代表的移動範囲を示す。
【
図5b】
図1〜3に類似した図であり、懸架アセンブリ及びこれに関連する接地ユニットの代表的移動範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に図面につき説明すると、溝掘り装置100は、好適には水中溝掘り装置とする。溝掘り装置100は、主本体部分10を備えることができる。主本体部分10は、溝掘り装置100の主要構造要素を有することができ、この主要構造要素に対して、代表的には溝掘り装置の動作に必要な又は望ましい補助機器、例えば制御及び動力機器を取り付ける。
【0055】
主本体部分10は、さらに、溝掘り装置の溝掘削機器50のための取付け位置を形成することができ、この溝掘削機器50は、使用にあたり岩又は土壌のような物質を排除して海底12に溝を形成する装置及びコンポーネントである。幾つかの好適な実施形態において、溝掘削機器は、水中で溝を掘削するよう構成した機器とする。溝掘削機器50を
図5a及び5bに示し、また
図3に概略形状しか示さない、
図1、2及び4にも存在すると理解されたい。溝掘削機器の構造自体は当業者にはよく知られており、詳細に説明する必要はない。溝掘削機器の好適な形態には、海底に溝を掘削するのに適した、又は溝掘削するよう構成した機器とすることができる。
【0056】
適当な溝掘削機器の例としては、代表的には例えば、1個又は複数個のジェット噴射ツール、1個又は複数個のチェーンカッタ、1個又は複数個のオーガ、1個又は複数個の削岩ホイールのような所定長さの溝を掘削するよう連続的に動作することができる機器、バックホー等のような不連続的に動作することができる機器があり得る。本発明の幾つかの実施形態において、連続動作機器が好ましい。本発明の幾つかの実施形態において、チェーンカッタ又は削岩ホイールがとくに好ましい。
【0057】
幾つかの実施形態において、溝掘削機器50は主本体部分10に取り付けることができ、溝掘り装置100の縦方向中心線14を含む縦方向平面に位置するよう取り付けることができる。このような縦方向平面は、主本体部分が公称水平状態であるとき、例えば、装置100が水平で平坦な陸地上に存立するとき公称垂直平面である。溝掘削機器は、幾つかの実施形態において、溝掘り装置100の中心線14を含む縦方向平面内で上昇及び下降して溝掘削深さを変化させることができるようにし、また幾つかの構造において、保管位置と使用位置との間で機器50を移動できるようにする。
【0058】
幾つかの構造において、本発明の好適さが低い幾つかの構造によれば、溝掘削機器は、溝掘り装置100の縦方向中心線14から側方にオフセットした縦方向垂直平面上に位置するよう主本体部分10に取り付けることができる。さらに特別には、縦方向中心線から側方のオフセットした縦方向垂直平面は、主本体部分が公称水平状態であるとき、例えば、装置100が水平で平坦な陸地上に存立するとき溝掘削機器50の縦方向(装置100に対する)垂直2等分面とすることができる。溝掘削機器は、これら実施形態の変更実施形態において、溝掘り装置100の中心線14からオフセットした縦方向垂直平面内で上昇及び下降して溝掘削深さを変化させることができるようにし、また幾つかの構造において、保管位置と使用位置との間で機器50を移動できるようにする。
【0059】
上述した実施形態によれば、溝掘削機器50は、溝掘削作業を行うときに、主本体部分10に対して角度が固定されるようにする。したがって、機器50は装置100の縦方向中心線14を含む又は中心線から側方にオフセットした縦方向垂直平面に拘束することができる。
【0060】
