(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コントローラによって制御される電源と、少なくとも超音波ホーン、電源に結合された超音波トランスデューサ、および超音波ホーンをトランスデューサに結合するブースタを含む超音波スタックと、を有する超音波溶接機を制御する方法であって、
スタック熱エネルギーパラメータの値が少なくとも第1の所定の閾値だけ変化しなかった場合、溶接パラメータの値を維持し、前回溶接パラメータの値が変更された時点から、スタック熱エネルギーパラメータの値が第2の所定の閾値未満で少なくとも第1の所定の閾値だけ変化した場合、次の溶接サイクルを開始する前の超音波スタック内の熱エネルギーを示すスタック熱エネルギーパラメータの値に基づいて、次の溶接サイクルの溶接パラメータの値をコントローラによって設定することにより、超音波溶接機の連続動作中の溶接サイクルの溶接を制御するために使用される溶接パラメータを動的に調整するステップと、
設定された溶接パラメータに基づいてコントローラによる電力供給を制御して、次の溶接サイクルにおける溶接を制御するステップと、
を含む方法。
スタック熱エネルギーパラメータが、超音波ホーンの温度、超音波スタックの共振周波数、および電源の駆動周波数と超音波ホーンが振動している周波数との間の位相差のいずれかである、請求項1に記載の方法。
スタック熱エネルギーパラメータが、超音波ホーンの温度、超音波スタックの共振周波数、および電源の駆動周波数と超音波ホーンが振動している周波数との間の位相差のいずれかである、請求項8に記載の超音波溶接機。
【背景技術】
【0003】
このセクションは、本開示に関する背景情報を提供するが、これは必ずしも先行技術であるとは限らない。
【0004】
典型的な超音波プラスチック用溶接機100のモデルを
図1に示す。超音波プラスチック用溶接機100の典型的な構成要素は、超音波トランスデューサ102と、ブースタ104と、超音波ホーン106とを有する超音波スタック101を含む。超音波溶接技術分野の当業者に一般的に理解されているように、超音波ホーンは、超音波トランスデューサからの機械的エネルギーを加工物に伝達する金属棒である。超音波ホーンは、典型的には、超音波トランスデューサによって生成される共振周波数における半波長の長さである。20kHzから60kHzの周波数の電源122からの電気エネルギーは、超音波トランスデューサ102によって機械的エネルギーに変換される。超音波トランスデューサ102で変換された機械的エネルギーは、ブースタ104および超音波ホーン106を介して、溶接される2つの部品112、114のような印加部108に伝達される。ブースタ104および超音波ホーン106は、機械的エネルギーを伝達すると共に、超音波トランスデューサ102からの機械的振動を利得係数で変換する機能を果たす。超音波溶接機100は、超音波溶接機100の適用可能な構成要素に結合された入力部および出力部を有するコントローラ124によって制御される。電源122はコントローラ124(
図1に示されているように)を含み得る、またはコントローラ124は電源122とは別個のデバイスとし得ることを理解されたい。
【0005】
ホーンチップ110に生じる機械的振動は、部品112、114(以下の例ではプラスチック部品である)を溶接する作業を行う動作である。ホーンチップ110は、チタンまたは他の高強度の硬質材料から製造され得る。溶接される部品112、114は、アンビル120上に一緒に配置されるなど、ホーンチップ110に隣接して配置される。ホーンチップ110は、溶接される上部部品112と接触する。超音波ホーン106は、プラスチック片に垂直方向の振動を付与するように振動する。すなわち、超音波ホーンは、プラスチック部品を互いに対して振動圧縮/減圧させ、溶接界面で互いに当接するプラスチック部品の表面を加熱し、最終的に共に溶融させる。
【0006】
