(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入射面、この入射面の反対側の出射面、前記入射面と前記出射面との間に伸びる相対向する一対の第一の側面、および前記入射面と前記出射面との間に伸びる一対の相対向する第二の側面を有する偏光解消素子であって、
前記偏光解消素子が、前記入射面を有する入射側複屈折部材、前記出射面を有する出射側複屈折部材、および入射側複屈折部材と前記出射側複屈折部材との間の中間複屈折部材を備えており、
前記入射側複屈折部材と前記出射側複屈折部材が同種の材料からなり、
前記入射側複屈折部材の常光線軸と前記出射側複屈折部材の常光線軸とが揃っており、かつ前記入射側複屈折部材の異常光線軸と前記出射側複屈折部材の異常光線軸とが揃っており、
前記入射側複屈折部材の屈折率および前記出射側複屈折部材の屈折率が前記中間複屈折部材の屈折率よりも大きく、
第一の平面から見たときに前記入射側複屈折部材と前記中間複屈折部材との接合界面および前記中間複屈折部材と前記出射側複屈折部材との接合界面が前記入射面に対して傾斜しており、前記第一の平面に交差する第二の平面から見たときに前記入射側複屈折部材と前記中間複屈折部材との前記接合界面および前記中間複屈折部材と前記出射側複屈折部材との前記接合界面が前記入射面に対して平行であることを特徴とする、偏光解消素子。
前記第一の側面が前記第一の平面に対して傾斜しており、前記第二の側面の幅が前記入射面から前記出射面に向かって減少していることを特徴とする、請求項1、2または4記載の素子。
前記入射側複屈折部材と前記中間複屈折部材との前記接合界面および前記中間複屈折部材と前記出射側複屈折部材との前記接合界面が前記入射面に対してなす角度θpが1°以上、15°以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の素子。
前記入射側複屈折部材および前記出射側複屈折部材を構成する複屈折材料が、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム、タンタル酸−ニオブ酸カリウム、ニオブ酸カリウム、チタン酸−リン酸カリウム、ルチルおよびイットリウム−バナデート(YVO4)からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の偏光スクランブル板では、p偏光の出射ビームとs偏光の出射ビームとが重なった領域で、ビームが重なり合い、偏光スクランブル状態になる。しかし、偏光スクランブル状態になるのは、各ビームが重なり合う領域だけであるので、偏光スクランブル領域を大きくするためには、入射ビーム径を大きくする必要がある。しかし、ビーム径の拡大には限界がある。また、偏光は一方向のみにスクランブル状態となり、この垂直の方向は偏光はスクランブル状態になっていない。
【0006】
本発明の課題は、偏光解消素子において、偏光スクランブル領域を大きくすることができ、偏光スクランブルの効率が高く、かつ入射光と出射光との光軸の差を小さくできるような構造を提供することである。ここで、偏光スクランブルは、偏光解消と同じ意味をなす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入射面、この入射面の反対側の出射面、前記入射面と前記出射面との間に伸びる相対向する一対の第一の側面、および前記前記入射面と前記出射面との間に伸びる一対の相対向する第二の側面を有する偏光解消素子であって、
前記偏光解消素子が、前記入射面を有する入射側複屈折部材、前記出射面を有する出射側複屈折部材、および入射側複屈折部材と前記出射側複屈折部材との間の中間複屈折部材を備えており、
前記入射側複屈折部材と前記出射側複屈折部材が同種の材料からなり、
前記入射側複屈折部材の常光線軸と前記出射側複屈折部材の常光線軸とが揃っており、かつ前記入射側複屈折部材の異常光線軸と前記出射側複屈折部材の異常光線軸とが揃っており、
前記入射側複屈折部材の屈折率および前記出射側複屈折部材の屈折率が前記中間複屈折部材の屈折率よりも大きく、
第一の平面から見たときに前記入射側複屈折部材と前記中間複屈折部材との接合界面および前記中間複屈折部材と前記出射側複屈折部材との接合界面が前記入射面に対して傾斜しており、前記第一の平面に交差する第二の平面から見たときに前記入射側複屈折部材と前記中間複屈折部材との前記接合界面および前記中間複屈折部材と前記出射側複屈折部材との前記接合界面が前記入射面に対して平行であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、第一の偏光解消素子と第二の偏光解消素子とを有する偏光解消素子構造体であって、
