(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644007
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】金属又は金属マトリックス複合材料から作られた部品の製造のための方法及び積層造形とそれに続く前記部品の鍛造を含む工程からの結果物
(51)【国際特許分類】
B21J 5/00 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
B21J5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-565306(P2016-565306)
(86)(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公表番号】特表2017-514697(P2017-514697A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】FR2015051087
(87)【国際公開番号】WO2015166167
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年2月22日
(31)【優先権主張番号】1453875
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502235027
【氏名又は名称】サン・ジャン・インダストリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エミール・トマ・ディ・セリオ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・デュペレー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ペリエ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・デレイヨー
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭48−050937(JP,A)
【文献】
特開昭51−046554(JP,A)
【文献】
特開平01−280623(JP,A)
【文献】
特開平01−319604(JP,A)
【文献】
特開平01−290714(JP,A)
【文献】
特開平04−143037(JP,A)
【文献】
特開昭63−194816(JP,A)
【文献】
特開2005−171299(JP,A)
【文献】
特開2015−161031(JP,A)
【文献】
特表2016−529106(JP,A)
【文献】
米国特許第4069042(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属合金又は金属マトリックス複合体材料からなる小部品を製造する方法であって、
‐金属合金又は金属マトリックス複合体材料の紛体を付け加えて連続的な層にすることによる積層造形によってプレフォームを作成するステップと、
‐前記プレフォームを、得られるべき前記小部品の最終的な形状を得る目的で、単一ステップで2つのダイ間において行われる鍛造工程にかけるステップと、
からなり、
前記プレフォームは、中実のシェルの形状を有し、前記シェルの外側の輪郭において、前記紛体は結合されており、前記シェルの内側において、前記紛体は部分的に固められたか、又は固められておらず、
前記鍛造工程中に、前記シェルの内側における前記紛体は、固相において結合されており、且つ最終的な小部品に微細な微細構造を提供し、
前記最終的な小部品は、2つのモードの構造を有する、
方法。
【請求項2】
前記金属合金からなる小部品は、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、又はコバルトをベースとする合金からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属マトリックス複合体材料からなる小部品は、チタン‐チタンカーバイド合金、アルミニウム‐アルミナ合金、又はアルミニウム‐シリコンカーバイド合金からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
積層造形によって得られた前記プレフォームを鍛造するための前記鍛造工程は、半熱間又は冷間又は熱間で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、それに限定されるわけではないが、自動車及び航空機のためのコンポーネント及び機器の作成のための、金属又は金属マトリックス複合体からなる小部品(pieces)の製造の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
小部品又は部品(parts)を、連続する層を融合する(fusing)(一緒に溶かす)ことによって、又は焼結することによって作ることを可能にする積層造形が開発されており、その基本概念は1984年代に遡って特許文献1に規定されている。
【0003】
