【文献】
Spees, J. et al.,Internalized Antigens Must Be Removed to Prepare Hypoimmunogenic Mesenchymal Stem Cells for Cell and Gene Therapy,Molecular Therapy,2004年,Vol. 9, No. 5,p. 747-756
【文献】
Gregory, C. et al.,Enhanced Engraftment of Mesenchymal Stem Cells in a Cutaneous Wound Model by Culture in Allogenic Species-Specific Serum and Administration in Fibrin Constructs,Stem Cells,2006年,Vol. 24,p. 2232-2243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の培地及び/又は第二の培地が、DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(MEM)、ハムF10培地(F10)、ハムF-12培地(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、ライボビッツL-15培地、MCDB、DMEM/F12、RPMI1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせ、からなる群から選択される基礎培地を含む、請求項1又は2に記載の方法。
ステップ(i)における第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクションが熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記細胞が、ウシ胎児血清を含む培地で培養した細胞と比較して、CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201からなる群から選択される1つ以上の細胞表面マーカーを発現している、請求項9に記載の細胞療法に使用するための組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、細胞療法のための細胞を製造する方法が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明者らは、現在の製造方法が抱える問題を改善又は解決するような方法で細胞を製造でき、それにより、高められた臨床転帰がもたらされることを発見した。
【0006】
従って、第一の側面において、本発明は、療法に使用するための細胞を培養する方法であって、以下のステップ:
(i)細胞サンプルを、第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクション(serum fraction)を含む第一の細胞培養培地中、細胞が所望の増大(expansion)レベルを達成できるのに十分な時間、培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する前に、前記第一の細胞培養培地を、第二の血清、第二の血清代替物及び/又は第二の血清フラクションを含む第二の細胞培養培地と交換し、細胞を更なる期間培養すること
を含む、方法を提供する。
【0007】
第二の側面において、本発明は、細胞療法に使用するためのヒト間葉系間質細胞を培養する方法であって、以下のステップ:
(i)間葉系間質細胞を、熱非働化ウシ胎児血清(heat inactivated fetal calf serum:HIFCS)を加えたDMEMを含む第一の細胞培養培地中、前記細胞が約70〜85%コンフルエンスに達するまで培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する約24時間前に、前記第一の細胞培養培地を除去し、フェノールレッド不含DMEM(DMEM phenol red-free)及び約2%ヒト血清アルブミンを含む第二の細胞培養培地と交換し、次いで、細胞をさらに約24時間培養すること
を含む、方法を提供する。
【0008】
第三の側面において、本発明は、細胞療法に使用するためのヒト間葉系間質細胞を培養する方法であって、以下のステップ:
(i)培養容器1 cm
2あたり1.0×10
3細胞〜培養容器1 cm
2あたり1.0×10
10細胞の間の間葉系間質細胞を、熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)を加えたDMEMを含む第一の細胞培養培地中、前記細胞が約70〜85%コンフルエンスに達するまで培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する約24時間前に、前記第一の細胞培養培地を除去し、フェノールレッド不含DMEM及び約2%ヒト血清アルブミンを含む第二の細胞培養培地と交換し、次いで、細胞を前記約24時間培養すること
を含む、方法を提供する。
【0009】
第四の側面において、本発明は、患者における同種異系細胞療法のための細胞を調製するための方法であって、以下のステップ:
(i)健常ドナー由来の細胞サンプルを提供すること;
(ii)前記細胞サンプルを、第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクションを含む第一の細胞培養培地中、細胞が所望の増大レベルを達成できるのに十分な時間、培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する前に、前記第一の細胞培養培地を、第二の血清、第二の血清代替物及び/又は第二の血清フラクションを含む第二の細胞培養培地と交換し、細胞を更なる期間培養すること;並びに
(iv)前記細胞を採取すること
を含む、方法を提供する。
【0010】
当該方法のステップ(i)は、細胞を保持する培養容器が、採取されるべきコンフルエンスレベルに達するまで、細胞サンプルが、代謝し、細胞数について増大(expand)又は増殖(proliferate)することを必要とすることが当業者により理解されるだろう。従って、培地を含む培養条件は、培養細胞の最適な増大を可能にするのに十分でなければならない。
【0011】
いくつかの実施態様において、第一の細胞培養培地における好ましい血清は、ウシ胎児血清(FCS)又は熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)である。しかしながら、栄養素、ホルモン及びタンパク質の他のソースが、FCSの代わりに使用され得、これには、FCSの主要成分である血清アルブミンが含まれる、ことが理解されるだろう。また、他の血清代替物、例えば、血小板溶解物及び市販の製品、例えば、Ultroser
TM G血清代替物(Pall Corporation, NY, USA);イスコフMDM(Iscove’s MDM)中にヒト血清アルブミン、インスリン及びトランスフェリンを含有するHIT
TM血清代替物(Stemcell Technologies, BC, Canada);6%の全タンパク質(およそ84%のヒト血清アルブミン、16%のアルファ及びベータグロブリン、並びに<1%のガンマグロブリンを含有)からなるSerum Substitute Supplement
TM(SSS
TM)(Irvine Scientific, CA, USA)、並びにQuinns Advantage(登録商標)血清タンパク質代替物(CooperSurgical Inc, CT, USA)。これらの血清代替物はすべて、細胞サンプルが培養容器に付着し、細胞数を増大することを可能とする、正しい浸透ポテンシャル、増殖因子、及び栄養素/タンパク質を提供する。
【0012】
いくつかの実施態様において、第一の細胞培養培地は、血清アルブミンなどの血清フラクションを含む。
【0013】
第二の培地は、培養されている細胞と同じ種起源(species origin)を有する第二の血清又は第二の血清フラクションを含む。例えば、ヒト細胞が培養されている場合、第二の培地は、ヒト血清、ヒト血清代替物、又はヒト血清アルブミンを含むだろう。ウマ(equine)細胞が培養されている場合、第二の培地は、ウマ血清、ウマ血清代替物、又はウマ血清アルブミンを含むだろう。同様に、イヌ(canine)細胞が培養される場合、第二の培地はイヌ血清などを含むだろう。
【0014】
当業者ならば、細胞サンプルが、同種異系(allogeneic)及び自己由来(autologous)の肝細胞、同種異系及び自己由来の造血細胞、同種異系及び自己由来の線維芽細胞、同種異系及び自己由来の脂肪細胞、同種異系及び自己由来の間葉系細胞、同種異系及び自己由来の心臓細胞、同種異系及び自己由来の内皮細胞、同種異系及び自己由来の上皮細胞、同種異系及び自己由来の神経細胞(neuronal cells)、同種異系及び自己由来のグリア細胞、同種異系及び自己由来の内分泌細胞、又はそれらの前駆細胞(progenitor cells)を含む、細胞療法に使用され得る任意の細胞を含み得ることを理解するだろう。
【0015】
好ましくは、本発明の細胞は、間葉系前駆細胞、特に、間葉系間質細胞(MSC)である。
【0016】
本発明の方法及び組成物は、任意の哺乳動物における細胞療法のために使用されてよいことが理解されるべきである。従って、細胞サンプルは、ヒト、ラクダ科動物(cameline)、ウマ科動物(equine)、イヌ科動物(canine)及びネコ科動物(feline)、又は任意の他の商業的若しくは経済的価値のある哺乳動物から単離されてよい。
【0017】
当業者ならば、第一の培地は、上記で論じるように、第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクションを含む一方で、基礎培地(base medium)も含むであろうことを理解するだろう。当分野で既知の基礎培地は数多く存在するが、好ましい基礎培地は、以下からなる群から選択され得る:DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(Eagle's basal medium)(MEM)、ハムF10培地(Ham's F10 medium)(F10)、ハムF-12培地(Ham's F-12 medium)(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove's modified Dulbecco's medium)、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(Mesenchymal Stem Cell Growth Medium)(MSCGM)、ライボビッツL-15培地(Liebovitz's L-15 medium)、MCDB、DMEM/F12、RPMI 1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせ。好ましくは、第一の基礎培地はDMEMである。
【0018】
好ましくは、第一の基礎培地には、熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)が加えられる。
【0019】
細胞又は組織の培養方法は、当分野で周知の標準的な方法である。これらには、温度範囲(例えば、約37℃)、CO
2濃度(例えば、10%CO
2)などが含まれる。また、細胞サンプル中の細胞の量も、おおよそ、標準的な細胞培養手順で使用される量である。例えば、いくつかの実施態様において、細胞サンプル中の細胞数は、培養容器1 cm
2あたり1.0×10
3細胞〜培養容器1 cm
2あたり1.0×10
10細胞の間となるだろう。この細胞数は、組織培養フラスコ80 cm
2あたりおよそ12×10
6個、又は組織培養フラスコ175 cm
2あたり28×10
6個に相当するだろう。
【0020】
いくつかの実施態様において、好ましい方法のステップ(i)における細胞サンプルは、細胞がおよそ85%コンフルエントとなるまで培養される。当業者ならば、これは、培地を新鮮に保つために、第一の基礎培地を定期的に交換することを含み得ることを理解するだろう。この段階で、細胞は、さらに処理されるか(例えば、本発明の方法のステップ(ii))、又は継代されるかのいずれかである。
【0021】
細胞療法で使用するために細胞を採取しようとする場合には、第一の培養培地を除去し、第二の培養培地と交換する。ステップ(ii)は、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも12時間前に実施される。好ましくは、ステップ(ii)は、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも18時間前に実施される。さらにより好ましくは、ステップ(ii)は、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも24時間前に実施される。
