(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プーリーばね(60)は、内側端(61)が前記ラチェット(47)と一体化されており外側端(62)が前記プーリー(38)と一体化されている渦巻き状のばねである
ことを特徴とする請求項1に記載の機構(5)。
前記プーリー(38)には、制限用止め(65)があり、前記ラチェット(47)には、前記チェーン(40)が前記プーリー(38)に対して牽引力をはたらかせるかぎり前記制限用止め(65)に作用する歯(59)があり、
この歯(59)は、前記読み位置にある前記時パート(10)によって前記チェーン(40)にはたらく牽引力がなくなるとすぐに前記制限用止め(65)から角度的に外れる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機構(5)。
前記ストライク機構の列(68)は、前記ラック(66)の前記歯付き区画(67)と噛み合う入力ピニオン(73)と、及び前記バレルシャフト(33)と回転に関して一体化された出力ピニオン(74)とを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の機構(5)。
前記ストライク機構の列(68)は、前記入力ピニオン(73)と回転に関して一体化されており前記出力ピニオン(74)と噛み合うマルチプライヤピニオン(75)を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の機構(5)。
戻りベアリング(45)を有し、この戻りベアリング(45)に接するように、前記チェーン(40)が前記ストライク機構バレル(32)と前記時パート(10)の間にて延在している
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の機構(5)。
【背景技術】
【0002】
リピーター機構(ここでは単に「リピーター」と呼ぶ)には、ユーザー(又は着用者)が任意の瞬間に押しボタンに圧力を与えることによってアクチュエートされたときに、その瞬間に計時器の針によって示されている時をストライクする機能がある。
【0003】
リピーターは、時計製造における極めて精巧な複雑機構である。これに熟達するようになることは、時計技師の頂点にいることを意味する。リピーターは元々は暗い場所においても時刻を知らせることを意図されたものであったが、今日のリピーターは、腕時計に非常に大きな価値を与えるものとなっている。
【0004】
いくつかのタイプのリピーターがある。書籍Les Montres Compliquees (Ed. Simonin, Fifth edition, 2013)において、F. Lecoultreは、5つのタイプのリピーターを列挙しているが、実質的に(最も一般的な)以下の2つのタイプを区別して紹介している。すなわち、
− 時とは別に分をすべてストライクするミニッツリピーター
− 時とは別に、経過した四半時(15分)の数をストライクし、そして、可能性としては残りの分の数をストライクする四半時リピーター
である。どんなタイプであっても、リピーター機構は、標準として以下のものを有する。
− 少なくとも1つの時スネール(hour snail)
− 時フィーラスピンドルを支えており、
・ 時フィーラスピンドルが時スネールから角度的に外れている待機位置と、
・ 時フィーラスピンドルが時スネールに接触するようになる読み位置と
の間にて時軸のまわりに回転するようにマウントされている少なくとも1つの時パート
− 時パートをその待機位置の方に戻すばね、及び/又は
− 時パートに連結しているストライク機構バレル
である。
【0005】
着用者によるアクションがないときには、時パートはその待機位置にある。
【0006】
押しボタンを動かすと、ストライク機構バレルが強制的に回転させられ、時パート自身が、ばねに対抗するようにその読み位置の方へと動く。
【0007】
押しボタンを放すと、時パートがその待機位置の方へと戻る。その途中において、時パートは、ハンマーと(直接又は間接的に)噛み合う。このハンマーは、時パートによってカバーされる2つの位置(読み位置と待機位置)の間の角度的行程に比例する回数であってスネール上で読み取られる時の数と同じ回数、ゴングをストライクする。
【0008】
旧式リピーターと呼ばれるリピーターでは、F. Lecoultreによって説明されているように(前記文献の68〜69ページとFig.19、Table 17)、時パートへのバレルの連結は、ロッカー(rocker)とチェーンによって行われる。
【0009】