積層造形は、材料を取り除く機械加工のような減法製造技術(subtractive manufacturing methodologies)に対するものとして、材料を接合して三次元(3D)モデルから通常は何層も重ねて物を作るプロセスとしてASTMによって規定されている。それはまた、3Dプリンティング技術につけられた名前でもある。
【0004】
この技術は、紛体床(powder bed)を融合若しくは焼結すること、又は線材を溶接することのいずれかによって、金属合金からなる小部品を作るために開発された。金属マトリックス複合体に対する試験は、それ自体非常に前途有望なものであった。使用された技術は、網羅的にではなく記載すると、選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering:SLS)から電子ビーム溶融(Electron Beam Melting:EBM)までに及び、直接的金属レーザー焼結(Direct Metal Laser Sintering:DMLS)及びレーザー金属堆積(Laser Metal Deposition:LMD)又は選択的レーザー溶融(Selective Laser Melting:SLM)を含む。これら技術は、幾何学的複雑さが高く、満足のいく機械的特性を有する小部品又は部品を製造することを可能にするが、非常に長い場合が多いサイクルタイムを犠牲にする結果となる。連続する層それぞれに対して、紛体をローラーによって広げなければならず、電子ビーム又はレーザーが層それぞれの全面を掃引して、紛体の良好な凝集を得なければならない。サイクルタイムを減少させるために、製造者によって採用される方策は、出力及びビームの数を増加させ、それによってそれぞれの層をより迅速に溶融(融合)又は焼結させることであるが、それによって製造装置のコストを増加させる。使用される金属は、主にEBM技術用のチタン合金であるが、レーザーを使用する技術はより広い用途を有する。レーザーを使用する技術は、鉄合金、チタンベースの合金、アルミニウムベースの合金、コバルトベースの合金、ニッケルベースの合金等、及び金属マトリックス複合体(チタン‐チタンカーバイド、アルミニウム‐アルミナ、アルミニウム‐シリコンカーバイド等)からなる小部品を製造することが可能である。
【0005】
残念ながら、積層造形によって得られる小部品又は部品は、残留微小孔を有することが非常に多い。そのような微小孔は、小部品又は部品の機械的特性、特に延性及び疲労強度を劣化させる。熱間等静圧圧縮成形(HIP)ステップは、小部品を高圧及び高温下に置くステップからなり、満足のいく疲労強度を得るために必要である場合が多い。
【0006】
積層造形によって得られた小部品又は部品はまた、使用される紛体の粒子サイズ及び残留する微小量の積層造形中に形成される種々の層のために粗い表面粗さを有する。
【0007】
そのような小部品はまた、小部品が得られる又は作られる間の紛体の溶融のために鋳造微小孔をも有する。そのような構造は特に、チタンをベースとする合金に対してラメラーであり、構造的な航空機部品に対する殆どの仕様を満足させることができない。改善された機械的特性のためには、ラメラーとノジュラーとの両方である2つのモードの(bimodal)微細構造が要求される。そして、そのような構造は、鍛造タイプの熱間変形工程によって、費用のかかる特定の実行条件のもとでのみ得ることができる。
【0008】
したがって、これら欠点を考慮して、出願人のアプローチは、これらさまざまな問題を軽減することを可能にする解法を考え、見つけることであった。
【0009】
完全に独立した態様で、積層造形に関連せず、出願人は1983年から、すなわち上述した特許文献1の時期から、アルミニウム又はアルミニウム合金の小部品を鋳造し、鍛造するための、鋳造と鍛造とを組み合わせた新規なコンセプトを開発してきた。その技術は、特許文献2に開示されており、この技術は、型内でアルミニウム又はアルミニウム合金の小部品を鋳造するための鋳造の第1フェーズを実行して、プレフォームを構成し、このプレフォームを次いで小さな寸法のダイ中で鍛造工程に供し、その特許に示された非常に特殊な特性を有して得られた最終的な形状を得ることを可能にする。その「鋳造し、鍛造する」技術は、商標「COBAPRESS」の下で売られ、世界的に広がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4575330号明細書
【特許文献2】欧州特許第119365号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
その1983年〜1984年から、すなわち最近30年に亘って、積層造形によって経験された、上述に思い出された(recalled)欠点を修正する解法は、長時間を要し、コストがかかり、チタン合金からなる構造的な航空機の部品の大部分に必要となる2つのモードの微細構造を得るための解法が見つからなかったことがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
積層造形に対して解決すべき問題に直面して、出願人は、そのような製造において遭遇する微小孔の問題もまた、鋳造の製造中に存在することを見いだした。
【0013】
