(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644158
(24)【登録日】2020年1月9日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】バックライトモジュール
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20200130BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20200130BHJP
【FI】
F21S2/00 431
F21Y115:15
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-542739(P2018-542739)
(86)(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公表番号】特表2019-505081(P2019-505081A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】CN2016086853
(87)【国際公開番号】WO2017206221
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2018年8月13日
(31)【優先権主張番号】201610381636.4
(32)【優先日】2016年6月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517264292
【氏名又は名称】武漢華星光電技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN CHINA STAR OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】▲査▼国偉
【審査官】
野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−544018(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0252799(US,A1)
【文献】
特表2008−523422(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/095308(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0335677(US,A1)
【文献】
特表2016−507165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
G02F 1/13357
G02B 5/00−5/136、5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトガイドと、前記ライトガイドの片側に設けられた青色光源と、前記ライトガイドの上方に光が出る側に設けられ且つ重ねて設けられた赤光変換層及び緑光変換層と、からなるバックライトモジュールであって、
前記赤光変換層は、赤色量子ドット薄膜からなり、
前記緑光変換層は、緑色量子ドット薄膜と、前記緑色量子ドット薄膜の両側にそれぞれ設けられた二つのワイヤーグリッドと、からなり、
前記ワイヤーグリッドは、誘電体層と、誘電体層に設けられ且つ順番に配列された複数個のワイヤーグリッドユニットと、からなり、
前記ワイヤーグリッドユニットは、一本の金属棒と、前記金属棒の片側に設けられた一つの帯状の空間と、からなり、
前記緑色量子ドット薄膜の両側に設けられた二つのワイヤーグリッドのワイヤーグリッドユニットの配列方向は同じであり、
前記緑色量子ドット薄膜の両側の二つのワイヤーグリッドの間の距離は、特定の緑光の波長の整数倍であり、前記特定の緑光の波長は前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波帯内の任意の一つの波長である
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光波長は、500−600nmであり、
前記特定の緑光波長は、500−600nmの間の任意の一つの波長である
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記ワイヤーグリッドは、誘電体層が設けられた方の片側、または、複数個のワイヤーグリッドユニットが設けられた方の片側を、前記緑色量子ドット薄膜に向かい合うようにして設けられる
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記ワイヤーグリッドユニットの内、前記金属棒及び帯状の空間は、いずれも直線状であり且つ互いに平行である