第一の偏光解消素子および第二の偏光解消素子が上述の偏光解消素子であり、第一の偏光解消素子と第二の偏光解消素子とが積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
後述するように、本発明の素子によれば、偏光スクランブル領域を大きくすることができ、偏光スクラブルの効率が高く、かつ入射光と出射光との光軸の差を小さくできる。
さらに、第一の偏光解消素子と第二の偏光解消素子とが積層された構造体では、入射光の偏光スクランブルが一方向だけでなく、これと垂直方向の偏光もスクランブル状態にすることが可能である。
ここで、偏光スクランブルの効率とは、単位長さあたりの偏光状態の変化の割合を示す。例えば、直線偏光から円偏光に変化するために必要な距離が近いほど偏光変化が大きく、偏光スクランブルの効率は高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しつつ,本発明を更に説明する。
図1〜
図3は、本発明の実施形態に係る偏光解消素子1を示すものである。
偏光解消素子1は、入射側複屈折部材2、中間複屈折部材3および出射側複屈折部材4の接合体からなる。入射側複屈折部材1の一方の主面2aは入射面5となっており、他方の主面2bは中間複屈折部材3との接合面となっている。中間複屈折部材3の一方の接合面3aが入射側複屈折部材に対して接合されており、他方の接合面3bが出射側複屈折部材4の接合面4aに対して接合されている。出射側複屈折部材4の他方の主面4bは出射面6となっている。本例では、入射面5、出射面6は空間に面している。
また、本発明では、入射側、中間、出射側の各複屈折部材は、
図1で示すY軸(第二の平面(X−Z面)に対して垂直な軸)を常光線軸、X軸(第一の平面(Y−Z面)に垂直な軸)を異常光線軸とするように配置できる。あるいは、入射側、中間、出射側の各複屈折部材は、
図1で示すY軸(第二の平面(X−Z面)に対して垂直な軸)を異常光線軸、X軸(第一の平面(Y−Z面)に垂直な軸)を常光線軸とするように配置できる。
さらに、中間複屈折部材については、入射側複屈折部材と異なる光線軸を配置してよく、例えば、入射側複屈折部材がY軸に常光線軸、X軸に異常光線軸を配置した場合、中間複屈折部材はY軸に異常光線軸、X軸に常光線軸を配置してよい。また、入射側複屈折部材がY軸に異常光線軸、X軸に常光線軸を配置した場合、中間複屈折部材はY軸に常光線軸、X軸に異常光線軸を配置してよい。
【0012】
図1(b)に示すように、第一の平面(Y−Z面)から見たときに、入射側複屈折部材2と中間複屈折部材3との接合界面J1および中間複屈折部材3と出射側複屈折部材4との接合界面J2が、入射面5に対して傾斜している。θpは傾斜角である。また、
図1(c)に示すように、第一の平面(Y−Z面)に交差する第二の平面(X−Z面)から見たときに、入射側複屈折部材2と中間複屈折部材3との接合界面J1および中間複屈折部材3と出射側複屈折部材4との接合界面J2が入射面2に対して平行である。本例では、第一の平面と第二の平面とが直交している。
【0013】
ここで、
図2に示すように、第一の平面(Y−Z面)から見たときには、各接合界面J1、J2が入射面5に対して傾斜している結果、出射面において広い範囲Mで偏光スクランブルが生ずる。すなわち、入射面に対して矢印Aのように光が入射すると、光は入射側複屈折部材2内を矢印Bのように直進する。この光は、接合界面J1において屈折するが、p偏光とs偏光とは屈折角が異なるため、中間複屈折部材3においてC1とC2とに分離して伝搬する。次いで、p偏光とs偏光とは接合界面J2に達し、再び屈折し、出射側複屈折部材4内を矢印D1、D2のように伝搬し、E1、E2のように出射する。この結果、出射面6においては偏光スクランブルが生じ、その範囲Mは広くできる。この一方、p偏光、s偏光の光軸は、スネルの法則によって屈折を2回繰り返す結果、出射側複屈折部材4内および出射面6においては、入射側複屈折部材1内を伝搬する光Bの光軸とほぼ平行になり、光軸が揃う。
