(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チオキサントン系開始剤、アシルホスフィンオキサイド系開始剤およびα−アミノアルキルフェノン系開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの光重合開始剤を含有する、請求項1または2に記載のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔重合性化合物〕
本発明のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物(以下、「本発明のインク組成物」と称する場合がある)は、重合性化合物として、分子内に芳香族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーおよび分子内に脂肪族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーを含有する。
【0011】
本発明において、分子内に芳香族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマー(以下、「芳香族環状構造単官能モノマー」と称する場合がある)とは、分子内に不飽和結合を1個有し、かつ、1個以上の芳香族炭化水素の環状構造を有する重合性モノマーをいう。芳香族炭化水素の環状構造としては、例えばベンゼンのような単環芳香族、ナフタレンおよびアントラセンなどのような多環芳香族等の芳香族炭化水素環構造が挙げられる。不飽和結合としては、エチレン性二重結合が好ましい。エチレン性二重結合として、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基またはビニルエーテル基等を有することが好ましく、特に(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。
【0012】
そのような芳香族環状構造単官能モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(2−HPA)、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等の分子内に1個以上の芳香族炭化水素系の環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。また、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレンおよび4−t−ブトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物、さらに、ベンジルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテルおよびフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等の分子内に1個以上の芳香族炭化水素系の環状構造を有するビニルエーテル化合物を用いることもできる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に本発明のインク組成物は、芳香族環状構造単官能モノマーとして、分子内に1個以上の芳香族炭化水素系の環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを含有することがより好ましい。2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを含有することにより、種々の材質の被記録媒体に対して優れた密着性を確保しながら、十分な延伸性を有するインク組成物を得ることができる。
なお、本明細書中「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイルオキシ」や「(メタ)アクリルアミド」等の表記も同様の意味を有する。
【0013】
本発明において、分子内に脂肪族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマー(以下、「脂環式構造単官能モノマー」と称する場合がある)とは、分子内に不飽和結合を1個有し、かつ、1個以上の脂環式炭化水素構造を有する重合性モノマーをいう。脂環式炭化水素構造としては、例えばシクロアルカン骨格、アドマンタン骨格およびノルボルナン骨格等の脂肪族環状構造が挙げられる。不飽和結合としては、エチレン性二重結合が好ましい。エチレン性二重結合として、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基またはビニルエーテル基等を有することが好ましく、特に(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが好ましい。
【0014】
そのような脂環式構造単官能モノマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよびジシクロペンタニルアクリレート等の分子内に脂環式炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。また、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテルおよび4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル等の分子内に脂環式炭化水素構造を有するビニルエーテル化合物を用いることもできる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に本発明のインク組成物は、脂環式構造単官能モノマーとして、分子内に脂環式炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましく、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3、5、5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−トおよびジシクロペンタニルアクリレ−トからなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。重合性モノマーとして、前記群から選択される少なくとも1種を含有することにより、種々の材質の被記録媒体に対して優れた密着性を確保しながら、十分な延伸性を有するインク組成物を得ることができる。
【0015】
本発明の好ましい一態様において、本発明のインク組成物は、重合性モノマーとして、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートを含有する。
