特許第6644016号(P6644016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メンテックの特許一覧

<>
  • 特許6644016-カンバス洗浄装置 図000002
  • 特許6644016-カンバス洗浄装置 図000003
  • 特許6644016-カンバス洗浄装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644016
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】カンバス洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   D21F 1/32 20060101AFI20200130BHJP
   D21F 7/08 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   D21F1/32
   D21F7/08 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-66140(P2017-66140)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168498(P2018-168498A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年4月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594020802
【氏名又は名称】株式会社メンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】関谷 宏
(72)【発明者】
【氏名】長塚 智彦
(72)【発明者】
【氏名】森 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
(72)【発明者】
【氏名】菅 綾乃
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0043843(US,A1)
【文献】 特開2009−165968(JP,A)
【文献】 特開2008−018424(JP,A)
【文献】 特開2001−064891(JP,A)
【文献】 特許第4918024(JP,B2)
【文献】 特開2008−007897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
B08B3/00−3/14
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機のカンバスの洗浄に用いられるカンバス洗浄装置であって、
前記カンバスの幅方向に延設されたクリーナーレールと、
該クリーナーレールに沿って移動可能な基部と、
該基部に取り付けられ前記カンバスを洗浄するためのクリーナー部と、
該クリーナー部又は前記基部に取り付けられ前記カンバスに薬液を付与するための薬液付与部と、
を備え、
前記薬液付与部が、前記カンバスの走行方向に対し、前記クリーナー部の下流側に設けられており、
前記クリーナー部及び前記薬液付与部が前記カンバスの走行方向に対し、直線状に配列されているカンバス洗浄装置。
【請求項2】
前記薬液付与部が、第1支持流通管と、該第1支持流通管の先端に設けられた薬液ノズル部とからなる請求項1記載のカンバス洗浄装置。
【請求項3】
前記クリーナー部が、前記基部に固定された第2支持流通管と、該第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーノズル部とからなり、
前記第2支持流通管に前記第1支持流通管が取り付けられている請求項記載のカンバス洗浄装置。
【請求項4】
前記クリーナーノズル部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが吹き付けられる請求項3記載のカンバス洗浄装置。
【請求項5】
前記クリーナー部が、前記基部に固定された第2支持流通管と、該第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーブラシ部又はクリーナーブレード部とからなり、前記第2支持流通管に前記第1支持流通管が取り付けられている請求項記載のカンバス洗浄装置。
【請求項6】
抄紙機のカンバスの洗浄に用いられるカンバス洗浄装置であって、
前記カンバスの幅方向に延設されたクリーナーレールと、
該クリーナーレールに沿って移動可能な基部と、
該基部に取り付けられ前記カンバスを洗浄するためのクリーナー部と、
該クリーナー部又は前記基部に取り付けられ前記カンバスに薬液を付与するための薬液付与部と、
を備え、
前記薬液付与部が、前記カンバスの走行方向に対し、前記クリーナー部の下流側に設けられており、
前記薬液付与部が、第1支持流通管と、該第1支持流通管の先端に設けられた薬液ノズル部とからなり、
