(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644077
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20200130BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20200130BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
B23Q3/155 E
B23Q17/24 B
B23Q17/09 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-542619(P2017-542619)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2015077836
(87)【国際公開番号】WO2017056264
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2017年12月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】笠原 忠
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−240251(JP,A)
【文献】
特開2015−131357(JP,A)
【文献】
特開2008−246602(JP,A)
【文献】
実開昭63−197041(JP,U)
【文献】
実開平06−046848(JP,U)
【文献】
特開平02−284841(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0028742(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155
B23Q 17/09
B23Q 17/24
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具交換装置を有し、工具を順次交換してワークを加工する工作機械において、
CAMシステムから出力された加工プログラムと工具の基本データとを入力する入力部と、
前記入力部から入力された前記工具の基本データを工具番号毎に記憶する記憶部と、
前記工具交換装置の工具マガジンに装填された工具の寸法を測定する工具測定装置と、
前記記憶部に記憶された前記工具の基本データと前記測定装置で測定した実測データとを比較し、両者の工具寸法の差が予め定めた許容範囲を超えている場合に、測定された工具が所望の工具とは異なると判定する判定部と、
工具のステータスを表示する表示部と、
を具備し、
前記工具測定装置は、工具が前記工具マガジンに装填された後でかつ加工に使用される前の第1の時間中に測定し、前記判定部は、前記工具の基本データと前記第1の時間中に測定された実測データとの間の工具寸法の差が前記許容範囲を超えている場合、該工具が誤って装填された不正な工具であると判定して前記表示部に第1の警告信号を送り、
前記工具測定装置は、工具が加工に使用された後でかつ前記工具マガジンに戻される前の第2の時間中に測定し、前記判定部は、前記工具の基本データと前記第2の時間中に測定された実測データとの間の工具寸法の差が前記許容範囲を超えている場合、該工具を破損工具と判定して、前記表示部に第2の警告信号を送り、
前記表示部は、前記第1の警告信号に基づいて工具のステータスの表示を工具が不正工具であることを示す表示に変更し、前記第2の警告信号に基づいて工具のステータスの表示を工具が破損工具であることを示す表示に変更することを特徴とした工作機械。
【請求項2】
前記第1の警告信号が発せられたにもかかわらず前記加工プログラムが実行された場合は、前記不正な工具で加工が行われる前に加工を中断する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第2の警告信号が発せられたとき、前記破損工具と判定された工具の予備工具であって、前記工具マガジンに予め装填されていた予備工具に自動的に交換して加工プログラムを実行する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
工具が切削加工に用いられたときの加工時間あるいは移動距離を積算して記憶し、前記加工時間あるいは前記移動距離が予め定められた値を超えたとき、工具が寿命に達したことを表す第3の警告信号を発する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工具測定装置は、撮像装置を備える撮像式の工具測定装置であり、