【0016】
本発明のインク組成物は、芳香族環状構造単官能モノマーおよび脂環式構造単官能モノマーを、芳香族環状構造単官能モノマー:脂環式構造単官能モノマーで、1:10〜10:1の質量比で含有することが好ましく、1:5〜5:1の質量比で含有することがより好ましく、1:4〜3:2の質量比で含有することが特に好ましい。これら2種の単官能モノマーを前記の範囲で含有することにより、得られるインク組成物に十分な延伸性および密着力を付与することができる。
【0017】
本発明のインク組成物は、分子内に芳香族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーおよび分子内に脂肪族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーに加えて、重合性化合物として、上記2種の単官能モノマーとは異なる構造を有する単官能モノマーを含有していてよい。そのような単官能モノマーとしては、光の作用により光重合開始剤から発生した活性ラジカル等によって重合し得る化合物であれば、特に制限されることはなく、この分野において従来公知の単官能モノマーを用いることができる。
【0018】
本発明のインク組成物が前記2種の単官能モノマー以外に含有し得る単官能モノマーは、例えばエネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を1個有する重合性モノマーであり、例えば単官能(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物および単官能ビニルエーテル化合物等である。
【0019】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレートおよびEO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
前記(メタ)アクリルアミド化合物としては、具体的には、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0021】
また、単官能ビニルエーテル化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテルおよびクロルエトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
中でも、本発明のインク組成物が含有し得る芳香族環状構造単官能モノマーおよび脂環式構造単官能モノマー以外の単官能モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびテトラヒドロフルフリルアクリレートが特に好ましい。これらの単官能モノマーは、低粘度のインク組成物を調製するのに適している。
【0023】
本発明のインク組成物が、芳香族環状構造単官能モノマーおよび脂環式構造単官能モノマー以外の単官能モノマーを含有する場合、その含有量は、芳香族環状構造単官能モノマーと脂環式構造単官能モノマーの合計100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。その下限値は特に制限されないが、芳香族環状構造単官能モノマーおよび脂環式構造単官能モノマー以外の単官能モノマーの含有量が多いと被記録媒体表面に対する密着力が低下する場合があるため、芳香族環状構造単官能モノマーおよび脂環式構造単官能モノマー以外の単官能モノマーの含有量は少ないほど好ましい。したがって、本発明のインク組成物を構成する単官能モノマーは、芳香族環状構造単官能モノマーおよび脂環式構造単官能モノマーのみであってもよい。
【0024】
さらに、本発明のインク組成物は、重合性化合物として、多官能モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含有していてもよい。多官能モノマーおよび重合性オリゴマーとしては、光の作用により光重合開始剤から発生した活性ラジカル等によって重合し得る化合物であれば、特に制限されることはなく、従来公知のものを用いることができる。なお、本明細書において「オリゴマー」とは重量平均分子量が800以上10,000以下のものをいい、「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。一般的には、多官能モノマーを含有することにより、そのインク組成物を用いて得られる印刷物表面の塗膜強度を向上させることができる。また、重合性オリゴマーを含有することにより、インク組成物に優れた柔軟性や延伸性を付与することができる。
【0025】
本発明のインク組成物が含有し得る多官能モノマーは、エネルギー線により重合する特性を有する分子内に不飽和結合を2個以上有する重合性モノマーである。例えば、不飽和結合としてエチレン性二重結合を有する二官能、三官能、四官能、五官能および六官能等の多官能(メタ)アクリレート化合物ならびに多官能ビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
【0026】
二官能(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、例えば、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートおよびトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
三官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびエトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0028】
また、四官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を、五官能(メタ)アクリレートとしては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を、六官能(メタ)アクリレートとしてはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレートおよびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0029】
多官能ビニルエーテル化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;
トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0030】