前記クリーナー部が、前記基部に固定された第2支持流通管と、該第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーノズル部とからなり、
前記第2支持流通管に前記第1支持流通管が取り付けられているカンバス洗浄装置。
【請求項7】
前記クリーナーノズル部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが吹き付けられる請求項記載のカンバス洗浄装置。
【請求項8】
抄紙機のカンバスの洗浄に用いられるカンバス洗浄装置であって、
前記カンバスの幅方向に延設されたクリーナーレールと、
該クリーナーレールに沿って移動可能な基部と、
該基部に取り付けられ前記カンバスを洗浄するためのクリーナー部と、
該クリーナー部又は前記基部に取り付けられ前記カンバスに薬液を付与するための薬液付与部と、
を備え、
前記薬液付与部が、前記カンバスの走行方向に対し、前記クリーナー部の下流側に設けられており、
前記薬液付与部が、第1支持流通管と、該第1支持流通管の先端に設けられた薬液ノズル部とからなり、
前記クリーナー部が、前記基部に固定された第2支持流通管と、該第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーブラシ部又はクリーナーブレード部とからなり、前記第2支持流通管に前記第1支持流通管が取り付けられているカンバス洗浄装置。
【請求項9】
前記クリーナー部が中空の箱状である請求項1〜8のいずれか1項に記載のカンバス洗
浄装置。
【請求項10】
前記クリーナー部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが吹き付けられ
る請求項9記載のカンバス洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンバスの洗浄装置に関し、更に詳しくは、抄紙機のカンバスの洗浄に用いられ、クリーナー部と薬液付与部とを共に備えるカンバス洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙を製造するための抄紙機は、一般に水中にパルプが分散された液を抄紙用の網(ワイヤー)に載せ、余分な水を自然落下させることにより湿紙とするワイヤーパートと、湿紙を一対のプレスロール間に通し、フェルトを介してプレスロールで押圧することにより、湿紙中の水分をフェルトに移行させ、これにより湿紙を脱水するプレスパートと、プレスパートを通過した湿紙を、カンバスを介して、加熱されたシリンダに接触させることで乾燥させ、紙とするドライヤーパートと、紙をスプールと呼ばれる棒に巻き取るリールパートと、を有する。
【0003】
ドライヤーパートにおいては、湿紙を、加熱された複数のドライヤーロールの表面に巻き付けるようにして走行させることにより、当該湿紙の乾燥が行われる。このとき、湿紙をその外側からドライヤーロールの表面に押し付けるために、いわゆるカンバスが用いられる。すなわち、各ドライヤーロール間において、カンバスは、湿紙に当接された状態で、湿紙と共に走行することになる。
【0004】
ところで、カンバスは、上述したように、湿紙に当接されるため、その表面に湿紙に含まれる紙粉等が転移することにより汚染する恐れがある。そして、カンバスが汚染した状態で、使用を継続した場合には、カンバスの汚染が後続の湿紙に転移してしまい、紙の製造歩留まりを著しく低下させる原因となる。
【0005】
これに対し、カンバスを洗浄するための洗浄装置が開発されている。
例えば、カンバスにおける湿紙が接触する接触面に汚染防止剤を直接供給する供給手段と、供給手段により汚染防止剤が供給されたカンバスの接触面に圧力10MPa以上の高圧水を噴射する高圧水噴射手段と、カンバスの接触面の、高圧水が衝突している部分の近傍を吸引する吸引手段とを具備するカンバス洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、キャリヤ側カンバスの上方に位置するリターン側カンバス上に、カンバス表面に付着する付着物を掻き取るスクレーパ装置と、そのスクレーパ装置からリターン側カンバスの移動方向の前側に、そのリターン側カンバスの幅方向全体にわたって圧力水を噴射する圧力水噴射装置と、その圧力水噴射装置からリターン側カンバスの移動方向の前側に、そのリターン側カンバスの幅方向全体にわたって水溶性剥離剤を噴霧する剥離剤噴霧装置とを設けた抄紙機におけるドライヤが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−7897号公報
【特許文献2】特許第4918024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載のカンバス洗浄装置においては、汚染防止剤を供給する供給手段と、高圧水噴射手段とを有しているが、両者は別体であり、且つ、一定の距離をおいて設けられているため、両者間を走行する間に、汚れが再付着する恐れがある。すなわち、仮に、高圧水噴射手段でピッチ等の汚れをカンバスから剥離させたとしても、走行中に、カンバスがドライヤによって加熱乾燥されることによって、ピッチ等の汚れが固化して、カンバスに再付着する恐れがある。
