(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天然ゴムを80〜100重量%、スチレンブタジエンゴムを20〜0重量%含むジエン系ゴム100重量部に対し、テルペンスチレン樹脂を0.5〜5.0重量部、シリカを35〜50重量部、硫黄(S)を1.5〜3.5重量部、グアニジン系加硫促進剤を0.1〜1.0重量部、カーボンブラック、スルフェンアミド系加硫促進剤及び硫黄含有シランカップリング剤を配合したゴム組成物であって、前記硫黄(S)に含まれる正味の硫黄及び前記硫黄含有シランカップリング剤の化学構造中に組み込まれている硫黄の合計が1.85〜6.0重量部であり、前記テルペンスチレン樹脂の配合量(T)と前記グアニジン系加硫促進剤の配合量(G)の重量比(T/G)が2.5〜5.0であり、前記スルフェンアミド系加硫促進剤の配合量が下記式(1)により求められるA重量部以上2.6重量部以下であることを特徴とする重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物。
A=0.2209S2−1.409S+1.309Y+2.579 ・・・(1)
(式(1)において、Aはスルフェンアミド系加硫促進剤の配合量(重量部)の下限値、Sは前記硫黄(S)の配合量(重量部)、YはY=Ws/(Ws+Wc)から求められる正数を表し、Wsはシリカの配合量(重量部)、Wcはカーボンブラックの配合量(重量部)を表す。)
前記カーボンブラックがISAF級又はSAF級であり、前記カーボンブラックの配合量Wc及びシリカの配合量Wsが、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物。
Wc≦32.71−0.592Ws ・・・(2)
(式(2)において、Wsはシリカの配合量(重量部)、Wcはカーボンブラックの配合量(重量部)を表す。)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、重荷重空気入りタイヤとは、トラック、バス、建設車両に装着する大型空気入りタイヤをいう。
【0015】
図1において、重荷重空気入りタイヤは、トレッド部1、サイドウォール部2及びビード部3を有し、左右のビード部3,3間にカーカス層4が装架され、その両端部がビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1におけるカーカス層4のタイヤ径方向外側には4層構造のベルト層6が配置され、最外側のベルト層6の外側にトレッドゴムが配置される。トレッドゴムは、ベルト層6に隣接する径方向内側のアンダートレッドゴム層8とトレッド部1の表面に露出する径方向外側のキャップトレッドゴム層7の2層構造になっている。
【0016】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、重荷重空気入りタイヤのトッレド部1、とりわけキャップトレッド部すなわちキャップトレッドゴム層7を構成するのに好適である。このため、本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物を、「キャップトレッド用ゴム組成物」ということがある。またこれと対比して、トレッド部のうちアンダートレッドゴム層8を構成するゴム組成物を、「アンダートレッド用ゴム組成物」ということがある。
【0017】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、天然ゴム、又は天然ゴム及びスチレンブタジエンゴムゴムからなる。ジエン系ゴムを天然ゴム及びスチレンブタジエンゴムゴムで組成することにより、ゴム組成物の耐摩耗性及び耐偏摩耗性を高いレベルで確保することができる。
【0018】
天然ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中、80〜100重量%、好ましくは90〜100重量%である。天然ゴムの含有量が、80重量%未満であると耐摩耗性及び耐偏摩耗性を十分に改良することができない虞がある。スチレンブタジエンゴムゴムの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中、20〜0重量%、好ましくは10〜0重量%である。スチレンブタジエンゴムゴムの含有量が20重量%を超えると耐摩耗性及び耐偏摩耗性を十分に改良することができない虞がある。
【0019】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、天然ゴムを100重量%、又は天然ゴム及びスチレンブタジエンゴムの合計を100重量%にする。なお、重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物に各種配合剤を添加するとき、希釈材料やマスターバッチのベースゴムとして、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを含有する場合、そのような配合剤の使用を排除するものではなく、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。他のジエン系ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0020】