上述のことから、溝掘削作業に使用するにあたり、例えば、溝を掘削する地盤(とくに、海底)の側方角度傾斜が変化する結果として主本体部分10の側方傾斜角度が変化する場合、溝掘削機器50がこの結果として相応の側方傾斜角度変化を受け、これにより溝を掘削する角度が垂直状態から逸脱することになる。とくに、掘削が垂直状態でないとき、掘削される溝の側壁は垂直でなくなり、このことは溝を不安定にする。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態は、溝掘削機器50におけるこのような側方角度変化を回避又は減少することを目指し、とくに、少なくとも溝掘削機器50の垂直指向性をほぼ維持するようにする。本発明の実施形態において、このことは、溝掘削機器50を取り付ける主本体部分10の側方傾斜角度変化を回避又は減少することによって達成することができる。特別な実施形態において、主本体部分10は少なくともほぼ水平な形態を維持できるようにする。とくに、本発明の実施形態において、装置の縦方向中心線14を含む公称垂直平面の角度が鉛直状態から逸脱するのを減少又は防止することを目指すことができる。用語「公称垂直平面」とは、主本体部分が公称的に水平であるとき、例えば、装置100が水平で平坦な陸地上に存立するときほぼ垂直状態となる平面を意味する。
【0062】
装置100は、さらに、主本体部分10の両側に対向する側面にそれぞれ配置した少なくとも2個の接地ユニット16を有することができる。図において、2個のこのような接地ユニット16′及び16″を示す。他の例示的形態において、4個のこのような接地ユニットを準備して2個ずつ主本体部分10の各側面に配置する、又は6個のこのような接地ユニットを準備して3個ずつ主本体部分10の各側面に配置することができる。
【0063】
幾つかの好適な実施形態において、接地ユニット16は、使用にあたり溝掘り装置100を移動させる牽引力を伝達するよう構築及び構成する。幾つかの好適な実施形態において、接地ユニットを含む装置は、溝掘り作業中、すなわち、溝掘削機器が積極的に溝掘削に従事する間に、ほぼ連続的に前進移動する。時々は、例えば、所望溝方向に追従するよう装置100の方向調整中には、後退移動も有利に用いることができる。
【0064】
接地ユニット16は、幾つかの実施形態において、主本体部分10に対して操舵可能にし、装置100の移動方向を所望の溝堀経路又はコースに追従する調整を行うことができるようにする。
【0065】
幾つかの好適な実施形態において、接地ユニット16は、無限(無端関節連結)軌道を有することができる。海底溝掘り装置に適したものを含めて溝掘り装置に適切な無限軌道の好適な構造的詳細は、当業者にはよく知られている。
【0066】
幾つかの代替的構造において、接地ユニットは牽引力を伝達する必要はなく、主として装置100が地盤上で動き易くするよう構成することができる。このような構造の好適例としては、無動力ホイール、スキッド(そり)等がある。
【0067】
対応する各接地ユニット16を主本体部分10に対して独立懸架アセンブリ20により連結する。主本体部分10は、懸架アセンブリ20を介する接地ユニット16によって地盤(例えば、海底)12上に支持される。
【0068】
各懸架アセンブリ20は、ほぼ溝掘り装置100の定義した平面上に存在する枢動中心を有する実質的な枢動系を有するよう構成することができる。このようにして、懸架アセンブリは、下側にある海底12が側方への傾斜を有する場合でも、主本体部分10がほぼ水平な条件(すなわち、溝掘り装置の縦方向中心線14を含む(先に定義したような)公称垂直平面がほぼ垂直となる状態)に留まるよう構成することができる。
【0069】
この定義平面は、溝掘削機器50の縦方向の(先に定義した)垂直二等分面とすることができる。幾つかの好適な実施形態によれば、溝掘削機器を主本体部分の中心(横方向に関して)に取り付ける場合、縦方向垂直二等分面は装置100の長手方向中心線に一致する。他の構造において、溝掘削機器50の縦方向垂直二等分面は、装置100の縦方向中心線から側方にオフセットすることができる。
【0070】
図1は、本発明の一実施形態による溝掘り装置がほぼ水平で平坦な地盤(海底)12′上に位置する状態を概略的に示す。主本体部分10はほぼ水平な状態をとり、したがって、中心線14がほぼ垂直となることが分かる。この状態において、溝掘削機器50も垂直に整列し、したがって、上述したように、ほぼ垂直な側面を有する溝を掘削することができる。
【0071】
溝掘削機器の幾つかの構成によれば、掘削する溝壁が意図的に垂直でないものにすることもあり得る。例えば、溝幅が底部よりも頂部で大きくなるよう形成する溝の側面(側壁)を傾斜させることができる。このような構成においては、さらに、溝掘削機器は意図するほぼ垂直な形態から逸脱しないようにすることが望ましく、なぜならこのような逸脱は溝側面を掘削するとき意図した角度からの逸脱を生ずる結果となるからである。