なお、供給手段と、高圧水噴射手段とを互いに近付ける方法も考えられるが、両者とも十分に大きな装置であり、ドライパート全体の設計上の観点からも、両者を近付けることは困難である。
【0008】
また、上記特許文献2記載のドライヤにおいては、圧力水噴射装置と、剥離剤噴霧装置とを有しているが、上述したことと同様に、両者間を走行する際にピッチ等の汚れがカンバスに再付着する恐れがあり、両者を近付けることも困難である。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、コンパクトでありながら、カンバスを効果的に洗浄することができるカンバス洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、クリーナー部と薬液付与部とを共に備え、薬液付与部を、クリーナー部の下流側に設ける構成とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、(1)抄紙機のカンバスの洗浄に用いられるカンバス洗浄装置であって、カンバスの幅方向に延設されたクリーナーレールと、該クリーナーレールに沿って移動可能な基部と、該基部に取り付けられカンバスを洗浄するためのクリーナー部と、該クリーナー部又は基部に取り付けられカンバスに薬液を付与するための薬液付与部と、を備え、薬液付与部が、カンバスの走行方向に対し、クリーナー部の下流側に設けられており、クリーナー部及び薬液付与部がカンバスの走行方向に対し、直線状に配列されているカンバス洗浄装置に存する。
【0012】
本発明は、(2)薬液付与部が、第1支持流通管と、第1支持流通管の先端に設けられた薬液ノズル部とからなる上記(1)記載のカンバス洗浄装置に存する。
【0013】
本発明は、(3)クリーナー部が、基部に固定された第2支持流通管と、第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーノズル部とからなり、第2支持流通管に第1支持流通管が取り付けられている上記()に記載のカンバス洗浄装置に存する。
【0014】
本発明は、(4)クリーナーノズル部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが吹き付けられる上記(3)記載のカンバス洗浄装置に存する。
【0015】
本発明は、(5)クリーナー部が、基部に固定された第2支持流通管と、第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーブラシ部又はクリーナーブレード部とからなり、第2支持流通管に第1支持流通管が取り付けられている上記()記載のカンバス洗浄装置に存する。
【0016】
本発明は、(6)抄紙機のカンバスの洗浄に用いられるカンバス洗浄装置であって、カンバスの幅方向に延設されたクリーナーレールと、クリーナーレールに沿って移動可能な基部と、基部に取り付けられカンバスを洗浄するためのクリーナー部と、クリーナー部又は基部に取り付けられカンバスに薬液を付与するための薬液付与部と、を備え、薬液付与部が、カンバスの走行方向に対し、クリーナー部の下流側に設けられており、薬液付与部が、第1支持流通管と、第1支持流通管の先端に設けられた薬液ノズル部とからなり、クリーナー部が、基部に固定された第2支持流通管と、第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーノズル部とからなり、第2支持流通管に第1支持流通管が取り付けられているカンバス洗浄装置に存する。
【0017】
本発明は、(7)クリーナーノズル部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが吹き付けられる上記()記載のカンバス洗浄装置に存する。
【0018】
本発明は、(8)抄紙機のカンバスの洗浄に用いられるカンバス洗浄装置であって、カンバスの幅方向に延設されたクリーナーレールと、クリーナーレールに沿って移動可能な基部と、基部に取り付けられカンバスを洗浄するためのクリーナー部と、クリーナー部又は基部に取り付けられカンバスに薬液を付与するための薬液付与部と、を備え、薬液付与部が、カンバスの走行方向に対し、クリーナー部の下流側に設けられており、薬液付与部が、第1支持流通管と、第1支持流通管の先端に設けられた薬液ノズル部とからなり、クリーナー部が、基部に固定された第2支持流通管と、第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーブラシ部又はクリーナーブレード部とからなり、第2支持流通管に第1支持流通管が取り付けられている記載のカンバス洗浄装置に存する。
本発明は、(9)クリーナー部が中空の箱状である上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のカンバス洗浄装置に存する。
