特許第6644112号(P6644112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644112
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】電気モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   H02K1/18 A
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-116250(P2018-116250)
(22)【出願日】2018年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-9983(P2019-9983A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年6月19日
(31)【優先権主張番号】1709831.0
(32)【優先日】2017年6月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508032310
【氏名又は名称】ダイソン テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー チャールトン クロージア
(72)【発明者】
【氏名】ゲアリー フランシス キング
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303876(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0125154(US,A1)
【文献】 実公昭51−008962(JP,Y1)
【文献】 特開2015−130796(JP,A)
【文献】 米国特許第05365137(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0170697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータであって、
ステータ組立体と、ロータ組立体と、支持体と、を有し、
ステータ組立体は、複数のステータ要素を含み、
ロータ組立体は、シャフトを含み、少なくとも第1のベアリング及び第2のベアリングが、永久磁石の両側において前記シャフトに取付けられ、
前記支持体は、細長い中央部と、細長い中央部の軸線方向両端部に互いに位置決めされた第1のベアリングシート及び第2のベアリングシートを含み、
前記細長い中央部は、複数の開口を有し、前記複数の開口の各々は、複数のステータ要素のうちの1つを受入れるように構成され、前記支持体の側壁に設けられたスロットを含み、前記スロットは、前記細長い中央部に沿って軸線方向に前記第1のベアリングシートから前記第2のベアリングシートまで延びる、電気モータ。
【請求項2】
前記永久磁石が前記支持体の細長い中央部内に位置決めされるように、前記第1のベアリングは、前記第1のベアリングシートに取付けられ、前記第2のベアリングは、前記第2のベアリングシートに取付けられる、請求項1に記載の電気モータ。
【請求項3】
前記支持体は、実質的に円筒形である、請求項1又は2に記載の電気モータ。
【請求項4】
前記第1のベアリングシート及び前記第2のベアリングシートにおける前記支持体の内径は、前記細長い中央部における前記支持体の内径よりも小さい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項5】
前記ステータ要素の各々は、ステータコアを有し、前記開口の各々の長さは、前記ステータコアの各々の長さよりも10%〜100%長い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項6】
前記ステータ要素の各々は、前記ステータコアの軸線方向両端部と前記開口の軸線方向両端部の間を延びる隙間を構成するように、前記開口内に位置決めされる、請求項に記載の電気モータ。
【請求項7】
前記ステータ要素の各々は、C字形のステータコアを含み、前記ステータコアは、2つの極アームを含み、各開口の幅は、前記ステータコアの2つの極アームが前記開口の中を少なくとも部分的に延びる程度に、ステータコアの幅と実質的に同じである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項8】
前記ステータ要素の各々は、更に、C字形のステータコアに固定されたボビンを有し、前記ボビンは、前記開口の中を部分的に延びる、請求項に記載の電気モータ。
【請求項9】
前記支持体の第1のベアリングシート及び第2のベアリングシートのうちの少なくとも一方の外径により、前記電気モータの更なる構成要素のための取付け箇所を構成する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項10】
前記更なる構成要素は、インペラのためのシュラウド、外ケース、及び巻線端子ブロックのうちの1つである、請求項に記載の電気モータ。
【請求項11】