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項5】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
ワイヤーグリッドユニットの配列方向に垂直な偏光方向を、P状態と定義し、
ワイヤーグリッドユニットの配列方向に平行な偏光方向を、S状態と定義すると、
前記ワイヤーグリッドは、S状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波帯に対してだけ反射特性を備え、P状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波に対してだけ透過特性を備える
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項6】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記金属棒の材料は、アルミ、銀、金の内の一種類または複数種類である
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項7】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記誘電体層は、下から上に順番に重ねて設けられた第一誘電体層と、第二誘電体層と、第三誘電体層と、からなり、
その内、前記第二誘電体層の屈折率は、前記第一誘電体層及び第三誘電体層の屈折率より高い
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項8】
請求項7に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記第一誘電体層及び第三誘電体層の材料は、いずれも、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、酸化マグネシウムの内の一種類または複数種類からなり、
前記第二誘電体層の材料は、窒化ケイ素、酸化チタン、五酸化タンタルの内の一種類または複数種類からなる
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項9】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記ワイヤーグリッドユニットの幅は、200−500nmであり、
その内、前記金属棒の幅は、前記ワイヤーグリッドユニットの幅の0.4−0.9の比率を占め、
前記金属棒の高さは、20−200nmである
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項10】
請求項1に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記バックライトモジュールは、さらに、前記ライトガイドの下方に設けられた反射層を備える
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項11】
ライトガイドと、前記ライトガイドの片側に設けられた青色光源と、前記ライトガイドの上方に光が出る側に設けられ且つ重ねて設けられた赤光変換層及び緑光変換層と、からなるバックライトモジュールであって、
前記赤光変換層は、赤色量子ドット薄膜からなり、
前記緑光変換層は、緑色量子ドット薄膜と、前記緑色量子ドット薄膜の両側にそれぞれ設けられた二つのワイヤーグリッドと、からなり、
前記ワイヤーグリッドは、誘電体層と、誘電体層に設けられ且つ順番に配列された複数個のワイヤーグリッドユニットと、からなり、
前記ワイヤーグリッドユニットは、一本の金属棒と、前記金属棒の片側に設けられた一つの帯状の空間と、からなり、
前記緑色量子ドット薄膜の両側に設けられた二つのワイヤーグリッドのワイヤーグリッドユニットの配列方向は同じであり、
前記緑色量子ドット薄膜の両側の二つのワイヤーグリッドの間の距離は、特定の緑光の波長の整数倍であり、前記特定の緑光の波長は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波帯内の任意の一つの波長であり、
その内、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光波長は、500−600nmであり、前記特定の緑光波長は、500−600nmの間の任意の一つの波長であり、
その内、前記ワイヤーグリッドは、誘電体層が設けられた方の片側、または、複数個のワイヤーグリッドユニットが設けられた方の片側を、前記緑色量子ドット薄膜に向かい合うようにして設けられ、
その内、前記ワイヤーグリッドユニットの内、前記金属棒及び帯状の空間は、いずれも直線状であり且つ互いに平行である
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項12】
請求項11に記載のバックライトモジュールにおいて、
ワイヤーグリッドユニットの配列方向に垂直な偏光方向を、P状態と定義し、