本発明のインク組成物が含有し得る重合性オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーおよびエポキシアクリレートオリゴマー等が挙げられる。
ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリオールと多価イソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、例えばジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
重合性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーまたはエポキシアクリレートオリゴマーあるいはそれらの混合物であることが好ましく、ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。また、ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、密着性を付与しやすい、柔軟性を得やすい等の観点から、脂肪族イソシアネートとヒドロキシ基を有するアクリレートとからなる脂肪族系ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。
【0031】
本発明においては、本発明のインク組成物が含有する重合性モノマーの総量に占める単官能モノマーの割合は90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上である。また、含有する全ての重合性モノマーが単官能モノマーであってもよい。言い換えると、本発明のインク組成物が多官能モノマーを含有する場合、その含有量は重合性モノマーの総量に対して10質量%未満であり、好ましくは5質量%未満である。重合性モノマーの総量に対する単官能モノマーの割合が90質量%未満であると、得られるインク組成物に十分な柔軟性を付与することができず、延伸性の劣るインク組成物となり、また種々の材料からなる被記録媒体表面に対する密着性も低下する。なお、ここでいう単官能モノマーの量は、芳香族環状構造単官能モノマー、脂環式構造単官能モノマーおよび前記2種以外の構造を有する単官能モノマーの全てを合わせた量を意味する。
【0032】
本発明のインク組成物中に含まれる重合性モノマーの含有量は、インク組成物100質量部に対して、総量で70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、また95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。また、本発明のインク組成物が重合性オリゴマーを含有する場合、その含有量は、インク組成物100質量部に対して好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。重合性モノマーに加えて、重合性オリゴマーを含有することにより、インク組成物に優れた柔軟性および延伸性を付与することができる。
【0033】
〔着色材〕
本発明のインク組成物は着色材を含有する。本発明に用いられる着色材としては、従来公知の各種染料を使用することもできるが、耐候性の観点より、無機顔料、有機顔料のいずれかまたは両方を使用することが好ましい。
基本的に、シアン色を有する顔料、マゼンタ色を有する顔料、イエロー色を有する顔料、黒色顔料および白色顔料などが用いられる。場合によっては、バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジおよびレッド等の特色顔料を用いることにより色再現性に優れた画像を形成することができる。また、一般的な黒色顔料および白色顔料、ならびにシアン、マゼンタおよびイエローの3原色の顔料の他に、目的に応じて、例えば金、銀等の金属光沢顔料や無色または淡色の体質顔料等を含有してもよい。
【0034】
無機顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。
【0035】
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系の有機顔料などが挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子などを有機顔料として用いてもよい。
【0036】
シアン色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4のいずれかまたは両方が好ましい。
【0037】
マゼンダ色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0038】
イエロー色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14C、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214などが挙げられる。これらの中でも、耐候性などの点から、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー213、およびC.I.ピグメントイエロー214からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0039】
黒色顔料としては、具体的には、例えば、三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、SCF;キャボット社製のモナーク、リーガル;デグサ・ヒュルス社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス;東海カーボン社製のトーカブラック;コロンビア社製のラヴェンなどが挙げられる。これらの中でも、三菱化学社製のHCF#2650、HCF#2600、HCF#2350、HCF#2300、MCF#1000、MCF#980、MCF#970、MCF#960、MCF88、LFFMA7、MA8、MA11、MA77、MA100、およびデグサ・ヒュルス社製のプリンテックス95、プリンテックス85、プリンテックス75、プリンテックス55、プリンテックス45からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0040】
白色顔料としては、ピグメントホワイト6,18,21が例示できる。また、白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO
3Pb(OH)
2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO
2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい)を使用してもよい。
【0041】
インク組成物中の着色材の含有量は、色および使用目的により適宜選択すればよいが、一般的にはインク組成物100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、また、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。着色材の含有量が前記範囲にあると、インク組成物の粘度を上昇させることなく流動性を維持し、優れた画像の着色力を有する本発明のインク組成物を得ることができる。
【0042】
着色材として顔料を用いる場合、顔料の分散性を向上させるため、顔料誘導体や顔料分散剤をさらに使用してもよい。顔料誘導体としては、具体的には、例えば、ジアルキルアミノアルキル基を有する顔料誘導体、ジアルキルアミノアルキルスルホン酸アミド基を有する顔料誘導体などが挙げられる。顔料分散剤としては、具体的には、例えば、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物などが挙げられる。これらの中でも、分散安定性の点から、カチオン性基またはアニオン性基を含む高分子化合物が好ましい。市場で入手可能な顔料分散剤としては、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、エフカアディティブズ社製のEFKAなどが挙げられる。
インク組成物中の顔料誘導体および顔料分散剤の含有量は、それぞれ、インク組成物100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0043】
〔光重合開始剤〕
本発明のインク組成物は、低エネルギーの照射手段により重合を開始させるために光重合開始剤を含有することが好ましい。本発明のインク組成物に含有し得る光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド系開始剤、α−アミノアルキルフェノン系開始剤およびチオキサントン系開始剤、アリールアルキルケトン系開始剤、オキシムケトン系開始剤、アシルホスホナート系開始剤、チオ安息香酸S−フェニル系開始剤、チタノセン系開始剤、芳香族ケトン系開始剤、ベンジル系開始剤、キノン誘導体系開始剤、ケトクマリン系開始剤などが挙げられる。中でも、アシルホスフィンオキサイド系開始剤、α−アミノアルキルフェノン系開始剤およびチオキサントン系開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤を含有することが好ましい。このような光重合開始剤を使用することにより、十分な硬化性を付与することができる。特に、α−アミノアルキルフェノン系開始剤とチオキサントン系開始剤とを併用することにより、酸素阻害を受けにくく、より十分な硬化速度を得ることができるため好ましい。
【0044】
アシルホスフィンオキサイド系開始剤としては、具体的には、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどがあげられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。また、市場で入手可能なアシルホスフィンオキサイド系開始剤としては、例えば、BASF社製のDAROCURE TPOなどが挙げられる。
【0045】
α−アミノアルキルフェノン系開始剤としては、具体的には、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メトキシチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−2−オンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。また、市場で入手可能なα−アミノアルキルフェノン系開始剤としては、BASF社製のIRGACURE 369、IRGACURE 907などが挙げられる。
【0046】
チオキサントン系開始剤としては、具体的には、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン,2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数混合して使用してもよい。市場で入手可能なチオキサントン系開始剤としては、日本化薬社製のKAYACURE DETX−S、ダブルボンドケミカル社製のChivacure ITXなどが挙げられる。
【0047】
インク組成物中の光重合開始剤の含有量は、重合性化合物の含有量や種類にもよるが、インク組成物100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。光重合開始剤の含有量が前記範囲にあると、インク組成物に十分な硬化性を付与することができ、インク組成物が低温状態において析出することを防止し得る。
また、光重合開始剤として、α−アミノアルキルフェノン系開始剤とチオキサントン系開始剤とを併用する場合、その比率は、α−アミノアルキルフェノン系開始剤とチオキサントン系開始剤の総量に対して以下の範囲にあることが好ましい。
α−アミノアルキルフェノン系開始剤:40〜99%
チオキサントン系開始剤:1〜60%
【0048】
本発明のインク組成物が、光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系開始剤、α−アミノアルキルフェノン系開始剤およびチオキサントン系開始剤以外の他の光重合開始剤を含有する場合、他の光重合開始剤の含有量は、インク組成物100質量部に対して、総量で5質量部以下であることが好ましい。他の光重合開始剤の含有量が多くなりすぎると反応性が低下する場合がある。
【0049】
〔表面調整剤〕
本発明のインク組成物は、被記録媒体表面に対する濡れ性の向上およびはじきの防止を目的として表面調整剤を含有することが好ましい。本明細書において、「表面調整剤」とは、分子構造中に親水性部位と疎水性部位を有し、添加することによりインク組成物の表面張力を調整し得る物質のことを意味する。
【0050】
本発明のインク組成物に含有し得る表面調整剤としては、具体的に、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性表面調整剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性表面調整剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、およびフッ素系表面調整剤などが挙げられる。これらの表面調整剤を単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