前記撮像装置は、該工作機械の工具収容室内に前記工具交換装置とともに配設されてワークの撮像を行う、請求項4に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具交換装置を有する工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタなどの工具とワークとを相対的に移動してワークの加工を行う工作機械では、1つのワークの加工において複数種類の工具を用いる。複数種類の工具を用いて加工を行う場合には、工具を交換する工具交換装置を備える工作機械が用いられている。工具交換装置は、加工プログラムに従って自動的に工具を交換することができる。
【0003】
加工プログラムで指定された加工を実行するためには、加工プログラムを作成する際に想定した工具の形状と工具交換装置の工具マガジンから選択されて実際に加工に使用される工具の形状とが一致しなければならない。しかしながら、人為的なミスにより、加工プログラム作成時に想定していた工具と異なった形状の工具が工具マガジンに装填されている場合もある。工具の形状が一致していないことを検出できずに、加工が進行すると、不良品が生み出され、さらには工作機械側に損傷を与えることもある。
【0004】
特許文献1には、上述したような工具の不一致を検出するために、加工プログラム中の工具番号と工具属性情報とからなるプログラム内工具情報テーブルと、工具マガジンに収納されている工具の工具番号と工具属性情報とからなるマガジン内工具情報テーブルとを比較することによって工具属性情報が不一致となる工具番号の加工工具を検出する使用工具のチェック方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−113836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された方法によると、プログラム内工具情報テーブルとマガジン内工具情報テーブルというデータにおける工具の不一致を検出することができる。しかしながら、特許文献1の方法によると、誤って指定外の工具が工具マガジンに装填された場合には、それを検出することはできない。あるいは工具の切刃に欠損が生じた場合にも、その異常を加工前に検出することができない。
【0007】
加工前に加工プログラムと工具のデータと工具マガジンに装填した実物の工具との間で不一致がある状態で加工をすると、工作機械に深刻なダメージを与えたり、ワークの不良が発生したり、不正な工具が加工プログラムで呼びだされて異常停止するまでの加工時間が無駄になったりする。また、自動運転中に異常停止が発生すれば、次にオペレータが工作機械の近くに来るまでは機械が停止したままとなり、工作機械の近くに来るまでは機械が停止したままとなり、工作機械の稼働率が低下する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであって、実際に加工に使用される工具が適切なものであるか否かを判定することのできる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本発明よれば、工具交換装置を有し、工具を順次交換してワークを加工する工作機械であって、CAMシステムから出力された加工プログラムと工具の基本データとを入力する入力部と、入力部から入力された工具の基本データを工具番号毎に記憶する記憶部と、工具交換装置の工具マガジンに装填された工具の寸法を測定する工具測定装置と、記憶部に記憶された工具の基本データと測定装置で測定した実測データとを比較し、両者の工具寸法の差が予め定めた許容範囲を超えている場合に、測定された工具が所望の工具とは異なると判定する判定部と、を具備する工作機械が提供される。
【0010】
これにより、加工プログラムで想定していた工具と形状が異なる工具で加工をしてしまう前に、加工プログラムと工具のデータと工具マガジンに装填した実物の工具との間で不一致を検出できる。
【0011】
本発明では、工具測定装置は、工具が工具マガジンに装填された後でかつ加工に使用される前に測定し、判定部は、前記寸法の差が許容範囲を超えている場合、工具が誤って装填された不正な工具であると判定して該工作機械の表示部に第1の警告信号を送ることができる。
【0012】
これにより、様々な工具の異常のうち、工具の組合せが不正な状態だけを識別することができる。
【0013】
本発明では、第1の警告信号が発せられたにもかかわらず加工プログラムが実行された場合は、不正な工具で加工が行われる直前に加工を中断することができる。
【0014】