また、F. Lecoultre (前記文献の73〜74ページ)によって説明されているように、この連結は、現代的なリピーターにおいて、ラックと車列によって置き換えられている。対向する2つのばね、すなわち、時パートをその待機位置の方へと強制的に動かすバレルばねと、時パートをその読み位置の方へと強制的に動かす時ばね、が設けられる。バレルばねを連結しつつ、着用者が時ばねをアクチュエートすると、時ばねを自由にし、このことによって、時パートをその読み位置の方へと戻す。時ばねを放すと、逆に、バレルばねを自由にし、このことによって、時のストライク機構がアンワインドされつつ、時パートを(時ばねに対抗するように)その待機位置の方へと戻す。
【0010】
このタイプのリピーターは完全な満足を与えない。なぜなら、バレルばねがはたらかせる駆動トルクが一定ではないからである。結果として、動作時に、時パートに与えられる負荷にばらつきが発生し、このことによって、時パートにおいて機械的疲労サイクルが発生することがあり、これは、割れの原因となる。
【0011】
最近、Breguet model 7087 "Tradition"の腕時計に取り付けられているリピーター機構であって、歯車列がチェーントランスミッションによって置き換えられているようなまったく新しいリピーター機構が提案されている。
【0012】
このトランスミッションは、逆に機能する上記の旧式のリピーターのチェーンと混同されるべきではない。
【0013】
より正確には、このリピーターにおいて、バレルは、
・ バレルシャフト
・ バレルドラム
・ 内側端がバレルシャフトと一体化されており外側端がバレルドラムと一体化されているバレルばね
・ チェーンが巻かれたプーリー
を有する。
【0014】
チェーンは、近位端にてプーリーに、そして、遠位端にて時パートにフックされている。着用者による押しボタンに対するアクションがないと、バレルばねは、チェーンをきつくし、このことによって、時パートがその待機位置に保持される。着用者による押しボタンに対するアクションがあると、バレルシャフトが強制的に回転させられ、このことによって、チェーンが自由になり、したがって、時パートが自由になる。この時パートは、その読み位置の方に、時ばねによって戻される。
【0015】
着用者が押しボタンを放したときに、バレルシャフトにはたらくバレルばねの駆動トルクは、時ばねによって時パートにはたらく抵抗トルクよりも大きく、このバレルばねが、時ばねをその待機位置の方へと戻す。その途中で、時がストライクされる。
【0016】
四半時及び/又は分の読みも同じ原理に従う。四半時スネール(又は分スネール)と四半時パート(又は分パート)が、四半時フィーラスピンドル(又は分フィーラスピンドル)を支えており、この四半時フィーラスピンドル(又は分フィーラスピンドル)は、読み位置において、四半時スネール(又は分スネール)と接触することができる。
【0017】
この機構は、空間と組み立ての点に関して有利である。実際に、バレルと時パートの間を機械的に接続するチェーンによって、これらのバレルと時パートを互いに離れた位置に配置することができる。したがって、腕時計のミドル部における時パートの位置にかかわらず、バレルを押しボタンの近くに配置することができる。このことによって、複雑なレバー戻しに依存することを避けることができ、腕時計の動作信頼性を向上させることができる。
【0018】
しかし、このチェーン機構は、全部かゼロかベースで動作すること、すなわち、ストライクされる時にかかわらず着用者が完全に押しボタンを押すこと、に起因する課題がある。したがって、バレルをアクチュエートすると、時パートの角度的行程にかかわらず、チェーンの完全なアンワインドが行われる。読み取られるべき時が(時パート(必要ならば四半時パート)と分パートの最大行程に対応する)12時59分である場合(単独で)、チェーンが張られ続ける。しかし他のすべての場合には、これらの部分の角度的行程は最大ではなく、チェーンの残りの行程(時パートの読み位置においてこの行程をチェーンが越える)によって、チェーンの緩みや浮きが発生する。
【0019】
バレルを放すと、チェーンと時ばねの間で再び荒々しくチェーンが張られるまで、バレルばねには、いずれの抵抗力も及ぼされない。結果として、チェーンにはたらく張力にピークが発生する。このことによって、チェーンの結合リンクの軸や時パート上のチェーンの固定点において剪断疲労が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このような状況で、第1の目的は、上記のようなチェーンを備えたリピーター機構において、(特に、チェーンの)可動部品の機械的疲労を最小限にすることである。
【0021】
第2の目的は、より正確には、バレルばねの作用によってチェーンに発生する力を滑らかにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1に、ストライク機構を備えた計時器のためのリピーター機構を提案する。これは、
時スネールと、
時フィーラスピンドルを支えており、かつ、前記時フィーラスピンドルが前記時スネールから角度的に外れている待機位置と、前記時フィーラスピンドルが前記時スネールに接触する読み位置との間にて、時軸のまわりを回転するようにマウントされている時パートと、