本発明のインク組成物における表面調整剤の含有量は、使用目的により適宜選択し得るが、例えばインク組成物100質量部に対して、総量で0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましい。表面調整剤の量が多すぎると、未溶解物が生じたり、泡立ちを引き起こしたりする場合がある。
【0052】
〔ゲル化防止剤〕
本発明のインク組成物は、ゲル化防止剤を含有することが好ましい。ゲル化防止剤を含有することにより保存安定性を高めることができる。また、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することによるヘッド詰まりを防止する観点からも、ゲル化防止剤を添加することが好ましい。
【0053】
ゲル化防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO(2,2,6,6−テトラ
メチルピペリジン−N-オキシル)、TEMPOL(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル)、クペロンAl等が挙げられる。市販品としては、例えばIRGASTAB UV-10、IRGASTAB UV-22、FIRSTCURE ST−1(ALBEMARLE社製)等が挙げられる。これらのゲル化防止剤は、単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明のインク組成物におけるゲル化防止剤の含有量は、インク組成物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0055】
本発明のインク組成物は、増感剤として増感色素を含有し得る。増感剤を含有することにより光重合開始剤の感度を向上させ得る。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nm〜450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。例えば、多核芳香族類、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、クマリン類などが好ましい。
さらに、共増感剤として、感度を一層向上させる、または酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を用いることもできる。例えばアミン類が挙げられ、具体的にはトリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0056】
本発明のインク組成物は、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性の観点、および非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体を用いたときの乾燥性の観点から、水を実質的に含有しない。
【0057】
本発明のインク組成物においては、例えば、インク組成物の極性や粘度、表面張力、着色材の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、および印字性能の調整などを目的として、溶剤を含有することができる。溶剤としては、本発明のインク組成物を構成する成分、特に重合性モノマーと相溶性を有するものであれば特に制限されず、公知の溶剤を用いることができる。
例えば、アルコール溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、エーテル溶剤および炭化水素溶剤などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルおよびテトラヒドロフランなどを用いることができる。これらの溶剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明のインク組成物が溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、インク組成物100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることが好ましく、その下限値は特に限定されない。本発明のインク組成物においては、溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。
なお、「実質的に含有しない」とは、水や溶剤が不可避的に混入する場合、例えば、製造過程において製造設備等の洗浄に用いた溶剤や原料中に含まれる水や溶剤が不可避的に混入してくる場合等を排除しないことを意味する。
【0059】
本発明のインク組成物に、さらに必要により貯蔵安定剤、導電性塩類およびその他の添加剤を任意成分として配合することができる。その他の添加剤としては、例えばポリマー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を使用することができる。
紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0060】
本発明のインク組成物の調製方法としては、従来公知の調製方法を使用できる。具体的には、例えば、顔料と、重合性モノマー(配合する場合には重合性オリゴマー)の一部あるいは全部と、必要により顔料分散剤とをプレミックスした混合物を調製し、この混合物を分散機により分散させて一次分散体を調製する。分散機としては、例えば、ディスパ;ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミル等の容器駆動媒体ミル;サンドミルなどの高速回転ミル;攪拌槽型ミルなどの媒体攪拌ミルなどが挙げられる。
【0061】
次に、一次分散体に、残りの重合性化合物、重合開始剤および表面調整剤と、必要によりゲル化防止剤などの他の添加剤を添加し、撹拌機を用いて均一に混合する。撹拌機としては、具体的には、例えば、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパ、ホモジナイザーなどが挙げられる。また、ラインミキサーなどの混合機を用いて、インク組成物を混合してもよい。さらに、インク組成物中の粒子をより微細化する目的でビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて、インク組成物を混合してもよい。
【0062】