本発明では、工具測定装置は、加工に使用した工具が工具マガジンに戻されるときに測定し、判定部は、前記寸法の差が許容範囲を超えている場合、工具を破損工具と判定して、表示部に第2の警告信号を送ることができる。
【0015】
これにより、工具の異常であっても、不正な状態なのか工具が破損した状態なのかを識別することができる。
【0016】
本発明では、第2の警告信号が発せられたとき、破損工具と判定された工具の予備工具であって、工具マガジンに予め装填されていた予備工具に自動的に交換して加工プログラムを実行することができる。
【0017】
本発明では、工具が切削加工に用いられたときの加工時間あるいは移動距離を積算して記憶し、加工時間あるいは移動距離が予め定められた値を超えたとき、工具が寿命に達したことを表す第3の警告信号を発することができる。
【0018】
本発明では、工具測定装置は撮像装置を備える撮像式の工具測定装置であってよく、撮像装置は、工作機械の工具収容室内に工具交換装置とともに配設されてワークの撮像を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、工具マガジンに装填されて、実際の加工に用いられる工具の寸法が工作機械によって測定されてその適否が判定されるので、例えば、工具マガジンへの工具の誤装填や工具の破損の発生を容易に検出することが可能になる。これにより、誤った工具での加工による工作機械の破損、ワークの加工不良の問題の発生を防止できる。
【0020】
また、オペレータは加工プログラムで工作機械を自動運転する前に、工具の異常を認識できるため、すぐに誤りを訂正でき、無駄な加工時間や機械停止時間の発生を防止できる。更に、同じ工具の異常であっても、不正工具なのか破損工具なのかを判別することにより、加工プログラムと工具の基本データに誤りがある可能性の有無が選別され、オペレータは工具の誤りの原因の究明を容易に短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態における工作機械の概略的な側面断面図である。
【
図2】前記工作機械の構成を示すブロック図である。
【
図3】前記工作機械の表示部に示された工具情報画面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から
図3を参照して、本発明の実施形態による工作機械1について説明する。本実施形態による工作機械1は、加工プログラムに基づいて自動的に工具5とワークとを相対的に移動させて加工を行う数値制御式のものである。
【0023】
図1は、本発明の実施形態による工作機械1の概略的な側面断面図である。工作機械1は、横形マシニングセンタであって、工作機械本体10、工具交換装置40、制御装置30、工具測定装置24、加工室61、及び工具収容室62を具備する。加工室61及び工具収容室62は、スプラッシュガード54により囲まれている。工作機械本体10は加工室61内に配設され、工具交換装置40及び工具測定装置24のカメラ25及び照明装置26が工具収容室62内に配設される。
【0024】
加工室61と工具収容室62とは、隔壁51により隔離されている。隔壁51には、加工室61と工具収容室62との間で工具を移動するための開口部51aが形成されている。隔壁51には、開口部51aを開閉するためのシャッター52が配置されている。また、工具収容室62の、隔壁51に対向する側壁55に工具搬入口55aとそれを閉じる扉56が設けられている。
【0025】
工作機械本体10は、基台となるベッド12、ベッド12の上面に固定されたX軸ガイドレール19及びZ軸ガイドレール18、Z軸ガイドレールの上面に配置されたテーブル14,X軸ガイドレール19の上面に配置されたコラム16、コラム16の前面に固定されたY軸ガイドレール20、Y軸ガイドレール20に支持されている主軸ヘッド3を具備する。主軸ヘッド3の主軸4には、ワーク(図示せず)を加工する工具5が交換可能に保持される。ワークは、パレット15を介してテーブル14に固定される。コラム16は、矢印86に示す様に、X軸方向に移動し、主軸ヘッド3は、矢印85に示す様に、Y軸方向に移動し、テーブル14はZ軸方向に移動する。
【0026】
工具交換装置40は、複数の工具5を保管する工具マガジン41と、工具マガジン41と主軸4との間で工具を移送する移送装置とを含む。本実施形態の工具マガジン41は、円板状に形成された基材の周りに工具ホルダ45を介して工具5を保持するように形成されている。工具交換装置40は、工具マガジン41を回転させるモータを含む。工具マガジン41は、矢印87に示すように回転する。
【0027】