前記時パートをその読み位置の方へと戻す時ばねと、
バレルシャフト、バレルばね内側端が前記バレルシャフトと一体化されており外側端が前記バレルドラムと一体化されているバレルドラム、及びプーリーを有するストライク機構バレルと、及び
部分的にプーリー上にて巻かれることができ、近位端が前記プーリーに、そして、遠位端が前記時パートにフックされるチェーンと
を有する。
【0023】
このリピーター機構においては、特に、
前記プーリーは、前記バレルシャフトのまわりを回転するように動き、
前記ストライク機構バレルは、ラチェットと、及びプーリーばねとを有し、
前記ラチェットは、前記バレルシャフトと回転に関して一体化されており、前記時パートが前記チェーンに対して牽引力をはたらかせるかぎりプーリーと回転に関して連結しており、前記読み位置において前記時パートによって前記チェーンにはたらく牽引力がなくなるとすぐに前記プーリーから回転に関して分離され、
前記プーリーばねは、前記ラチェットと前記プーリーの間に配置され、前記ラチェットが前記プーリーから回転に関して分離されているときに前記チェーンを張っている状態に維持する抵抗トルクを前記プーリーに対してはたらかせる。
【0024】
したがって、ストライクされる時がいずれであっても、チェーンは常に張られる。結果として、時間が経過するにしたがってチェーンが(可動部品のアセンブリーとともに)受ける機械的疲労が減り、これによって、本機構の動作信頼性(と動作寿命)が向上する。
【0025】
第2に、ミドル部と、及びこのミドル部にマウントされた前記リピーター機構とを備える腕時計を提案する。
【0026】
下に記載した様々な更なる特徴は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0027】
好ましくは、前記プーリーばねは、内側端が前記ラチェットと一体化されており外側端が前記プーリーと一体化されている渦巻き状のばねである。
【0028】
好ましくは、前記プーリーには、制限用止めがあり、前記ラチェットには、前記チェーンが前記プーリーに対して牽引力をはたらかせるかぎり前記制限用止めに作用する歯があり、この歯は、前記読み位置にある前記時パートによって前記チェーンにはたらく牽引力がなくなるとすぐに前記制限用止めから角度的に外れる。
【0029】
当該リピーター機構は、さらに、軸のまわりを回転するようにマウントされており歯付き区画があるラックと、及び一方では前記ラックの前記歯付き区画と噛み合い、そして、他方では前記バレルシャフトと噛み合うストライク機構の列とを有することができる。
【0030】
この場合、当該腕時計は、好ましいことに、ミドル部とリピーター機構とは別に、押しボタンがラックに対して駆動トルクをはたらかせない分離位置と、押しボタンがラックに駆動トルクをはたらかせてストライク機構の列を介してバレルシャフトを回転させる連結位置との間を並進運動するようにミドル部にマウントされた押しボタンを備えている。
【0031】
前記ストライク機構の列は、例えば、前記ラックの前記歯付き区画と噛み合う入力ピニオンと、及び前記バレルシャフトと回転に関して一体化された出力ピニオンとを有する。
【0032】
前記ストライク機構の列は、好ましくは、前記入力ピニオンと回転に関して一体化されており前記出力ピニオンと噛み合うマルチプライヤピニオンを有する。
【0033】
前記リピーター機構は、前記バレルドラムによって担持される非対称の歯列がある歯付きクラウンと噛み合うロック爪を有することができる。
【0034】
前記リピーター機構には、同様に、戻りベアリングを設けることができ、この戻りベアリングに接するように、前記チェーンが前記ストライク機構バレルと前記時パートの間にて延在している。
【0035】
添付の図面を参照しながら以下の実施形態についての説明を読むことで、本発明の他の目的や利点が明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1において、計時器を部分的に示しており、これは、この場合、腕時計1である。腕時計1は、内部体積3を定めるミドル部2を有する。図示した例において、腕時計1は、腕に着用されるように設計されており、このために、そのミドル部2には、突き出ているホーン4があり、このホーン4に、ストラップ(図示せず)が固定されるように意図されている。
【0038】
腕時計1は、少なくとも時と分を示すように設計されている時計用ムーブメントを有する。このムーブメントは、ミドル部2によって定められる内部体積3内に収容されそこに固定されるように意図されたプレートを有する。
【0039】
このムーブメントは、さらに、いくつものサブアセンブリーによって一緒に集められた様々な機能的部品を有する。あるサブアセンブリーが、時、分、そして、必要ならば秒、の表示とは異なる機能を有する場合、「複雑機構」と呼ばれる。
【0040】