前記支持体は、少なくとも1つの補強部材を前記複数の開口の各々に有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項12】
前記ステータ要素の各々は、前記少なくとも1つの補強部材に固定される、請求項11に記載の電気モータ。
【請求項13】
前記複数のステータ要素は、接着剤及び溶接の一方又はその組合せによって、前記支持体に固定される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気モータ。
【請求項14】
コンプレッサであって、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の電気モータを有し、
前記ロータ組立体は、更に、インペラを有する、コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、典型的には、ロータ組立体と、ステータ組立体と、フレームを有し、フレームは、構成要素を一緒に保持する。ステータ組立体は、典型的には、鉄製のステータコアを使用して、フレームに取付けられる。これにより、モータの他の構成要素、例えば、ロータ組立体に対するステータコアの位置決めを注意深く管理することを可能にする。しかしながら、モータの構成要素の正確な位置決めを達成するために構造的役割を果たすステータコアを使用することは、ステータコアを非常に強固に且つ非常に厳密な寸法公差で作ることを必要とする。これにより、重く且つかさばり、製造するのに高価なステータコアを生じさせる。加えて、かかるステータコアが取付け特徴部、例えば、貫通孔及び/又は切欠き部分、を含む必要性により、モータの作動中に高レベルの磁気飽和が起こる磁気的な「ピンチ点」を生じさせることがある。これにより、モータの効率と性能を低下させることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、上述した課題を緩和することを幾分可能にするように改善された電気モータが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、電気モータを提供し、かかる電気モータは、ステータ組立体と、ロータ組立体と、支持体を有する。ステータ組立体は、複数のステータ要素を含み、ロータ組立体は、シャフトを含み、少なくとも第1のベアリング及び第2のベアリングが、永久磁石の両側においてシャフトに取付けられる。支持体は、細長い中央部と、細長い中央部の軸線方向両端部に互いに位置決めされた第1のベアリングシート及び第2のベアリングシートを含み、細長い中央部は、複数の開口を有し、複数の開口の各々は、複数のステータ要素のうちの1つを受入れるように構成される。
【0005】
結果として、支持体は、ロータ組立体を収容するカートリッジとして作用し、ステータ組立体の個々のステータ要素は、支持体の開口(スロット)の中に挿入される。これにより、ステータ組立体を小さくすることを可能にし、モータ内で構造的役割を担う必要をなくし、それと同時に、ロータ組立体とステータ組立体の相対的な位置決めの高レベルな管理を維持する。したがって、このカートリッジ式のパッケージにより、ロータ組立体及びステータ組立体を、より小さく且つより軽く作ることを可能にし、その場合、モータの全体寸法及び重量を最小にすることができる。更に、ステータ組立体を複数のステータ要素として製造し、次いで、ステータ要素を支持体の開口(スロット)の中に挿入することができる。これにより、特にカートリッジ式のパッケージによりステータ組立体を小さく作るとき、モータの製造を格段に容易にする。
【0006】
永久磁石が支持体の細長い中央部内に位置決めされるように、第1のベアリングは、第1のベアリングシートに取付けられ、第2のベアリングは、第2のベアリングシートに取付けられるのがよい。したがって、永久磁石は、ステータ要素が永久磁石を包囲する状態で完全に位置決めされる。ロータ組立体とステータ組立体の両方を支持体に固定させることによって、ロータ組立体とステータ組立体の相対的な位置決めの厳密な管理を実現することができる。
【0007】
支持体は、実質的に円筒形であるのがよい。
【0008】
複数の開口の各々は、支持体の側壁に設けられたスロットであり、スロットは、細長い中央部に沿って軸線方向に延びるのがよい。スロットは、細長い中央部に沿って第1のベアリングシートから第2のベアリングシートまで延びるのがよい。この場合、スロットは、軸線方向に長いステータ要素を挿入することを可能にし、したがって、永久磁石とステータ組立体の間のかなり大きい相互作用を達成することができる。
【0009】
第1のベアリングシート及び第2のベアリングシートにおける支持体の内径は、細長い中央部における支持体の内径よりも小さいのがよい。したがって、これにより、より大きく且つより強力な磁石を支持体内に収容することを可能にする。変形例として、磁石の周りにおいて支持体内の比較的大きい空洞を可能にし、したがって、電気モータが使用されている間の磁石のより良好な冷却を可能にしてもよい。
【0010】