ワイヤーグリッドユニットの配列方向に平行な偏光方向を、S状態と定義すると、
前記ワイヤーグリッドは、S状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波帯に対してだけ反射特性を備え、P状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波に対してだけ透過特性を備える
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項13】
請求項11に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記金属棒の材料は、アルミ、銀、金の内の一種類または複数種類である
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項14】
請求項11に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記誘電体層は、下から上に順番に重ねて設けられた第一誘電体層と、第二誘電体層と、第三誘電体層と、からなり、
その内、前記第二誘電体層の屈折率は、前記第一誘電体層及び第三誘電体層の屈折率より高い
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項15】
請求項14に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記第一誘電体層及び第三誘電体層の材料は、いずれも、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、酸化マグネシウムの内の一種類または複数種類からなり、
前記第二誘電体層の材料は、窒化ケイ素、酸化チタン、五酸化タンタルの内の一種類または複数種類からなる
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項16】
請求項11に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記ワイヤーグリッドユニットの幅は、200−500nmであり、
その内、前記金属棒の幅は、前記ワイヤーグリッドユニットの幅の0.4−0.9の比率を占め、
前記金属棒の高さは、20−200nmである
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【請求項17】
請求項11に記載のバックライトモジュールにおいて、
前記バックライトモジュールは、さらに、前記ライトガイドの下方に設けられた反射層を備える
ことを特徴とするバックライトモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ技術領域に関し、特にバックライトモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術の発展に伴って、液晶ディスプレイ装置(Liquid Crystal Display、LCD)などの平面ディスプレイ装置は、高画質であり、省電力であり、ボディが薄く、応用範囲が広いなどのメリットを備えるため、携帯電話、テレビ、個人情報端末、デジタルカメラ、ノートパソコン、デスクトップパソコンなどの各種消耗電子製品において広く応用されており、ディスプレイ装置における主流となっている。
【0003】
現在市場においてみられる液晶ディスプレイ装置の大部分は、バックライト型液晶ディスプレイ装置であり、液晶ディスプレイパネル及びバックライトモジュール(backlight module)からなる。液晶ディスプレイパネルの作動原理は、二枚の平行なガラス基板の中に液晶分子を安置し、二枚のガラス基板の間にはたくさんの垂直または水平の細い電線があり、通電と液晶分子の方向の変化を制御することによって、バックライトモジュールの光線を屈折させて画面を生じさせる。
【0004】
高色域パネルは、自然界のようなより多くの色彩を表示させることができるため、色の飽和度と色彩の再現性を高めることができる。現在パネルのメーカーは消費者の色彩の再現に対する要求に応じて、パネルの色域値を高め続けようとしており、その外にも有機発光ダイオード(OLED、Organic Light−Emitting Diode)技術に特有の高色域特性は、従来の液晶ディスプレイパネルを凌ぐものとなっている。色域を高める方式は、バックライトの元々のピーク値の位置を調整し、蛍光体粉を採用するとともに、量子ドット(Quantum Dot、QD)を用いて、バックライトとカラーフィルタ(CF)の通過位置及び半値全幅等を調整することである。
【0005】
図1はフッ化物(KSF)蛍光粉及び量子ドットの発光スペクトルの比較概略図である。現在小さいサイズのディスプレイ装置において応用の余地があるのは、青光発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)を用いて赤、緑光量子ドット薄膜(QD film)に働きかける方法である。その内、量子ドットの発光ラインの幅は30nmほどであり、狭線幅によってバックライトの純色性を確保する。このことは色域を高めることにおいて非常に重要なことである。