したがって、図示している計時器(すなわち、腕時計1)には、ストライク機構があり、そして、現在の時をストライクする目的のために、リピーター機構を有する。このリピーター機構は、同様に「リピーター複雑機構」、又は単に「リピーター」5と呼ばれる(以下において、このように呼ぶ)。
【0041】
リピーター5は、まず、少なくとも1つの時スネール6を有する。この時スネール6は、軸A1のまわりに回転するようにマウントされる。このスネール6は、概して渦巻き状であり、その周部に一連の12の角度的区画があり、軸A1からの距離は減少している。
【0042】
時スネール6は、12個の尖っている歯がある時スター7と回転に関して一体化されている。
【0043】
図示した例において、リピーター5は、同様に、軸A2のまわりを回転するようにマウントされた四半時スネール8を有する。四半時スネール8は、滑らかな隣接する面によって分離された、軸A2からの距離が減少する4つの角度的区画を有する。
【0044】
リピーター5は、さらに、四半時スネール8と回転に関して一体化された分スネール9を有する。この分スネール9には、周部にわたってノッチが形成された4つのブランチがあり、この周部は、滑らかな隣接する面によって分離しており、これらの隣接する面は、四半時スネール8の隣接する面の延長上にて延在している。
【0045】
四半時スネール8は、その周部の近傍にて、フィンガーを支えている。このフィンガーは、1回転ごとに時スター7の歯と噛み合い、この時スター7を12分の1回転、回転させる。これは、1時間の進行を意味している。
【0046】
リピーター5は、第2に、軸A3のまわりを回転するようにマウントされ時フィーラスピンドル11を支える時パート10を有する。
【0047】
この時パート10は、
・ 時フィーラスピンドル11が時スネール6から角度的に外れている待機位置と、
・ 時フィーラスピンドル11が時スネール6に接触するようになる読み位置と
の間を軸A3のまわりに回転するようにマウントされる。
【0048】
図3に示しているように、時パート10には、マルチプライヤ列14を介してレギュレーター13と噛み合う歯付き区画12がある。図示した例において、レギュレーター13は、磁気的なレギュレーターである。このレギュレーター13は、ステーター16内にて回転するようにマウントされたローター15を有する。このローター15には、限界の回転速度があり、この限界の回転速度は、ローター15にマウントされた強磁性の可動慣性ブロックにはたらく遠心力と、ステーター16が設けられている磁石の対によって発生する交番磁場によって誘導されるフーコー電流によって慣性ブロックに発生する電気モーター反力との間の平衡によって決まる。
【0049】
時パート10には、12個の突き出ている歯がある時ラック18を備える外側アーム17がある。時パート10が読み位置から待機位置へと戻る間に、時ラック18は、時ハンマー(図示せず)をアクチュエートする。この時ハンマーは、所定の音響周波数に合わせられた時ゴングをストライクする。この音響周波数は、場合によって、腕時計1の構造部分(例えば、ミドル部2)によって増幅される。時ハンマーは、時パート10が読み位置から待機位置へと戻る間に時ハンマーをアクチュエートするラック18の歯の数と同じ回数(1〜12)、時ゴングをストライクする。
【0050】
リピーター5は、第4に、時パート10をその読み位置の方へと戻す時ばね19を有する。図示した例において、時ばね19は、渦巻き状のばねである。この時ばね19は、好ましいことに、内側端20によって時パート10上に固定され、外側端21によってプレートと一体的な軸に固定される。
【0051】
リピーター5は、
図2に示している例において、四半時フィーラスピンドル23を支える四半時パート22を有しており、これは、
・ 四半時フィーラスピンドル23が四半時スネール8から角度的に外れている待機位置と、
・ 四半時フィーラスピンドル23が四半時スネール8に接触する読み位置と
の間にて軸A3のまわりを回転するようにマウントされる。
【0052】
リピーター5は、
図2に示している例において、さらに、分フィーラスピンドル25を支える分パート24を有し、これは、
・ 分フィーラスピンドル25が分スネール9から角度的に外れている待機位置と、
・ 分フィーラスピンドル25が分スネール9に接触する読み位置と
の間にて軸A3のまわりを回転するようにマウントされる。
【0053】
リピーター5は、同様に、四半時パート22をその読み位置の方に戻す四半時ばね26と、及び分パート24をその読み位置の方に戻す分ばね27とを有する。
【0054】
分パート24には、外側アーム28上に、14個の突き出ている歯がある分ラック29が設けられている。分パート24が読み位置から待機位置へと戻る間に、分ラック29は、分ハンマー(図示せず)をアクチュエートする。この分ハンマーは、時ゴングの音響周波数とは異なる(例えば、低い)所定の音響周波数に合わせられた分ゴングをストライクする。分ハンマーは、分パート24が読み位置から待機位置へと戻る間にその分ハンマーをアクチュエートする分ラック29の歯の数と同じ回数(0〜14回)、分ゴングをストライクする。