ほとんどの超音波溶接プロセスは、溶接パラメータによって制御されるプロセスである。溶接パラメータは、溶接される部品への溶接エネルギー(機械的振動)の印加を停止するタイミングを決定するのに使用されるパラメータである。一例では、溶接パラメータは時間であり、この場合、溶接プロセスは、溶接パラメータが設定された所定の時間にわたって溶接される部品に機械的振動が印加される時間制御プロセスである。別の例では、溶接パラメータはエネルギーであり、この場合、溶接プロセスは、溶接パラメータが設定された所定量のエネルギーが利用されるまで溶接される部品に機械的振動が印加されるエネルギー制御プロセスである。別の例では、溶接パラメータは圧潰距離であり、この場合、溶接プロセスは、溶接パラメータが設定された所定の距離で一緒に圧潰するまで溶接される部品に機械的振動が印加される圧潰距離プロセスによる溶接である。この点に関して、圧潰距離は、溶接される2つの部品が一緒に溶融し始めると、超音波ホーンチップがアンビルに向かって移動する距離によって決定されることが多い。絶対距離、相対距離、周波数、振幅、振幅プロファイル、力、力プロファイル、出力、温度、および接近速度などの他の溶接パラメータが利用され得ることを理解されたい。
【0007】
自動化設備に使用される超音波溶接機は、通常、最適な動作のために安定した動作条件下で使用される。ランプアップ段階後にスタックが安定した温度に達したときに、安定した動作条件が達成される。ランプアップ段階は、アイドリングまたはシャットダウン後の時間であり、溶接設備は、スタックが十分な溶接を行って安定した温度に達するまで、生産サイクルの連続生産で最初の部品を溶接する。ランプアップ段階の開始時に、スタックはより低い温度、例えば、溶接機が設置される環境の温度を有する。ランプアップ段階はスタックが安定した温度に達するまで継続されるので、スタックは予熱される。ランプアップ段階は、スタックが安定した温度に達すると終了する。
【0008】
定常状態条件とは、超音波スタックが公称安定温度に達したときのことであり、典型的には、超音波スタックが公称安定温度に達するために超音波溶接機が十分な数の溶接動作を行った後に発生すると考えられる。しかしながら、超音波溶接機は、典型的には、その超音波スタックの温度が、それが設置されている区域の周囲温度の変化などにより公称安定温度に達した後であっても依然として変化し得るので、決して真の定常状態条件下にはない。例えば、超音波溶接機が設置されている工場の区域の周囲温度は、夕方よりも早朝の時間帯の方が数度低い場合がある。周囲温度のこの差は、超音波溶接機が1日を通して連続的に稼働していても、超音波スタックの温度に影響を与える。
【0009】
超音波スタックの温度が変化するにつれて、超音波スタック内の熱エネルギーも変化する。超音波スタックの温度の上昇は、超音波スタックにおける熱エネルギーの増加をもたらし、逆に、超音波スタックの温度の低下は、超音波スタックにおける熱エネルギーの減少をもたらす。超音波スタック内の熱エネルギーの変動は、超音波溶接機の溶接結果の変動を引き起こし得る。この点に関して、溶接プロセスに使用される溶接パラメータは、典型的には、超音波スタックが定常状態条件下にあるときに設定される。したがって、超音波スタック内の熱エネルギーが超音波スタックの温度の変動によって変化するので、結果として溶接結果にばらつきが生じ得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0019】
例示的な実施形態を、添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0020】
以下に、
図1の先行技術の超音波溶接機100について説明する。この点に関して、以下に説明する本開示の態様に従う超音波溶接機100の制御方法は、超音波溶接機100のような超音波溶接機がこれまで制御されていた方法とは異なること、および
図1が先行技術であるという表示は、以下に説明する制御方法が従来技術の制御方法であることを意味するものではないことを理解されたい。
【0021】
本開示の一態様によれば、超音波溶接機の動作中に、超音波スタック内の熱エネルギーを示すパラメータが監視される。超音波スタック内の熱エネルギーを示すこのパラメータは、本明細書では、超音波スタック熱エネルギーパラメータ(ST
HE)と呼ばれる。次の溶接サイクルの開始時に超音波スタック内の熱エネルギーを示すST
HEの値に基づいて、この次の溶接サイクル中に溶接を制御するために使用される溶接パラメータが設定される。この点に関して、ST
HEの値は、次の溶接サイクルの開始時ちょうどに取得される必要はなく、直前の溶接サイクルの終了時または直前の溶接サイクルの溶接の終了時のような次の溶接サイクルの開始直前の時点で取得され得る。
【0022】