本発明において、シリカを、ジエン系ゴム100重量部に対し35〜50重量部、好ましくは35〜47重量部、より好ましくは36〜45重量部配合する。シリカを配合することにより、タイヤにしたとき転がり抵抗を小さくすることができる。シリカの配合量が35重量部未満であると、転がり抵抗が大きくなる。シリカの配合量が50重量部を超えると、耐摩耗性及び耐偏摩耗性が悪化する。
【0021】
シリカの窒素吸着比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは150〜300m
2/g、より好ましくは160〜240m
2/gであるとよい。シリカの窒素吸着比表面積が150m
2/g未満であると耐摩耗性及び耐偏摩耗性が悪化し好ましくない。またシリカの窒素吸着比表面積が300m
2/gを超えると、転がり抵抗が大きくなり好ましくない。なおシリカの窒素吸着比表面積はJIS K6217−2に準拠して求めるものとする。
【0022】
シリカとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。シリカは、市販されているものの中から適宜選択して使用することができる。また通常の製造方法により得られたシリカを使用することができる。
【0023】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合する。カーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の強度を高くし耐摩耗性及び耐偏摩耗性を高くすることができる。カーボンブラックとしては、ASTM D1765により分類された等級が、ISAF級又はSAF級であるカーボンブラックを使用することが好ましく、ゴム組成物の耐摩耗性及び耐偏摩耗性を高くすることができる。
【0024】
カーボンブラックは、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは3重量部以上、より好ましくは7重量部以上を配合するとよい。カーボンブラックの配合量が3重量部未満であると、ゴム組成物のゴム強度及び耐摩耗性及び耐偏摩耗性が悪化する。カーボンブラックの配合量の上限は、シリカの配合量との関係で決めることが好ましい。すなわち、シリカの配合量をWs(重量部)、及びカーボンブラックの配合量をWc(重量部)とするとき、Ws及びWcの関係が、下記式(2)を満たすことが好ましい。
Wc≦32.71−0.592Ws ・・・(2)
(式(2)において、Wsはシリカの配合量(重量部)、Wcはカーボンブラックの配合量(重量部)を表す。)
【0025】
カーボンブラックの配合量Wcが上記式(2)の右辺の値を超えると、転がり抵抗が大きくなり、また耐摩耗性及び耐偏摩耗性が却って悪化する。
【0026】
本発明のキャップトレッド用ゴム組成物で使用するカーボンブラックは、好ましくはISAF級又はSAF級であり、窒素吸着比表面積が好ましくは100〜150m
2/g、より好ましくは110〜125m
2/gであるとよい。窒素吸着比表面積が100m
2/g未満であると、ゴム組成物のゴム強度などの機械的特性が低下し耐摩耗性及び耐偏摩耗性が悪化する。窒素吸着比表面積が150m
2/gを超えると、転がり抵抗が大きくなる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準拠して、測定するものとする。
【0027】
キャップトレッド用ゴム組成物において、カーボンブラック及びシリカの合計は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは38〜53重量部、より好ましくは42〜50重量部であるとよい。カーボンブラック及びシリカの合計量が、38重量部未満であると耐摩耗性及び耐偏摩耗性が悪化する。またカーボンブラック及びシリカの合計量が、53重量部を超えると転がり抵抗が大きくなる。
【0028】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、シリカと共に硫黄含有シランカップリング剤を配合する。硫黄含有シランカップリング剤を配合することにより、シリカの分散性を改良し、ゴム組成物の低発熱性をより小さくし、転がり抵抗をより小さくすると共に、耐摩耗性及び耐偏摩耗性を改良することができる。
【0029】
硫黄含有シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。なかでもビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが好ましい。
【0030】
本発明では、硫黄含有シランカップリング剤が含有する硫黄と、加硫用に配合する硫黄の合計を、ジエン系ゴム100重量部に対し、1.85〜6.0重量部の範囲にすることが必要である。硫黄含有シランカップリング剤の配合量は、硫黄として加硫用硫黄との合計が、上記範囲内である限り制限されるものではないが、好ましくはシリカ配合量に対し5〜20重量%、より好ましくは8〜14重量%であるとよい。硫黄含有シランカップリング剤がシリカ量の5重量%未満であると、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られない。硫黄含有シランカップリング剤がシリカ量の20重量%を超えると、シランカップリング剤同士が縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0031】