【0072】
図2は、本発明の一実施形態による溝掘り装置が側方傾斜を有する又は公称水平ライン18に対して角度αで示す角度だけ傾く地盤(海底)12″上に位置する状態を概略的に示す。
図2からは、懸架アセンブリ20が海底12″の傾斜を補償するよう動作して、主本体部分10がほぼ水平な状態を維持し、中心線14がほぼ垂直となることが分かる。溝掘削機器50は、このようにして、ほぼ垂直な指向性を維持できる。
【0073】
図3は、本発明の一実施形態による溝掘り装置が側方傾斜を有する又は公称水平ライン18に対して角度βで示す角度だけ傾く地盤(海底)12’’’上に位置する状態を概略的に示す。角度βは角度αよりも大きく、地盤12’’’の傾斜角度は地盤12″の角度よりも大きい。それにも係わらず、懸架アセンブリ20は海底12’’’の傾斜を補償するよう動作して、主本体部分10がほぼ水平な状態を維持し、中心線14がほぼ垂直となることができる。溝掘削機器50は、このようにして、ほぼ垂直な指向性を維持できる。
【0074】
図4は、どのようにして溝掘り装置100が、とくに懸架アセンブリ20が異なる地盤の地形を補償できるかを図式的に示す。したがって、
図4において、接地ユニット16hは公称的に水平な地盤(海底)部分12h上に休止するとともに、接地ユニット16iは水平に対して角度θで傾く地盤(海底)部分12i上に休止する。それにも係わらず、懸架アセンブリ20は海底部分12h及び12iの異なる傾斜を補償するよう動作して、主本体部分10がほぼ水平な状態を維持し、中心線14がほぼ垂直となることができる。溝掘削機器50は、このようにして、ほぼ垂直な指向性を維持できる。
【0075】
図1〜3のそれぞれにおいて、枢動ポイントPが装置100のほぼ中心線14上に存在することが分かる。この構成によれば、懸架アセンブリ20が地盤表面の変化を補償するため、懸架アセンブリ20の姿勢又は瞬間的な形勢に無関係に主本体部分10はほぼ水平状態を維持する(及びひいては溝掘削機器50はほぼ垂直状態を維持する)ことができる。枢動ポイントPは、中心線14に正確に一致することからは逸脱することができ、とくに、接地ユニット16が最上限又は最下限(
図3参照)の位置にあるとき、懸架アセンブリの移動限界に向かって逸脱することができる点に留意されたい。
【0076】
各接地ユニット16は、それぞれに対応する接地ユニットの下側の地盤(海底)12に接触する接地面又は接地部分16gを有することができる。本発明の幾つかの好適な実施形態において、懸架アセンブリ20は接地部分16gの側方傾斜角度を変化させて、下側の地盤(海底)12の側方傾斜角度に適合又は整合させるよう構成する。このようにして、接地部分の地盤12に対する接触面積を最大化することができる。特別な実施形態において、接地部分16gの側方傾斜角度は、接地ユニットの側方傾斜角度を全体的に変化させることによって変化させる。
図1〜3に示す例示的形態において、それぞれの場合で、接地部分16gの側方傾斜角度は、地盤(海底)12の角度に対応する。とくに、
図1において接地部分16gの水平に対する側方傾斜角度は0(地盤12′は水平であるため)であり、
図2において接地部分16gの水平に対する側方傾斜角度はαであり、
図3において接地部分16gの水平に対する側方傾斜角度はβである。
図4においては、接地面16gh及び16giそれぞれの側方傾斜角度は同一でなく、地盤部分12h及び12iの異なる傾斜をそれぞれ補償できるようにする。とくに、接地部分16ghの水平に対する側方傾斜角度は0であり、接地部分16giの水平に対する側方傾斜角度はθである。
【0077】
幾つかの好適な実施形態において、懸架アセンブリ20は、各接地ユニットの接地部分16gが溝掘削機器50(幾つかの好適な実施形態において、装置100の縦方向中心線14でもある)の地盤(海底)に対するほぼ交点の周りに枢動するよう構成する。このような交点は、
図1〜3、並びに
図5a及び5bにおいてMでマーク付けする。このような構成によれば、接地ユニット16の不整地形上の移動の結果としての溝掘削機器50の移動(とくに、側方変位及び/又は側方角度運動)が最小化又は排除される。