本発明は、(10)クリーナー部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが吹き付けられる上記(9)記載のカンバス洗浄装置に存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカンバス洗浄装置は、クリーナー部と薬液付与部とを共に備えているので、クリーナー部による洗浄効果と、薬液付与部による薬液付与効果とを、同時にカンバスに付与することができる。
また、クリーナー部と薬液付与部とが一体となっているため、装置をコンパクトにすることができる。これにより、ドライパート全体の設計上、小さいスペースとなってしまう空間であっても、設置することが可能となる。
【0020】
本発明のカンバス洗浄装置においては、クリーナー部と薬液付与部との間が極力狭くなっているので、カンバスがクリーナー部と薬液付与部との間を走行する際に加熱乾燥され、当該カンバスにピッチ等が再付着することを防止できる。
また、薬液付与部が、クリーナー部の下流側に設けられているので、クリーナー部でカンバスを洗浄した直後に、薬品付与部で薬液を付与することができる。これにより、カンバスを効果的に洗浄することが可能となる。
【0021】
本発明のカンバス洗浄装置においては、クリーナー部及び薬液付与部をカンバスの走行方向に対し、直線状に配列することにより、クリーナー部が洗浄をした部分に対して、直後に、薬液付与部が薬液を付与することになるため、カンバスをより効果的に洗浄することが可能となる。
【0022】
本発明のカンバス洗浄装置においては、薬液付与部が、第1支持流通管と、当該第1支持流通管の先端に設けられた薬液ノズル部とからなる場合、薬液付与部とクリーナー部と一体化した状態で、クリーナーレールに沿って移動させることができるので、薬液付与部のためのレール、ベルト、駆動源等を別途設ける必要がない。
また、薬液付与部が極めて軽量となるので、クリーナー部にかかる重量負荷も軽減することができる。
【0023】
本発明のカンバス洗浄装置においては、クリーナー部が、基部に固定された第2支持流通管と、当該第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーノズル部とからなる場合、第2支持流通管に第1支持流通管を取り付けることにより、薬液付与部をクリーナー部に簡単に取り付けることができる。このとき、クリーナーノズル部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが好適に吹き付けられる。
同様に、クリーナー部が、基部に固定された第2支持流通管と、当該第2支持流通管の先端に設けられたクリーナーブラシ部又はクリーナーブレード部とからなる場合、第2支持流通管に第1支持流通管を取り付けることにより、薬液付与部をクリーナー部に簡単に取り付けることができる。
また、クリーナー部が中空の箱状である場合、クリーナー部の何れかに薬液付与部を取り付ければよい。このとき、クリーナー部からは、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが好適に吹き付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係るカンバス洗浄装置の第1実施形態を模式的に示す概略側面図である。
図2図2は、本発明に係るカンバス洗浄装置を設置したドライパートを示す概略図である。
図3図3は、本発明に係るカンバス洗浄装置の第2実施形態を模式的に示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
本発明に係るカンバス洗浄装置は、抄紙機のドライヤーパートにおけるカンバスの洗浄に用いられ、クリーナー部及び薬液付与部をカンバスの幅方向に往復移動させる、いわゆる走査式の洗浄装置である。
【0027】
(第1実施形態)
まず、本発明に係るカンバス洗浄装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るカンバス洗浄装置の第1実施形態を模式的に示す概略側面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るカンバス洗浄装置100は、カンバスKの幅方向に延設されたクリーナーレール10と、当該クリーナーレール10に沿って移動可能な基部1と、当該基部1に取り付けられカンバスKを洗浄するためのクリーナー部2aと、当該クリーナー部2aに取り付けられカンバスKに薬液を付与するための薬液付与部3と、を備える。
【0028】
カンバス洗浄装置100は、クリーナー部2aと薬液付与部3とを共に備えているので、走行するカンバスKに対し、クリーナー部2aによる洗浄効果と、薬液付与部3による薬液付与効果とを、カンバスKに同時に付与することができる。すなわち、洗浄効果により、カンバスKに付着した紙粉等の付着物を除去することができ、薬液付与効果により、カンバスKに薬液に基づく効果(例えば、薬液が汚染防止剤である場合、汚染防止効果)を付与することができる。
【0029】