出願人の取り組みはしたがって、積層造形によって構成された技術と、鋳造及び鍛造技術によって構成された技術との2つの技術の予期されなかった組み合わせを追求することに焦点を当てており、これら2つの技術は、たとえそれらが1983年〜1984年の時期から知られていたとしても、一見両立しないものであった。
【0014】
完全には予期されない態様で、及び出願人によって行われた試験に基づいて、2つの技術の組み合わせを実行することが、積層造形において観察された欠点に対処し、改善することができることが分かった。
【0015】
本発明によれば、開発された解決法は、金属合金又は金属マトリックス複合体材料からなる小部品を、積層造形によって得、それによってプレフォームを形成するステップと、次いで、前記プレフォームに、前記プレフォームが熱い、やや熱い、又は冷たい間に、小部品に対する最終的な形状を得ることを目的として2つのダイ間において、1つのステップで鍛造が行われるステップと、からなる。
【0016】
したがって、結果的に得られる小部品はその最終的な形状を有し、バリを除去したのち、又はバリ除去を行わずに、限られた許容範囲を有して、機能領域以外にさらなる機械加工を必要とすることなく目的に適合するような機能寸法を有する。
【0017】
完全に予期されなかった態様で、この方法は上述した欠点及び積層造形によって得られた小部品に観られた制限を克服することを可能にする。
【0018】
材料を変形することからなる鍛造するステップは、微細孔を閉じ、さらなる構造の種々の層の均一な結合に再結合させることを可能にする。これは、改善された延性及び疲労強度を与える。
【0019】
2つの研磨されたダイ間の鍛造のこのステップもまた、表面粗さを大幅に減少させることを可能にし、それによって疲労強度及び表面の外観を改善することを可能にする。
【0020】
実施された試験は、非常に見込みのあるものであった。プレフォームが得られた状態が異なり、「鋳造及び鍛造」技術において、プレフォームは鋳造によって得られ、一方で積層造形においては、プレフォームは連続する層を融合する(ともに溶融する)又は焼結することによって得られるので、1983年〜1984年以降に知られた技術のいずれかがそれらを組み合わせることを示唆できたであろうことを示すものは存在しない。
【0021】
本発明を実行するということに関連して、小部品は金属合金(鋼、鉄、アルミニウム、インコネル、ニッケル、チタン、等をベースとする)からなる小部品とすることができるか、又は金属マトリックス複合体材料(チタン‐チタンカーバイド、アルミニウム‐アルミナ、アルミニウム‐シリコンカーバイド等)からなる小部品とすることができる。
【0022】
積層造形によって得られたプレフォームを鍛造するための本発明の鍛造の第2のステップは、熱間で、半熱間で、又は冷間で行うことができる。ダイは任意に研磨することができる。
【0023】
積層造形によって得られたプレフォームをダイ鍛造するこの技術もまた、結合されていない、又は部分的に固められた紛体領域を有するプレフォームにも適用することができ、結合されていない、又は部分的に固めた紛体領域は次いで、鍛造ステップ中に変形され、結合される。
【0024】
単軸又は静水圧圧縮によって製造された紛体プレフォームを鍛造することは、すでに既知の方法である。本発明において使用される技術は、紛体が、結合された周縁部を有するプレフォーム内に閉じ込められた状態で保持されているという点で新規である。すべての紛体が結合されるわけではないという事実は、製造中のサイクルタイムのかなりの量を節約することを可能にする。積層造形中に紛体を焼結又は溶融するために、レーザー又は電子ビームが小部品のそれぞれの層の全面を掃引する必要がある。紛体の融合を、プレフォームの外側の輪郭線上でのみ、最適に行うことによって、結果的にプレフォームは、部分的に固められ
た又は固められていない紛体を
その内側に閉じ込めておく中実の結合したシェルによって構成され、プレフォームが結合していない紛体で充填された中実のシェルの形状で得られる。このプレフォームを鍛造することは、最終的な小部品又は部品を得ることを可能にする。熱間変形中に紛体を結合することは、そのような製造が真空中で行われるので、材料の内側にガスが補足されないので、EBMによって製造されたプレフォームに特に効果的である。
【0025】
また、この技術は、紛体の融合がないという事実によって、微細な粒子を有する微細構造を得るという利点を提供する。下層における粒子のエピタキシャル成長が、チタン合金の積層造形中に観察された。そのような成長は、かなり粗い粒子を有する微細構造を生じさせ、この微細構造は機械特性にはよくない。紛体の融合がない状態では、微細構造の微粒度が保存される。したがって、プレフォームの結合していないゾーンは、結合が鍛造ステップ中に固相において行われるので、最終的な小部品又は部品に非常に微細な微細構造を有するゾーンを与える。そのような結晶学的組織を有さない微細な構造は、小部品又は部品の静的かつ周期的な機械的特性にとって非常に良好である。
【0026】
上述に強調された利点及び本発明を実行することによる予期されなかった結果は、積層造形によって得られる金属又は金属マトリックス複合体からなる小部品の処理における注目に値する開発を構成する。