移送装置は、工具シフタ44及び工具交換アーム43を含む。工具シフタ44は、工具マガジン41と工具の待機位置との間で工具を移動させる。待機位置は、工具交換アーム43にて工具を保持することができる位置である。工具シフタ44は、矢印88に示す方向に移動することにより、工具マガジン41から工具5を取り外したり工具マガジン41に工具5を取り付けたりする。
【0028】
工具交換アーム43は、両側の端部に工具5を保持する保持部43aを有する。工具交換装置40は、工具交換アーム43を回転させるモータを含んでいて、工具交換アーム43を矢印89に示す様に回転させることができる。
【0029】
工具5を交換する場合には、加工室61では、主軸ヘッド3が工具5を交換するための所定の位置まで移動する。工具収容室62では、工具マガジン41は、次に使用する工具5が工具シフタ44に保持される位置まで回転する。工具シフタ44は、次に使用する工具5を工具マガジン41から待機位置までX方向に移動する。
【0030】
次に、シャッター52が開いて工具交換アーム43が回転する。工具交換アーム43は、工具シフタ44に保持されていた工具5及び主軸4に取り付けられていた工具5を保持する。更に、工具交換アーム43が回転することにより、次に使用する工具5を主軸4に取り付けて、加工が終了した工具5を工具シフタ44に取り付ける。工具シフタ44は、加工が終了した工具5を工具マガジン41に戻す。
【0031】
このように工具交換装置40は、主軸4に取り付けられている工具5を工具マガジン41に移動することができる。また、工具交換装置40は、工具マガジン41に保管されている工具5を主軸4に移動することができる。工具5の交換が終了した後には、工具交換アーム43は初期の状態まで回転する。シャッター52が閉じた後に、加工室61では次の加工が開始される。
【0032】
図1は、工具シフタ44の先端部に保持された工具ホルダ45内の工具5が待機位置に配置されている状態を示している。本実施形態における工具測定装置24は、カメラ25からなる撮像装置と、照明装置26と、画像処理部(図示せず)とを含んでいて、工具5を撮像することにより工具の寸法を測定する撮像式のものである。カメラ25として、CCDカメラ等の撮像した画像の画像処理が可能な任意のカメラを採用することができる。また、工具測定装置24は、工具5を撮像した画像において、工具5の背景が明るくなる一方で工具5が暗くなるバックライト方式のものである。
【0033】
工具測定装置24の画像処理部(図示せず)は、本実施形態では制御装置30の筐体内に配置されている。カメラ25で撮像した画像が画像処理部に入力され、画像処理部は、画像から工具の寸法を算出する。画像処理部は、工具5に相当する部分と工具以外に相当する部分の画素数を計測し、そして、工具5に相当する部分の画素数に基づいて工具5の寸法を算出する。工具5の寸法には、工具長や工具径が含まれる。算出された工具5の寸法は制御装置30に送られて、工具5が適正なものであるか否かが判定される。また、工具5が破損しているか否かについても判定される。
【0034】
本実施形態では、カメラ25は、工具5が工具収容室62内の待機位置に配置されている時に工具5を撮像するように配置されている。撮像は、本実施形態では、オペレータが工具5を工具マガジン41に装填した後で加工を開始する前に、選択された複数の工具5に対して順番に実施される。
【0035】
照明装置26は、シャッター52に向けて光を照射する光源として働く。シャッター52に照射された光が反射するために、照明装置26にて照射された光の一部がカメラ25に向かう。このように、本実施形態の工具測定装置24は、直接的に工具5を照らす直接照明方式ではなく、反射した拡散反射光にて工具5を照らす間接照明方式を採用している。
【0036】
照明装置26は、撮像した画像における工具の形状が明確になり、より正確に工具の寸法を測定することができるように、工具の全体が黒くなる輝度を発生する明るい光源である。
【0037】
図2は、本実施形態の工作機械1の構成を示すブロック図である。このブロック図は、工具の適否の判断を行うために必要な工作機械1の構成要素を示しているが、工作機械本体10を制御するための構成要素は十分知られているので示されていない。制御装置30は、例えば、バスを介して互いに接続されたCPU、RAM、及びROM等を備えており、工作機械本体10、工具交換装置40、及び工具測定装置24を制御するように構成されている。ただし、前述したように、
図2は、工具の適否を判定するために必要な、制御装置30の構成要素を示している。
【0038】
制御装置30は、入力部31と、記憶部32と、判定部33と、指令部34と、操作盤(図示せず)とを具備する。入力部31には、CAMシステムから出力された加工プログラムと加工に用いられる工具の基本データとが入力される。
【0039】