ステータ要素の各々は、C字形のステータコアを有し、ステータコアは、2つの極アームを有するのがよく、各開口の幅は、ステータコアの2つの極アームが開口の中を少なくとも部分的に延びる程度に、ステータコアの幅と実質的に同じであるのがよい。したがって、各ステータコアの2つの極アームは、支持体の開口の中に延びることが可能である。これにより、極面をロータ組立体の磁石に近接して位置決めすることを可能にする。
【0011】
ステータ要素の各々は、ステータコアを有し、各開口の長さは、各ステータコアの長さよりも10%〜100%長いのがよい。各ステータ要素は、ステータコアの軸線方向両端部と開口の軸線方向両端部の間を延びる隙間を構成するように、開口内に位置決めされるのがよい。したがって、空気が、かかる隙間を通過することができ、かくして、各ステータ要素の周りで、また、支持体内に位置決めされた構成要素、例えば、磁石に対して、冷却を行う。
【0012】
ステータ要素の各々は、更に、C字形のステータコアに固定されたボビンを有し、ボビンは、開口の中を部分的に延びるのがよい。これにより、空間の効率的な利用を可能にし、モータの直径を最小にすることができる。
【0013】
支持体の第1のベアリングシート及び第2のベアリングシートの少なくとも一方の外径により、電気モータの更なる構成要素のための取付け箇所を構成するのがよい。更なる構成要素は、インペラのためのシュラウド、外ケース、及び巻線端子ブロックのうちの1つであるのがよい。別の構成要素をベアリングシートの外径に取付けることにより、ベアリング、かくして、ロータ組立体に対するかかる別の構成要素の位置決めの厳密な管理を可能にする。このことは、別の構成要素が、ロータ組立体のインペラをそれに近接して包囲する必要があるインペラ用のシュラウドであるとき、特に重要である。
【0014】
支持体は、少なくとも1つの補強部材を複数の開口の各々のところに有するのがよい。これにより、ロータ組立体及びステータ組立体に対する構造的支持部の必要なレベルを依然として提供しながら、比較的軽い材料で作られた支持体、及び、支持体に直接的に又は間接的に取付けられた任意その他の構成要素を可能にする。支持体に比較的軽い材料を使用することにより、比較的軽いモータにしてもよいし、使用される材料に応じて、モータのコストを低減させてもよい。
【0015】
ステータ要素の各々は、少なくとも1つの補強部材に固定されるのがよい。したがって、ステータ要素は、最も大きい構造的支持部を構成する支持体の一部に固定され、モータの作動中、モータの効率を減少させることがあるステータ要素の任意の移動を最小にする。
【0016】
本発明は更に、コンプレッサを提供する。コンプレッサは、前に説明した任意の1つの電気モータを有し、ロータ組立体は、更に、インペラを有する。
【0017】
本発明をより容易に理解することができるように、添付図面を参照して、本発明の実施形態を例示として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電気モータを示す図である。
図2図1の電気モータの断面図である。
図3図1の電気モータの支持体と、2つのステータ要素を示す図である。
図4A】組立中の支持体とステータ要素の平面図である。
図4B】組立中の支持体とステータ要素の平面図である。
図5】支持体の変形例の図である。
図6A】組立中の図5の支持体とステータ要素の平面図である。
図6B】組立中の図5の支持体とステータ要素の平面図である。
図7】コンプレッサを示す図である。
図8】支持体の更なる変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2の電気モータ1は、ステータ組立体と、ロータ組立体3と、支持体2を有する。外ケース4が、ステータ組立体、ロータ組立体3、及び支持体2を包囲する。
【0020】
ステータ組立体は、4つのステータ要素5を含み、ステータ要素5の各々は、C字形のステータコア52と、C字形のステータコア52に固定されたボビン51を有する。ステータ要素5の各々は、支持体2に固定され、その詳細を後で詳細に説明する。
【0021】
ロータ組立体3は、シャフト31と、ベアリング32、33と、磁石34を含む。ベアリング32、33は、磁石34の両端部に取付けられる。磁石34は、ブラシレス永久磁石モータで典型的に使用される種類の永久磁石である。
【0022】
図3において比較的明瞭に見ることができる支持体2は、円筒形状であり、細長い中央部21と、細長い中央部21の軸線方向両端部に位置決めされた第1のベアリングシート22及び第2のベアリングシート23を有する。細長い中央部21は、複数の開口24を有し、複数の開口24の各々は、ステータ要素5を受入れるように構成され且つそれに適した寸法を有する。開口24は、第1のベアリングシート22と第2のベアリングシート23の間を細長い中央部21に沿って軸線方向に延びる。図3は、2つのステータ要素5を示し、矢印Aは、ステータ要素がどのように支持体2の細長い中央部21の開口24であるスロットの中に挿入するのかを指示する。開口24により、ステータ要素5が支持体2の内側の空洞25の中に延びることを可能にする。特に、ステータ要素のC字形のステータコアの極アームは、開口24の中を部分的に延びる。支持体2は、スチール等の金属で作られる。これにより、支持体を非常に強くするが、非常に重い。電気モータ1の重量を最小にすることが重要であれば、その代わりに、支持体を形成するその他の材料、例えば、プラスチックを選択してもよい。ステータ要素5は、支持体2に固定され、ステータ要素5は、支持体2に接着剤によって結合されてもよいし、変形例として、支持体2に溶接されてもよい。