【0022】
また、細胞は、細胞が老化(senescent)し始めるであろうことから、第二の培養培地と約48時間より長い間接触させたままとさせることができないことも理解されるだろう。従って、いくつかの実施態様において、ステップ(ii)は、細胞を細胞療法に使用するために採取する約24時間前〜約36時間前の間に実施される。
【0023】
いくつかの側面において、ステップ(ii)における細胞は、第二の培養培地の存在下、12、13、14、15、16、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47及び48時間、培養されるだろう。
【0024】
ステップ(ii)における第二の培地は、典型的には、以下からなる群から選択される基礎培地を含む:DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(Eagle's basal medium)(MEM)、ハムF10培地(Ham's F10 medium)(F10)、ハムF-12培地(Ham's F-12 medium)(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove's modified Dulbecco's medium)、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(Mesenchymal Stem Cell Growth Medium)(MSCGM)、ライボビッツL-15培地(Liebovitz's L-15 medium)、MCDB、DMEM/F12、RPMI 1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせ。好ましくは、第二の基礎培地は、フェノールレッド不含DMEMである。
【0025】
いくつかの実施態様において、第二の基礎培地にはヒト血清又はヒト血清アルブミンが加えられる。第二の培地で使用されるヒト血清又はヒト血清アルブミンの量は制限されないものの、すなわち、任意の量の血清が使用されてよいものの、いくつかの実施態様において、ヒト血清又はヒト血清アルブミンの量は約2%である。
【0026】
当業者ならば、本発明の方法が、同種異系又は自己由来のセッティングで、細胞に対して使用され得ることを理解するだろう。同種異系のセッティングでは、ドナーとレシピエントは、適合しても適合しなくてもよい。
【0027】
第五の側面において、本発明は、第一から第四の側面のいずれか一つに従う方法により製造される細胞を含む、細胞療法に使用するための組成物を提供する。
【0028】
いくつかの実施態様において、細胞は、>90% CD73、>90% CD90、>90% CD105発現、及び<5% CD34、<5% CD45、<5% CD14発現を含む表現型を有する。更なる実施態様において、細胞は、CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201発現を含む表現型を有する。CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201の発現は、本明細書に記載するような本発明の方法以外の方法で培養されているヒト間葉系間質細胞と比較して増加する。
【0029】
当業者ならば、細胞が、様々なデリバリーデバイス中で提供され得ることを理解するだろう。例えば、いくつかの実施態様では、細胞はシリンジ中に懸濁される一方、他の実施態様では、細胞は折り畳み可能(collapsible)な容器中に懸濁される。好ましくは、細胞は、患者への治療的投与に適した培地(media)中に懸濁される。
【0030】
第六の側面において、本発明は、細胞療法の方法であって、
(i)健常ドナー由来の細胞サンプルを提供すること;
(ii)前記細胞サンプルを、第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクションを含む第一の細胞培養培地中、細胞が所望の増大レベルを達成できるのに十分な時間、培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する前に、前記第一の細胞培養培地を、第二の血清、第二の血清代替物及び/又は第二の血清フラクションを含む第二の細胞培養培地と交換し、細胞を更なる期間培養すること;
(iv)前記細胞を採取すること;並びに
(v)前記細胞を、それを必要とする患者にインプラント又は投与すること
を含む、方法を提供する。
【0031】
当業者ならば、本発明の増大(expanded)細胞が製造されれば、その後使用するためにそれらを保存し得ることを理解するだろう。さらに、増大細胞は、細胞サンプル及び関連試薬(例えば、培養培地など)と、培養及び使用のための説明書とを含むキットの形態で提供され得る。
【0032】
従って、第七の側面において、本開示は、第一の側面の方法により製造される増大細胞集団を含むキットを提供する。
【0033】
いくつかの実施態様において、本発明の細胞は、単層又は三次元培養にてインキュベートされてよい。三次元培養物を得るために、当業者ならば、適切なスキャフォールドが使用され得ることを理解するだろう。適切なスキャフォールドには、Vitrogen
TM(細胞集合化(cell-populated)マトリックスを形成するようゲル化するコラーゲン含有溶液)、並びにHwang(米国特許出願第20040267362号)、Kladaki et al(米国特許出願第20050177249号)及びBinette et al(米国特許出願第20040078077号)の結合組織スキャフォールドが含まれる。
【0034】
本発明の細胞はまた、広範な医療デバイス接触面(contacting surfaces)のいずれかに適用されてもよい。接触面には、動物(具体的にはヒトを含む)の血液、細胞、又は他の体液若しくは組織と接触させることが意図される表面が含まれるが、これに限定されない。適した接触面には、血液又は他の組織と接触させることが意図される1つ以上の医療デバイス表面が含まれる。医療デバイスには、動脈瘤コイル、人工血管、人工心臓、人工弁、人工腎臓、人工腱及び靭帯、血液バッグ、血液酸素付加装置、骨及び心臓血管の置換材(replacements)、骨プロテーゼ、ボーンワックス、心臓血管グラフト、軟骨置換デバイス、カテーテル、マイクロビーズ、神経成長ガイド(nerve-growth guides)、眼科用インプラント(ophthalmic implants)、整形外科用インプラント、人工装具(prosthetics)、シャント、ステント、創傷被覆材(wound coverings)、創傷治癒デバイス(wound healing devices)、並びに当分野で既知の他の医療デバイスが含まれる。
【0035】
接触面には、メッシュ、コイル、ワイヤ、インフレータブルバルーン、又は血管内の位置、管腔内の位置、固形組織内の位置などを含む標的位置にインプラントされることが可能な任意の他の構造が含まれてよい。インプラント可能なデバイスは、永久的又は一時的なインプラントが意図され得る。そのようなデバイスは、血管内カテーテル及び他の医療用カテーテルによりデリバリーされるか又はそれらに組み込まれてよい。
【0036】
従って、第八の側面において、本発明は、第一の側面の方法により製造される増大細胞集団を含む医療デバイスを提供する。
【0037】
第九の側面において、本発明は、細胞療法に有用な医薬の製造におけるヒト間葉系間質細胞の使用であって、ここで、前記ヒト間葉系間質細胞が、
(i)前記間葉系間質細胞を、熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)を加えたDMEMを含む第一の細胞培養培地中、前記細胞が約70〜85%コンフルエンスに達するまで培養すること;
(ii)療法に使用するための細胞を採取する約24時間前に、前記第一の細胞培養培地を除去し、フェノールレッド不含DMEM及び約2%ヒト血清アルブミンを含む第二の細胞培養培地と交換し、次いで、細胞をさらに約24時間培養すること;
(iii)患者への治療的投与に適した、医薬上許容される培地(medium)、希釈剤又は担体中に前記間葉系間質細胞を採取すること
により製造される、使用を提供する。
【0038】
第十の側面において、本発明は、ヒト療法に使用するためのヒト間葉系間質細胞をin vitro培養するための細胞培養培地であって、ヒト血清又はヒト血清アルブミンの存在下で培養されていないヒト間葉系間質細胞と比較して、ヒト間葉系間質細胞表面上における1つ以上の接着マーカーの発現を増加させるのに十分な量でヒト血清又はヒト血清アルブミンを含む、細胞培養培地を提供する。
【0039】
いくつかの実施態様において、発現を増加している細胞表面マーカーは、CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201からなる群から選択される。
【0040】
第十一の側面において、本発明は、in vitro培養されたヒト間葉系間質細胞であって、その細胞表面上に、CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201からなる群から選択される1つ以上のマーカーを発現しており、ここで、前記マーカーが、天然に存在する間葉系間質細胞よりも優先的に発現される、ヒト間葉系間質細胞を提供する。
本発明の特定の側面では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
療法に使用するための細胞を培養する方法であって、以下のステップ:
(i)細胞サンプルを、第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクシ
ョンを含む第一の細胞培養培地中、細胞が所望の増大レベルを達成できるのに十分な時間、培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する前に、前記第一の細胞培養培地を、第二の血清、第二の血清代替物及び/又は第二の血清フラクションを含む第二の細胞培養培地と交換し、細胞を更なる期間培養すること
を含む、方法。
(項目2)
第一の培地が、培養細胞の最適な増大を可能にする、第一の血清、第一の血清代替物又は第一の血清フラクションを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
第一の血清が、ウシ胎児血清(FCS)又は熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)である、項目2に記載の方法。
(項目4)
第一の血清代替物が血小板溶解物である、項目2に記載の方法。
(項目5)
第一の血清フラクションが血清アルブミンである、項目2に記載の方法。
(項目6)
第二の培地が、培養されている細胞と同じ種起源を有する第二の血清若しくは第二の血清フラクション、又は同じ種起源を再現する第二の血清代替物を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
細胞サンプルが、肝細胞、造血細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、間葉系間質細胞、心臓細胞、内皮細胞、上皮細胞、神経細胞、グリア細胞、内分泌細胞、又はそれらの前駆細胞からなる群から選択される細胞を含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
細胞が間葉系間質細胞(MSC)である、項目7に記載の方法。
(項目9)
間葉系間質細胞が、間葉系前駆細胞(MPC)である、項目7に記載の方法。
(項目10)
細胞サンプルが、ヒト、ラクダ科動物、ウマ科動物、イヌ科動物及びネコ科動物から単離される、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
ステップ(i)における第一の培地が、DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(MEM)、ハムF10培地(F10)、ハムF-12培地(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、ライボビッツL-15培地、MCDB、DMEM/F12、RPMI1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせ、からなる群から選択される基礎培地を含む、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
基礎培地がDMEMである、項目11に記載の方法。
(項目13)