インクジェット方式により安定的に被記録媒体表面上に吐出するために、本発明のインク組成物の25℃における粘度は、3mPa・s〜35mPa・s程度であることが好ましい。なお、インク組成物の粘度は、回転型粘度計を用いて測定することができる。
【0063】
また、被記録媒体表面に対するインク組成物の広がりやはじき防止の観点から、さらに安定的な連続吐出性を確保する観点から、本発明のインク組成物の表面張力は、25〜33mN/m程度であることが好ましい。インク組成物の表面張力が25mN/mより小さすぎると、被記録媒体表面に対するはじきが生じやすく、画像が描画できない可能性があり、一方、33mN/mを大きく超えると、画像形成時に被記録媒体表面でインク組成物が広がりやすくなり、画像ににじみが生じる可能性がある。また、上記範囲を大きく外れる場合、IJP適性から外れインク自体が吐出不良となる可能性がある。
【0064】
本発明のインク組成物は、硬化後の延伸性に非常に優れており、例えば、オレフィン系フィルム(例えば、SPM100:日本マタイ社製)に印字後、印字膜を延伸した場合に少なくとも700%の伸び率を有する。このため、例えばマーキングフィルム(車両などの装飾に使用されるカーラッピングフィルム等)など印刷後に印字膜が被記録媒体表面とともに延伸される用途や、三次元立体表示部材など印刷物が立体形成される用途に好適である。
【0065】
したがって、本発明の好ましい一態様において、本発明のインク組成物は、画像形成用インクとして使用される。特に、大きな延伸性が必要となる用途や、オーバーコートまたはラミネート加工などの用途において、本発明のインク組成物を画像形成用インクとして好適に使用することができる。
この態様においては、本発明のインク組成物を、被記録媒体表面にインクジェット方式により直接塗布すればよい。
【0066】
また、本発明のインク組成物は、非浸透性の被記録媒体などの種々の材質の被記録媒体に対して優れた密着力を有する。このため、例えば、非浸透性の被記録媒体に対する密着性が比較的低い一般的なインクジェットインク組成物を用いて印刷を行う場合に、本発明のインク組成物をプライマーインクとして使用することができる。
【0067】
本発明のインク組成物をプライマーインクとして使用する場合、例えば、被記録媒体上にインクジェット方式で本発明のインク組成物を付与してプライマー層を形成し、同時または/その直後に、プライマー層上にエネルギー線の照射により硬化する画像形成用インク組成物を吐出し、エネルギー線によりインク組成物を硬化させることにより、画像を形成することができる。
特に、本発明のインク組成物はインクジェット方式により塗布できるため、本発明のインク組成物をプライマーインクとして使用する場合、インクセットを構成する少なくとも1つのインクケースに本発明のインク組成物を充填し、マルチパス方式による印刷工程を実施し、プライマー層の形成と画像形成を一連の工程で行うことができる。当然、別途塗布装置を用いるなどして、予め本発明のインク組成物を被記録媒体上に付与しておき、その後、画像形成用インクにより画像形成を行ってもよい。
【0068】
本発明のインク組成物をプライマーインクとして使用する場合に、本発明のプライマーインクにより形成したプライマー上に画像を形成するために用いる画像形成用インクは、特に限定されるものではなく、従来インクジェット方式に使用される公知のインク組成物を用いることができるが、エネルギー線硬化性の重合性化合物を含み、着色材として顔料を用いたインク組成物を用いることが好ましい。
【0069】
特に、本発明のインク組成物を画像形成用インクとして用いた場合に得られる印刷塗膜表面の強度より高い強度が要求されるような場合においては、被記録媒体上にインクジェット方式で本発明のインク組成物を塗布することによりプライマー層を形成し、その後、硬化後の高い表面硬度を有し、耐薬品性や耐擦過性に優れる画像形成用インクを用いて画像を形成することにより、種々の材質の被記録媒体に対する密着性に優れ、かつ、印刷表面強度の高い印刷物を得ることができる。
以下、上記効果を得るために、プライマーインクとしての本発明のインク組成物とともに使用するのに特に適した画像形成用インク組成物について説明する。
【0070】
画像形成用インク組成物は、少なくとも画像を形成するための組成となるよう構成される。具体的には、例えば、少なくとも1種の重合性化合物を含み、必要により、重合開始剤、着色材、表面調整剤、ゲル化防止剤や他の添加剤等から構成される。
【0071】
重合性化合物としては、例えば、本発明のインク組成物に使用し得るものとして例示した重合性モノマー等の重合性化合物を適宜選択して用いることができる。
画像形成用インク組成物に用いる重合性化合物としては、硬化速度の点から、(メタ)アクリレート化合物および(メタ)アクリルアミド化合物が好ましい。特に、多官能の重合性化合物を主体に用いることが好ましく、四官能以上の(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。さらには、画像形成用インク組成物の粘度低減および接着力向上の観点からは、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレート若しくは二官能(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドを併用することが好ましい。
【0072】
画像形成用インク組成物においては、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物の混合比が、質量比(単官能重合性化合物:多官能重合性化合物)で9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8であることがより好ましく、4:6〜2:8であることがさらに好ましい。単官能重合性化合物と多官能重合性化合物の混合比が上記数値の範囲内であると、適度な硬化速度および粘度を有し、優れた表面硬度を実現し得る画像形成用インク組成物を得ることができる。
重合性化合物の含有量は、画像形成用インク組成物の固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%であることが好ましく、60〜99.0質量%であることが好ましい。
【0073】
重合開始剤としては、例えば、本発明のインク組成物に使用し得るものとして例示した光重合開始剤を、適宜選択して使用することができる。具体的には、硬化性の観点から、芳香族ケトン類が好ましく、ベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物がより好ましく、α−アミノアルキルフェノン化合物およびアシルホスフィンオキサイド化合物が特に好ましい。重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、感度向上の目的で公知の増感剤と併用することもできる。