【0055】
四半時パート22には、外側アーム30上に、一連の3つの突き出ている歯がある四半時ラック31がある。四半時パート22が読み位置から待機位置へと戻る間に、四半時ラック31は、時ハンマーと分ハンマーをほとんど同時にアクチュエートして、近い2つの音のシーケンスを発生させる。時ハンマーと分ハンマーは、対応するゴングを、四半時パート22が読み位置から待機位置へと戻る間にそのゴングをアクチュエートする四半時ラック31の一連の歯の数と同じ回数(0〜3回)ストライクする。
【0056】
図2に示すように、同じ軸A3のまわりを回転するようにマウントされた時パート10、四半時パート22及び分パート24は、軸A3のまわりのそれらの一体化された回転の間に、分、四半時、時の順で読みが順次的に行われるように、互いに対して角度的に外れている。しかし、ストライクは、時、四半時、分の逆の順で行われる。
【0057】
リピーター5は、第5に、ストライク機構バレル32を有する。
【0058】
このストライク機構バレル32は、バレルの軸A4のまわりを回転するようにマウントされる。ストライク機構バレル32は、例として以下のようないくつかの構成要素を有するサブアセンブリーである。
・ バレルシャフト33
・ バレルドラム34
・ 内側端36がバレルシャフト33と一体化されており外側端37がバレルドラム34と一体化されているバレルばね35
・ プーリー38
【0059】
バレルシャフト33、バレルドラム34及びプーリー38の3つすべては、バレルの軸A4のまわりを回転するようにマウントされている。これらの構成要素については、下においてさらに詳細に説明する。
【0060】
好ましい実施形態において、プーリー38は、周部カムパス39を定めている。
【0061】
リピーター5は、第6に、プーリー38に部分的に巻かれることができるチェーン40を有する。より正確には、カムパス39上にチェーンを巻くことができる。チェーン40は、近位端41にてプーリー38に、そして、遠位端42にて時パート10に、フックされている。
【0062】
チェーン40は、互いに連接された複数のリンク43によって構成している。チェーン40の近位端41にあるリンク43は、プーリー38と一体的なピン44に固定されている。チェーン40の遠位端42にあるリンク43は、それ自身、時パート10の外側アーム17と一体的なピン(見えない)に固定されている。
【0063】
図2と
図3に示している1つの実施形態において、リピーター5は、戻りベアリング45を有しており、この戻りベアリング45に接するように、チェーン40がストライク機構バレル32と時パート10の間に延在している。この戻りベアリング45は、好ましいことに、ベアリング(例えば、ボールベアリング)の形態の外観を有する。
【0064】
図4、5及び8に示しているように、プーリー38は、バレルドラム34とバレルシャフト33とは別の部品である。より正確には、プーリー38は、バレルシャフト33のまわりを回転するように動くことができる。
【0065】
図4と
図5に示している1つの実施形態において、ストライク機構バレル32は、バレルシャフト33とプーリー38の間に配置されたベアリング46(例えば、ボールベアリング)を有する。
【0066】
図4と
図5に示しているように、ストライク機構バレル32は、バレルシャフト33と回転に関して一体化されているラチェット47を有する。このラチェット47は、
・ 時パート10がチェーン40に対して牽引力をはたらかせるかぎりプーリー38と回転するように連結しており、また、
・ 読み位置にある時パート10によってチェーン40にはたらく牽引力がなくなるとすぐに回転に関してプーリー38から分離される。
【0067】
図示している1つの実施形態において、バレルシャフト32には、ピボット48と、及びバレルドラム34がマウントされるアーバー49(ピボット48にマウントすることができ、また、一体成形されるようにピボット48とともに形成することができる)とがある。アーバー49には、外側に、バレルばね35の内側端36が固定されるフック50がある。
【0068】
ピボット48には、アーバー49とは反対側の一端にて、正方形の断面を有する頭部51がある。
【0069】
バレルドラム34には、基部52とスカート部54があり、この基部52には、その中心に穴53がある。この穴53を通してバレルドラム34にアーバー49が(すきまがあるように)通される。スカート部54は、基部52の周部上で基部52から軸方向に突き出ている。バレルばね35の外側端37は、例えば、バレルばね35(可能性としては、マウントされ溶接されたブレードの形態)に形成された超過厚み55によってスカート部54に固定される。この超過厚み55は、ノッチ56に収容され、このノッチ56は、スカート部54の内壁にて空欠部を形成している。