ここで、カンバスKと平行な面におけるクリーナー部2aと、薬液付与部3との最短距離H1は、10mm〜1000mmであることが好ましい。
クリーナー部2aと、薬液付与部3との最短距離H1が10mm未満であると、最短距離H1が上記範囲内にある場合と比較して、薬液付与部3から吹き付けられる薬液が、クリーナー部2aに付着してしまう恐れがあり、クリーナー部2aと、薬液付与部3との最短距離H1が1000mmを超えると、クリーナー部2aと薬液付与部3との間を走行する間に汚れが再付着する恐れがある。また、後述する薬品付与部の第1支持流通管31が長くなり、傾き易くなる等、安定性が失われる。なお、仮に、安定性を保持しようとすると、装置自体が大きくなってしまい、ドライパート全体の設計上、小さいスペースとなってしまう空間に対しては設置できない恐れがある。
【0030】
カンバス洗浄装置100においては、クリーナーレール10が、カンバスKの幅方向に向けて延設されている。
また、クリーナーレール10は、カンバスKの両側の外方に設けられた図示しないフレームにより支持されている。
【0031】
カンバス洗浄装置100において、クリーナーレール10には、図示しないベルト部が内蔵されており、当該ベルト部には基部1が固定されている。
そして、基部1には、クリーナー部2aが取り付け固定されている。
更には、後述するように、クリーナー部2aには薬液付与部3が取り付けられている。
したがって、図示しない駆動源がベルト部を移動させることにより、クリーナー部2a及び薬液付与部3は、基部1を介して、クリーナーレール10に沿って往復移動するようになっている。
このとき、クリーナー部2a及び薬液付与部3は、カンバスKの幅全体に対して吹き付け可能となるように、カンバスKの両端近傍まで移動するようになっている。
【0032】
ここで、基部1(クリーナー部2a及び薬液付与部3)の移動速度は、0.02m/min〜7.3m/minであることが好ましい。
基部1の移動速度が0.02m/min未満であると、移動速度が上記範囲内にある場合と比較して、薬液等の吹き付け量が十分でなく、カンバスを十分に洗浄できない場合があり、移動速度が7.3m/minを超えると、移動速度が上記範囲内にある場合と比較して、カンバスKに対して、薬液等を均一に吹き付けることができず、ムラになり易い傾向がある。
【0033】
クリーナー部2aは、カンバスKを洗浄するために、当該カンバスKに対して、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアを吹き付ける部分である。なお、当該薬液は、汚染防止剤、剥離剤、洗浄剤等を意味する。
ここで、クリーナー部2aは、基部1に固定された逆L字状の第2支持流通管21と、当該第2支持流通管21の先端に設けられたクリーナーノズル部22とからなる。
また、第2支持流通管21の後端には、図示しない第2流通管が連結されている。
クリーナー部2aにおいては、第2流通管を介して、第2支持流通管21の内部を高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアが流通可能となっている。
そして、クリーナーノズル部22は、第2支持流通管21の内部を流通する高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアをカンバスKに向けて吹き付けることが可能となっている。
【0034】
薬液付与部3は、カンバスKに薬液を付与するために、当該カンバスKに対して、薬液を吹き付ける部分である。
なお、かかる薬液としては、特に限定されないが、例えば、汚染防止剤、剥離剤、洗浄剤が挙げられる。すなわち、上述した高圧希釈水に含まれる薬液と同義である。
これらの中でも、薬液としては、汚染防止剤を用いることが好ましく、汚染防止剤の中でも変性型シリコーンを用いたものであることがより好ましい。この場合、環境負荷が少なく、効果的にカンバスKの汚染を防止することができる。
【0035】
ここで、薬液付与部3は、クリーナー部2aの第2支持流通管21に取り付けられた逆L字状の第1支持流通管31と、当該第1支持流通管31の先端に設けられた薬液ノズル部32とからなる。
また、第1支持流通管31の後端には、図示しない第1流通管が連結されている。
クリーナー部2aにおいては、第1流通管を介して、第1支持流通管31の内部を薬液が流通可能となっている。
そして、薬液ノズル部32は、第1支持流通管31の内部を流通する薬液をカンバスKに向けて吹き付けることが可能となっている。
【0036】
このように、カンバス洗浄装置100においては、薬液付与部3とクリーナー部2aとが連結一体化した状態で、クリーナーレール10に沿って移動させることができるので、薬液付与部3のためのレール、ベルト、駆動源等を別途設ける必要がない。
また、薬液付与部3の構造が極めてシンプルであり、且つ軽量であるので、クリーナー部にかかる重量負荷も軽減することができる。
【0037】
薬液付与部3は、カンバスKの走行方向に対し、クリーナー部2aの下流側に設けられている。このため、クリーナー部2aでカンバスKを洗浄した直後に、薬液付与部3で薬液をカンバスKに付与することができる。