また、所定数の連続する溶接サイクルにおける各溶接サイクル中のST
HEが取得され、平均化され、この平均値(「ST
AVG」)が溶接パラメータを設定するために使用される。例えば、このような各ST
HEは、例示的に、適用可能な溶接サイクルの溶接の終了時に取得される。一態様では、ST
AVGは、溶接パラメータの値が設定されている次の溶接サイクルの直前の所定数の連続溶接サイクルで取得されたST
HE値のローリング平均である。一態様では、ローリング平均の代わりに、ST
AVGは、所定数の溶接サイクルが終了するたびに計算される。超音波溶接機100は、例示的には、毎分数百回の溶接サイクルを実行することができ、すなわち溶接サイクル時間が非常に短い大容積超音波溶接機であることを理解されたい。したがって、超音波スタックが公称定常状態温度に達すると、1つの溶接サイクルから次の連続溶接サイクルへの超音波スタックの熱エネルギーの変化はほとんどない。
【0023】
一態様では、溶接パラメータは、ST
HEまたはST
AVG(適用可能であれば)が少なくとも第1の所定の閾値(P1)だけ変化しない場合には、調整されない。超音波スタック内の熱エネルギーの変化が十分に小さい場合、この変化は溶接性能にあまり影響を与えない。したがって、第1の所定の閾値は、変化を補償することが望ましい溶接性能の十分な変化をもたらす超音波スタック内の熱エネルギーの十分な変化があったことを反映するように設定される。この第1の所定の閾値は、例示的には、実験的に決定され得る。
【0024】
一態様では、溶接パラメータは、ST
HEまたはST
AVG(適用可能であれば)が第2の所定の閾値(P2)より多く変化する場合にも調整されない。この態様は、異常に高い値など、ST
HE値で発生し得る異常を説明する。この第2の所定の閾値(P2)も同様に、例示的には、実験的に決定され得る。
【0025】
スタック熱エネルギーパラメータST
HEは、超音波スタック内の熱エネルギーを示す任意のパラメータとし得る。一例として、限定的ではないが、これらのパラメータには、超音波スタック(特に、超音波ホーン)の温度、超音波スタック(特に、超音波ホーン)の共振周波数、および電源の駆動周波数と超音波スタック(特に、超音波ホーン)が振動しているときの周波数との位相差が含まれる。
【0026】
図2Aは、溶接パラメータの上述の設定の制御ルーチン(例示的には、ランプアップ期間の初めに開始する)のフローチャートである。制御ルーチンは200から開始する。溶接サイクルを実行する前の202において、制御ルーチンは、ST
HEの現在の値を取得する。204において、制御ルーチンは、ST
HEのこの現在の値に基づいて最初の溶接サイクルに使用される溶接パラメータ(WP)の値を設定し、この値は現在の溶接パラメータ値(WP
CV)となる。本明細書で使用される場合、現在の溶接パラメータ値WP
CVという用語は、溶接サイクルの溶接を制御するために使用される溶接パラメータの値を指すために使用される。
【0027】
206において、制御ルーチンは、超音波溶接機100に現在の溶接パラメータ値WP
CVを使用して所定数の溶接サイクルを実行させて溶接サイクルの溶接を制御し、各溶接サイクルの適切な時点(例えば、各溶接サイクルで行われた溶接の終了時)でST
HEの値を取得する。206において、制御ルーチンはさらに、ST
HEのこれらの値を平均化して、現在の平均値ST
AVGCを取得する。208において、制御ルーチンは、現在の平均値ST
AVGCが、上述したように、最初の溶接サイクルのWP
CVを設定するために使用されたST
HEの値から少なくとも第1の所定の閾値(P1)以上第2の所定の閾値(P2)未満だけ変化したかどうかをチェックする。そのように変化した場合、制御ルーチンは210に進み、現在の平均値ST
AVGCに基づいて次の溶接サイクルに使用される現在の溶接パラメータ値WP
CVを設定し、次に212に進む。そのように変化しなかった場合、現在の溶接パラメータ値WP
CVは変更されず、制御ルーチンは212に進む。
【0028】
212において、制御ルーチンは、超音波溶接機100にWP
CVを使用して溶接サイクルを実行させ、ST
HEの現在の値を取得し、例えば、ST
HEの最も古い値を現在の溶接サイクル中に取得されたST
HEの値と置き換えることによって、現在の平均値ST
AVGCを更新し、次にST