【0070】
図2〜5に示しているように、バレルドラム34は、その周部上(より正確には、図示した例において、そのスカート部54の周部上)にて、非対称の歯列がある歯付きクラウン57を支えており、リピーター5は、この歯付きクラウン57と係合しているロック用ラチェット58を有し、これによって、チェーン40のアンワインド方向のバレルドラム34の回転をロックする。
【0071】
図8に示している好ましい実施形態において、ラチェット47は、ピボット48と一体的に形成される。ラチェット47は、好ましいことに、ディスクの形態である。図示した例において、ラチェット47には、歯59がある。
図7、10及び12において明確に示してあるように、歯59は、ラチェット47の周部から半径方向に突き出ている。
【0072】
ストライク機構バレル32には、ねじれて動作しラチェット47とプーリー38の間に配置されるプーリーばね60を有し、このプーリーばね60は、ラチェット47が回転に関してプーリー48から分離されているときに、チェーン40を張った状態に維持する抵抗トルクをプーリー38にはたらかせる。
【0073】
図7、10及び12に示している好ましい実施形態において、プーリーばね61は、渦巻き状のばねであり、その内側端61は、ラチェット47と一体化されており、その外側端62は、プーリー38と一体化されている。プーリーばね60は、高降伏点鋼で製造することができる。1つの変種においては、プーリーばね60は、ケイ素で作られている。
【0074】
図示した例において、プーリーばね60の内側端61は、ラチェット47に形成される相補的なノッチ63に嵌められる第1のスタッドとして形成される(
図4の最も上と右側にある円形の詳細図を参照)。また、プーリーばね60の外側端62は、プーリー38に形成される相補的なノッチ64に嵌められる第2のスタッドとして形成される(
図4の左側にある円形の詳細図を参照)。
【0075】
図4、7、10及び12に示しているように、プーリー38には、制限用止め65がある。この制限用止め65は、例えば、プーリー38の周部の近傍に形成されている。図示した例において、制限用止め65は、プーリー38に形成されたボーリング穴内に入れ込まれたマウントされたピンの形態である。
【0076】
チェーン40がプーリー38に対して牽引力をはたらかせるかぎり、ラチェット47の歯59が制限用止め65にはたらく。逆に、読み位置の時パート10によってチェーン40にはたらく牽引力がなくなるとすぐに、ラチェットの歯59は制限用止め65から角度的に外れる。
【0077】
図4と
図5に示していように、リピーター5は、第7に、
− 固定されたラックの軸A5のまわりを回転するようにマウントされ歯付き区画67を備えるラック66と、及び
− 一方でラック66と噛み合い他方でバレルシャフト33と噛み合うストライク機構の列68と
を有する。
【0078】
ラック66は、フックの形を有する。ラック66には、ボアリング穴69が形成されており、このボアリング穴69によって、ラック66がその軸A5にマウントされる。このボアリング穴69の両側にて、ラック66は、レバー70と、曲がっているアーム72とを有しており、このレバー70は、その端においてボタン71(このボタン71は、図示した例において、レバー70の端に形成された穴にマウントされ入れ込まれる)を支えており、曲がっているアーム72には、歯付き区画67が形成されている
【0079】
ラック66は、待機位置(
図6)と完全連結位置(
図11)の間に軸A5のまわりに回転するようにマウントされる。
【0080】
図4、5、6、9及び11に示している1つの実施形態において、ストライク機構の列68は、ラック66と噛み合う入力ピニオン73と、及びバレルシャフト33と回転に関して一体化された出力ピニオン74とを有する(このために、出力ピニオン74には、例えば、その中心にてバレルシャフト33の頭部51に対して相補的な正方形の凹部が形成される)。
【0081】
図示した例において、ストライク機構の列68は、さらに、入力ピニオン73と回転に関して一体化されており出力ピニオン74と噛み合うマルチプライヤピニオン75(
図6、9及び11において上部が部分的に開いている)を有する。
【0082】
ラック66と、ストライク機構の列68のピニオン73、74及び75は、待機位置と完全連結位置の間のラック66の全体の角度的行程が、プーリー38のほぼ完全な1回転に対応し、これによって、カムパス39からのチェーン40がほぼ全体的にアンワインドするような、寸法構成を有し、取り付けられる。
【0083】
図示した例において、ラック66は、12個の歯(その9個半は、待機位置と完全連結位置の間のラック66の行程の間に用いられる)を有しており、入力ピニオン73は、14個の歯を有している。マルチプライヤピニオン75には22個の歯があり、出力ピニオン74には15個の歯がある。したがって、ラック66と出力ピニオン(すなわち、バレルシャフト33、したがって、ラチェット47)の間の伝達比は、0.99である。これは、すなわち、ラック66の全体の行程において(その待機位置とその完全連結位置の間)、358°のラチェットの1回転に対応する。
