(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、無人航空機の一例であるドローン10の基本的な構成を説明する。
図1はドローン10の外観斜視図である。ドローン10は、本体11と、上昇用の4つのロータユニット12A〜12Dとを備えている。それぞれのロータユニット12A〜12Dは、例えばサーボモータである回転モータ13と、回転モータ13の回転シャフトに固定された回転翼14とを備えている。そして、各回転モータ13が本体11から延びるアーム15の先端部に連結され、これにより、本体11の右前方、左前方、右後方及び左後方にロータユニット12A〜12Dが配置されている。
【0017】
ここで、隣接するロータユニット12A、12Bの回転翼14、14は、互いに逆方向に回転して揚力得る。同じく隣接するロータユニット12C、12Dの回転翼14、14も、互いに逆方向に回転して揚力を得る。ただし、本体11の重心に対し対称の位置関係にある例えばロータユニット12A、12Dの回転翼14、14は、同じ方向に回転して揚力を得る。
【0018】
本実施形態では、例えばロータユニット12A、12Dの回転翼14、14が時計回り方向(CW;clockwise)に回転し、ロータユニット12B、12Cの回転翼14、14が反時計回り方向(CCW;counterclockwise)に回転するように駆動される。なお、ここでの説明では、時計回り方向(CW)への回転を正転とし、反時計回り方向(CCW)への回転を逆転としている。また、本実施形態では、4つのロータユニット(回転翼)を備えるドローンを例に説明するが、例えば回転翼が6つ以上あるドローンを本発明に適用してもよい。
【0019】
ドローン10の本体11内には制御ユニット16が設けられている。ドローン10においては、この制御ユニット16による回転翼14の回転数制御により、上昇、下降は勿論のこと、ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸のそれぞれの軸周りでの姿勢が補正される。
【0020】
上述したように、ロータユニット12A、12Dの回転翼14が正転し、ロータユニット12B、12Cの回転翼14が逆転するように駆動される。このように、隣り合う回転翼14同士が逆方向に回転することで、回転モーメントによる作用、反作用が打ち消され、ドローン10の姿勢を安定させることができる。また、全ての回転翼14が同時に回転することで、ジャイロ効果により、上昇姿勢なども安定する。
【0021】
ドローン10が上昇制御を行う場合、ロータユニット12A〜12Dの全ての回転翼14の回転数が予め決められた値(例えばプログラムの指令値)となるように制御される。このとき、本体11には回転翼14による揚力が発生し、その揚力が機体の重力を超えると、ドローン10が上昇する。揚力と機体の重力とをバランスさせることで、ホバリング制御を行うことができる。
【0022】
次に、ドローン10を前進させる場合には、後方側のロータユニット12C、12Dの回転数が、前方側のロータユニット12A、12Bの回転数より高くなるように制御される。これにより、機体が前方に傾き、ドローン10を前進させることができる。
【0023】
また、ドローン10の向きを変える場合、ロータユニット12A〜12Dの回転翼14の回転数が変えられる。例えば、正転するロータユニット12A、12Dの回転数が、逆転するロータユニット12C、12Bの回転数より高くなるように制御すると、機体の向きを右に旋回させることができる。
【0024】
次に、ドローン10に搭載されるエアバック装置20、21を説明する。エアバック装置20は、それぞれの回転翼14の下方に配置され、エアバック装置21は、それぞれの回転翼14の上方に配置されている。
図2はドローン10が線形落下した場合のエアバック装置20、21の作動の様子を示す図であり、
図3は回転落下した場合の作動の様子を示す図である。仮にエアバックが1.5atm(約152kPa)の排気圧で容積20Lがしぼんだとすると、それにより吸収されるエネルギーは約2920Jとなる。例えば質量が10kgのドローンが高さ30mから自由落下した場合のエネルギーは約3000Jとなるから、同条件でエアバックを作動させれば、その衝撃エネルギーを80Jまでに緩和することができる。
【0025】
本実施形態のエアバック装置20、21は、
図4〜6に示すように、ケース23内に折り畳み収納が可能なエアバック24と、外部からの作動トリガーを受けてエアバック24を急速に膨張展開させる、圧縮ガス式のインフレータ25とを備えている。
【0026】