基礎培地に熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)が加えられる、項目11又は12に記載の方法。
(項目14)
ステップ(i)における細胞サンプルが、培養容器1 cm2あたり1.0×103細胞〜培養容器1 cm2あたり1.0×1010細胞の間の細胞を含む、項目1〜13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
ステップ(i)における細胞サンプルが、培養容器1 cm2あたり1.0×103細胞〜培養容器1 cm2あたり1.0×107細胞の間の細胞を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
ステップ(i)における細胞サンプルが、およそ70〜85%コンフルエントである所望の細胞増大レベルに達するまで培養される、項目1〜15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
ステップ(ii)が、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも12時間前に実施される、項目1〜15のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
ステップ(ii)が、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも18時間前に実施される、項目17に記載の方法。
(項目19)
ステップ(ii)が、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも24時間前に実施される、項目17に記載の方法。
(項目20)
ステップ(ii)が、細胞を細胞療法に使用するために採取する約24時間前〜約36時間前の間に実施される、項目17に記載の方法。
(項目21)
ステップ(ii)における第二の培地が、DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(MEM)、ハムF10培地(F10)、ハムF-12培地(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、ライボビッツL-15培地、MCDB、DMEM/F12、RPMI1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせ、からなる群から選択される基礎培地を含む、項目1〜20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
基礎培地が、フェノールレッド不含DMEMである、項目21に記載の方法。
(項目23)
基礎培地にヒト血清又はヒト血清アルブミンが加えられる、項目22に記載の方法。
(項目24)
ヒト血清又はヒト血清アルブミンが約2%である、項目23に記載の方法。
(項目25)
細胞療法に使用するためのヒト間葉系間質細胞を培養する方法であって、以下のステップ:
(i)間葉系間質細胞を、熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)を加えたDMEMを含む第一の細胞培養培地中、前記細胞が約70〜85%コンフルエンスに達するまで培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する約24時間前に、前記第一の細胞培養培地を除去し、フェノールレッド不含DMEM及び約2%ヒト血清アルブミンを含む第二の細胞培養培地と交換し、次いで、細胞をさらに約24時間培養すること
を含む、方法。
(項目26)
細胞療法に使用するためのヒト間葉系間質細胞を培養する方法であって、以下のステップ:
(i)培養容器1 cm2あたり1.0×103細胞〜培養容器1 cm2あたり1.0×1010細胞の間の間葉系間質細胞を、熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)を加えたDMEMを含む第一の細胞培養培地中、前記細胞が約70〜85%コンフルエンスに達するまで培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する約24時間前に、前記第一の細胞培養培地を除去し、フェノールレッド不含DMEM及び約2%ヒト血清アルブミンを含む第二の細胞培養培地と交換し、次いで、細胞を前記約24時間培養すること
を含む、方法。
(項目27)
患者における同種異系細胞療法のための細胞を調製するための方法であって、以下のステップ:
(i)健常ドナー由来の細胞サンプルを提供すること;
(ii)前記細胞サンプルを、第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクションを含む第一の細胞培養培地中、細胞が所望の増大レベルを達成できるのに十分な時間、培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する前に、前記第一の細胞培養培地を、第二の血清、第二の血清代替物及び/又は第二の血清フラクションを含む第二の細胞培養培地と交換し、細胞を更なる期間培養すること;並びに
(iv)前記細胞を採取すること
を含む、方法。
(項目28)
健常ドナーが、患者に対して50%以下の組織適合性を有する、項目27に記載の方法。
(項目29)
第一の培地が、培養細胞の最適な増大を可能にする、第一の血清、第一の血清代替物又は第一の血清フラクションを含む、項目27又は28に記載の方法。
(項目30)
第一の血清が、ウシ胎児血清(FCS)又は熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)である、項目29に記載の方法。
(項目31)
細胞サンプルが、肝細胞、造血細胞、線維芽細胞、間葉系間質細胞、心臓細胞、内皮細胞、上皮細胞、神経細胞、グリア細胞、内分泌細胞、又はそれらの前駆細胞からなる群から選択される細胞を含む、項目27〜30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
細胞サンプルが、ヒト、ラクダ科動物、ウマ科動物、イヌ科動物及びネコ科動物から単離される、項目27〜31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
ステップ(ii)における第一の培地が、DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(MEM)、ハムF10培地(F10)、ハムF-12培地(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、ライボビッツL-15培地、MCDB、DMEM/F12、RPMI1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせ、からなる群から選択される基礎培地を含む、項目27〜32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
基礎培地がDMEMである、項目33に記載の方法。
(項目35)
ステップ(iii)が、細胞を細胞療法に使用するために採取する約24時間前〜約36時間前の間に実施される、項目27〜34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
ステップ(iii)における第二の培地が、フェノールレッド不含DMEM基礎培地を含み、ヒト血清又はヒト血清アルブミンが加えられる、項目27〜35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
ヒト血清又はヒト血清アルブミンが約2%である、項目36に記載の方法。
(項目38)
項目1〜25のいずれか一項に記載の方法により製造される細胞を含む、細胞療法に使用するための組成物。
(項目39)
前記細胞が、>90% CD73、>90% CD90、>90% CD105発現、及び<5% CD34、<5% CD45、<5% CD14発現を含む表現型を有する、項目38に記載の組成物。
(項目40)
前記細胞が、CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201からなる群から選択される1つ以上の細胞表面マーカーを発現する、項目38又は39に記載の組成物。
(項目41)
細胞がシリンジ中に懸濁される、項目38〜40のいずれか一項に記載の組成物。
(項目42)
細胞が、折り畳み可能な容器中に懸濁される、項目38〜40のいずれか一項に記載の組成物。
(項目43)
細胞が健常ドナーに由来し、前記細胞が、患者への治療的投与に適した培地中に懸濁される、項目38〜42のいずれか一項に記載の組成物。
(項目44)
(i)シリンジ又は折り畳み可能な容器内に含まれる、項目38〜40のいずれか一項に記載の組成物;及び
(ii)使用のための説明書
を含む、キット。
(項目45)
細胞療法の方法であって、
(i)健常ドナー由来の細胞サンプルを提供すること;
(ii)前記細胞サンプルを、第一の血清、第一の血清代替物及び/又は第一の血清フラクションを含む第一の細胞培養培地中、細胞が所望の増大レベルを達成できるのに十分な時間、培養すること;並びに
(ii)療法に使用するための細胞を採取する前に、前記第一の細胞培養培地を、第二の血清、第二の血清代替物及び/又は第二の血清フラクションを含む第二の細胞培養培地と交換し、細胞を更なる期間培養すること;
(iv)前記細胞を採取すること;並びに
(v)前記細胞を、それを必要とする患者にインプラント又は投与すること
を含む、方法。
(項目46)
細胞療法に有用な医薬の製造におけるヒト間葉系間質細胞の使用であって、ここで、前記ヒト間葉系間質細胞が、
(i)前記間葉系間質細胞を、熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)を加えたDMEMを含む第一の細胞培養培地中、前記細胞が約70〜85%コンフルエンスに達するまで培養すること;
(ii)療法に使用するための細胞を採取する約24時間前に、前記第一の細胞培養培地を除去し、フェノールレッド不含DMEM及び約2%ヒト血清アルブミンを含む第二の細胞培養培地と交換し、次いで、細胞をさらに約24時間培養すること;
(iii)患者への治療的投与に適した、医薬上許容される培地、希釈剤又は担体中に前記間葉系間質細胞を採取すること
により製造される、使用。
(項目47)
ヒト療法に使用するためのヒト間葉系間質細胞をin vitro培養するための細胞培養培地であって、間質細胞表面上において、CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201からなる群から選択される1つ以上の細胞表面マーカーを発現させるのに十分な量でヒト血清又はヒト血清アルブミンを含む、細胞培養培地。
(項目48)
細胞培養培地がDMEM培地を含む、項目47に記載の細胞培養培地。
(項目49)
細胞培養培地が、約2%のヒト血清又はヒト血清アルブミンを含む、項目47又は48に記載の細胞培養培地。
(項目50)
前記間葉系間質細胞と接触する項目47〜49のいずれか一項に記載の細胞培養培地を含む、組成物。
(項目51)
項目38に記載の組成物を含む、インプラント可能な医療デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の好ましい実施態様の説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特に例示された製造方法には限定されず、当然ながら異なる可能性があることが理解される必要がある。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施態様を説明することのみを目的としており、限定する意図はなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解される必要がある。
【0043】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、上記であるか下記であるかを問わず、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかし、本明細書で言及される刊行物は、本発明に関連して用いられる可能性のある、刊行物中に報告されるプロトコル及び試薬を記述及び開示することを目的として引用される。本明細書中のいかなる記述も、先行発明によって本発明がそのような開示に先行する権利がないと認めるものと解釈されるべきではない。
【0044】