【0084】
図4の右側の下部に描かれている詳細挿入図、また、
図6、9及び11に示しているように、ラック66には、好ましいことに、歯付き区画67の自由端において、制限用止め76がある。この制限用止め76は、ここにおいて、マウントされ入り込む部品の形態であり、ラック66の完全連結位置において、入力ピニオン73に当接するようになり、このようにして、この入力ピニオン73のためのトラベルの端における制限用止めを形成する。
【0085】
好ましい実施形態において、制限用止め76は、入り込むことによってロックするようにマウントされているが、偏心性を形成するように角度的なクリアランスを許容することができる。このことによって、時計技師が、完全連結位置へと動くトラベルの端においてラック66の角度的位置(したがって、ラチェット47の対応する角度的位置)を正確に制御することができる。
【0086】
図1に示しているように、腕時計1は、押しボタン77を備える。この押しボタン77は、
・ 押しボタン77がラック66に駆動トルクをはたらかせていない分離位置と、
・ 押しボタン77が駆動トルクを発生させるラック66(
図9、10及び12の最も下にて白い矢印によって示している)に推進力をはたらかせ、このことによって、ストライク機構の列68を介してバレルシャフト33を回転させる連結位置
の間にて、ミドル部2に対して並進運動するようにマウントされる。
【0087】
リピーター5は、以下の形態で動作する。ロック用ラチェット58によって保持されるバレルドラム34が、矢印X1(
図3)によって示している方向にのみバレルの軸A4のまわりに回転することができることがわかる。
【0088】
ラック66は、バレルの軸33に力によって巻かれるバレルばね35のねじれ力によって待機位置の方に恒久的に戻される。
【0089】
押しボタン77に圧力がかけられないかぎり、ラック66は待機位置を占める。バレルばね35の外側端37が固定されており、また、バレルドラム34と一体化されており、それ自身がラチェット58によって歯付きクラウン57と係合するように保持されるので、バレルばね35は、バレルシャフト33に駆動トルクを矢印X1(
図3)の方向にはたらかせる。ラチェット47がバレルシャフト33と回転に関して一体化されていることを既に説明した。したがって、このトルクは、ラチェット47に伝達され、このラチェット47の歯59が、プーリー38に設けられた制限用止め65にはたらくようになる(
図7における時計回りの方向に)。したがって、プーリー38に駆動トルクが伝達され、したがって、このプーリー38は、チェーン40を牽引し(
図3の矢印Y1によって示される方向に)、その牽引の力は、チェーンが自身の部分を残す位置におけるプーリー38の半径に対する、バレルシャフト33が発生させる駆動トルクの関係によって決まる。
【0090】
この牽引力は、時ばね19が発生させた抵抗トルクによって(チェーン40が取り付けられている時パート10を介して)チェーン40に発生する抵抗力よりもはるかに大きく、
図3の矢印Z1によって示される方向に時パート10を回転させて動かす傾向があり、この時パート10を絶えず待機位置に保持し、(チェーン40が取り付けられている)外側アーム17の端は、戻りベアリング45に対してロックされている。
【0091】
リピーター5は、ミドル部2の中心の方向(
図9及び
図10の下側にある白い矢印)に押しボタン77に対して半径方向にはたらく圧力によって着用者によってアクチュエートされる。
【0092】
押しボタン77は、ボタン71を押す。押しボタン77は、
図9と
図10における矢印F1の方向にレバー70を介してラック66をその軸A5のまわりに回転させつつ、ボタン71を動かす。
【0093】
ラック66は、入力ピニオン73と噛み合い、この入力ピニオン73を
図9における矢印F2の方向に回転させる。マルチプライヤピニオン75は、入力ピニオン73と回転に関して一体化されており、同じ向き(矢印F3)に回転する。マルチプライヤピニオン75は、回転すると反対方向(矢印F4)に回転するようにセットされた出力ピニオン74と噛み合う。
【0094】
出力ピニオン74とラチェット47と一体的なバレルシャフト33は、バレルばね35を連結状態にしつつ、出力ピニオン74の回転方向(
図10の矢印F5)にラチェット47を駆動する。実際に、バレルばね35の外側端37が、回転するようにバレルドラム34に固定され続けつつ、バレルシャフト33は、自身のまわりにバレルばね35の内側端36が回転するようにする。バレルドラム34は、ラチェット58によって歯付きクラウン57との係合状態に保持される。
【0095】
その間に、時パート10によってチェーン40が引かれ(