図1が示すように、フッ化物蛍光粉は赤光スペクトル上で分立したピーク信号を示しており、線の幅はわずか20nmほどであり、従来の赤色量子ドットに比べてさらに有利な点を備え、緑光スペクトル上に広域スペクトラムの分布の特徴を示す。
図2は、色座標システム内における三種類の色域の標準分布概略図である。
図2から分かるように、DCI P3、Adobe RGB、sRGB、この三種類の色域標準は赤(R)、青(B)色の点における色座標の全体の差は小さく、また、緑色(G)の点における色座標の差は大きい。それゆえに、バックライトの緑色点の色純度を高めることは色域を高める簡単且つ効果的な一つの方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、緑光の色の純度及び発光強度を高め、それによって、バックライトモジュールの色域の表示を高めることができるバックライトモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、ライトガイドと、前記ライトガイドの片側に設けられた青色光源と、前記ライトガイドの上方に光が出る側に設けられ且つ重ねて設けられた赤光変換層及び緑光変換層と、からなるバックライトモジュールを提供する。その内、前記赤光変換層及び緑光変換層の上下の位置は決まっていない。
【0008】
前記赤光変換層は、赤色量子ドット薄膜からなる。
【0009】
前記緑光変換層は、緑色量子ドット薄膜と、前記緑色量子ドット薄膜の両側にそれぞれ設けられた二つのワイヤーグリッドと、からなる。
【0010】
前記ワイヤーグリッドは、誘電体層と、誘電体層に設けられ且つ順番に配列された複数個のワイヤーグリッドユニットと、からなる。前記ワイヤーグリッドユニットは、一本の金属棒と、前記金属棒の片側に設けられた一つの帯状の空間と、からなる。前記緑色量子ドット薄膜の両側に設けられた二つのワイヤーグリッドのワイヤーグリッドユニットの配列方向は、同じである。
【0011】
前記緑色量子ドット薄膜の両側の二つのワイヤーグリッドの間の距離は、特定の緑光の波長の整数倍であり、前記特定の緑光の波長は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波帯の内の任意の一つの波長である。
【0012】
前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波帯は、500−600nmであり、前記特定の緑光波長は、500−600nmの間の任意の一つの波長である。
【0013】
前記ワイヤーグリッドは、誘電体層が設けられた方の片側、または、複数個のワイヤーグリッドユニットが設けられた方の片側を、前記緑色量子ドット薄膜に向かい合うようにして設けられる。
【0014】
前記ワイヤーグリッドユニットの内、前記金属棒及び帯状の空間は、いずれも直線状であり且つ互いに平行である。
【0015】
ワイヤーグリッドユニットの配列方向に垂直な偏光方向をP状態と定義し、ワイヤーグリッドユニットの配列方向に平行な偏光方向をS状態と定義すると、前記ワイヤーグリッドは、S状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波帯に対してだけ反射特性を備え、P状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光周波に対してだけ透過特性を備える。
【0016】
前記金属棒の材料は、アルミ、銀、金の内の一種類または複数種類である。
【0017】
前記誘電体層は、下から上に順番に重ねて設けられた第一誘電体層と、第二誘電体層と、第三誘電体層と、からなる。その内、前記第二誘電体層の屈折率は、前記第一誘電体層及び第三誘電体層の屈折率より高い。
【0018】
前記第一誘電体層及び第三誘電体層の材料は、いずれも、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、酸化マグネシウムの内の一種類または複数種類からなり、前記第二誘電体層の材料は、窒化ケイ素、酸化チタン、五酸化タンタルの内の一種類または複数種類からなる。
【0019】
前記ワイヤーグリッドユニットの幅は、200−500nmであり、その内、前記金属棒の幅は、前記ワイヤーグリッドユニットの幅の0.4−0.9の比率を占める。前記金属棒の高さは、20−200nmである。
【0020】
前記バックライトモジュールは、さらに、前記ライトガイドの下方に設けられた反射層を備える。
【0021】
本発明は、さらに、ライトガイドと、前記ライトガイドの片側に設けられた青色光源と、前記ライトガイドの上方の光が出る側に設けられ且つ重ねて設けられた赤光変換層及び緑光変換層と、からなるバックライトモジュールを提供する。
【0022】