さらに、本発明の実施には、特記のない限り、当分野の技能の範囲内にある従来の免疫学的技術、細胞生物学及び組織培養技術、並びに医学的技術が使用される。そのような技術は当業者に周知であり、文献中に十分に説明されている。例えば、Coligan, Dunn, Ploegh, Speicher and Wingfield “Current Protocols in Protein Science”(1999)Volume I and II(John Wiley & Sons Inc.);及びBailey, J.E. and Ollis, D.F., Biochemical Engineering Fundamentals, McGraw-Hill Book Company, NY, 1986;Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV(D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986);Cell Therapy:Stem Cell Transplantation, Gene Therapy, and Cellular Immunotherapy, by G. Morstyn & W. Sheridan eds, Cambridge University Press, 1996;及びHematopoietic Stem Cell Therapy,E. D. Ball, J. Lister & P. Law, Churchill Livingstone, 2000を参照のこと。
【0045】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかに別のものを指示している場合を除き、複数形への言及も含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「1つの細胞」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「1つの動物」への言及は、1つ以上の動物への言及であり、その他も同様である。他に規定されない限り、本明細書で用いられるすべての技術的及び科学的な用語は、本発明の属する分野の通常の技術者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本発明を実施又は試験するために、本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の材料及び方法を用いることができるが、好ましい材料及び方法をこれから記載する。
【0046】
広範な側面のうちの一つにおいて、本発明は、療法に使用するための細胞を培養する方法に関する。
【0047】
用語「培養すること」、「培養」、及び「培養され」は、本明細書において互換的に使用され、通常、細胞をin vitroで増殖させるために使用される標準的な細胞及び組織培養技術に言及する。標準的な技術には、細胞を得るための単離技術、特異的な細胞タイプのクローニング及び選択、不要な細胞の選択的破壊(ネガティブセレクション)、混合集団中の差次的な細胞凝集能(differential cell agglutinability)に基づく分離、凍結-融解手順、混合集団中の細胞の差次的な接着特性(differential adherence properties)、濾過、従来型及びゾーン遠心分離、遠心エルトリエーション(対向流(counter-streaming)遠心分離)、単位重力分離、向流分配、電気泳動及び蛍光活性化セルソーティング(fluorescence-activated cell sorting)が含まれるが、これらに限定されない。クローン選択及び細胞分離技術の総説としては、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Techniques, 2 d Ed., A. R. Liss, Inc., New York, 1987, Ch. 11 and 12, pp. 137-168を参照のこと。
【0048】
語句「細胞サンプル」又は「本発明の細胞」は、培養及びその後の療法のために細胞を単離又は供給することに言及する。本発明の方法は、任意の哺乳動物の動物細胞に対して使用されてよいことから、細胞サンプルは、任意の哺乳動物の動物種から単離されてよく、これには、ヒト、ラクダ科動物(cameline)、ウマ科動物(equine)、イヌ科動物(canine)若しくはネコ科動物(feline)、又は任意の他の商業的若しくは経済的価値のある哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
用語「単離され」とは、該用語が言及する細胞又は細胞集団が、その天然の環境内にないことを示す。該細胞又は細胞集団は、周囲の組織から実質的に分離されている。いくつかの実施態様において、細胞又は細胞集団は、サンプルが少なくとも約75%の、いくつかの実施態様では少なくとも約85%の、いくつかの実施態様では少なくとも約90%の、いくつかの実施態様では少なくとも約95%の細胞を含む場合、周囲の組織から実質的に分離される。換言すれば、細胞サンプルは周囲の組織から実質的に分離され、サンプルは約25%未満の、いくつかの実施態様では約15%未満の、いくつかの実施態様では約5%未満の、細胞以外の物質を含有する。そのようなパーセント値は細胞数パーセントに言及する。該用語は、起源である生物から取り出され、培養物中に存在する細胞を包含する。該用語はまた、起源である生物から取り出され、その後、生物中に再挿入されている細胞も包含する。再挿入された細胞を含有する生物は、細胞が取り出された生物と同じ生物であってよく、又は異なる生物であってよい。
【0050】
当業者ならば、細胞サンプルが、同種異系及び自己由来の肝細胞、同種異系及び自己由来の造血細胞、同種異系及び自己由来の線維芽細胞、同種異系及び自己由来の脂肪細胞、同種異系及び自己由来の間葉系細胞、同種異系及び自己由来の心臓細胞、同種異系及び自己由来の内皮細胞、同種異系及び自己由来の上皮細胞、同種異系及び自己由来の神経細胞(neuronal cells)、同種異系及び自己由来のグリア細胞、同種異系及び自己由来の内分泌細胞、又はそれらの前駆細胞(progenitor cells)を含む、細胞療法に使用され得る任意の細胞を含み得ることを理解するだろう。
【0051】
いくつかの実施態様において、本発明の細胞は、間葉系前駆細胞、特に間葉系間質細胞(MSC)である。いくつかの実施態様において、MSCのものは、胚性材料(embryonic material)から製造されるのではなく、成体の間葉系間質細胞を含む。
【0052】
本発明の細胞集団はまた、細胞が、特定のマーカーセレクションを検出可能なレベルで発現しないことを特徴とし得る。本明細書で定義するように、これらのマーカーは、ネガティブマーカーであると称される。
【0053】
いくつかの実施態様において、本発明の細胞集団は、単離される細胞集団のうち少なくとも約70%の細胞が検出可能なマーカー発現を示さないならば、マーカーを発現しないと考えられる。他の実施態様において、細胞集団のうち少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、又は100%の細胞は、いずれの検出可能なマーカー発現も示すべきでない。再度、検出可能な発現の欠如は、RT-PCR実験の使用を介して、又はFACSを用いて証明され得る。
【0054】
上記ネガティブマーカーは、30サイクルレベルのPCRで発現を合理的に検出できない場合(細胞中の発現レベルが、細胞あたり約100コピー未満に相当する)、本発明の細胞集団により発現されていないと考えられる。
【0055】
一実施態様において、細胞集団はさらに、細胞が、マーカーCD14、CD34及びCD45のうちの1つ、2つ又は3つすべてを検出可能なレベルで発現しないことを特徴とする。上記のように、これらのマーカーは、少量の残存発現(residual expression)が存在するにもかかわらず発現されない可能性がある。
【0056】
本発明の細胞集団はまた、細胞が、特定のマーカーセレクションを検出可能なレベルで発現することを特徴とし得る。本明細書で定義するように、これらのマーカーは、ポジティブマーカーであると称される。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明の細胞集団は、単離される細胞集団のうち少なくとも約70%の細胞が検出可能なマーカー発現を示す場合に、マーカーを発現すると考えられる。他の実施態様において、細胞集団のうち少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、又は100%の細胞は、検出可能なマーカー発現を示す。検出可能な発現は、RT-PCR実験の使用を介して、又はFACSを用いて証明され得る。
【0058】
上記ポジティブマーカーは、30サイクルレベルのPCRで発現が合理的に検出される場合(細胞中の発現レベルが、細胞あたり約100コピー超に相当する)、本発明の細胞集団により発現されていると考えられる。
【0059】
一実施態様において、細胞集団はさらに、細胞が、マーカーCD73、CD90及びCD105のうちの1つ、2つ又は3つすべてを検出可能なレベルで発現することを特徴とする。
【0060】
用語CD73には、CD73及びその任意のオーソログが含まれ、これには、NT5E、5'-ヌクレオチダーゼ、ecto、RP11-321N4.1、E5NT、NT、NT5、NTE、eN、eNT、5' ヌクレオチダーゼ(CD73)、5' ヌクレオチダーゼ、OTTHUMP00000040565、プリン 5-プライム-ヌクレオチダーゼ(Purine 5-Prime-Nucleotidase)、及びecto-5'-ヌクレオチダーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
用語CD90には、CD90及びその任意のオーソログが含まれ、これには、Thy-1、5E10が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
用語CD105には、CD105及びその任意のオーソログが含まれ、これには、ENG、エンドグリン、RP11-228B15.2、END、FLJ41744、HHT1、ORW、及びORW1が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
いくつかの実施態様において、細胞は、>90% CD73、>90% CD90、>90% CD105発現、及び<5% CD34、<5% CD45、<5% CD14発現を含む表現型を有する。
【0064】
いくつかの実施態様において、好ましい細胞サンプルは、骨髄穿刺液から単離される骨髄単核細胞である。骨髄穿刺液は、採取用針から、ヘパリン添加(heparinised)シリンジへと回収されてよい。回収から処理までの時間が2時間より長くなる場合には、当該骨髄は、好ましくは、チルド(2〜8℃)で保存され、24時間以内に処理を開始する。
【0065】
いくつかの実施態様において、骨髄単核細胞は、密度勾配遠心分離により分離され、PBSで洗浄された後、第一の細胞培養培地中に再懸濁され、プレーティングされる。
【0066】
プレーティングされる細胞数は、細胞のタイプ及び培養容器のタイプによって決まるだろう。しかしながら、細胞数は、典型的には、培養容器1 cm
2あたり1.0×10
3細胞〜培養容器1 cm
2あたり1.0×10
10細胞の間となるだろう。いくつかの実施態様において、細胞数は、組織培養フラスコ80 cm
2あたりおよそ12×10
6個、又は組織培養フラスコ175 cm
2あたり28×10
6個に相当する。
【0067】
語句「第一の細胞培養培地」とは、本明細書において、細胞を保持する培養容器が、採取されるべきコンフルエンスレベルに達するまで、細胞サンプルが、代謝し、細胞数について増大(expand)又は増殖(proliferate)することを可能とする、標準的な培養培地に言及するために使用される。
【0068】
用語「培養培地(culture medium)」又は「培地(medium)」又は「培地(media)」は、当分野で理解されており、通常、生細胞を培養するために使用される任意の物質又は調製物(preparation)に言及する。細胞培養に関連して使用する場合、用語「培地」には、細胞周辺環境の成分が含まれる。
【0069】
「第一の細胞培養培地」は、典型的には、第一の基礎培地(例えば、市販の培地)、例えば、DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(Eagle's basal medium)(MEM)、ハムF10培地(Ham's F10 medium)(F10)、ハムF-12培地(Ham's F-12 medium)(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove's modified Dulbecco's medium)、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(Mesenchymal Stem Cell Growth Medium)(MSCGM)、ライボビッツL-15培地(Liebovitz's L-15 medium)、MCDB、DMEM/F12、RPMI 1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせなどを含む。いくつかの実施態様において、第一の基礎培地はDMEMである。