図3の矢印Y2、
図10の矢印F6)、時パート10は、時ばね19によって戻される(
図3の矢印Z2)。この牽引によって、プーリーが回転する(
図3の矢印X2と
図9と
図10の矢印F7)。なぜなら、ラチェット47がもはやそのプーリーを保持しなくなり、時ばね19が時パート10に、プーリーばね60によってプーリー38上にはたらく抵抗トルク(矢印F8)よりも大きい駆動トルクをはたらかせるからである。時パート10がその読み位置に到達していないかぎり、プーリー38はその回転を続けることができる。これは、ラチェット47の回転によって可能になる。この時間全体の間に、制限用止め65は、ラチェット47の歯59に当接し続ける。
【0096】
12時59分以外として読み取られるいずれの時においても、時パート10は、ラック66がその完全連結位置に到達する前に、読み位置に到達する。そして、時パート10は、もはやチェーン40を牽引せず、このチェーン40は自身のためにプーリー38にもはや駆動トルクをはたらかせない。しかし、ストライク機構の列68を介してラック66によって動かされて、ラチェット47は、矢印F5によって示した方向にその回転を行う。これによって、歯59は、制限用止め65から角度的に外れる。ラチェット47とプーリー38に対する角度的位置がいずれであってもプーリーばね60がトルクリザーブを保持するために、プーリーばね60は、プーリー38に抵抗トルク(
図12の矢印F8)をはたらかせ続け、このプーリー38は、チェーン40を緩くせずにチェーン40を浮かせずに、チェーン40が張った状態を維持する(
図12の矢印F10)。
【0097】
読み取られる時が12時59分である場合、時パート10は、ラック66がその完全連結位置に到達する時間と同じ時間に、読み位置に到達する。プーリー38の制限用止め65は、ラチェット47の歯59に、それらの角度的行程全体にわたって、接触し続け、チェーン40は恒久的に張られ続ける。
【0098】
しかし、制限用止め76が入力ピニオン73(
図11)に当接したときにラック66がその完全連結位置に到達するまで、押しボタン77に対する圧力が維持される。着用者の視点では、押しボタン77(したがって、ストライク機構)は、全部かゼロかベースで機能する。すなわち、ストライクする時がいずれであっても、押しボタン77を完全に押し下げなければならない。
【0099】
押しボタン77を放すと、外側端37が固定され続けている(固定され続ける)バレルばね35は、バレルシャフト33(したがって、ラチェット47)をその初期位置の方に戻す。読み取られる時が12時59分である場合、制限用止め65に歯59が当てられ、ラチェット47は直ちにプーリー38を回転させる。読み取られる時が12時59分以外のあらゆる時である場合、ラチェット47は、まず、歯59が制限用止め65に接触するまで、プーリー38をアクチュエートせずに、バレルの軸A4のまわりを回転する。そして、プーリー38とラチェット47が再び回転に関して一体化され、バレルばね35によってバレルシャフト33(したがって、ラチェット47、そして、したがって、プーリー38)にはたらく駆動トルクによって自身の初期位置(
図3の矢印X1)の方にともに戻される。この駆動トルクは、時ばね19によって時パート10にはたらく抵抗トルクよりもはるかに大きい。結果として、待機位置の方に戻された(
図3の矢印Z1)時パート10が、戻りベアリング45に当接することで、プーリー38を戻すまで、回転しているときにチェーン40が徐々に巻き付けられるプーリー38によってチェーン40が引かれる(
図3の矢印Y1)。
【0100】
時パート10が待機位置に到達すると、時パート10は、チェーン40をロックし、このチェーン40は、その部分のために、ラチェット47の回転をロックするプーリー38の回転をロックする。このラチェット47は、バレルシャフト33の回転をロックし、これとともに、ストライク機構の列68とラック66をロックする。一方で、ボタンを介してラック66によって押し戻された押しボタン77は、待機位置に復帰する。このようにして、リピーター5がロックされる。
【0101】
押しボタン77を放すことに伴う行程全体の間に、時パート10、四半時パート22及び分パート24はともに(かつ上で説明した形態で)、表示されている時間をストライクする。
【0102】
以下のように、リピーター5によって得られる利点は決定的に重要である。すなわち、押しボタン77が全部かゼロかベースで機能し、かつ、ストライクされる時がいずれであっても押しボタン77が完全に押し下げられると、チェーン40は、恒久的に張られた状態に保持され続ける。審美的な観点(必要とする愛好家によってチェーンの浮きが欠陥と考えられることがある)とは別に、チェーン40によって経験される応力ピークを回避することができ、寿命に貢献し、また、リピーター5のアセンブリーに貢献する。結果として、チェーン40やリピーター5の可動部品のアセンブリーが経験する機械的疲労が抑えられる。