エアバック24の素材としては、例えばナイロン等の合成繊維を用いることができる。エアバック24は、そのような合成繊維を編んだ織布から作られることが好ましい。また、衝撃時のエネルギー吸収効率をより増すために、エアバック24に通気性を持たせてもよい。例えば、エアバック24を若干粗目に編んだ布とすること及び/又はエアバック24の前部に孔部24aを形成して、ガスのリークを敢えて生じるようにしてもよい。
【0027】
本実施形態によるインフレータ25は、CO
2(二酸化炭素)ガスが高圧状態で予め圧縮充填されたガスボンベ26と、ガスボンベ26のガス放出用のニップル27に対し「ねじ込み式」で着脱可能に取り付けられるバルブモジュール28とを備えて構成される。高圧のCO
2ガスが充填された未使用のガスボンベ26は、ニップル27の先端部のガス口が金属膜部(これを「ガス封止部」という。)で密閉されている。ガスボンベ26のニップル27にバルブモジュール28のソケット部29をねじ込んで装着すると、ノズル部31の鋭角状の先端部がガスボンベ26のガス封止部を突き破り、それによりニップル27のガス口が開封される。
【0028】
バルブモジュール28の内部には、ガス放出路32を閉塞する閉塞部33と、作動トリガーにより閉塞部33を破壊可能なイニシエータ部34とを備えている。閉塞部33は、ソケット部29をニップル27にねじ込んだときに開封されたガス封止部の気密状態を更に維持しながら、ガス放出路32を遮断する金属膜として形成される。
【0029】
後述するように、落下判定装置100がドローン10の落下を判定すると、エアバック装置20、21を展開させるための作動トリガー信号TrAが出力される。インフレータ25においては、この作動トリガー信号TrAを受けてイニシエータ部34が起動し閉塞部33を瞬時に破壊する。これにより、ガスボンベ26の高圧のCO
2ガスがインフレータ25から一気に放出され、エアバック24が急速に膨張展開する。
【0030】
本実施形態のエアバック装置20、21によれば、落下モード(線形落下・回転落下)に関らず、衝撃からドローン10本体及び搭載機器を保護し、また地上に居る第三者への危害を抑制することができる。なお、エアバック装置20、21にパラシュートを併用すれば、ドローン10の墜落時の安全性を更に高めることができる。
また、本実施形態では、インフレータ25に不活性ガスであるCO
2を用いるため、墜落時や衝突時の発火の危険性をなくすことができる。また、CO
2のガスボンベ26は、比較的廉価で市場から入手することができ、コストを安く抑えることができる。
また、本実施形態のインフレータ25は、ガスボンベ26がバルブモジュール28にねじ込み式で着脱可能であるため、一度使用されたガスボンベ26を新しいものに交換することができる。したがって、使用済みのエアバック装置20、21の再利用を比較的容易に行うことができる。
また、エアバック24の素材を通気性のある布とすること及び/又はエアバック24の一部に孔部24a等の通気部を形成することにより、衝突初期からエアバック24の内圧を略大気圧に保持して衝撃を緩和するとともに、ガスを通気部から放出させながらエアバック24がしぼむことにより、衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【0031】
かかるエアバック装置のより具体的な実施例をいくつか説明する。なお、以下の説明及び参照される図面において共通又は対応する構成要素については同一の符号を付している。
【0032】
<実施例1>
図7は、実施例1によるエアバック装置のインフレータの構成及びその動作を説明するための図である。インフレータを構成するバルブモジュール281は、ソケット部29の内部壁に配置された閉塞部33を備えている。閉塞部33は、ガスボンベ26の内圧Pに耐え得る強度を有する金属薄膜からなり、ガス放出路32の周囲を覆うようにして袋状に形成されている。
【0033】
イニシエータ部341は、低融点メタル41と、低融点メタル41を介して牽引され伸長した状態で保持されたコイルばね42とを有している。低融点メタル41は低融点導電体からなる。低融点導電体は、所定アンペア以上の電流が流れたときに自ら生じるジュール熱により融解する性質を有する導電金属であり、例えばAg(銀)、Al(アルミ)などの良導体と、Zn(亜鉛)、Sn(錫)、Sb(アンチモン)などの低融点金属との合金を用いることができる。例えば電気フューズの芯線を、本実施例の低融点メタル41に転用してもよい。
【0034】
コイルばね42の一端部は、上述のように低融点メタル41が接続されて引っ張られ、他端部は閉塞部33に接するか近接する位置に固定されている。また、コイルばね42の一端部にはカッター部材43が固定されている。カッター部材43の形状には特に限定はなく、