この結果、本発明によれば、出射面において広い範囲Mにわたって偏光スラクンブルが可能であり、かつ出射面から出射する光の光軸が、入射光の光軸とほぼ平行に揃うという点で、きわめて有用な素子を提供できる。
【0014】
一方、
図3に示すように、第二の平面(X−Z面)から見ると、出射面6における偏光スクランブルは生じない。すなわち、入射面5に対して矢印Aのように入射した光は、入射側複屈折部材2、中間複屈折部材3、出射側複屈折部材4内を矢印B、C、Dのように直進し、そのまま出射面6から矢印Eのように出射する。このとき、p偏光とs偏光とに分離することはないので、偏光スクランブルは生じない。
【0015】
本発明においては、例えば
図1〜
図3に示すように、第一の側面1a、1bが第一の平面(Y−Z面)に対して平行であってよい。また、
図1〜
図3に示すように、第二の側面1c、1dが第二の平面(X−Z面)に対して平行であってよい。
【0016】
一方、好適な実施形態においては、
図4〜
図6に示すように、第一の側面1a、1bが第一の平面(Y−Z面)に対して傾斜しており、第二の側面1c、1dの幅が入射面5から出射面6に向かって減少している。
【0017】
すなわち、
図4、
図5は、本発明の他の実施形態に係る偏光解消素子1Aを示すものである。
偏光解消素子1Aは、入射側複屈折部材2A、中間複屈折部材3Aおよび出射側複屈折部材4Aの接合体からなる。入射側複屈折部材1の一方の主面2aは入射面5となっており、他方の主面2bは中間複屈折部材3Aとの接合面となっている。中間複屈折部材3Aの一方の接合面3aが入射側複屈折部材に対して接合されており、他方の接合面3bが出射側複屈折部材4Aの接合面4aに対して接合されている。出射側複屈折部材4Aの他方の主面4bは出射面6となっている。本例では、入射面5、出射面6は空間に面している。
また、本例では入射側、中間、出射側の各複屈折部材は、
図4で示すY軸(第二の平面に垂直な軸)を常光線軸、X軸(第一の平面に垂直な軸)を異常光線軸とするように配置している。しかしながら、
図1と同様にY軸に異常光線軸、X軸に常光線軸を配置してもよく、Y軸に常光線軸、X軸に異常光線軸を配置することもできる。
さらに、中間複屈折部材については、入射側複屈折部材と異なる光線軸を配置してよく、例えば、入射側複屈折部材がY軸に常光線軸、X軸に異常光線軸を配置した場合、中間複屈折部材はY軸に異常光線軸、X軸に常光線軸を配置してよい。また、入射側複屈折部材がY軸に異常光線軸、X軸に常光線軸を配置した場合、中間複屈折部材はY軸に常光線軸、X軸に異常光線軸を配置してよい。
【0018】
図4(b)に示すように、第一の平面(Y−Z面)から見たときに、入射側複屈折部材2Aと中間複屈折部材3Aとの接合界面J1および中間複屈折部材3Aと出射側複屈折部材4Aとの接合界面J2が、入射面5に対して傾斜している。θpは傾斜角である。また、
図4(c)に示すように、第一の平面(Y−Z面)に交差する第二の平面(X−Z面)から見たときに、入射側複屈折部材2Aと中間複屈折部材3Aとの接合界面J1および中間複屈折部材3Aと出射側複屈折部材4Aとの接合界面J2が入射面2に対して平行である。本例では、第一の平面と第二の平面とが直交している。これに加えて、第一の側面1a、1bが第一の平面(Y−Z面)に対して傾斜しており、第二の側面1c、1dの幅が入射面5から出射面6に向かって減少している。
【0019】
ここで、第一の平面(Y−Z面)から見たときの動作は、
図2に示した例と同じである。すなわち、出射面6においては偏光スクランブルが生じ、その範囲Mは広くできる。この一方、p偏光、s偏光の光軸は、スネルの法則によって屈折を2回繰り返す結果、出射側複屈折部材3内および出射面6においては、入射側複屈折部材1内を伝搬する光Bの光軸とほぼ平行になり、光軸が揃う。
【0020】
一方、第二の平面(X−Z面)から見ると、
図5、
図6に示すように、出射面6における偏光スクランブルが生ずる。すなわち、入射面5に対して矢印Aのように入射した光は、側面1c、1dに当たらない場合には、入射側複屈折部材2A、中間複屈折部材3A、出射側複屈折部材4A内を矢印B、C、Dのように直進し、そのまま出射面6から出射する。このとき、p偏光とs偏光とに分離することはないので、偏光スクランブルは生じない。しかし、光が側面1c、1dに当たると、全反射され、この結果として接合界面J1、J2に対して斜めに入射する。この結果、各接合界面においてp偏光とs偏光とが分離し、そのまま直進してきた光と混合することで、偏光スクランブルが生ずる。