AVGCを再計算する。次に、制御ルーチンは、214に進み、上述したように、現在の平均値ST
AVGCが、現在の溶接パラメータ値WP
CVを設定するために使用された前のST
AVGから、少なくとも第1の所定の閾値(P1)以上第2の所定の閾値(P2)未満だけ変化したかどうかをチェックする。もしそのように変化した場合、制御ルーチンは216に進み、ST
AVGCに基づいて現在の溶接パラメータ値WP
CVを設定し、次に218に進む。現在の平均値ST
AVGCが現在の溶接パラメータ値WP
CVを設定するために使用された前のST
AVGから少なくとも第1の所定の閾値(P1)以上第2の所定の閾値(P2)未満だけ変化しなかった場合、制御ルーチンは分岐して218に進み、別の溶接サイクルが実行されるべきか、または超音波溶接機がアイドリング状態に移行されるべきかをチェックする。別の溶接サイクルが実行される場合、制御ルーチンは分岐して212に戻る。別の溶接サイクルが実行されない場合、制御ルーチンは分岐して220に進み、超音波溶接機100がアイドリング状態になる。
【0029】
図2Bは、
図2Aの制御ルーチンの変形例である。制御ルーチンは、各溶接サイクルの後にST
AVGCを再計算して次の溶接サイクルに使用される溶接パラメータの値を変更すべきかどうかを決定するのではなく、
図2Bのブロック212’に示されているように、各所定数の溶接サイクルの後にこれを行う。
【0030】
図2Cは、
図2Aの制御ルーチンの別の変形例であって、
図2Cのブロック206”、208”および210”に示されているように、ST
AVGの代わりにST
HEがWP
CVを設定するのに使用される。
【0031】
一態様では、超音波ホーンの共振周波数がST
HEとして使用される。
図1を参照すると、先行技術で既知であるように、超音波ホーンの温度が上昇すると、その共振周波数は減少し、逆に、超音波ホーンの温度が低下すると、その共振周波数は増加する。また、先行技術で既知であるように、電源122は、各溶接サイクルの溶接期間中に超音波ホーン106の共振周波数を監視し、電源122が超音波トランスデューサ102を駆動している周波数(以降、駆動周波数と呼ぶ)を調整して、この駆動周波数を超音波ホーン106の共振周波数で維持する。溶接期間は、現在の溶接サイクル中に溶接されている部品に溶接エネルギーが印加されている期間である。
【0032】
本開示の一態様によれば、超音波ホーン106の共振周波数(ST
HEパラメータとして使用される)が増加または減少する場合、電源122は、現在の溶接パラメータ値WP
CVで対応する変更を行う。一態様では、電源122は、超音波ホーン106の共振周波数が少なくとも所定の第1の閾値(P1)だけ増加または減少する場合にのみ、現在の溶接パラメータ値WP
CVの対応する変更を行う。一態様では、電源122は、所定数の溶接サイクルの各溶接の終了時の超音波ホーンの共振周波数の平均値が少なくとも第1の所定の閾値(P1)だけ増加または減少した場合にのみ、現在の溶接パラメータ値WP
CVの対応する変更を行う。この所定数の溶接サイクルは、溶接用途、超音波溶接機が設置される環境、超音波溶接機が動作しているときのサイクル速度など、超音波ホーンの温度変化の速さの程度に影響を与えるパラメータに依存することを理解されたい。一態様では、この所定数の溶接サイクルは、ヒューリスティックに決定される。一態様では、この平均値は、所定数の直前の溶接サイクルで取得された超音波ホーンの共振周波数のローリング平均である。一態様では、各溶接サイクルの後および次の溶接サイクルを開始する前に、電源122は、以下でより詳細に説明するように、現在の溶接終了周波数またはシーク周波数など、超音波ホーン106の現在の共振周波数、または場合によっては共振周波数の現在の平均値に基づいて、現在の溶接パラメータ値WP
CVの値を設定する。本明細書で使用される場合、溶接終了周波数は、溶接期間の終了時の超音波ホーン106の共振周波数であり、現在の溶接終了周波数は、次の溶接サイクルの直前の直近で完了した溶接サイクルの溶接期間の終了時の超音波ホーン106の共振周波数であり、以前の溶接終了周波数は、直近で完了した溶接サイクルの直前に完了した溶接サイクルの溶接期間の終了時の超音波ホーン106の共振周波数である。
【0033】
一態様では、現在の溶接終了周波数が直前の溶接終了周波数から少なくとも所定の第1の閾値(P1)量だけ変化した場合、電源122によって設定された現在の溶接パラメータ値WP