また、クリーナー部2a及び薬液付与部3は、カンバスKの走行方向に対し、直線状に配列されている。このため、クリーナー部2aが洗浄をした部分に対して、直後に、薬液付与部3が薬液を付与することになる。
これらのことにより、カンバス洗浄装置100においては、カンバスKを効果的に洗浄することが可能となる。
【0038】
カンバス洗浄装置100において、薬液付与部3による薬液の散布量は、湿紙Wの通過面積当たりの不揮発分量として、0.02mg/m〜2.0mg/mであることが好ましい。
散布量が0.02mg/m未満であると、散布量が上記範囲内にある場合と比較して、薬液の付着量が不足し、汚染を十分に防止できない場合があり、散布量が2.0mg/mを超えると、散布量が上記範囲内にある場合と比較して、薬液自体の固形分が汚染の原因となる恐れがある。
【0039】
図2は、本発明に係るカンバス洗浄装置を設置したドライパートを示す概略図である。
図2に示すように、カンバス洗浄装置100は、ドライパートDで用いられる。
ドライパートDは、湿紙Wと、当該湿紙Wを加熱乾燥するための複数の円筒状のシリンダD1,D2,D3,D4,D5,D6,D7及びD8(以下「D1〜D8」という。)と、湿紙WをシリンダD1〜D8に押し付けるカンバスK1,K2と、カンバスK1,K2を案内するカンバスロールKRと、乾燥した湿紙Wの平滑性と紙厚を緩やかに調整するブレーカースタックロールBと、乾燥した湿紙Wの平滑性と紙厚を調整するカレンダーロールCと、を備える。
【0040】
ドライパートDにおいては、回転するシリンダD1〜D8の表面に湿紙WがカンバスK1,K2により圧接される。これにより、湿紙WがシリンダD1〜D8に付着し、同時に加熱乾燥されるようになっている。なお、湿紙Wは、その後、ブレーカースタックロールBに挟持され、次いで、湿紙Wは、カレンダーロールCにより高密度化される。
【0041】
ドライパートDにおいて、カンバスK1は、湿紙Wを押圧しながら、湿紙Wと共に走行する。そして、湿紙Wが後端のシリンダD8を通過した後、カンバスロールKRにより前端のシリンダD2にまで案内され、再び後続の湿紙Wを押圧するようになっている。すなわち、カンバスK1は、カンバスロールKRに案内されたループ状となっており、連続して回転するようになっている。なお、カンバスK2についても、カンバスK1と同様にして回転するようになっている。
【0042】
カンバス洗浄装置100は、カンバスK1が湿紙Wから分離されて折り返して搬送される際のカンバスK1の湿紙Wと接する側(図2でいうカンバスK1の上方)に設けられる。
なお、カンバス洗浄装置100は、コンパクトな構造となっているため、ドライパートD全体の設計上、小さいスペースとなってしまう空間であっても、設置することが可能となっている。
【0043】
ドライパートDにおいて、カンバス洗浄装置100の薬液付与部3にて、薬液を付与した後のカンバスK1上の水量は、0.01g/m以上70g/m以下であることが好ましい。
カンバスK1上の水量が0.01g/m未満であると、水量が上記範囲内にある場合と比較して、カンバスK1の汚れを十分に除去できない場合があり、カンバスK1上の水量が70g/mを超えると、水量が上記範囲内にある場合と比較して、カンバスK1が湿紙Wに再び接した場合に、当該湿紙Wに水跡(色抜け)が形成される恐れがある。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るカンバス洗浄装置の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明に係るカンバス洗浄装置の第2実施形態を模式的に示す概略側面図である。
図3に示すように、第2実施形態に係るカンバス洗浄装置101は、カンバスKの幅方向に延設されたクリーナーレール10と、当該クリーナーレール10に沿って移動可能な基部1と、当該基部1に取り付けられカンバスKを洗浄するためのクリーナー部2bと、当該クリーナー部2bに取り付けられカンバスKに薬液を付与するための薬液付与部3と、を備える。すなわち、第2実施形態に係るカンバス洗浄装置101は、クリーナー部2bの構造が異なること以外は、第1実施形態に係るカンバス洗浄装置100と同じである。
【0045】
カンバス洗浄装置101は、クリーナー部2bと薬液付与部3とを共に備えているので、走行するカンバスKに対し、クリーナー部2bによる洗浄効果と、薬液付与部3による薬液付与効果とを、カンバスKに同時に付与することができる。すなわち、洗浄効果により、カンバスKに付着した紙粉等の付着物を除去することができ、薬液付与効果により、カンバスKに薬液に基づく効果を付与することができる。
【0046】
カンバス洗浄装置101において、基部1には、中空の箱状のクリーナー部2bが取り付け固定されている。
また、クリーナー部2bには薬液付与部3が取り付けられている。
したがって、クリーナー部2b及び薬液付与部3は、基部1を介して、クリーナーレール10に沿って往復移動するようになっている。