【0021】
より具体的に述べると、
図6に示すように、側面1c、1dのY−Z面に対する傾斜角をθtとする。光は矢印Aのように入射面5に入射し、矢印Bのように入射側複屈折部材内を直線した後、側面1d(または1c)によって全反射される。このときの反射角度はθtである。次いで、光は矢印Cのように中間複屈折部材内を伝搬し、接合界面J2に到達する。この時点で、Y−Z面に対する光の伝搬方向Cの傾斜角度は2θtになっている。この結果、光は角度2θtで接合界面J2に入射するので、この時点でp偏光とs偏光とが分離する。接合界面J2からの出射角度θ
23は、p偏光、s偏光の各物性と中間複屈折部材3A、出射側複屈折部材4Aの屈折率に依存して決定される。次いで、p偏光、s偏光は矢印D1、D2のように出射側複屈折部材4A内を伝搬し、出射面6に対して角度θ
30で入射する。そして、スネルの法則に従ってEのように角度θ
0で出射面6から外部に出射する。
【0022】
このとき傾斜角θ
30が全反射条件を満足すると、外部に光を取り出すことができなくなるので、全反射角よりも小さい角度である必要がある。例えば出射側複屈折部材の材質をニオブ酸リチウムとし、中間複屈折部材の材質を水晶とした場合には、水晶と空気で決まる全反射角は39°となる。このことから、θ
30が全反射角39°以上にならないように、傾斜角θtを設定する必要がある。例えば、傾斜角θtを30°としたとき、各θ
30=θ
23は38°となり、θtの上限値となる。一方、θtを小さくすると、解消領域が狭くなるので、θtは5°以上が好ましい。
【0023】
本発明の偏光解消素子を積層することによって、偏光解消素子構造体を得ることができる。この実施形態においては、少なくとも第一の偏光解消素子と第二の偏光解消素子とを積層するが、三つ以上の偏光解消素子をさらに積層することも可能である。
【0024】
本実施形態において、好ましくは、第一の偏光解消素子の第一の側面と第二の偏光解消素子の第二の側面とが入射面に垂直な方向に向かって連続している。例えば、
図7に示す構造体11は、前述のような偏光解消素子1を入射面に垂直な方向に向かって二つ積層したものである。しかし、下側の第一の偏光解消素子1の第一の側面1a、1bと上側の第二の偏光解消素子1の第二の側面1c、1dとが入射面に垂直な方向に向かって連続している。この結果、第一の平面(Y−Z方向)で見たときに、下側の偏光解消素子1において偏光スクランブルが生じ、第二の平面(X−Z面)で見たときに、上側の偏光解消素子1において偏光スクランブルが生ずる。この結果、第一の平面および第二の平面の両方において偏光スクランブルを生じさせることができる。
【0025】
入射側複屈折部材と中間複屈折部材、中間複屈折部材と出射側複屈折部材とは、直接接合されていることが好ましいが、これらの間に一層または複数層の接合層が存在してもよい。この場合には、接合層の材質は、入射側複屈折部材と出射川複屈折部材の屈折率の中間であることが好ましく、接合層の厚さは入射光の波長λ以下が好ましく、λ/4以下が特に好ましい。こういった接合層は、各複屈折部材間の反射防止の機能を持たせることが可能となる。
【0026】
本発明においては、入射側複屈折部材の屈折率および出射側複屈折部材の屈折率を、中間複屈折部材の屈折率よりも高くする。この差は0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることが更に好ましい。また、入射側複屈折部材の屈折率および出射側複屈折部材の屈折率と中間複屈折部材の屈折率との差は、材質の入手の観点からは、1.5以下が好ましい。
【0027】
好適な実施形態においては、入射側複屈折部材の屈折率および出射側複屈折部材の屈折率は2以上であり、より好ましくは2.1以上である。また、中間複屈折部材の屈折率は、1.4〜 1.7が好ましく、1.5〜1.6が更に好ましい。
【0028】
本発明においては、入射側複屈折部材の常光線軸と前記出射側複屈折部材の常光線軸とが揃っており、かつ前記入射側複屈折部材の異常光線軸と前記出射側複屈折部材の異常光線軸とが揃っている。
ここで、異常光線軸とは、光が複屈折することなく透過する軸のことであり、複屈折結晶の光学軸に対して平行となる。正方晶系、三方晶系、六方晶系に属する結晶は光学的に一軸複屈折結晶で、結晶のc軸(z軸)が光学軸に対応する。また常光線軸は、複屈折結晶の光学軸に対して垂直となる軸である。常光線軸は、一軸複屈折結晶の場合にa軸(x軸)、あるいは、b軸(y軸)に対応する。