CVは、現在の溶接終了周波数に基づく値に変更される。一態様では、次の溶接サイクルの直前の所定数の連続する溶接サイクルの溶接終了周波数の平均値が、前回溶接パラメータの値の設定に使用された溶接終了周波数の平均値から少なくとも第1の所定の閾値(P1)だけ変化した場合、電源122によって設定された現在の溶接パラメータ値WP
CVの値は、溶接終了周波数の現在の平均値に基づく値に変更される。WP
CVは、次に、次の溶接サイクルの溶接パラメータとして電源122によって使用される。一態様では、最初の溶接サイクルに使用する現在の溶接パラメータ値WP
CVの値を決定するために、最初の溶接サイクルの前に実行されるシークによって決定されるシーク周波数が超音波ホーン106の共振周波数として使用される。
【0034】
一態様では、現在の溶接終了周波数または溶接終了周波数の平均値(適用可能であれば)が少なくとも第2の所定の閾値だけ変化した場合、現在の溶接パラメータ値WP
CVは変更されない。
【0035】
一態様では、超音波ホーン106の共振周波数(または共振周波数の平均値)と溶接パラメータの値との間の対応関係は、例示的には、コントローラ124のような電源122にプログラムされる。この対応関係は、特定部分について超音波溶接機100のプロファイリング手順を実行することによって決定される。一態様では、シーク周波数と溶接パラメータの値との間の対応関係と、溶接終了周波数と溶接パラメータの値との間の対応関係が共に、電源122にプログラムされる。この態様では、シーク周波数と溶接パラメータの値との対応関係は、シーク周波数が超音波ホーンの共振周波数として使用される場合に、現在の溶接パラメータ値WP
CVに使用する値を選択する際に使用され、溶接終了周波数と溶接パラメータの値との対応関係は、溶接終了周波数が超音波ホーンの共振周波数として使用される場合に、現在の溶接パラメータ値WP
CVに使用する値を選択する際に使用される。このことは、すなわち、ST
HE値(またはST
HE値の平均値)と溶接パラメータの値との間の対応関係が決定され、例示的には、コントローラ124のように電源122にプログラムされることは、ST
HEに使用されるその他のパラメータにも同様に適用されることを理解されたい。
【0036】
一態様では、超音波ホーンの共振周波数におけるHz変化当たりの溶接パラメータの値の変化(本明細書ではΔWP/Hzと呼ぶ)が決定され、電源122にプログラムされる。現在の溶接パラメータ値WP
CVが変更されるたびに、現在の溶接パラメータ値WP
CVがΔWP*ΔHzだけ増減される。ここで、ΔHzは超音波ホーンの共振周波数が変化した量である。これはST
HEに使用されるその他のパラメータにも同様に適用され、このときの関係は、より具体的にはΔWP*ΔST
HEであり、ここでΔST
HEはスタック熱エネルギーパラメータΔST
HEが変化した量であることを理解されたい。ΔST
HEの符号は、超音波スタック内の熱エネルギーが増加したときに負となり、その結果、現在の溶接パラメータ値WP
CVの値が減少し、超音波スタック内の熱エネルギーが減少したときに正となり、その結果、現在の溶接パラメータ値WP
CVの値が増加することを理解されたい。例えば、超音波ホーンの共振周波数がST
HEとして使用されている場合、ΔWP*ΔHzは正となり、その結果、超音波ホーンの共振周波数が増加するとWP
CVが増加し、超音波ホーンの共振周波数が減少するとWP
CVが減少する。
【0037】
このようなプロファイリング手順の一例は、超音波溶接機100上で実行されるものとして説明されるが、実験室の超音波溶接機のように、超音波溶接機100と同じように構成された別個の超音波溶接機で実行され得ることを理解されたい。例示的なプロファイリング手順は、例示的には、超音波溶接機100のランプアップ期間で実行される。プロファイリング手順は、ランプアップ期間後の期間にわたって継続され、例えば、超音波スタック101の温度が最大動作温度に達するまで継続し得ることを理解されたい。
【0038】
例示的なプロファイリング手順の間、部品112、114のような溶接される部品の最初の良好な溶接は、20℃のような周囲温度で超音波溶接機100によって行われる。この最初の良好な溶接の溶接パラメータ(本明細書ではWP