前記赤光変換層30は、赤色量子ドット薄膜31からなる。
【0023】
前記緑光変換層は、緑色量子ドット薄膜と、前記緑色量子ドット薄膜の両側にそれぞれ設けられた二つのワイヤーグリッドと、からなる。
【0024】
前記ワイヤーグリッドは、誘電体層と、誘電体層の上に設けられ且つ順番に配列された複数個のワイヤーグリッドユニットと、からなる。前記ワイヤーグリッドユニットは、一本の金属棒と、前記金属棒の片側に設けられた一つの帯状の空間と、からなる。前記緑色量子ドット薄膜の両側に設けられた二つのワイヤーグリッドのワイヤーグリッドユニットの配列方向は、同じである。
【0025】
前記緑色量子ドット薄膜の両側の二つのワイヤーグリッドの間の距離は、特定の緑光の波長の整数倍であり、前記特定の緑光の波長は、前記緑色量子ドット薄膜が発する緑光の周波帯内の任意の一つの波長である。
【0026】
その内、前記緑色量子ドット薄膜41が発する緑光周波帯は、500−600nmであり、前記特定の緑光の波長は、500−600nmの間の任意の一つの波長である。
【0027】
前記ワイヤーグリッドは、誘電体層が設けられた方の片側、または、複数個のワイヤーグリッドユニットが設けられた方の片側を、前記緑色量子ドット薄膜に向かい合うようにして設けられる。
【0028】
その内、前記ワイヤーグリッドユニットの内、前記金属棒と帯状の空間は、いずれも直線状であり且つ互いに平行である。
【発明の効果】
【0029】
本発明が提供するバックライトモジュールは、青色バックライトを採用し、赤色、緑色量子ドット薄膜に働きかけて赤色、緑色蛍光体を得るとともに、緑色量子ドット薄膜的の両側に二つのワイヤーグリッドが設けられ、ファブリ・ペロー空間を構成する。前記ファブリ・ペロー空間は、緑色量子ドット薄膜が発する緑光に対して特定の波長の選択を行うとともに、前記特定の波長の緑光の発光強度を強めることができ、それによって、緑光の色純度及び発光強度を高め、それによって、バックライトモジュールの色域の表示を高め、同時に緑光量子ドット薄膜の発光効率を高めることによって、量子ドット薄膜蛍光体の効率が低くなるという問題を格段に改善するとともに、ワイヤーグリッドは、バックライトモジュールの反射層と照度を高める構造を形成し、照度を高めるための構造を設ける手間を省くことができ、バックライトモジュールの厚さを薄くすることが可能である。
【0030】
本発明の特徴及び技術内容について更に理解できるように、本発明に関する以下の詳細な説明と図面を参照する。しかしながら、図面は参考及び説明ために用いるに過ぎず、決して本発明に制限を加えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下では図を参照しつつ、本発明の具体的な実施方式について詳細な説明を行うことによって、本発明の技術方案及びその他の有益な効果についても明らかにする。
【0032】
【
図1】フッ化物蛍光体粉及び量子ドットの発光スペクトルを比較した概略図である。
【
図2】三種類の色域標準が色座標システム内で分布した状態を示す概略図である。
【
図3】本発明のバックライトモジュールの構造概略図である。
【
図4】本発明のバックライトモジュール内のワイヤーグリッドの構造概略図である。
【
図5A】本発明のバックライトモジュール内のワイヤーグリッドのP状態の場合の光の反射率及び透過率の概略図である。
【
図5B】本発明のバックライトモジュール内のワイヤーグリッドのS状態の場合の光の反射率及び透過率の概略図である。
【
図6A】本発明のバックライトモジュールと従来の量子ドットバックライトモジュールの発光スペクトルを比較した概略図である。
【
図6B】本発明のバックライトモジュールと従来の量子ドットバックライトモジュールの色域を比較した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明が採用する技術方案及びその効果について更に詳しく説明するため、以下では、本発明の最適な実施例及びその図面を用いつつ詳細な説明を行う。
【0034】
図3を参照する。本発明は、ライトガイド10と、前記ライトガイド10の片側に設けられた青色光源20と、前記ライトガイド10の上方の光が出る側に設けられ且つ重ねて設けられた赤光変換層30及び緑光変換層40と、からなるバックライトモジュールを提供する。その内、前記赤光変換層30と緑光変換層40の上下の位置は決まっていない。
【0035】
前記赤光変換層30は、赤色量子ドット薄膜31からなる。
【0036】
前記緑光変換層40は、緑色量子ドット薄膜41と、前記緑色量子ドット薄膜41の両側にそれぞれ設けられた二つのワイヤーグリッド50と、からなる。
【0037】
前記ワイヤーグリッド50は、誘電体層90と、誘電体層90の上に設けられ且つ順番に配列された複数個のワイヤーグリッドユニット60と、からなる。前記ワイヤーグリッドユニット60は、一本の金属棒61と、前記金属棒61の片側に設けられた一つの帯状の空間62と、からなる。前記緑色量子ドット薄膜41の両側に設けられた二つのワイヤーグリッド50のワイヤーグリッドユニット60の配列方向は、同じである。