【0023】
第1のベアリングシート22及び第2のベアリングシート23は、ベアリング32、33のための取付け箇所を構成する。したがって、ロータ組立体3を組立てるとき、ロータ組立体3は、ベアリング32の外レースが第1のベアリングシート22の内周に固定され且つベアリング33の外面が第2のベアリングシート23の内周に取付けられるように、支持体2に取付けられる。シャフト31は、支持体2の中を延び、磁石34は、細長い中央部21内の空洞25の内側に位置決めされる。かくして、ステータ組立体とロータ組立体が両方とも支持体2に固定されるので、C字形のステータコア52と磁石34の相対的な位置決めを厳密に管理することができる。完全に組立てると、C字形のステータコアの極面は、永久磁石に近接して位置決めされ、その結果、両者の間の良好な磁気相互作用により、電気モータ1の性能と効率を最大にする。
【0024】
ベアリングシート22、23における支持体2の内径は、細長い中央部21のところの支持体2の内径よりも小さい。これにより、シャフト31及び磁石34を収納するために空洞25内で利用可能な十分な空間を確保し、また、ステータ要素5と磁石34の間の空気隙間を構成するのに十分な空間を確保する。しかしながら、変形実施形態では、支持体の内径のこの差は、必要とされなくてもよい。
【0025】
図4Aは、組立工程中のモータを回転軸線方向に見た図であり、かかる工程において、ステータ組立体を構成する4つのステータ要素5を支持体2のスロット24の中に導入する。矢印Aは、ステータ要素5をどのようにスロット24の中に半径方向内向きに挿入するのかを指示する。ステータ要素5の各々は、C字形のステータコア52を有し、C字形のステータコア52は、2つの極アームを有し、極アームの各々は、その端部に極面54を有する。ボビン51がC字形のステータコア52に固定され、巻線53がボビン51の周りに巻かれる。
【0026】
図4Bは、支持体2の上に組立てられたステータ要素5を示す。ロータ組立体のシャフト31及び磁石34も、支持体2の空洞25の内側の適所にある。これらの構成要素が適所にあれば、ステータ要素5の極面54と磁石34の間に僅かな隙間しかないことが分かる。ステータ要素5の半径方向位置は、ステータ要素5と支持体2の間の接触に基づいて設定される。加えて、ロータ組立体3のシャフト31及び磁石34の位置は、ロータ組立体3と支持体2の間の接触に基づいて設定される。結果として、ステータ要素5の極面54とロータ組立体3の磁石34の間の隙間は、少数の構成要素の公差に依存するので、厳密に管理される。したがって、ステータコア52の極先端部又は極面が磁石34に接触する危険なしに、隙間を小さくすることができる。これにより、電気モータ1の性能を向上させることができる。
【0027】
支持体の変形実施形態である支持体102を図5に示す。図3に示す支持体2と同様、支持体102は、細長い中央部121と、細長い中央部121の軸線方向両端部に位置決めされた第1のベアリングシート122及び第2のベアリングシート123を有する。細長い中央部121の内側は、空洞125である。細長い中央部121は、複数の開口124を有し、複数の開口124の各々は、ステータ要素5を受入れるように構成され、それに適した寸法を有する。この実施形態では、支持体102は、プラスチックで形成される。これにより、支持体を、図3の金属製の支持体よりもずっと軽くする。しかしながら、プラスチックは金属ほど強くないので、支持体102は、リブ126の形態の補強部材を有し、リブ126は、各開口124の両側に位置決めされる。これらの補強部材又はリブ126は、支持体102の細長い中央部121の構造を強化し、また、適所にあるときのステータ要素5を取付けることができる取付け部を構成する。ステータ要素と磁石の間の隙間に望ましい厳密な公差により、支持体の構造ができるだけ剛性であり且つ安定していることが極めて重要である。
【0028】
開口124は、各ステータ要素5のステータコアの長さよりも長い。その結果、空気がステータ要素5の周りの空洞125に入ることが可能な隙間Gが構成される。モータを使用しているとき、空気が、空洞125に入ることができ、空洞125の中に位置決めされた磁石を冷却する。空洞125の中を流れる良好な程度の冷却空気流を達成するために、各開口124の長さは、各ステータコアの長さよりも10%〜100%長いことが好ましい。各ステータコア52は、その両端部に空間が設けられるようにそれぞれのスロット/開口の中に位置決めされるのがよく、それにより、開口124の両端部のところで且つステータコア5の周りで、空気が空洞125に入ったりそれから出たりすることを可能にする。
【0029】