図7に示すようにニードル状のものでもよいし、図示しないがブレード状であってもよい。また
図7では、カッター部材43がコイルばね42の中に配置しているが、コイルばね42の収縮動作に連動する態様であれば、コイルばね42の外側に配置してもよい。
【0035】
ドローン10が落下中と判定され、駆動回路45に作動トリガー信号TrAが入力されると、所定量の電流が低融点メタル41に流れる。過熱により低融点メタル41が融解破断すると、
図7(b)に示すように、コイルばね42は、その保持状態が解放され、自由長への収縮が開始する。そのコイルばね42の収縮動作に連動して、カッター部材43が閉塞部33に向かって高速で移動し、閉塞部33を突いて破壊する。一旦、閉塞部33に孔が開くと、ガスボンベ26において圧縮状態のCO
2ガスがその孔を急速に押し広げ、そしてガスの内圧Pによって閉塞部33全体が破裂する。これにより、ガスボンベ26から高圧のCO
2ガスが一気に放出され、エアバック24が膨張展開する。
【0036】
この実施例1のエアバック装置によれば、拘束により蓄積されていたコイルばね42の弾性エネルギーがカッター部材43の直線運動に変換され、かつ、高速で移動するカッター部材43が嚆矢となって閉塞部33を瞬時に破裂させる。そのため、作動トリガー信号TrAの発生からエアバック24が有効に膨張展開するまでの作動時間を短くすることができる。
【0037】
<実施例2>
図8は、実施例2によるエアバック装置のインフレータの構成及びその動作を説明するための図である。本実施例2によるバルブモジュール282の閉塞部33は、実施例1と同様に袋状の金属薄膜からなる。イニシエータ部342は、低融点メタル41と、この低融点メタル41で係止され圧縮した状態で保持されたコイルばね42とを有している。低融点メタル41は、実施例1と同様の低融点導電体を用いることができる。
【0038】
コイルばね42の一端部は固定され、他端部は閉塞部33に対向する位置で低融点メタル41に係止されている。また、コイルばね42の他端部にはカッター部材43が固定されている。カッター部材43の形状には特に限定はなく、
図8に示すようにニードル状のものでもよいし、図示はしないがブレード状であってもよい。
【0039】
駆動回路45に作動トリガー信号TrAが入力されると、所定量の電流が低融点メタル41に流れ、過熱により低融点メタル41が融解する。そうすると、
図8(b)に示すように、コイルばね42は、その保持状態が解放され、自由長への伸長が開始する。そのようなコイルばね42の伸長動作に連動して、カッター部材43が閉塞部33に向かって高速で移動し、閉塞部33を突いて破壊する。一旦、閉塞部33に孔が開くと、ガスボンベ26において圧縮状態のCO
2ガスがその孔を急速に押し広げ、そしてガスの内圧Pによって閉塞部33全体が破裂する。これにより、ガスボンベ26から高圧のCO
2ガスが一気に放出され、エアバック24が膨張展開する。
【0040】
この実施例2のエアバック装置によれば、実施例1と同様に、拘束により蓄積されていたコイルばね42の弾性エネルギーがカッター部材43の直線運動に変換され、かつ、高速で移動するカッター部材43が嚆矢となって閉塞部33を瞬時に破裂させる。そのため、作動トリガー信号TrAの発生からエアバック24が有効に膨張展開するまでの作動時間を短くすることができる。
【0041】
<実施例3>
図9は、実施例3によるインフレータの構成及びその動作を説明するための図である。本実施例3のバルブモジュール283には、ソケット部29のガス放出路29を閉塞する閉塞部33として低融点メタルプラグ50が用いられている。低融点メタルプラグ50は、ガスボンベ26の内圧Pに耐え得る強度を有する低融点導電体からなり、実施例1及び2の低融点メタルと同様の金属材料を用いることができる。
【0042】
図10は、ソケット部29を内部壁側から見たときの低融点メタルプラグ50の正面図である。低融点メタルプラグ50は、電気絶縁性を有する基板51の中心部分に配置され、その2つの端部が導電体52、52に電気的に接続している。導電体52、52の電極端子53、53には、リード線54、54が繋がれ、リード線54、54を介して電流が低融点メタルプラグ50に流れるよう構成されている。
【0043】
駆動回路45に作動トリガー信号TrAが入力されると、リード線54、54及び導電体52、52を介して所定量の電流が低融点メタルプラグ50に流れる。低融点メタルプラグ50がジュール熱により温度が融点に達し融解し初めると、その一部に孔が開く。一旦開いた孔(融解部)は、CO
2ガスの内圧Pが集中して急速に押し広げられ、低融点メタルプラグ50(つまり閉塞部33)全体が瞬時に破壊される。これによりガスボンベ26の高圧のCO