【0070】
「第一の細胞培養培地」はまた、典型的には、第一の血清、第一の血清代替物、第一の血清フラクション、又はそれらの組み合わせを含む。用語「第一の血清」には、市販の血清ソース、例えば、ウシ胎児血清(FCS)又は熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)などが含まれる。好ましくは、第一の基礎培地には、熱非働化ウシ胎児血清(HIFCS)が加えられる。
【0071】
用語「第一の血清代替物」には、血小板溶解物及び市販の製品、例えば、Ultroser
TM G血清代替物(Pall Corporation, NY, USA);イスコフMDM(Iscove’s MDM)中にヒト血清アルブミン、インスリン及びトランスフェリンを含有するHIT
TM血清代替物(Stemcell Technologies, BC, Canada);6%の全タンパク質(およそ84%のヒト血清アルブミン、16%のアルファ及びベータグロブリン、並びに<1%のガンマグロブリンを含有)からなるSerum Substitute Supplement
TM(SSS
TM)(Irvine Scientific, CA, USA)、並びにQuinns Advantage(登録商標)血清タンパク質代替物(CooperSurgical Inc, CT, USA)などが含まれる。これらの血清代替物はすべて、細胞サンプルが培養容器に付着し、細胞数を増大することを可能とする、正しい浸透ポテンシャル、増殖因子、及び栄養素/タンパク質を提供する。
【0072】
用語「第一の血清フラクション」には、血清アルブミンなどの血清成分が含まれる。
【0073】
第一の細胞サンプルがプレーティングされたら、標準的な細胞培養条件下、増大して所要レベルのコンフルエンシーに達するのに十分な時間、細胞をインキュベートする。典型的な細胞培養条件セットの一つは、約37℃、約5%CO
2及び約70%湿度である。
【0074】
語句「十分な時間」とは、細胞が「所望の増大レベル」を達成するための時間の長さに言及する。当業者ならば、所望の増大レベルに達するのに必要とされる時間が、ある種の要因、例えば、細胞のタイプ、初期プレーティング細胞密度、第一の細胞培養培地のタイプ、及び最終用途の療法のために必要とされる細胞数などによって決まることを理解するだろう。しかしながら、いくつかの実施態様において、細胞は、18〜72時間の間インキュベートされ、その後、接着細胞がPBSで洗浄され、継続的な培養のために培地が交換される。
【0075】
語句「所望の増大レベル」は、典型的には、3〜4日毎に培地交換しながら細胞が70〜90%コンフルエンシーに達するまで細胞を増殖させるステップを伴う。いくつかの実施態様において、細胞は、CellSTACKファクトリー(Corning, USA)などのセルファクトリー中で増殖され得る。細胞は、これらのファクトリーに約5,000細胞/cm
2の典型的な細胞密度で播種される。下記のように、療法で使用される細胞数は、体重1 kgあたり約1×10
6細胞〜体重1 kgあたり約15×10
6細胞の間である。従って、80 kgの人では、全部でおよそ80×10
6細胞から1200×10
6細胞が必要とされるだろう。従って、いくつかの実施態様において、語句「所望の増大レベル」は、所望の細胞量、例えば、80×10
6細胞から1200×10
6細胞などが製造されるまで細胞を培養することを意味する。
【0076】
細胞が所望の増大レベルに達したら、細胞は、採取のために調製され得る。本明細書で使用する場合、語句「細胞を採取する前」とは、「第一の細胞培養培地」を「第二の細胞培養培地」と交換することに言及する。用語「〜する前(prior)」が言及する期間は、典型的には、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも12時間前である。好ましくは、このステップは、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも18時間前に実施される。さらにより好ましくは、ステップ(ii)は、細胞を細胞療法に使用するために採取する少なくとも24時間前に実施される。従って、典型的には、第一の細胞培養培地が除去され、第二の細胞培養培地と交換され、次いで、細胞は、5%CO
2を含む湿潤インキュベーター中、約37℃、約24時間、インキュベートされる。また、細胞は、細胞が老化し始めるであろうことから、第二の細胞培養培地と約48時間より長い間接触させたままとさせることができないことも理解されるだろう。
【0077】
語句「細胞を更なる期間培養する」とは、用語「〜する前」により包含される期間と同じ期間に言及する。
【0078】
本明細書で使用する場合、語句「第二の細胞培養培地」とは、以下からなる群から選択される基礎培地を含む組織培養培地をいう:DMEM(高又は低グルコース)、イーグル基礎培地(Eagle's basal medium)(MEM)、ハムF10培地(Ham's F10 medium)(F10)、ハムF-12培地(Ham's F-12 medium)(F12)、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove's modified Dulbecco's medium)、M-199、間葉系幹細胞増殖培地(Mesenchymal Stem Cell Growth Medium)(MSCGM)、ライボビッツL-15培地(Liebovitz's L-15 medium)、MCDB、DMEM/F12、RPMI 1640、advanced DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)、及びCELL-GRO FREE、又はそれらの組み合わせ。好ましくは、第二の基礎培地は、フェノールレッド不含DMEMである。
【0079】
「第二の細胞培養培地」はまた、「第二の血清」、「第二の血清代替物」、「第二の血清フラクション」、又はそれらの組み合わせを含むだろう。しかしながら、第二の血清及び/又は第二の血清フラクションは、培養されている細胞と同じ種起源を有することが重要である。例えば、ヒト細胞が培養されている場合、第二の培地は、ヒト血清、ヒト血清代替物、又はヒト血清アルブミンを含むだろう。ウマ(equine)細胞が培養されている場合、第二の培地は、ウマ血清、ウマ血清代替物、又はウマ血清アルブミンを含むだろう。同様に、イヌ(canine)細胞が培養される場合、第二の培地はイヌ血清などを含むだろう。
【0080】
いくつかの実施態様において、第二の基礎培地には、ヒト細胞を培養するのに使用するためのヒト血清又はヒト血清アルブミンが加えられる。第二の培地で使用されるヒト血清又はヒト血清アルブミンの量は制限されないものの、すなわち、任意の量の血清が使用されてよいものの、いくつかの実施態様において、ヒト血清又はヒト血清アルブミンの量は約2%である。
【0081】
いずれの理論又は仮説に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、療法のための細胞を、その起源の種と「適合」する血清(例えば、ヒト細胞についてヒト血清、イヌ細胞についてイヌ血清など)でない血清中で培養すると、製造される培養細胞が、患者の免疫系によって「外来」と認識される表面マーカーを発現し、それにより、組織拒絶反応の問題や最終的には治療の失敗がもたらされると考える。しかしながら、種適合血清(例えば、ヒト血清)中であまりにも長い間細胞を培養することは、(i)コストがかかり、且つ(ii)療法のための細胞を十分製造するには時間がかかりすぎる。従って、療法のための細胞を、DMEM及びウシ胎児血清などの「標準的」な組織培養培地中で培養し、次いで、「第一の細胞培養培地」を除去して、本発明の「第二の細胞培養培地」と交換することが好ましく、それにより、誤った細胞表面マーカーを除去することが可能となる。
【0082】
上記を踏まえ、第二の細胞培養培地中で本発明の細胞を培養するステップの後、細胞は、「1つ以上の接着マーカーの発現の増加」を有することに注目すべきである。用語「発現の増加」とは、接着マーカータンパク質をコードする検出可能なmRNAの量、又は接着マーカータンパク質それ自体の検出量が増加することをいう。増加は、第二の細胞培養培地の存在下で培養されていない細胞、又はより具体的には、ウシ胎児血清が加えられた培地、例えば、第一の細胞培養培地で使用される培地などの存在下で培養されている細胞、におけるこれら接着マーカーについてのmRNA及び/又はタンパク質の検出レベルに対して相対的である。mRNA及び/又はタンパク質の増加を測定するための技術は当分野で広く知られており、上記で言及される。
【0083】
用語「採取する(harvest)」及び「採取すること」とは、本明細書において、療法に使用するための増大細胞を回収するプロセスに言及するために使用される。細胞を細胞培養フラスコ及びファクトリーから取り除くための標準的な技術が使用されてよい。例えば、プラスチック細胞培養フラスコから接着細胞を取り除くためにトリプシンが使用され得ることが広く知られている。一つの好ましい方法は、セルファクトリーからアスピレーションにより第二の細胞培養培地を除去し;細胞をPBSで洗浄(rinsing)し;TrypLE
TM Select(Life Technologies Inc, CA, USA)を添加し;すべての細胞が解離するまで、通常は30分間以内であるが、1時間未満の間、37℃でインキュベーションすることを伴う。次いで、細胞を培地(media)中に単離する。次いで、細胞を450 g(1500 rpm)、5分間、遠心分離し、適切な懸濁培地(suspension medium)に再懸濁し、計数する。
【0084】
療法のために適切な細胞数での、適切な懸濁培地中の細胞は、本明細書に定義するように、細胞療法組成物を構成する。
【0085】
「適切な懸濁培地」は、療法、投与経路、細胞タイプなどによって決まるであろうが、典型的には、懸濁培地は、静脈内使用に適した等張性溶液である。好ましくは、等張性溶液は、約2%のHSAをさらに含む。
【0086】
「適切な細胞数」は、やはり、着手されている療法、投与経路、細胞タイプなどによって決まる。
【0087】
当業者ならば、本発明の増大細胞が製造されれば、その後使用するためにそれらを保存し得ることを理解するだろう。凍結保存のために本発明の細胞を調製するための技術は、細胞についての最終用途によって決まるだろう。例えば、凍結保存が継代培養のためである場合には、80%細胞培養培地(例えば、10%HIFBS及び5 μg/mLゲンタイマイシンを加えたDMEM)に20%DMSO(ジメチルスルホキシド)を加えた、適切な培地(例えば、10%HIFBS及び5 μg/mLゲンタイマイシンを加えたDMEM)及び等量の凍結保存溶液中に、上記のように細胞を採取し得る。或いは、例えば、凍結保存が、将来的に患者に投与するためである場合には、等張性溶液(好ましくは、2%HSAを含有する)中に細胞を採取し、次いで遠心分離し、上清を除去し得る。次いで、例えば、40%等張性溶液、40%HSA(20%溶液)及び20%DMSOを含む、等張性溶液及び等量の凍結保存溶液中に細胞を再懸濁し得る。細胞を最初は2〜8℃まで冷やし、次いで、速度を制御して-160℃まで凍結させる。
【0088】
細胞を融解するための手順は、やはり、その最終用途によって決まるだろう。例えば、培養するためである細胞を融解することは、典型的には、予め36〜40℃まで温められた滅菌食塩水(sterile saline)を含むウォーターバス中、ちょうど融解するまで急速融解することを伴う。次いで、細胞をPBSで洗浄し、450 g(1500 rpm)、5分間、遠心分離し、培地に再懸濁して、所要の細胞濃度を得る。
【0089】
患者への使用のために、凍結保存細胞は、予め36〜40℃まで温められた滅菌食塩水を含むウォーターバス中、ちょうど融解するまで急速融解される。次いで、細胞を等量の等張性溶液で希釈し、融解から5時間以内に注入する。
【0090】
上記のように、本発明の方法は、同種異系又は自己由来の細胞に対して使用され得る。従って、いくつかの実施態様において、「ドナー」は適合ドナーである一方、他の実施態様において、「ドナー」は適合しない。例えば、ドナーは、患者に対して50%以下の組織適合性を有し得るが、状況が異なれば、全く適合性がない、すなわち、同種異系ドナーとなるだろう。
【0091】
いくつかの実施態様において、本発明の細胞は、1つ以上の医薬上許容される担体と混合される。語句「医薬上許容される」とは、本明細書において、正しい医学的判断の範囲内で、妥当なリスク/ベネフィット比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症のない、ヒト及び動物の組織との接触に用いるのに適したそれら化合物、材料、組成物、及び/又は投与形態をいうために使用される。