【0038】
前記緑色量子ドット薄膜41の両側の二つのワイヤーグリッド50の間の距離は、特定の緑光の波長の整数倍であり、前記特定の緑光の波長は、前記緑色量子ドット薄膜41が発する緑光の周波帯内の任意の一つの波長である。
【0039】
具体的には、前記緑色量子ドット薄膜41が発する緑光周波帯は、500−600nmであり、前記特定の緑光の波長は、500−600nmの間の任意の一つの波長である。
【0040】
具体的には、前記特定の緑光の波長は、バックライトモジュールの色域の必要に応じて選定を行う。
【0041】
具体的には、前記青色光源20が発するとともに前記ライトガイド10を通過して出力される青光は、赤光変換層30と緑光変換層40がそれぞれ発する赤光及び緑光と混ざった後、白光を形成して出力される。即ち、本発明のバックライトモジュールが発する光は、白光である。
【0042】
具体的には、前記ワイヤーグリッド50は、誘電体層90が設けられた方の片側、または、複数個のワイヤーグリッドユニット60が設けられた方の片側を、前記緑色量子ドット薄膜41に向かい合うようにして設けられる。
【0043】
具体的には、前記ワイヤーグリッドユニット60の内、前記金属棒61と帯状の空間62は、いずれも直線状であり且つ互いに平行である。
【0044】
本発明の内、前記緑色量子ドット薄膜41の両側に位置する二つのワイヤーグリッド50は、ファブリ・ペロー(Fabry−Perot)空間を構成し、一つの特定の波長の緑光を選定するとともに、前記特定波長緑光の発光強度を格段に強くすることができる。
【0045】
具体的には、前記ワイヤーグリッド50は、偏光選択特性と、波長の選択的透過特性と、波長の選択的反射特性とを備える。ワイヤーグリッドユニット60の配列方向に垂直な偏光方向をP状態と定義し、ワイヤーグリッドユニット60の配列方向に平行な偏光方向をS状態と定義すると、前記ワイヤーグリッド50のうち、S状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜41が発する緑光周波帯に対してだけ反射特性を備え、P状態の場合は、前記緑色量子ドット薄膜41が発する緑光周波帯に対してだけ透過特性を備える。
図5Aは、前記ワイヤーグリッド50のP状態の場合の光の透過率及び反射率の概略図である。
図5Aから分かるように、前記ワイヤーグリッド50は、P状態において、緑光だけを透過させる。
図5Bは、前記ワイヤーグリッド50のS状態の光に対する透過率及び反射率の概略図である。
図5Bから分かるように、前記ワイヤーグリッド50はS状態において、緑光に対してだけ反射を行う。
【0046】
図3が示す具体実施例において、前記赤光変換層30は、前記緑光変換層40の上方に設けられ、前記緑光変換層40は、ライトガイド10の上方に設けられ、前記ライトガイド10が発する青色バックライトは非偏光特性を備えるため、S状態の青光は、前記緑色量子ドット薄膜41の下方に位置するワイヤーグリッド50を完全に透過することができ、それによって、緑色量子ドット薄膜41に働きかけて緑光を形成し出力させる。その内、S状態の緑光は、ワイヤーグリッド50の反射特性のために前記ファブリ・ペロー空間内で共振を形成し、その間S状態の緑光は、共振を働きかけるモードによって、さらに緑色量子ドット薄膜41に働きかけて発光し、最終的にバンドギャップが制限する小さな空間の自然放射の状態密度増強(パーセル)効果によって、緑色量子ドット薄膜41が発する緑光の内S状態に属し且つ波長及び前記ファブリ・ペロー空間にマッチする特定の波長の緑光信号を、増強することができ、最終的に前記ファブリ・ペロー空間の光が漏れることで緑光出力信号を形成する。
【0047】
簡単に言うと、前記緑色量子ドット薄膜41の両側の二つのワイヤーグリッド50が構成するファブリ・ペロー空間は、その間隔幅、偏光選択特性、波長の選択的透過特性、波長の選択的反射特性によって、特定の波長の一つの緑光を選択するとともに、共振及びパーセル効果によって、特定の波長の前記緑光の発光強度を強め、緑光の色純度及び発光強度を高める作用を達成することができる。
【0048】
具体的には、前記金属棒61の材料は、大きな屈折率の虚数部を備えた金属材料であり、アルミ(Al)、銀(Ag)、金(Au)の内の一種類または複数種類である。
【0049】
具体的には、
図4が示すように、前記誘電体層90は屈折率が調整可能な多層構造であり、下から上まで順番に重ねて設けられた第一誘電体層91と、第二誘電体層92と、第三誘電体層93と、を備える。その内、前記第二誘電体層92の屈折率は、前記第一誘電体層91及び第三誘電体層93の屈折率より高く、それによって、低屈折率−高屈折率−低屈折率のサンドイッチ構造を形成する。具体的には、前記第一誘電体層91及び第三誘電体層93の材料は、いずれも、二酸化ケイ素(SiO2)、一酸化ケイ素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)の内の一種類または複数種類からなり、前記第二誘電体層92の材料は、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化チタン(TiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)の内の一種類または複数種類からなる。