【0074】
重合開始剤は、画像形成用インク組成物の保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することが好ましい。その含有量は、例えば、画像形成用インク組成物の固形分に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。また、重合開始剤と重合性化合物との含有比は、質量比(重合開始剤:重合性化合物)で、0.5:100〜30:100であることが好ましく、1:100〜15:100であることがより好ましい。
【0075】
画像形成用インク組成物は、着色材、表面調整剤、ゲル化防止剤、ならびに増感剤、共増感剤、貯蔵安定剤、導電性塩類、溶剤、その他の添加剤等を目的に応じて含有してよい。これらの成分としては、本発明のインク組成物に使用し得るものとして例示した各成分を適宜選択して使用することができる。
【0076】
本発明のインク組成物は、種々の材質の被記録媒体に対して使用することができ、種々の材質の被記録媒体表面に対して良好な密着性を示す。
被記録媒体としては、浸透性被記録媒体、非浸透性の被記録媒体および緩浸透性の被記録媒体のいずれを使用することもできる。
【0077】
中でも、本発明の効果は、非浸透性および緩浸透性の被記録媒体においてより顕著に奏される。ここで、本明細書において「浸透性の被記録媒体」とは、例えば10pL(ピコリットル)のインク液滴を被記録媒体表面に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ミリ秒以下である被記録媒体をいい、「非浸透性の被記録媒体」とは、実質的に液滴が浸透しない被記録媒体をいう。なお、「実質的に浸透しない」とは、具体的には、例えばインク液滴を被記録媒体表面に滴下して1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、「緩浸透性の被記録媒体」とは、10pLのインク液滴を被記録媒体表面に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ミリ秒以上である被記録媒体をいう。
【0078】
浸透性の被記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙およびその他インク液滴を吸収できる被記録媒体が挙げられる。非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器および木材等が挙げられる。また本発明においては、機能付加の目的で、これらの材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体を使用することもできる。
【0079】
合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。
【0080】
合成樹脂を用いた場合の被記録媒体の厚みや形状は、特に限定されるものではなく、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれの形状でもよく、また透明又は不透明のいずれであってもよい。
合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状にして用いることも好ましく、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNYフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムおよびPPフィルム等が挙げられる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVAおよびゴム類などを使用できる。
【0081】
樹脂コート紙としては、例えば透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルムおよび紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。
【0082】
金属としては、例えばアルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛およびステンレス等、ならびにこれらの複合材料が挙げられる。
【0083】
本発明のインク組成物の効果をより発揮し得る被記録媒体は、特に浸透性がない被記録媒体、例えば、OPPフィルム、CPPフィルム、PE、PET、PP、金属板、浸透性が低い軟包材、ラミネート紙、コート紙、アート紙などである。
【0084】
インクジェット方式としては、特に限定されるものではないが、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えてインクに照射する放射圧を利用した音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式などが挙げられる。なお、上記インクジェット方式には、フォトインクと呼ばれる低濃度のインクを微小体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、無色透明のインクを用いる方式などが含まれる。
【0085】
本発明において、重合性化合物の重合反応を開始するためのエネルギー付与は、従来公知のエネルギー線の照射により行うことができる。照射手段としては、水銀灯やメタルハライドランプ以外に、紫外線LED、紫外線レーザなどを用いることができる。エネルギー線は、被記録媒体面上にインク組成物を吐出した後、1〜1,000ミリ秒経過するまでの間にインク組成物に照射するのが好ましい。経過時間が1ミリ秒未満の場合、ヘッドと光源との距離が短かすぎて、ヘッドへエネルギー線が照射されて不測の事態を招く虞がある。一方、経過時間が1,000ミリ秒を超えると、多色が利用される場合のインク滲みにより画質が劣化する傾向がある。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下で、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0087】
各実施例および比較例で用いたインク組成物の成分組成を以下の表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
〔インク組成物の調製〕
実施例1:インク組成物