【0078】
図5a及び5bは、代表的な懸架アセンブリ20及び関連の接地ユニット16″の対応可能な移動範囲を示す。この同一接地ユニット16″を位置範囲に示す。位置16″(1)は、代表的には装置100が平坦で水平な地盤上に休止する中央値位置を表す。
図5aにおいて、位置16″(2)は、懸架アセンブリ20によって生ずる接地ユニット16の移動の代表的な上限を表し、
図5bにおいて、位置16″(3)は、懸架アセンブリ20によって生ずる接地ユニット16の移動の代表的な下限を表す。各ケースにおいて、接地表面16gは、溝掘削機器50が地盤12の表面と交差するポイントM付近の周りに枢動する。
【0079】
幾つかの好適な実施形態において、懸架アセンブリは、溝掘削機器50(好適な実施形態においては装置100の縦方向中心線14でもある)の地盤(海底)に対する交点Mと装置100の主本体部分10との間における距離(とくに、垂直方向距離)が、接地ユニット16の不整地形上における移動の結果として大幅に変化しないよう構成する。このような距離を
図1〜3で「l」によって示す。このような構成によれば、接地ユニット16の不整地形上における移動の結果としての溝掘削機器50の垂直方向変位が最小化又は排除される。このような垂直方向変位は溝掘削機器50による掘削の溝深さに影響を及ぼすおそれがある。
【0080】
好適な一実施形態において、各独立懸架アセンブリ20は、主本体部分に対して固定関係となるよう取り付けた又は他の方法で配置した第1懸架アーム22を有する。各独立懸架アセンブリは、さらに、接地ユニット又は接地ユニットの取付け素子、アセンブリ若しくは部分に対して固定関係となるよう取り付けた又は他の方法で配置した第2懸架アーム24を有する。幾つかの実施形態において、接地ユニット16は、取付け素子、アセンブリ若しくは部分に対して操舵用の公称的垂直軸線周りに及び/又は
図1における軸線「A」のような公称的水平横方向軸線周りに移動して、地盤(海底)の傾斜変化を補償することができるようにする。第1及び第2の懸架アームは、それぞれに対応して第1枢動ポイント22a、b及び第2枢動ポイント24a、bを設けることができる。第1懸架枢動アーム26の第1端部を第1懸架アーム22の第1枢動ポイント22aに枢動可能に取り付け、また第2端部を第2懸架アーム24の第1枢動ポイント24aに枢動可能に取り付けることができる。第2懸架枢動アーム28の第1端部を第1懸架アーム22の第2枢動ポイント22bに枢動可能に取り付け、また第2端部を第2懸架アーム24の第2枢動ポイント24bに枢動可能に取り付けることができる。各独立懸架アセンブリ20の対応する第1及び第2の枢動ポイント22a、24a、22b、24bは、凸四辺形のコーナーを画定し、またしたがって、当業者によって4バーリンク機構として都合よく言及される構造を形成することができる。
【0081】
各独立懸架アセンブリ20に対して、アクチュエータ30(
図4には示さない)を設けることができる。各アクチュエータ30は、主本体部分10と懸架アセンブリの可動部分(主本体部分10に対する)との間に延在させ得る。幾つかの好適な実施形態において、アクチュエータ30は上側端部30uを主本体部分10に枢動可能に連結し、また下側端部30mを懸架アセンブリ20の可動部分に枢動可能に連結することができる。幾つかの好適な実施形態において、アクチュエータ30を連結することができる懸架アセンブリ20の可動部分は第2(下側)懸架枢動アーム28とすることができる。アクチュエータ30は、異なる実施形態において、能動型又は受動型とすることができる。能動型構成においては、アクチュエータ30はダンパとして作用することができ、またアクチュエータは下側の地盤の傾斜変化に応答して伸展又は後退することができる。
【0082】