2ガスが一気にガス放出路32から放出し、エアバック24が膨張展開する。
【0044】
駆動回路45が電圧制御回路の場合、低融点メタルの融解に必要なワット数Wは、
W=V
2/R(Vは印可電圧、Rは低融点メタルの電気抵抗を意味する。)
で表される。この実施例3によれば、例えば高電圧小電流の作動トリガーで低融点メタルプラグ50をスパークさせることができ、すなわち閉塞部33を破壊する時間を短縮させることができる。
【0045】
<実施例4>
図11は、実施例4によるエアバック装置のインフレータの構成を示す図である。実施例4は上述の実施例3の変形である。本実施例では、実施例3と同様に、閉塞部33に低融点メタルプラグ60を用いる。ただし、本実施例の低融点メタルプラグ60は、その特徴として、ガス放出路32の高圧側において当該ガス放出路32よりも外径が大きい頭部60aを有している。
【0046】
この実施例4によれば、低融点メタルプラグ60の頭部60aがガス放出路32の高圧側にあるため、ガスボンベ26の内圧Pによって低融点メタルプラグ60が破れたり抜け出たりする危険性を小さくすることができる。つまり、低融点メタルプラグ60の強度を小さく(つまり断面積を小さく)することができるので、その電気抵抗Rを大きく設定して上述の融解ワット数Wを小さくすることができる。駆動回路45の出力電圧が同一であれば、融解ワット数Wが小さい低融点メタルのほうが、融解時間がより短くなる。そのため、本実施例では作動時間の更なる短縮を図ることができる。
【0047】
次に、ドローン10の落下を判定する落下判定装置100について説明する。なお、本明細書において「落下」とは、ドローン10が制御不能状態になったときの自由落下を意味し、制御された通常の飛行である「下降」とは区別される。また、ドローン10の加速度のうち、特にz軸方向(鉛直方向)における加速度をZ(g)と表記する。
【0048】
図12は、一実施形態による落下判定装置100の機能構成を示すブロック図である。落下判定装置100は、加速度センサ101と、例えばMPU(マイクロプロセッサユニット)であるプロセッサ102と、メモリ103と、距離センサ104と、ロジック回路105とを備えて構成される。
【0049】
加速度センサ101は、ドローン10の少なくともz軸方向(鉛直方向)の加速度Z(g)を測定できるものであれば、機械式(圧電式、静電容量式)、光学式(光干渉式)の何れの方式のセンサも採用することができる。また、ドローン10の自律飛行制御に用いられるIMU(inertial measurement unit)により、ドローン10の加速度Z(g)を測定してもよい。
【0050】
本実施形態の落下判定装置100においては、ドローン10が制御された通常の飛行中にも関わらず、誤って落下と判定されないようにするために、上昇、下降、移動、一定範囲の振動等を伴う通常飛行動作を除外するフィルタリング処理が行われる。本実施形態では、プロセッサ102が、加速度センサ101の出力である加速度Z(g)のみに基づき、次に例示するデータ処理アルゴリズムに従って、フィルタリング処理を行う。
【0051】
ドローン10が上昇するときには、一般に加速度Z(g)は、重力加速度G(1G=9.8m/s
2)よりも大きくなるであろう。一方、ドローン10が下降するときには、加速度Z(g)は1Gよりも小さくなるが、ゼロ又はマイナスとなるときもある。ただし、ドローン10が上昇又は下降する過程において一定の速度又は静止に近づくと、測定される加速度Z(g)は1Gの値に近づく。すなわち、加速度Z(g)が一時的にゼロ(0G)となった場合でも、その状態が継続しなければ、制御された通常の飛行であると判別できる。
【0052】
他方、線形的な落下の場合には、加速度Z(g)は1Gから0Gに単純に変化する。また、回転的な落下の場合には、1Gから0Gへの変化の過程で振動を伴うことが観測されている。そこで、プロセッサ102は、
図13のフローチャートに示される処理アルゴリズムに従い、落下に関する判定処理を行うことができる。
【0053】
本実施形態の処理アルゴリズムでは、先ず、プロセッサ102が、加速度センサ101により測定される加速度Z(g)を監視する(ステップS11)。プロセッサ102は、加速度Z(g)がゼロ近傍の所定範囲になったと判断したとき(ステップS12;YES)、落下開始トリガーをメモリ103に記憶しセットする(ステップS13)。しかし、プロセッサ102は、メモリ103が落下開始トリガーを記憶してから所定時間T1が経過する前に、加速度Z(g)が前記所定範囲外に戻ったと判断したとき(ステップS15;YES)、ドローン10が落下ではなく通常の飛行の状態にあると判定する。その場合、プロセッサ102は、メモリ103をリセットし、落下開始トリガーをクリアする(ステップS16)。