本発明では、カーボンブラック、シリカ以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えばクレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等を例示することができる。なかでも炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミニウムが好ましい。他の充填剤を配合することによりゴム組成物の機械的特性をより一層改良することができ、タイヤにしたときの低発熱性、耐カット性及び加工性のバランスを改良することができる。
【0032】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、加硫剤として硫黄を、ジエン系ゴム100重量部に対し1.5〜3.5重量部、好ましくは2.0〜3.0重量部配合する。硫黄の配合量が1.5重量部未満であると、耐偏摩耗性及び転がり抵抗が悪化する。また硫黄の配合量が3.5重量部を超えると、耐摩耗性及び耐久性が悪化する。
【0033】
本発明では、硫黄及び硫黄含有シランカップリング剤中の硫黄の合計を、ジエン系ゴム100重量部に対し1.85〜6.0重量部、好ましくは2.5〜4.0重量部にする。ここで硫黄の合計とは、加硫剤中に含まれる正味の硫黄の量と、硫黄含有シランカップリング剤中に含まれる正味の硫黄の量との合計であり、加硫に用いられる硫黄の量をいう。例えば加硫剤が硫黄及びオイルを含むときは、オイルを除いた硫黄の正味量を用いるものとする。硫黄及び硫黄含有シランカップリング剤中の硫黄の合計が1.85重量部未満であると、耐偏摩耗性及び転がり抵抗が悪化する。また硫黄及び硫黄含有シランカップリング剤中の硫黄の合計が6.0重量部を超えると、耐摩耗性及び耐久性が悪化する。
【0034】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、スルフェンアミド系加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤のジエン系ゴム100重量部に対する配合量は、その下限を下記式(1)により求められるA重量部とし、上限を2.6重量部、好ましくは2.0重量部とする。
A=0.2209S
2−1.409S+1.309Y+2.579 ・・・(1)
(式(1)において、Aはスルフェンアミド系加硫促進剤の配合量(重量部)の下限値、Sは硫黄の配合量(重量部)、YはY=Ws/(Ws+Wc)から求められる正数を表し、Wsはシリカの配合量(重量部)、Wcはカーボンブラックの配合量(重量部)を表す。)
【0035】
スルフェンアミド系加硫促進剤の配合量のその下限は、好ましくは下記式(3)により求められるB重量部であるとよい。
B=0.2209S
2−1.409S+1.309Y+2.639・・・(3)
(式(3)において、Bはスルフェンアミド系加硫促進剤の配合量(重量部)の好適な下限値、Sは硫黄の配合量(重量部)、YはY=Ws/(Ws+Wc)から求められる正数を表し、Wsはシリカの配合量(重量部)、Wcはカーボンブラックの配合量(重量部)を表す。)
【0036】
スルフェンアミド系加硫促進剤の配合量が、上記式(1)により求められるA重量部未満であると、耐偏摩耗性及び転がり抵抗が悪化する。またスルフェンアミド系加硫促進剤の配合量が、2.6重量部を超えると、耐摩耗性及び耐久性が悪化する。
【0037】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等を例示することができる。
【0038】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、グアニジン系加硫促進剤を配合する。グアニジン系加硫促進剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、0.1〜1.0重量部、好ましくは0.2〜0.6重量部である。グアニジン系加硫促進剤の配合量が、0.1重量部未満であると、所望の加硫速度と架橋密度を得ることができず、ゴム硬度が低下し操縦安定性が低下する。またグアニジン系加硫促進剤の配合量が、1.0重量部を超えると、加硫速度が著しく速くなり、加工性が悪化する。
【0039】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−(o−トリル)ビグアニド等を例示することができる。
【0040】
また重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、テルペンスチレン樹脂を配合することによりウェットグ性能を向上することができる。これはテルペンスチレン樹脂が、シリカ、カーボンブラック等のフィラーの分散性を良好にすると共に、フィラーとゴム成分との相溶性を一層改良するためと考えられる。テルペンスチレン樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、0.5〜5.0重量部、好ましくは1.0〜3.0重量部である。テルペンスチレン樹脂の配合量が0.5重量部であると、ウェット性能を改良する効果が十分には得られない。またテルペンスチレン樹脂の配合量が5.0重量部を超えると、転がり抵抗、耐摩耗性、耐偏摩耗性に悪影響を及ぼす。
【0041】
テルペンスチレン樹脂としては、α−ピネン、βピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペンと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンのうち少なくとも一つのスチレン系化合物とを重合させて得られる樹脂を使用することができる。テルペンスチレン樹脂は、通常の方法で共重合したものを使用しても、市販品を使用してもよい。