Aと呼ぶ)、この溶接の溶接期間の終了時の溶接終了周波数(本明細書ではWEF
Aと呼ぶ)、およびこの溶接のシーク周波数(本明細書ではSF
Aと呼ぶ)が記録される。当技術分野で既知のシークとは、超音波溶接機100の超音波スタック101を空気中で作動させることである。すなわち、電源122は、超音波トランスデューサ102を駆動周波数で、超音波ホーン106は任意の部品112、114またはアンビル120と接触していない状態で駆動することにより、超音波スタック101を励振する。この最初の良好な溶接の溶接サイクルの前にシークが実行され、シーク周波数が記録される。シーク周波数はシーク終了時の超音波ホーン106の共振周波数である。次に、超音波溶接機100は、超音波スタック101が定常状態(つまり、溶接サイクル間で超音波ホーン106の共振周波数のさらなる周波数低下がない状態)に達するまで部品112、114を溶接している一連の溶接サイクルを通して段階的に作動される。各ステップ後の溶接終了周波数は、シーク周波数として記録される。各ステップは、(超音波スタック101の加熱速度に応じて変化し得る)例えば、1分などの時間の増分であり得る。各ステップは、例えば、溶接サイクルであり得る。溶接終了周波数(本明細書ではWEF
Bと呼ぶ)およびシーク周波数(SF
B)と同様に、超音波スタック101が定常状態に達すると、溶接パラメータ(本明細書ではWP
Bと呼ぶ)が記録される。
【0039】
次に、2つの特性曲線、つまり、経時的な溶接パラメータ対溶接終了周波数(WP対WEF)および経時的な溶接パラメータ対シーク周波数(WP対SF)が作成される。両方の曲線は線形関数のように見える。両方の曲線の傾きは、どの時点でも同様になる。2つの曲線の間には、一定であり、スタックに依存しない周波数差が存在する。
【0040】
WP
AとWP
Bとの差(WP
A−WP
B)は、ランプアップ期間全体にわたる溶接パラメータ設定の全範囲を定義する。WEF
AとWEF
Bの差は、ランプアップ期間中の超音波ホーン106の共振周波数の周波数シフトの全範囲を定義する。ランプアップ期間中の超音波ホーン106の共振周波数のヘルツシフト(ΔHz)当たりの溶接パラメータの変化(ΔWP)の設定値は、ΔWP=(WP
A−WP
B)/WEF
A−WEF
B)によって定義される。超音波ホーン106の溶接終了周波数(WEF
S)および超音波ホーン106のシーク周波数(SF
S)に対応する溶接パラメータ(WP)の値のセットは、上述の特性曲線を作成するためにΔWPを使用して設定される。したがって、上述の2つの特性曲線に反映されるように、溶接終了周波数とシーク周波数の両方に基づいてランプアップ期間中に、超音波ホーン106の周波数シフトの全範囲にわたって超音波ホーン106の各共振周波数に対応する異なる溶接パラメータ(WP)値が存在する。代替的には、上述のように、ΔWP/Hzは、超音波溶接機100の動作中の溶接パラメータの値に対する変更を決定する際に使用される。
【0041】
一態様では、超音波溶接機100が、長い期間アイドリング状態になった後に部品の溶接を開始するときに、または最初に部品の溶接を開始するときに、最初の溶接サイクルの前にシークが実行され、シーク周波数が溶接パラメータの値(WP)を設定するためにシーク周波数が使用される。すなわち、電源122にプログラムされたこのシーク周波数に対応する溶接パラメータ(WP)は、最初の溶接サイクルの溶接パラメータ(WP)として電源122によって使用される。その後、電源122は、直近で完了した溶接期間の溶接終了周波数に基づいて、次の溶接サイクルの溶接パラメータ(WP)を設定する。
【0042】
図3は、ST
HEとして超音波ホーン106の共振周波数を用いる現在の溶接パラメータ値WP
CVの上述の設定の制御ルーチンのフローチャートである。制御ルーチンは300で始まる。溶接サイクルを実行する前に、302において、制御ルーチンは、電源122にシークを実行させ、シーク周波数を決定させる。304において、制御ルーチンは、最初の溶接サイクルに使用される現在の溶接パラメータ値WP
CVをこのシーク周波数に基づく値に設定し、306において、超音波溶接機100に、溶接サイクル中の溶接を制御するためにWP
CVを使用して溶接サイクルを実行させる。この溶接サイクルの溶接期間中の超音波ホーン106の共振周波数も、現在の溶接終了周波数を含めて監視される。308において、制御ルーチンは、現在の溶接終了周波数が、前回WP