記憶部32には、入力部31から入力された工具の基本データが工具番号毎に記憶される。記憶部32に基本データが記憶される工具5は、オペレータが実行しようとしている加工プログラムで使用される工具ばかりではなく、様々な理由で工具マガジン41に残されている工具も含まれる。記憶部32に記憶された工具の基本データを操作盤の表示部に呼び出した場合の一例が
図3に示されている。
【0040】
図3では、表示部に工具情報画面35が選択されて表示されている。工具情報画面35は、工具5に関する情報を入力、表示及び編集するための画面である。工具情報画面35は、工具マガジン41に装填されている工具5の工具番号、ポット番号、工具種類、工具の基準長及び基準径とそれらの許容差、並びにステータスの一覧を表示している。工具番号は、それぞれの工具を特定するための番号である。ポット番号の欄には、工具を装填される工具マガジン41のツールポケットの番号が示される。そして、主軸工具は、主軸に取り付けられている工具を示している。次工具は、工具の待機位置に配置されて次に使用される予定の工具を示している。測定対象の工具5は「一括測定」欄の「工具長」又は「工具径」欄のチェックボックスにチェックマーク35a、35bが付けられている工具である。なお、本実施形態の表示部は、工具情報画面35の他に、プログラム編集画面、座標情報画面、プログラム実行情報画面、加工結果画面を画面中のボタンにより選択することができるが、それらの画面は本発明とは直接には関係しないので説明は省略する。
【0041】
判定部33は、工具測定装置24の画像処理部(図示せず)から受け取った工具5の測定された寸法と記憶部32に記憶された工具の基本データに含まれる工具の基準寸法とを比較し、両者の寸法差が予め定められた許容範囲にあるか否かを判定する。そして、判定部33は、前記寸法差が、許容範囲内にあれば、ステータスとして「正常」の信号を記憶部32に送り、許容範囲から外れていれば、測定した工具5が所望の工具とは異なるものであると見做して不正あるいは破損の警告信号を記憶部32に送る。
【0042】
本実施形態では、工具マガジン41に装填された工具5の全てが測定の対象になるわけではなく、加工に用いられる工具5が測定対象工具となる。測定対象工具であることは、工具情報画面35の中の「一括測定」の「工具長」及び「工具径」欄のチェックボックスにチェックマーク35a、35bが付けられていることで分かる。加工内容によって、工具長を測定すべきか、工具径を測定すべきか、あるいは両方とも測定すべきかが判断される。この判断は、通常は工作機械1のオペレータか又はCAM室の加工プログラムの編集者等によって行われる。その他に、加工プログラムの中から、加工に使用される工具番号を自動的に抽出する実施形態も可能である。また、加工プログラムの中で、工具経路が工具長の方向で補正されているか又は工具径の方向で補正されているかをチェックして、工具長と工具径のどちらを測定するかを自動的に決定する実施形態も可能である。
【0043】
指令部34は、工具マガジン41に装填された測定対象の複数の工具5が待機位置に順次移動して、撮像後に工具マガジン41の元の場所に戻るように、工具マガジン41及び工具シフタ44を制御する。また、指令部34は、待機位置に測定対象の工具5が配置されたときに、それが撮影されるように工具測定装置24に指令を発するとともに、工具長だけかあるいは工具長と工具径の両方の測定結果を出力すべきかについても工具測定装置24に指令を発することができる。
【0044】
本実施形態では、測定対象に選定された複数の工具5の測定は、それらが工具マガジン41に装填されて工具マガジン41における工具の構成が変更されたなら直ちに実行されるように運用される。工具5の測定は、具体的には、オペレータが工具情報画面35の一括測定ボタン35cを押してから操作盤(図示せず)の実行ボタン(図示せず)を押すことにより開始される。そうすると、制御装置からの指令を受けた工具交換装置40と工具測定装置24は、選択された複数の工具5の寸法測定を連続して行う。測定結果は、比較的短時間のうちに工具情報画面35のステータス欄に表示される。したがってオペレータは測定結果を加工開始前に確認することができ、ステータスが「不正」であった場合の処置を講ずることができる。
【0045】