【0050】
具体的には、前記第一誘電体層91及び第二誘電体層92及び第三誘電体層93の厚さは、それぞれ、30−200nmであり、前記第一誘電体層91及び第二誘電体層92及び第三誘電体層93の厚さは、同じであって良く、または、異なっても良い。
【0051】
具体的には、前記誘電体層90は、高透過率の構造の層であり、好ましくは、前記誘電体層90は透明の構造の層である。
【0052】
具体的には、前記ワイヤーグリッドユニット60の幅は、200−500nmであり、その内、前記金属棒61の幅は、前記ワイヤーグリッドユニット60の幅の0.4−0.9の比率を占める。前記金属棒61の高さは、20−200nmである。
【0053】
具体的には、前記ワイヤーグリッド50は、さらに緑光だけを透過させるカラーフィルタとして使用することができ、カラーフィルタとして使用する時、その通過半値幅は20−50nmであり、中心のピーク透過率は70%より高い。
【0054】
具体的には、前記赤色量子ドット薄膜31及び緑色量子ドット薄膜41の材料は、いずれも、CdS及びCdSeの内の一種類または複数種類からなる。
【0055】
具体的には、本発明の内の赤色量子ドット薄膜31の働きかけるモードは、通常のモードを採用し、ここでは記載を省略する。
【0056】
好ましくは、本発明のバックライトモジュールは、さらに、前記ライトガイド10の下方に設けられた反射層70を備え、ワイヤーグリッド50Pは、状態の場合、前記緑色量子ドット薄膜41が発する緑光周波帯に対してだけ透過特性を備えるため、それによって、P状態青光は反射して再びライトガイド10に進入するとともに、反射層70を通過して反射してから明るさを増幅させる効果を形成する。これは即ち、前記緑色量子ドット薄膜41の下方に位置するワイヤーグリッド50及び反射層70は照度を高める構造を形成することになり、照度を高めるための構造を設ける手間を一つ省くことができ、それによって、バックライトモジュールの厚さを薄くすることができる。
【0057】
好ましくは、本発明のバックライトモジュールは、さらに、前記ライトガイド10と、赤光変換層30或いは緑光変換層40の間に設けられた拡散片80を備え、それによって、ライトガイド10の出光の均一性を高める。
【0058】
図6Aは、本発明のバックライトモジュール及び従来の量子ドットバックライトモジュールの発光スペクトルの比較概略図である。
図6Aから分かるように、従来の量子ドットバックライトモジュールと比べて、本発明のバックライトモジュールの緑光周波帯は、狭線幅及び高色純度の利点を備えている。
図6Bは、本発明のバックライトモジュール及び従来の量子ドットバックライトモジュールの色域の比較概略図である。
図6Bから分かるように、従来の量子ドットバックライトモジュールと比べて、本発明のバックライトモジュールの緑光周波帯は、高色純度の利点を備えており、且つ本発明のバックライトモジュールは、更に広範な色域範囲を備えている。
【0059】
前記をまとめると、本発明が提供するバックライトモジュールは、青色バックライトを採用し、赤色、緑色量子ドット薄膜に働きかけ、赤色、緑色蛍光体を得るとともに、緑色量子ドット薄膜の両側に二つのワイヤーグリッドを設け、ファブリ・ペロー空間を構成する。前記ファブリ・ペロー空間は、緑色量子ドット薄膜が発する緑光に対して特定の波長を選択するとともに、前記特定の波長の緑光の発光強度を強めることができ、それによって、緑光の色純度及び発光強度を高め、それによって、バックライトモジュールの色域表現を豊かにするとともに、同時に緑光量子ドット薄膜の発光効率を高めることによって、量子ドット薄膜蛍光体の効率が低下する問題を格段に改善するとともに、ワイヤーグリッドはバックライトモジュールの反射層と照度を高める構造を形成し、照度を高める構造を設ける手間を省き、バックライトモジュールの厚さを薄くすることができる。
【0060】
上記については、本分野の一般的な技術者は、本発明の技術考案及び技術構想に基づき、その他各種の対応する変更及び修正をすることができ、これらの変更及び修正もすべて本発明の請求項の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0061】
10 ライトガイド
20 青色光源
30 赤光変換層
31 赤色量子ドット薄膜
40 緑光変換層
41 緑色量子ドット薄膜
50 ワイヤーグリッド
60 ワイヤーグリッドユニット
61 金属棒
62 帯状の空間
70 反射層
80 拡散片
90 誘電体層
91 第一誘電体層
92 第二誘電体層
93 第三誘電体層