CVを設定するために使用された溶接終了周波数から少なくとも第1の所定の閾値(P1)以上第2の所定の閾値(P2)未満だけ変化したかどうかをチェックする。そのように変化した場合、制御ルーチンは312に進み、次の溶接サイクルに使用される現在の溶接パラメータ値WP
CVを、この現在の溶接終了周波数に基づく値に設定し、次に、312に進む。308において、現在の溶接終了周波数が前回WP
CVを設定するために使用された溶接終了周波数から少なくとも第1の所定の閾値(P1)以上第2の所定の閾値(P2)未満だけ変化していない場合、制御ルーチンは分岐して312に進む。312において、制御ルーチンは、別の溶接サイクルを実行すべきか、または超音波溶接機がアイドリング状態に移行されるべきかをチェックする。別の溶接サイクルを実行する必要がある場合、制御ルーチンは分岐して306に進む。別の溶接サイクルを実行する必要がない場合には、制御ルーチンは分岐して312に進み、超音波溶接機100はアイドリング状態になる。変形例では、所定数の連続する溶接サイクルの溶接終了周波数の平均値は、
図3の仮想線ブロック308’によって示されるように、次の溶接サイクルに使用される現在の溶接パラメータ値WP
CVを設定するのに使用される。
【0043】
実施形態の上述の説明は、例示および説明のために提供されたものである。上述の説明は、包括的であること、または本開示を限定することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能であれば、交換可能であり、特に示されていないまたは説明されていない場合でも、選択された実施形態で使用され得る。また、特定の実施形態の個々の要素または特徴は、さまざまに変化し得る。そのような変形例は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、そのような変更の全ては、本開示の範囲内に含まれるものとする。
【0044】
本明細書で使用される場合、コントローラ、制御モジュール、制御システムなどの用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、組み合わせ論理回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ(共有、専用、またはグループ)、プログラマブル・ロジック・コントローラ、コンピュータベースの制御システムを含むプロセッサベースの制御システム、PIDコントローラなどのプロセスコントローラ、または説明された機能を提供するか、または本明細書に説明されているようにソフトウェアによってプログラムされたときに上述の機能を提供する他の適切なハードウェアコンポーネントなどのプログラマブル制御システム、またはシステムオンチップ(system−on−chip)のような、上述の一部または全ての組み合わせを指す、その一部である、または含み得る。用語モジュールは、プロセッサによって実行されるコードを記憶するメモリ(共有、専用、またはグループ)を含み得る。そのようなデバイスが機能を実行すると述べる場合、デバイスは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせなどの適切なロジックによって機能を実行するように構成されることを理解されたい。
【0045】
「内側」、「外側」、「真下」、「下部」、「下方」、「上部」、「上方」などのような空間的に相対的な用語は、本明細書では、図に示されているように、1つの要素または特徴の、別の要素(単数または複数)または特徴(単数または複数)に対する関係を示す説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きの他に、使用または操作時のデバイスの異なる向きを含むことを意図する場合がある。例えば、図中のデバイスがひっくり返されている場合、他の要素または特徴の「下部」または「真下」と述べられた要素は、他の要素または特徴の「上部」を向いていることになる。したがって、「下部」用語の例は、上部および下部の両方の向きを含み得る。デバイスは、それ以外の(90度または他の向きに回転された)向きである場合もあり、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語はそれに従って解釈される。