このとき、クリーナー部2b及び薬液付与部3は、カンバスKの幅全体に対して吹き付け可能となるように、カンバスKの両端近傍まで移動するようになっている。
【0047】
クリーナー部2bは、カンバスKを洗浄するために、当該カンバスKに対して、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアを吹き付ける部分である。
ここで、クリーナー部2bは、基部1に直接固定されており、逆L字状の中空箱状となっている。すなわち、第1実施形態に係るカンバス洗浄装置100の第2支持流通管21は有していない。
また、クリーナー部2bは、その内部が、図示しない第3流通管と連通されている。
クリーナー部2bにおいては、第3流通管を介して、クリーナー部2bの内部を流通する高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアをカンバスKに向けて吹き付けることが可能となっている。
【0048】
カンバス洗浄装置101において、薬液付与部3の第1支持流通管31は、クリーナー部2bの後ろ側(カンバスの走行方向の下流側)の壁面に取り付けられている。
また、薬液付与部3は、カンバスKの走行方向に対し、クリーナー部2bの下流側に設けられており、クリーナー部2b及び薬液付与部3は、カンバスKの走行方向に対し、直線状に配列されている。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0050】
本実施形態に係るカンバス洗浄装置100,101において、クリーナーレール10には、ベルト部が内蔵されており、ベルト部を移動させることにより、クリーナー部2a及び薬液付与部3が、基部1を介して、クリーナーレール10に沿って往復移動するようになっているが、クリーナー部2a及び薬液付与部3を移動させる手段は、これに限定されない。
例えば、ベルト部の代わりに、チェーン、ワイヤー、スクリューネジ、油圧・エア圧シリンダ、リニアベアリング等が設けられており、これによりクリーナー部2a及び薬液付与部3を移動させてもよい。
【0051】
第1実施形態に係るカンバス洗浄装置100において、クリーナーノズル部22は、第2支持流通管21の内部を流通する高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアをカンバスKに向けて吹き付けているが、クリーナーノズル部を第2流通管に直接連結し、第2支持流通管21を介さずに、第2流通管を流通する高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアをカンバスKに向けて吹き付けてもよい。
同様に、薬液ノズル部32は、第1支持流通管31の内部を流通する薬液をカンバスKに向けて吹き付けているが、薬液ノズル部32を第1流通管に直接連結し、第1支持流通管31を介さずに、第1流通管を流通する薬液をカンバスKに向けて吹き付けてもよい。
【0052】
第1実施形態に係るカンバス洗浄装置100において、クリーナー部2aは、基部に固定された第2支持流通管21と、該第2支持流通管21の先端に設けられたクリーナーノズル部22とからなっているが、クリーナーノズル部22の代わりに、クリーナーブラシ部やクリーナーブレード部を用いてもよい。
この場合、カンバスKに対して、高圧水、薬液を含む高圧希釈水又は高圧エアを吹き付けて洗浄する代わりに、カンバスKをクリーナーブラシ部やクリーナーブレード部で擦って洗浄することになる。
【0053】
本実施形態に係るカンバス洗浄装置100,101は、更にバキューム装置を設けていてもよい。この場合、カンバスKから剥離された汚れが吸引されることでカンバスCの洗浄効率が高まる。
【0054】
本実施形態に係るカンバス洗浄装置100,101において、薬液付与部3は、着脱自在であってもよい。この場合、既存の洗浄装置に薬液付与部3を取り付けることで、簡単に本発明の構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るカンバス洗浄装置100,101は、抄紙機のドライパートで用いられるカンバスKを洗浄するために用いられる。
本発明に係るカンバス洗浄装置100,101によれば、コンパクトでありながら、カンバスKを効果的に洗浄することができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・基部
10・・・クリーナーレール
100,101・・・カンバス洗浄装置
2a,2b・・・クリーナー部
21・・・第2支持流通管
22・・・クリーナーノズル部
3・・・薬液付与部
31・・・第1支持流通管部
32・・・薬液ノズル部
B・・・ブレーカースタックロール
C・・・カレンダーロール
D・・・ドライパート
D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8・・・シリンダ
H1・・・最短距離
K,K1,K2・・・カンバス
KR・・・カンバスロール
W・・・湿紙
図1
図2
図3