【0092】
本明細書で使用する場合、語句「医薬上許容される担体(pharmaceutically-acceptable carrier)」とは、対象の細胞をある臓器若しくは体の部分から他の臓器若しくは体の部分に運搬又は輸送するのに関与する、医薬上許容される材料、組成物、又はビヒクル、例えば、液体又は固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、又は溶媒カプセル化材料(solvent encapsulating material)を意味する。各担体は、投与される材料の他の成分と適合し、且つ患者に有害でないという意味において「許容される」ものでなければならない。
【0093】
医薬上許容される担体は、細胞の生存性を支持する細胞培養培地を含んでよい。培地は、通常、レシピエントにおいて免疫反応が引き起こされることを回避するため、血清不含であるだろう。担体は、通常、緩衝化されており且つ/或いはパイロジェンフリーであるだろう。
【0094】
医薬上許容される担体及び希釈剤には、食塩水、水性緩衝溶液、溶媒及び/又は分散媒が含まれる。そのような担体及び希釈剤の使用は当分野で広く知られている。溶液は、好ましくは無菌であり、容易に注射できる(syringability)程度に流動性である。多くの実施態様において、溶液は、製造及び貯蔵条件下で安定であり、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用を介して、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護される。この列挙は、説明の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。本発明の細胞組成物である溶液は、医薬上許容される担体又は希釈剤、及び必要に応じて上記に列挙した他の成分であって、濾過により滅菌されているものに、本明細書に記載するような細胞を組み込むことにより調製され得る。
【0095】
医薬上許容される担体として役立ち得る材料及び溶液のいくつかの例として、以下が挙げられる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロース;(2)デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース;(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバター及び坐剤ワックス(suppository waxes);(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水(isotonic saline);(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;並びに(22)医薬製剤で使用される他の非毒性の適合可能な物質。この列挙は、説明の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0096】
本明細書に記載されるように細胞が調製されれば、それらは、患者を治療するための療法に使用され得る。通常、用語「治療すること」、「治療」などは、本明細書において、所望の薬理学的及び/又は生理学的な効果を得るために、個体又は動物、それらの組織又は細胞に影響を及ぼすことを意味するために使用される。当該効果は、特に、病態及び/又は障害の部分的又は完全な治癒という点で治療的である。本明細書で使用する場合、「治療すること」は、脊椎動物、哺乳動物、特にヒトにおける病態及び/又は障害の任意の治療を網羅し、(a)病態及び/又は障害を阻害すること、すなわち、その発症を停止させること;或いは(b)病態及び/又は障害の症状を緩和又は改善すること、を含む。
【0097】
用語「病態(condition)」及び/又は「障害(disorder)」は、本明細書において互換的に使用され、本発明の細胞を用いて治療され得る、ヒトを含む動物が罹患する異常な状態をいう。
【0098】
本明細書全体にわたって記載するように、本発明の細胞は、in vivoでの組織修復/再生の誘導を含む細胞療法に特に適している。従って、本発明は、本発明の細胞を適切な量で患者に投与することを含む、患者を治療する方法を提供する。
【0099】
通常、本発明の細胞又はその子孫は、注入(infusion)、注入(injection)又はインプラントにより患者の体内へと導入される。細胞は、それらが作用することが意図される組織へと注入(infused)又は直接注入(injected)若しくはインプラントされてよい。本発明の細胞及び医薬上許容される担体を含むシリンジが本発明の範囲内に含まれる。本発明の細胞及び医薬上許容される担体を含むシリンジとつながれたカテーテルが本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
上述のように、本発明の細胞は、組織の再生に使用され得る。この機能を達成するために、細胞は、それらが作用を発揮する損傷組織へと直接注入又はインプラントされてよく、増殖(multiply)してよく、最終的には、体内での位置に従って、所要の細胞タイプへと分化してよい。治療の影響を受けやすい組織には、全ての損傷組織が含まれ、特に、疾患、損傷、外傷(trauma)、自己免疫反応によるか、又はウイルス若しくは細菌感染により損傷を受けている可能性のある組織が含まれる。
【0101】
一実施態様において、本発明の細胞又はその子孫は、溶液中、様々な組成物のマイクロスフェア中又は微粒子中のいずれかで、動脈へと投与され、再生を必要とする損傷臓器の組織又はその一部に灌注(irrigating)される。通常、そのような投与はカテーテルを用いて行われるだろう。カテーテルは、血管形成術及び/若しくは細胞デリバリーに用いられる多種多様なバルーンカテーテルのうちの1つ、又は身体の特定の局所領域に細胞をデリバリーするという特定の目的のために設計されたカテーテルであってよい。細胞は、ある種の適応のために、ある種の組織(例えば、心筋)に対して強い指向性(tropism)を示すものの、患者に投与される細胞の大半は、毛細血管網を通過せず、体循環に入らないことに留意することが望ましい場合がある。ある種の用途では、細胞は、多くの異なる生分解性化合物で作られる、直径約15 μmのマイクロスフェアに封入されてよい。この方法により、血管内に投与された細胞を損傷部位に留まらせ、初回通過において毛細血管網を通過させず、体循環に入らせないことが可能となり得る。毛細血管網の動脈側に保持することにより、その血管外スペースへの移動も容易になり得る。
【0102】
別の実施態様において、細胞は、全身にデリバリーするように静脈を介するか、又は細胞が向けられる組織若しくは身体の一部に流れ込む特定の静脈へと局所的にかのいずれかにより、血管樹に逆行的に注入されてよい。この実施態様のために、上記の調製物の多くが使用され得る。
【0103】
心筋を治療するための代替的な実施態様は、Nogaシステム又は任意の類似の注入システムなどのシステムでの電気マッピング(electric mapping)を用いた又は用いない、経心内膜的(transendocardically)な経カテーテル注入である。
【0104】
別の実施態様において、本発明の細胞又はその子孫は、生体適合性インプラントに付着された状態で損傷組織にインプラントされてよい。この実施態様の範囲内で、細胞はin vitroで生体適合性インプラントに付着され、その後、患者にインプラントされてよい。当業者に明らかなように、インプラントする前に、細胞をインプラントに付着させるために、多数の接着剤(adherents)のいずれか1つが用いられてよい。一例にすぎないが、そのような接着剤には、フィブリン、インテグリンファミリーの1つ以上のメンバー、カドヘリンファミリーの1つ以上のメンバー、セレクチンファミリーの1つ以上のメンバー、1つ以上の細胞接着分子(CAMs)、免疫グロブリンファミリーの1つ以上、及び1つ以上の人工接着剤が含まれてよい。この列挙は、説明の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。1つ以上の接着剤の任意の組み合わせが使用されてよいことが当業者に明らかであろう。
【0105】
別の実施態様において、本発明の細胞又はその子孫は、マトリックスに埋め込まれ、その後、該マトリックスが患者にインプラントされてよい。通常、マトリックスは、患者の損傷組織にインプラントされる。マトリックスの例として、コラーゲンベースのマトリックス、フィブリンベースのマトリックス、ラミニンベースのマトリックス、フィブロネクチンベースのマトリックス、及び人工マトリックスが挙げられる。この列挙は、説明の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0106】
さらなる実施態様において、本発明の細胞又はその子孫は、マトリックス形成成分と共に患者にインプラント又は注入されてよい。これにより、注入又はインプラント後に細胞がマトリックスを形成することが可能となり、確実に、細胞が患者内の適切な位置に留まることとなり得る。マトリックス形成成分の例として、フィブリン糊、液体アルキル、シアノアクリレートモノマー、可塑剤、多糖、例えば、デキストラン、エチレンオキシド含有オリゴマー、ブロックコポリマー、例えば、ポロキサマー及びPluronics、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween及びTriton「8」、並びに人工マトリックス形成成分が挙げられる。この列挙は、説明の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。1つ以上のマトリックス形成成分の任意の組み合わせが使用されてよいことが当業者に明らかであろう。
【0107】
さらなる実施態様において、本発明の細胞又はその子孫は、マイクロスフェア内に含まれてよい。この実施態様の範囲内で、細胞はマイクロスフェアの中心内に封入されてよい。また、この実施態様の範囲内で、細胞はマイクロスフェアのマトリックス材料に埋め込まれてよい。マトリックス材料には、アルギネート、ポリエチレングリコール(PLGA)、及びポリウレタンを含む(これらに限定されない)、任意の適切な生分解性ポリマーが含まれてよい。この列挙は、例示の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0108】
さらなる実施態様において、本発明の細胞又はその子孫は、インプラントを目的とする医療デバイスに付着されてよい。そのような医療デバイスの例として、ステント、ピン、縫合糸(stitches)、スプリット、ペースメーカー、人工関節、人工皮膚、及びロッドが挙げられる。この列挙は、説明の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。細胞は様々な方法によって医療デバイスに付着されてよいことが当業者に明らかであろう。例えば、細胞は、フィブリン、インテグリンファミリーの1つ以上のメンバー、カドヘリンファミリーの1つ以上のメンバー、セレクチンファミリーの1つ以上のメンバー、1つ以上の細胞接着分子(CAMs)、免疫グロブリンファミリーの1つ以上、及び1つ以上の人工接着剤を用いて医療デバイスに付着されてよい。この列挙は、説明の目的のみで提供されるに過ぎず、限定することを意図するものではない。1つ以上の接着剤の任意の組み合わせが使用されてよいことが当業者に明らかであろう。
【0109】
別の実施態様において、本発明の細胞は末梢循環へと投与され得、起源の組織に対するその指向性を介して、治療されるべき臓器/組織へと細胞が誘導(home)されると予測され得る。
【0110】
上述のように、医学の分野における使用のために、細胞は、治療上有効量で患者にデリバリーされるだろう。in vivo又はex vivoでデリバリーされるべき細胞数は、以下を含む多くのパラメーターに基づいてよい:患者の体重、組織損傷の重症度、及び対象内で生存する細胞数。典型的な細胞数は、およそ10
6〜10
9細胞であり得る。必要な累積的全体量(cumulative total mass)を達成するために、及び/又は死んでいる細胞を置き換えるために、最大7年間、細胞の注入(infusion)、注入(injection)又はインプラントを繰り返すことが必要であり得る。通常、一回の治療レジメン(regiment)で患者にデリバリーされる全細胞数は、約1×10
6個超であるだろう。しかしながら、デリバリーされる全細胞数は、1×10