図6A及び図6Bは、図4A及び図4Bに示したのと同じ組立工程の同様な図であるが、支持体102の代わりに、その変形例を示している。図6Aは、組立工程中のモータを回転軸線方向に見た図であり、かかる工程において、ステータ組立体を構成する4つのステータ要素5を支持体102の開口(スロット)124の中に導入する。矢印Bは、ステータ要素5をどのように開口(スロット)124の中に半径方向内向きに挿入するのかを指示する。前と同じように、ステータ要素5の各々は、C字形のステータコア52を有し、C字形のステータコア52は、2つの極アームを有し、極アームの各々は、その端部に極面54を有する。ボビン51が、C字形のステータコア52に固定され、巻線53が、ボビン51の周りに巻かれる。リブ126の形態の補強部材が、スロット124の長手方向縁部に沿ってスロット124の両側に位置決めされる。これらの補強リブは、ステータ要素5をスロット124の中に挿入するとき、ステータ要素5を整列させるのを助けることができる。
【0030】
図6Bは、支持体102の上に組立てられたステータ要素5を示す。ロータ組立体のシャフト31及び磁石34も、支持体102の空洞125の内側の適所にある。これらの構成要素が適所にあれば、ステータ要素5の極面54と磁石34の間にわずかな隙間しかないことが分かる。ステータ要素5の半径方向位置は、ステータ要素5と支持体102の間の接触に基づいて設定される。加えて、ロータ組立体3のシャフト31及び磁石34の位置は、ロータ組立体3と支持体102の間の接触に基づいて設定される。結果として、ステータ要素5の極面54とロータ組立体3の磁石34の間の隙間は、少数の構成要素の公差に依存するので、厳密に管理される。したがって、ステータコアの極先端部又は極面が磁石に接触する危険なしに、隙間を小さくすることができる。これにより、電気モータの性能を向上させることができる。リブ126は、支持体102の細長い中央部121に構造的な支持部を構成することに加えて、ステータ要素5がスロット124内の適所にあるときにステータ要素5を固定することができる有用な取付け部を構成する。例えば、リブ126とステータ要素5の間の結合を形成するために、接着剤がリブ126とステータ要素5の間に設けられる。
【0031】
図7は、図3の支持体2を含むコンプレッサ200を示す。スロット及びステータ組立体は、明瞭のために示されていない。ロータ組立体は、シャフト31と、磁石34と、ベアリング32、33を含み、支持体2の空洞25の内側に位置決めされている。ベアリング32、33はそれぞれ、ベアリングシート22、23の内面に取付けられる。インペラ231が、シャフト31の端部に取付けられ、シャフト31は、支持体2の一方の端部の外側に延びている。外ケース204が、コンプレッサ200の外側の周りに位置決めされる。外ケース204は、ベアリングシート22の外面にハブ205を介して取付けられることによって、支持体2によって支持される。使用中に空気をコンプレッサによって引込むことを可能にする空気入口(図示せず)が、外ケース204に設けられる。シュラウド206が、他方のベアリングシート23の外面に取付けられ、インペラ231を包囲する。外ケース204はまた、シュラウド206に取付けられる。空気をインペラ231によってコンプレッサ200の中を通るように引く空気通路(図示せず)が設けられる。ハブ205は、電気を受入れるためにステータ要素5の巻線(図示せず)が接続される巻線端子ブロックと同じように作用する。
【0032】
図8は、支持体の更なる実施形態である支持体302を示す。支持体302は、前に説明した支持体2、102と同じ多くの特徴部を有する。かかる特徴部は、例えば、細長い中央部321、細長い中央部321の軸線方向両端部に位置決めされた第1のベアリングシート322及び第2のベアリングシート323である。複数の開口324が、細長い中央部321に設けられ、補強部材326が、開口324の両側に沿って位置決めされる。すべての支持体に共通するこれらの特徴部に加えて、支持体302は、シュラウド336が一体化された単一部品として形成される。シュラウド336は、支柱340によって、第2のベアリングシート323から離れて保持される。これにより、空気が通過することができる環状のチャネルを構成する。
【0033】
かくして、特定の実施形態を説明したけれども、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変形例を行ってもよいことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0034】
1 電気モータ
2、102、302 支持体
3 ロータ組立体
5 ステータ要素
21、121、321 細長い中央部
22、122、322 第1のベアリングシート
23、123、323 第2のベアリングシート
24、124、324 複数の開口
31 シャフト
32 ベアリング
33 ベアリング
34 磁石
51 ボビン
52 C字形のステータコア
126、326 補強部材
200 コンプレッサ
231 インペラ
204 外ケース
206、336 シュラウド
G 隙間
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8