【0054】
プロセッサ102は、メモリ103が落下開始トリガーを記憶した後、所定時間T1が経過したと判断したとき(ステップS14;YES)、ドローン10が落下の状態にあると判定し、エアバック装置20、21を展開させるための作動トリガー信号TrAを出力する(ステップS17)。
【0055】
なお、一般に物体の自由落下は、基本的には静止状態から始まる。つまり、落下開始トリガーが生成された直前の静止点がわかれば、それを落下原点とみなすことができる。そのため、プロセッサ102における処理アルゴリズムにより、機体の移動とともに仮想の落下原点を連続にて作り出し、落下判断に入る前提条件として、次のようにして真の原点を確立してもよい。落下原点を作るための方法、数式は多様であると思われるが、落下開始トリガーが発生した直前に加速度Z(g)が1Gよりも小さくなった時点(加速度センサ101の定常ノイズを考慮すると、そのノイズ範囲から抜け出た時点)を、落下原点とみなすことができる。この態様の処理アルゴリズムによれば、事実上の落下の判断時間を短縮することができる。
【0056】
図14に、この実施形態の処理アルゴリズムのフローチャートを示す。先ず、プロセッサ102は、加速度センサ101により測定される加速度Z(g)を監視する(ステップS21)。プロセッサ102は、加速度Z(g)が1G近傍の所定範囲である場合(ステップS22;YES)、仮想の落下原点を更新する(ステップS23)。また、加速度Z(g)が、ゼロ近傍の所定範囲になったと判断したとき(ステップS24;YES)、直近に更新した原点を落下原点とみなす(ステップS25)。そして、落下開始トリガーをメモリ103に記憶しセットする(ステップS26)。しかし、プロセッサ102は、落下原点から所定時間T2が経過する前に加速度Z(g)が前記所定範囲外になったと判断したとき(ステップS28;YES)、メモリ103をリセットし、落下開始トリガーをクリアする(ステップS29)。
【0057】
プロセッサ102は、落下原点から所定時間T2が経過したと判断したとき(ステップS27;YES)、ドローン10が落下の状態にあると判定し、作動トリガー信号TrAを出力する(ステップS30)。
【0058】
図12の距離センサ104は、地表とドローン10との距離である対地表距離を測定するセンサである。ただし、ここでいう「対地表距離」は、ビルなどの構造物の上空をドローン10が飛行する場合、飛行高さではなく該構造物の屋上とドローン10との距離となる。距離センサ104としては、例えば、高度計(気圧センサ、GPSセンサ)、超音波距離センサ、レーザ距離センサなどを採用することができる。しかし、高度計では、上述した構造物に対する距離が測定できないため、超音波距離センサ又はレーザ距離センサなどを、高度計とともに併用することが好ましい。
【0059】
ロジック回路105は、最終的にドローン10の落下を判定するための回路であり、より具体的にはコンパレータ106と、判定回路107とを備える。コンパレータ106は、距離センサ104により測定された対地表距離に対応する出力値Dmと、エアバック装置作動の限界高度hに対応する所定の閾値Dthとを比較する。判定回路107は、メモリ103とコンパレータ106の出力の論理和を演算するアンド回路からなる。すなわち、判定回路107は、メモリ103に落下開始トリガーが記憶され、かつ、対地表距離の出力値Dmが前記所定の閾値Dth以下となったとき、ドローン10が落下の状態にあると判定する。所定の閾値Dthは、エアバック装置の作動が開始してから有効となるまでの間にドローン10が落下する距離が考慮される。
【0060】
そして、判定回路107は、ドローン10が落下の状態にあると判定すると、作動トリガーをメモリ108に記憶する。上述したように、作動トリガーTrAが出力されると、エアバック装置20、21が作動する。
【0061】
このように、落下判定装置100は、判定回路107又はプロセッサ102の何れかが先に落下の状態を判定したときに、エアバック装置20、21を展開するよう構成されている。特に、落下開始トリガーを前提条件に落下が判断されるので、通常の離陸、着陸、又は低空飛行時に誤って「落下」と判定される不具合を防ぐことができる。
のガスボンベ26と、そのボンベにねじ込み式で装着されるバルブモジュール28とから構成される。バルブモジュール28は、気密を維持して内部のガス放出路32を閉塞する閉塞部33と、作動トリガーTrAの入力により閉塞部33を破壊するイニシエータ部34とを備える。例えば閉塞部33を低融点メタル50で形成し、作動トリガーTrAの電流で低融点メタル50を短時間で融解することで、破壊された閉塞部33を通じてエアバック24にCO