【0042】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物では、テルペンスチレン樹脂は、グアニジン系加硫促進剤とともに配合する。天然ゴムにテルペンスチレン樹脂を配合すると、加硫が十分に進まず所期の架橋密度が得られずにゴム硬度が不足することがある。これに対しテルペンスチレン樹脂にグアニジン系加硫促進剤を併用することにより、天然ゴムの加硫を十分に行い所期の架橋密度を得ることができる。
【0043】
テルペンスチレン樹脂の配合量(T)とグアニジン系加硫促進剤の配合量(G)との比(T/G)を、2.5〜5.0、好ましくは2.7〜4.2にする。比(T/G)が2.5より小さいと、ウェット性能を改良する効果が得られない虞がある。また比(T/G)が5.0より大きいと、所期の架橋密度を得ることができず、転がり抵抗が大きくなる虞がある。
【0044】
本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、アラミドパルプを含むマスターバッチを配合することが好ましい。アラミドパルプを含むマスターバッチを配合することにより、耐摩耗性を確保しながら、耐偏摩耗性を一層改良し、更に転がり抵抗をより小さくすることができる。ここでアラミドパルプとは、アラミド繊維の単繊維をフィブリル化した有機系充填剤である。アラミドパルプのマスターバッチとしては、市販品を使用することができ、例えば帝人社製Twaron D3500,Sulflon D3515等を例示することができる。
【0045】
アラミドパルプマスターバッチの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、アラミドパルプの正味量として好ましくは0.5〜5.0重量部、より好ましくは1.0〜3.0重量部であるとよい。アラミドパルプの正味の配合量が0.5重量部未満であると、アラミドパルプマスターバッチを配合した作用効果が十分に得られない。アラミドパルプの正味の配合量が5.0重量部を超えると、耐摩耗性が低下する虞がある。
【0046】
本発明の重荷重空気入りタイヤは、上述した重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物で形成したトレッド部、とりわけキャップトレッド部を有する。この重荷重空気入りタイヤは、転がり抵抗を小さくし燃費性能を改良することができる。また同時に耐摩耗性、耐偏摩耗性、ウェット性能および操縦安定性を従来レベル以上に改良したのでタイヤ耐久性が向上する。
【0047】
重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲内で配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
表2に示す配合剤を共通配合とし、表1に示す配合からなる12種類の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜3、比較例1〜9)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで160℃、5分間混練し放出したマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することにより調製した。硫黄及び硫黄含有シランカップリング剤中の硫黄の合計を、表1の「全硫黄分」の欄に示した。なお、表2に記載した共通配合剤の添加量は、表1に記載したジエン系ゴム100重量部(正味のゴム量100重量部)に対する重量部で表わした。
【0050】
得られた12種類のゴム組成物を、所定形状の金型中で、150℃、30分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により動的粘弾性を指標にした転がり抵抗(60℃のtanδ)の評価を行った。
【0051】
転がり抵抗(60℃のtanδ)
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃における損失正接tanδを測定した。得られたtanδを比較例1の値を100とする指数として表1の「転がり抵抗」の欄に示した。この指数が小さいほど発熱性が小さく、タイヤ走行時に発熱によりタイヤ温度が高くなるのを抑制し、タイヤ耐久性を向上可能にする。また同時に空気入りタイヤにしたとき転がり抵抗が小さくなることを意味する。
【0052】
得られた12種類の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物をキャップトッレド部に使用して、重荷重空気入りタイヤを加硫成形し、得られた重荷重空気入りタイヤを使用し、以下の方法で耐摩耗性、耐偏摩耗性、ウェット性能及び操縦安定性の試験を行った。
【0053】
耐摩耗性
タイヤサイズが2700R49の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ49×19.50−4.0のリム)に組み付け、空気圧700kPaを充填し、同一車種の建設車両に装着した。この建設車両を、鉱山である一定区間を、繰り返し走行させ、同一走行距離の時に、各主溝の溝深さ(残溝)を測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として「耐摩耗性」の欄に示した。耐摩耗性の指数が大きいほど耐摩耗性が優れ、タイヤ耐久性が優れることを意味する。