10個超であってよい。患者又はレシピエントは、通常、少なくとも1用量の細胞を受けるだろう。好ましくは、患者又はレシピエントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の用量を受けるだろう。
【0111】
細胞は、単回用量、一定期間にわたる複数回用量、又はルーチンな慢性的メンテナンス投与(chronic maintenance dosing)を含むそれ以下として、与えられてよい。細胞の投与量(doses)は、典型的には、間隔が空けられるだろう。例えば、投与量は、1〜2日空けて、又は毎週、又は毎月であり得る。いくつかの実施態様において、投与量は、4週間、毎週である。
【0112】
さらに、本発明の範囲内において、本発明の単離された細胞は、組織再生又は細胞療法に使用するための医薬の製造において使用され、これには、クローン病、移植片対宿主病、肝臓の再生、神経系の特定の領域、例えば、パーキンソン病と関連する領域などの再生、及び膵臓の再生が含まれるが、これらに限定されない。そのような再生により、パーキンソン病、II型糖尿病、慢性皮膚潰瘍、及び自己免疫障害の治療が可能となり得る。本発明の細胞はまた、高悪性度原発性グリオーマ(high grade primary glioma)又は低悪性度再発性脳腫瘍、例えば、グリオーマ、上衣腫、髄芽腫又は催奇形性(teratogenic)腫瘍、重篤な末梢動脈疾患、腱修復、多発性骨髄腫、白血病、角膜損傷、強皮症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、脈管炎(vasculitis)、ベーチェット病、骨関節炎、軟骨修復及び関節リウマチを治療するために使用され得る。この列挙は、説明の目的で提供され、限定することを意図するものではない。
【0113】
本発明の細胞はまた、広範な医療デバイス接触面のいずれかに適用されてもよい。接触面には、動物(具体的にはヒトを含む)の血液、細胞、又は他の体液若しくは組織と接触させることが意図される表面が含まれるが、これに限定されない。適した接触面には、血液又は他の組織と接触させることが意図される1つ以上の医療デバイス表面が含まれる。医療デバイスには、動脈瘤コイル、人工血管、人工心臓、人工弁、人工腎臓、人工腱及び靭帯、血液バッグ、血液酸素付加装置、骨及び心臓血管の置換材(replacements)、骨プロテーゼ、ボーンワックス、心臓血管グラフト、軟骨置換デバイス、カテーテル、コンタクトレンズ、細胞及び組織の培養及び再生のための容器、塞栓形成粒子、濾過システム、グラフト、ガイドチャネル、留置カテーテル、実験室機器(laboratory instruments)、マイクロビーズ、神経成長ガイド(nerve-growth guides)、眼科用インプラント(ophthalmic implants)、整形用外科インプラント、ペースメーカーの導線、プローブ、人工装具(prosthetics)、シャント、ステント、ペプチドのための支持体、手術器具、縫合糸(sutures)、シリンジ、尿路置換材、創傷被覆材(wound coverings)、創傷包帯、創傷治癒デバイス(wound healing devices)、並びに当分野で既知の他の医療デバイスが含まれる。
【0114】
本発明の適用から利益を得るであろう医療デバイスの他の例は、外科及び医療手技分野の当業者には容易に明らかであろうし、それ故、本発明により企図される。接触面には、メッシュ、コイル、ワイヤ、インフレータブルバルーン、又は血管内の位置、管腔内の位置、固形組織内の位置などを含む標的位置にインプラントされることが可能な任意の他の構造が含まれてよい。インプラント可能なデバイスは、永久的又は一時的なインプラントが意図され得る。そのようなデバイスは、血管内カテーテル及び他の医療用カテーテルによりデリバリーされるか又はそれらに組み込まれてよい。
【0115】
さらに、増大細胞は、個別に包装される治療用製品を含む、キット、システム又はプロシージャパック(procedure pack)の形態で提供されてよく、医薬、医療デバイス及び生物学的製剤の組み合わせを含んでよい。
【0116】
「含む(comprising)」とは、単語「含む」に続くものはいずれも含むが、それらに限定されないことを意味する。従って、用語「含む」の使用は、列挙された要素は必要であるか又は必須であるが、他の要素は任意選択であり、存在しても存在しなくてもよいことを示す。「からなる(consisting of)」とは、語句「からなる」に続くものはいずれも含み、それに限定されることを意味する。従って、語句「からなる」は、列挙された要素は必要であるか又は必須であり、且つ他の要素はいずれも存在しなくてよいことを示す。「実質的に〜からなる(consisting essentially of)」とは、該語句の後に列挙されるいずれの要素も含まれ、且つ列挙された要素についてその開示で特定される活性又は作用を妨げないか又はこれに寄与しない他の要素に限定されることを意味する。従って、語句「実質的に〜からなる」は、列挙された要素は必要であるか又は必須であるが、他の要素は、列挙された要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かに応じて、任意選択であり、存在しても存在しなくてもよいことを示す。
【0117】
以下の非限定的な実施例を参照することのみを目的として、本発明をこれからさらに記載する。しかし、以下の実施例は一例に過ぎないことが理解されるべきであり、多少なりとも、上記本発明の一般性を限定するものとみなされるべきでない。
【実施例】
【0118】
実施例1 本発明の間葉系間質細胞(MSC)のための製造プロセス
骨髄単核細胞を、密度勾配遠心分離により分離し、洗浄した細胞を、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)(SABC Biosciences, Australia)を加えたダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s media)(Invitrogen, Australia)(本明細書に記載するような本発明の「第一の細胞培養培地」の代表例)に再懸濁し、1 cm
2あたり160,000細胞の密度でプレーティングした。
【0119】
5%CO
2を含む湿潤インキュベーター中、37℃で18〜72時間培養を維持した後、接着細胞をPBS(DKSH, Australia)で洗浄し、継続的な培養のために新鮮な第一の培地に交換した。3〜4日毎に培地交換しながら80〜90%コンフルエンシーまで細胞を増殖させ、次いで、TrypLE-Select(Invitrogen, Australia)を用いて継代し、CellSTACKファクトリー(Corning, USA)中、5,000細胞/cm
2の密度で再度播種した。増大後(通常、2又は3継代)、FBSを含む培地を除去し、2%ヒト血清アルブミン(HSA)(ARCBS)を加えたフェノールレッド不含ダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen, Australia)(本明細書に記載するような本発明の「第二の細胞培養培地」の代表例)と交換した。次いで、この方法により製造されたMSCを、5%CO
2を含む湿潤インキュベーター中、37℃で24時間インキュベートした。次いで、細胞を採取し、投与するか、又は10%ジメチルスルホキシド(WAK-Chemie, Germany)、50%Plasma-Lyte(Baxter Health Care, Sydney Australia)、20%塩化ナトリウム溶液及び20%ヒト血清アルブミン中で凍結保存し、-196℃で保存した。細胞の増大は、5継代までに制限し、最終継代時に細胞遺伝学的分析を実施した。患者体重1 kgあたり1 - 10×10
6細胞の用量が可能となるよう細胞を調製した。
【0120】
MSCは、以下のリリース基準(release criteria)を満たすという条件で、臨床用途に利用可能と考えられた:好気性及び嫌気性培養(Bactec plus aerobe/F及びBactec plus anaerobe/F, BD)による最終産物の微生物汚染試験(micro-contamination testing)がネガティブであり、トリパンブルー色素排除による細胞生存率が70%超であり、FACS Divaソフトウェアを用いたFACS Canto装置でのフローサイトメトリーにより分析されるように、特徴的なMSC免疫表現型の発現(CD73、CD90及びCD105の発現、並びにCD45、CD34及びCD14の発現の欠如)が存在した。
【0121】
実施例2 細胞表面発現
細胞表面フェノタイピングを、Becton DickinsonのBD Lyoplate
TMスクリーニングパネルを用いて実施したが、これは、数百のマウス及びヒト細胞表面マーカーをフローサイトメトリー又はバイオイメージングにより効率的にプロファイリングするために利用可能な最初の包括的なシステムである。製造者の説明書に従ってパネルを使用した。実施例1に記載の方法論を用いて本発明の細胞を製造し、コンパレーターとして、他のMSCサンプルを実施例1と同じ期間培養したが、ヒト血清アルブミン存在下での最後の培養ステップは行わなかった。次いで、242のマーカーの発現を、ハイスループットフローサイトメトリーを介してスクリーニングし、多くの細胞表面マーカーが差次的に発現することを発見した。例えば、CD54、CD61、CD89、CD140A及びCD201は、ウシ胎児血清含有培地と比較して、ヒト血清アルブミン含有培地で培養(grown)した細胞において発現が増加していた。これらのマーカーは主に接着マーカーである。
【0122】
実施例3 ステロイド抵抗性急性及び慢性移植片対宿主病に対する療法における本発明の間葉系間質細胞の使用
過去20年間にわたり、生物学についての理解並びに移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)の予防及び治療は著しく進歩しており、抗腫瘍壊死因子(TNF)及び抗CD25生物製剤などの第二選択薬の導入がもたらされている。しかしながら、ステロイド抵抗性(steroid-refractory)急性GVHDの予後は不良のままであり、長期生存率は約20%である(Deeg,(2007), Blood, 109(10):4119-26)。急性GVHDのグレードII〜IVの発生率は、同種造血幹細胞移植(HSCT)後、およそ50%である。標準治療は、高用量コルチコステロイドを用いたものであり、通常、メチルプレドニゾロン2 mg/kg IV又は経口等価量(oral equivalent)であり、これにより患者のおよそ30〜40%において、長期完全反応(durable complete response)が誘導される(MacMillan et al.,(2002), Biol Blood Marrow Transplant;8(7):387-94)。ステロイド抵抗性慢性GVHD(CGVHD)では、長期生存率が低下し、身体に障害を引き起こす病的状態(disabling morbidity)が一般的である。
【0123】
我々は、実施例1の方法により製造されるMSCのものが、ステロイド抵抗性急性及び慢性移植片対宿主病を治療できるかどうかを検証した。
【0124】
2007年3月〜2010年7月の間、急性及びCGVHDを有する患者(インフォームドコンセントにサインした)が、単施設フェーズI安全性試験において、MSCを受ける資格を有した。当該試験は、ロイヤルパース病院倫理員会(Ethics Committee, Royal Perth Hospital)により承認され、オーストラリアの規制当局である保健省薬品・医薬品行政局(Therapeutics Goods Administration:TGA)により治験届(Clinical Trials Notification:CTN)が許可された。当該試験は、Australian and New Zealand Clinical Trials Registry(ANZCTR12610000068066)に登録された。
【0125】
すべての同種移植患者が、カルシニューリン阻害剤及び4用量のメトトレキサートでのAGVHDに対する予防を受けた。移植前のコンディショニングは、14人の患者で骨髄破壊的(myeloablative)であり、7人の患者で骨髄非破壊的であった。造血幹細胞ソースは、すべての患者において、動員(mobilised)された末梢血細胞であった。
【0126】
AGVHDを有する18歳以上の患者は、AGVHDグレードII〜IVが、静脈内メルチプレドニゾロン2 mg/kg又は経口プレドニゾロン2.5 mg/kgで7日間治療後に反応しなかった又は進行した場合に、当該試験への資格を有した。AGVHDは、コンセンサスグレーディングにより評価した(Przepiorka et al.(1995), Bone Marrow Transplant;15(6):825-8)。すべての患者が、ステロイド療法及びカルシニューリン阻害剤を継続し、すべて、併用第二選択療法(エタネルセプト25 mg、皮下、週2回)を開始した。エタネルセプトは、可溶性二量体TNFαレセプター2(TNFα receptor 2)であり、TNF結合と競合し、TNFを不活性の状態にする。バイオプシーにより確認されるAGVHD診断が、試験参加に必要であった。7日間生存すると期待されない、一般状態不良の患者は排除した。