100mlプラスチック製ビンに、表2に示す着色材(MA−8)、分散剤(Sol.33000)、および重合性化合物(HPPA、IBOA、IOA)を表2に示す配合量で計り取り、これに直径0.1mmジルコニアビーズ100部を加えて、この混合物をペイントコンディショナー(東洋精機社製)により2時間分散処理して、一次分散体を得た。次に、得られた一次分散体に、光重合開始剤(IRGACURE907、ChivacureITX)、表面調整剤(Tegorad2100)、およびゲル化防止剤(H−TEMPO)を表2に示す配合量で加え、マグネチックスターラーにより混合物を30分撹拌した。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、インク組成物を調製した。
【0090】
実施例2〜14および比較例1〜6および参考例1および2
表2に示す組成となるように、実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
【0091】
【表2】
【0092】
以上のようにして調製した実施例および比較例の各インク組成物について、下記の方法により粘度および表面張力を測定した。結果を表3に示す。
【0093】
〔粘度〕
R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーン回転数10rpmの条件下で粘度を測定した。
【0094】
〔表面張力〕
全自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−V(協和科学社製)を用いて、25℃における表面張力を測定した。
【0095】
1.画像形成用インクとしての評価
被記録媒体として、以下の4種を用い、各被記録媒体表面に実施例1〜14および比較例1〜6および参考例1および2のインク組成物を塗布し、密着性について評価した。結果を表3に示す。
〔被記録媒体〕
ガラス:MATSUNAMI社製 MICRO SLIDEGLASS S9112
タイル:INAX社製 KEL−GEF
アクリル板:クラレ社製 トレーディング(厚み1.0mm)
銅板:株式会社 光 社製 HC336
【0096】
下記フィルムを被記録媒体として用い、各被記録媒体表面に実施例1〜14および比較例1〜6のおよび参考例1および2のインク組成物を塗布し、伸び率を測定し、各インク組成物の延伸性について評価した。結果を表3に示す。
〔被記録媒体〕
延伸試験用メディア:日本マタイ社製 SPM100(オレフィン系フィルム)
【0097】
〔画像形成方法〕
以下に記載する手順で、各被記録媒体上に各インク組成物を付与して画像を形成し、印刷物を得た。
【0098】
(A)被記録媒体上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いてインクベタ印刷物を作製し、膜厚:3μmのインク層を形成した。このインクジェット記録装置はインク供給系として、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、およびピエゾヘッドを備えている。また、液滴サイズ約7pL、解像度600×600dpiでインクを射出できるよう、駆動周波数10KHzでインクジェット記録装置を駆動した。
(B)上記インク層に、照射手段として紫外線LED(日亜化学工業社製「NLBU21W01−E2」)を用い、トータル照射光量が300mJ/cm
2となるように、紫外線を照射して、上記インク層を硬化した。
【0099】
各印刷物について、下記の方法によりその特性を評価した。結果を表3に示す。
【0100】
〔密着性の評価方法〕
JIS K5600−5−6に規定された「碁盤目試験セロテープ(登録商標)剥離」に従って評価した。評価基準は下記のようにした。
○:碁盤目試験で剥がれ部分が10個以下
△:碁盤目試験で剥がれ部分が11〜20個
×:碁盤目試験で剥がれ部分が21個以上
【0101】
〔伸び率の測定〕
延伸試験用メディア上に、上記(A)および(B)の手順により印刷画像を形成した。得られた印刷物を10mm×70mmの短冊状に切り出し、試験片とした。
試験片の両側10mmの位置を試料台に固定し、引っ張り試験機:SIMADZU社製 AUTOGRAGH AGS−H 100Nを用いて、引っ張り速度10mm/分にて評価した。試験片の印刷部分にひび割れが生じた時点で引っ張りを止め、その伸び率を求めた。評価基準は下記のようにした。結果を表3に示す。
◎:700%まで延伸した時点でフィルムが破断した。フィルムの破断部分以外の印刷部分にひび割れ等は生じていなかった。
○:伸び率200%以上700%未満
×:伸び率200%未満
【0102】
【表3】
【0103】
実施例1〜14の各インク組成物はいずれも、ガラス、タイル、アクリル板および銅板に対して優れた密着性を有することが確認された。また、オレフィンフィルムに画像形成した場合に、高い伸び率を実現することが確認された。
【0104】
2.プライマーインクとしての評価
〔画像層形成用インク組成物の調製〕
100mlプラスチック製ビンに、着色材、分散剤および重合性化合物を表4に示す配合量で計り取り、これに直径0.1mmジルコニアビーズ100部を加えて、この混合物をペイントコンディショナー(東洋精機社製)により2時間分散処理して、一次分散体を得た。次に、得られた一次分散体に、光重合開始剤、表面調整剤、およびゲル化防止剤を表4に示す配合量で加え、マグネチックスターラーにより混合物を30分撹拌した。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、画像形成用インク組成物P−1〜P−5を調製した。
【0105】
【表4】
【0106】
〔画像形成方法〕
ガラス、タイル、アクリル板および銅板の各被記録媒体上に、上記(A)に記載する手順にしたがって実施例1のインク組成物を付与し、上記(B)に記載の手順により付与したインク組成物を硬化し、プライマー層を形成した。その後、このプライマー層上に、上記(A)および(B)に記載の手順にしたがって画像形成用インクP−1を用いて画像を形成し、印刷物を得た。同様にして、各画像形成用インク(P−2〜P−5)を用いて画像を形成し、印刷物を得た。
さらに、実施例5のインク組成物についても、上記方法と同様にして、各画像形成用インクにより画像を形成し、印刷物を得た。
【0107】
得られた印刷表面について密着性を評価した。評価は、上述した画像形成用インク組成物における評価方法と同様の方法で行った。実施例1のインク組成物による結果を表5に、実施例5のインク組成物による結果を表6に示す。
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
本発明のインク組成物をプライマーインクとして使用した場合、ガラス、タイル、アクリル板および銅板のいずれに対しても優れた密着性を示すことが確認された。