【0054】
耐偏摩耗性
タイヤサイズが2700R49の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ49×19.50−4.0のリム)に組み付け、空気圧700kPaを充填し、同一車種の建設車両に装着した。タイヤ1本当たり27250kgfの負荷荷重をかけた状態で3000時間、鉱山を走行させた。この走行試験前のインフレートプロファイルと走行試験後のインフレートプロファイルとを比較し、「(ショルダーエッジ摩耗量)−(外側主溝摩耗量)」の値を測定し、ショルダー肩落ち摩耗量(偏摩耗量)とした。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数として「耐偏摩耗性」の欄に示した。耐偏摩耗性の指数が大きいほど耐偏摩耗性が優れ、タイヤ耐久性が優れることを意味する。
【0055】
ウェット性能
タイヤサイズが2700R49の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ49×19.50−4.0のリム)に組み付け、空気圧700kPaを充填し、同一車種の12車両に装着した。この12車両を、水捌けの悪い泥濘地を走行し、初速40km/時からの制動距離を測定することによりウェット性能を評価した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として「ウェット性能」の欄に示した。この指数が大きいほどウェット性能が優れることを意味する。
【0056】
操縦安定性
タイヤサイズが2700R49の空気入りタイヤを加硫成形し、得られたタイヤを標準リム(サイズ49×19.50−4.0のリム)に組み付け、空気圧700kPaを充填し、同一車種の12車両に装着した。この12車両を、比較的凸凹の少ない乾燥路面を走行し、ハンドルをきった時の応答性を官能的に評価することにより操縦安定性を評価した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として「操縦安定性」の欄に示した。この指数が大きいほど
操縦安定性が優れることを意味する。
【0057】
【表1】
【0058】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、STR20
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502、非油展品
・カーボンブラック1:ISAF級カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN234
・シリカ:デクサ社製1165MP
・カップリング剤:硫黄含有シランカップリング剤(硫黄の含有量22.5重量%)、デクサ社製Si69
・テルペンスチレン樹脂:ヤスハラケミカル社製YSレジン TO−125
・テルペンフェノール樹脂:ヤスハラケミカル社製YSポリスター T130
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95重量%)
・加硫促進剤1:スルフェンアミド系加硫促進剤、FLEXSYS社製SANTOCURE CBS
・加硫促進剤2:グアニジン系加硫促進剤、大内新興化学工業社製ノクセラーD(DPG)
【0059】
【表2】
【0060】
なお、表2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤:住友化学社製アンチゲン6C
【0061】
表1から明らかなように実施例1〜3の重荷重空気入りタイヤ用ゴム組成物を使用して成形した重荷重空気入りタイヤは、耐摩耗性、耐偏摩耗性及び低転がり抵抗性のバランスが従来レベル以上に向上することが確認された。
【0062】
また表1から明らかなように、比較例2のゴム組成物は、比較例1にテルペンスチレン樹脂を単に加えたのでウェット性能が高くなるが、転がり抵抗および操縦安定性が悪化する。
【0063】
比較例3のゴム組成物は、比較例1にテルペンフェノール樹脂を単に加えたのでウェット性能が高くなるが、耐摩耗性、転がり抵抗および操縦安定性が悪化する。
【0064】
比較例4のゴム組成物は、比較例1のゴム組成物に対し、式(2)を満たすようにシリカ、カーボンブラックの配合量を変更したが、スルフェンアミド系加硫促進剤の配合量が少ないので耐偏摩耗性および操縦安定性が悪化する。
【0065】
比較例5のゴム組成物は、テルペンスチレン樹脂の配合量(T)とグアニジン系加硫促進剤の配合量(G)の比(T/G)が5.0を超えるので、転がり抵抗が悪化する。
【0066】
比較例6のゴム組成物は、テルペンスチレン樹脂の配合量(T)とグアニジン系加硫促進剤の配合量(G)の比(T/G)が2.5未満であるので、ウェット性能が悪化する。
【0067】
比較例7のゴム組成物は、テルペンスチレン樹脂の配合量が5.0重量部を超え、グアニジン系加硫促進剤の配合量が1.0重量部を超えるので、耐摩耗性、転がり抵抗および操縦安定性が悪化する。
【0068】
比較例8のゴム組成物は、天然ゴムの含有量が80重量%未満であるので、耐摩耗性が悪化する。また転がり抵抗が悪化する。
【0069】
比較例9のゴム組成物は、シリカの配合量が50重量部を超えるので、耐摩耗性が悪化する。