【0127】
慢性GVHD患者は、プレドニゾロン2.5 mg/kg及びカルシニューリン阻害剤にもかかわらず、広範な疾患を有し、通常は、ミコフェノレートを受けていたが、プロトコルの一部としてそうすることが必要ではなかった。NIHコンセンサスクライテリア(NIH Consensus Criteria)に従って、主要標的臓器(複数可)がスコア2以上を有する場合で患者を分類した(Filipovich et al.,(2005), Biol. Blood Marrow Transplant;11(12):945-56)。
【0128】
当該試験のプライマリーエンドポイントは安全性であり、セカンダリーエンドポイントは、最良反応(best response)及び全生存率であった。AGVHDについて、完全反応(complete response)は、AGVHDのすべての症状及びサインの消失であり、部分反応(partial response)は、少なくとも、1グレード以上の改善であった。CGVHDについて、完全反応は、AGVHDに関するものであり、部分反応は、少なくとも1つのNIHコンセンサススコアの改善であった(Filipovich et al.,(2005), 上記)。
【0129】
ドナーは、60歳未満であり、医学的併存症を有さず、インフォームドコンセントにサインすることが必要とされた。ドナーはまた、血液及び組織提供(donation)のためにTGAにより必要とされるように、ネガティブな感染症マーカーを有さなければならなかった。
【0130】
2007年1月〜2010年6月の間に19人の患者が登録され、12人がAGVHDを、7人がCGVHDを有した。患者の特徴及び反応を、AGVHDについては表1に、CGVHDについては表2に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
すべての患者が血液悪性腫瘍を有した。適合する非血縁者間ドナー移植を受けた患者は、AGVHDを有する12人のうち10人、CGVHDを有する7人のうち2人に相当した。
【0134】
最初に、患者は、AGVHDのケースでは入院患者として、CGVHD患者についてはデイセンター内でのいずれかで、週2回、4週間、静脈内に8回のMSC注入を受け、注入関連反応について患者をモニタリングした。その後、AGVHDについて2用量のMSCを比較するランダム化試験の発表後(Kebriaei et al., 2009), Biol Blood Marrow Transplant.;15(7):804-11)、1週間間隔で2注入に試験を修正し、9人の患者がこれに基づく注入を受けた。完全反応に達したが、維持されなかった患者は、1週間間隔で2注入での再治療の対象となった。完全反応は、GVHDのすべてのサインの消失であり、部分反応は、1グレードの改善であり、安定(stable disease)は、GVHDの症状又はサインが変化しないことであり、進行は、1グレード以上の悪化であった。
【0135】
安全性は、各注入後4時間、注入反応についてバイタルサインをモニタリングして患者を観察することにより評価した。患者はまた、注入のためその後来院した際に、前の注入後のインターバルの間に生じた症状について尋ねられ、定期的な継続的フォローアップにて、有害事象についてモニタリングされた。
【0136】
これがフェーズI試験であることを考慮し、統計的方法を、急性及び慢性カテゴリーに層別化される患者の総合的経験を示す記述法(descriptive methods)に制限した。生存は、最初のMSC注入からの時間として記述された。カプラン−マイヤー(Kaplan-Meier)法を用いて、急性及び慢性ケースについて生存時間を別々に推定した。ノンパラメトリックログランク検定を用いて、グループ間の生存の差を検証し、順序グループ(ordered groups)について生存パターンの傾向を検証した。
【0137】
この試験のためのMSCは、全部で16人のハプロタイプ一致(haploidentical)の家族の一員、又はHLAミスマッチの血縁若しくは非血縁ドナーの骨髄穿刺液に由来した。MSCは、実施例1に記載の方法に従って製造した。
【0138】
全部で109注入を19人の患者に投与し、中央値は患者あたり2注入であった。2人の患者は、AGVHDの再発のために更なる注入を必要とし、そのうち1人の患者は、1エピソードの再注入を有し、2人目は3年間にわたって7注入を受けた。CGVHDを有する6人の患者は、1の治療エピソードで2注入を受け、CGVHDを有する1人の患者は、2以上の治療エピソードを有し、全部で11注入を受けた。複数の患者で見られた、抗凍結剤ジメチルスルホキシドに起因する軽度の味覚異常を別にすれば、注入は、良好な耐容性を示し、急性の注入関連毒性がなく、MSC注入に起因したその後の毒性はいずれも確認されなかった。
【0139】
病変のある臓器(organ involved)による反応、及び全体反応を、AGVHDについては表1に、CGVHDについては表2に示す。AGVHDについて全体的な反応率は、7人で完全、4人で部分的であり、1人の患者で反応しなかった。完全反応を有さなかった患者はすべて死亡した:5人が日和見感染症、1人が出血性脳卒中。完全反応に達した7人の患者のうち6人は生存し、1人は細菌性敗血症で死亡した。
【0140】
CGVHDを有する2人の患者が完全反応に達した一方、2人は部分反応に達し、3人は反応を有さなかった。このグループでは5人が死亡し、3人は胸部感染症と関連する進行性の閉塞性細気管支炎で、1人はCGVHDに起因する肝不全で、1人は再発性の急性リンパ芽球性白血病であった。両方のグループについて生命表法による生存率を
図1に示し、急性グループについて3年生存率は55%であり、CGVHDについて生存期間の中央値は8ヶ月であった。AGVHDでは、完全反応が生存のために重要であった。ログランク検定により、反応は、急性GVHD患者については、統計的に有意な生存予測因子であるが(c2 = 11.3, p = 0.0008)(
図2a)、慢性ケースについてはそうでない(c2 = 2.79, p = 0.100)(
図2b)ことが示された。
【0141】
この試験は、GMP条件下で培養及び保存されたドナー由来MSCを109用量、安全に注入することを報告する。早期及び後期の注入関連毒性の欠如は、製造された生産物のクオリティと、MSCの自然免疫特権ステータスの両方を反映する。要約すれば、19人の患者グループにおいて、早期又は後期に安全性の問題はいずれも確認されなかった。
【0142】
実施例4 生物学的療法に対して難治性の管腔型(luminal)クローン病に対する療法における本発明の同種異系間葉系間質細胞の使用
クローン病(CD)のための生物学的療法が出現しているにもかかわらず、患者の約4分の1は、依然として、診断から5年以内に腹部大手術を必要とする。手術を回避するために、同種異系又は自己由来のいずれかの骨髄又は末梢血幹細胞移植による細胞療法が、少数の患者で首尾よく使用されているが、事前の骨髄破壊的療法又は造血幹細胞動員が必要とされる(Hommes et al.(2011), J Crohns Colitis;5:543-549)。
【0143】
対照的に、MSCは、多能性(multipotent)の成体幹細胞であり、免疫原性を欠き、そのため免疫認識を回避すると考えられる;それらは、低レベルのHLAクラスI発現を有し、HLAクラスII抗原を欠き、共刺激分子を発現しない。従って、同種異系投与において、ドナーとレシピエントの適合性も、化学療法的な骨髄コンディショニングも必要とされない(Le Blanc et al.(2003), Exp Hematol;31:890-896)。
【0144】
上記実施例2で実証したように、本発明のMSCは、ステロイド抵抗性GVHDを首尾よく治療した。我々は、当該MCSsはまた、他の生物学的療法に対して難治性である管腔型クローン病(luminal Crohn’s Disease)を治療するためにも使用され得ると仮定した。
【0145】
多施設共同オープンラベルフェーズ2試験(phase 2, open-label, multi-centre study)は、インフリキシマブ又はアダリムマブ難治性の、内視鏡で確認される活動性の管腔型CD(CD活動指数 [CDAI]>250)を有する16人の患者(21〜55歳;6人の男性)を含んだ。対象は、実施例1で調製するような同種異系MSC(2×10
6細胞/kg体重)の静脈内注入を毎週、4週間与えられた。プライマリーエンドポイントは、最初のMSC投与から42日後の臨床的反応(CDAI>100ポイントの低下)であった;セカンダリーエンドポイントは、臨床的寛解(CDAI<150)、内視鏡的改善(CD内視鏡的活動性指数(CD endoscopic index of severity) [CDEIS] 値<3、又は>5の低下)、クオリティオブライフ、C反応性タンパク質レベル及び安全性であった。
【0146】
以下の組み入れ基準を適用した:大腸型(colonic)又は小腸型CD(内視鏡及び組織学に基づく);CDAI>250;内視鏡的に活動性の疾患(active disease);インフリキシマブ又はアダリムマブでの導入に対して難治性の疾患、又は両方に対する反応性の喪失、又はこれら薬物のいずれか若しくは両方について更なる使用を妨げる副作用。寛解導入の失敗は、0、2及び6週での最低3用量のインフリキシマブ(5 mg/kg);又は3用量のアダリムマブ(0週目160 mg;2週目80 mg;4週目40 mg)、から4週間後における臨床的寛解の失敗として定義された。以下の除外基準を適用した:炎症を伴わない慢性狭窄疾患(chronic stricturing disease);共存細菌性小腸結腸炎(co-existent bacterial entero-colitis)若しくはサイトメガロウイルス(CMV)感染;悪性腫瘍の既往(prior malignancy);妊娠、若しくは療法の間にバースコントロールの意思がない;授乳期;ストーマ(stoma)(CDAI測定不能);又は肛門周囲の敗血症若しくは穿孔性疾患(perforating disease)を含む活動性の敗血症。併用薬物療法に関して以下を適用した:最後の生物学的製剤(インフリキシマブ又はアダリムマブ)4週間以上前;及びt = -14日〜42日目の間、安定用量のコルチコステロイド(10 mgプレドニゾロンバリエーションの範囲内)、免疫調節薬(アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート)又は止瀉剤(antidiarrhoeal)。
【0147】
試験を完了した15人の患者のうち、平均CDAIスコアは、42日目で、370(中央値327;範囲256〜603)から203(中央値129)に低下した(P<.0001)。平均CDAIスコアは、各MSC注入後に減少した(投与前370、7日目269、14日目240、21日目209、28日目182、及び42日目203)。
図3は、試験期間にわたる平均クローン病活動指数(CDAI)を示す。12人の患者が臨床的反応を有し(80%;95%信頼区間72%〜88%;CDAIの平均低下211;範囲102〜367)、8人が臨床的寛解を有した(53%;範囲43%〜64%;42日目の平均CDAI=94;範囲44〜130)。
図4は、MSC治療前及び後のクローン病活動指数(CDAI)を示す。7人の患者が内視鏡的改善を有し(47%)、その人々の平均CDEISスコアは、21.5(範囲3.3〜33)から11.0(範囲0.3〜18.5)まで減少した。1人の患者は重篤有害事象(2の異形成関連病変(dysplasia-associated lesions))を有したが、これは恐らくMSCにより生じたものではなかった。
【0148】
表3は当該試験のデモグラフィックを示し、一方、表4及び5はアウトカム評価を示す。
【0149】
【表3-1】
【表3-2】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
我々のデータは、管腔型CDにおける静脈内への同種異系MSCの有効性を示唆する。抗TNF療法に対して難治性である、中等症から重症の活動性疾患を有する15人の患者において、1週間間隔で2×10
6細胞/kgを4注入することにより、12人で臨床的反応が(80%)、8人で臨床的寛解が(53%)、7人で内視鏡的改善が(47%)導かれた。CDAIの改善と並行して、クオリティオブライフが改善した(Irvine et al.,(1994), Gastroenterol;106:287-296.)。我々のデータは、初めて、確実に管腔型疾患(luminal disease)に対する有効性を実証するものである。