さらに、光線軸が揃っているという定義は、伝搬する光が感じる屈折率が一致することを意味しており、軸方向が一致するということではなく、光学軸に対して正、負方向は関係ない。
上記光線軸が揃うということは、両者の光線軸が幾何学的に厳密に一致している場合に限定されるものではない。一例を挙げると、両者の光線軸のズレの寛容度は―10°〜+10°以内が好ましく,―5°〜+5°以内が更に好ましく、―3°〜+3°以内が特に好ましい。ここで寛容度は、両者の光線軸のなす角を示しており、各光線軸の正方向、負方向の向きは関係ないものとする。
また、好適な実施形態においては、中間複屈折部材の常光線軸と入射側複屈折部材の常光線軸あるいは異常光線軸とが揃っており、かつ中間複屈折部材の異常光線軸と入射
側複屈折部材の異常光線軸あるいは常光線軸とが揃っている。上記光線軸が揃うということは、両者の光線軸が幾何学的に厳密に一致している場合に限定されるものではない。一例を挙げると、両者の光線軸のズレの寛容度は―10°〜+10°以内が好ましく,―5°〜+5°以内が更に好ましく、―3°〜+3°以内が特に好ましい。ここで寛容度は、両者の光線軸のなす角を示しており、各光線軸の正方向、負方向の向きは関係ないものとする。
【0029】
本発明においては、入射側複屈折部材と前記出射側複屈折部材が同種の材料からなる。これは、本分野の技術常識からみて入射側複屈折部材の材質と出射側複屈折部材の材質との基本組成が同じであればよく、ドーパントや添加成分が異なっていても良い。
【0030】
好適な実施形態においては、入射側複屈折部材および出射側複屈折部材を構成する複屈折材料は、ニオブ酸リチウム(LN)、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム、タンタル酸−ニオブ酸カリウム(KTN)、ニオブ酸カリウム(KN)、チタン酸−リン酸カリウム(KTP)、ルチルおよびイットリウム−バナデート(YVO
4)からなる群より選ばれる。
【0031】
また、好適な実施形態においては、中間複屈折部材を構成する複屈折材料が、水晶、方解石、雲母およびMgF
2からなる群より選ばれる。
【0032】
好適な実施形態においては、偏光解消素子の入射面の面積を偏光解消素子の出射面の面積よりも大きくする。ここで、出射面での偏光スクランブル領域を拡大するという観点からは、入射面の面積/出射面の面積を1.5以上とすることが好ましく、4以上とすることが更に好ましい。しかし、出射面が小さくなると、ビーム径が小さくなりすぎて実用的に使用が難しくなるので、入射面の面積/出射面の面積を10以下とすることが好ましく、8以下とすることが更に好ましい。
【0033】
接合界面J1、J2が入射面5に対してなす角度θpは、1〜15°が好ましく、3〜10°が更に好ましい。
θtとθpとが大きい数値であるほど、p偏光とs偏光の位相差が大きくなり、スクラブル領域を拡大することができるが、大きくなりすぎると出射面2において全反射条件が成立してしまい、素子外部に光が出力されなくなる。したがって、角度θtとθpは、出射面で全反射条件が成り立たない角度に調整して設定する。
【0034】
第一の平面と第二の平面との交差角度は、80°〜90°であることが好ましく、85°〜90°であることがさらに好ましく、直交していることが特に好ましい。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
図1〜
図3を参照しつつ説明した偏光解消素子1を製造した。
具体的には、厚み1.5mm、30mm角のyカットMgOドープニオブ酸リチウム結晶(MgO:LNウエハー)からなる基板2枚と、厚み0.8mm、30mm角の光学用水晶基板1枚を用意した。次に双方の基板に、スパッタにてTa2O5を30nm成膜し、常温直接接合にて上記MgO:LNウエハーと水晶基板を直接接合した。このとき、MgO:LNの常光屈折率no(常光線軸)と異常光屈折率ne(異常光線軸)は、それぞれ水晶の常光(常光線軸)、異常光屈折率(異常光線軸)に合致するようにした。
【0036】
さらに、接合した複合基板の水晶側にスパッタにてTa2O5を30nm成膜し、常温直接接合にてもう1枚のTa2O5膜付きMgO:LN基板と水晶基板側を直接接合した。
【0037】