図3の工具情報画面35には、工具番号2のフラットエンドミルのステータス欄に「不正」が表示されているので、その工具長さ又は工具径の実測寸法と基準寸法との差が許容範囲を超えていることがわかる。この「不正」の原因は、工具マガジン41のポット番号2に、工具番号2で規定された工具以外の工具5が装填されている。この場合、誤った工具が装填されている可能性と、加工プログラムに誤りがある可能性と、入力した工具の基本データに誤りがある可能性とが考えられる。そのため、オペレータは、工具マガジン41のポット番号2に装填されている工具を実際に確認して、それが誤装填された工具であれば、それを正しい所望の工具5に入れ替える。次に、オペレータは、実行しようとしている加工プログラムの内容を確認して、加工プログラムに誤りがないか確認して、加工プログラムに誤りがあれば修正を行う。更に、オペレータは、入力した工具5の基本データに誤りがないかを確認して、誤りがあれば修正を行う。工具5、加工プログラム、及び工具5の基本データを確認し、いずれかに誤りを発見して修正を施した後には、もう一度、工具測定の操作を行い、全ての工具5に「正常」のステータスが示されることを確認するであろう。
【0046】
もし、オペレータが工具情報画面35の「不正」の表示を見落としたまま、加工プログラムを実行した場合は、本実施形態における制御装置30は、不正工具であるところの工具マガジン41のポット番号2に装填されている工具5が加工に用いられないように、それが工具シフタ44によって待機位置へ運ばれる前に加工を中断する。
【0047】
本実施形態では、工具5の測定は、工具5が工具マガジン41に装填された直後にだけでなく、加工に用いられた一つの工具5が加工後に待機位置に戻されたときにも毎回行われる。この加工後の測定によって得られた工具5の実測寸法と基準寸法との差が予め定められた許容範囲を超えている場合には、判定部33は、測定した工具5を破損工具と見做して破損の警告信号を記憶部32に送る。その結果、「破損」が工具情報画面35に表示される。破損工具であると看做される理由は、測定された工具5が前回の測定では正常であったためである。つまり、加工プログラムと工具5の基本データとに誤りがないことがわかっているので、破損した工具5の使用前の形状と同じ形状の工具5を入手することができれば、ワークに加工不良が発生する心配や工作機械本体10が破損する心配をせずに、継続して加工が可能である。よって、破損の警告信号が発せられた場合でも、同じ形状の予備の工具5が工具マガジン41の別のポット番号に準備されている場合は、制御装置30からの指令により破損工具5が予備の工具5に切り替えられて運転を継続することができる。予備の工具5がなければ、加工が中断される。
【0048】
本実施形態の工作機械1によれば、工具交換装置40の工具マガジン41に装填された、実際の加工に用いられる工具5の寸法が工具測定装置24によって測定されてその適否が制御装置30によって判定されるので、工具マガジン41への工具の誤装填や工具の破損の発生を容易に検出することが可能になる。その結果、不良品の発生の防止及び工作機械本体10の破損の防止が可能になる。
【0049】
工具の測定を工具5が加工後に待機位置に戻されたときに行うことに代えて、加工前に待機位置に配置されたときに毎回行ってもよい。この加工前の測定においても、オペレータが測定対象の工具5を工具マガジンに装填した後の初めての測定の場合に、許容範囲を超えていれば不正工具と判定する。また、加工前の測定において、測定対象の工具5を工具マガジンに装填した後に一度でも加工に使用したことがある場合には、許容範囲を超えていれば破損工具と判定する。
【0050】
本実施形態における制御装置30は、工具情報画面35に表示されるステータスとして、「正常」、「不正」及び「破損」に加えて「摩耗」も有する。制御装置30は、各工具5の切削に用いられた使用時間を積算して記憶部32に記憶していて、工具5の使用時間が予め定めた寿命時間に達したときに摩耗の警告を発することもできる。また、制御装置30が、使用時間ではなく、各工具5の切削中の移動距離に基づいて摩耗の警告を発する実施形態も可能である。摩耗の警告を発した時点では、工具測定装置24で工具5の異常を検出した訳ではなく、不正や破損と違い、ワークに加工不良を発生する心配や工作機械本体10が破損する心配のない状態である。よって、表示部に「摩耗」と表示してオペレータに工具5を新しいものに替える時期であることを伝えるだけでよく、加工の中断はしない。
【0051】
本実施形態の工作機械1の工具測定装置24はカメラ25を用いる撮像式のものであるが、工具測定装置24としてはこのタイプに限られず、工具5の寸法の測定が可能な任意の装置を採用することができる。例えば、レーザー光を用いるタイプ、あるいは工具5に接触させるプローブを用いるタイプの装置を工具測定装置24として具備する実施形態も可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 工作機械
5 工具
10 工作機械本体
24 工具測定装置
25 カメラ
26 照明装置
30 制御装置
31 入力部
32 記憶部
33 判定部
34 指令部
40 工具交換装置
41 工具マガジン
44 工具シフタ