幾つかの好適な実施形態において、アクチュエータ30における少なくとも幾つかを能動型とする。これら構成において、アクチュエータ30は、例えば、液圧ピストン及びシリンダとすることができる。アクチュエータ30の伸展及び後退は制御装置(とくに、電子制御装置)によって装置100の測定パラメータ又は装置100に関連するパラメータに応答して制御することができる。幾つかの好適な実施形態において、装置100には、例えば、傾斜計、ジャイロデバイス、高度計、地形探査ソナー等々の、装置100の位置的条件(例えば、主本体部分10の傾き)及び/又は装置100が通過している若しくは通過することになる地盤の局所的特徴の存在及び特性(例えば、傾斜角度、部の存在、大きな石のサイズ等)を決定することができる1個又は複数個の測定デバイスを設けることができる。制御装置が受け取るこのような測定デバイスの出力に応答して、アクチュエータ30は制御装置によって能動的に調整されて、溝掘削機器50を所望垂直指向性に維持することができる。溝掘り装置が1対より多い接地ユニット16を有する場合、幾つかの実施形態は、このような対及び関連の懸架構成20それぞれにアクチュエータ30の能動的制御を与えることができる。
【0083】
幾つかの構成において、アクチュエータ30(又は受動的アクチュエータに追加した付加的能動制御アクチュエータ)のような能動的手段は、そうでない場合には懸架構成20がとる平衡位置から装置100をオフセットするよう作用することができる。
【0084】
本発明装置100における独立懸架構成20の他の利点は、任意な所定時間における装置100の「最低地上高(ride height)」、すなわち、主本体部分10の任意な所定時間における地盤からの間隔hを変化又は変更させる独立懸架能力にある。このようにして、懸架アセンブリ20は、アクチュエータ30の運動によって地形変化に関連するほぼ一定の及び/又は最適な最低地上高を維持する、又は岩若しくは巨石のような特別な障害物上を移動するとき地上クリアランスを最大化するよう調整することができる。
【0085】
本明細書の記載及び特許請求の範囲にわたり用語「備える(comprise)」、「含む(contain)」及びそれらの変化形は、「限定しないが〜を有する(including but not limited to)」を意味し、またその他の部分、追加物、コンポーネント、整数又はステップを排除することを意図しない(また排除しない)。本明細書の記載及び特許請求の範囲にわたり、単数形は複数形を包含する。とくに、不定冠詞を使用する場合、本明細書は、文脈が他に必要としない限り複数並びに単数を想定すると理解すべきである。
【0086】
本発明の特別な態様、実施形態又は実施例に関連して説明した特徴、整数、特性、化合物、化学的成分若しくは化学基は、不適合でない限り、本明細書に記載した任意な他の態様、実施形態又は実施例にも適用可能であると理解すべきである。本明細書(特許請求の範囲における任意な請求項、要約及び図面を含む)に記載したすべての特徴、及び/又は本明細書に記載の任意な方法若しくはプロセスにおけるすべてのステップは、このような特徴及び/又はステップのうち少なくとも幾つかが互いに相容れない組合せを除いて任意な組合せとして組み合わせることができる。本発明は、上述した任意の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(特許請求の範囲における任意な請求項、要約及び図面を含む)に記載の特徴のうち任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せ、又は本明細書に記載した任意な方法若しくはプロセスにおけるステップの任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せに拡張する。
【0087】
本出願に関連する本明細書と同時又は以前に出願され、本明細書とともに一般閲覧用に公開されるすべての論文及び文献に読者の注意が向けられ、このようなすべての論文及び文献の内容は、参照によって本明細書に組み入れられるものとする。
【符号の説明】
【0088】
10 主本体部分
12 海底
14 縦方向中心線
16 接地ユニット
16′ 接地ユニット
16″ 接地ユニット
18 公称水平ライン
20 懸架アセンブリ
22 第1懸架アーム
22a (第1懸架アームの)第1枢動ポイント
22b (第1懸架アームの)第2枢動ポイント
24 第2懸架アーム
24a (第2懸架アームの)第1枢動ポイント
24b (第2懸架アームの)第2枢動ポイント
26 第1懸架枢動アーム
28 第2懸架枢動アーム
30 アクチュエータ
50 溝掘削機器
100 溝掘り装置