その後、接合した複合基板を10mm角に切断して両面のLN基板を、界面角(入射面5と接合界面J1、J2とがなす角度)θpが7°になるように研磨した。研磨は、入射面、出射面を研磨して、横研、ラップ加工およびCMP(化学機械研磨)仕上げした。得られた複合基板の全体の厚みTは2.1mmとなった。基板中心部の厚みは、入射側複屈折部材0.5mm、中間複屈折部材0.8mm、出射側複屈折部材0.8mmとした。複合基板を研磨した加工後、ダイシングにて3mm角に切断し、チップ状の偏光解消素子1を得た。すなわち、素子の幅W、Lはそれぞれ3mmである。
【0038】
作製した偏光解消素子1を用い、
図8(a)、(b)に示す光学系にて偏光スクランブル特性を測定した。すなわち、入力光Iは、出力3WのGaN系青色レーザーを10個アレイ化した出力30Wの光源を使用した。アレイ化したレーザーを集光し、コリメートレンズ40によってビーム径2.5mmとした。レーザーの直線偏光の偏光方向を偏光スクランブル素子の入力側MgO:LNの常光軸とのなす角を45°になるようにした(
図8(a)参照))。
【0039】
場所による偏光特性は、
図8(b)に示すように、出射面側に径30μmのアパーチャー42を有するアパーチャー板41を設置し、板41を水平方向(x方向)、垂直方向(y方向)に位置をずらしながら、検光子43によって偏光クロストークを測定した。その結果、アパーチャー41をy方向に動かした時のみ、出力光の偏光クロストークの値が変化し、偏光が解消されることが確認できた。x方向は変化なかった。
【0040】
(実施例2)
図7を参照しつつ説明した偏光解消素子構造体11を製造した。実施例1で作製した偏光解消素子1を2つ用意して90度回転させて直接接合した。製造の際には、実施例1でチップ化切断する前の複合基板の状態のときに接合してもよい。
【0041】
作製した偏光解消素子構造体11を用い、実施例1と同様に測定した。
出射面側のアパーチャーを水平方向(x方向)、垂直方向(y方向)に位置をずらしながら、検光子によって偏光クロストークを測定結果、アパーチャーをx方向、y方向にずらすことにより、出力光の偏光クロストークの値が変化し、第一の平面内および第二の平面内の両方で偏光が解消されることが確認できた。
【0042】
(実施例3)
図4、
図5を説明しつつ説明した偏光解消素子1Aを製造した。
具体的には、実施例1で作製した10mm角の複合基板をダイシングによるセットバック加工に供し、テーパー角(入射光の光軸と側面1a、1bとがなす角度)θtが20°になるように加工した。このとき入射面の外形は3mm角、出射面の外形は、W3mm、L3mm、Lt1.47mmとなった。
【0043】
作製した偏光解消素子1Aを用い、実施例1と同様に測定した。具体的には、出射面側のアパーチャーを水平方向(x方向)、垂直方向(y方向)に位置をずらしながら、検光子によって偏光クロストークを測定結果、アパーチャーをx方向、y方向にずらすことにより、出力光の偏光クロストークの値が変化し、第一の平面内および第二の平面内の両方で偏光が解消されることが確認できた。
【課題】偏光解消素子において、偏光スクランブル領域を大きくすることができ、偏光スクランブルの効率が高く、かつ入射光と出射光との光軸の差を小さくできるような構造を提供する。【解決手段】偏光解消素子1は、入射面5、この入射面5の反対側の出射面6、入射面5と出射面6との間に伸びる相対向する一対の第一の側面1a、1b、および入射面5と出射面6との間に伸びる一対の相対向する第二の側面1c、1dを有する。偏光解消素子1が、入射面5を有する入射側複屈折部材2、出射面6を有する出射側複屈折部材4、および入射側複屈折部材2と出射側複屈折部材4との間の中間複屈折部材3を備える。入射側複屈折部材2と出射側複屈折部材4が同種の材料からなる。入射側複屈折部材2の常光線軸と出射側複屈折部材4の常光線軸とが揃っており、かつ入射側複屈折部材2の異常光線軸と出射側複屈折部材4の異常光線軸とが揃っている。入射側複屈折部材2の屈折率および出射側複屈折部材4の屈折率が中間複屈折部材3の屈折率よりも高い。第一の平面(Y−Z面)から見たときに入射側複屈折部材2と中間複屈折部材3との接合界面J1および中間複屈折部材3と出射側複屈折部材4との接合界面J2が入射面5に対して傾斜している。第一の平面(Y−Z面)に交差する第二の平面(X−Z面)から見たときに接合界面J1および接合界面J2が入射面5に対して平行である。【選択図】